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明細書 :ノイズ付加装置及びノイズ付加方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6501228号 (P6501228)
登録日 平成31年3月29日(2019.3.29)
発行日 平成31年4月24日(2019.4.24)
発明の名称または考案の名称 ノイズ付加装置及びノイズ付加方法
国際特許分類 H04N   5/74        (2006.01)
G03B  21/14        (2006.01)
G03B  21/00        (2006.01)
FI H04N 5/74 Z
G03B 21/14 Z
G03B 21/00 D
請求項の数または発明の数 9
全頁数 19
出願番号 特願2015-557858 (P2015-557858)
出願日 平成27年1月14日(2015.1.14)
国際出願番号 PCT/JP2015/050846
国際公開番号 WO2015/108087
国際公開日 平成27年7月23日(2015.7.23)
優先権出願番号 2014005188
優先日 平成26年1月15日(2014.1.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年12月18日(2017.12.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501241645
【氏名又は名称】学校法人 工学院大学
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
発明者または考案者 【氏名】合志 清一
【氏名】越前 功
個別代理人の代理人 【識別番号】110001519、【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
審査官 【審査官】秦野 孝一郎
参考文献・文献 特表2008-546038(JP,A)
特表2010-512710(JP,A)
特開2004-266345(JP,A)
特開2008-278454(JP,A)
特開平4-96581(JP,A)
特開平1-105910(JP,A)
特表2004-521570(JP,A)
国際公開第2007/148662(WO,A1)
特表2005-518683(JP,A)
調査した分野 H04N 5/74
G03B 21/00-21/30
特許請求の範囲 【請求項1】
映像を目視した際に人間の眼には知覚されず、かつ前記映像をカメラで撮影した撮影映像を目視した際に人間の眼に知覚される、所定の周波数で変化するノイズを、映像光に重畳させるための信号を生成する信号生成部と、
前記信号生成部で生成された信号に基づいて、前記映像光の光路上に設けられた電子シャッタを前記所定の周波数で開閉させて、前記映像光に前記所定の周波数のノイズを重畳する重畳部と、
を含み、
前記電子シャッタを、前記映像を投影する投影機とスクリーンとの間であって、前記投影機に当接するように配置し、
前記所定の周波数は、予め定められた複数の周波数であり、
前記信号生成部は、前記映像の平均輝度を算出し、前記算出した映像の平均輝度に応じて、前記複数の周波数の何れかを選択し、選択された周波数で変化するノイズを、映像光に重畳させるための信号を生成するノイズ付加装置。
【請求項4】
前記所定の周波数をN、人間の眼に知覚されないノイズの周波数をZ1、人間の眼に知覚されるノイズの周波数をZ2、前記映像のフレーム周波数をP、前記カメラの撮影時のフレーム周波数をVとしたとき、
前記所定の周波数Nは、以下の(1)式及び(2)式を満たす値である(ただし、m、n、kは、正または負の整数である。)請求項1に記載のノイズ付加装置。
Z1=mP+nN ・・・(1)
Z2=mP+nN+kV ・・・(2)
【請求項5】
前記Z1は、6Hzから14Hzまでを除く値であり、前記Z2は6Hzから14Hzまでの値である請求項4に記載のノイズ付加装置。
【請求項6】
前記Z1及びZ2の値の範囲を入力する入力部を更に含む請求項4に記載のノイズ付加装置。
【請求項7】
前記重畳部は、映像光に同期して前記所定の周波数のノイズを重畳する請求項1~6の何れか1項に記載のノイズ付加装置。
【請求項9】
