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明細書 :水素精製昇圧装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6432842号 (P6432842)
登録日 平成30年11月16日(2018.11.16)
発行日 平成30年12月5日(2018.12.5)
発明の名称または考案の名称 水素精製昇圧装置
国際特許分類 C25B   1/02        (2006.01)
C25B   9/10        (2006.01)
C25B  15/08        (2006.01)
C25B   9/20        (2006.01)
B01D  53/22        (2006.01)
C01B   3/58        (2006.01)
B01J  23/42        (2006.01)
B01J  23/46        (2006.01)
FI C25B 1/02
C25B 9/10
C25B 15/08 302
C25B 9/20
B01D 53/22
C01B 3/58
B01J 23/42 M
B01J 23/46 301M
請求項の数または発明の数 11
全頁数 18
出願番号 特願2015-530909 (P2015-530909)
出願日 平成26年8月5日(2014.8.5)
国際出願番号 PCT/JP2014/070649
国際公開番号 WO2015/020065
国際公開日 平成27年2月12日(2015.2.12)
優先権出願番号 2013162148
優先日 平成25年8月5日(2013.8.5)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年7月28日(2017.7.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】渡辺 政廣
個別代理人の代理人 【識別番号】110001139、【氏名又は名称】SK特許業務法人
【識別番号】100130328、【弁理士】、【氏名又は名称】奥野 彰彦
【識別番号】100130672、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 寛之
審査官 【審査官】越本 秀幸
参考文献・文献 米国特許出願公開第2004/0211679(US,A1)
特開2007-023343(JP,A)
特開2012-180537(JP,A)
特開2012-041578(JP,A)
特開2008-121086(JP,A)
米国特許出願公開第2010/0129732(US,A1)
調査した分野 C25B 1/02、9/00
B01D 53/22、63/00、69/12
H01M 8/06
特許請求の範囲 【請求項1】
水素含有ガスから前記水素含有ガスより高圧高純度の精製水素ガスを生産する水素精製昇圧装置であって、
複数枚積層されたセル構造と、前記セル構造の積層方向に締付応力を加える押圧構造とを備え、
前記セル構造は、
固体高分子電解質膜と、
前記固体高分子電解質膜の一方に積層されるアノード触媒層と、
前記固体高分子電解質膜の他方に積層されるカソード触媒層と、
前記アノード触媒層に対向して、前記アノード触媒層の外側に設けられるアノード側給電体と、
前記カソード触媒層に対向して、前記カソード触媒層の外側に設けられるカソード側給電体と、
前記アノード側給電体に対向して、前記アノード側給電体の外側に設けられ、前記水素含有ガスが供給される流路を備えたアノード側セパレータと、
前記カソード側給電体に対向して、前記カソード側給電体の外側に設けられ、前記精製水素ガスが排出される流路を備えたカソード側セパレータと、を備え、
前記カソード側給電体の流路面は、前記固体高分子電解質膜と平行な面方向において、前記アノード側給電体の流路面に対して内側に収まる大きさである
水素精製昇圧装置。
【請求項2】
水素含有ガスから前記水素含有ガスより高圧高純度の精製水素ガスを生産する水素精製昇圧装置であって、
複数枚積層されたセル構造と、前記セル構造の積層方向に締付応力を加える押圧構造とを備え、
前記セル構造は、
固体高分子電解質膜と、
前記固体高分子電解質膜の一方に積層されるアノード触媒層と、
前記固体高分子電解質膜の他方に積層されるカソード触媒層と、
前記アノード触媒層に対向して、前記アノード触媒層の外側に設けられるアノード側給電体と、
前記カソード触媒層に対向して、前記カソード触媒層の外側に設けられるカソード側給電体と、
前記アノード側給電体に対向して、前記アノード側給電体の外側に設けられ、前記水素含有ガスが供給される流路を備えたアノード側セパレータと、
前記カソード側給電体に対向して、前記カソード側給電体の外側に設けられ、前記精製水素ガスが排出される流路を備えたカソード側セパレータと、を備え
前記セル構造の間にシール部分があり、該シール部分は、
ガスケットと、
前記ガスケットを押さえつけるために、前記アノード側セパレータ及び前記カソード側セパレータに形成された互いに対向する一対の平坦部と、
前記一対の平坦部の両方又は一方に形成された一重または近接する多重の環状突部を備え、
前記環状突部が突部間の前記ガスケットを圧縮して押し当てる構造になっている
水素精製昇圧装置。
【請求項3】
前記カソード側給電体の流路面は、前記固体高分子電解質膜と平行な面方向において、前記アノード側給電体の流路面に対して内側に収まる大きさである
請求項2に記載の水素精製昇圧装置。
【請求項4】
複数枚積層された前記セル構造は、電気的に直列または並列に接続されている
請求項1乃至3のいずれかに記載の水素精製昇圧装置。
【請求項5】
前記カソード側給電体と前記カソード側セパレータの間に配置され、
前記セル構造の積層方向に荷重を付与する弾性を有する導電性部材をさらに備える
請求項1~4のいずれかに記載の水素精製昇圧装置。
【請求項6】
前記アノード触媒層と前記アノード側給電体との間に、及び/又は、前記カソード触媒層と前記カソード側給電体との間に、多孔質の導電性撥水層が設けられる請求項1~5のいずれかに記載の水素精製昇圧装置。
【請求項7】
前記導電性撥水層は、
炭素材料と、界面活性剤と、フッ素樹脂の重合体ディスパージョン希釈体との混合物を、
粉砕・混合したものを前記アノード側給電体及び/又はカソード側給電体に塗装し、乾燥し、ホットプレスすることにより一体形成される
請求項6に記載の水素精製昇圧装置。
【請求項8】
前記押圧構造は、ベースプレートと、締付プレートと、前記締付プレートおよび前記セル構造の間に設けられる押え治具とを備え、
前記ベースプレートは、積層された前記セル構造の一端に設けられ、
前記締付プレートは、積層された前記セル構造の他端に設けられ、積層された前記セル構造を挟んで前記ベースプレートに押圧バネの弾性を介して締付けられており、
前記押え治具は、錐体形状であり、前記セル構造側の底面は、前記セル構造の端面に略均等に押圧可能な形状であり、
前記締付プレートおよび前記押え治具は、少なくとも一方が凸部を有することにより1点で接する
請求項1乃至3のいずれかに記載の水素精製昇圧装置。
【請求項9】
前記セル構造および前記押圧構造を収納する高圧タンクをさらに備え、
前記高圧タンク内には、ガス媒体が充填されており、
前記ガス媒体の圧力は、前記水素含有ガスの圧力より高く、前記精製水素ガスの圧力よりも低く保たれている、
請求項1~8のいずれかに記載の水素精製昇圧装置。
【請求項10】
前記アノード側給電体および前記カソード側給電体は、多孔質の材料によりなる請求項1~9のいずれかに記載の水素精製昇圧装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の水素精製昇圧装置と、
水素収納タンクと、
水トラップ・ドレイン器と、
を備え、
前記水トラップ・ドレイン器は、前記水素精製昇圧装置と前記水素収納タンクとの間の水素経路上に設置されており、かつ交互に流路切り替えが可能な一対の水トラップを有する、
