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明細書 :光架橋形成によって19Fケミカルシフトの変化を生じさせる方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6472141号 (P6472141)
登録日 平成31年2月1日(2019.2.1)
発行日 平成31年2月20日(2019.2.20)
発明の名称または考案の名称 光架橋形成によって19Fケミカルシフトの変化を生じさせる方法
国際特許分類 A61K  49/10        (2006.01)
C07H  21/04        (2006.01)
FI A61K 49/10 ZNA
C07H 21/04 CSPZ
請求項の数または発明の数 12
全頁数 22
出願番号 特願2015-553556 (P2015-553556)
出願日 平成26年12月16日(2014.12.16)
国際出願番号 PCT/JP2014/083278
国際公開番号 WO2015/093485
国際公開日 平成27年6月25日(2015.6.25)
優先権出願番号 2013259334
優先日 平成25年12月16日(2013.12.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年12月4日(2017.12.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】藤本 健造
【氏名】中村 重孝
個別代理人の代理人 【識別番号】110000523、【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
【識別番号】100127133、【弁理士】、【氏名又は名称】小板橋 浩之
審査官 【審査官】高橋 樹理
参考文献・文献 国際公開第2009/066447(WO,A1)
FUJIMOTO, K. et al.,Details of the ultrafast DNA photo-cross-linking reaction of 3-cyanovinylcarbazole nucleoside: cis-t,J Am Chem Soc.,2013年10月,Vol.135,p.16161-16167
GMEINER, WH. et al.,Synthesis, annealing properties, fluorine-19 NMR characterization, and detection limits of a trifluo,The Journal of Organic Chemistry,1991年,Vol.56,p.3602-3608
津田拓哉ら,トリフルオロメチル基を導入したDNAの合成と19F-NMRスペクトルによるDNA構造変化の追跡,日本化学会第92春季年会(2012)講演予稿集III,2012年,p.829 2D7-31
調査した分野 A61K 49/00-49/22
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基に対して光架橋可能なチミン(T)又はウラシル(U)の塩基の、ピリミジン環の5位を、R基
(ただし、R基は、フッ素原子、
1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、
又は、
1個以上の水素原子が、フッ素原子、又は1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、で置換された、単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基である)
に置換したフッ素含有修飾ピリミジン塩基を使用することによって、
光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基と、光架橋可能なフッ素含有修飾ピリミジン塩基との間に光架橋を形成させて、光架橋形成の前後の比較において核磁気共鳴法によって検出可能な19Fケミカルシフトの変化を生じさせる方法であって、
フッ素含有修飾ピリミジン塩基が、
次の式(I):
【化1】
JP0006472141B2_000012t.gif
(ただし、式(I)において、
Rは、フッ素原子、
1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、又は、
1個以上の水素原子が、フッ素原子、又は1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、で置換された、単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基であり、
R1は、式(I)でR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表される修飾ピリミジンヌクレオチドの塩基部分であり、
光架橋が、
上記修飾ピリミジンヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる被光架橋性核酸中の、上記フッ素含有修飾ピリミジン塩基と、
光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基との間に形成される光架橋であり、光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基が、
次の式(II):
【化2】
JP0006472141B2_000013t.gif
(ただし、式(II)中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1は、式(I)でR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表される光応答性修飾ヌクレオチドの塩基部分であり、
光架橋が、
上記光応答性修飾ヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる光応答性核酸中の、上記光応答性塩基と、
被光架橋性核酸中のフッ素含有修飾ピリミジン塩基との間に形成される光架橋である、方法
【請求項2】
C1~C4のフルオロアルキル基が、
-Cn2n+1-mm
(ただし、nは1以上4以下の整数、mは1以上の整数、2n+1-mは0以上の整数である)
である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
C1~C4のフルオロアルキル基が、
-CF3、-CH2-CF3、又は-C(CF33である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基が、
1個以上の水素原子が、フッ素原子、-CF3、-CH2-CF3、又は-C(CF33で置換された、フルオロフェニル基又はフルオロナフチル基である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基が、
3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の方法によって、核磁気共鳴法によって検出可能な19Fケミカルシフトの変化を生じた、光架橋を製造する方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の方法によって形成された光架橋を、核磁気共鳴法における19Fケミカルシフトの変化によって、検出する方法。
【請求項8】
光架橋が、
光応答性核酸と被光架橋性核酸との間の二重鎖形成によって、光架橋可能に配置されて形成された光架橋である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法によって形成された光架橋を、核磁気共鳴法における19Fケミカルシフトの変化によって検出することによって、
光応答性核酸と被光架橋性核酸との間の二重鎖形成を検出する方法。
【請求項10】
次の式(I):
【化3】
JP0006472141B2_000014t.gif