盗撮の対象物を目視した際に人間の眼には知覚されず、かつ前記対象物をカメラで撮影した撮影映像を目視した際に人間の眼に知覚される、予め定めた所定の周波数で変化する、画像信号に重畳させるためのノイズ信号を記憶するノイズ信号記憶部と、
前記ノイズ信号記憶部から読み出したノイズ信号を、前記画像信号に重畳する重畳部と、
を含み、
前記所定の周波数をN、人間の眼に知覚されないノイズの周波数をZ1、人間の眼に知覚されるノイズの周波数をZ2、前記画像信号のフレーム周波数をP、前記カメラの撮影時のフレーム周波数をVとしたとき、
前記所定の周波数Nは、以下の(1)式及び(2)式を満たす値である(ただし、m、n、kは、正または負の整数である。)ノイズ付加装置。
Z1=mP+nN ・・・(1)
Z2=mP+nN+kV ・・・(2)
【請求項10】
映像を目視した際に人間の眼には知覚されず、かつ前記映像をカメラで撮影した撮影映像を目視した際に人間の眼に知覚される、所定の周波数で変化する画像を、映像光に重畳させるための信号を生成し、
前記生成した信号に基づいて、前記映像光の光路上に設けられた電子シャッタを前記所定の周波数で開閉させて、前記映像光に前記所定の周波数のノイズを重畳する
ノイズ付加方法であって、
前記電子シャッタを、前記映像を投影する投影機とスクリーンとの間であって、前記投影機に当接するように配置し、
前記所定の周波数は、予め定められた複数の周波数であり、
前記映像光に重畳させるための信号を生成することでは、前記映像の平均輝度を算出し、前記算出した映像の平均輝度に応じて、前記複数の周波数の何れかを選択し、選択された周波数で変化するノイズを、映像光に重畳させるための信号を生成するノイズ付加方法。
【請求項12】
盗撮の対象物を目視した際に人間の眼には知覚されず、かつ前記対象物をカメラで撮影した撮影映像を目視した際に人間の眼に知覚される、予め定めた所定の周波数で変化する、画像信号に重畳させるためのノイズ信号を記憶するノイズ信号記憶部から、ノイズ信号を読み出し、読み出したノイズ信号を前記画像信号に重畳する
ノイズ付加方法であって、
前記所定の周波数をN、人間の眼に知覚されないノイズの周波数をZ1、人間の眼に知覚されるノイズの周波数をZ2、前記画像信号のフレーム周波数をP、前記カメラの撮影時のフレーム周波数をVとしたとき、
前記所定の周波数Nは、以下の(1)式及び(2)式を満たす値である(ただし、m、n、kは、正または負の整数である。)ノイズ付加方法。
Z1=mP+nN ・・・(1)
Z2=mP+nN+kV ・・・(2)。
【請求項13】
前記Z1及びZ2の値の範囲を入力する入力部を更に含む請求項9に記載のノイズ付加装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、劇場等で上映される映画やプロジェクタ等によって投影される映像などの各種映像や、美術品、劇場での演者等を不正にカメラで盗撮されることを防止するノイズ付加装置及びノイズ付加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映画は、膨大な経費が投資されて作成されている。一方、小型化及び高感度化されたビデオカメラの普及により、映画館内における違法な盗撮行為が大きな問題となっている。
【0003】
近年では、映画館内において上映開始前に盗撮が犯罪行為であることを説明する映像が流されているが、完全な対策にはなっていない。例えば、盗撮されたと考えられる新作映画のインターネット上への流出や、DVD(Digital Versatile Disk)等の各種メディアの海賊版の販売等が行われているのが現状である。これらの違法行為は、映画産業に莫大な損害を与え続けている。
【0004】
そこで、映画の盗撮を防止する技術として種々の技術が考えられている。例えば、特開2010-278573号公報では、映画投影機とは別の照射部を用いて、特定の周波数でスクリーンに光を照射することにより、盗撮した画像にフリッカを生じさせることが提案されている。これにより、盗撮画像の画質を低下させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2010-278573号公報に記載の技術では、映画投影機とは別に照射部を設ける必要があり、照射部を配置するスペースの確保等が必要となるため、映画館によっては簡単に配置できず、改善の余地がある。
【0006】