水素製造システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧の水素含有ガスから高濃度高圧の精製水素ガスを生成するための水素精製昇圧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素を燃料とする固体高分子形燃料電池(以下、PEFCという。)の開発が進められ、自動車や家庭用自家発電向けに広く開発が進んでいる。家庭用自家発電向けの燃料電池システムはすでに実用化されており、また、燃料電池を搭載した燃料電池自動車も、近い将来に実用化されることが期待されている。家庭用自家発電向けの燃料電池システムと異なり、燃料電池自動車の普及のためには燃料供給インフラを整備する必要がある。すなわち燃料電池自動車の普及に合わせて、各地に水素ステーションを建設していくことが必要である。
【0003】
水素ステーションにおいては、高純度で高圧な水素を貯蔵し、燃料電池自動車に供給する。そして、水素ステーションに燃料を供給する方法として、他の場所で製造した水素をタンクローリーで輸送する方法と、水素ステーションで水素を製造する方法がある。しかし、水素はエネルギー密度が低いため、ガソリンのようにタンクローリーで輸送することには向かない。このため、水素ステーションにおいて水素を製造して、精製・昇圧を行うことが好ましい。また、燃料電池自動車普及の初期においては、特に小型で低コストの水素ステーションが必要になると考えられる。
【0004】
従来、水素を製造するプロセスとしては、メタンを主成分とする都市ガスを改質し水素を含んだ改質ガスを生成し、生成された改質ガスを圧力スイング吸着(PSA:Pressure Swing Adsorption)システムにより精製して、生成された水素をコンプレッサにより昇圧するプロセスが知られている。しかし、PSAシステムは大型でコストが高い。また、高純度水素として回収できる割合が通常80%以下で、残りは改質反応の熱源に使わざるを得ない。さらに、水素を水素ステーションで必要な700~1000気圧まで昇圧するには2段コンプレッサを用いるシステムを使用する必要があるが、圧縮効率が60-70%と低く、無駄に電気エネルギーを損失し、またコストが高くなる。
すなわち、従来の水素製造プロセスは大型で高コスト、低エネルギー変換効率であるという課題があった。
【0005】
このため、水素の精製と昇圧を同時に行うことによって、小型で低コストな水素製造プロセスが開発されてきた。このようなプロセスの例として、特許文献1には、水素を含む改質ガスを精製・昇圧する水素昇圧プロセスが記載されている。このプロセスは、PEFCのセルに外部電力を加える事により、アノード側に供給する改質ガスから、カソード側に精製・昇圧された水素を作るものである。水素の精製と昇圧を同時に行い、電気エネルギーが直接精製・昇圧のエネルギーとして使用されるため、効率が高く、コストが低い。
【0006】
また、特許文献2には、水の電気分解により水素を生成・昇圧する水電解プロセスが記載されている。このプロセスは、PEFCのセルに外部電力を加える事により、アノード側に供給する水を電気分解することによりカソード側に昇圧された水素を生成するものである。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特許第3358820号公報
【特許文献2】特許第4010193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
特許文献1に記載の水素昇圧装置は、10気圧以下の水素ガスしか取り出すことができていない。これは、この装置が単一セルであるため、製造水素量の増加に比例して電極面積も増大し、同時にシールすべき断面積が増大し気密保持が極めて困難となり、昇圧される水素の圧力が、10気圧より大きくなると水素排出系路からガス漏などの問題があるためである。すなわち、特許文献1に記載の水素昇圧装置は、水素ステーションにおいて必要とされる700~1000気圧の圧力の水素を取り出すために十分な耐久性がない。
【0009】
特許文献2に記載の高圧水素製造装置は、高圧容器内に水電解セルを固定維持することにより、350気圧以上の高圧の水素を生成することができる。しかし、水の電気分解に多大な電気エネルギーを使用するため、改質ガスから水素を精製・昇圧するシステムと比較してエネルギー効率が悪く、高コストである。また、水電解の場合は、耐腐食性のセル材料を使用する必要があったため、材料コストも高価であった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、高圧力環境に対しても耐久性を有し、且つ、低コストで改質ガスから水素を精製・昇圧することが可能な水素精製昇圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、水素含有ガスから前記水素含有ガスより高圧高純度の精製水素ガスを生産する水素精製昇圧装置が提供される。この水素精製昇圧装置は、複数枚積層されたセル構造と、そのセル構造の積層方向に締付応力を加える押圧構造とを備える。そして、そのセル構造は、固体高分子電解質膜と、その固体高分子電解質膜の一方に積層されるアノード触媒層と、その固体高分子電解質膜の他方に積層されるカソード触媒層と、を備える。また、そのセル構造は、そのアノード触媒層に対向して、そのアノード触媒層の外側に設けられるアノード側給電体と、そのカソード触媒層に対向して、そのカソード触媒層の外側に設けられるカソード側給電体と、を備える。さらに、そのセル構造は、そのアノード側給電体に対向して、そのアノード側給電体の外側に設けられ、その水素含有ガスが供給される流路を備えたアノード側セパレータと、そのカソード側給電体に対向して、そのカソード側給電体の外側に設けられ、その精製水素ガスが排出される流路を備えたカソード側セパレータと、を備える。
【0012】
また、上記の水素精製昇圧装置は、そのセル構造およびその押圧構造を収納する高圧タンクをさらに備えることが好ましい。そして、その高圧タンク内には、ガス媒体が充填されており、そのガス媒体の圧力は、その水素含有ガスの圧力より高く、その精製水素ガスの圧力よりも低く保たれていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
このような水素精製昇圧装置は、高圧力環境に対しても耐久性を有し、且つ、低コストで改質ガスから水素を精製・昇圧することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の各実施形態にかかる水素製造システムのブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる水素精製昇圧装置の概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる水素精製昇圧装置の単位セルの断面図である。
【図4】本発明の(a)第1実施形態、(b)第2実施形態にかかる水素精製昇圧装置の回路図である。
【図5】本発明の(a)第1実施形態、(b)第3実施形態にかかる水素精製昇圧装置のカソード側セパレータ内に設置される弾力性を有する導電性部材である。
【図6】(a)本発明の第1実施形態にかかる水素精製昇圧装置の単位セルの断面図であり、(b)c部分の拡大図であり、(c)d部分の拡大図である。
【図7】(a)~(f)は、アノード側セパレータのアノード側側面図である。
【図8】図7(a)のアノード側セパレータに対向するカソード側セパレータのカソード側側面図である。
【図9】図6(b)に示すシール構造の変形例を示す、図6(a)のc部分の拡大図である。
【図10】一層の単セルを備えた本発明の水素精製昇圧装置の運転結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。