(ただし、式(I)において、
Rは、フッ素原子、
1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、又は、
1個以上の水素原子が、フッ素原子、又は1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、で置換された、単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基であり、
R1は、式(I)でR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表される修飾ピリミジンヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる被光架橋性核酸からなる、光架橋形成検出剤であって、
検出される光架橋が、
上記式(I)で表される修飾ピリミジンヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる被光架橋性核酸中の、フッ素含有修飾ピリミジン塩基と、
光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基との間に形成される光架橋であり、
上記光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基が、次の式(II):
【化2】
JP0006472141B2_000015t.gif
(ただし、式(II)中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1は、式(I)でR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表される光応答性修飾ヌクレオチドの塩基部分である、光架橋形成検出剤。
【請求項11】
光架橋形成の前後の比較において核磁気共鳴法によって検出可能な19Fケミカルシフトの変化を生じさせる、請求項10に記載の光架橋形成検出剤。
【請求項12】
式(I)で表される修飾ピリミジンヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる被光架橋性核酸と、
式(II)で表される光応答性修飾ヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる光応答性核酸とを、
ハイブリダイズさせる工程、
ハイブリダイズさせた被光架橋性核酸と光応答性核酸に、光照射する工程、
を含む、光架橋された核酸を製造する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基と、光架橋可能なフッ素含有修飾ピリミジン塩基との間に光架橋を形成させて、光架橋形成の前後の比較において核磁気共鳴法によって検出可能な19Fケミカルシフトの変化を生じさせる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸の塩基配列の検出は、生命工学のあらゆる分野で使用される基本的な技術である。核酸の相補性による塩基配列の検出に特に有用であり、生命工学のあらゆる分野で使用可能な基本的な技術に、核酸の架橋技術がある。
【0003】
核酸の光架橋技術として、本発明者の研究グループによって、光応答性塩基が開発され、特許出願が行われている(特許文献1)。この技術によれば、例えば、相補性による二重鎖の形成とそれに続く光架橋によって、所望の塩基配列の核酸を高感度に検出することができる。この検出には、例えば、蛍光標識、発色酵素標識などの手段が、適宜使用される。しかし、これらの手段は、生体内での計測には、必ずしも適したものではない。
【0004】
生体内の様々な情報を得る手段の一つとして、NMR、MRIなど、核磁気共鳴法を用いたイメージング技術が挙げられる。核磁気共鳴法のターゲットとなる原子(分子)は主に1Hであり、水が生体内に多く存在し高い強度が得られることに由来する。核磁気共鳴法のターゲットとなるその他の原子としては、19F(フッ素19)が研究されている。フッ素19は天然存在比がほぼ100%であること、生体内にほとんど存在しないことなどが、利点として挙げられる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】国際公開第2009/066447号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、光応答性塩基によって形成される光架橋を検出するための、生体内での計測に適した、高感度な検出手段を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究の結果、光応答性塩基に対して光架橋可能なチミン(T)又はウラシル(U)の塩基の、ピリミジン環の5位を、19F(フッ素19原子)含有置換基に置換したフッ素含有修飾ピリミジン塩基を使用して、光応答性塩基との光架橋を光照射によって光架橋を形成させると、顕著な19Fケミカルシフトの変化が生じることを見いだして、本発明に到達した。
【0008】
19Fをターゲットとした核磁気共鳴法は、従来から研究されていたが、イメージング可能なほどに十分なケミカルシフトの変化を得ることは困難であったところ、本発明者は、上記フッ素含有修飾ピリミジン塩基を使用すると、これが通常のT又はUと同様に光架橋可能であること、そして、光架橋の結果として、大きな19Fケミカルシフトの変化を生じさせることを見いだして、本発明に到達したものである。
【0009】
したがって、本発明は、次の(1)~にある。
(1)
光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基に対して光架橋可能なチミン(T)又はウラシル(U)の塩基の、ピリミジン環の5位を、R基
(ただし、R基は、フッ素原子、
1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、
又は、
1個以上の水素原子が、フッ素原子、又は1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、で置換された、単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基である)
に置換したフッ素含有修飾ピリミジン塩基を使用することによって、
光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基と、光架橋可能なフッ素含有修飾ピリミジン塩基との間に光架橋を形成させて、光架橋形成の前後の比較において核磁気共鳴法によって検出可能な19Fケミカルシフトの変化を生じさせる方法。
(2)
フッ素含有修飾ピリミジン塩基が、
次の式(I):
【化1】
JP0006472141B2_000002t.gif
(ただし、式(I)において、
Rは、フッ素原子、
1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、又は、
1個以上の水素原子が、フッ素原子、又は1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、で置換された、単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基であり、
R1は、式(I)でR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表される修飾ピリミジンヌクレオチドの塩基部分であり、
光架橋が、
上記修飾ピリミジンヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる被光架橋性核酸中の、上記フッ素含有修飾ピリミジン塩基と、
光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基との間に形成される光架橋である、(1)に記載の方法。
(3)
光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基が、
次の式(II):
