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明細書 :吸水材、その製造方法及びゲル

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6534041号 (P6534041)
登録日 令和元年6月7日(2019.6.7)
発行日 令和元年6月26日(2019.6.26)
発明の名称または考案の名称 吸水材、その製造方法及びゲル
国際特許分類 B01J  20/26        (2006.01)
B01J  20/30        (2006.01)
C08G  61/12        (2006.01)
C09K   3/00        (2006.01)
H01B   1/12        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
H01M  10/0565      (2010.01)
FI B01J 20/26 D
B01J 20/30
C08G 61/12
C09K 3/00 N
H01B 1/12 F
H01B 13/00 Z
H01M 10/0565
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2015-555866 (P2015-555866)
出願日 平成26年11月13日(2014.11.13)
国際出願番号 PCT/JP2014/080030
国際公開番号 WO2015/102068
国際公開日 平成27年7月9日(2015.7.9)
優先権出願番号 2013273722
優先日 平成25年12月30日(2013.12.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年10月19日(2017.10.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
発明者または考案者 【氏名】星野 勝義
【氏名】田川 麗央
【氏名】小林 誠
審査官 【審査官】松本 直子
参考文献・文献 特開昭62-236834(JP,A)
国際公開第2012/032850(WO,A1)
調査した分野 B01J 20/00-20/34
C08G 61/00-61/12
C09K 3/00-3/32
JSTPlus(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)


特許請求の範囲 【請求項1】
重量平均分子量の分布ピークが200以上30000以下の範囲内にあるチオフェン重合体を含む吸水材であって、
前記チオフェン重合体が、アルコキシチオフェンを重合したものであり、下記一般式で示される構造のみを有することを特徴とする吸水材。
【化1】
JP0006534041B2_000006t.gif
(Rは置換基を、nは2以上の自然数を表す。)
【請求項2】
前記チオフェン重合体は、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、酢酸イオン、水酸化物イオン、シアン化物イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、チオシアン酸イオン、過マンガン酸イオン、リン酸イオン、リン酸二水素イオン、リン酸一水素イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、クエン酸イオン、ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン、又はポリスチレンスルホン酸の少なくともいずれかがドーピングされたものである請求項1記載の吸水材。
【請求項3】
酸化剤を用いてチオフェンを重合して重量平均分子量の分布ピークが200以上30000以下の範囲内にあるチオフェン重合体を含む溶液とし、前記チオフェン重合体を含む溶液を乾燥させる吸水材の製造方法であって、
前記チオフェン重合体が、アルコキシチオフェンを重合したものであり、下記一般式で示される構造のみを有することを特徴とする吸水材の製造方法。
【化1】
JP0006534041B2_000007t.gif
(Rは置換基を、nは2以上の自然数を表す。)
【請求項4】
請求項1又は2に記載された吸水材に水を加えることで吸水させてゲル化させて得られたゲル。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性ゲルは、紙おむつでよく知られており、水分を吸収してゲル化し、容易に廃棄できる形にすることのできる機能性ポリマーである。そして、その材料としては、ポリアクリル酸ナトリウムが主流となっている。ポリアクリル酸ナトリウムに関する公知の技術としては、例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平11-170414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献で記載されるようなポリアクリル酸ナトリウムは、絶縁体であり、導電性を有する用途には通常用いられない。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を鑑み、導電性を有する吸水材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る吸水材は、チオフェン重合体を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の他の一観点に係る吸水材の製造方法は、酸化剤を用いてチオフェンを重合してチオフェン重合体を含む溶液とし、前記チオフェン重合体を含む溶液を乾燥させる工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明により、導電性を有する吸水材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例において用いた重合セルの概略を示す図である。
