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明細書 :亀裂検出システム及び亀裂検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6474134号 (P6474134)
登録日 平成31年2月8日(2019.2.8)
発行日 平成31年2月27日(2019.2.27)
発明の名称または考案の名称 亀裂検出システム及び亀裂検出方法
国際特許分類 G01N  25/72        (2006.01)
G01B  11/16        (2006.01)
G01B  11/30        (2006.01)
FI G01N 25/72 K
G01B 11/16 H
G01B 11/30 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 27
出願番号 特願2015-542908 (P2015-542908)
出願日 平成26年10月17日(2014.10.17)
国際出願番号 PCT/JP2014/077718
国際公開番号 WO2015/056790
国際公開日 平成27年4月23日(2015.4.23)
優先権出願番号 2013217722
優先日 平成25年10月18日(2013.10.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年10月13日(2017.10.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
発明者または考案者 【氏名】伊藤 幸広
【氏名】志岐 和久
【氏名】松田 浩
【氏名】出水 享
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査官 【審査官】河内 悠
参考文献・文献 米国特許第03681970(US,A)
特開2007-024674(JP,A)
特開2007-139653(JP,A)
調査した分野 G01N 25/00-25/72
G01B 11/00-11/30
特許請求の範囲 【請求項1】
導電性を有さず弾性変形可能な材質からなる被膜で外側から覆われた、所定の検出対象部位を含む検出対象物に対し、前記検出対象部位に向けて設置され、前記検出対象部位を覆う最外部の被膜面を撮像する撮像手段と、
導電性を有する材質からなる前記検出対象部位の少なくとも表面部分を、当該検出対象部位に対する誘導加熱、及び/又は検出対象部位近傍部分に対する誘導加熱に伴う熱伝導、により前記被膜を劣化させない所定温度まで加熱する加熱手段と、
同じ対象物を時間をおいて撮像した、前後の二つの撮像画像から画像解析で、撮像された範囲の各位置ごとに、二つの撮像の間に生じたひずみを求め、撮像された範囲のひずみ分布を取得する画像解析手段とを備え、
前記撮像手段が、前記検出対象部位における前記最外部の被膜面を、前記加熱手段で検出対象部位を加熱する前と加熱直後にそれぞれ撮像し、
前記画像解析手段が、前記撮像手段で得られた加熱前後の前記被膜面の二つの撮像画像から、前記解析により、検出対象部位の位置ごとにひずみを求め、検出対象部位のひずみ分布を取得し、
当該検出対象部位のひずみ分布が、検出対象部位に亀裂がある場合、前記加熱による亀裂部分の微小変位に対応して、ひずみ分布中で周囲のひずみと大きく異なるひずみが略線状に集中した状態のひずみ群を含むことを
特徴とする亀裂検出システム。
【請求項2】
前記請求項1に記載の亀裂検出システムにおいて、
前記加熱手段が、電磁誘導で検出対象部位に渦電流を生じさせて検出対象部位を発熱させるためのコイルを有してなり、
当該コイルに対し、渦電流の表皮効果で検出対象部位の加熱手段寄り表面部分のみ加熱でき、加熱時点で検出対象物の厚さ方向に温度差を生じさせられる所定周波数以上の交流電流を流して、検出対象部位の誘導加熱を実行することを
特徴とする亀裂検出システム。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の亀裂検出システムにおいて、
前記画像解析手段で得られたひずみ分布を、検出対象部位の画像領域に対応付けたひずみ分布図の画像として表示する表示手段を備え、
当該表示手段が、前記ひずみ分布図の画像における、少なくとも前記ひずみが略線状に集中した状態のひずみ群について、周囲の他部分に対し表示状態を明確に異ならせて視覚的に識別可能な状態で表示することを
特徴とする亀裂検出システム。
【請求項4】
前記請求項2又は3に記載の亀裂検出システムにおいて、
前記撮像手段が、一又は複数の持ち運び可能なカメラであり、
前記画像解析手段が、前記撮像手段としてのカメラから撮像画像のデータを入力可能で、所定のプログラムにより、前記撮像手段で得られた検出対象部位の加熱前後の二つの撮像画像から、デジタル画像相関法による解析で、検出対象部位の位置ごとにひずみを求め、検出対象部位のひずみ分布を取得する機能を実行する、可搬型のコンピュータであることを
特徴とする亀裂検出システム。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載の亀裂検出システムにおいて、
前記撮像手段が、加熱手段の誘導加熱実行の際の検出対象部位に対する加熱手段の位置より、検出対象部位から離れた所定位置に配設され、加熱手段による検出対象部位の加熱の前後で、撮像手段の検出対象部位に対する相対移動を伴わずに、検出対象部位を撮像することを
特徴とする亀裂検出システム。
【請求項6】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載の亀裂検出システムにおいて、
前記撮像手段と加熱手段が、相互に連結されて、一体として前記検出対象物に対し移動可能とされ、
前記加熱手段が、撮像手段の存在する側の検出対象部位近傍から、検出対象部位を加熱するものとされ、
前記撮像手段及び加熱手段が、検出対象物に対し移動し、検出対象物において連続する平面又は曲面に複数設定される各検出対象部位に対し、相対位置関係を変化させない状態で、各検出対象部位ごとの撮像及び加熱可能位置に順次到達して、撮像及び加熱を行うことを
特徴とする亀裂検出システム。
【請求項7】
検出対象物における、導電性を有しない材質からなる被膜で外側から覆われた、導電性を有する材質からなる所定の検出対象部位について、最外部の被膜面を所定の撮像手段で撮像し、
前記被膜面を撮像された検出対象部位を、所定の加熱手段の、検出対象部位に対する誘導加熱、及び/又は検出対象部位近傍部分に対する誘導加熱に伴う熱伝導、により前記被膜を劣化させない所定温度まで加熱し、
加熱された検出対象部位における前記被膜面を前記撮像手段であらためて撮像し、
前記撮像手段で得られた加熱前後の二つの画像から、所定の画像解析手段が、画像解析で検出対象部位の位置ごとにひずみを求めて、検出対象部位のひずみ分布を取得し、
当該検出対象部位のひずみ分布が、検出対象部位に亀裂がある場合、前記加熱による亀裂部分の微小変位に対応して、ひずみ分布中で周囲のひずみと大きく異なるひずみが略線状に集中した状態のひずみ群を含むようにされることを
特徴とする亀裂検出方法。
【請求項8】
前記請求項7に記載の亀裂検出方法において、
あらかじめ取得された、検出対象物又は当該検出対象物の検出対象部位と同一構成の部材にある亀裂の深さと当該亀裂位置に対応するひずみ分布中のひずみの大きさとの関係に基づいて、検出対象部位のひずみ分布における、前記ひずみが略線状に集中した状態のひずみ群について、ひずみの大きさから亀裂の深さ又は亀裂の貫通の有無を検出することを
特徴とする亀裂検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象物における亀裂の有無を非破壊的手法で確認可能とする亀裂検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁等の鋼構造物は、経年劣化による耐荷力や耐久性の低下が構造物の安全性を損なうことの無いよう、その維持管理を適切に行う必要がある。特に、鋼構造物をなす鋼材に外力が繰返し作用する状況、例えば橋梁の場合、車両の通行に伴う繰返しの荷重が加わるような状況、では、溶接部分などの応力が集中しやすい箇所から亀裂が発生し、こうした亀裂が原因で鋼材の破断など安全性を低下させる事象をもたらすことがあるため、亀裂の早期発見が強く求められている。
【0003】
鋼構造物をなす鋼材に生じた亀裂を検知するための従来の主な手法としては、磁粉探傷法、浸透探傷法、及び、超音波探傷法が挙げられる。
従来の磁粉探傷法の例としては、特開2001-21539号公報(特許文献1)に開示されるものがある。また、浸透探傷法の例としては、特開2003-344303号公報(特許文献2)に開示されるものがある。さらに、超音波探傷法の例としては、特開2005-345217号公報(特許文献3)に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2001-21539号公報
【特許文献2】特開2003-344303号公報
【特許文献3】特開2005-345217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の鋼材における亀裂の検知方法には、前記各特許文献1ないし3に示されるようなものがあり、いずれも亀裂の検知に有用であるが、活用する上での問題点もある。
前記特許文献1に示されるような磁粉探傷法は、部材表層部にある亀裂の検出において感度の良い手法であるものの、磁化できる範囲が局所的であることや、部材表面の塗膜を除去する必要があることなどから作業性が悪く、大規模な構造物の場合、全体の検査完了までに長期間を要するという課題を有していた。
【0006】
また、前記特許文献2に示されるような浸透探傷法も、部材表面に亀裂を判別可能にする浸透液を塗布するために、前記磁粉探傷法と同様に、部材表面の塗膜を除去する必要があり、作業に長時間を要することから、実際の構造物を広範囲に検査するものとしては不向きである。
【0007】
さらに、前記特許文献3に示されるような超音波探傷法は、探触子から発信された超音波パルスが内部の欠陥に反射されて得られる反射波を、受信して高周波電圧に変換し、これに基づいて欠陥の存在位置及びその大きさの程度を画面上に表示することも可能である。しかしながら、記録性に乏しく、欠陥の種類の判断に高度の熟練を必要とすることや、画面表示等から様々な判断を行う点で、作業性に劣ることから、連続長時間の作業では作業者の著しい疲労を招いてしまうという課題を有していた。
【0008】
鋼構造物の維持管理においては、検査により亀裂を早期に発見し、直ちに補修など適切な対策を講じることが重要であるが、鋼構造物の亀裂検知に係る従来の技術は、上記のように、検知範囲が局所的であったり、塗膜除去が必要になるなど、作業性や効率の面で大きな課題を有しており、さらに作業性や検査時間の点で優れ、検査コストも抑えられる、新たな亀裂検知の方法が強く求められている。
【0009】
本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、検出対象物の検出対象部位を加熱すると共に、検出対象部位の被膜面の加熱前後における撮像画像をデジタル画像相関法により解析して、検出対象部位の被膜面を損なうことなく得られる検出対象部位のひずみ分布から、亀裂を適切に判別できる、亀裂検出方法、及び、当該検出方法で用いる亀裂検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る亀裂検出システムは、検出対象物における、導電性を有しない材質からなる被膜で外側から覆われた、導電性を有する材質からなる所定の検出対象部位について、最外部の被膜面を撮像する撮像手段と、前記検出対象部位の少なくとも表面部分を、当該検出対象部位に対する誘導加熱、及び/又は検出対象部位近傍部分に対する誘導加熱に伴う熱伝導、により前記被膜を劣化させない所定温度まで加熱する加熱手段と、同じ対象物を時間をおいて撮像した、前後の二つの撮像画像から画像解析で、撮像された範囲の各位置ごとに、二つの撮像の間に生じたひずみを求め、撮像された範囲のひずみ分布を取得する画像解析手段とを備え、前記撮像手段が、前記検出対象部位における前記被膜面を、前記加熱手段で加熱する前と加熱直後にそれぞれ撮像し、前記画像解析手段が、前記撮像手段で得られた加熱前後の検出対象部位の二つの撮像画像から、前記解析により、検出対象部位の位置ごとにひずみを求め、検出対象部位のひずみ分布を取得し、当該検出対象部位のひずみ分布が、検出対象部位に亀裂がある場合、前記加熱による亀裂部分の微小変位に対応して、ひずみ分布中で周囲のひずみと大きく異なるひずみが略線状に集中した状態のひずみ群を含むものである。
【0011】
このように本発明においては、撮像手段が検出対象物の検出対象部位を表面の被膜ごと撮像し、この撮像された検出対象部位を加熱手段が誘導加熱で加熱、昇温させ、加熱された検出対象部位を撮像手段が再度被膜ごと撮像し、加熱前後の撮像画像を画像解析手段が解析して、検出対象部位のひずみ分布を取得し、亀裂部分とそれ以外の部分とのひずみ状態の差異から亀裂を検出可能とすることにより、撮像手段で被膜ごと検出対象部位を撮像すれば問題なく解析を進めて亀裂を判別でき、検出対象部位から被膜を除去する必要は無く、非破壊検出が行え、検出作業の作業効率を向上させられる。また、検出対象部位の状態を撮像手段による非接触の撮像で把握でき、検出対象部位に影響を与えることもなく、且つ、検出対象部位の設定の自由度を高くでき、効率よく検出作業可能な検出対象部位を設定してスムーズに亀裂検出を実行できる。さらに、加熱手段は誘導加熱を行うことで、被膜を加熱せずに検出対象部位を直接加熱でき、被膜を熱で変質させず、被膜による検出対象部位の保護をそのまま維持しつつ、検出対象部位を短時間に昇温させることができ、亀裂検出に係る作業時間の短縮が図れる。
【0012】
また、本発明に係る亀裂検出システムは必要に応じて、前記加熱手段が、電磁誘導で検出対象部位に渦電流を生じさせて検出対象部位を発熱させるためのコイルを有してなり、当該コイルに対し、渦電流の表皮効果で検出対象部位の加熱手段寄り表面部分のみ加熱でき、加熱時点で検出対象物の厚さ方向に温度差を生じさせられる所定周波数以上の交流電流を流して、検出対象部位の誘導加熱を実行するものである。
【0013】
このように本発明においては、誘導加熱を実行する加熱手段のコイルに、所定の高周波の交流電流を流して、検出対象物における渦電流の電流浸透深さを小さくし、検出対象部位の加熱手段寄り表面部分のみ有効に誘導加熱可能となるようにして、検出対象物で厚さ方向に温度差を生じさせ、熱変形の度合いを変えることにより、検出対象物にその厚さに応じた反り変形が生じる状態とすることができ、亀裂のある面を加熱した場合は反り変形に伴って亀裂幅を広げようとする引張応力を、また、亀裂のある面の反対面を加熱した場合は反り変形に伴って亀裂を閉塞させようとする圧縮応力を発生させるなど、亀裂部分に顕著なひずみを発生させられることとなり、検出対象物の厚さ方向各部が一様に熱変形した場合よりも大きなひずみを亀裂部分に発生させて、撮像画像の解析で得られるひずみ分布中で、亀裂を示すひずみ群をより明確化することができ、亀裂検出をより確実且つ迅速に行える。
