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明細書 :ホログラフィック顕微鏡および高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6424313号 (P6424313)
登録日 平成30年11月2日(2018.11.2)
発行日 平成30年11月21日(2018.11.21)
発明の名称または考案の名称 ホログラフィック顕微鏡および高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法
国際特許分類 G03H   1/04        (2006.01)
G03H   1/22        (2006.01)
G02B  21/36        (2006.01)
G02B  21/06        (2006.01)
FI G03H 1/04
G03H 1/22
G02B 21/36
G02B 21/06
請求項の数または発明の数 15
全頁数 36
出願番号 特願2015-544801 (P2015-544801)
出願日 平成26年10月28日(2014.10.28)
国際出願番号 PCT/JP2014/005448
国際公開番号 WO2015/064088
国際公開日 平成27年5月7日(2015.5.7)
優先権出願番号 2013223761
優先日 平成25年10月28日(2013.10.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年9月29日(2017.9.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】513099603
【氏名又は名称】公立大学法人兵庫県立大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 邦弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100084375、【弁理士】、【氏名又は名称】板谷 康夫
審査官 【審査官】井上 徹
参考文献・文献 国際公開第2012/005315(WO,A1)
国際公開第2014/054776(WO,A1)
国際公開第2013/047709(WO,A1)
米国特許出願公開第2008/0137933(US,A1)
調査した分野 G03H 1/00-5/00
G02B 19/00-21/00、21/06-21/36
特許請求の範囲 【請求項1】
ホログラフィック顕微鏡であって、
物体のホログラムを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得されたホログラムから物体の画像を再生する画像再生部と、を備え、
前記データ取得部は、
光源が放射するコヒーレント光からインライン球面波参照光(L)、照明光(Q)、およびオフアクシス球面波参照光(R)を生成し、かつ、これらの光と、前記照明光(Q)によって照明される物体から放たれる物体光(O)とを伝播させる光学系と、
物体に対する前記照明光(Q)の入射方向を変える角度変更部と、
光強度を電気信号に変換して出力する受光素子と、
前記インライン球面波参照光(L)と前記オフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである参照光オフアクシスホログラム(ILR)、前記光学系および前記角度変更部によって前記コヒーレント光から構成される入射方向(θ,j=1,・・,N)の異なる照明光(Q,j=1,・・,N)を照射された物体から放たれる物体光(O,j=1,・・,N)と前記オフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである物体光オフアクシスホログラム(IOR,j=1,・・,N)、および前記照明光(Q,j=1,・・,N)と前記オフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである照明光オフアクシスホログラム(IQR,j=1,・・,N)を前記受光素子を用いてメモリに記録する記録部と、を備え、
前記画像再生部は、
前記各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、前記参照光オフアクシスホログラム(ILR)、前記物体光オフアクシスホログラム(IOR,)、および前記照明光オフアクシスホログラム(IQR)から、前記オフアクシス球面波参照光(R)の成分を除去した物体光複素振幅インラインホログラム(JOL)および照明光複素振幅インラインホログラム(JQL)を生成するインライン化変調部と、
前記各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、任意の再生面(z=z)において、前記物体光複素振幅インラインホログラム(JOL)および前記照明光複素振幅インラインホログラム(JQL)の各々から、前記物体光(O)の再生光である物体光再生光波(h)と、前記照明光(Q)の再生光である照明光再生光波(c)と、前記照明光再生光波(c)に含まれる位相成分(ξ=c/|c|)と、前記物体光再生光波(h)から前記位相成分(ξ)を除去した位相調整再生光波(h/ξ)と、を求める光波計算部と、
前記位相調整再生光波(h/ξ)を前記各入射方向(θ,j=1,・・,N)について加算して前記任意の再生面(z=z)における光波である合成光波(H=Σh/ξ)を求めて、前記合成光波(H)を用いて、物体の画像(S=|H)を再生する画像計算部と、を備えることを特徴とするホログラフィック顕微鏡。
【請求項2】
前記画像再生部は、前記物体光複素振幅インラインホログラム(JOL)および前記照明光複素振幅インラインホログラム(JQL)の空間サンプリング間隔を細分化し、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした物体光複素振幅インラインホログラム(KOL)および照明光複素振幅インラインホログラム(KQL)を生成する画素数増大部を備え、
前記光波計算部は、前記画素数を増やした物体光複素振幅インラインホログラム(KOL)および前記画素数を増やした照明光複素振幅インラインホログラム(KQL)を用いて前記位相調整再生光波(h/ξ)を求めることを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック顕微鏡。
【請求項3】
前記画像再生部は、前記物体光(O)と前記照明光(Q)とが互いに分離されずに記録されたホログラムから前記照明光(Q)の再生光波を分離して生成する照明光分離部を備え、
前記記録部は、前記物体光(O)と前記照明光(Q)とが互いに分離されない場合に、前記物体光(O)と前記照明光(Q)と前記オフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムを物体光照明光オフアクシスホログラム(IOQR)としてメモリに記録し、
前記インライン化変調部は、前記参照光オフアクシスホログラム(ILR)および前記物体光照明光オフアクシスホログラム(IOQR)から、前記オフアクシス球面波参照光(R)の成分を除去した物体光照明光複素振幅インラインホログラム(JOQL)を生成し、
前記照明光分離部は、特定の再生面(z=z)において、前記物体光照明光複素振幅インラインホログラム(JOQL)から前記照明光(Q)を含んでいる前記物体光(O)の再生光波である物体光再生光波(h)を生成し、前記物体光再生光波(h)から前記照明光(Q)の再生光波である照明光再生光波(c)を分離して生成し、
前記光波計算部は、前記照明光分離部が生成した前記物体光再生光波(h)および前記照明光再生光波(c)の各々を前記特定の再生面(z=z)とは異なる任意の再生面(z=z)に伝搬させた新たな物体光再生光波(h)および照明光再生光波(c)を生成し、これらの新たな再生光波を用いて前記位相調整再生光波(h/ξ)を求めることを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック顕微鏡。
【請求項4】
前記画像再生部は、前記物体光照明光複素振幅インラインホログラム(JOQL)の空間サンプリング間隔を細分化し、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした物体光照明光複素振幅インラインホログラム(KOQL)を生成する画素数増大部を備え、
前記照明光分離部は、前記画素数を増やした物体光照明光複素振幅インラインホログラム(KOQL)を用いて前記物体光再生光波(h)を求めることを特徴とする請求項3に記載のホログラフィック顕微鏡。
【請求項5】
前記角度変更部は、集光レンズと、前記集光レンズに、その入り口側の開口径よりも大きな径を有する平行光を、該集光レンズの光軸に対して傾いた任意の方向から入射させる反射鏡と、を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のホログラフィック顕微鏡。
【請求項6】
高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法であって、
インライン球面波参照光(L)とオフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである参照光オフアクシスホログラム(ILR)を記録し、
物体に対する入射方向(θ,j=1,・・,N)を変えた照明光(Q,j=1,・・,N)によって前記物体を照明し、前記各入射方向毎に、前記物体から放たれる物体光(O,j=1,・・,N)と前記オフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである物体光オフアクシスホログラム(IOR,j=1,・・,N)、および前記照明光(Q,j=1,・・,N)と前記オフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである照明光オフアクシスホログラム(IQR,j=1,・・,N)を記録し、
前記各物体光(O,j=1,・・,N)が局在領域から放射され、前記局在領域と前記インライン球面波参照光(L)および前記オフアクシス球面波参照光(R)の各仮想点光源とが互いに近接した条件で、前記各オフアクシスホログラム(ILR,IOR,IQR,j=1,・・,N)が記録されることを特徴とする高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法。
【請求項7】
前記オフアクシス球面波参照光(R)は、微小球面からの反射光であることを特徴とする請求項6に記載の高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法。
【請求項8】
前記物体光が放射される局在領域を望むように複数の受光素子を配置し、前記複数の受光素子によって前記各ホログラムを記録することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法。
【請求項9】
前記ホログラムに記録された物体光(O)は前記物体における前記局在領域の各点で前記照明光(Q)が反射して生じる反射光が重なり合った光であり、該物体光(O)を構成する前記反射光が発生する位置における該反射光の位相とその位置における該反射光を生成する前記照明光(Q)の位相とが同じであることに基づいて、任意の再生面(z=z)において物体光(O,j=1,・・,N)の位相を調整した光波を加算して構成した合成光波(H)を求め、その合成光波(H)を用いて、物体の画像(S=|H)を再生することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載の高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法。
【請求項10】
前記各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、前記参照光オフアクシスホログラム(ILR)、物体光オフアクシスホログラム(IOR,)および照明光オフアクシスホログラム(IQR)から、前記オフアクシス球面波参照光(R)の成分を除去した物体光複素振幅インラインホログラム(JOL)および照明光複素振幅インラインホログラム(JQL)を生成し、
前記各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、任意の再生面(z=z)において、前記物体光複素振幅インラインホログラム(JOL)および前記照明光複素振幅インラインホログラム(JQL)の各々から、前記物体光(O)の物体光再生光波(h)と、前記照明光(Q)の照明光再生光波(c)と、前記照明光再生光波(c)に含まれる位相成分(ξ=c/|c|)と、前記物体光再生光波(h)から前記位相成分(ξ)を除去した位相調整再生光波(h/ξ)と、を求め、
前記位相調整再生光波(h/ξ)を前記各入射方向(θ,j=1,・・,N)について加算して前記任意の再生面(z=z)における光波である合成光波(H=Σh/ξ)を求め、前記合成光波(H)を用いて、物体の画像(S=|H)を再生することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載の高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法。
【請求項11】
前記物体光複素振幅インラインホログラム(JOL)および前記照明光複素振幅インラインホログラム(JQL)の空間サンプリング間隔を細分化し、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした物体光複素振幅インラインホログラム(KOL)および照明光複素振幅インラインホログラム(KQL)を生成し、前記画素数を増やした物体光複素振幅インラインホログラム(KOL)および前記画素数を増やした照明光複素振幅インラインホログラム(KQL)を用いて前記位相調整再生光波(h/ξ)を求めることを特徴とする請求項10に記載の高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法。
【請求項12】
前記各入射方向(θ,j=1,・・,N)における前記物体光(O)と前記照明光(Q)とが互いに分離して記録されない場合に、前記物体光(O)と前記照明光(Q)と前記オフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである物体光照明光オフアクシスホログラム(IOQR)を各入射方向毎に記録し、
前記各オフアクシスホログラム(ILR,IOQR,j=1,・・,N)は、前記局在領域と前記インライン球面波参照光(L)および前記オフアクシス球面波参照光(R)の各仮想点光源とが互いに近接した条件で記録されることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載の高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法。
【請求項13】
前記照明光(Q,j=1,・・,N)は、集光点を有し、その集光点を経過して広がった状態で前記各物体光照明光オフアクシスホログラム(IOQR,j=1,・・,N)に記録されることを特徴とする請求項12に記載の高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法。
【請求項14】
前記各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、前記参照光オフアクシスホログラム(ILR)および前記物体光照明光オフアクシスホログラム(IOQR)から前記参照光(R)の成分を除去した物体光照明光複素振幅インラインホログラム(JOQL)を生成し、
前記各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、特定の再生面(z=z)において、前記物体光照明光複素振幅インラインホログラム(JOQL)から前記照明光(Q)を含んでいる前記物体光(O)の再生光波である物体光再生光波(h)を生成し、前記物体光再生光波(h)から前記照明光(Q)の再生光波である照明光再生光波(c)を分離し、
前記各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、前記物体光再生光波(h)および前記照明光再生光波(c)の各々を前記特定の再生面(z=z)とは異なる任意の再生面(z=z)に伝搬させた新たな物体光再生光波(h)および照明光再生光波(c)を生成し、前記任意の再生面(z=z)において、前記照明光再生光波(c)に含まれる位相成分(ξ=c/|c|)と、前記物体光再生光波(h)から前記位相成分(ξ)を除去した位相調整再生光波(h/ξ)と、を求め、
前記位相調整再生光波(h/ξ)を前記各入射方向(θ,j=1,・・,N)について加算して前記任意の再生面(z=z)における光波である合成光波(H=Σh/ξ)を求め、前記合成光波(H)を用いて、物体の画像(S=|H)を再生することを特徴とする請求項12または請求項13に記載の高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法。