なお、この問題は、盗撮の対象が映像である場合に限らず、絵画、彫刻、工芸品等の美術品や、コンサート・ホール等でコンサートを行っている人、演劇場での演者等が盗撮の対象とされている場合においても生じ得る問題である。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、省スペースな構成で、盗撮の対象物を見る人間の視覚には影響を与えずに、撮影された映像の画質を劣化させることができるノイズ付加装置及びノイズ付加方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1の態様に係るノイズ付加装置は、盗撮の対象物を目視した際に人間の眼には知覚されず、かつ前記対象物をカメラで撮影した撮影映像を目視した際に人間の眼に知覚される、所定の周波数で変化するノイズを、可視光に重畳させるための信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部で生成された信号に基づいて、前記可視光の光路上に設けられたシャッタを前記所定の周波数で開閉させて、前記可視光に前記所定の周波数のノイズを重畳する重畳部と、を含む。
【0009】
第1の態様に係るノイズ付加装置によれば、信号生成部では、盗撮の対象物を目視した際に人間の眼には知覚されず、かつ上記対象物をカメラで撮影した撮影映像を目視した際に人間の眼に知覚される、所定の周波数で変化するノイズを、可視光に重畳させるための信号が生成される。
【0010】
そして、重畳部では、信号生成部で生成された信号に基づいて、上記可視光に所定の周波数のノイズが重畳される。これにより、盗撮の対象物を見たときには、視覚的に上記ノイズを認識しないので、上記対象物を見る人間の視覚には影響を与えることがない。一方、カメラで撮影を行った場合には、撮影映像に上記ノイズが発生して見えるので、盗撮などによって不正に撮影された映像の画質を劣化させることができる。
【0011】
第2の態様に係るノイズ付加装置は、上記盗撮の対象物が映像であり、上記可視光が映像光であるものとしてもよい。これにより、映画投影機等の投影機から投影された映像を見たときには、視覚的にノイズを認識しないので、映像を見る人間の視覚には影響を与えることがない。一方、カメラで撮影を行った場合には、撮影映像にノイズが発生して見えるので、盗撮などによって不正に撮影された映像の画質を劣化させることができる。
【0012】
また、第3の態様に係るノイズ付加装置の所定の周波数は、予め定められた複数の周波数であり、前記信号生成部は、前記映像の平均輝度を算出し、前記算出した映像の平均輝度に応じて、前記複数の周波数の何れかを選択し、選択された周波数で変化するノイズを、映像光に重畳させるための信号を生成するようにしてもよい。
【0013】
また、第4の態様に係るノイズ付加装置の所定の周波数は、所定の周波数をN、人間の眼に知覚されないノイズの周波数をZ1、人間の眼に知覚されるノイズの周波数をZ2、映像のフレーム周波数をP、カメラの撮影時のフレーム周波数をVとしたとき、Z1=mP+nN、及び、Z2=mP+nN+kVの2つの式を満たす値とする(ただし、m、n、kは、正または負の整数である。)こともできる。
【0014】
なお、第5の態様に係るノイズ付加装置のZ1、Z2は、人間の知覚能力の観点から、Z1が、6Hzから14Hzまでを除く値であり、Z2は6Hzから14Hzまでの値を適用することができる。
【0015】
また、第6の態様に係るノイズ付加装置は、Z1及びZ2の値の範囲を入力する入力部を更に含むようにしてもよい。
【0016】
また、第7の態様に係るノイズ付加装置の重畳部は、映像光に同期して所定の周波数のノイズを重畳するようにしてもよい。このように、映像光に同期して所定の周波数のノイズを重畳することにより、映像に発生するノイズの位置を制御することが可能となる。
【0017】
さらに、第8の態様に係るノイズ付加装置は、盗撮の対象物を目視した際に人間の眼には知覚されず、かつ前記対象物をカメラで撮影した撮影映像を目視した際に人間の眼に知覚される、所定の周波数で変化する画像を、可視光に重畳させるための信号を生成する信号生成部と、前記可視光の光路上に設けられたメッセージ表示部と、前記信号生成部で生成された信号に基づいて、前記メッセージ表示部による表示及び非表示を前記所定の周波数で切り換えて、前記可視光に前記所定の周波数の画像を重畳する重畳部と、を含む。