【0016】
<水素製造システムの全体構成>
図1に、本発明の各実施形態にかかる水素精製昇圧装置を用いた水素製造システム1を示す。水素製造システム1は、外部から都市ガスが供給され、水素製造システム1内で高純度高圧の水素が製造される。製造された水素は、水素タンク4内に貯蔵され、燃料電池自動車等へ供給される。

【0017】
図1に示すように、水素製造システム1は、改質器2aと、一酸化炭素選択酸化反応器(PROX)2bと、水素精製昇圧装置3とを備え、水トラップ・ドレイン器4aと水素タンク4とが付加される。外部から供給される都市ガスは、主成分がメタンであり、圧力は1~10気圧である。改質器2aでは、都市ガスに水蒸気を混合して、高温環境下で触媒にさらすことによりメタンを分解して水素を生成する。都市ガスが改質されると水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素が生成される。

【0018】
改質器2aで生成された水素、一酸化炭素、二酸化炭素及び水蒸気を含む改質ガスは、直接水素精製昇圧装置に供給することは好ましくない。これは、改質ガスに含まれる一酸化炭素が水素精製昇圧装置3に供給されると、触媒が劣化するおそれがあるためである。

【0019】
そこで、改質器2aから出る改質ガスは、一酸化炭素を予め除去するため一酸化炭素選択酸化反応器2bに供給される。一酸化炭素選択酸化反応器2bには、改質ガスとともに空気が供給され、改質ガス中の一酸化炭素が酸化されて二酸化炭素になる。このような一酸化炭素選択酸化反応器2bの内部は、メタルハニカムにPtFe/モルデナイト触媒を担持したものを使用することが好適である。

【0020】
一酸化炭素選択酸化反応器2bからは、水素、二酸化炭素、水蒸気を含んだ改質ガスが排出され、水素精製昇圧装置3に供給される。
なお、一酸化炭素選択酸化反応器2bに代えて、一酸化炭素選択メタン化器を用いることが出来る。その内部は、メタルハニカムにRuまたはV-Ni/アルミナ触媒を担持したものを使用することも出来る。また、一酸化炭素選択酸化反応器または一酸化炭素選択メタン化器を改質器2aの容器内に一体化して備えても良い。

【0021】
水素精製昇圧装置3では、水素を含有する改質ガスを精製昇圧して、改質ガスより高圧高濃度の水素を取り出す。改質ガスは、1~10気圧であることが想定されるが、この範囲外の圧力であっても良い。水素精製昇圧装置3において、理論的にはアノード、カソード間にかける電圧が60mV、120mV、180mVと増加するごとに水素が10倍、100倍、1000倍と精製昇圧される。電解質膜中は、原理的には水素イオンのみを透過させ得るため、カソードにはほとんど水素のみが生じる。アノードガスに含まれる水素以外のガスが膜中をごく僅か透過し、カソード側に不純物として移動する。精製された水素に含まれる不純物は、好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下の濃度である。昇圧された水素は、750気圧以上、好ましくは850気圧以上、さらに好ましくは1000気圧以上の圧力である。なお、本昇圧装置は、高純度の低圧水素を上記のように昇圧する目的で用いることも出来る。

【0022】
水素精製昇圧装置3において生成された水素は、水素タンク4に貯蔵される。水素精製昇圧装置3と水素タンク4との間の水素経路上には水トラップ・ドレイン器4aが設けられている。
水素精製昇圧装置3に電流が流れる時、アノード触媒層23からカソード触媒層33に移動するプロトンが水分子を同伴して固体高分子電解質膜40を移動し、カソード触媒層33では浸透水として水が生じる。この水を水素中から効率よく除去するために、水素流路中に水トラップ・ドレイン器4aが設けられる。
水トラップ・ドレイン器4aは、ドレインバルブ付きの一対の水トラップを有し、交互に切り替え排水除去することで、水素精製昇圧装置3の連続運転時にも水素経路中の水を除去し、水素純度を高めることを可能とする。

【0023】
燃料電池自動車に水素を供給するときは、水素タンク4と燃料電池自動車の燃料タンクを連通することにより、圧力差によって燃料電池自動車の燃料タンクに水素が供給される。