【化2】
JP0006472141B2_000003t.gif
(ただし、式(II)中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1は、式(I)でR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表される光応答性修飾ヌクレオチドの塩基部分であり、
光架橋が、
上記光応答性修飾ヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる光応答性核酸中の、上記光応答性塩基と、
被光架橋性核酸中のフッ素含有修飾ピリミジン塩基との間に形成される光架橋である、(2)に記載の方法。
(4)
C1~C4のフルオロアルキル基が、
-Cn2n+1-mm
(ただし、nは1以上4以下の整数、mは1以上の整数、2n+1-mは0以上の整数である)
である、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)
C1~C4のフルオロアルキル基が、
-CF3、-CH2-CF3、又は-C(CF33である、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(6)
単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基が、
1個以上の水素原子が、フッ素原子、-CF3、-CH2-CF3、又は-C(CF33で置換された、フルオロフェニル基又はフルオロナフチル基である、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(7)
単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基が、
3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
【0010】
さらに、本発明は、次の(11)~にある。
(11)
(1)~(7)のいずれかに記載の方法によって、核磁気共鳴法によって検出可能な19Fケミカルシフトの変化を生じた、光架橋を製造する方法。
(12)
(1)~(7)のいずれかに記載の方法によって、核磁気共鳴法によって検出可能な19Fケミカルシフトの変化を生じた、光架橋された核酸を製造する方法。
(13)
(1)~(7)のいずれかに記載の方法によって形成された光架橋を、核磁気共鳴法における19Fケミカルシフトの変化によって、検出する方法。
(14)
光架橋が、
光応答性核酸と被光架橋性核酸との間の二重鎖形成によって、光架橋可能に配置されて形成された光架橋である、(3)~(7)のいずれかに記載の方法。
(15)
(14)に記載の方法によって形成された光架橋を、核磁気共鳴法における19Fケミカルシフトの変化によって検出することによって、
光応答性核酸と被光架橋性核酸との間の二重鎖形成を検出する方法。
【0011】
さらに、本発明は、次の(21)~にある。
(21)
次の式(I):
【化3】
JP0006472141B2_000004t.gif
(ただし、式(I)において、
Rは、フッ素原子、
1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、又は、
1個以上の水素原子が、フッ素原子、又は1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、で置換された、単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基であり、
R1は、式(I)でR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表される修飾ピリミジンヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる被光架橋性核酸からなる、光架橋形成検出剤。
(22)
光架橋形成の前後の比較において核磁気共鳴法によって検出可能な19Fケミカルシフトの変化を生じさせる、(21)に記載の光架橋形成検出剤。
(23)
C1~C4のフルオロアルキル基が、
-Cn2n+1-mm
(ただし、nは1以上4以下の整数、mは1以上の整数、2n+1-mは0以上の整数である)
である、(21)~(22)のいずれかに記載の光架橋形成検出剤。
(24)
C1~C4のフルオロアルキル基が、
-CF3、-CH2-CF3、又は-C(CF33である、(21)~(23)のいずれかに記載の光架橋形成検出剤。
(25)
単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基が、
1個以上の水素原子が、フッ素原子、-CF3、-CH2-CF3、又は-C(CF33で置換された、フルオロフェニル基又はフルオロナフチル基である、(21)~(24)のいずれかに記載の光架橋形成検出剤。
(26)
単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基が、
3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である、(21)~(24)のいずれかに記載の光架橋形成検出剤。
【0012】
さらに、本発明は、次の(31)~にある。
(31)
式(I)で表される修飾ピリミジンヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる被光架橋性核酸と、
式(II)で表される光応答性修飾ヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる光応答性核酸とを、
ハイブリダイズさせる工程、
ハイブリダイズさせた被光架橋性核酸と光応答性核酸に、光照射する工程、
を含む、光架橋された核酸を製造する方法。
(32)
(31)に記載の方法によって製造された、
式(I)で表される修飾ピリミジンヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる被光架橋性核酸と、
式(II)で表される光応答性修飾ヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる光応答性核酸とが、
光架橋されてなる、光架橋された核酸。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光応答性塩基による光架橋の形成を、核磁気共鳴法による19Fケミカルシフトによって、検出することができる。この核磁気共鳴法による検出は、生体内の三次元イメージングに特に適しており、時間的にある時点のスナップショットを撮影することにも特に適しているので、光応答性核酸を使用した所望の相補的核酸配列の検出を、生体内の三次元リアルタイムスナップショット映像によって行うという、医療的に価値の高い新しい応用を実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、TとTFTの光反応性を比較した変性PAGE結果を示す図である。
【図2】図2は、CNVKとTFTのクロスリンク反応のHPLC解析(A)、及びODN2(T)とODN3(TFT)の光反応性の比較(B)を示すグラフである。
【図3】図3は、光架橋に伴うケミカルシフトの変化を表す図である。
【図4】図4は、NMRのシフトしたピークの割合とHPLCでのピークの減少量から求めた光架橋率の相関を示すグラフである。
【図5】図5は、312nmの光照射による開裂を確認した変性PAGE結果を示す図である。
【図6】図6は、光架橋反応に伴う可逆的なF-NMRケミカルシフトの変化の結果を示す図である。
【図7】図7は、トロンビンアプタマーによるカリウムイオンのセンシングを示す説明図である。
【図8】図8は、カリウムイオンの添加によるNMRピークの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
具体的な実施の形態をあげて、以下に本発明を詳細に説明する。本発明は、以下にあげる具体的な実施の形態に限定されるものではない。