【0018】
第9の態様に係るノイズ付加装置は、盗撮の対象物を目視した際に人間の眼には知覚されず、かつ前記対象物をカメラで撮影した撮影映像を目視した際に人間の眼に知覚される、予め定めた所定の周波数で変化する、画像信号に重畳させるためのノイズ信号を記憶するノイズ信号記憶部と、前記ノイズ信号記憶部から読み出したノイズ信号を、前記画像信号に重畳する重畳部と、を含む。
【0019】
第10の態様に係るノイズ付加方法は、盗撮の対象物を目視した際に人間の眼には知覚されず、かつ前記対象物をカメラで撮影した撮影映像を目視した際に人間の眼に知覚される、所定の周波数で変化する画像を、可視光に重畳させるための信号を生成し、前記生成した信号に基づいて、前記可視光の光路上に設けられたシャッタを前記所定の周波数で開閉させて、前記可視光に前記所定の周波数のノイズを重畳する。
【0020】
第11の態様に係るノイズ付加方法は、盗撮の対象物を目視した際に人間の眼には知覚されず、かつ前記対象物をカメラで撮影した撮影映像を目視した際に人間の眼に知覚される、所定の周波数で変化する画像を、可視光に重畳させるための信号を生成し、前記生成された信号に基づいて、前記可視光の光路上に設けられたメッセージ表示部による表示及び非表示を前記所定の周波数で切り換えて、前記可視光に前記所定の周波数の画像を重畳する。
【0021】
第12の態様に係るノイズ付加方法は、盗撮の対象物を目視した際に人間の眼には知覚されず、かつ前記対象物をカメラで撮影した撮影映像を目視した際に人間の眼に知覚される、予め定めた所定の周波数で変化する、画像信号に重畳させるためのノイズ信号を記憶するノイズ信号記憶部から、ノイズ信号を読み出し、読み出したノイズ信号を前記画像信号に重畳する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様であるノイズ付加装置及びノイズ付加方法によれば、省スペースな構成で、盗撮の対象物を見る人間の視覚には影響を与えずに、撮影された映像の画質を劣化させることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態に係る映画盗撮防止装置の要部の概略構成を示す斜視図である。
【図2】第1の実施の形態に係る電子シャッタの構成の一例を示す分解斜視図である。
【図3A】映像へのシャッタ雑音の重畳方法を説明するための模式図である。
【図3B】シャッタ雑音が重畳された映像を盗撮カメラが撮影して得られる撮影映像の状態を説明するための模式図である。
【図4A】正弦波で表した投影映像の一例を示す図である。
【図4B】正弦波で表したシャッタ雑音の一例を示す図である。
【図4C】シャッタ雑音で変調された投影映像の一例を示す図である。
【図5A】通常の映像を盗撮カメラで撮影して得られる撮影映像の一例を示す図である。
【図5B】シャッタ雑音で変調された映像を盗撮カメラで撮影して得られる撮影映像の一例を示す図である。
【図6】第2の実施の形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図7】第3の実施の形態に係る映画投影機の構成例を示すブロック図である。
【図8】第3の実施の形態に係る映画投影機で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】第4の実施の形態に係る映画投影機で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】第5の実施の形態に係る美術品盗撮防止装置の要部の概略構成を示す斜視図である。
【図11】第5の実施の形態に係る美術品盗撮防止装置により得られる撮影映像の一例を示す正面図である。
【図12】第5の実施の形態に係る美術品盗撮防止装置の他の構成例の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態の例を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、本発明のノイズ付加装置を、映画投影機から投影された映画の盗撮を防止する映画盗撮防止装置、及び絵画、彫刻、工芸品等の美術品に対する盗撮を防止する美術品盗撮防止装置に適用した場合を例として説明する。本発明のノイズ付加装置を、これら以外の対象物に対する盗撮を防止する他の盗撮防止装置としてもよい。