【0024】
<第1実施形態:直列方式の水素精製昇圧装置>
(1-1:水素精製昇圧装置の全体構成)
図2に、本発明の第1実施形態にかかる水素精製昇圧装置3の模式図を示す。水素精製昇圧装置3は、高圧タンク3aの中に100気圧の圧縮空気、好ましくは圧縮窒素ガスが充填されており、積層されたセル構造8が内部に設置されている。圧縮空気又は圧縮窒素ガスは、水素含有ガスの圧力より高く、その精製水素ガスの圧力よりも低い。このため、水素ガス排出経路11cと高圧タンク3の圧力差を少なくして、高圧水素がリークすることを防止する。また、高圧タンク内には、水素センサを設置し、水素リークを速やかに探知することができる。
積層されたセル構造8は、ベースプレート6と締付プレート7によって積層方向に締付応力を加える押圧構造によって固定されている。締付プレート7とセル構造8の間には、押え治具9が設けられる。

【0025】
ベースプレート6は、積層されたセル構造8の一端に設けられ、締付プレート7は、積層されたセル構造8の他端に設けられている。締付プレート7は、ボルト10及び押圧ばね10bを介在したナット10aにて、積層されたセル構造8を挟んでベースプレート6に締付けられており、押え治具9に対向する面の中央に球面状凹部(不図示)を有する。押え治具9は、扁平な錐体形状をしており、締付プレート7に対向する面の中心部に球面状凹部(不図示)と嵌合可能な球状突起9aを有する。また、押え治具9は、セル構造8側の底面がセル構造8の端面と同一形状である。すなわち、押え治具9は、締付プレート7と1点で接し、セル構造8と全面で接する構造となっている。

【0026】
このように構成された本実施形態のセル構造では、締付プレート7を締め付けるボルト10、ナット10aによる締付トルクに多少ばらつきがあっても、押え治具9には上面中心の球状突起9aから締付プレート7全体の締付力が集中して作用する。従って、積層されたセル構造8の全面は押え治具9により均一な面圧で押さえられ、面圧の偏りが無くなる。また温度上昇や振動によりナット10aが緩んだ場合においても、押え治具9が押圧ばね10bにより押さえられるので、セル構造8の締付圧力が緩むことがない。従って、積層セル構造8の気密性が損なわれることが無く、また接触抵抗も増大しないため、接触抵抗増大による損失が発生することがない。

【0027】
水素精製昇圧装置3には、改質ガス供給経路11aによって改質ガスが供給され、積層したセル構造8で水素が精製昇圧される。精製昇圧された水素は水素ガス排出経路11cによって水素タンク(不図示)に供給される。また、水素が取り出された後の改質ガスは、主に二酸化炭素と水蒸気から構成され、改質ガス排出経路11bによって排出される。

【0028】
このような水素精製昇圧装置3はシステムに液体を用いないため、高圧容器3aを任意の方向を上にして設置することができる。水を用いる水電解の水素昇圧装置は、水の供給経路を鉛直方向下方にする必要から、設置方向が決まってしまうことと異なる。ただし、水素の精製昇圧プロセスにより凝縮水が生じる場合があるため、図2のように、水素ガス排出経路11cが高圧容器3aの下側になる向きに設置することが好ましい。

【0029】
図2においては、5枚のセル構造8が積層されているが、セル構造8の積層枚数は、セル構造8の面積と、必要な供給電力量によって任意に決定することができる。

【0030】
一般の水素ステーション向けにおいては、100Nm/hの水素を生成する必要がある場合が多い。このためには、1.33A/cmの電流密度のセルを使用する場合、30×30cm電極断面積のセル100セルをスタック化したものを2スタック又は15×15cm電極断面積のセル100セルをスタック化したものを8スタック用いることが好適である。

【0031】
また、一般の家庭向け水素貯蔵においては、0.5Nm/hの水素を生成する必要がある場合が多い。このためには、1.33A/cmの電流密度のセルを使用する場合、15×15cm電極断面積のセル4セルをスタック化したものを1スタック用いることが好適である。

【0032】
また、積層枚数を大きくすることで、単位セル構造8あたりのセパレータの流路面積が小さくなる。流路面積と圧力の積が必要な締付圧力に比例するため、積層枚数を大きくしてセパレータの流路面積を小さくすることで、積層したセル構造8を締め付けるために必要な締付圧力を低減することが可能となる。

【0033】
(1-2:セル構造の詳細説明)
図3を用いて、セル構造8の詳細について説明する。図3に、1単位分のセル構造8を示す。セル構造8は、セパレータ8aによって区切られている。セパレータ8aには固体高分子電解質膜40が挟まれる。対向するセパレータ8aのシールは、アノード側セパレータ20及びカソード側セパレータ30に形成された互いに対向する一対の平坦部の間にガスケット12が設けられ、ガスケット12が押圧されることによってシールされている。

【0034】
本実施形態において、セパレータ8aの断面は矩形状に形成される。矩形状にすることによって、セパレータ製造時にセパレータの材料を効率よく利用することができるという利点がある。また、矩形状の中でも正方形、長方形などの種々の形状があるが、正方形が特に耐圧性を向上させる面からは好ましい。この場合、セパレータ8aの断面のみならず、他のアノード側流路20b、カソード側流路30bなどの断面も同様に矩形状にすることがセパレータ材料を効率よく利用する面からは好ましい。また、この場合、押え治具9は、底面がセパレータと同一の形状の四角錐形状にすれば、セル構造8と全面で接して略均一な圧力を加える事ができる。

【0035】
固体高分子電解質膜40の一方にアノード触媒層23が積層され、固体高分子電解質膜40の他方にカソード触媒層33が積層される。

【0036】
アノード触媒層23の外側に、導電性撥水層22が積層される。さらに、導電性撥水層22の外側にアノード側給電体21がアノード触媒層23に対向して設けられる。さらに、アノード側給電体21の外側に、改質ガス供給部20aから改質ガスが供給されるための流路20bを備えたアノード側セパレータ20が設けられる。