【請求項15】
前記物体光照明光複素振幅インラインホログラム(JOQL)の空間サンプリング間隔を細分化し、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした物体光照明光複素振幅インラインホログラム(KOQL)を生成し、前記画素数を増やした物体光照明光複素振幅インラインホログラム(KOQL)を用いて前記位相調整再生光波(h/ξ)を求めることを特徴とする請求項14に記載の高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、球面波参照光を用いたオフアクシスホログラフィに基づくホログラフィック顕微鏡および高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口数の大きい複素振幅インラインホログラムをワンショットでかつ結像レンズを用いることなく記録して微小物体の画像を再生する透過型および反射型のホログラフィック顕微鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。この顕微鏡は、結像レンズを用いないので、従来の光学顕微鏡における媒質や結像レンズの影響を受けるという問題を解決できる。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】国際公開第2012/005315号
【発明の開示】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるようなホログラフィック顕微鏡においては、従来の光学顕微鏡と同様に、分解能が光の半波長を超えることはできない、という原理的な限界がある。このような分解能限界を超える顕微鏡として、モアレ効果を利用するSIM(Structured Illumination Microscopy)が開発されている。SIMは、分解能が上記の限界を超えるようにすることができる。しかしながら、SIMは結像レンズを使用するものであり、他の光学顕微鏡と同様に結像レンズの使用に伴う多くの問題を有している。また、SIMは、構造が複雑で非常に高価であり、取扱いが容易ではない。さらに、モアレ効果を透過型の顕微鏡に適用することは困難であることから、SIMは、反射型のもののみ実用化されており、透過型のものは実用化されていない。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、透過型と反射型のいずれも実現でき、従来の光学顕微鏡の分解能を超えることができるホログラフィック顕微鏡および高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
上記課題を達成するために、本発明のホログラフィック顕微鏡は、物体のホログラムを取得するデータ取得部と、データ取得部によって取得されたホログラムから物体の画像を再生する画像再生部と、を備え、データ取得部は、光源が放射するコヒーレント光からインライン球面波参照光(L)、照明光(Q)、およびオフアクシス球面波参照光(R)を生成し、かつ、これらの光と、照明光(Q)によって照明される物体から放たれる物体光(O)とを伝播させる光学系と、物体に対する照明光(Q)の入射方向を変える角度変更部と、光強度を電気信号に変換して出力する受光素子と、インライン球面波参照光(L)とオフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである参照光オフアクシスホログラム(ILR)、光学系および角度変更部によってコヒーレント光から構成される入射方向(θ,j=1,・・,N)の異なる照明光(Q,j=1,・・,N)を照射された物体から放たれる物体光(O,j=1,・・,N)とオフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである物体光オフアクシスホログラム(IOR,j=1,・・,N)、および照明光(Q,j=1,・・,N)とオフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである照明光オフアクシスホログラム(IQR,j=1,・・,N)を受光素子を用いてメモリに記録する記録部と、を備え、画像再生部は、各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、参照光オフアクシスホログラム(ILR)、物体光オフアクシスホログラム(IOR,)、および照明光オフアクシスホログラム(IQR)から、オフアクシス球面波参照光(R)の成分を除去した物体光複素振幅インラインホログラム(JOL)および照明光複素振幅インラインホログラム(JQL)を生成するインライン化変調部と、各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、任意の再生面(z=z)において、物体光複素振幅インラインホログラム(JOL)および照明光複素振幅インラインホログラム(JQL)の各々から、物体光(O)の再生光である物体光再生光波(h)と、照明光(Q)の再生光である照明光再生光波(c)と、照明光再生光波(c)に含まれる位相成分(ξ=c/|c|)と、物体光再生光波(h)から位相成分(ξ)を除去した位相調整再生光波(h/ξ)と、を求める光波計算部と、位相調整再生光波(h/ξ)を各入射方向(θ,j=1,・・,N)について加算して任意の再生面(z=z)における光波である合成光波(H=Σh/ξ)を求めて、合成光波(H)を用いて、物体の画像(S=|H)を再生する画像計算部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このホログラフィック顕微鏡において、画像再生部は、物体光複素振幅インラインホログラム(JOL)および照明光複素振幅インラインホログラム(JQL)の空間サンプリング間隔を細分化し、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした物体光複素振幅インラインホログラム(KOL)および照明光複素振幅インラインホログラム(KQL)を生成する画素数増大部を備え、光波計算部は、画素数を増やした物体光複素振幅インラインホログラム(KOL)および画素数を増やした照明光複素振幅インラインホログラム(KQL)を用いて位相調整再生光波(h/ξ)を求めてもよい。
【0008】
このホログラフィック顕微鏡において、画像再生部は、物体光(O)と照明光(Q)とが互いに分離されずに記録されたホログラムから照明光(Q)の再生光波を分離して生成する照明光分離部を備え、記録部は、物体光(O)と照明光(Q)とが互いに分離されない場合に、物体光(O)と照明光(Q)とオフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムを物体光照明光オフアクシスホログラム(IOQR)としてメモリに記録し、インライン化変調部は、参照光オフアクシスホログラム(ILR)および物体光照明光オフアクシスホログラム(IOQR)から、オフアクシス球面波参照光(R)の成分を除去した物体光照明光複素振幅インラインホログラム(JOQL)を生成し、照明光分離部は、特定の再生面(z=z)において、物体光照明光複素振幅インラインホログラム(JOQL)から照明光(Q)を含んでいる物体光(O)の再生光波である物体光再生光波(h)を生成し、物体光再生光波(h)から照明光(Q)の再生光波である照明光再生光波(c)を分離して生成し、光波計算部は、照明光分離部が生成した物体光再生光波(h)および照明光再生光波(c)の各々を特定の再生面(z=z)とは異なる任意の再生面(z=z)に伝搬させた新たな物体光再生光波(h)および照明光再生光波(c)を生成し、これらの新たな再生光波を用いて位相調整再生光波(h/ξ)を求めてもよい。
【0009】
このホログラフィック顕微鏡において、画像再生部は、物体光照明光複素振幅インラインホログラム(JOQL)の空間サンプリング間隔を細分化し、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした物体光照明光複素振幅インラインホログラム(KOQL)を生成する画素数増大部を備え、照明光分離部は、画素数を増やした物体光照明光複素振幅インラインホログラム(KOQL)を用いて物体光再生光波(h)を求めてもよい。
【0010】
このホログラフィック顕微鏡において、角度変更部は、集光レンズと、集光レンズにその入り口側の開口径よりも大きな径を有する平行光を該集光レンズの光軸に対して傾いた任意の方向から入射させる反射鏡と、を備えて構成されてもよい。
【0011】
本発明の高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法は、インライン球面波参照光(L)とオフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである参照光オフアクシスホログラム(ILR)を記録し、物体に対する入射方向(θ,j=1,・・,N)を変えた照明光(Q,j=1,・・,N)によって物体を照明し、各入射方向毎に、物体から放たれる物体光(O,j=1,・・,N)とオフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである物体光オフアクシスホログラム(IOR,j=1,・・,N)、および照明光(Q,j=1,・・,N)とオフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである照明光オフアクシスホログラム(IQR,j=1,・・,N)を記録し、各物体光(O,j=1,・・,N)が局在領域から放射され、局在領域とインライン球面波参照光(L)およびオフアクシス球面波参照光(R)の各仮想点光源とが互いに近接した条件で、各オフアクシスホログラム(ILR,IOR,IQR,j=1,・・,N)が記録されることを特徴とする。
【0012】
この高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法において、オフアクシス球面波参照光(R)は、微小球面からの反射光であってもよい。
【0013】
この高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法において、物体光が放射される局在領域を望むように複数の受光素子を配置し、複数の受光素子によって各ホログラムを記録してもよい。
【0014】
この高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法において、ホログラムに記録された物体光(O)は物体における局在領域の各点で照明光(Q)が反射して生じる反射光が重なり合った光であり、該物体光(O)を構成する反射光が発生する位置における該反射光の位相とその位置における該反射光を生成する照明光(Q)の位相とが同じであることに基づいて、任意の再生面(z=z)において物体光(O,j=1,・・,N)の位相を調整した光波を加算して構成した合成光波(H)を求め、その合成光波(H)を用いて、物体の画像(S=|H)を再生してもよい。
【0015】
この高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法において、各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、参照光オフアクシスホログラム(ILR)、物体光オフアクシスホログラム(IOR,)および照明光オフアクシスホログラム(IQR)から、オフアクシス球面波参照光(R)の成分を除去した物体光複素振幅インラインホログラム(JOL)および照明光複素振幅インラインホログラム(JQL)を生成し、各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、任意の再生面(z=z)において、物体光複素振幅インラインホログラム(JOL)および照明光複素振幅インラインホログラム(JQL)の各々から、物体光(O)の物体光再生光波(h)と、照明光(Q)の照明光再生光波(c)と、照明光再生光波(c)に含まれる位相成分(ξ=c/|c|)と、物体光再生光波(h)から位相成分(ξ)を除去した位相調整再生光波(h/ξ)と、を求め、位相調整再生光波(h/ξ)を各入射方向(θ,j=1,・・,N)について加算して任意の再生面(z=z)における光波である合成光波(H=Σh/ξ)を求め、合成光波(H)を用いて、物体の画像(S=|H)を再生してもよい。
【0016】
この高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法において、物体光複素振幅インラインホログラム(JOL)および照明光複素振幅インラインホログラム(JQL)の空間サンプリング間隔を細分化し、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした物体光複素振幅インラインホログラム(KOL)および照明光複素振幅インラインホログラム(KQL)を生成し、画素数を増やした物体光複素振幅インラインホログラム(KOL)および画素数を増やした照明光複素振幅インラインホログラム(KQL)を用いて位相調整再生光波(h/ξ)を求めてもよい。
【0017】
この高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法において、各入射方向(θ,j=1,・・,N)における物体光(O)と照明光(Q)とが互いに分離して記録されない場合に、物体光(O)と照明光(Q)とオフアクシス球面波参照光(R)との干渉縞のホログラムである物体光照明光オフアクシスホログラム(IOQR)を各入射方向毎に記録し、各オフアクシスホログラム(ILR,IOQR,j=1,・・,N)は、局在領域とインライン球面波参照光(L)およびオフアクシス球面波参照光(R)の各仮想点光源とが互いに近接した条件で記録されてもよい。
【0018】
この高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法において、照明光(Q,j=1,・・,N)は、集光点を有し、その集光点を経過して広がった状態で各物体光照明光オフアクシスホログラム(IOQR,j=1,・・,N)に記録されてもよい。
【0019】
この高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法において、各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、参照光オフアクシスホログラム(ILR)および物体光照明光オフアクシスホログラム(IOQR)から参照光(R)の成分を除去した物体光照明光複素振幅インラインホログラム(JOQL)を生成し、各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、特定の再生面(z=z)において、物体光照明光複素振幅インラインホログラム(JOQL)から照明光(Q)を含んでいる物体光(O)の再生光波である物体光再生光波(h)を生成し、物体光再生光波(h)から照明光(Q)の再生光波である照明光再生光波(c)を分離し、各入射方向(θ,j=1,・・,N)毎に、物体光再生光波(h)および照明光再生光波(c)の各々を特定の再生面(z=z)とは異なる任意の再生面(z=z)に伝搬させた新たな物体光再生光波(h)および照明光再生光波(c)を生成し、任意の再生面(z=z)において、照明光再生光波(c)に含まれる位相成分(ξ=c/|c|)と、物体光再生光波(h)から位相成分(ξ)を除去した位相調整再生光波(h/ξ)と、を求め、位相調整再生光波(h/ξ)を各入射方向(θ,j=1,・・,N)について加算して任意の再生面(z=z)における光波である合成光波(H=Σh/ξ)を求め、合成光波(H)を用いて、物体の画像(S=|H)を再生してもよい。