【図2】塩化鉄(III)無水和物で重合して得られた重合体の写真図である。
【図3】塩化鉄(III)六水和物で重合して得られた重合体の写真図である。
【図4】塩化鉄(III)無水和物で重合して得られた重合体のSEM像を示す図である。
【図5】塩化鉄(III)六水和物で重合して得られた重合体のSEM像を示す図である。
【図6】塩化鉄(III)無水和物で重合して得られた重合体のゲル(蒸留水)の写真図である。
【図7】塩化鉄(III)六水和物で重合して得られた重合体のゲル(蒸留水)の写真図である。
【図8】塩化鉄(III)無水和物で重合して得られた重合体のゲル(生理食塩水)の写真図である。
【図9】塩化鉄(III)六水和物で重合して得られた重合体のゲル(生理食塩水)の写真図である。
【図10】ゲル作製時における容器とその組成を示す概略図である。
【図11】ゲルに対する電気伝導度測定の概略図を示す図である。
【図12】電気伝導度測定において用いた塩化鉄(III)無水和物で重合して得られた重合体の写真図である。
【図13】電気伝導度測定において用いた塩化鉄(III)六水和物で重合して得られた重合体の写真図である。
【図14】電気伝導度測定において用いた塩化鉄(III)無水和物の重合体の希釈水溶液の写真図である。
【図15】電気伝導度測定において用いた塩化鉄(III)六水和物で重合体の希釈水溶液の写真図である。
【図16】紫外可視吸収スペクトルの結果を示す図である。
【図17】赤外吸収スペクトルの結果を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例示に限定されるものではない。
【0011】
本実施形態に係る吸水材は、チオフェン重合体を含むものである。ここで「チオフェン重合体」は、二以上のチオフェンが互いに結合して重合したものをいい、下記一般式で示される化合物である。
【化1】
JP0006534041B2_000002t.gif

【0012】
上記式において、Rは置換基であり、膜に金属光沢を付与できる限りにおいて限定されるわけではないが、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、シアノ基、又は、ハロゲンのいずれかであることが好ましい。また、Rは一つのチオフェン環に一つであっても、二つであってもよい。また、本実施形態に係るチオフェン重合体において、各チオフェンの上記Rは同じであっても異なっていてもよい。
【0013】
なお「チオフェン」は、上記の記載からも明らかなように、硫黄を含む複素環式化合物であって、下記一般式で示される化合物である。式中Rの定義は上記と同様である。
【化2】
JP0006534041B2_000003t.gif

【0014】
なお、上記式中Rがアルコキシ基である場合、限定されるわけではないが、炭素数は1以上8以下であることが好ましく、より具体的には、3-メトキシチオフェン、3,4-ジメトキシチオフェン、3-エトキシチオフェン、3,4-ジエトキシチオフェン、3,4-エチレンジオキシチオフェン、3,4-プロピレンジオキシチオフェン、3-tert-ブトキシチオフェン、3-フェノキシチオフェン等を例示することができる。
【0015】
また、上記式中Rがアルキル基である場合、限定されるわけではないが、炭素数は1以上12以下であることが好ましく、より具体的には、3-メチルチオフェン、3,4-ジメチルチオフェン、3-エチルチオフェン、3,4-ジエチルチオフェン、3-ブチルチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、3-ヘプチルチオフェン、3-オクチルチオフェン、3-ノニルチオフェン、3-デシルチオフェン、3-ウンデシルチオフェン、3-ドデシルチオフェン、3-ブロモ-4-メチルチオフェン、3-(2-エチルヘキシル)チオフェン等を例示することができる。
【0016】
また、上記式中Rがアミノ基である場合、3-アミノチオフェン、3,4-ジアミノチオフェン、3-メチルアミノチオフェン、3-ジメチルアミノチオフェン、3-チオフェンカルボキシアミド、4-(チオフェン-3-イル)アニリン等を例示することができる。
【0017】
また本実施形態において、「チオフェン重合体」の分子量としては、吸水性を有するものである限りにおいて限定されるわけではないが、GPC測定法により求められる重量平均分子量の分布のピークが200以上30000以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは500以上10000以下の範囲内である。
【0018】