【0037】
カソード触媒層33の外側に、導電性撥水層32が積層される。さらに、導電性撥水層32の外側にカソード側給電体31がカソード触媒層33に対向して設けられる。さらに、カソード側給電体31の外側に、精製された水素が水素ガス排出部30aへ排出されるための流路30bを備えたカソード側セパレータ30が設けられる。さらに、カソード側給電体31とカソード側セパレータ30に設けられた流路30bの間には、少なくとも一部が導電性を有し、セル構造8の積層方向に荷重を付与する弾力性を有する導電性部材34が配置される。

【0038】
カソード側セパレータ30に形成されるカソード側流路30bは、固体高分子電解質膜40と平行な面方向において、アノード側セパレータ20に形成されるアノード側流路20bに対して内側に収まる大きさに形成される。

【0039】
このような構成により、固体高分子電解質膜40のアノード側とカソード側は、固体高分子電解質膜40によって物理的に分離され、シールされる。このため、気体は、固体高分子電解質膜40を介して固体高分子電解質膜40のアノード側とカソード側を行き来することができない。固体高分子電解質膜40はイオン伝導体であり、本実施形態の場合、水素イオンは固体高分子電解質膜40を介して固体高分子電解質膜40のアノード側とカソード側を行き来することができる。

【0040】
以下、このセル構造を構成する各要素について詳細に説明する。
(i)固体高分子電解質膜
本実施形態では、固体高分子電解質膜40は、プロトン(水素イオン)を伝導可能な固体材料を用いることができる。このようにプロトン(水素イオン)を伝導可能な固体材料を用いると固体高分子電解質膜40に電流を加える事により、カソード側流路に水素を生成するという利点があるからである。具体的には、固体高分子電解質膜40は、ポリマーの不織布やフィブリル、ガラス繊維で補強したフッ化炭素系電解質(PFSA(パーフルオロスルホン酸)膜、Nafion(R)(デュポン社製)など)、又は炭化水素系電解質膜(SPEKP(スルフォン酸化ポリエーテルケトンフォスフィンオキシド)、SPK-bl-1(スルフォン酸化ポリエーテルケトンブロック共重合体)、SPEEK(スルホン化ポリエーテルエーテルケトン)など)を用いる。膜中のガス透過が低いため、炭化水素系電解質膜を使用することが最も好ましい。

【0041】
(ii)触媒層
上述したように、固体高分子電解質膜40の一方にはアノード触媒層23が積層され、固体高分子電解質膜40の他方にはカソード触媒層33が積層されている。このアノード触媒層23は、水素をプロトン(水素イオン)と電子に分解可能な多孔質材料を用いることができる。このように水素をプロトン(水素イオン)と電子に分解可能な多孔質材料を用いるとアノード触媒層で水素が効率よく分解されるからである。具体的には、このアノード触媒層23は、カーボンブラックに担持されたPt単味またはPtRu合金の微粒子触媒(Pt/CBまたはPtRu/CB)を、固体高分子電解質膜40に薄層コーティングすることにより、形成される。特に、PtRu/CB触媒は、COの酸化活性、被毒耐性に優れるため、一酸化炭素選択酸化反応器で完全にCO除去がされていない恐れがある場合に有用である。一方、カソード触媒層33は、カーボンブラックに担持されたPt単味の微粒子触媒(Pt/CB)を、固体高分子電解質膜40に薄層コーティングすることにより、形成される。さらに、これらの触媒層23、33において、カーボンブラックに担持された微粒子触媒にPFSAが薄層にコーティングされる。

【0042】
このような構成により、アノード触媒層23、カソード触媒層33において、触媒層内に触媒粒子面と、気体の水素通路と、固体高分子電解質膜40の電解質面とが接触する三相帯界面が形成される。そして、アノード触媒層23における水素酸化反応、カソード触媒層における水素発生反応が円滑に進む。この結果、このような構成は、アノード触媒層23、カソード触媒層33それぞれの反応活性を高めるという利点がある。反応の活性が高まる結果、触媒層に使用される貴金属(Pt、Ru)の使用量を低減することで、触媒層の低コスト化を図ることが可能となる。

【0043】
これらの触媒層23、33は、以下のように、触媒金属と、導電性材料と、電解質材料との混合物を固体高分子膜40のそれぞれの面に塗装するという手順にて作成する。このような手順で作成すると、触媒金属の使用量を抑えつつ、高い反応性をえるという利点があるからである。

【0044】
具体的には、まず、Pt/CBまたはPtRu/CB、純水、及びエタノールの混合物をボールミルで粉砕、混合する。その後、5w%Nafion溶液(たとえばNafion/CB=0.7~1.0)を追加し、さらにボールミルで粉砕、混合する。これにより、触媒層用インクが形成される。

【0045】
次いで、この触媒層用インクを、スワールスプレー装置によって、固体高分子電解質膜40のそれぞれの面に塗装する。これより、固体高分子電解質膜40の一方の面にアノード触媒層23を形成し、他方の面にカソード触媒層33を形成する。アノード触媒層23及びカソード触媒層33が形成された固体高分子電解質膜40を、100℃にて真空乾燥後、130℃、50MPaの条件でホットプレスすることにより、燃料電池用電極膜(CCM:Catalyst Coated Membrane)が形成される。

【0046】
この時、触媒金属担持量としては、0.02~0.5mg/cm2、好ましくは0.05~0.2mg/cm2、さらに好ましくは0.08~0.12mg/cm2がよい。特に、コスト/性能のバランスの観点から触媒金属担持量として0.1mg/cm2を採用する。

【0047】
(iii)導電性撥水層
上述したように、アノード触媒層23とアノード側給電体21との間には、導電性多孔質の導電性撥水層22が設けられるている。また、カソード触媒層33とカソード側給電体31との間には、導電性多孔質の導電性撥水層32が設けられている、これらの導電性撥水層22、32は、良導電性を有し、多孔質であり、平滑な面を有し、耐腐食性を有する。また、アノード側導電性撥水層22においては、改質ガスが拡散され、アノード側触媒層23に均一に改質ガスを供給することを補助する。このような構成の導電性撥水層22、32によれば、アノード触媒層で起こる電気化学反応によって給電体の金属が腐食することを防止でき、且つ、給電体から供給される電流の抵抗を増加することなく、改質ガスを良好かつ均一にアノード側触媒層23まで輸送および生成水素をカソード側触媒層33から排出することができるという利点がある。