【0025】
[第1の実施の形態]
図1は、本実施の形態に係る映画盗撮防止装置の要部の概略構成を示す斜視図である。

【0026】
図1に示すように、本実施の形態に係る映画盗撮防止装置10は、電子シャッタ12と、該電子シャッタ12の駆動を制御する制御装置14と、を備えている。なお、電子シャッタ12は本発明の重畳部に相当し、制御装置14は本発明の信号生成部に相当する。

【0027】
本実施の形態に係る電子シャッタ12は、図1に示すように、スクリーン20に映像を投影する映画投影機16のレンズユニット16Aと、スクリーン20との間に設けられる。本実施の形態では、図1に示すように、映画投影機16のレンズユニット16Aに当接して電子シャッタ12を配置する。映像の一部、より好ましくは全部が電子シャッタ12を透過する範囲に含まれる位置であれば、電子シャッタ12を、レンズユニット16Aから離れて配置してもよい。

【0028】
電子シャッタ12には、制御装置14が接続されており、制御装置14によって電子シャッタ12のオン/オフ(光の遮断/透過)が制御される。

【0029】
本実施の形態に係る映画投影機16は、一般的なものが用いられる。例えば、映画投影機16には、コントローラ18が接続され、コントローラ18から映像を表す映像信号を受信する。そして、映画投影機16は、受信した映像信号に基づいて、光源16Cから入射した光を光変調器(例えば、液晶表示素子やDMD(Digital Mirror Device)など)16Bによって変調して、レンズユニット16Aを介して変調した映像光をスクリーン20に投影する。

【0030】
図2は、本実施の形態に係る電子シャッタ12の構成の一例を示す分解斜視図である。なお、本実施の形態では、透過性圧電セラミックス(PLZT)24を用いた電子シャッタ12を一例として説明するが、電子シャッタ12はこれに限るものではない。液晶を利用した電子シャッタ等の他の電子シャッタを適用するようにしてもよい。

【0031】
本実施の形態に係る電子シャッタ12は、図2に示すように、映画投影機16のレンズユニット16A側(投影光の入射側)に設けられた偏光子22、PLZT24、及びスクリーン20側(投影光の出射側)に設けられた検光子26を備えている。

【0032】
なお、本実施の形態では、PLZT24として、図2に示すように、溝型の形状とされ、溝部分に電極が設けられたものを一例として示すが、PLZT24や電極の形状はこれに限るものではなく、種々の形状のものを採用することが可能である。

【0033】
PLZT24の例としては、例えば、静岡大学論文(平野富夫、「シード層を用いたCSD法PLZT強誘電体薄膜の低温形成に関する研究」、SURE:Shizuoka University REpository、静岡大学、2000年9月22日、p.1-138、[平成25年10月24日検索]、インターネット<URL: http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/handle/10297/3241>)に記載の構成を一例として採用することができる。

【0034】
上記論文に記載のように、光軸をxとし、光軸xに直交する面をyz面としたとき、PLZT24に電界を印加することで、PLZT24のx、y、z軸各方向の光の屈折率が変化する。ここで、偏光子22は、偏光方向がy軸方向とz軸方向に対して、例えば、45度となるように配置されると共に、検光子26は、偏光方向が偏光子22と直交するように配置される。このように配置することにより、PLZT24に電界が印加されないときは、PLZT24の結晶を通過した光はy成分とz成分で同位相となり、偏光方向は入射時と同一方向に保たれるため、検光子26によって遮られて光が遮断される。一方、PLZT24に電界が印加されると、y軸方向とz軸方向の屈折率が異なるため、PLZT24の結晶内を伝搬する間に各々の位相が徐々にずれて、2成分を合成した楕円偏光した光となり、検光子26を光が透過する。

【0035】
本実施の形態では、上述のように構成された電子シャッタ12を映画投影機16のレンズユニット16Aの投影光の出射側に当接して配置する。映画館で鑑賞する観客の視覚には影響を与えずに、ビデオカメラ等のカメラ(以下、単に盗撮カメラと称する場合がある。)で撮影した場合に撮影映像を劣化させる所定の周波数で電子シャッタ12を駆動するように制御装置14が制御する。

【0036】
ここで、上記所定の周波数として、投影された映像を目視した際に人間の眼には知覚されず、かつ盗撮カメラで撮影した撮影映像を目視した際に人間の眼に知覚される周波数を選択する。