【0016】
[光架橋形成によるケミカルシフトの変化]
本発明によれば、光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基に対して光架橋可能なチミン(T)又はウラシル(U)の塩基の、ピリミジン環の5位を、R基(ただし、R基は、フッ素原子、又は1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基である)に置換したフッ素含有修飾ピリミジン塩基を使用することによって、光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基と、光架橋可能なフッ素含有修飾ピリミジン塩基との間に光架橋を形成させて、光架橋形成の前後の比較において核磁気共鳴法によって検出可能な19Fケミカルシフトの変化を生じさせることができる。

【0017】
[フッ素含有修飾ピリミジン塩基]
本発明のフッ素含有修飾ピリミジン塩基は、次の式(I):
【化4】
JP0006472141B2_000005t.gif
(ただし、式(I)において、
Rは、フッ素原子、
1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、又は、
1個以上の水素原子が、フッ素原子、又は1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、で置換された、単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基であり、
R1は、式(I)でR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表される修飾ピリミジンヌクレオチドの塩基部分であり、次の式(III):
【化5】
JP0006472141B2_000006t.gif
(ただし、式(III)において、
Rは、フッ素原子、
1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、又は、
1個以上の水素原子が、フッ素原子、又は1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、で置換された、単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基である)
で表されるチミン誘導体である。