【0048】
このような導電性撥水層22、32は、具体的には、以下の手順のように炭素材料と、界面活性剤と、フッ素樹脂の重合体ディスパージョン希釈体との混合物を、粉砕・混合したものをアノード側給電体21及び/又はカソード側給電体31に塗装し、乾燥し、プレスすることにより一体形成して作成する。

【0049】
具体的には、まず、炭素材料としてカーボンブラックと、界面活性剤としてTriton 10~20%と、フッ素樹脂としてPTFEまたはFEP(フッ化エチレン/プロピレン共重合体)のディスパージョン希釈体との混合物を、ボールミルで粉砕、混合する。このとき、カーボンブラックとフッ素樹脂に対する比率は、1/4~2/3が好ましい。

【0050】
次いで、これより形成される導電性撥水層用インクを、スワールスプレー装置にて、アノード側給電体21及び/又はカソード側給電体31の片面に塗装する。これを窒素雰囲気下、280℃の条件で界面活性剤を除去した後、300℃、50MPaの条件にてホットプレスすることにより、アノード側給電体21及び/又はカソード側給電体31と導電性撥水層22、32が一体形成される。導電性撥水層22、32の厚さは、20~100μmがよく、好ましくは40~80μmがよく、さらに好ましくは55~65μmがよい。導電性撥水層22、32の気孔率は、30~80%がよく、さらに好ましくは40~70%がよく、さらに好ましくは50~60%がよい。このような導電性撥水層22、32の製造方法によれば、低コストで高品質な導電性撥水層を製造できるという利点がある。

【0051】
(iv)給電体
上述のように、アノード触媒層23の外側に、アノード側給電体21がアノード触媒層23に(導電性撥水層22を介して)対向して設けられる。また、カソード触媒層33の外側に、カソード側給電体31がカソード触媒層33に(導電性撥水層32を介して)対向して設けられる。アノード側給電体21、カソード側給電体31は、所定の空孔率を有する導電性材料を用いることができる。このような材料であれば良好な導電性とガス拡散特性を両方兼ね備えるという利点があるからである。このような材料の中でも、良導電性を有し、多孔質であり、平滑な面を有し、耐腐食性を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、アノード側給電体21、カソード側給電体31には、金属焼結体多孔質シート(PMS)が用いられる。さらに好ましくは、高圧縮環境にさらされる事による材料のクリープ変形を抑止するため、金属焼結体多孔質シートに焼き入れ処理を施し、給電接触面にメッキ等により抵抗低減処理を施したPMSを用いる。

【0052】
さらに、アノード側給電体21、カソード側給電体31に上述の導電性撥水層22、32が形成される場合、金属焼結体多孔質シート自体は必ずしも耐食性金属である必要はない。このとき、金属焼結体多孔質シートとしてはCu等の安価な金属が使用可能である。

【0053】
(v)直列式の電気的接続
図4(a)を用いて、セル構造8の電気的接続について説明する。図4(a)に示すように、本実施形態では、複数枚積層されたセル構造8が、電気的に直列に接続されている。すなわち、このセル構造8では、アノード側セパレータ20、アノード側給電体21、アノード側導電性撥水層22、アノード側触媒層23は電気的に接続されている。また、カソード側セパレータ30、弾力性を有する導電性部材34、カソード側給電体31、カソード側導電性撥水層32、カソード側触媒層33は電気的に接続されている。
また、固体高分子電解質膜40およびガスケット12は非導電性であり、電気的に絶縁されている。しかし、固体高分子電解質膜40はイオン伝導体であるため、水素イオンが固体高分子電解質膜40内を伝導するため、アノード側からカソード側に電荷が運ばれる。

【0054】
よって、図4(a)に示すように、積層したセル構造8の一方の端部のアノード側セパレータ20に、外部電源15の正極13を接続し、積層したセル構造8の他方の端部のカソード側セパレータ30に、外部電源15の負極14を接続し、アノード側セパレータ20に水素含有ガスを供給することで、積層したセル構造8に直列に通電することが可能である。すなわち、外部電源15と積層したセル構造8は、電気的に直列に接続される。このように複数枚積層されたセル構造8が、電気的に直列に接続されていることによって、積層しない場合と比較して各セル間の給電端子の電源との接続が省略でき、比較的高い電圧で作動するという利点がある。

【0055】
外部電源15により印加される電圧に応じて、所定の圧力まで昇圧された水素がカソード側セパレータ30に生成される。外部電源15で印加する電圧を大きくするほど、カソード側セパレータ30に生成される水素の圧力を高くすることができる。

【0056】
(vi)弾力性を有する導電性部材
図5(a)を用いて、弾力性を有する導電性部材34の具体的形状について説明する。上述したように、カソード側給電体31とカソード側セパレータ30に設けられた流路30bの間には、少なくとも一部が導電性を有し、セル構造8の積層方向に荷重を付与する導電性部材34が配置される。この導電性部材34は、カソード側流路30b内に収納される形状をしており、矩形状のプレートを、波状に折り曲げることにより波状形状34aが形成されている。波状形状34aは、セル構造8に組み込まれた場合、弾性変形することによりセル構造の積層方向に荷重を付与する。

【0057】
このような構成により、導電性部材34がカソード側セパレータ30及びカソード側給電体31に荷重を付与するため、カソード側給電体31が、カソード側セパレータ30又はカソード側触媒層33から浮き上がり電気的接触が悪化する問題を防止することができる。