【0014】
また、本発明に係る亀裂検出システムは必要に応じて、前記画像解析手段で得られたひずみ分布を、検出対象部位の画像領域に対応付けたひずみ分布図の画像として表示する表示手段を備え、当該表示手段が、前記ひずみ分布図の画像における、少なくとも前記ひずみが略線状に集中した状態のひずみ群について、周囲の他部分に対し表示状態を明確に異ならせて視覚的に識別可能な状態で表示するものである。
【0015】
このように本発明においては、表示手段がひずみ分布を表示し、検出対象部位に亀裂がある場合には、亀裂に相当する、周囲のひずみとは明らかに異質な略線状のひずみ群を画像中に明確に含んだ表示状態となることにより、検出作業を進める作業者が表示手段上で亀裂を視認して確実に把握でき、亀裂の検出を作業現場で時間を置かずに実現できる。
【0016】
また、本発明に係る亀裂検出システムは必要に応じて、前記撮像手段が、一又は複数の持ち運び可能なカメラであり、前記画像解析手段が、前記撮像手段としてのカメラから撮像画像データを入力可能で、所定のプログラムにより、前記撮像手段で得られた加熱前後の二つの画像から、デジタル画像相関法による解析で、検出対象部位の被膜面における、検出対象部位の加熱により生じたひずみの分布を取得する機能を実行する、可搬型のコンピュータであるものである。
【0017】
このように本発明においては、撮像手段を一又は複数のカメラとすると共に、画像解析手段を持ち運べるコンピュータとすることで、撮像手段と画像解析手段とを簡略に構成でき、これらの亀裂検出の作業現場への搬入出、並びに、検出のための据付及び検出終了後の撤収が容易となり、検出に係る作業の能率を向上させられる。また、撮像手段としてのカメラで撮像範囲を柔軟に調整できるため、撮像範囲すなわち検出対象部位を状況に応じた適切なものに容易に設定でき、加熱手段で加熱可能な範囲で検出対象部位を最大限に広く設定すれば、一度の検出機会に広範囲の亀裂検出も可能であり、効率よく亀裂の検出を実行できる。
【0018】
また、本発明に係る亀裂検出システムは必要に応じて、前記撮像手段が、加熱手段の誘導加熱実行の際の検出対象部位に対する加熱手段の位置より、検出対象部位から離れた所定位置に配設され、加熱手段による検出対象部位の加熱の前後で、撮像手段の検出対象部位に対する相対移動を伴わずに、検出対象部位を撮像するものである。
【0019】
このように本発明においては、検出対象部位に対し撮像手段を加熱手段の加熱実行位置より離れた位置に設け、加熱手段による検出対象部位の加熱に際し、加熱手段と撮像手段がそもそも接触し得ないようにし、加熱前後で撮像手段を検出対象部位に対し移動させることなく撮像可能として、撮像手段の撮像範囲を固定することにより、検出対象部位の加熱前後の撮像画像を取得し、検出対象部位の亀裂を検出可能とするにあたり、撮像手段で検出対象部位の撮像画像を高い精度で取得でき、画像解析で精細なひずみ分布が得られることとなり、検出対象部位に対し正確に細かい亀裂まで検出でき、高い検出精度を確保できる。
【0020】
また、本発明に係る亀裂検出システムは必要に応じて、前記撮像手段と加熱手段が、相互に連結されて、一体として前記検出対象物に対し移動可能とされ、前記加熱手段が、撮像手段の存在する側の検出対象部位近傍から、検出対象部位を加熱するものとされ、前記撮像手段及び加熱手段が、検出対象物に対し移動して、撮像及び加熱を行う検出対象部位を順次変えていくものである。
【0021】
このように本発明においては、撮像手段と加熱手段とが連結一体化され、撮像手段が検出対象部位を撮像し、加熱手段が検出対象部位を撮像手段と同じ側から加熱して、検出対象部位の加熱前後の撮像画像を取得し、検出対象部位の亀裂を検出可能としながら、これらを移動させて検出対象部位を変えて同様の検出を繰り返し行えるようにすることにより、撮像手段の撮像範囲及び加熱手段の加熱範囲を一度調整し決定すると、そのまま移動して複数の検出対象部位に対応でき、検出対象物の広い範囲にわたり同様の検出精度で効率よく亀裂検出を行えると共に、検出のための撮像手段と加熱手段の据付作業を検出対象部位ごとに繰り返す必要は無く、検出に係る作業の能率を向上させられる。
【0022】
また、本発明に係る亀裂検出方法は、検出対象物における、導電性を有しない材質からなる被膜で外側から覆われた、導電性を有する材質からなる所定の検出対象部位について、最外部の被膜面を所定の撮像手段で撮像し、前記被膜面を撮像された検出対象部位を、所定の加熱手段の、検出対象部位に対する誘導加熱、及び/又は検出対象部位近傍部分に対する誘導加熱に伴う熱伝導、により前記被膜を劣化させない所定温度まで加熱し、加熱された検出対象部位における前記被膜面を前記撮像手段であらためて撮像し、前記撮像手段で得られた加熱前後の二つの画像から、所定の画像解析手段が、画像解析で検出対象部位の位置ごとにひずみを求めて、検出対象部位のひずみ分布を取得し、当該検出対象部位のひずみ分布が、検出対象部位に亀裂がある場合、前記加熱による亀裂部分の微小変位に対応して、ひずみ分布中で周囲のひずみと大きく異なるひずみが略線状に集中した状態のひずみ群を含むようにされるものである。
【0023】
このように本発明においては、検出対象物の亀裂を検出したい検出対象部位を撮像手段で撮像した後、この検出対象部位を加熱手段で加熱して亀裂を強制的に開口又は閉口させるようなひずみを生じさせ、この熱による検出対象部位の変化は、検出対象部位と共に動く検出対象部位外側の被膜を通じて表面側にも現れるため、撮像手段で加熱された検出対象部位を表面の被膜ごと撮像し、加熱前後の撮像画像を画像解析手段で解析して、検出対象部位のひずみ分布を取得し、亀裂部分とそれ以外の部分とのひずみ状態の差異から亀裂を検出可能とすることにより、被膜ごと検出対象部位を撮像すれば問題なく解析を進めて亀裂を判別でき、被膜を除去する必要が無く、非破壊検出が行え、検出作業の作業効率を向上させられる。また、検出対象部位の状態を非接触の撮像で把握でき、検出対象部位に影響を与えることもなく、且つ、検出対象部位の設定の自由度を高くでき、効率よく検出作業可能な検出対象部位を設定してスムーズに亀裂の検出を実行できる。さらに、加熱手段は誘導加熱を行うことで、被膜を加熱せずに検出対象部位を直接加熱でき、被膜を熱で変質させず、被膜による検出対象部位の保護をそのまま維持しつつ、検出対象部位を短時間に昇温させることができ、亀裂検出に係る作業時間の短縮が図れる。
【0024】
また、本発明に係る亀裂検出方法は必要に応じて、あらかじめ取得された、検出対象物又は当該検出対象物の検出対象部位と同一構成の部材にある亀裂の深さと、当該亀裂位置に対応するひずみ分布中のひずみの大きさとの関係に基づいて、検出対象部位のひずみ分布における、前記ひずみが略線状に集中した状態のひずみ群について、ひずみの大きさから亀裂の深さ又は亀裂の貫通の有無を検出するものである。
【0025】
このように本発明においては、検出対象物における亀裂が深いほど、加熱時の表面でのひずみは大きく、亀裂が貫通している場合、引張又は圧縮の各方向でひずみは最大となり、加熱前後の撮像画像から得られるひずみ分布でも、亀裂を示すひずみ群におけるひずみの大きさも同様の傾向を有することにより、検出対象物自体、又は検出対象物の検出対象部位と同一構成の部材における、例えば一部貫通部分のある亀裂が含まれる所定領域について、あらかじめ表面及び亀裂の貫通した反対面でそれぞれ加熱前後の撮像からひずみ分布を取得し、亀裂のうち貫通部分と非貫通部分に対応するひずみの大きさをそれぞれ把握してその関係性を求めておくことで、検出対象部位のひずみ分布における亀裂を示すひずみ群についても、ひずみの大きさから亀裂の深さを導くことができ、ひずみ分布に基づいて検出対象部位にある亀裂の貫通の有無や亀裂深さを容易に検出でき、亀裂ごとに計測を行う手間が省け、亀裂の状態の把握を短時間に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る亀裂検出システムの概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る亀裂検出システムのブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る亀裂検出システムの検出対象物における亀裂部分の加熱による変化状態説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る亀裂検出システムで得られた第一の検出対象物における亀裂を含む所定検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る亀裂検出システムで得られた第二の検出対象物における亀裂を含む所定検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る亀裂検出システムでの検出対象部位の亀裂部分のある表面に対する加熱による検出対象部位変化状態説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る亀裂検出システムでの検出対象部位の亀裂部分のある表面とは反対側の面に対する加熱による検出対象部位変化状態説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る亀裂検出システムにおける撮像手段及び加熱手段の配置説明図及び検出対象物に対する移動状態説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る亀裂検出システムにおける撮像手段と加熱手段を組み合わせた装置での撮像及び加熱過程の説明図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る亀裂検出システムにおける撮像手段と加熱手段を組み合わせた他の装置での撮像及び加熱過程の説明図である。
【図11】本発明の実施例1における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図12】本発明の実施例1における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図13】本発明の実施例に対する比較例1における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図14】本発明の実施例に対する比較例1における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図15】本発明の実施例に対する比較例2における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図16】本発明の実施例に対する比較例2における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図17】本発明の実施例2における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図18】本発明の実施例2における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図19】本発明の実施例3における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図20】本発明の実施例3における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図21】本発明の実施例4における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図22】本発明の実施例4における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図23】本発明の実施例5における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図24】本発明の実施例5における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図25】本発明の実施例6における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図26】本発明の実施例6における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図27】本発明の実施例7における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図28】本発明の実施例7における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図29】本発明の実施例8における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図30】本発明の実施例8における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図31】本発明の実施例9における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図32】本発明の実施例9における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図33】本発明の実施例10における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図34】本発明の実施例10における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図35】本発明の実施例11における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図36】本発明の実施例11における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図37】本発明の実施例12における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図38】本発明の実施例12における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図39】本発明の実施例に対する比較例3における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図40】本発明の実施例に対する比較例3における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【図41】本発明の実施例に対する比較例4における亀裂検出システムで得られた検出対象部位のひずみ分布画像説明図である。
【図42】本発明の実施例に対する比較例4における亀裂検出システムで加熱した検出対象部位の温度分布画像説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る亀裂検出システムを前記図1ないし図3に基づいて説明する。本実施形態においては、検出対象物が鋼材からなる橋梁等の構造物であり、検出対象部位が塗装による被膜(塗膜)で覆われた鋼材の所定部位となる例について説明する。