【0020】
この高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法において、物体光照明光複素振幅インラインホログラム(JOQL)の空間サンプリング間隔を細分化し、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした物体光照明光複素振幅インラインホログラム(KOQL)を生成し、画素数を増やした物体光照明光複素振幅インラインホログラム(KOQL)を用いて位相調整再生光波(h/ξ)を求めてもよい。
【0021】
本発明のホログラフィック顕微鏡および高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法によれば、球面波参照光と多方向照明光とで記録した複数の物体光を各照明光の位相情報によって調整して加算するので、物体光の開口数に照明光の開口数を加算した大開口数条件で画像を再生できる。大開口数条件での画像再生により、従来の光学顕微鏡の分解能を超えることができる。また、物体光と照明光とは、透過型と反射型のいずれでもホログラムに記録できるので、透過型と反射型のいずれの顕微鏡も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る高分解能ホログラム画像再生方法を示すフローチャート。
【図2】同画像生成方法に用いるインライン球面波参照光のデータを取得する透過型の装置の側面図。
【図3】同画像生成方法に用いる物体光のデータを取得する同装置の側面図。
【図4】(a)(b)は図3の要部断面図。
【図5】同画像再生方法に用いる多方向照明の他の例を示す斜視図。
【図6】(a)は同画像生成方法に用いるインライン球面波参照光のデータを取得する透過型の装置の他の例の側面図、(b)は同装置の平面図。
【図7】(a)は同画像生成方法に用いる物体光のデータを取得する同装置の側面図、(b)は同装置の平面図。
【図8】(a)は同画像生成方法に用いるインライン球面波参照光のデータを取得する反射型の装置の側面図、(b)は物体光のデータを取得する同装置の側面図。
【図9】(a)は同画像生成方法に用いる物体光のデータを取得する反射型の装置の他の例を示す側面図、(b)は同装置の平面図。
【図10】(a)は4方向からの照明光の空間周波数分布を示す図、(b)は同照明光によって取得した物体光の空間周波数分布を示す図。
【図11】(a)は図10(a)の照明光に周波数変調を施した後の空間周波数分布を示す図、(b)は図10(b)の物体光に周波数変調を施した後の空間周波数分布を示す図。
【図12】同画像生成方法の処理の流れを示すブロック図。
【図13】同画像生成方法に用いるインライン球面波参照光のデータを取得する透過型の装置の他の例の側面図。
【図14】同画像生成方法に用いる物体光のデータを取得する同装置の側面図。
【図15】同画像生成方法における複数の受光素子間のデータの較正処理のフローチャート。
【図16】同画像生成方法における高分解能化処理のフローチャート。
【図17】(a)はホログラムの部分図、(b)は同ホログラムにおける空間サンプリング間隔を増やす様子を示すホログラムの部分図。
【図18】同画像再生方法における高速化処理のフローチャート。
【図19】(a)は単一の再生用ホログラムと再生像の概念図、(b)は複数の再生用ホログラムと再生された複数の像とを示す概念図。
【図20】(a)はホログラムの概念図、(b)は同ホログラムを分割して重ね合わせた概念図、(c)は(b)のホログラムを合成したホログラムの概念図。
【図21】同画像生成方法に用いる物体光Oのデータを取得する反射型の装置の他の例を示す側面図。
【図22】他の実施形態に係る高分解能ホログラム画像再生方法を示すフローチャート。
【図23】同画像生成方法の処理の流れを示すブロック図。
【図24】本発明の一実施形態に係るホログラフィック顕微鏡のブロック構成図。
【図25】(a)は同顕微鏡を用いて入射方向を傾けた照明光で取得したUSAFテストターゲットのホログラムにおける物体光と照明光の再生光波の空間周波数分布の図、(b)は(a)の説明図。
【図26】(a)は図25(a)の物体光と照明光を周波数変調した後の再生光波の空間周波数分布の図、(b)は(a)の説明図。
【図27】4方向からの照明光でホログラムを取得し、図26(a)の場合と同様に周波数変調して得た4つの再生光波を、互いに加算する様子を概念的に示す図。
【図28】図27の処理で合成された再生光波の空間周波数分布の図。
【図29】同顕微鏡を用いて照明光の入射方向を変えて取得したUSAFテストターゲットの複数のホログラムのうちの1つの像を示す図。
【図30】(a)は入射方向の異なる同ホログラムの複数枚を用いて再生したUSAFテストターゲットの再生画像を示す図、(b)は同ホログラムのうちの1枚を用いて再生したUSAFテストターゲットの再生画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(微小物体の画像再生方法)
以下、本発明の一実施形態に係る高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法(高分解能ホログラム画像再生方法、高分解能画像用のホログラムデータ取得方法)、およびホログラフィック顕微鏡について、図面を参照して説明する。図1乃至図12は、高分解能ホログラム画像再生方法と高分解能画像用のホログラムデータ取得方法を示す。本画像再生方法は、図1に示すように、データ取得工程(S0)と、その後のデータ処理によって画像を再生する画像再生の工程(S1乃至S7)とを備える。本画像再生方法では、多方向の照明光によって発生する物体光を記録した複数の大開口数のディジタルホログラムから光波を再生し、その再生光波を各照明光の位相情報を加味して計算機合成することにより、開口数が1を超える条件で画像を再生する。本画像再生方法は、ホログラフィック顕微鏡における画像再生に用いることができる。

【0024】
光学における開口数NAは、光の媒質の屈折率を1と仮定した場合、ある点Pから平面に立てた垂線と、その点Pからその平面上に設定された境界領域の境界に至る線分との成す角度θNAの正弦値sinθNAである。言い換えれば、開口数NAは、ある点Pから平面に立てた垂線の足と境界領域の境界とを結ぶ平面上の線分を、その点Pから望む角度θNAの正弦値である。開口数NAは、点Pと境界領域とを設定することによって、レンズ、受光素子、照明光等に、それぞれ定義することができ、その値は1以下(NA=sinθNA≦1)である。開口数NAを定義する点Pは、レンズでは焦点、受光素子では受光素子の中心線上のある任意の点(任意に設定した点光源の位置)、照明光では光源中の1点である。開口数NAを定義する境界領域は、レンズではレンズの開口、受光素子では受光素子の受光面(実効的に受光可能面)、照明光では点光源から広がる光で照明される面である。

【0025】
(概要説明)
データ取得工程(S0)では、インライン球面波参照光L、オフアクシス球面波参照光R、および物体に対する照明光Qの入射方向θ,j=1,・・,Nを変えた照明光Q,j=1,・・,Nを用いて、これらの光の成す干渉縞を複数のオフアクシスホログラムILR,IOQR,j=1,・・,Nとして取得する。以下において、入射方向に依存する光や数式は、入射方向を区別する添え字j等が適宜省略される。ホログラムILRは、インライン球面波参照光Lをオフアクシス球面波参照光Rを用いて記録したオフアクシスホログラムである。ホログラムILRは、参照光Rのホログラムであり、参照光ホログラムILR、参照光オフアクシスホログラムILR、またはオフアクシスホログラムILRなどと適宜別名で表記される。これらのインライン球面波参照光LとホログラムILRの情報は、ホログラムデータを処理する際に基準となる情報である。

【0026】
ホログラムIOQRは、照明光Qにより物体を照明し、その物体から放たれる物体光Oと照明光Qとをオフアクシス球面波参照光Rを用いて記録したオフアクシスホログラムである。ホログラムIOQRは、物体光Oと照明光Qのホログラムであり、物体光照明光ホログラムIOQR、物体光照明光オフアクシスホログラムIOQR、またはオフアクシスホログラムIOQRなどと適宜別名で表記される。これらのホログラムILR,IOQRは、インライン球面波参照光Lおよびオフアクシス球面波参照光Rという球面波光を用いて取得したものである。従って、これらのホログラムは大開口数(大きなNA数、ただし、NA<1である)のホログラムとなり得る。

【0027】
画像再生の工程(S1乃至S7)は、単独で行われるフィルタリング工程(S1)と、入射方向ループLPs-LPeにおいて各入射方向θについて一連の処理を行う工程(S2乃至S6)と、得られた結果を統合して画像を再生する工程(S7)とを備える。フィルタリング工程(S1)では、ホログラムILRに空間周波数フィルタリングを適用して、インライン球面波参照光Lの情報を保持した複素振幅オフアクシスホログラムJLRを生成する。入射方向ループLPs-LPeは、フィルタリング工程(S2)、インライン化変調工程(S3)、照明光分離工程(S4)、光波計算工程(S5)、位相調整工程(S6)を実行する。

【0028】
フィルタリング工程(S2)では、ホログラムIOQRに空間周波数フィルタリングを適用して、物体光Oと照明光Qの情報を保持した複素振幅オフアクシスホログラムJOQR、を生成する。インライン化変調工程(S3)では、フィルタリング工程(S2)によって生成された各複素振幅オフアクシスホログラムJOQRのデータを、同じくフィルタリング工程(S1)によって生成された複素振幅オフアクシスホログラムJLRのデータで除算することにより、参照光R成分を除去してインラインの構成とした複素振幅インラインホログラムJOQLを生成する。

【0029】
照明光分離工程(S4)では、特定の再生面z=zにおいて、複素振幅インラインホログラムJOQLから、物体光Oと照明光Qの再生光波である物体光再生光波hを生成し、その物体光再生光波hから照明光Qの再生光波である照明光再生光波cを分離抽出する。この物体光再生光波hは、物体光Oと照明光Qを含んでいる再生光波である。物体光再生光波hと照明光再生光波cは、適宜簡略して再生光波h,cさらには光波h,cなどと表記される。これらの再生光波の生成に際し、インライン球面波参照光Lの位相φを用いた変調処理、および平面波展開処理が行われる。再生面z=zは、再生光波cを分離抽出することが容易となる特定の面に設定される。再生面は、例えば、ホログラムを取得する際に用いられたCCDなどの受光素子の受光面に平行な面である。この場合、z軸は、その受光面に直交する軸として設定される受光面の光軸(中心軸)であり、z軸上の位置を特定することによって、z軸に直交する1つの平面を指定できる。画像は、このz軸に垂直な面に再生される。

【0030】
光波計算工程(S5)では、再生光波h,cを特定の再生面z=zから画像再生用の任意の再生面z=zまで伝搬させることにより、再生面z=zにおける再生光波h,cを生成し、照明光Qの再生光波cに含まれる位相成分ξ=c/|c|を求める。

【0031】
位相調整工程(S6)では、各入射方向毎に、除算によって物体光の再生光波から位相成分を除去した位相調整再生光波h/ξを求める。位相調整再生光波h/ξを求める操作は、各入射方向θに対する再生光波hの位相を、再生面z=zにおいて互いに規格化する。物体光Oは物体の表面(反射型の場合)または内部(透過型の場合)の各点で生じる反射光が重なり合った光であり、各反射光の位相は、その反射光が発生する位置において、その反射光を発生させる照明光Qの位相と同じになる。言い換えると、物体の各点で生じる各物体光は、その物体光が発生する各位置において、各物体光を発生させる各照明光と同位相である。そこで、この除算による位相調整の操作によって、再生面z=zにおいて、各入射方向毎の物体光Oを表す光の位相が調整(規格化)される。

【0032】
工程(S7)の光波総和工程では、位相調整再生光波h/ξを各入射方向θ,j=1,・・,Nについて加算して再生面z=zにおける光波である合成光波H=Σh/ξを求める。この加算は、各照明光Qのz軸方向の波数kzが所定の許容範囲に収まるように設定された入射方向θについて行われる。言い換えれば、ホログラムIOQRは、画像を再生する位置を通るz軸に対して許容範囲内で同じと見なされる偏角(天頂角)を有する照明光Qの群によって取得される。加算は重み付けして行われる。例えば、加算データ数の逆数を重みとして用いる(この場合の結果は、加算データの平均値である)。合成光波Hは、照明光の方向を変えて記録した物体光(照明光も含まれている)を合成したものに相当するから、合成光波Hは、照明光の開口数NAと物体光の開口数NAとの和に等しい開口数NA=NA+NAを有するものとなる。従って、この開口数NAの値は、1以上となり得る(後述)。物体光の開口数NAは、物体光を記録した記録面すなわち受光素子の受光面の開口数である。

【0033】
工程(S7)の光強度計算工程では、合成光波Hから、再生面z=zにおける画像S=|Hが再生される。画像Sは、モニタ画面に画像として表示することができる。すなわち、合成光波Hは、入射方向を変えて大開口数のホログラムとして記録した物体光と照明光のホログラムから物体光と照明光とを再生し、照明光の位相情報を使って物体光を計算機合成したものであり、開口数が1を超える光学系で物体光を記録したホログラムに相当する。開口数が大きいほど高分解能が得られることから、開口数が1を超える物体光を表す合成光波Hを用いることにより、従来の光学顕微鏡の分解能の限界を超える超高分解能の画像を再生できる。

【0034】
(詳細説明、データ取得工程S0:透過型)
以下では、上記の各工程を詳述する。データ取得工程(S0)は、例えば、図2、図3に示す透過型のデータ取得装置10を用いて実行される。オフアクシスホログラムILRは、図2に示す光学系3で取得される。このデータ取得装置10は、インライン球面波参照光Lを生成する集光レンズ30と、オフアクシス球面波参照光Rを生成する微小球M(例えば、金などの金属球)と、参照光L,Rの干渉縞の光強度を電気信号に変換して出力する受光素子4と、受光素子4からの出力をホログラムとして記録する記録部5とを備えている。集光レンズ30と微小球Mには、それぞれ互いにコヒーレントな光L,Rが入射される。