また本実施形態において、チオフェン重合体は、吸水性を有するものとすることができる限りにおいて限定されるわけではないが、化学重合法によって重合されたものであることが好ましい。ここで「化学重合法」とは、酸化剤を用いて液相及び固相の少なくともいずれかにおいて行う重合をいう。
【0019】
本実施形態において、化学重合法によって得られたチオフェン重合体が吸水性を有する理由は、推測ではあるが、チオフェン重合体が網目構造を形成し、その網目構造に水分を保持することができるためであると考えられる。
【0020】
本実施形態における吸水材は、上記のチオフェン重合体を含み、このチオフェン重合体は空気中において非常に安定であり、長期間空気中に放置しても劣化が殆どなく、長期間にわたり吸水性を維持することができる。
【0021】
また、本実施形態に係る吸水材は、チオフェン重合体中において電子が非局在化することによって導電性を有する。この結果、本実施形態に係る吸水材は、リチウムイオン電池等の蓄電池、色素増感太陽電池等の光電池、エレクトロクロミック表示素子等の固体電解質として用いることができる。特に、後述の実施例において明らかとなるが、本実施形態に係る吸水材は十分なシート抵抗を備え、高い導電性を発揮することができる。
【0022】
ここで、本実施形態における吸水材の製造方法(以下単に「本方法」という。)について説明する。
【0023】
本方法は、酸化剤を用いてチオフェンを重合してチオフェン重合体を含む溶液とする工程を有する。すなわち、本実施形態では、化学重合を行い、チオフェン重合体を製造する。本方法において「チオフェン」及び得られる「チオフェン重合体」は、上記したものである。
【0024】
本工程において、酸化剤は、チオフェン重合体を製造することができる限りにおいて限定されず様々なものを使用することができるが、例えば第二鉄塩、第二銅塩、セリウム塩、二クロム酸塩、過マンガン酸塩、過硫酸アンモニウム、三フッ化ホウ素、臭素酸塩、過酸化水素、塩素、臭素及びヨウ素を挙げることができ、中でも第二鉄塩が好ましい。またこの場合において、この対となるイオンも適宜調整可能であって限定されるわけではなく、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、酢酸イオン、水酸化物イオン、シアン化物イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、チオシアン酸イオン、過マンガン酸イオン、リン酸イオン、リン酸二水素イオン、リン酸一水素イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、クエン酸イオン、ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン等の錯イオン、ポリスチレンスルホン酸等の高分子アニオンを挙げることができ、その中でも、塩化物イオンなどのハロゲン化物イオンを用いると、より高い吸水性を実現でき好ましい。高い吸水性を得ることができる理由は、推測の域であるが、第二鉄塩の対イオンがチオフェン重合体中にドーピングされるので、ハロゲン化物イオン等の高い親水性をもつイオンがドーピングされたチオフェン重合体も高い親水性を示し、その結果、吸水性も高くなると考えられる。
【0025】
また本工程において、重合は溶媒を用い、この溶媒中において行うことが好ましい。用いる溶媒は、上記酸化剤及びチオフェンを十分に溶解し効率的に重合させることができる限りにおいて限定されるわけではないが、高い極性を有し、ある程度の揮発性を有する有機溶媒であることが好ましく、例えばアセトニトリル、ニトロメタン、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、ニトロメタン、1-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシド、2-ブタノン、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、アニソール、クロロホルム、酢酸エチル、ヘキサン、トリクロロエチレン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、エタノール、ブタノール、ピリジン、ジオキサン、及びこれらの混合物等を用いることができるが、アセトニトリル、ニトロメタン、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレンはチオフェン重合体が可溶であり、より吸水性が高いものとなりやすく好ましい。
【0026】
なお本工程において、溶媒に対し用いるチオフェン、酸化剤の量は適宜調整可能であり限定されるわけではないが、溶媒の重量を1とした場合、チオフェンの重量は0.00007以上7以下であることが好ましく、より好ましくは0.0007以上0.7以下であり、(III)又は塩化鉄(III)六水和物の場合、重量は0.0006以上6以下であることが好ましく、より好ましくは0.006以上0.6以下である。
【0027】
また、本工程において、用いるチオフェンと酸化剤の比としてはチオフェンの重量を1とした場合、0.01以上1000以下であることが好ましく、0.1以上100以下であることがより好ましい。
【0028】
また本工程は、チオフェンと酸化剤を溶媒に一度に加えてもよいが、溶媒にチオフェンを加えた溶液と、酸化剤を溶媒に加えた溶液の二種類の溶液を別途作製し、これらを加え合わせることで重合反応を行わせても良い。