【0028】
前記各図において本実施形態に係る亀裂検出方法に用いる亀裂検出システム1は、検出対象物50における、被膜53で外側から覆われた所定の検出対象部位51について、最外部の被膜面を撮像する撮像手段10と、検出対象部位51を誘導加熱により加熱する加熱手段20と、撮像手段10で前記検出対象部位51の被膜面を加熱の前と後でそれぞれ撮像した二つの画像から、デジタル画像相関法による解析で、加熱により検出対象部位51に生じたひずみの分布を取得する画像解析手段30と、画像解析手段30で得られたひずみ分布を、検出対象部位を示す画像領域に対応付けて表示する表示手段40とを備える構成である。

【0029】
前記撮像手段10は、撮像対象を撮像する公知のカメラであり、撮像画像の情報(データ)を画像解析手段30に出力可能なものである。そして、撮像手段10は、撮像対象を検出対象物50の検出対象部位51とするように、この検出対象部位51に向けて一又は二台を検出対象物50近くに固定設置される。撮像手段を一台用いた場合には、検出対象部位51の二次元のひずみ分布を画像解析手段30で取得可能な撮像画像を得ることができる。また、撮像手段を二台用いてそれぞれ異なる位置から撮像した場合には、検出対象部位51の三次元のひずみ分布を画像解析手段30で取得可能な撮像画像を得ることができる。