【0018】
[フルオロアルキル基]
好適な実施の態様において、上記R基として、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基を使用することができる。このフルオロアルキル基としては、例えば、次の式:
-Cn2n+1-mm
(ただし、nは1以上4以下の整数、mは1以上の整数、2n+1-mは0以上の整数である)
で表される基である。

【0019】
好ましいフルオロアルキル基としては、例えば、-CF3、-CH2-CF3、-C(CF33を挙げることができ、特に-CF3、又は-C(CF33が好ましい。

【0020】
[フルオロアリール基]
好適な実施の態様において、上記R基として、1個以上の水素原子が、フッ素原子、又は1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されたC1~C4のフルオロアルキル基、で置換された、単環式、二環式又は三環式のフルオロアリール基を使用することができる。このフルオロアリール基としては、例えば、1個以上の水素原子が、フッ素原子、-CF3、-CH2-CF3、又は-C(CF33で置換された、フルオロフェニル基又はフルオロナフチル基を使用することができる。

【0021】
好ましいフルオロアリール基としては、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基:
【化6】
JP0006472141B2_000007t.gif
(ただし、上記構造式中の点線は、遊離基の位置を表す)
を使用することができる。

【0022】
[光応答性塩基]
光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基としては、次の式(II):
【化7】
JP0006472141B2_000008t.gif
(ただし、式(II)中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1は、式(I)でR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表される光応答性修飾ヌクレオチドの塩基部分を挙げることができ、このビニルカルバゾール構造を有する人工塩基は、特許文献1(国際公開第2009/066447号)に開示されているものである。

【0023】
好適な実施の態様において、式(II)のR11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、さらに好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基は、好ましくはC2~C7、さらに好ましくはC2~C6、さらに好ましくはC2~C5、さらに好ましくはC2~C4、さらに好ましくはC2~C3、特に好ましくはC2のものを使用することができる。

【0024】
好適な実施の態様において、式(II)のR12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、さらに好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基は、好ましくはC2~C7、さらに好ましくはC2~C6、さらに好ましくはC2~C5、さらに好ましくはC2~C4、さらに好ましくはC2~C3、特に好ましくはC2のものを使用することができる。

【0025】
[光架橋の形成]
上記の光架橋性のビニル構造を有する光応答性塩基と、フッ素含有修飾ピリミジン塩基との間には、光架橋を形成することができる。すなわち、上記修飾ピリミジンヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる被光架橋性核酸中の、上記フッ素含有修飾ピリミジン塩基と、上記光応答性修飾ヌクレオチドがリン酸ジエステル結合して導入されてなる光応答性核酸中の、上記光応答性塩基との間には、光架橋を形成することができる。本発明によれば、この構造変化を核磁気共鳴法による19Fケミカルシフトの変化として検出することができる。

【0026】
[光架橋形成のための二重鎖形成]
光応答性塩基と、フッ素含有修飾ピリミジン塩基との間の光架橋は、光照射に先立って、光応答性塩基を含む塩基配列と、フッ素含有修飾ピリミジン塩基を含む塩基配列とが、その相補性によって二重鎖を形成して、光架橋反応が進行可能に配置されて、その状態で光照射を受けることによって、光反応が好適に進行して、形成される。二重鎖形成の条件としては、核酸の二重鎖形成の条件及び手段として、当業者に公知の条件及び手段を使用することができる。そこで、好適な実施の態様において、光応答性塩基を含む光応答性核酸の塩基配列中の光応答性塩基を含む塩基配列に対して、フッ素含有修飾ピリミジン塩基を含む被光架橋性核酸中の塩基配列は、相補的な塩基配列である。好適な実施の態様において、光応答性塩基配列と、相補的塩基配列とは、二重鎖の領域を形成できるよう相補性を有しており、ただし、光応答性塩基と相補的位置にある塩基については、ビニルカルバゾール構造を有する人工塩基が相補的な水素結合を形成しない構造であることから、特に制限なく、種々の塩基を選択することができる。

【0027】
好適な実施の対応において、光応答性塩基を含む光応答性核酸と、フッ素含有修飾ピリミジン塩基を含む被光架橋性核酸とが、同じ核酸分子であってもよく、この場合には、光応答性塩基を含む塩基配列とフッ素含有修飾ピリミジン塩基を含む塩基配列とによって、自己の分子中に二重鎖構造をとって、自己架橋を形成させることができ、この構造変化を核磁気共鳴法による19Fケミカルシフトの変化として検出することができる。