【0029】
また本工程により得るチオフェン重合体を含む溶液は、そのまま保存し、乾燥させることとしてもよいが、この溶液における溶媒を除去し、他の溶媒で洗浄した後乾燥させてチオフェン重合体粉末としておくことが好ましい。この場合において、用いる溶媒は、上記例示した溶媒と同様であり、重合において用いた溶媒と同じであっても良く、また異なっていても良い。このようにすれば、重合反応において余剰に加えられ残留した単量体や酸化剤を除去することができ好ましい。ただし、酸化剤において上記塩化物イオン等のハロゲン化物イオンを含むものを用いた場合、上記重合体に安定的に結合されているため残り、吸水性を安定的に維持することができる。
【0030】
また、本実施形態に係るチオフェン重合体は、粉末の状態において、水を加えることで吸水させてゲル化することができる。吸水率としては、特に限定されないが、チオフェン重合体1gに対し300g程度水を吸収させることが可能である。
【0031】
また、本実施形態に係るチオフェン重合体は、ゲル化した後、撹拌することによって粘度の低い溶液状態にすることができ、静置することで再びゲル化させることができる。例えば、ゲル化した後、3日間経過したものを撹拌することで粘性が低下し溶液状態にすることができる。また、ゲル化した後、1ヶ月間経過したものを撹拌すると、粘度の低い溶液状態にすることができ、流動性をゲル化前の状態にもどすことができるが、溶液は細かいゲルと水の混合物となった。そして、さらに1日程度放置するとゲル状態となった。すなわち、水を吸収させてゲル化させた後、撹拌することで粘度の低い溶液状態とし、電解質を挿入したい狭い箇所に浸透させた後、静置することで、電子部品の狭い間隙等にゲル化した吸水材を配置することが可能となるといった利点もある。
【0032】
以上、本実施形態により、導電性を有する吸水材及びその製造方法を提供することができる。
【0033】
また、本発明による吸水材は電気導電性を有するものでもあり、イオンを含む電解液を安定的に保持し導電性を確保することができるといった利点もある。
【実施例】
【0034】
ここで、上記実施形態にかかる膜を実際に作製し、その効果を確認した。以下具体的に説明する。
【0035】
(試料1:塩化鉄(III)無水和物を用いた3-メトキシチオフェン重合体)
まず、塩化鉄(III)無水和物(FeCls anhydrous)を用いて、3-メトキシチオフェン重合体の作製を行った。
【0036】
具体的には、まず、原料モノマーである下記式でしめす3-メトキシチオフェンのアセトニトリル溶液20ml(濃度0.1M)を調製し、図1で示すガラス製の重合セルに入れ、室温(22℃)で、マグネットスターラーを用いて400rpmの撹拌を行いながら窒素バブリングを30分間行った。
【化3】
JP0006534041B2_000004t.gif

【0037】
次に、酸化剤である塩化鉄(III)無水和物(FeCl anhydrous)のアセトニトリル溶液20ml(濃度0.2M)を調製し、マグネティックスターラーを用いて400rpmの撹拌を行った。
【0038】
その後、上記作製した3-メトキシチオフェン溶液が入った重合セルに、手順2で作製した塩化鉄(III)無水和物溶液を加えて混合させた。混合溶液は速やかに濃紫色に変化した。
【0039】
その後、2時間放置し、重合を進行させた。
【0040】
その後、重合セル内の溶液および沈殿物をナスフラスコに移し、ロータリーエバポレータを用いて溶媒(アセトニトリル)を留去した。
【0041】
その後、ナスフラスコ内の固体をスパチュラでかき出し、ガラスろ過器(細孔径:5~10μm)上でエタノールを用いて洗浄・吸引を行い、酸化剤やモノマーの除去を行った。
【0042】
そして、ろ過器上の残さを60℃、真空下で乾燥させ、3-メトキシチオフェン重合体粉末を0.0882g得た。なお、粉末は黒褐色を呈していた。この得られた粉末の写真を図2に示しておく。
【0043】
(試料2:塩化鉄(III)六水和物を用いた3-メトキシチオフェン重合体)
次に、上記試料1と同様であるが、塩化鉄(III)無水和物の代わりに塩化鉄(III)六水和物(FeCl・6HO)を用いた点が異なる。
【0044】
この結果、上記試料1とほぼ同様であったが、二つの溶液を混合させた場合において、溶液色は速やかに濃青色に変化した。また、この手順において得られた3-メトキシチオフェン重合粉末は0.0857gであり、粉末は濃紺色であった。この得られた粉末の写真図を図3に示しておく。
【0045】
また、上記得られた試料1、2それぞれのSEM像についても観察を行った。この結果を図4、5にそれぞれ示しておく。
【0046】
(蒸留水における吸水率測定)
上記作製した試料1、2を用い、3-メトキシチオフェン重合体の吸水性を以下の手順で確認した。
【0047】
まず、重合体5mgを秤量し、ビンに入れた。
【0048】
次に、蒸留水1.5gをポリマーが入っているビンに加えた。なおその際、重合体が吸水によって膨潤する様子が観察された。
【0049】
その後、スパチュラで撹拌し、水と重合体を混合させた。
【0050】
その後、ビンにフタをし、1日以上放置した。
【0051】
その後、ビン全体を逆さにして自立させ、重合体が蒸留水を保持できるかを確認し、ゲル状態となっていることを確認した。