【0030】
そして、撮像手段10は、加熱手段20の加熱実行の際の検出対象部位51に対する加熱手段20の位置より、検出対象部位51からは離れた所定位置に固定配設されており、加熱手段20による検出対象部位51の加熱の前後で、検出対象部位51に対し移動することなく、検出対象部位51を撮像する仕組みである。

【0031】
撮像手段10は、検出対象物50における、別材質、具体的には、合成樹脂製塗料等の塗装により形成された、導電性を有しない被膜53で外側から覆われた、検出対象部位としての鋼材52部分の所定箇所について、最外部の被膜53を除去することなくそのまま撮像することで、検出対象部位そのものでなく、その被膜面の撮像画像を取得する。
この撮像手段10による検出対象部位51の撮像は、加熱手段20による検出対象部位の加熱の前と後の各タイミングにそれぞれ行われる。加熱後の撮像は、検出対象部位からの伝熱で被膜53の温度が変化し、この温度変化に伴う被膜自体の変形が生じるより前に行うようにしている。

【0032】
前記加熱手段20は、検出対象部位51を加熱対象として、誘導加熱により加熱するもので、加熱対象に渦電流を生じさせてこれを発熱させるための加熱用コイル(図示を省略)を、平面状のトッププレートに沿って配置した公知の装置であり、詳細な説明を省略する。

【0033】
加熱については、加熱手段20のトッププレートを、平面状の検出対象部位51に接近させて保持すると共に、加熱用コイルに通電することで、電磁誘導により鋼製の検出対象部位に渦電流が発生し、ジュール熱で検出対象部位が発熱状態となる仕組みである。鋼材は通電可能な材質であることで、検出対象部位となる鋼材の所定箇所を、加熱手段20の誘導加熱により、表面の被膜に悪影響を与えることなく加熱できる。なお、検出対象部位51を覆う被膜53は、導電性及び磁性を有さず、検出対象部位51における電磁誘導を妨げず且つ弾性変形可能な材質となっており、検出対象部位51表面への密着状態を維持して、検出対象部位51の熱変形に追随し動くものである。

【0034】
この加熱手段20は、誘導加熱の性質上、加熱対象である検出対象部位51に近付くほど加熱の効率を向上させられるが、検出対象部位51に接触させる必要は全くなく、離れた位置から加熱を行えることから、検出対象部位表面に影響を与えない非接触の検出システムを構築できる。

【0035】
前記画像解析手段30は、同じ対象物を時間をおいて撮像された前後の二つの画像から、公知のデジタル画像相関法による解析で、撮像された範囲の各位置ごとに、二つの撮像の間に生じたひずみを求め、撮像された範囲のひずみ分布を取得するものである。より具体的には、撮像手段10で得られた加熱前後の検出対象部位の二つの撮像画像から、前記解析により、検出対象部位51の位置ごとに、検出対象部位の加熱により生じたひずみを求め、検出対象部位51のひずみ分布を取得するものである。

【0036】
この画像解析手段30は、そのハードウェア構成として、CPUやメモリ、入出力インターフェース等を備えるコンピュータとなっており、撮像手段10から撮像画像のデータを入力可能であり、そのメモリ等に格納されるプログラム、すなわち、撮像手段10で得られた検出対象部位の加熱前後の二つの撮像画像から、デジタル画像相関法による解析で、検出対象部位の位置ごとにひずみを求め、検出対象部位のひずみ分布を取得する機能を実行させる所定のプログラムにより、コンピュータを画像解析手段30として作動させる仕組みである。なお、画像解析手段30をなすコンピュータは、CPUやメモリ、ROM等を一体的に形成されたマイクロコンピュータとしてもかまわない。

【0037】
画像解析手段30を小型のコンピュータとすれば、装置として軽量、簡易なものとすることができ、検出作業現場への持ち運びや、検出のためのセッティングが容易となる。なお、画像解析手段30がコンピュータの場合、撮像手段10や加熱手段20を所定のインターフェースを介して制御し、撮像手段10の撮像に係る作動や、加熱手段20の加熱に係る作動を、画像解析手段30側で指示調整するようにしてもよく、各部の個別の操作を不要として作業能率を向上させることができる。

【0038】
撮像手段10による撮像対象が検出対象部位51の被膜面となることで、実際に画像解析手段30が解析を行うのは加熱前後の検出対象部位51の被膜面の撮像画像であるものの、加熱後の検出対象部位51の熱変形に伴う各部の微小変位は、加熱されず変質していない薄い被膜を通じて表面(被膜面)にそのまま反映されていることから、加熱前後の被膜面の画像を解析することで、得られる被膜面各部のひずみは、そのまま検出対象部位の各部のひずみとして取り扱うことができ、検出対象部位のひずみ分布を確実に求めることができる。

【0039】
画像解析手段30で求められた検出対象部位51のひずみ分布は、検出対象部位51に亀裂54がある場合、加熱による亀裂54部分の微小変位(図3参照)に対応して、ひずみ分布中で周囲のひずみと大きさ及び向きが大きく異なるひずみが略線状に集中した状態のひずみ群を含むものとなり、ひずみ分布の表示手段40への表示で観察者にこれを視認させたり、別の画像解析でひずみ分布の画像中から前記略線状のひずみ群を抽出して亀裂と認定することで、亀裂を検出できることとなる。

【0040】
こうして、ひずみ分布から、亀裂、特に溶接部分などの応力が集中しやすい箇所に発生する疲労亀裂を検出することができるが、こうした疲労亀裂以外に、画像解析手段30で求められる検出対象部位51のひずみ分布からは、特徴のあるひずみの状態に基づいて、検出対象部位に存在する溶接部位の初期欠陥(接合不良、溶け込み不良など)や、検出対象物である部材における外部から見えにくい製造時の割れなども検出できる。なお、検出にあたっては、ひずみ分布から見出せる、検出対象物におけるひずみが発生している位置に基づいて、疲労亀裂か溶接欠陥等であるかを判定することとなる。例えば、検出対象物における応力が集中する箇所に対応したひずみ分布上の所定位置に見られるひずみの集中状態については、疲労亀裂を示すものである可能性が高い。

【0041】
画像解析手段30のデジタル画像相関法による解析の都合上、撮像される被膜面はランダムな模様の差異が所定の密度で存在する表面状態である必要があるが、特に平滑な加工を施されていない通常の物体、特に鋼構造物における表面に被膜のあるもので、外気にさらされつつ製造から所定の時間が経過したものは、そもそも前記表面状態となっているため、特に前加工を行うことなく撮像手段10で撮像できる。必要に応じて被膜面には、被膜に悪影響を与えない塗料等で画像解析に適した模様を付加するようにしてもよい。