【0035】
集光レンズ30は、受光素子4に対してインライン配置とされている。集光レンズ30に入射される光Lは、物体6が配置される位置(記録する物体光の発生位置)と想定される点P1で集光した後、広がって受光素子4に至るインライン球面波光Lとなる。微小球Mは、受光素子4に対してオフアクシス配置とされている。微小球Mに照射される光Rは、その微小球Mの位置する点P2から広がって受光素子4に至るオフアクシス球面波光Rとなる。参照光L,Rは、それぞれの球面波光源である点P1,P2(仮想点光源)が互いに近接する状態で生成される。従って、参照光L,Rは、受光素子4の受光面の周辺部においても、空間周波数の低い干渉縞を生成する。このような光学系3により、大開口数のオフアクシスホログラムILRの記録が実現される。

【0036】
オフアクシスホログラムIOQLのデータは、図3に示す光学系3で取得される。この光学系3は、上述の球面波参照光Lを生成する集光レンズ30に替えて、球面波照明光Qを生成する集光レンズ31が備えられている。微小球Mと受光素子4の配置およびこれらによって生成される参照光Rは、上述の図2の場合と厳密に同じ条件に保たれている。集光レンズ31による集光位置には、透過画像を取得する半透明の物体6が配置されている。集光レンズ31には、その光軸に対して傾いた角度ψを有する光Qが入射される。角度ψの光Qを発生させるために、集光レンズ31の入り口側に、レンズの光軸に対して直交し、かつ互いに直交する2軸の回りに傾動する反射鏡を配置する。この反射鏡と集光レンズ31とは、物体に対する照明光Qの入射方向を変える角度変更部を構成する。集光レンズ31の光軸に直交する方向から、集光レンズ31の入り口側の開口よりも大きな径を有する平行光を反射鏡に入射させる。傾動した位置の反射鏡によって反射した光の一部が、傾いた角度ψを有する光Qとなって集光レンズ31の開口に入射される。

【0037】
光Qと参照光Rは、互いにコヒーレントな光である。光Qは、集光レンズ31を通過後、角度ψの大きさに応じて、光軸位置から外れた点P3(集光点)に集光し、その後広がって受光素子4に至る照明光Qとなる。照明光Qは、集光点P3を有するので、種々の方向に伝搬する光の集まりである。また、集光レンズ31に入射する光Qのレンズ光軸からの偏角(角度ψ)を変化させることにより集光点Pの位置が光軸に直交する方向に略平行移動し、照明光Qによって照明される物体6の局在領域(点P4で代表する)に入射する照明光Qの入射方向が変化する(後述図4参照)。このような大きな径の平行光と反射鏡と集光レンズ31とを用いる角度変更部は、細い光ビームと回折格子等を用いる角度変更部に較べて、簡単な装置で容易に照明光Qの方向を制御することができる。

【0038】
物体6の点P4は、照明光Qによって照明され、そこから球面波状に物体光Oが発生する。物体光Oと、物体6を透過した照明光Qと、参照光Rとは、互いに干渉して受光素子4の受光面で干渉縞を発生し、その干渉縞が大開口数のオフアクシスホログラムIOQRとして記録される。オフアクシスホログラムIOQRは、物体光Oと照明光Qの両方の情報を含むホログラムである。本画像再生方法は、画像再生に照明光Qの位相情報を用いるので、オフアクシスホログラムIOQRから照明光Qの情報を取り出す必要がある。そこで、照明光Qが上述の集光点P3を有する特性を生かして、その集光点において、広く分布した物体光Oや参照光Rから区別して照明光Qが抽出される。

【0039】
集光レンズ31に対する光Qの入射条件(上記の角度ψなど)を変えることにより、物体6に対する照明光Qの入射方向θ,j=1,・・,Nを変えた照明光Q,j=1,・・,Nが得られる。これらの照明光Qを用いて、各入射方向に対する複数のオフアクシスホログラムIOQR,j=1,・・,Nが取得される。この入射方向θは、3次元極座標における2個の偏角(方位角と天頂角)をベクトル的に表現するものである。方位角をα、天頂角をβで表すと、入射方向θは、θ=(α,β)と表される。入射方向θを変化させることによって多方向からの照明が行われる。多方向からの照明光が集中する位置における物体の画像が、ホログラフィック顕微鏡による画像として再生される。

【0040】
上述の集光レンズ30,31は、互いに同じものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。集光レンズ30による集光位置(点P1)と微小球Mの位置(点P2)とは、いずれも仮想点光源と考えられ、これらは互いに近接配置される。また、集光レンズ31による照明光Qの集光位置(点P3)も仮想点光源と考えられ、その点P3の周辺が物体光Oの発生位置である(局在領域、点P4)。これらの点P1~P4は、互いに近接した条件とされている。これにより、大開口数のホログラムを取得して、画像再生に用いることができる。逆に、所望の大開口数のホログラムを取得して画像再生ができるように、このような光学系3を構成すればよい。

【0041】
点P2~P4間の位置関係に対する条件を示す。ホログラムを記録する受光素子の受光面上の任意の1点から点P2、点P4を望む角を角度χ、受光素子の画素間隔をd、光の波長をλとする。物体光Oと参照光Rがつくる受光素子上の干渉縞を観測可能とする条件は、干渉縞の間隔が画素間隔dの2倍以上となることが必要であることから、χ<λ/(2d)となる。また、物体光Oと参照光Rとを記録したホログラムをフーリエ変換して、物体光Oと参照光Rとを分離可能とするための条件から、参照光Rをどれだけオフアクシスとするかというオフアクシスの条件が決まる。これらにより、点P2の配置可能条件が決まる。

【0042】
(大開口球面波参照光R,Lについて)
大開口数の物体光をホログラムとして記録するためには、開口数の大きい参照光Rが必要不可欠である。上述の微小球Mを用いずに、例えば集光レンズを使って参照光Rを生成すると、物体光Oと参照光Rとを重ね合せるためにハーフミラーが必要になり、ハーフミラーを使用すると開口数が1に近いような大開口数物体光を記録することが困難になる。本実施形態では、2枚のオフアクシスホログラムILRとIOQRを使って除算処理によって複素振幅インラインホログラムJOQLを求める。この処理により、参照光Rは打ち消し合ってJOQLの中には現れない。従って、オフアクシスホログラムILRとIOQRを記録できるのであれば参照光Rの正確な空間分布は分からなくてもよい。これに対し、インライン参照光Lは物体光記録において基準になる光波であり、参照光Lとして空間分布が正確に求められる球面波を用いる。

【0043】
本実施形態では、半径が数十μm程度の微小球Mに細い光ビームを照射して開口数の大きい光として反射させ、この光をオフアクシス参照光Rとして利用する。微小球Mの使用によってハーフミラーが不要になり、記録物体光の開口数を1近くまで拡大することができる。一方、開口数の大きい集光レンズに平行光を入射して高精度の大開口数球面波を生成し、これをインライン球面波参照光Lとして用いる。球面波参照光Lは、微小球Mからの反射光を参照光Rとして、オフアクシスホログラムILRとして一枚だけ記録される。

【0044】
微小球Mは、集光レンズとは異なり、大きな空間を占有することなく、オフアクシス球面波参照光Rを生成する。微小球Mは、その凸状の微小球面による光反射によって、ビーム状の光から球面波を生成する。微小球Mに替えて、凹状の微小球面による光反射によってビーム状の光から球面波を生成するようにしてもよい。また、ビーム状の光と微小球面に替えて、集光する光と小さな平面反射鏡とを用いて、その集光位置の近くで反射させて、オフアクシス球面波参照光Rを生成してもよい。なお、各オフアクシスホログラムIOQR,j=1,・・,Nを取得する間、インライン球面波参照光LのオフアクシスホログラムILRを取得したオフアクシス球面波参照光Rの光学的条件を維持する必要がある。

【0045】
(照明光Qについて)
物体中の注目点以外のある位置で集光する光を照明光Qとして用いると、ホログラムから再生される照明光Qはその位置でスポット状に集光する。これに対してホログラムから再生される物体光Oは照明光Qが集光しているその位置を広がった状態で伝搬する。この照明光Qの集光性を利用すると、物体光Oと照明光Qとを効果的に分離して取り出すことができる。照明光Qは、開口数の大きい集光レンズを使って平行光をスポット状に集光し、集光した光、または集光する光として構成され、これを使って物体6を照明する。照明光Qの方向は、種々の方法で変えることができる。集光性を有する光で照明すると横方向の変位に対して光の伝搬方向を替えることができるので、照明光Qを横方向に少し移動させるだけで、ある位置における照明光の方向を容易に変えることができる。上述したように、集光レンズ31に入射する平行光の方向を反射鏡を使って調整し、照明光の位置を移動させることができ、これにより照明光Qの物体への入射方向を容易に変化させることができる。

【0046】
図4(a)(b)は、上述の図3における光学系3による多方向照明と物体光の発生の様子を示す。図4(a)に示すように、逆円錐形状に集光する照明光を、互いに平行移動させると、各照明光が形成する円錐における互いに近い側の母線に沿った照明光Q1,Q2は、物体6における下面側の領域6aに、互いに逆の入射方向で入射する。ここで、平行光から円錐形状に集光する照明光は、頂点を共有し互いに同軸かつ頂角の異なる無数の円錐状の光の集合である。照明光Q1,Q2は、互いに平行移動した頂角が同じ円錐の母線に沿った光である。このような照明光Q1,Q2等によるホログラムデータを用いた再生画像は、領域6aで最も鮮明で高解像度の画像が得られる。また、領域6aの上方の物体6の厚みの中も入射方向が互いに同様に変化した照明光Q1,Q2等によって照明されて、物体光が発生しているので、画像の再生条件を変えることにより、その厚み部分の画像を再生して観察できる。

【0047】
また、図4(b)の場合、照明光Q1,Q2が物体6における上面側の領域6bに集中しており、この照明光Q1,Q2に基づいて画像を再生すると、この領域6bで最も鮮明で高解像度の画像が得られる。しかしながら、領域6bの下方の物体6は、照明光Q1,Q2によっては、何ら照明されてなく、物体光も発生していないので、これらの部分の画像を再生して観察することはできない。再生条件を変更することにより、照明光による照明位置と物体6との相対的な位置関係を変更した画像を再生でき、観察する位置を選択できる。また、ホログラムを取得する条件を変更することにより、図中の領域6cを観察領域とするように物体の相対的な位置を設定することもできる。さらに、領域6aや領域6bの位置を平行移動させて、各平行移動した位置でホログラムを取得することにより、物体6上を走査した広い再生画像を生成することができる。

【0048】
図5は、多方向からの細いビーム状の照明光を生成する例を示す。この光学系(角度変更部)は、平面内で互いに直交方向に形成された回折格子を有する回折素子Grと、回折素子Grの法線方向軸を囲むように、矩形4辺に配置して互いに対面させた4つの反射鏡Mrとを備えている。回折素子Grに垂直に光源光Qsが入射されると、4つの1次回折光Q1~Q4と、1つの0次回折光とが発生する。回折素子Grを通過して直進する0次回折光は遮蔽板で遮断する。回折光Q1~Q4は、反射鏡Mrによって反射される。この光学系により、回折光Q1~Q4の全てが、1つの点6pを通過するように、また、対称的に設定できる。点6pの位置に物体を配置することにより、回折光Q1~Q4を照明光Q1~Q4として用いて、物体を4方向から照明することができる。照明光Q1~Q4は、点6pを通る法線方向軸の回りの偏角(方位角α)が互いに90°間隔であって互いに同一の天頂角βを有して成る入射方向θ,j=1~4からの照明光である。また、この構成は、光源光Qsを太い平行光として点6pの位置を集光レンズの入射側開口の位置とすることにより、上述の図3における光学系3の実現に適用できる。回折素子Grは、平面内に1方向のみに形成された回折格子とすることもできる。この場合、回折素子Grを、その法線方向軸回りに順次回転して、任意の方位角αを有する入射方向θからの照明光を生成できる。