【0028】
[光反応の条件]
光架橋のための光反応には、上記光応答性塩基について従来から知られている光架橋形成の条件を使用することができる。例えば、光架橋のために照射される光は、一般に350~380nmの範囲、好ましくは360~370nmの範囲、さらに好ましくは366nmの波長を含む光が好ましく、特に好ましくは、366nmの単波長のレーザー光である。光照射時間は、数秒間、例えば、1~9秒間、1~7秒間、1~5秒間、又は1~3秒間の時間の光照射によって、光反応を進行させて光架橋を形成することができる。そして、光反応であることから、溶媒等についても、水溶液、緩衝液、生理的pHや塩濃度の使用を含めて、種々の条件を広く使用することができる。

【0029】
また、上記の光架橋の形成は、可逆的なものである。すなわち、光照射によって光架橋した後に、さらに光照射によって光開裂をすることができる。光開裂のために照射される光は、例えば、330~370nmの範囲の波長を含む光を使用することができ、例えば、366nmの単波長のレーザー光を使用することができ、あるいは、例えば、300~330nmの範囲の波長を含む光を使用することができ、例えば、312nmの波長の光を使用することができる。

【0030】
19Fケミカルシフト]
光架橋によって生じた19Fケミカルシフトの変化は、核磁気共鳴法によって検出することができる。このために使用可能な手段、条件、装置等としては、公知の手段、条件、装置等を使用することができる。本発明によって生じる19Fケミカルシフトの変化は、従来技術による各種プローブでの19Fケミカルシフトの変化よりも、大きなものであるために、本発明は、高感度の19Fケミカルシフトイメージングを可能にするものとなっている。例えば、カリウムイオンを中心としてGuanine Quadruplex(グアニン四重鎖構造)として知られるDNAの高次構造をとらせることによって、DNAに結合させた19Fのケミカルシフトの変化を研究した報告があるが、従来のプローブによれば、この場合のΔppmは、0.15ppmとされており、本願の19Fケミカルシフトの変化はこの50倍以上にあたる。本願の19Fケミカルシフトの変化は、例えば、2.0ppm以上、3.0ppm以上、4.0ppm以上、5.0ppm以上、6.0ppm以上、7.0ppm以上、8.0ppm以上であり、例えば、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、15ppm以下である。