【0042】
なお、画像解析手段における二つの撮像画像の画像解析には、デジタル画像相関法を用いるようにしているが、これに限られるものではなく、他の手法、例えば、モアレ法、二点間距離変化率計測方法などを用いた画像解析を行うようにすることもできる。

【0043】
前記表示手段40は、画像解析手段30で得られたひずみ分布の画像データを入力され、これを検出対象部位の画像領域に対応付けたひずみ分布図の画像として表示する、公知の画像表示用ディスプレイであり、詳細な説明を省略する。この表示手段40は、画像解析手段30をなすコンピュータのディスプレイ部分であってもよく、特にコンピュータがいわゆるノートパソコン等のように小型のものである場合、可搬性に優れ、装置として極めて簡便なものにでき、検出作業現場での取り扱いに適したものとなる。

【0044】
検出対象部位51のひずみ分布は、検出対象部位に亀裂がある場合、加熱による亀裂部分の微小変位に対応して、ひずみ分布中で周囲のひずみと大きさ及び向きが大きく異なるひずみが略線状に集中した状態のひずみ群を含むようになっている。そして、このひずみ群は当然ながら亀裂に対応した形状となっており、表示手段40にこうしたひずみ群が表示されるのを観察者が視認することで、亀裂の存在を確認でき、画像解析手段30による撮像画像の解析直後に、迅速な亀裂検出が行える。

【0045】
表示手段40では、表示画像の所定座標位置におけるひずみの大きさを、その大きさごとに色などの表示状態を異ならせてそれぞれ表示するようにして、亀裂を示すこととなるひずみ群が、周囲の他部分に対し視覚的に明瞭に識別可能な状態で表示されるようにするのが望ましい。

【0046】
次に、本実施形態に係る亀裂検出システムを用いた亀裂検出方法について説明する。前提として、撮像手段10が検出対象物50のあらかじめ定められた検出対象部位51を撮像範囲に捉える状態で適切に設置されると共に、近傍に設置された画像解析手段30と接続され、さらに、加熱手段20が誘導加熱により検出対象部位51を適切に加熱可能で、且つ撮像手段10による撮像に影響のない箇所に配設されているものとする。当然ながら、前記各手段は適切に電源と接続されて作動可能とされている。

【0047】
まず、撮像手段10で、検出対象物50の検出対象部位51を撮像し、撮像画像のデータを画像解析手段30をなすコンピュータに取り込む。撮像後、加熱手段20を作動させ、検出対象部位をあらかじめ設定された所定温度まで昇温させ、熱によるひずみが生じた状態とする。検出対象部位が所定温度に達するか、所定温度に達したと十分な精度で推定できる所定時間が加熱開始より経過したら、加熱手段20の作動を停止し、検出対象部位の加熱を終了する。この時、サーモグラフィを用いて、検出対象部位の表面温度分布を測定し、温度を正確に把握しつつ加熱手段20を作動させるのが望ましい。

【0048】
この後、直ちに、撮像手段10で検出対象物50の検出対象部位51をあらためて撮像し、撮像画像のデータを画像解析手段30をなすコンピュータに取り込む。そして、画像解析手段30において、加熱前後の撮像画像について、デジタル画像相関法による画像解析を実行し、ひずみ分布の画像を導いて、表示手段40をなすディスプレイに表示する。

【0049】
観察者は表示手段40を見て、検出対象部位51に対応したひずみ分布の画像において、周囲と異なるひずみ変化が一部に略線状に集中した形となって現れているか否かを確認し、こうしたひずみ変化が生じている場合、この部分を亀裂として判別することとなる。

【0050】
このように、本実施形態に係る亀裂検出システムにおいては、検出対象物50の亀裂を検出したい検出対象部位51を表面の被膜53ごと撮像手段10で撮像した後、この検出対象部位を加熱手段20で誘導加熱して亀裂54を強制的に開口又は閉口させるようなひずみを生じさせ、この熱による検出対象部位の変化は検出対象部位外側の被膜を通じて表面側にも現れるため、あらためて撮像手段10で加熱された検出対象部位51を表面の被膜53ごと撮像し、加熱前後の撮像画像を画像解析手段30でデジタル画像相関法を用いて解析して検出対象部位51のひずみを取得し、亀裂部分とそれ以外の部分とのひずみ状態の差異から亀裂を判別可能とすることから、被膜53ごと検出対象部位51を撮像すれば問題なく解析を進めて亀裂を判別でき、被膜53を除去する必要が無く、非破壊検出が行え、検出作業の作業効率を向上させられる。また、検出対象部位51の状態を非接触の撮像で把握でき、検出対象部位51に影響を与えることもなく、且つ、検出対象部位51の設定の自由度を高くでき、効率よく検出作業可能な検出対象部位51を設定してスムーズに亀裂の検出を実行できる。さらに、加熱手段20は誘導加熱を行うことで、被膜53を加熱せずに検出対象部位を直接加熱でき、被膜を熱で変質させず、被膜による検出対象部位の保護をそのまま維持しつつ、検出対象部位を短時間に昇温させることができ、亀裂検出に係る作業時間の短縮が図れる。

【0051】
なお、前記実施形態に係る亀裂検出システムにおいては、検出対象物50は鋼構造物であり、その一部の、表面を塗膜で覆われた鋼材52を検出対象部位として、亀裂検出を行う構成としているが、これに限らず、加熱手段で誘導加熱が行える、すなわち導電性のあるものであれば、検出対象物の検出対象部位は、鋼以外の金属や、金属以外の通電可能な材質のもの、例えば炭素繊維製の部材からなるものとすることもできる。また、こうした導電性のある材質を含む複合材、例えば、金属繊維や炭素繊維を含む強化プラスチック(FRP)製の部材も、誘導加熱で導電性のある材質部分を起点として昇温させられることから、このような部材を含む構造物も、検出対象物とすることができる。

【0052】
また、前記実施形態に係る亀裂検出システムにおいて、加熱手段20は、加熱用コイルを所定の平面に沿って配置して、コイルのある部位を平面状の検出対象部位51に接近させた場合に、効率よく誘導加熱が行える構成としているが、これに限らず、加熱用コイルの形状や配置を変えて、例えば、加熱用コイルを立体的に巻回配置するなどして、平面状以外の検出対象部位の加熱に対応させる構成とすることもできる。特に、加熱用コイルをフレキシブル構造として、多様な形状の検出対象部位に対応可能とすることもできる。

【0053】
また、前記実施形態に係る亀裂検出システムにおいては、画像解析手段30で得られたひずみ分布を画像として表示する表示手段40を設けて、観察者が表示画像のひずみ分布から亀裂の存在を判別して亀裂検出を可能とする構成としているが、これに限らず、画像解析手段が撮像画像の解析を経て取得した検出対象部位のひずみ分布を、そのままデータとして別の解析手段で処理し、検出対象部位に相当する所定座標空間での、亀裂に対応するひずみのデータの有無などのデータ的特徴から、亀裂を検出する構成とすることもでき、亀裂検出を自動実行でき、観察者が不在の場合でも亀裂の検出を問題なく進められる。

【0054】
また、前記実施形態に係る亀裂検出システムにおいて、画像解析手段30は、加熱前後の検出対象部位51被膜面の撮像画像について画像解析を実行し、検出対象部位51のひずみ分布を求めて、このひずみ分布中でのひずみの略線状集中状態から亀裂を検出可能としているが、この他、ひずみ分布中において、略線状のひずみ群以外の、周囲のひずみと大きさ及び向きが大きく異なっているひずみ領域を含んでいる状態から、この領域に対応する検出対象物の部材表面における塗膜の劣化や内部部材の腐食、錆発生を、前記亀裂の場合と同様に非破壊検出することもできる。

【0055】
例えば、検出対象部位における鋼材表面の、塗膜が付着力を失って鋼材から剥離し、塗膜の「剥がれ」を生じた部位では、誘導加熱で鋼材が加熱されても、鋼材の熱変形に伴う各部の微小変位が、剥離した塗膜表面に反映されず、解析結果として得られるひずみが特に小さくなる。ひずみ分布の表示手段への表示で観察者にこうしたひずみの小さい領域を視認させたり、別の画像解析でひずみ分布の画像中からひずみの小さい領域を抽出することで、塗膜の劣化を検出できる仕組みである。