【0058】
(vii)シール構造
図6を用いてシール構造の詳細について説明する。セル構造8は、セパレータ8a間のシール部分が、ガスケット12が押圧されることでシールされる。さらに、このシール構造では、ガスケットを押さえつけシール性を向上するために、アノード側セパレータ20及びカソード側セパレータ30に形成され、互いに対向する一対の平坦部の両方又は一方に環状突部20d、30dが形成され、環状突部20d、30dがガスケット12を押し当てる構造を有する。環状突部20d、30dは、図9に示すように互いに押し合わない位置に設けてもよく、複数設けてもよい。また突部の形状や大きさの異なるものを複数設けてもよい。
具体的には、環状突部20d、30dの断面は三角形状をしており、好ましくは正三角形又は頂角が30~150度の二等辺三角形で頂点を丸めた構造を有している。頂点が丸められていることにより、ガスケット12を傷つけることを防止する。環状突部20d、30dはアノード側セパレータ20、カソード側セパレータ30の平坦部から削り出しにより形成される。
シールは、改質ガス供給路、改質ガス排出路の周縁部、およびセパレータ流路の外周部に形成される。このようなシール構造は、シール面が多少傾いたとしても良好なシール性を保ち、またシール面にOリングを設ける必要がないためコスト低減が可能である。

【0059】
(viii)アノード側流路
図7(a)を用いて、アノード側セパレータ20に形成されるアノード側流路20bについて説明する。アノード側流路20bは、改質ガス入口8cと、改質ガス出口8dを有する。改質ガスのアノード側流路20b内の拡散を補助するために、溝部分8fと壁部分8eが形成される。溝部分8fと壁部分8eが存在することによって、アノード側流路20b内に大きな濃度分布が発生し未反応の改質ガスが改質ガス出口8dに排出されることを防止する。アノード側流路20bと同一形状の導電性撥水層付き多孔質金属シート(アノード側給電体21)を介して改質ガスはアノード触媒層23に供給される。

【0060】
(ix)カソード側流路
図8を用いて、図7(a)に示すアノード側セパレータ20に対向するカソード側セパレータ30に形成されるカソード側流路30bについて説明する。このように、カソード側セパレータ30に形成されるカソード側流路30bは、固体高分子電解質膜40と平行な面方向において、アノード側セパレータ20に形成されるアノード側流路20bに対して内側に収まる大きさに形成される。具体的には、図8に示すように、カソード側流路30b(点線)は、アノード側流路20bに対して、流路の中心を同じくして、アノード側流路20bを均等に縮小した構成をとっている。このような構成をとることによって、カソード側流路30bに高圧の水素が生成されても電解質膜が破れにくいという利点がある。カソード側流路30bと同一形状の導電性撥水層付き多孔質金属シート(カソード側給電体31)を介してカソード触媒層33で生成した精製水素ガスは水素ガス排出経路に排出される。

【0061】
<作用効果>
本実施形態の水素精製昇圧装置3は、上述のような構成を有するため、下記に記載する有利な効果を奏する。
(1)特許文献2に示すような水電解から高圧水素を製造する従来技術と比較して、本実施形態の場合は水を用いないためセル構造8を構成する各部品が腐食しにくい。このため、耐腐食性のセル材料を使用する必要がなく、低コスト化を図ることが可能である。
(2)セル構造8を積層するため、単位セル構造8の流路(アノード側流路20bおよびカソード側流路30b)の面積が小さくなり、セル構造8の積層方向の締付応力が小さくなる。すなわち、本実施形態の水素精製昇圧装置3は、水素ステーション向けの用途で必要とされることが多い750気圧以上、好ましくは850気圧以上、さらに好ましくは1000気圧以上まで水素を昇圧することが可能である。
(3)特許文献2に示すような水電解から高圧水素を製造する従来技術と比較して発熱量が少なく、且つ、アノード側流路20bに流れる改質ガスが固体高分子電解質膜40を冷却するため、セル構造8に冷却機構を設ける必要がない。
(4)カソード側流路30bは、アノード側流路20bに対して内側に収まる大きさに形成されるため、カソード側流路30bに高圧の水素が生成されても、アノード側流路20bとカソード側流路30bの圧力差によって固体高分子電解質膜40が破れることが防止される。
(5)導電性部材34がカソード側セパレータ30及びカソード側給電体31に荷重を付与するため、カソード側給電体31が、カソード側セパレータ30又はカソード側触媒層33から浮き上がり電気的接触が悪化する問題を防止する。
(6)給電体21(31)と触媒層23(33)の間に、導電性撥水層22(32)が設けられるため、給電体21(31)が触媒層23(33)の影響で腐食することを防止することが可能である。
(7)環状突部20d、30dがガスケット12を押し当てる構造を有するため、平坦部でガスケット12を押圧する場合と比較して、シール性が向上し、Oリングを用いてシールすることが不要となる。さらに、カソード側流路30bに生成される水素の圧力によってガスケット12が外側に押し出されることを防止することが可能である。また一重または近接する二層以上の突部構造を設ける、これを押しつけることで、ガスケット材自身にかかる圧力を高め、シール性を更に良くする効果が得られる。
(8)押え治具9は、締付プレート7と1点で接するため、締付プレート7を締め付ける締付トルクに多少ばらつきがあったり、生成水素圧の低下、温度上昇や振動により締付けトルクが緩んだ場合においても、押圧バネ10bとの協働により押え治具9を介して多数積層されたセル構造8の全面を均一な面圧で抑えることが可能となる。

【0062】
<第2実施形態:並列接続の場合>
本実施形態の水素精製昇圧装置3は、複数枚積層されたセル構造8が電気的に並列に接続されている点を除いては、第1実施形態の水素精製昇圧装置3と基本的に同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。そのため、同様の構成および作用効果については説明を省略する。

【0063】
図4(b)を用いて、本発明の第2実施形態の水素精製昇圧装置のセル構造8の電気的接続について説明する。第1実施形態のセパレータ8aは、セパレータ8aの一方にアノード側セパレータ20が形成され、他方に一方にカソード側セパレータ30が形成されている。本実施形態のセパレータ8aは、1のセパレータ8aの両側の面にアノード側セパレータ20が形成され、隣り合う他のセパレータの両側の面にカソード側セパレータ30が形成されている。