【0037】
具体的には、所定の周波数をN、人間の眼に知覚されないノイズの周波数をZ1、人間の眼に知覚されるノイズの周波数をZ2、投影された映像のフレーム周波数をP、盗撮カメラの撮影時のフレーム周波数をVとしたとき、所定の周波数Nとして、以下の(1)式及び(2)式を満たす値を選択する(ただし、m、n、kは、正または負の整数である。)。

【0038】
Z1=mP+nN ・・・(1)
Z2=mP+nN+kV ・・・(2)

【0039】
この所定の周波数Nで制御装置14が電子シャッタ12のオン/オフ駆動を制御して、電子シャッタ12によって発生したノイズ(以下では、単にシャッタ雑音と称する場合がある。)を投影される映像に重畳する。これにより、映画館で鑑賞する観客の視覚には影響を与えずに、盗撮カメラで撮影した場合に撮影映像を劣化させることができる。

【0040】
また、本実施の形態では、電子シャッタ12をレンズユニット16Aの投影光の出射側に当接して配置することができるので、別途光を出射する照射部等を設ける場合よりも省スペースな構成とすることができる。

【0041】
続いて、上述のように構成された本実施の形態に係る映画盗撮防止装置10の作用について図3A~5Bを参照して説明する。なお、図3Aは映像へのシャッタ雑音の重畳方法を説明するための模式図である。図3Bはシャッタ雑音が重畳された映像を盗撮カメラが撮影して得られる撮影映像の状態を説明するための模式図である。また、図4Aは正弦波で表した投影映像の一例を示す図である。図4Bは正弦波で表したシャッタ雑音の一例を示す図である。図4Cはシャッタ雑音で変調された投影映像の一例を示す図である。さらに、図5Aは通常の映像を盗撮カメラで撮影して得られる撮影映像の一例を示す図である。図5Bはシャッタ雑音で変調された映像を盗撮カメラで撮影して得られる撮影映像の一例を示す図である。

【0042】
本実施の形態に係る映画盗撮防止装置10では、映画投影機16によるスクリーン20への映画の投影を開始する際に、制御装置14による電子シャッタ12のオン/オフ(光の遮断/透過)制御を開始する。

【0043】
これにより、レンズユニット16Aを透過した映像が電子シャッタ12を介してスクリーン20に投影される。すなわち、電子シャッタ12のオン/オフに応じてスクリーン20に映像が断続的に投影されるので、スクリーン20に投影される映像は、図3Aに示すように、投影映像とシャッタ雑音とが乗算されてシャッタ雑音で変調された投影映像となる。例えば、図4Aに示すような正弦波で表した投影映像と、図4Bに示すような正弦波で表したシャッタ雑音とが乗算されると、図4Cに示すように、シャッタ雑音で変調された投影映像が得られる。

【0044】
また、このようにスクリーン20に投影された映像を盗撮カメラで撮影すると、図3Bに示すように、シャッタ雑音で変調された投影映像と、通常の映像を盗撮カメラで撮影したときの撮影映像とが乗算された撮影映像が得られる。例えば、図5Aに示すような、通常の映像を盗撮カメラで撮影したときの撮影映像と、上述のシャッタ雑音で変調された投影映像とが乗算されると、図5Bに示すような撮影映像が得られる。

【0045】
このとき、上述したように、上記所定の周波数Nを、上述の(1)式及び(2)式を満たす値とすることで、映画館で鑑賞する観客の視覚には影響を与えずに、盗撮カメラで撮影した場合に撮影映像を劣化させることができる。

【0046】
以下、このように、制御装置14が周波数Nで電子シャッタ12を駆動することにより、映画館で鑑賞する観客の視覚には影響を与えずに、盗撮カメラの撮影映像を劣化させることのできる原理について説明する。

【0047】
2種類の信号の乗算を行うと、必ず和の周波数と差の周波数との各信号が現れる。例えば、sinθとsinφとの各信号の乗算を行うと以下の(3)式に示すように、(θ-φ)と(θ+φ)との各信号が現れる。