【0056】
また、塗膜の「浮き」を生じた部位では、塗膜と鋼材との間に、浮きに基づく空気層が生じており、前記亀裂検出の場合と同様、加熱手段の誘導加熱で検出対象部位を発熱、温度上昇させると、温まった鋼材からの伝熱で塗膜と鋼材との間の空気層が膨張して、塗膜表面を伸張させるように微小変位させる。これにより、加熱前後の撮像画像の解析で得られるひずみ分布には、空気層のある箇所の表面が、引張ひずみの大きい部分としてあらわれることとなり、ひずみ分布におけるこうしたひずみ状態から、塗膜の浮きを適切に検出することができる。

【0057】
同様に、浮き錆が生じるなど内部鋼材が腐食して、塗膜の鋼材表面への付着が解かれた部位でも、誘導加熱で加熱され変形する鋼材各部の微小変位が、塗膜表面に反映されず、解析結果として得られるひずみが特に小さくなることで、こうした状態の検出が図れることとなる。さらに、鋼材表面に赤錆が生じている場合には、その分、磁性が弱まるので、赤錆発生領域は誘導加熱で加熱されにくくなり、鋼材の熱変形も小さくなって、その領域の塗膜表面についての解析を経て得られるひずみはより一層小さいものとなり、周囲のひずみとの差異拡大により判別性が高まる。

【0058】
こうした検出対象物表面における塗膜の「剥がれ」や「浮き」、内部鋼材の錆などの検出を、前記亀裂検出と合わせて実行可能として、亀裂検出に留まらない検出対象物表面の異常検出システムとすれば、当該システムを検出対象物に対し適用する一度の機会で複数の異常の有無について確認でき、効率よくこうした異常の検出と対策を実行可能となる。

【0059】
また、前記実施形態に係る亀裂検出システムにおいては、撮像画像の解析で得られた検出対象部位51のひずみ分布中におけるひずみの状態から亀裂の有無を検出可能な構成としているが、これに加えて、別途あらかじめ取得された、検出対象物又はこの検出対象物の検出対象部位と同一構成の部材にある亀裂の深さと、この亀裂位置に対応するひずみ分布中のひずみの大きさとの関係に基づいて、検出対象部位のひずみ分布における、前記ひずみが略線状に集中した状態のひずみ群について、ひずみの大きさから亀裂の深さ又は亀裂の貫通の有無を検出するようにすることもできる。

【0060】
検出対象物では、表面にある亀裂が深いほど、加熱時の表面でのひずみは大きく、また亀裂が貫通している場合、引張又は圧縮の各方向でひずみは最大となり、加熱前後の撮像画像から得られるひずみ分布でも、亀裂を示すひずみ群におけるひずみの大きさも同様の傾向を有する。

【0061】
これに基づき、検出対象物自体、又は検出対象物の検出対象部位と同一構成の部材における、例えば一部貫通部分のある亀裂が含まれる所定領域について、あらかじめ、表面及び亀裂の貫通した反対面で、それぞれ加熱前後の撮像からひずみ分布を取得すると共に、亀裂の貫通状態を取得し、亀裂のうち貫通部分と非貫通部分に対応するひずみの大きさをそれぞれ把握して、その関係性を求めておくことで、検出対象部位のひずみ分布における亀裂を示すひずみ群についても、ひずみの大きさがわかれば、それから亀裂の深さを導くことが可能となる。
この場合、検出対象部位のひずみ分布に基づいて、この検出対象部位にある亀裂の貫通の有無や亀裂深さを容易に検出でき、亀裂ごとに計測を行う手間が省け、亀裂の状態の把握を短時間に実行できる。

【0062】
実際の検出対象物の検出対象部位について、撮像画像を解析して取得したひずみ分布図を例に挙げて説明する(図4、図5参照)。検出対象部位に対しては、別途磁粉探傷試験を表裏からそれぞれ行い、亀裂の位置を把握すると共に、表裏の亀裂位置の差異に基づいて亀裂の貫通部分と非貫通部分を特定している。
得られたひずみ分布図には、亀裂を示す略線状のひずみ群が明瞭にあらわれているが、そのうち、図中の囲み部分に示した亀裂の非貫通部分に対応するひずみの大きさは、それ以外の亀裂の貫通部分に対応するひずみに比べて小さくあらわれており、ひずみの大きさから亀裂の深さを推定できることがわかる。

【0063】
(本発明の第2の実施形態)
前記第1の実施形態に係る亀裂検出システムにおいて、加熱手段20では、検出対象物50の検出対象部位51に対し、特に加熱範囲を限定することなく誘導加熱を行う構成としているが、この他、加熱手段22が、検出対象部位51に対し、十分高い所定周波数(例えば、数十kHz)の交流電流による誘導加熱を行うようにして、検出対象部位51の加熱手段寄り表面部分のみ加熱する構成とすることもできる。

【0064】
この場合、加熱手段22では、加熱用コイル23に対し、渦電流の表皮効果で検出対象部位51の加熱手段寄り表面部分のみ加熱でき、加熱時点で検出対象物50の厚さ方向に温度差を生じさせられる、所定周波数(例えば、20kHz)以上の交流電流を流すこととなる。

【0065】
このように、加熱用コイル23に高周波の交流電流を流して、検出対象物50における渦電流の電流浸透深さを、検出対象部位51における検出対象物の厚さより著しく小さくし、検出対象部位51の加熱手段寄り表面部分のみ有効に誘導加熱可能となるようにして、検出対象物50で厚さ方向に温度差を生じさせ、厚さ方向各位置ごとに熱変形の度合いを変える。

【0066】
これにより、検出対象物50にその厚さに応じた反り変形が生じる状態とすることができ、亀裂のある面を加熱した場合は反り変形に伴って亀裂幅を広げようとする引張応力を、また、亀裂のある面の反対面を加熱した場合は反り変形に伴って亀裂を閉塞させようとする圧縮応力を発生させるなど、亀裂部分に顕著なひずみを発生させられることとなり、検出対象物50の厚さ方向各部が一様に熱変形した場合よりも大きなひずみを亀裂部分に発生させて、撮像画像の解析で得られるひずみ分布中で、亀裂を示すひずみ群をより明確化することができ、亀裂検出をより確実且つ迅速に行える。

【0067】
なお、加熱手段22による検出対象部位51の加熱の後での、撮像手段による検出対象部位51の撮像は、誘導加熱された検出対象部位51の表面部分からの熱伝導で表面以外も温度上昇して、検出対象物50の厚さ方向における温度差が失われるより前に、実行されることとなる。

【0068】
そして、撮像画像の画像解析で得られる検出対象部位51のひずみ分布は、前記第1の実施形態同様、加熱による亀裂部分の微小変位に対応するひずみが略線状に集中した状態のひずみ群を含むものとなるが、加熱手段22の加熱位置により、亀裂部分の変位の状態が変わり、ひずみの性質も異なってくる。

【0069】
詳細には、検出対象部位51の亀裂部分を含む表面が加熱手段22で加熱される場合(図6参照)、検出対象物の厚さ方向各位置で熱変形の度合いが異なることに伴い、加熱され高温となる表面が伸張する向きの反りが発生して、表面の亀裂を開口させる変位が生じ、ひずみは引張ひずみとなる。一方、検出対象部位51における亀裂のある面とは反対側の表面が加熱される場合(図7参照)には、検出対象物の厚さ方向各位置で熱変形の度合いが異なることに伴い、前記反対側の表面が伸張する向きの反りが発生し、亀裂のある面は相対的に収縮して、表面の亀裂を閉口させる変位が生じ、ひずみは圧縮ひずみとなる。

【0070】
(本発明の第3の実施形態)
前記第1の実施形態に係る亀裂検出システムにおいては、別体の撮像手段10や加熱手段20を順次用いることで、亀裂の検出を実行する構成としているが、これに限らず、第3の実施形態として、図8に示すように、撮像手段15と加熱手段25を一体に組み合わせて、検出対象物50に対し移動可能な一装置として用いる構成とすることもできる。