【0064】
このため、積層したセル構造8の各アノード側セパレータ20に、外部電源15の正極13を接続し、積層したセル構造8の各カソード側セパレータ30に、外部電源15の負極14を接続し、アノード側セパレータ20に水素含有ガスを供給することで、積層したセル構造8に並列に通電することが可能である。すなわち、外部電源15と積層したセル構造8は、電気的に並列に接続される。

【0065】
このような水素精製昇圧装置3は、下記に記載する有利な効果を奏する。
(1)セル構造8が電気的に並列に接続されるため、いずれかのセルが故障した場合に、他のセル構造8を使用して発電を継続することが可能になり、連続運転性の向上が期待される。
(2)セル構造8が電気的に並列に接続されるため、いずれかのセルが故障した場合に、どのセルが故障したかを電気的に特定することが容易になり、メンテナンス性がよくなる。

【0066】
<第3実施形態:セル構造の断面形状が円形の場合>
本実施形態の水素精製昇圧装置3も、セル構造8の断面形状が円形である点を除いては、第1実施形態の水素精製昇圧装置3と基本的に同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。そのため、同様の構成および作用効果については説明を省略する。

【0067】
図5(b)、図7(b)を用いて、本発明の第3実施形態の水素精製昇圧装置3について説明する。本実施形態においては、セル構造8の断面形状が円形となる。この場合、弾力性を有する導電性部材34は、図5(b)のように同心円上の波状形状34aを有する。また、アノード側セパレータ20に形成されるアノード側流路20bは図7(b)のように渦巻き状の流路を有する。アノード側流路20bの端部に形成される改質ガス入口8cから供給される改質ガスが、アノード側流路20bの中央に形成される改質ガス出口8dから排出される。

【0068】
このような断面形状が円形のセル構造8は、シール性や耐圧性が良好である。また、円筒形の高圧タンク3a内に設置した場合に、無駄な空間が少ないために水素精製昇圧装置3の体格を小さくすることができ、また円筒のセパレータは旋盤による加工で容易に加工できるため、加工性がよいという利点もある。

【0069】
<その他の変形例>
次に、図7(c)~(f)を用いて、セパレータの流路形状のバリエーションについて説明する。図7(c)、(d)に示すように、セパレータの流路は、改質ガス入口8cから改質ガス出口8dへ流れる改質ガス経路8fが蛇行していてもよい。このように、改質ガス流路8fが蛇行すると、アノード側流路20b内に改質ガスが滞在する滞在時間が長くなるため、改質ガス中の水素のうち、アノード側触媒層23で反応する水素の割合が高まる。

【0070】
図7(e)、(f)に示すように、セパレータの流路は、改質ガス入口8cから改質ガス出口8dへ流れる経路が連通していなくてもよい。この場合、改質ガス入口8cから流入した改質ガスは、一旦、アノード側給電体21、アノード側導電性撥水層22、又はアノード側触媒層23の中を拡散した後、改質ガス出口8d側のアノード側流路20bに流れる。また透過性のある流路壁を用いることもでき、改質ガスの拡散性を向上させ、ガス中の水分不足を防止することができる。このような流路形状においても、アノード側流路20b内に改質ガスが均等に配給され、また改質ガス中の水素が消費されるのに対応し、本来必要な流路長を短縮することによって流速を均等に保てるため、改質ガス中の水素のうち、アノード側触媒層23で反応する水素の割合が高まる。

【0071】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。

【0072】
例えば、上記実施の形態では都市ガスなどの改質による水素含有ガスから、水素を精製・昇圧する方式としたが、純水素を昇圧する場合にも用いることができる。このようにすれば、上記実施の形態の水素精製昇圧装置をコンプレッサの代替として使用することで、低コストで水素を昇圧できるという利点が得られる。
【実施例】
【0073】
一層の単セルを備えた本発明の水素精製昇圧装置の運転結果を示す。今回の運転では純水素を使用した。水素ボンベから水素流量100ml/min、圧力0.1Mpaとし、途中、加湿装置により加湿され、改質ガス供給経路11aを通じ、アノード側セパレータの改質ガス供給経路20aに導入される。このときのセル条件65℃、80%RHとし、固体高分子電解質膜40には、Nafion117(厚さ180μm、大きさφ20(カソード部))を使用した。
電源から所定の一定電流(1A、2A、3A)を供給し、定電流モードで運転した。運転時間は、1時間とし、昇圧運転を行った。
このときの試験結果を図10に示す。横軸に電解電気量(C)、縦軸に検出圧力をプロットした。定電流(1A、2A、3A)、定電解電流密度(0.3A/cm、0.6A/cm、0.9A/cm)において、約20MPaまでは、投入電気量全てが昇圧仕事に変換されていることがわかる。
【符号の説明】
【0074】
1:水素製造システム
2a:改質器
2b:一酸化炭素選択酸化反応器(PROX: Preferencial Oxidation)
3:水素精製昇圧装置
3a:高圧タンク
3b:高圧タンク内部
4:水素タンク
4a:水トラップ・ドレイン器
5:水素精製昇圧装置主要部
6:ベースプレート
7:締付プレート
8:セル構造
8a:セパレータ
8b:ボルト挿通孔
8c:改質ガス入口
8d:改質ガス出口
8e:壁部分
8f:溝部分(改質ガス経路)
8g、8h、11a、20a:改質ガス供給経路
8k、11b:改質ガス排出経路
8i、8j、11c、30a:水素ガス排出経路
9:押え治具
10:ボルト
10a:ナット
10b:押圧ばね
12:ガスケット
13:外部電源の正極
14:外部電源の負極
15:外部電源
20:アノード側セパレータ
20b:アノード側流路
21:アノード側焼結多孔質金属シート(アノード側給電体)
22:アノード側導電性撥水層
23:アノード側触媒層(アノード側電極)
30:カソード側セパレータ
30b:カソード側流路
20d、30d:環状突部
31:カソード側焼結多孔質金属シート(カソード側給電体)
32:カソード側導電性撥水層
33:カソード側触媒層(カソード側電極)
34:弾力性を有する導電性部材(集電部材)
34a:波状形状
40:固体高分子電解質膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9