【0052】
この結果、水の保持を確認できたため、それぞれの重合体は少なくとも300g/gの吸水率を持つことが確認できた。なお、この場合における各試料の写真図を図6、7にそれぞれ示しておく。
【0053】
(食塩水における吸水率測定)
ここで、蒸留水と塩化ナトリウムを用いて食塩水に対する吸水性を以下の手順で確認した。
【0054】
まず、蒸留水と塩化ナトリウムを用いて0.9w/v%食塩水(生理食塩水)を調製した。
【0055】
次に、塩化鉄(III)無水和物で重合した重合体(試料1)5mgに対し0.9w/v%食塩水150mgを加え、2時間放置した。その後、ビン全体を逆さにして自立させ、重合体が食塩水を保持することを確認した。したがって、この重合体の0.9w/v%食塩水に対する吸水率は少なくとも30g/gであるとした。ただし、この重合体5mgに食塩水200mgを加えた場合(40g/g)、ビンを逆さにしても重合体の形は崩れないものの、吸水しきれなかった水の存在が確認された。
【0056】
一方、塩化鉄(III)六水和物で重合した重合体(試料2)5mgに対し0.9w/v%食塩水100mgを加えたところ、1日間放置しても食塩水が保持できず、重合体の形は崩れてしまった。この結果それぞれの写真図を図8、9に示しておく。
【0057】
(水を保持した重合体の電気伝導度測定)
またここで、下記の方法を用いて、水を保持した重合体の電気伝導度の測定を行った。試料には、上記作製した試料1、2をそれぞれ用いた。
【0058】
底面が10mm×10mm、深さが2~3mmのプラスチック製の容器を用意した。この容器は、使い捨ての光学測定用セルを超音波カッターで切断したものを用いて作製したものである。図10にこの容器の概略を示しておく。
【0059】
そして、この容器に、重合体(試料1)5mg、蒸留水0.2mlを入れ、スパチュラで混合させた。
【0060】
次に、6時間放置し、容器を逆さにして重合体が固形化したことを確認した。
【0061】
その後、抵抗率計((株)三菱化学アナリテック ロレスタGP MCP-T600)を用い、四探針法で重合体中央部のシート抵抗を測定した。印加電圧は10Vとした。この場合の概略図を図11に示しておく。
【0062】
そして、膨潤したポリマーの中央部に垂直に針を刺し、刺さった針の長さをポリマーの厚さとみなし、その厚さとシート抵抗の値から電気伝導度を算出した。
【0063】
一方、上記手順を他の重合体(試料2)に対し、同様に行い、同様の手法により電気伝導度を算出した。この結果を下記表に示すとともに、図12、13に本測定において用いたそれぞれの重合体の写真図を示しておく。
【表1】
JP0006534041B2_000005t.gif

【0064】
(紫外可視(UV-Vis)吸収スペクトル)
ここで、上記試料1、2に対し、紫外可視吸収スペクトルを測定した。以下具体的に説明する。
【0065】
まず、上記試料1の重合体粉末5mgを秤量し、蒸留水2.5mlに溶解させ、この溶液40.6mgに、蒸留水16.2gをさらに加えて希釈水溶液を調製した。この希釈水溶液の写真図を図14に示しておく。
【0066】
一方、上記試料2の重合体粉末5mgを秤量し、蒸留水2.5 mlに溶解させ、この溶液45.1mgに、蒸留水18.0gを加えて希釈水溶液を調製した。この希釈水溶液の写真図を図15に示しておく。
【0067】
そして、調製したそれぞれの希釈水溶液を石英セル(光路長1cm)に入れ、紫外可視分光光度計((株)日立ハイテク 分光光度計U-3000)を用いて、それぞれの希釈用液のUV-Vis吸収スペクトル測定を行った。測定波長範囲は200~900nmとした。この測定の結果得られた吸収スペクトルを図16に示しておく。
【0068】
(粉末における赤外吸収(FT-IR)スペクトル)
ここで、上記試料に対し、粉末における赤外吸収スペクトルを測定した。以下説明する。
【0069】
試料1の重合体少量を、2つのKBrプレートで上下から挟み、圧力を加えて円形に成形させたサンプルを作製した。
【0070】
そして、上記サンプルに対し、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)FT/IR-410)を用いてFT-IRスペクトル測定を行った。バックグランドはサンプルをセットしていない状態(空気)でとり、測定時に積算を200回行った。
【0071】
一方、上記と同様に、試料2の重合体少量についてもサンプルを作製し、赤外吸収スペクトル測定を行った。この結果を図17に示しておく。
【0072】
以上、本実施例により、本発明によって、導電性を有する吸水材及びその製造方法を提供することができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、吸水材及びその製造方法として産業上の利用可能性がある。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
13
【図15】
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【図16】
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【図17】
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