【非特許文献1】H. D. Trinh, et al., "The influences of surface treatment and gas annealing conditions on the inversion behaviors of the atomic-layer-deposition Al2O3/n-In0.53Ga0.47As metal-oxide-semiconductor capacitor", Appl. Phys. Lett., Vol. 97, pp. 042903-1-042903-3. 【非特許文献2】E. O’Connor, et al., "A systematic study of (NH4)2S passivation (22%, 10%, 5%, or 1%) on the interface properties of the Al2O3/In0.53Ga0.47As/InP system for n-type and p-type In0.53Ga0.47As epitaxial layers", J. Appl. Phys., Vol. 109, pp. 024101-1-024101-10. 【非特許文献3】Y. D. Wu, et al., "Engineering of threshold voltages in molecular beam epitaxy-grown Al2O3/Ga2O3(Gd2O3)/In0.2Ga0.8As", J. Vac. Sci. Technol. B, Vol. 28, pp. C3H10-C3H13. 【非特許文献4】Roman Engel-Herbert, et al., "Metal-oxide-semiconductor capacitors with ZrO2 dielectrics grown on In0.53Ga0.47As by chemical beam deposition", Appl. Phys. Lett., Vol. 95, pp. 062908-1-062908-3. 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、上記非特許文献1~4に係る技術では、界面準位密度を十分に低減させることができず、III-V族化合物半導体MOSFETのサブスレッショルド係数を100mV/桁以下にすることは不可能であった。これに対し、近年のシリコンを使用したMOSFET(以下「Si-MOSFET」という)のサブスレッショルド係数は、70mV/桁前後である。したがって、Si-MOSFETと同品質の界面を有するIII-V族化合物半導体MOSFETを作製することができれば、そのIII-V族化合物半導体MOSFETのサブスレッショルド係数は、70mV/桁前後になるはずである。 【0007】 本発明の目的は、小さなサブ閾値(100mV/桁以下)で動作可能なIII-V族化合物半導体MOSFETおよびそれに使用されうるIII-V族化合物半導体ナノワイヤを提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者は、周期的な双晶構造を含むようにナノワイヤを形成することで、原子レベルで平坦であり、かつ化学的に安定な(111)A面を含む側面を有するIII-V族化合物半導体ナノワイヤを形成できることを見出した。そして、本発明者は、このIII-V族化合物半導体ナノワイヤを用いることで、界面準位密度が小さく、小さなサブ閾値(100mV/桁以下)で動作可能なMOSFETを製造できることを見出し、本発明を完成させた。 【0009】 すなわち、本発明は、以下のIII-V族化合物半導体ナノワイヤに関する。 [1]III-V族化合物半導体からなるナノワイヤであって、その側面が微小な(111)面で構成される(-110)面である、III-V族化合物半導体ナノワイヤ。 [2]その側面が(111)A面である第1の層と、その側面が(111)B面である第2の層とが、軸方向に沿って交互に積層されている、[1]に記載のIII-V族化合物半導体ナノワイヤ。 [3]その側面における(111)A面の割合は、50%を超え、100%未満である、[1]または[2]に記載のIII-V族化合物半導体ナノワイヤ。 [4]前記第1の層および前記第2の層は、それぞれ1~5原子層からなり、かつそのうちの90%以上が1~3原子層からなる、[2]に記載のIII-V族化合物半導体ナノワイヤ。 [5]その側面のラフネスが1~6原子層の範囲内である、[1]または[2]に記載のIII-V族化合物半導体ナノワイヤ。 [6]前記III-V族化合物半導体は、InAs、InP、GaAs、GaN、InSb、GaSb、AlSb、AlGaAs、InGaAs、InGaN、AlGaN、GaNAs、InAsSb、GaAsSb、InGaSb、AlInSb、InGaAlN、AlInGaP、InGaAsP、GaInAsN、InGaAlSb、InGaAsSbまたはAlInGaPSbである、[1]~[5]のいずれか一項に記載のIII-V族化合物半導体ナノワイヤ。 【0010】 また、本発明は、以下の電界効果トランジスタ(FET)およびスイッチ素子に関する。 [7](111)面を有し、第1導電型にドープされたIV族半導体基板と、前記IV族半導体基板の(111)面上に配置されたIII-V族化合物半導体ナノワイヤであって、前記IV族半導体基板の(111)面に接続された第1の領域と、前記第1導電型または前記第1導電型と異なる第2導電型にドープされた第2の領域とを含むIII-V族化合物半導体ナノワイヤと、前記III-V族化合物半導体ナノワイヤの側面に配置されたゲート誘電体膜と、前記IV族半導体基板に接続されたソース電極およびドレイン電極から選択されるいずれか一方と、前記III-V族化合物半導体ナノワイヤの第2の領域に接続されたソース電極およびドレイン電極から選択されるいずれか他方と、前記ゲート誘電体膜上に配置され、前記IV族半導体基板の(111)面と前記III-V族化合物半導体ナノワイヤとの界面に電界を作用させるゲート電極と、を有し、前記III-V族化合物半導体ナノワイヤは、[1]~[6]のいずれか一項に記載のIII-V族化合物半導体ナノワイヤである、電界効果トランジスタ。 [8]トンネル電界効果トランジスタである、[7]に記載の電界効果トランジスタ。 [9][7]または[8]に記載の電界効果トランジスタを含むスイッチ素子。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、小さなサブ閾値(100mV/桁以下)で動作可能なFET(スイッチ素子)を容易に製造することができる。本発明に係るFETを用いることで、半導体マイクロプロセッサおよび高集積回路の電力消費量の増大を抑制しつつ、半導体マイクロプロセッサおよび高集積回路の集積度および性能を向上させることができる。 【図面の簡単な説明】 【0012】 【図1】図1Aは、InAsナノワイヤが周期的に配列されたシリコン基板の走査電子顕微鏡像(斜視像)である。図1Bは、InGaAsナノワイヤが周期的に配列されたシリコン基板の走査電子顕微鏡像(斜視像)である。 【図2】図2Aおよび図2Bは、InGaAsナノワイヤの断面の高分解透過電子顕微鏡像である。 【図3】InAsナノワイヤの側面近傍の結晶構造を示す模式図である。 【図4】図4Aおよび図4Bは、InAsナノワイヤの側面近傍の結晶構造を示す模式図である。 【図5】図5Aは、外径28nmのInAsナノワイヤにおける双晶の導入頻度を示すグラフである。図5Bは、外径60nmのInAsナノワイヤにおける双晶の導入頻度を示すグラフである。図5Cは、外径170nmのInAsナノワイヤにおける双晶の導入頻度を示すグラフである。 【図6】図6Aおよび図6Bは、InAsナノワイヤの側面近傍の結晶構造を示す高分解透過電子顕微鏡像である。図6Cは、InAsナノワイヤの側面のラフネスを示すグラフである。 【図7】本発明の一実施の形態に係るTFETの構成を示す断面図である。 【図8】図8A~Dは、本発明の一実施の形態に係るTFETの製造工程を示す模式図である。 【図9】実施例で作製したFETの構成を示す断面図である。 【図10】図10Aおよび図10Bは、実施例で作製したFETの電気特性を示すグラフである。 【図11】図11Aおよび図11Bは、実施例で作製したFETの電気特性を示すグラフである。 【発明を実施するための形態】 【0013】 1.電界効果トランジスタ 本発明に係る電界効果トランジスタ(FET)は、IV族半導体基板、III-V族化合物半導体ナノワイヤ、ゲート誘電体膜、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極を有する。1つのIV族半導体基板の上に複数のFETが形成されていてもよい。以下、本発明に係るFETの代表例としてトンネル電界効果トランジスタ(TFET)について説明するが、基本的構成はその他のFETでも同じである。
【0086】 さらに、n型シリコン基板110の表面上に絶縁保護膜150を形成する。絶縁保護膜150は、例えば、スピンコート法によって形成される。この後、絶縁保護膜150およびゲート誘電体膜140をそれぞれ部分的に除去し、III-V族化合物半導体ナノワイヤ130の頂部(第2の領域134の端部)およびゲート誘電体膜140を露出させる。この部分的な除去は、例えば、反応性イオンエッチング(reactive ion etching)法によって行われる。