【0049】
図6、図7は上述の図5の光学系を応用したデータ取得装置10を示す。図6と図7の関係は、上述の図2と図3の関係に対応する。図6(a)(b)に示すデータ取得装置10の光学系3によって、インライン球面波参照光LのオフアクシスホログラムILRのデータが取得される。データ取得装置10は、互いに対角方向にある4方向からの照明光Q1~Q4のホログラムを取得できるように、受光素子4の他に、4つの受光素子41~44を受光素子4の4隅に備えている。

【0050】
インライン球面波参照光Lは、集光点P1を有する集光レンズ30によって生成される。各受光素子4,41~44は、それらの光軸上、すなわち各受光素子の中心を通る法線方向の軸上に、点P1が位置するように配置されて、参照光Lに対してインライン配置となっている。参照光Rは、点P2位置の微小球Mによって生成される。点P1,P2は互いに近接して配置されている。参照光L,Rは、受光素子4,41~44の各受光面を照射する大きな開口数を有する。各受光素子4,41~44に入射する参照光LのホログラムILRが、各受光素子4,41~44ごとに取得される。集光レンズ30として開口数の大きなレンズが入手できない場合に、参照光Lの開口数を1に近づけることができるようにするには、直径が光の波長以下のピンホールを点P1に配置すればよい。ピンホールは、例えば、ガラス上の金属薄膜のリソグラフィによって形成できる。参照光Lの開口数は、ピンホールの回折効果によって1に近づけることができる。

【0051】
図7(a)(b)に示すデータ取得装置10の光学系3によって、物体光Oと照明光Qをそれぞれ記録したオフアクシスホログラムIOQR,IQR,j=1~4のデータが取得される。この場合、例えば、照明光Q1で物体6を照明すると、入射方向θ(j=1)についての物体光O1と照明光Q1のホログラムIOQRが受光素子4で取得され、同時に、照明光Q1のホログラムIQRが受光素子41で取得される。照明光Q1のホログラムIQRは、照明光Q1の情報を取得するためのものであるが、通常、ホログラムIQR中に物体光O1が混入している。そこで、各照明光Qは、例えば、物体6を透過後に集光して広がるような集光点を有する細いビームを上述の図5における光源光Qsとして用いて生成される。このような集光点を有する照明光Qを用いることにより、その集光点において、広く分布した物体光Oや参照光Rから区別でき、後処理によってホログラムデータから照明光Qを抽出することができる。また、物体光Oと照明光QのホログラムIOQRは、細いビームを光源光Qsとして用いることにより、実質的に照明光Qを含まないホログラムとすることができる。

【0052】
(データ取得工程S0:反射型)
図8(a)(b)は、反射型のホログラフィック顕微鏡におけるデータ取得装置10を示す。オフアクシスホログラムILRのデータは、図8(a)に示す光学系3で取得される。光学系3は、受光素子4の正面に配置したハーフミラーHMと、インライン球面波参照光LをハーフミラーHMで反射させて受光素子4に照射する集光レンズ30と、ハーフミラーHMを通してオフアクシス球面波参照光Rを受光素子4に照射する集光レンズ32と、を備えている。参照光Lの集光点P1の近くに物体6を配置することが想定され、集光レンズ30の対向位置に照明光用の集光レンズ31を配置することが想定されている。参照光Lと参照光Rの各集光点P1,P2の位置、および物体6からの物体光の発生点の位置は、互いに近接する配置とされている。これにより、大開口数のホログラム取得が可能となる。なお、インライン球面波参照光Lは、ホログラフィック画像処理の基準となる光である。従って、光学系3は、参照光Lに擾乱を与えないように、参照光LがハーフミラーHMを通過しない構成となっている。

【0053】
オフアクシスホログラムIOQRのデータは、図8(b)に示す光学系3で取得される。この光学系3では、上述の集光レンズ30の位置に物体6が配置され、ハーフミラーHMを挟んで物体6に対向する位置に、照明光Q用の集光レンズ31が配置される。物体6の上には、照明光Qの一部を反射させるカバーガラス61が配置されている。集光レンズ31に入射される光Qを角度ψで示すように左右に、より一般的には歳差運動的に、振ることにより、物体6を照射する照明光Qの入射方向が変化する。各入射方向の照明光Qによって照明される共通の局在領域が、画像を取得して再生される注目領域(観察領域)である。物体光Oは、ハーフミラーHMで反射して受光素子4に入射する。照明光Qの一部は、カバーガラス61で反射されて受光素子4に入射する。受光素子4に至った物体光Oと照明光Qは、参照光Rによって、共通の大開口数のオフアクシスホログラムIOQRとして記録される。オフアクシス球面波参照光Rは、これらのホログラムを記録する間、参照光LのオフアクシスホログラムILRを取得した光学的条件に維持される。

【0054】
カバーガラス61は、照明光Qを正確に再生するために用いられる。カバーガラス61の平面の平坦度は、その表面の凹凸変化が照明光Qの波長λ程度以下とされる。反射によって得られた照明光Qのデータは、物体光Oが発生している位置における照明光となるようにデータ処理される。すなわち、照明光Qは、カバーガラス61で反射された位置まで逆向きに伝搬され、その後、もとの照明光の進行方向に沿って媒質の屈折率を考慮しつつ、カバーガラス61の内部に伝搬される。

【0055】
カバーガラス61に替えて、例えば、エレクトロクロミズムの原理に基づく調光ミラーデバイスを用いることにより、照明光Qの情報を単独で、オフアクシスホログラムIQRとして取得することができる。これにより、カバーガラス61や物体6の配置を操作することなく、調光ミラーデバイスによる反射と透光とを電気的に切り替えて、照明光Qの反射光だけを、物体光Oと分離して効率的に記録することができる。この場合、オフアクシスホログラムIOQRから照明光Qの情報を抽出する処理が不要となる。また、後述の偏光および偏光板を用いる方法と組み合わせて、物体光Oを照明光Qから分離して効率的に記録することができる。また、カバーガラス61の上面には、例えば、光を通さない金属蒸着膜層などによって形成した、開口を有するマスクを設けることが好ましい。マスクの開口は、例えば、物体6の観察領域を限定し、かつ照明光Qを通過させる大きさに制限する。このようなマスクにより、物体6の内部や非観察領域で発生する多重反射光などの擾乱光(バックグラウンド光)が受光素子4に入射するのを防止でき、高品質のホログラムを取得できる。

【0056】
図9(a)(b)は、多方向からの細いビーム状の照明光Qを用いる場合の、反射型のデータ取得装置10を示す。受光素子4に対向して物体6が配置され、物体6の表面には、照明光Qの一部を反射するカバーガラス61が配置されている。この反射型のデータ取得装置10の光学系3は、上述の図6(a)(b)、図7(a)(b)に示した透過型の光学系3における照明光Q1~Q4を、受光素子4の側方側から物体6の表面に入射させるように構成したものである。受光素子4によって、照明光Q1~Q4による物体光Oと照明光QのホログラムIOQR,j=1~4のデータが取得される。ホログラムIOQRは、実質的に照明光Qを含まないホログラムとすることができる。

【0057】
受光素子4の周辺に配置した受光素子41~44によって、照明光Q1~Q4のホログラムIQR,j=1~4のデータが取得される。各受光素子41~44には、参照光Rと照明光Q1~Q4の他に、物体光Oが入射する。そこで、カバーガラス61で反射した後に集光する集光点を有する照明光を用いることにより、ホログラムIOQRから照明光Qの情報を抽出容易とする。また、照明光Qを単独で記録するために、カバーガラス61に替えて、エレクトロクロミズムの原理に基づく調光ミラーデバイスを用いて、照明光Q1~Q4のホログラムIQR,j=1~4を取得するようにしてもよい。

【0058】
(画像再生の工程(S1乃至S7)の詳細)
以下では、ホログラムのデータ処理等について、数式表現を用いて説明する。各式中の係数、引数、添え字などは、一般的な表現と意味に解釈される。また、以下の各式において、位置座標(x,y)の明示、各入射方向θ,j=1,・・,Nを区別する添え字jなどは、適宜省略される。ホログラムの取得と画像再生には、参照光R,L、物体光O、照明光Q、物体光Oと照明光Qの混合光などが関与する。なお、数式の表記上、物体光Oと照明光Qの混合光を混合光Tと表記する。同様に、このような混合光に関する各ホログラムについての表記を適宜改めてIOQRをITR,JOQRをJTR,JOQLをJTLで表記する(IOQR=ITR,JOQR=JTR,JOQL=JTLである)。

【0059】
そこで、受光素子4の受光面(平面であると想定されている)における位置座標(x,y)を用いて、参照光R(x,y,t),L(x,y,t)、および混合光T(x,y,t)を、それぞれ一般的な形で、下式(1)~(3)のように表す。これらの光は、互いにコヒーレントな角周波数ωの光である。受光素子4の表面における干渉縞の光強度ILR(x,y),ITR(x,y)は下式(4)(5)となり、これらがオフアクシスホログラムとして記録される。

【0060】
【数1】
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【0061】
(フィルタリング工程S1,S2)
上式(4)(5)に空間周波数フィルタリングを適用して各式の右辺第3項のみを取り出す。空間周波数フィルタリングは、上式(4)(5)を空間周波数の空間における表現にするフーリエ変換と、バンドパスフィルタによるフィルタリングと、その後の、逆フーリエ変換とによって行われる。この工程により、参照光Lを記録した複素振幅ホログラムJLR、および混合光Tを記録した複素振幅ホログラムJTR(=JOQR)が、下式(6)(7)に得られる。これらはいずれもオフアクシスホログラムである。参照光R,Lが球面波とされていることにより、空間周波数空間において、光強度成分および共役像成分から、直接像成分を分離することができる。なお、受光素子4における画素が画素ピッチdで2次元配列されているとすると、受光素子4を用いて記録可能なホログラムの最大空間周波数は、f=1/dとなる。

【0062】
【数2】
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【0063】
(インライン化変調工程S3)
得られたJLRによってJTRを割ると、式(6)(7)から参照光Rの振幅Rと位相φとを取り除くことができる。この除算処理により、像再生に用いる混合光Tの複素振幅ホログラムJTLが、下式(8)に得られる。この割り算の処理は、空間ヘテロダイン変調の処理であり、かつ、強度に対する処理でもあり、オフアクシスの複素振幅ホログラムJTRから、参照光Rの成分(強度と位相の両方)を除去する処理である。数式上には現れていないが、参照光Rがオフアクシス球面波参照光Rであり、参照光Lがインライン球面波参照光Lであることにより、JTLは複素振幅インラインホログラムJTL(=JOQL)となり、これは大開口数を有するホログラムとなる。

【0064】
【数3】
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【0065】
(照明光分離工程S4)
照明光分離工程(S4)では、物体光Oを含む複素振幅インラインホログラムJTLに対し、インライン球面波参照光Lの位相φを用いて空間ヘテロダイン変調を行い、再生面z=0における光波gを生成する。その後、平面波展開を用いて前記光波gを特定の再生面z=zに伝搬させる。これにより、複素振幅インラインホログラムJTLから、特定の再生面z=zににおける物体光Oと照明光Qの再生光波である物体光再生光波hを生成する。再生光波hは物体光Oと照明光Qを含んでいる。その再生光波hから、照明光Qの再生光波cを分離抽出する。特定の再生面z=zは、混合光Tの中の照明光Qの光波が局在し、物体光Oが広がる位置の再生面であり、照明光Qの集光点の位置が選ばれる。

【0066】
空間ヘテロダイン変調のために、インライン球面波参照光Lの受光素子4の受光面における位相φ(x,y)が、参照光Lが球面波であることを用いて、関数式の形で求められる。位相φを用いる空間ヘテロダイン変調は、上式(8)に、exp(iφ(x,y))を乗じることで実施される。この空間ヘテロダイン変調の結果、下式(9)に示す混合光Tの複素振幅インラインホログラムg(x,y)が得られる。この複素振幅インラインホログラムg(x,y)は、上述の再生面z=0における光波gに対応するものであり、以下では、このホログラムを光波g(x,y)または光波gなどと称する。インライン球面波参照光Lは、このように、オフアクシスホログラムから参照光Rの成分(強度と位相の両方)を除去し、自らの位相も除去してオフアクシスホログラムからインラインホログラムを導出する基準光として重要な役割を担っている。また、球面波の位相φ(x,y)は数学的に正確に求められるので、得られる光波g(x,y)も数学的に正確なものとなる。