【0048】
【数1】
JP0006501228B2_000002t.gif

【0049】
すなわち、18世紀~19世紀に活躍したフランスの数学者であるフーリエに端を発するフーリエ級数及びフーリエ変換と、その後の研究から、全ての信号は三角関数の合成で表現可能なことが証明されている。

【0050】
映画館で投影される映像もその例外ではなく、位相及び周期の異なる正弦波(sin)と余弦波(cos)で表現することが可能である。

【0051】
映画は通常、フレーム周波数が24Hzである。しかしながら、24Hzのフレーム周波数の映像は人間の目にはフリッカとして視認される。このため、1フレーム内でシャッタを切る(暗フレームを挿入する)ことにより、擬似的に48Hzを実現してフリッカを防止している。このため、映画は24Hz及び48Hzを基本のフレーム周波数としており、24Hzによるフーリエ級数展開が可能である。ここで、48Hzは24Hzの2倍の周波数であるから、映像信号を24Hzでフーリエ級数展開すると24Hzの整数倍の周波数の信号が現れる。このため、48Hzは24Hzの2倍の周波数として出現する。なお、この原理は、映画投影機16のフレーム周波数に依存しないため、以下の説明においては、一般化し、映画投影機16のフレーム周波数をPHzとして説明する。

【0052】
また、電子シャッタ12を制御装置14が駆動することによって与える上述の所定の周波数(シャッタ雑音の周波数)をNHzとする。この所定の周波数を、本実施の形態では、電子シャッタ12によって重畳する場合の例を示すが、これに限るものではない。例えば、映画投影機16のバックライトや、映画投影機16で投影するための映像信号にシャッタ雑音に対応するノイズを直接重畳する手法もあり、これらも理論的には何れも同じ原理となる。

【0053】
また、盗撮に用いられる一般的なビデオカメラ等の撮影装置はフレーム周波数が30Hz又は60Hzであるが、これを一般化するためにVHzとする。

【0054】
フレーム周波数がPHzの映像信号にNHzのノイズ信号を重畳すると、(3)式で示したように、PHzとNHzを基本周波数とし、(N-P)Hzと(N+P)Hzの信号が現れる。人間の視覚には最も高輝度の部分と最も低輝度の部分が目立つ傾向があるので、目立つ部分だけに注目するとNHzの信号をPHzでサンプリングしたことになる。

【0055】
従って、サンプリングの定理から、(m×P+n×N)Hzの信号が現れる。ここで、m、nは正または負の整数であり、m、n=±1、±2、±3・・・となる。例えば、P=24Hz、N=100Hzとすると、m=-4、n=1の場合や、m=5、n=-1の場合に、100-24×4=4Hzの信号や、24×5-100=20Hzの信号が現れる。劇場で人間は映画投影機16から投影された映像にシャッタ雑音が重畳された状態で鑑賞する。

【0056】
ところで、人間の視覚は、低周波数のフリッカには非常に敏感である。ここで、低周波数のフリッカとは、人間にとって視認可能な程度の周波数のフリッカを示す。

【0057】
ここで、上述の(1)式及び(2)式を満足する低周波数のフリッカの一例としては、特に6Hz~14Hzの周期信号を挙げることができる。人間は、一般的に50Hz以下のフリッカを認識する傾向にあるが、特に15Hz以下のフリッカに対しては敏感に認識しやすい。このため、(m×P+n×N)Hzの信号が人間の視覚に敏感な周波数とならないように上記所定の周波数としてのシャッタ雑音の周波数を選ぶ必要がある。上記の例では、Z1=24×5-100=20Hzとなり、観客はシャッタ雑音が重畳された状態で映像を鑑賞することになるが、Z1の値が15Hzより大きいので、比較的フリッカを認識し難い。