【0031】
19Fケミカルシフトの可逆性]
上記光架橋の形成は、可逆的なものであり、この可逆的な光架橋の形成に伴って、19Fケミカルシフトもまた、可逆的に変化する。したがって、19Fケミカルシフトの変化による光架橋の検出と、これを利用した二重鎖形成の検出は、その可逆性を利用して、同じプローブ分子(被光架橋性核酸)によって、繰り返し行うことができる。
【実施例】
【0032】
実施例をあげて、以下に本発明を詳細に説明する。本発明は、以下にあげる実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
CNVK含有ODNとTFT含有ODNの合成]
研究室で合成した光応答性人工核酸3-cyanovinylcarbazole nucleotide(CNVK)のアミダイト体、Trifluorothymidine(TFT)(5-trifluoromethyl-2’-deoxyuridine)のアミダイト体をアセトニトリルで100mMに調整し、ABI3400にてODNを合成した。合成したODN配列は下記表1に示す。合成後、CNVK含有ODNは28%アンモニア水を用いて55℃で8時間脱保護を行った。TFT含有ODNは50mM K2CO3 メタノール溶液を用いて室温で4時間脱保護を行った。その後、HPLCにて精製を行い、質量分析により目的配列であることを確認した。
【実施例】
【0034】
【表1】
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【実施例】
【0035】
【化8】
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【実施例】
【0036】
【化9】
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【実施例】
【0037】
CNVKとCNTの光反応性の解析]
20μM ODN1と20μM ODN2もしくは20μM ODN3をbuffer(100mM NaCl、50mM カコジル酸ナトリウム)中で90℃で5分間加熱した後、ゆっくり4℃までアニーリングを行った。その後、UV-LED照射機を用い、366nmのUV照射を4℃で行い、光照射による光架橋体の確認を変性PAGEにより解析した。この結果を図1に示す。
【実施例】
【0038】
図1は、TとTFTの光反応性を比較した変性PAGE結果を示す図である。図1において、レーンM:10DNAラダーマーカー、レーン1~5:ターゲット塩基がTの場合、レーン6~10:ターゲット塩基がCNTの場合であり、光照射時間はそれぞれ0s(秒)、0.1s、0.5s、1s、2sである。
【実施例】
【0039】
ターゲット塩基がTの場合には、1秒の光照射で原料となる9merのバンドがほぼ消失している。一方、ターゲットがTFTの場合には2秒の光照射で原料のバンドが消失していた。この結果よりTFTはCNVKとの光架橋反応が、ほぼTと同様に進行することがわかった。質量分析の結果からもODN1とODN3の架橋体のピークが得られている。
【実施例】
【0040】
TFTとCNVKの光架橋反応速度の解析]
次にTFTとCNVKの光架橋反応がどれくらいの速度で進行するのかをHPLC解析より求めた。この結果を、図2に示す。
【実施例】
【0041】
図2の(A)は、CNVKとTFTのクロスリンク反応のHPLC解析である。横軸はリテンション時間(分)を表し、光照射時間0s(秒)、0.1s、0.5s、1s、2s、5sのそれぞれについてのチャートを示している。図2の(B)はODN2(T)とODN3(TFT)の光反応性の比較である。横軸は光照射時間(秒)を表し、縦軸は光架橋率(%)を表す。グラフの上側の曲線がターゲット塩基がTの場合を表し、グラフの下側の曲線がターゲット塩基がTFTの場合を表す。
【実施例】
【0042】
HPLC解析の結果TFTとCNVKの光架橋反応はTよりも遅く、約4分の1の速度で光架橋反応が進行していることが確認された。
【実施例】
【0043】
19F-NMR測定]
次に光架橋前後での19F-NMR測定を行い、光架橋による[2+2]光環化反応に伴うCF3基の周辺環境の変化によるケミカルシフトの変化の確認を行った。
19F-NMR測定は20μM ODNを100mM NaCl、50mM Cacodylate buffer中で測定を行った。内部標準として10μM TFA、10% D2Oとした。光照射時間を延ばしていき、その変化をNMRとHPLCにより解析した。この結果を、図3に示す。
【実施例】
【0044】
図3は、光架橋に伴うケミカルシフトの変化を表す図である。図3の(A)は、光照射時間による19F-NMRスペクトルの変化を表す。光照射時間0s(秒)、1s、2s、5s、10s、20sのそれぞれについてのチャートを示している。図3の(B)は、各NMRサンプルに対応したHPLCチャートを表す。横軸はリテンション時間(分)を表し、光照射時間0s(秒)、1s、2s、5s、10s、20sのそれぞれについてのチャートを示している。
【実施例】
【0045】
まず、光架橋を行っていないサンプルではフッ素のピークが-63.2ppm付近に確認できる。その状態から光照射時間を延ばしていくに従って-71.2ppm付近のピークが現れる。最終的には-63.2ppm付近のピークが消え、-71.2ppmのピークのみになる。この変化をHPLCで解析するとTFT含有のピークが減少し、クロスリンク体のピークが増加していることが確認された。NMRでのシフトしたピークの割合とHPLCでのTFT含有ODNの減少率から求めた光架橋率をプロットしたところ、図4の様になった。