【0067】
【数4】
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【0068】
この光波g(x,y)は、受光素子4の受光面における混合光Tの波面、すなわち、受光面の法線方向にとられたz軸における受光面の位置をz=0としたときのz=0における混合光の光波分布を表す。光波g(x,y)は、ホログラフィック顕微鏡による観測対象となる局在領域(物体光の光源)からの光を記録したものであり、その空間周波数は、凸レンズによるニュートンリングのごとく、平面状の受光面の中心から離れるにつれて大きくなり端で最大になる。開口数が大きくなればなるほど、混合光を表す光波g(x,y)の空間周波数帯は広くなる。物体光の光源近くに局在した仮想点光源を有する球面波参照光R,Lを用いてホログラムを記録することにより、平面波参照光を用いる場合よりも、ホログラムにおける空間周波数を低く押さえることができる。受光素子を望む開口半角をθNAとするとNA=sinθNAであり、開口端部における干渉縞の間隔はλ/sinθNAすなわちλ/NAとなる。従って、ホログラムの開口数NAおよび光波長λを用いると、光波g(x,y)の最大空間周波数はNA/λである。

【0069】
(平面波展開)
z軸上の任意位置での光波(波面)は、以下に示す平面波展開法によって、受光面上の光波g(x,y)から再生できる。平面波展開法では、光波gをフーリエ変換した結果である変換関数Gを求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および変換関数Gを用いて混合光Tを、平面波の重ね合わせによって再生する。電磁波に関するヘルムホルツ方程式の厳密解として球面波と平面波がある。この厳密解である平面波を用いて混合光T、および物体光Oや照明光Qを記録したホログラムを展開すると、それらの光の正確な光波を再生できる。そこで、まず、上式(9)のg(x,y)をフーリエ変換して、z=0における変換関数Gを、下式(10)のように求める。この変換関数Gは、混合光Tの空間周波数スペクトルである。

【0070】
【数5】
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【0071】
次に、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および上記の変換関数Gを用いて、下式(11)に示すように、z=zにおけるxy平面上の混合光Tの光波h(x,y)を再生する。再生光波h(x,y)は、混合光Tの空間周波数スペクトルである変換関数Gの重み付けによって平面波を重ね合わせることにより求められる。再生位置は任意の値とすることができるので、zは光波h(x,y)から照明光の光波cを分離しやすい位置の(値)とする。ここで、(u,v,w)におけるu,vはそれぞれx,y方向の空間周波数であり、z方向の空間周波数wは、下式(12)に示すように、平面波の分散式から求められる。式(12)におけるλは光波長であり、nは、光路上の媒質の屈折率である。式(11)の光波h(x,y)は、受光素子4の受光面における境界条件としての光波g(x,y)を満たすヘルムホルツ方程式の厳密解である。

【0072】
【数6】
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【0073】
式(11)の光波h(x,y)は、その絶対値の2乗|h(x,y)|によって求めた画素毎の光の強度を電子ディスプレイに表示することにより、無歪の画像として見ることができる。そのような画像中の強度の大きな領域が照明光Qの存在する領域として特定できる。そのような特定領域のデータを、光波h(x,y)のデータから抽出することにより、照明光Qの光波c(x,y)を分離して取得できる。

【0074】
(光波計算工程S5)
上述のz=zにおける光波h(x,y),c(x,y)を、画像再生用の任意の再生面z=zまで伝搬させた光波h(x,y),c(x,y)を求める。その再生面z=zの位置で、光波c(x,y)の位相成分ξを、ξ=c/|c|によって求める。光波h(x,y)は、上式(11)を用いて、z=zからz=zまで伝搬させることができる。光波c(x,y)を伝搬させるために、光波c(x,y)から、上式(10)のG(u,v)と同様の変換関数B(u,v)を下式(13)によって求める。また、z=zまで伝搬させた光波h(x,y),c(x,y)は、それぞれ下式(14)(15)となる。下式(14)の光波c(x,y)を用いて、位相成分ξ=c/|c|が求められる。

【0075】
【数7】
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【0076】
(位相調整工程S6)
この工程は、大開口の画像を再生するための重要な工程である。位相調整工程(S6)は、混合光T(物体光Oと照明光Qとの混合光)の光波h(x,y)から、照明光Qの光波c(x,y)の位相成分を除去する工程である。位相成分の除去は、光波h(x,y)を位相成分ξによって除算して、位相調整再生光波h/ξ、すなわち、h/(c/|c|)を求めることで実施される。上述の各工程(S2乃至S6)の処理は、各入射方向θ,j=1,・・,Nの光について行われる。このことを明示して位相調整再生光波h/ξを表示すると、h/ξ,j=1,・・,Nとなる。

【0077】
(光波総和工程と光強度計算工程S7)
これらの工程において、画像再生用の再生面z=zにおける光波である合成光波Hおよび画像Sが、下式(16)(17)によって生成される。

【0078】
【数8】
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【0079】
画像Sは、画素毎の光の強度を電子ディスプレイに表示することにより、無歪の画像として見ることができる。無歪の画像は、物体光O(混合光T)の発生位置と受光素子4との間に結像レンズを設けないことによって実現される。式(14)(15)におけるz=zの値を変えることにより、その位置での画像を再生して表示することができる。

【0080】
図10、図11は、上述の画像再生方法における、開口数の拡大を周波数空間において概念的に示す。これらの図は、上述の図6(a)(b)、図7(a)(b)に示した、広がりの少ないビーム状の照明光Q1~Q4を用いて透過型の装置による画像再生を想定している。照明光Qは、真四角の受光素子4の対角線方向(入射方向θ,j=1~4)から照射されている。ここで、受光素子4の開口数をNA、照明光Qの斜め入射に基づく開口数をNAとして、波長をλを用いて、a=(NA)/λ、b=(NA+NA)/λを定義する。周波数空間uvにおいて、±aの領域は、受光素子4によって記録できる空間周波数領域である。

【0081】
図10(a)(b)は、上述の位相調整工程(S6)の処理を行う前の、照明光Q1~Q4と物体光O1~O4(これらの物体光は、一般に照明光も含む混合光である)の周波数分布を示す。照明光Q1~Q4は、受光素子4の外周の受光素子41~44によって記録されており、位相調整前の図10(a)において、±aの領域の外部に現れている。また、物体光O1~O4は、受光素子41~44の配置中心にある受光素子4によって記録されており、位相調整前の図10(b)において、±aの領域に現れている。これらの物体光O1~O4は、物体に対して斜め入射した照明光Q1~Q4によって発生した光であり、物体を正面から照明したときには得られない光である。これらの物体光O1~O4は、斜め入射の照明光Q1~Q4によって空間周波数が変調された光となっている。

【0082】
図11(a)(b)に示すように、位相調整工程(S6)の処理を行った後では、斜め入射照明光による周波数変調によって画像の空間周波数がシフト、すなわち復調されている。位相調整後の図11(a)に示すように、位相調整を行うと、斜め入射の照明光Q1~Q4は中央の低周波数側に移動する。また、物体光O1~O4については、位相調整後の図11(b)に示すように、h/ξによる位相調整によって、画像の空間周波数は復調され、各物体光Oの空間周波数は、それぞれ対応する照明光Qの位相に基づいて、対角方向に、高周波数領域に向けて移動する。

【0083】
画像の空間周波数領域が拡大されることにより、高分解能の画像が得られる。これを開口数の観点から見ると、位相調整後の光波h/ξの加算によって、物体光の開口数は(NA+NA)に拡大されることになる。少なくとも2方向からの照明光によって、部分的に解像度を向上できる。より多くの入射方向からの照明光を用いることにより、空間周波数空間をより満遍なく物体光のデータで覆うことができ、実空間における各方向の解像度を満遍なく向上させることができる。また、光波h/ξを多重に加算することにより、スペックルの影響を減らしたり、感度を上げたりすることができる。

【0084】
上述の光波h/ξの加算は、観察する物体光Oの発生位置において各照明光Qのz軸方向の波数kzが所定の許容範囲内で同じとなる条件を満たす照明光Qについて行われる。各照明光Qの波数kzを同じとするには、各照明光Qの入射方向θ=(α,β)における方位角αは任意であるが、天頂角βを同じにする必要がある。このような条件により、加算結果であるΣh/ξの位相におけるkz(z-z)に起因するz依存性をなくことができる。このz依存性は、焦点深度に関連する。従って、焦点深度の許容範囲に基づいて、天頂角βの振れ幅の許容範囲が設定される。なお、物体光波hには、再生面z=z以外の空間で発生した物体光の情報も含まれている。

【0085】
(多方向入射照明光を用いた高分解能画像の記録と再生)
ここで、開口数と分解能について説明する。波長λの正面入射の照明光、つまり入射角θ=0の照明光を間隔dの回折縞(回折格子として作用する)に入射すると、回折角θと波長λおよび間隔dとの間に関係式、d・sinθ=λが成り立つ。回折縞の空間周波数uは、u=1/d=sinθ/λである。開口数がNAである正方形の受光素子で回折光を記録する場合、記録可能な回折縞の空間周波数帯域は、-(NA)/λ<u<(NA)/λと表せる。この空間周波数帯域に対する理論分解能δは、δ=λ/(2NA)である。受光素子の開口数はNA<1であるので光学的な分解能限界はλ/2となる。これは、伝搬する物体光を開口数NAのホログラムとして記録したときの分解能限界を表す。

【0086】
照明光の入射角θをゼロ以外とする場合には、d・sinθ+d・sinθ=λの関係式から、回折縞の空間周波数uは、u=1/d=(sinθ+sinθ)/λである。従って、開口数NAの正方形受光素子で記録する場合、記録可能な回折縞の空間周波数帯域は、(sinθ-NA)/λ<u<(sinθ+NA)/λと表せる。つまり、斜め入射の照明光によって周波数シフトが発生する。照明光Qの開口数をNAで表し、照明光の入射角θを-NA<sinθ<NAの範囲で変化させると、記録可能な回折縞の空間周波数帯域を、(-NA-NA)/λ<u<(NA+NA)/λの範囲まで拡大することができる。

【0087】
空間周波数uが、-(1/λ)以下および(1/λ)以上の波は、入射角θ=0の照明光の場合には伝搬できないエバネッセント波となるが、斜め入射照明光の場合には照明光によって周波数変調されて伝搬可能な波に変換される。上式中の(NA+NA)は照射光の方向変化によって拡大された結果の開口数を表し、各開口数NA,NAは、通常、いずれも1より小さく、NA<1,NA<1であるが、照明光の方向を最大限に変えて物体光を記録すると開口数を最大2近くまで拡大できる。また、記録可能な最大の空間周波数帯域は、-2/λ<u<2/λとなる。この空間周波数帯域の幅から決まる分解能限界はλ/4となる。このことは、照明方向を変えながら物体光を記録することにより、分解能限界を2倍近くまで高くできることを示す。

【0088】
記録された物体光Oは、物体内部の各点で照明光Qによって生じた光が重なり合った光であり、各光の位相は、その光が発生する位置において、照明光Qの位相と同じになる。このことを利用して各照明光Q毎に、物体光Oの再生光波から位相成分を除去した位相調整再生光波h/(c/|c|)を求める。この位相調整操作は、各照明光Qに対する物体光Oの位相を互いに規格化する。この除算による位相調整の操作によって、各照明光Qに対して再生面上で生じた物体光の位相が調整される。また、発生時に斜め入射の照明光Qによって周波数変調されて物体光が生じ、記録され、記録された物体光はこの位相調整の操作によって周波数復調される。復調に伴う周波数シフトによって高周波成分が生じる。

【0089】
位相調整再生光波h/(c/|c|)を各照明光Qについて加算して再生面における合成された物体光を求めると、物体光Oを構成する各光の位相は、その光が発生する位置において照明光Qの位相と一致しているので、再生面近傍で発生する物体光は位相調整後の加算によって強くなる。また、位相調整再生光波h/(c/|c|)を各照明光Qについて加算することによって、合成された物体光の空間周波数帯域は広くなり、その結果として、合成された物体光から再生される画像の分解能は高くなる。図12は、これらの画像再生方法の処理の流れをまとめたものである。

【0090】
本実施形態の高分解能ホログラム画像用のデータ処理方法、すなわち、高分解能ホログラム画像再生方法および高分解能画像用のホログラムデータ取得方法によれば、球面波参照光と多方向照明光とで記録した複数の物体光を各照明光の位相情報によって調整して加算するので、物体光の開口数に照明光の開口数を加算した大開口数条件で画像を再生できる。大開口数条件での画像再生により、従来の光学顕微鏡の分解能を超えることができる。また、物体光と照明光とは、原理的に、透過型と反射型のいずれでもホログラムに記録できるので、透過型と反射型のいずれの顕微鏡も実現できる。