【0071】
この場合、検出対象物50の各検出対象部位51、すなわち撮像手段15の撮像対象で且つ加熱手段25の加熱対象である部位を連続的に変えて、亀裂検出を行っていくことができる。例えば、検出対象物において連続又は断続的に設定される検出対象部位51に沿って軌道60となる部材を配設し、この軌道60上で撮像手段15と加熱手段25を組み合わせた装置2を走行可能とすれば(図8(B)参照)、撮像手段15と加熱手段25の各検出対象部位51との適切な位置関係をそのまま維持できることから、前記第1の実施形態同様、所定の一検出対象部位について亀裂を検出可能であるだけでなく、撮像手段15と加熱手段25を組み合わせた装置2を移動させて検出対象部位を変え、同様の検出を繰り返し行えることとなる。

【0072】
こうして、撮像手段15の撮像範囲及び加熱手段25の加熱範囲を一度調整し決定すると、各検出対象部位51に対し相対位置関係をそのまま維持しながら移動して複数の検出対象部位に対応でき、検出対象物の広い範囲にわたり同様の検出精度で効率よく亀裂検出を行える。また、検出のための撮像手段15と加熱手段25の据付作業を各検出対象部位ごとに繰り返す必要は無く、検出に係る作業の能率を向上させられる。

【0073】
撮像手段15と加熱手段25を組み合わせた装置2においては、撮像手段15の撮像範囲と加熱手段25の加熱範囲が一致し、且つ撮像手段15の撮像範囲に加熱手段25が存在しない配置構成、例えば、検出対象部位51の表面側に位置して撮像する撮像手段に対し、検出対象部位の裏面側から加熱手段が加熱する配置構成、であれば、一検出対象部位に対する亀裂検出において撮像手段と加熱手段をそれぞれ動かさずに済み、最も望ましい。しかしながら、検出対象物50の検出対象部位51における構造や、使用する加熱手段25の加熱構造の点から、そうした配置が難しい場合、検出対象物50に対し、加熱手段25が撮像手段15の存在する側に位置して検出対象部位51を加熱可能とする構成が、装置をコンパクト化できる点で望ましい。

【0074】
こうした構成で、撮像手段15に対し加熱手段25が固定となる場合には、撮像手段15で検出対象部位51を撮像後、装置全体を少し移動させて、加熱手段25の加熱範囲を検出対象部位51に一致させ、加熱を実行したら、再び撮像手段15で検出対象部位51を撮像した位置まで装置2を戻すこととなる(図9参照)。この場合、撮像手段15が加熱の前後で検出対象部位51に対し移動することとなるが、あらかじめ検出対象物に、移動する装置の位置決め用の基準点を設けて移動前後での位置ずれを防いだり、撮像される検出対象部位51に熱変形のない位置合せ用の基準点を設けて、加熱前後の撮像画像を基準点を用いて位置合せするようにすれば、撮像手段が固定配置の場合と同様の検出精度を確保できる。

【0075】
一方、撮像手段に対し加熱手段が可動となる場合には、撮像手段15で検出対象部位を撮像後、固定の撮像手段15に対し加熱手段25を移動させて検出対象部位に近付け、加熱手段25で検出対象部位を加熱可能とし、加熱を実行したら、加熱手段25を検出対象部位から離して、撮像手段15の撮像範囲から外れた元の位置まで加熱手段25を戻すこととなる(図10参照)。

【0076】
なお、検出対象物50の検出対象部位51が上向きで、撮像手段15と加熱手段25を組み合わせた装置が検出対象物50に載って落下せず移動できる場合は、軌道等によらず直接検出対象物上を走行してそのまま各検出対象部位に対し亀裂検出を行っていくようにすることもできる。また、この撮像手段15と加熱手段25を組み合わせた装置の、検出対象物50に対する移動や、撮像及び加熱の実行については、人の操作によらず、自律型のロボット装置として自動実行するようにしてもよい。

【0077】
さらに、検出対象物である構造物に対しその表面に沿って漏れなく移動する別の装置、例えば、構造物表面の洗浄装置、を用いる際に、こうした装置に撮像手段15と加熱手段25を組み合わせた装置を連結して、移動に合わせて亀裂検出に係る撮像及び加熱を行っていくようにすることもでき、この場合には撮像手段15と加熱手段25を組み合わせた装置を検出対象物に対し移動させるための機構を省略でき、簡略な構造ながら効率よく構造物表面各部の亀裂検出を行えることとなる。