【実施例】
【0046】
図4は、NMRのシフトしたピークの割合とHPLCでのピークの減少量から求めた光架橋率の相関を示すグラフである。NMR解析、HPLC解析から求めた光架橋率が一致していることより、確認できているケミカルシフトの変化は光架橋によるCF3周辺の環境が変化したためだと考えられる。
【実施例】
【0047】
[光照射による開裂(変性PAGE)]
次に312nmの光照射による開裂実験を行った。312nmの各光照射時間でサンプリングし、変性PAGEによる解析を行った。この結果を、次の図5に示す。
【実施例】
【0048】
図5は、312nmの光照射による開裂を確認した変性PAGE結果を示す図である。変性PAGEの結果、加熱条件下での312nmの光照射によって、TFTとCNVKの光架橋体の開裂が確認された。Tと比較すると開裂のスピードは少し遅いものの、ゲル結果から、30分の光照射で開裂していることが確認された。
【実施例】
【0049】
[光照射による開裂(19F-NMR測定)]
CNVKとTFTの光架橋もTの場合と同様に366nmで架橋、312nmで開裂という操作が可能であるため、それを19F-NMRのケミカルシフトにより読み取ることが可能かどうかを19F-NMRにより確認した。この結果を、次の図6に示す。
【実施例】
【0050】
図6は、光架橋反応に伴う可逆的なF-NMRケミカルシフトの変化の結果を示す図である。
4℃で366nmの光照射によりケミカルシフトは-71.2ppmに変化し、60℃で312nmの光照射により-63.2ppmに変化していることが確認できた。さらに4℃で366nmの光照射によりケミカルシフトは-71.2ppmに変化した。これらの結果より、366nmと312nmの光照射によりケミカルシフトの変化が可逆的に操作可能であること、これを利用してイメージングが可能であることが示された。
【実施例】
【0051】
TFTを用いたケミカルシフトによる構造のセンシング技術]
核酸には通常のB型の二重螺旋だけでなく、特定の配列が存在する条件下での形成する高次構造が存在する。それらは小分子のアプタマーなどとしても利用可能である。高次構造は通常の二重螺旋と比較して構造が大きく変化するために、TFTを用いたケミカルシフトによるイメージングが可能ではないかと考え実験を行った。
【実施例】
【0052】
ターゲットとしたのはトロンビンアプタマーとして報告されている配列であり、TをTFTに置換した配列ODN4を用いて実験を行った。カリウムイオン存在下でG-quadruplex構造を取るというものである。この変化を、次の図7で説明する。
【実施例】
【0053】
図7は、トロンビンアプタマーによるカリウムイオンのセンシングを示す説明図である。20μM ODNを10mM Tris-HCl中で19F-NMRで測定を行った。内部標準として10μM TFA、10%D2Oとした。NMR測定結果を図8に示す。
【実施例】
【0054】
図8は、カリウムイオンの添加によるNMRピークの変化を示す図である。19-NMR測定の結果、カリウムイオンを加える前では、-63.1ppmにピークが確認できた。これが1本鎖状態のピークである。次にKClを50mM加えた際に-64.0ppmに新たなピークが確認できた。このピークがカリウムイオン存在下でのみとるG-quadruplex由来のピークだと考えられる。最終的にKClの濃度を十分に挙げるとすべてのODNがG-quadruplex構造を形成し、-64.0ppmのピークのみとなる。この結果から、TFTをアプタマー配列に導入することによってカリウムイオンのセンシングがケミカルシフトの変化から読み取ることが可能である。
【実施例】
【0055】
TFTを用いたケミカルシフトによる構造のセンシング技術は、カリウムイオンのセンシングを実現する技術であり、光架橋を伴うものではない。この技術は、次の(1)以下のような発明として、把握することができる。
(1)
核酸アプタマーに、式Iで表される修飾ピリミジンヌクレオチドを導入して使用し、核酸アプタマーとリガンドとを結合させて、結合の前後の比較において核磁気共鳴法によって検出可能な19Fケミカルシフトを生じさせる方法。
(2)
核酸アプタマーに、式Iで表される修飾ピリミジンヌクレオチドを導入して使用し、核酸アプタマーとリガンドとの結合を、核磁気共鳴法における19Fケミカルシフトによって検出する方法。
(3)
核酸アプタマーが、カリウムイオン結合可能なアプタマー配列と、式Iで表される修飾ピリミジンヌクレオチドを配列中に有し、
リガンドがカリウムイオンである、(1)~(2)のいずれかに記載の方法。
(4)
核磁気共鳴法における19Fケミカルシフトによって、カリウムイオンを検出する方法である、(3)に記載の方法。
(5)
式(I)で表される修飾ピリミジンヌクレオチドが導入された核酸アプタマー。
(6)
式(I)で表される修飾ピリミジンヌクレオチドが核酸アプタマーに導入されてなる、アプタマーリガンド検出剤。
(7)
式(I)で表される修飾ピリミジンヌクレオチドが、カリウムイオン結合可能なアプタマー配列を有する核酸アプタマーに導入されてなる、カリウムイオン検出剤。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、光応答性塩基による光架橋の形成を、核磁気共鳴法による19Fケミカルシフトによって、検出することができる。本発明は産業上有用な発明である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7