【0091】
結像レンズの開口数は1より小さく、通常の光学顕微鏡の分解能は光の半波長を超えることはできない。照明光の方向を変えて物体光を記録すると、より高い次数の回折光まで記録できる。また、通常方法で記録される各物体光を複数枚用いることによっては、分解能限界を超えることはできない。これらの事実はよく知られている。本実施形態は、この限界を超えて超高分解能を達成する方法として、照明光の方向を変えて、複数枚のホログラムに物体光を照明光と共に正確に記録し、記録した複数枚のホログラムの物体光を使い、かつ、照明光の位相情報を用いて、開口数を拡大した物体光を合成する。本実施形態においては、レンズレスホログラフィを用いて、物体光と照明光とを大開口数のホログラムとして記録し、得られたホログラムから照明光を分離し、複数の照明光再生光波と物体光再生光波を使って開口数が1を超える物体光を計算機合成している。このように合成した物体光を使うことにより、高分解能ホログラム画像を再生することができる。

【0092】
(複数受光素子を用いた高開口数での記録)
図13、図14は、複数の受光素子4を用いて物体光を記録する例を示す。通常市販のCCD等の受光素子は、レンズを通して正面からの光を平面の受光面で受光することが想定されているため、受光面への斜め入射光に対して感度が落ちるという問題がある。そこで、複数の受光素子を用いることにより、斜め入射光に対する感度の問題を回避することができる。各受光素子4による記録画像は、座標変換等を含むデータ処理によって、例えば、正面の受光素子4の受光面を画像再生用の再生面z=zとして再生して合成することができる。

【0093】
(複数受光素子間の較正方法)
図15は、上述の図6、図7、図9、および図13、図14に示したような、複数の受光素子を用いて物体光Oや照明光Qを記録した場合の各データ間の較正処理について示す。このようなデータ取得装置の構成の場合、各受光素子の光軸(受光素子の中心法線)上にインライン球面波参照光Lの基準点(集光点P1)が位置するように、各受光素子が配置される(#1)。次に、物体配置位置に、位置と平面を決定できるパターンを有する較正用物体、例えば、ガラス面上の中央に三角形に配置した微小な点パターンを配置する(#2)。中央正面の受光素子の受光面に平行に配置する。その後、較正用物体について、上述の図1におけるデータ取得工程(S0)と同様に、各受光素子によって、ホログラムILR,IOQR,j=1,・・,Nのデータを取得する。

【0094】
その後、入射方向ループj=1,・・,N、受光素子ループj2=1,・・,N2(工程#4~#10)において、受光素子の位置すなわち基準点P1からの距離ρ、および、受光素子の2軸方向の傾き角度γ1,γ2が決定される。工程(#4~#7)では、各受光素子の中心と基準点P1との距離ρを決定する。まず仮の距離ρを設定し(#4)、較正用物体上の点パターンの1つに合焦させ(#5,#6)、距離ρを決定する(#7)。

【0095】
工程(#8,#9)では、距離ρが決定された点パターンを不動点として、再生画像を回転角度γ1,γ2で2軸方向に回転させ、画像全体で合焦した角度を、受光素子の傾き角度γ1,γ2として決定する。距離ρと角度γ1,γ2とが、受光素子配置情報として記録される(#10)。受光素子配置情報(ρ,γ1,γ2)は、各受光素子の画像データを、互いに同一平面内で重ね合わせて合成する際の位置調整情報として用いられる。

【0096】
(画像の高分解能化)
図16、図17(a)(b)は画像の高分解能化、すなわち、画像の面内分解能の向上について示す。この画像の高分解能化によって、画像の拡大が可能になる。高分解能化は、複素振幅インラインホログラムJOQLのサンプリング間隔を細分化して実質的にサンプル数を増やすことで実現される。上述した複素振幅インラインホログラムJOQLは、球面波参照光R,Lを用いて、また、結像レンズを用いることなく求められている。従って、空間サンプリング間隔を細分化して光波長程度まで小さくしたホログラムを作成し、そのホログラムから画像を再生して拡大しても歪みは発生しない。そこで、図16に示すように、この高分解能化の処理工程は、実質的に画素数を増やす画素数増大工程(S4a)と、その後の照明光分離工程(S4b)と、を備えている。これらの工程は、図1に示した照明光分離工程(S4)における、分解能についての改良版になっている。

【0097】
画素数増大工程(S4a)では、図17(a)(b)に示すように、受光素子4の画素ピッチdに対応する空間サンプリング間隔dを有する複素振幅インラインホログラムJOQLに対して、空間サンプリング間隔dを細分化して空間サンプリング間隔δとする。その後、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やす。データ補間の方法として、画像処理における周知の3次式によるデータ補間やsinc関数によるデータ補間を用いることができる。データ補間としてsinc補間を用いれば、3次式を用いた補間に比べて数値計算に時間がかかるが、より正確な結果を得ることができる。複素振幅インラインホログラムJOQL(別の表記でJTL)に対してデータ補間によって画素数を増やした結果を複素振幅インラインホログラムKOQL(別の表記でKTL)と表すことにする。なお、受光素子4の画素ピッチdは、画素の配列方向(xy方向)で互いに異なってもよく、空間サンプリング間隔δも画素の配列方向で互いに異なるものとすることができる。

【0098】
照明光分離工程(S4b)では、ホログラムJOQL(JTL)の代わりにホログラムKOQL(KTL)を用いて、図1に示した照明光分離工程(S4)と同様の処理が行われ、再生光波hの生成、照明光の再生光波cの抽出分離が行われる。これらの再生光波h,cを用いて再生される画像は、分解能がd/δ倍に高められた画像であり、歪みなしで倍率d/δ倍に拡大された画像を得ることができる。画像の大きさ(絶対寸法)は、画素ピッチdを物差しとして計測される。

【0099】
(画像再生の高速化)
図18、図19(a)(b)、図20(a)(b)(c)は、画像再生時の計算量を削減できる高速化処理について示す。高速化処理は、図18に示すように、分割工程(S21)、合成工程(S22)、変換関数生成工程(S23)によって行われる。これらの処理の全体は、上述の式(10)の変換関数G(u,v)の生成についての、計算速度の改良版である。この計算速度の高速化は、上述の式(13)の再生光波cからの変換関数B(u,v)の生成についても同様に適用できる。この高速化は、上述の画素数増大に起因する要請に答えるものである。上述のように、複素振幅インラインホログラムJOQL(すなわちJTL)から高分解能な再生光を再生することができるので、平面波展開を用いて高分解能画像を再生するために、空間サンプリング間隔を光波長程度まで狭くする。このとき、例えば、高速フーリエ変換(FFT)を用いて、妥当な計算時間のもとで数値計算が可能となる範囲に、サンプリングデータ数を抑える必要がある。逆に、計算時間の短縮が図られるならば、サンプリングデータ数をさらに増加させることができ、より高分解能で無歪画像を再生することができる。

【0100】
この高速化は、互いに周波数帯域の異なるデータは波の重ね合わせによって互いに足し合わせた状態で計算処理をすることができる、という原理に基づく。異なる周波数帯域に記録されたそれぞれの情報は空間的に重ねても失われずに保存される。このことを利用することにより、周波数帯域の広いホログラムを分割して重ねて、広帯域でコンパクトな「微小ホログラム」を作成することができる。また、複素振幅インラインホログラムJOQL(JTL)や上式(9)の複素振幅インラインホログラムとしての光波g(x,y)は、これらを分割しても、その分割した各領域に画像を再生するための情報を保持している。ここで改めて、光波g(x,y)をホログラムg(x,y)と呼ぶ。

【0101】
図19(a)は、幅Dのホログラムg(x,y)を幅Δの微小ホログラムg1,g2,g3に分割する様子を示す。このホログラムg(x,y)は、1枚で再生像60を再生できる。このようなホログラムg(x,y)を、図19(b)に示すように、幅Δだけずらしながら重ねたホログラムは、幅Δの周期を有する周期的なホログラムになり、多数の同じ再生像60を幅Δの間隔ごとに再生することができる。計算点数は、重ね合わせた微小ホログラムgの枚数の逆数分に圧縮される。つまり、n枚重ねると、計算量は、1/nになる。照明光複素振幅インラインホログラムb(x,y)についても同様である。

【0102】
そこで、分割工程(S21)において、図20(a)に示すように、例えば、ホログラムg(x,y)を幅Δ,Δ’の数枚の微小ホログラムgに分割し、図20(b)(c)に示すように、各微小ホログラムgを互いに重ね合わせて合成微小ホログラムΣを再生する。この合成微小ホログラムΣに対して、上述の式(10)(11)(12)に基づく計算を行えば、計算時間の短縮が図られる。

【0103】
分割工程(S21)では、ホログラムgを分割して複数の微小ホログラムg,i=1,・・,nを生成する。合成工程(S22)では、微小ホログラムg,i=1,・・,nを互いに重ねて合成した合成微小ホログラムΣを求める。変換関数生成工程(S23)では、合成微小ホログラムΣをフーリエ変換して変換関数G(u,v)を求める。フーリエ変換による変換関数G(u,v)を一度求めておけば、任意の距離z=zにおける光波h(x,y,z)は式(11)より求められる。光波c(x,y)についても、同様に分割して、合成微小ホログラムΠを求め、、合成微小ホログラムΠをフーリエ変換して上式(13)の変換関数B(u,v)を求めることができる。

【0104】
このような画像再生方法によると、FFTを用いた数値計算により、自由焦点画像を容易かつ精度良く、高速に再生することができる。微小ホログラムgの幅Δは、ホログラムg(x,y)の大きさ(幅D)や形状とは無関係に再生画像の大きさに合わせて設定することができる。分割の幅Δが、再生画像の大きさより小さくなると、再生像が隣同士で重なって再生される。従って、例えば、被写体の寸法が0.5mmならば、幅Δは0.5mmよりは大きな寸法にする。

【0105】
(受光素子のダイナミックレンジの確保)
図21は、反射型の場合のデータ取得方法においてホログラムIOQRを記録する際に、受光素子4が受光する物体光Oと照明光Qの両者の光強度を光の偏光を用いて調節することについて示す。物体6から放たれる物体光Oは一般に広い指向性を持ち、また、発生効率が低いので、受光素子4に到達する物体光Oの強度は照明光Qに比べて小さくなる。弱い物体光Oを照明光Qと同時に記録するためには、受光素子4に到達する照明光Qを大幅に減衰させて物体光Oと同じ程度になるまで光強度を小さくする必要がある。

【0106】
そこで、照明光Qを方向Pqに偏光させ、参照光Rを方向Prに偏光させ、受光素子4に入射する照明光Qと参照光Rとを互いに直交する偏光状態とする。受光素子4の前方には、偏光板PPを配置する。共通ホログラムIOQRの記録は、物体光Oと照明光Qの反射光とを偏光板PPを透過させることによって照明光Qの反射光を減衰させた状態で行う。偏光板PPは方向Ppに偏光した光を透過させるものとすると、偏光板PPの配置した位置において、方向Ppと照明光Qの偏光の方向Pqとの角度を直角に近づけることにより、参照光Rは減衰させずに、照明光Qだけを大きく減衰させることができる。また、物体光Oは、その発生時にランダムな偏光状態になると考えられるので、偏光板PPの影響を受けないと考えられる。参照光Rは、本来、独立にその強度を調整できる。従って、参照光Rと物体光Oに対して照明光Qの強度を適切に調整した状態の光を、受光素子4に入射させることができる。このような偏光と偏光板PPとを用いるデータ取得方法により、物体光Oの光強度を保ちながら、受光素子4のダイナミックレンジを確保することができ、鮮明なホログラムを記録することができる。

【0107】
(ホログラム画像再生方法の他の実施形態)
図22、図23は、ホログラム画像再生方法の他の実施形態を示す。この実施形態は、データ取得工程(S30)において、照明光QのホログラムIQRのデータが、物体光Oから分離して取得される場合を想定している。物体光Oのデータは、照明光Qを含まないホログラムIORと、含むホログラムIOQRのいずれでもよい。ここでは代表してIORによって説明している。物体光Oから分離した、照明光Q単独のホログラムIQRは、例えば、反射型の場合に、物体6の全面においたカバーガラス61や、エレクトロクロミズムの原理に基づく調光ミラーデバイスを用いることにより取得できる。照明光Q単独のホログラムIQRが得られることにより、上述の図1に示した照明光分離工程(S4)の処理による、オフアクシスホログラムIOQRから照明光Qの情報を抽出する処理が不要となる。言い換えれば、照明光QのホログラムIQRのデータが得られない場合に、オフアクシスホログラムIOQRから照明光Qの情報を抽出する照明光分離工程(S4)の処理を行えばよい。