【0078】
なお、前記第1ないし第3の各実施形態に係る亀裂検出システムにおいては、鋼材製の固定構造物である検出対象物50について、設定された検出対象部位51に対し、周囲に配置した撮像手段、加熱手段、及び画像解析手段を用いて、検出対象部位51各位置のひずみを求め、ひずみ分布から亀裂の検出を行う構成としているが、これに限らず、工場などの製造ラインを流れる、比較的小型の工業製品を検出対象物とし、ラインに設けた撮像手段としてのカメラで製品を撮像し、同じくラインに設けた加熱手段により製品を適切なタイミングで誘導加熱し、撮像により得られた加熱前後の製品画像を画像解析手段で解析して、各部のひずみを求め、さらに亀裂等の検出を行う構成とすることもできる。これにより、ラインを流れる多数の製品に対し順次その金属部分の欠陥検査を行う工程に、本システムを適用して、製品に対する非接触、非破壊の検査を無理なく行えることとなる。
【実施例】
【0079】
本発明の亀裂検出システムで、亀裂が生じている試験体に対し実際に亀裂検出を実行し、特に加熱状態の差異で検出結果に影響が生じるか否かについて評価した。
本発明の亀裂検出システムとして、撮像手段をなすCCDカメラ、加熱手段をなす誘導加熱装置、画像解析手段をなす、デジタル画像相関法のプログラムを実行するパーソナルコンピュータを用いる。その他、カメラを支える三脚、撮像用の照明等を補助的に使用した。撮像手段をなすCCDカメラは、三次元計測を可能とするために2台用いている。このCCDカメラは、モノクロ8bitの500万画素のものである。また、加熱手段をなす誘電加熱装置には、市販の出力1000W程度のIHクッキングヒータを用いた。なお、加熱方法の違いによる検出結果の差異を比較するために、他の加熱手段として、シリコンラバーヒーターを、また、温度変化を与える別の手段として、冷却を行うコールドスプレーと液体窒素を、それぞれ使用した。
【実施例】
【0080】
亀裂検出の検出対象物としては、あらかじめ繰り返し載荷し、微細な疲労亀裂を発生させた鋼製試験体を用いた。
この試験体の疲労亀裂の位置を特定するために、あらかじめ磁粉探傷試験を行い、亀裂の幅をマイクロルーペで計測した。表面亀裂の長さは155mmとなっており、実際に亀裂が生じていることが確認された。試験後、試験体は、実際の鋼構造物と同様に、検出対象部位となる亀裂発生部分を含む表面各部を塗装されて、塗膜に覆われた状態とされている。
【実施例】
【0081】
まず、加熱手段としてIHヒーターを用いて検出を行った例(実施例1)と、比較例としてラバーヒーターを用い、試験体に対する配設位置を変えて検出を行った二つの例(比較例1、2)とを比較して、加熱手段の違いによる差異を評価した。なお、試験体の表面温度を把握するため、サーモグラフィを用いて温度分布を測定している。
実施例1及び比較例1、2について、解析により得られたひずみ分布図を、図11、図13、図15に示す。また、サーモグラフィで測定した温度分布図を図12、図14、図16に示す。
【実施例】
【0082】
実施例1の、IHヒーターで亀裂直下から温めた場合では、ひずみ分布図から、明確に亀裂を検知できていることがわかる。ここで検知できる亀裂幅は0.02mmである。IHヒーターによる加熱時間は5分間であり、その間、約25℃から約120℃までの、95℃の温度上昇が見られた。
【実施例】
【0083】
実施例1のひずみ分布図では、亀裂直上のひずみは負のひずみ、すなわち圧縮ひずみとなっているが、これは、亀裂直下(試験体下側)に設置されるIHヒーターの誘導加熱で、亀裂のある面とは反対側の試験体表面(下面)が特に加熱されることで、試験体の厚さ方向に温度差が生じ、厚さ方向各位置で熱変形の度合いが異なることに伴って、試験体にその表面(下面)が伸張する向きの反りが生じ、亀裂のある面は相対的に収縮して、表面の亀裂を閉口させ、圧縮ひずみを発生させる状態となったことによるものと考えられる。
【実施例】
【0084】
一方、比較例1のラバーヒーターでは、亀裂直下位置から加熱を25分行っても、約25℃から約45℃までの20℃の温度上昇しか得られず、また、ひずみ分布図から亀裂位置は確認できなかった。
【実施例】
【0085】
さらに、比較例2では、鋼材上面の亀裂の近傍にラバーヒーターを設置し、10分間加熱しているが、ひずみ分布図から、前記比較例1と同様に、亀裂を検知できないことがわかる。
【実施例】
【0086】
以上から、ラバーヒーターのように表面からの熱伝導により鋼材を加熱させる方法では、加熱に時間を要し、その間に表面の塗膜も熱膨張するため、鋼材部分の、特に亀裂付近のひずみを捉えることが難しいことがわかる。一方、電磁誘導による加熱では、塗膜は加熱されず鋼材のみを加熱することから、亀裂付近のひずみが明瞭となっている。
【実施例】
【0087】
この電磁誘導による加熱の場合の加熱時間は、例えば5分としても、十分に検出対象部位の温度を上昇させられることは上記より明らかである。このように加熱時間を5分とする場合、この加熱時間を含む、亀裂検出までの一連の作業時間を最短で15分程度に収めることができ、従来の一般的な亀裂の検知手法を利用する場合に比べて極めて短時間に亀裂を検出して作業時間を大幅に短縮でき、検出の能率を向上させられる。
【実施例】
【0088】
次に、加熱手段としてIHヒーターを用い、このIHヒーターの設置位置を試験体上面の亀裂右側上部とし、三通りの加熱時間でそれぞれ検出を行い(実施例2、3、4)、加熱時間の違いによる差異を評価した。加熱時間は、実施例2が15秒、実施例3が30秒、実施例4が60秒である。なお、試験体の表面温度を把握するため、サーモグラフィを用いて温度分布を測定している。
【実施例】
【0089】
実施例2、3、4について、解析により得られたひずみ分布図を、図17、図19、図21に示す。なお、ひずみ分布図において、2本の一点鎖線はき裂の両端位置を示している。また、サーモグラフィで測定した温度分布図を図18、図20、図22に示す。
【実施例】
【0090】
実施例2(加熱時間15秒)では、試験体中央部の亀裂幅の広いエリアで、亀裂の存在が確認できる。また、実施例3(加熱時間30秒)では、試験体のほぼ全域にわたり亀裂の検知ができるようになる。さらに、実施例4(加熱時間60秒)では、ほぼ亀裂の両端まで、亀裂に沿ったひずみがみられ、検知が可能となっている。
【実施例】
【0091】
実施例2、3、4で、IHヒーターは亀裂の片側に設置したが、IHヒーターがない反対側の亀裂上に大きなひずみ変化が現れた。IHヒーター直下の亀裂部分では、誘導加熱でこの亀裂部分を含む試験体表面が特に加熱されることで、試験体の厚さ方向に温度差が生じ、厚さ方向各位置で熱変形の度合いが異なることに伴って、試験体にその表面が伸張する向きの反りが生じ、加熱された表面の亀裂が開口したことにより、大きなひずみ変化になったと推測される。さらに、反りの影響はIHヒーターの無い反対側にも及んで、同様に亀裂を開口させたことで、ひずみ変化が大きくなったものと考えられる。
【実施例】
【0092】
続いて、加熱手段としてIHヒーターを用い、このIHヒーターの設置位置を試験体下面の亀裂直下とし、加熱時間を275秒として加熱する中、試験体の表面温度が所定の段階(約80℃、約100℃、約120℃、及び約150℃)に達した際に、検出対象範囲(撮像範囲)を試験体中央から右側としてそれぞれ検出を行い(実施例5、6、7、8)、加熱の進行に伴うひずみ分布の変化を評価した。これら各実施例として検出を行った際の表面温度は、実施例5が約80℃、実施例6が約100℃、実施例7が約120℃、実施例8が約150℃である。前記各例同様、試験体の表面温度を把握するため、サーモグラフィを用いて温度分布を測定している。
【実施例】
【0093】
また、これと同様の条件で、検出対象範囲(撮像範囲)を試験体中央から左側に変えた場合についても、前記四段階の表面温度での検出をそれぞれ行い(実施例9、10、11、12)、加熱の進行に伴うひずみ分布の変化を評価した。前記各実施例として検出を行った際の表面温度は、実施例9が約80℃、実施例10が約100℃、実施例11が約120℃、実施例12が約150℃である。
【実施例】
【0094】
実施例5、6、7、8、並びに、実施例9、10、11、12の各段階について、解析により得られたひずみ分布図を、図23、図25、図27、図29、図31、図33、図35、及び図37に示す。なお、図23、図25、図27、及び図29のひずみ分布図において、右側の一点鎖線はき裂の右端位置を、図31、図33、図35、及び図37のひずみ分布図において、左側の一点鎖線はき裂の左端位置を示している。また、サーモグラフィで測定した温度分布図を図24、図26、図28、図30、図32、図34、図36、及び図38に示す。
【実施例】
【0095】
実施例5、9の各ひずみ分布から、試験体の表面温度が80℃でも、亀裂の端部まで検知可能であることがわかる。この場合、亀裂直上のひずみは圧縮ひずみとなっているが、これは、試験体下面側に設置されるIHヒーターの誘導加熱で、亀裂のある面とは反対側の試験体表面(下面)が特に加熱されることで、試験体の厚さ方向に温度差が生じ、厚さ方向各位置で熱変形の度合いが異なることに伴って、試験体にその表面(下面)が伸張する向きの反りが生じ、亀裂のある面は相対的に収縮して、表面の亀裂を閉口させ、圧縮ひずみを発生させる状態となったことによるものと考えられる。
【実施例】
【0096】
さらに、比較例として、加熱手段ではなく冷却手段を用い、常温状態の試験体表面から冷却を行った後、検出を行った二つの例(比較例3、4)について、亀裂を検出可能であるかを評価した。冷却手段は、比較例3がコールドスプレー、比較例4が液体窒素である。これらについても、試験体の表面温度を把握するため、サーモグラフィを用いて温度分布を測定している。
比較例3、4について、解析により得られたひずみ分布図を、図39、図41に示す。また、サーモグラフィで測定した温度分布図を図40、図42に示す。
【実施例】
【0097】
比較例3の、コールドスプレーで試験体を表面から冷却した場合、及び、比較例4の、液体窒素で試験体を表面から冷却した場合のいずれも、ひずみ分布図から亀裂位置を明確に識別することができなかった。上記のラバーヒーターで試験体を加熱した場合と同様、試験体表面からの熱伝導では、鋼材部分のみを温度変化させることができず、表面の塗膜における変形の影響で、鋼材部分の、特に亀裂付近のひずみを捉えきれていないことがわかる。
【実施例】
【0098】
以上のように、加熱手段としてIHヒーターを用いて試験体の鋼材部分に直接温度変化を与えた場合と、比較例の試験体表面からの熱伝導で温度変化を与えた場合とで、ひずみ分布からの亀裂の識別性に明らかな差異が見られ、特に、IHヒーターを用いると、塗膜への影響がほとんどない表面温度80℃の場合でも、亀裂を検知できることとなり、本発明の亀裂検出システムで、誘導加熱で検出対象部位を加熱すると共に、加熱前後の検出対象部位を表面の塗膜ごと撮像し、得られた加熱前後の撮像画像をデジタル画像相関法を用いて解析して検出対象部位のひずみ分布を取得するようにすれば、塗膜に影響を与えず、塗膜による検出対象部位の保護を維持したままで、且つ、短時間の加熱に基づく短い検出時間で、検出対象部位の亀裂を検出できることは明らかである。
【符号の説明】
【0099】
1 亀裂検出システム
10、15 撮像手段
20、25 加熱手段
22 加熱手段
23 加熱用コイル
30 画像解析手段
40 表示手段
50 検出対象物
51 検出対象部位
52 鋼材
53 被膜
54 亀裂
60 軌道
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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