【0108】
フィルタリング工程(S31)は、図1におけるフィルタリング工程(S1)と同様である。フィルタリング工程(S32)では、ホログラムIOR,IQRの両方について処理が行われて、それぞれ複素振幅オフアクシスホログラムJOR,JQRが生成される。インライン化変調工程(S33)では、ホログラムJOR,JQRから、それぞれ参照光R成分を除去した複素振幅インラインホログラムJOL,JQLが生成される。

【0109】
光波計算工程(S32)では、照明光分離工程を経ることなく、画像再生用の任意の再生面z=zにおいて各ホログラムJOL,JQLから再生光波h,cの生成、位相成分ξ=c/|c|の算出が行われる。位相調整工程(S35)および光波総和と光強度計算の工程(S36)は、図1の位相調整工程(S6)および光波総和と光強度計算の工程(S7)と同様である。図23は、これらの画像再生方法の処理の流れをまとめたものである。照明光Qの再生光波cについては、ホログラムJQLからz=0での再生光波bの生成、変換関数Bの生成が、上式(9)(10)のg,Gと同様に行われる。その後、最終的に、画像再生用の再生面z=zにおける再生光波cが生成される。

【0110】
(ホログラフィック顕微鏡)
図24は本発明の一実施形態に係るホログラフィック顕微鏡(以下、顕微鏡1という)を示す。顕微鏡1は、入射方向を替えた照明光Qを用いて微小物体6のホログラムを取得するデータ取得部10と、データ取得部10によって取得されたホログラムから画像を再生する画像再生部20と、を備えている。顕微鏡1は、さらに、データ取得部10および画像再生部20を制御する制御部11と、FFT等の計算用プログラム、制御用データ等を記憶するメモリ11aとを備えている。データ取得部10は、光源10aと、角度変更部2と、光学系3と、受光素子4と、記録部5とを備えている。光源10aは、コヒーレント光を放射するレーザである。角度変更部2は、光学系3と組み合わせて用いられ、物体に対する照明光Qの入射方向θ,j=1,・・,Nを順次、同時、または任意の方法で変更する。

【0111】
光学系3は、角度変更部2と組み合わされて、光源10aが放射する光から照明光Q,j=1,・・,N、オフアクシス球面波参照光R、およびインライン球面波参照光Lを構成し、これらの光と照明光Qによって照明される微小物体6から放たれる物体光Oとを伝搬させる。受光素子4は、1または複数用いられ、それぞれ光強度を電気信号に変換して記録部5に出力する。記録部5は、物体光Oと照明光Qの混合光Tとオフアクシス球面波参照光Rとの干渉縞IOQR、オフアクシス球面波参照光Rとインライン球面波参照光Lとの干渉縞ILR等を、光源10aが放射する各入射方向θ,j=1,・・,Nの照明光毎に、受光素子4を用いてホログラムIOQR,ILR,j=1,・・,Nとして記録する。ホログラムのデータは、メモリ11aやデータベースDT1に保存される。他のホログラムIOR,IQRや、複数の受光素子の配置を較正するためのホログラムデータ等も同様に取得保存される。

【0112】
画像再生部20は、フィルタリング部21と、インライン化変調部22と、光波計算部23と、照明光分離部24と、画像計算部25と、表示部26と、を備えている。フィルタリング部21は、記録部5によって記録されたホログラムIOQR,ILR等に空間周波数フィルタリングを適用して、それぞれ、物体光Oと照明光Qを記録した複素振幅オフアクシスホログラムJOQR、およびオフアクシス球面波参照光Rを記録した複素振幅オフアクシスホログラムJLR等を生成する。

【0113】
インライン化変調部22は、フィルタリング部21によって生成された各複素振幅オフアクシスホログラムJOQR等のデータを、フィルタリング部21によって生成された複素振幅オフアクシスホログラムJLRのデータでそれぞれ除算することにより、参照光R成分を除去した複素振幅インラインホログラムJOQL等を生成する。

【0114】
光波計算部23と照明光分離部24とは、光波の再生と伝搬の計算、および照明光の位相を用いた位相調整の処理を行い、照明光分離部24は、さらに、物体光Oと照明光Qの混合光Tから照明光の光波cの分離を行う。すなわち、光波計算部23は、図1に示した光波計算工程(S5)の処理、図22に示した光波計算工程(S34)の処理を行い、照明光分離部24は、図1に示した照明光分離工程(S4)の処理を行う。

【0115】
光波計算部23と照明光分離部24とは、これらの処理を高速、高分解能で行うために、画素数増大部23aと、空間変調部23bと、分割部23cと、合成部23dと、を備え、任意位置で光波を生成するために平面波展開部23eを備えている。画素数増大部23aは、複素振幅インラインホログラムJOQL等の空間サンプリング間隔を細分化し、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やす。空間変調部23bは、画素数増大部23aによって画素数を増やした複素振幅インラインホログラムKOQLから物体光を表すホログラムgを生成する。分割部23cは、ホログラムgを複数枚の微小ホログラムg,i=1,・・,nに分割する。合成部23dは、分割部23cによって得られた各微小ホログラムgを互いに重ね合わせて合成微小ホログラムΣを再生する。これらの処理は、図16に示した画像の高分解能化、図18に示した画像再生の高速化の処理である。

【0116】
平面波展開部23eは、例えば、空間変調部23bが再生したホログラムgをフーリエ変換し、その結果である変換関数Gを求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および変換関数Gを用いて、再生光波hを生成する。また、平面波展開部23eは、合成部23dによって生成された合成微小ホログラムΣをフーリエ変換することにより変換関数Gを求め、これを用いて上記同様に再生光波hを生成する。平面波展開部23eは、照明光についても同様の処理を行う。

【0117】
画像計算部25は、図1に示した光波総和と光強度計算の工程(S7)の処理行い、合成光波Hと画像Sを求める。表示部26は、液晶表示装置などのFPDであり、画像等を表示する。画像再生部20の各部は、表示部26を除いて、コンピュータ上で動作するプログラムとそのサブルーティン群を含むソフトウエアを用いて構成される。

【0118】
(実施例)
図25乃至図30は、原理的な実証実験の実施例を示す。この実施例では、上述の図2,図3に示した照明光用に集光レンズ31を用いる透過型のデータ取得装置を備えたホログラフィック顕微鏡を用いて、USAFテストターゲットの画像を再生した。各ホログラムの取得に、半導体励起固体レーザ(波長532nm、出力50mW)をコヒーレント光の光源として使用し、ホログラムの記録にはカメラリンクCCDカメラを受光素子として使用した。レーザ光を直径約100μmの金球(微小球M)で反射させて開口数の大きい参照光Rを作り、参照光Rと球面波参照光Lが作る干渉縞ILRを記録した。また、USAFターゲットをNA=0.28のレンズで集光した照明光Qで照明し、その照射角(ターゲットへの入射方向)を4方向に変化させて、物体光Oと参照光Rが作る干渉縞IOQRのホログラムを4枚記録した。

【0119】
図25(a)(b)は入射方向を一方向に傾けた照明光で取得したUSAFテストターゲットの1つのホログラムにおける物体光と照明光の再生光波の空間周波数分布を示す。この図は、照明光Qと物体光Oとを含む物体光再生光波hに対応する。図26(a)(b)は上記の再生光波hから照明光Qを分離して生成された照明光再生光波cの位相ξを用いて位相調整(周波数変調)した後の物体光再生光波h/ξの空間周波数分布を示す。位相調整によって、空間周波数分布がシフトしている。図27は、図26(a)の光波と同様に、4方向の入射方向の照明光を用いてそれぞれ取得したホログラムについて、位相調整した4枚のホログラム(再生光波)を互いに加算する様子を概念的に示す。図28は、この処理で合成された再生光波の空間周波数分布を示す。

【0120】
図29は、USAFテストターゲットに対する照明光の入射方向が異なる4枚のホログラムのうちの1枚から再生した画像を示す。図30(a)は、実施例を示し、図29の画像中の四角で示した部分について、入射方向の異なる4枚のホログラムを用いて再生したUSAFテストターゲットの再生画像、すなわち合成光波Hから求めた再生画像を示す。図30(b)は、参考例として、同ホログラムのうちの1枚から再生したUSAFテストターゲットの再生画像を示す。

【0121】
図30(a)の画像において、金球(微小球M)の表面の凹凸により、参照光Rの光強度分布に起因するムラが生じている。参照光Rの情報は、本来、画像再生の処理の中で消去されるべきものであるが、干渉縞ILRの記録と干渉縞IOQRの記録の間に、参照光Rを生成する微小球Mの位置変動などが生じると、参照光Rの情報がノイズとして残ってしまう。図30(a)により、このようなノイズによる画質の低下が確認できる。これらのノイズは、より滑らかな金球を用いて、より安定に金球の保持条件を確保することにより、低減することができる。また、本実施例において、照明光Qの再生光波cは、被写体であるUSAFテストターゲットを透過した照明光Qが一点に集光し、被写体によって散乱された光が集光点の周りに広く分布することを利用して物体光Oから分離した。

【0122】
図30(a)の再生画像では、線間隔0.78μmの最小部分を見分けることができる。1枚のホログラムのNA=0.28から求まる分解能が0.95μmとなることと比較して、本実施例における物体光の合成による高分解能化が確認できる。また、実施例では、図30(b)に示す再生画像と比較して画質が大きく改善されている。

【0123】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明に係る多方向照明光を用いたオフアクシスホログラフィに基づくホログラフィック顕微鏡、データ処理方法(高分解能画像用のホログラムデータ取得方法、および高分解能ホログラム画像再生方法)は、結像レンズを用いない無歪物体光波の高速記録、開口数が1を超える透過物体光または反射物体光の記録、厳密解を用いた超高分解能な無歪自由焦点画像の再生、FFTを用いた高速画像再生、波の位相分布を用いた光透過物体の定量的解析など、多くの利点を有する。従って、本発明は、細胞分化・組織形成分野、再生医療分野、バイオテクノロジ分野、医療診断分野、精密光計測分野などにおいてこれらの利点を活かした広い用途に適用できる。従来の技術に対する本発明の新規性と優位性として、(1)培養液中の生体組織や生体細胞の大深度超高分解能3次元計測を可能にする、(2)低エネルギー照射により生きた生体組織の超高分解能計測を可能にする、(3)光位相分布を使った透明生体組織の超高分解能計測を可能にする、(4)反射物体光を使った超高分解能な3次元光計測を可能にする、などが挙げられる。本発明は、開口数の大きいホログラム複数枚を使って空気中開口数(NA)が1を超える大開口数ホログラムを合成することができ、通常の光学顕微鏡の解像限界を超える3次元像の再生を可能にする。これにより、超高分解能3次元生物顕微鏡を実現でき、ミトコンドリアやバクテリアなどの極微な被写体を3次元観察可能となる。
【0125】
本願は日本国特許出願2013-223761に基づいており、その内容は、上記特許出願の明細書及び図面を参照することによって結果的に本願発明に合体されるべきものである。
【符号の説明】
【0126】
1 ホログラフィック顕微鏡
10 データ取得装置、データ取得部
10a 光源
2 角度変更部
20 画像再生部
22 インライン化変調部
23 光波計算部
24 照明光分離部
23a 画素数増大部
3 光学系
4,41~44 受光素子
5 記録部
6 物体
合成光波
LR 参照光オフアクシスホログラム
QR 照明光オフアクシスホログラム
OR 物体光オフアクシスホログラム
OQR 物体光照明光オフアクシスホログラム
LR 参照光複素振幅オフアクシスホログラム
OR 物体光複素振幅オフアクシスホログラム
QR 照明光複素振幅オフアクシスホログラム
OQR 物体光照明光複素振幅オフアクシスホログラム
OL 物体光複素振幅インラインホログラム
QL 照明光複素振幅インラインホログラム
OQL 物体光照明光複素振幅インラインホログラム
L インライン球面波参照光
M 微小球(微小球面)
O,O,O1~O4 物体光
Q,Q,Q1~Q4 照明光
R オフアクシス球面波参照光
再生画像(光強度)
照明光の再生光波(照明光再生光波)
光波、ホログラム
物体光の再生光波(物体光再生光波)
j 入射方向を識別する整数変数
,z 再生面
ξ 照明光Qの再生光波cに含まれる位相成分
φ インライン球面波参照光の位相
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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