【0058】
盗撮カメラは、この状態の映像を撮影する。この場合、スクリーン20に投影された映像を盗撮カメラで撮影することにより得られる撮影映像は、盗撮カメラのフレーム周波数の信号がさらに重畳されたものとなる。すなわち、盗撮カメラのフレーム周波数をVHzとし、新たにk=±1、±2、±3・・・として、盗撮カメラの撮影により得られた撮影映像には、(m×P+n×N+k×V)Hzの信号が混入する。

【0059】
ここで、(m×P+n×N)Hzの値が、人間がフリッカを視認しやすい周波数帯(例えば15Hz以下)から外れる周波数となり、かつ、(m×P+n×N+k×V)Hzの値が人間の視覚に視認されやすい周波数となるように、Nの値を選ぶ。すなわち、上述の(1)式及び(2)式を満足する所定の周波数をNとして選ぶことによって、劇場ではフリッカが視認されないが、盗撮した映像ではフリッカが視認される状態を作り出すことが可能となる。

【0060】
例えば、P=24Hz、N=233Hz、V=60Hzとすると、スクリーン20上に投影された映像は、m=-9、n=1の場合に、233-24×9=17Hzとなり、上述のフリッカを敏感に認識し易い周波数から外れて人間の視覚では見え難くなる。N=55Hzでは、m=-2、n=1の場合に、55-24×2=7Hzとなり、人間がフリッカを敏感に認識し易い周波数の信号が混入することになる。

【0061】
一方、映画投影機16からスクリーン20に投影された、シャッタ雑音が重畳された映像を盗撮カメラで撮影した場合には、(m×P+n×N+k×V)の値は、P=24Hz、N=233Hz、V=60Hz、m=5、n=-1、k=2の場合に(m×P+n×N+k×V)=5×24-233+2×60=7Hzとなり、盗撮により得られる撮影映像には、人間がフリッカを敏感に認識し易い周波数の信号が混入する状態となり、フリッカを視認される状態を作り出すことができる。

【0062】
なお、本実施の形態では、電子シャッタ12の駆動により雑音源として重畳する信号を正弦波の信号として説明したが、雑音源として重畳する信号は、正弦波に限らず、三角波や矩形波等の周期性のある信号であればよい。

【0063】
また、本実施の形態では、電子シャッタ12の駆動と映画投影機16のスクリーン20への映像の投影を個別に行う例を説明したが、映画投影機16の映像に同期して、電子シャッタ12を駆動するようにしてもよい。本実施の形態のように、電子シャッタ12を単独で駆動する場合には、盗撮カメラの撮影によって得られる撮影映像で視認されるノイズは任意の位置に現れる。映画投影機16の映像に同期して電子シャッタ12を駆動することで、盗撮カメラの撮影によって得られる撮影映像におけるノイズの発生位置を任意の位置に制御することが可能となる。

【0064】
さらに、本実施の形態では、電子シャッタ12を映画投影機16のレンズユニット16Aに当接して配置した例を説明したが、これに限るものではない。例えば、映画投影機16内(例えば、レンズユニット16Aと光変調器16Bの間や、光変調器16Bと光源16Cの間など)に設けるようにしてもよい。

【0065】
[第2の実施の形態]
本第2の実施の形態では、映画投影機から投影する映像の映像信号に重畳するシャッタ雑音の周波数を変更する場合の形態例について、図6を参照しつつ説明する。なお、図6は、本実施の形態に係る制御装置14の構成例を示すブロック図である。

【0066】
本実施の形態に係る制御装置14は、映像信号取得部27と、平均輝度算出部28と、シャッタ制御部29とを備える。映像信号取得部27は、スクリーン20に映像を投影するための映像信号を取得する。平均輝度算出部28は、映像信号取得部27によって取得された映像信号に基づいて、映像の平均輝度を算出する。シャッタ制御部29は、平均輝度算出部28によって算出された映像の平均輝度に基づいて、シャッタ雑音の周波数を選択し、電子シャッタ12の駆動を制御する。

【0067】
平均輝度算出部28は、映像信号取得部27によって取得された映像信号に基づいて、複数のフレームの平均輝度を算出する。

【0068】
ここで、投影される映像の平均輝度によってフリッカが目立つ周波数は異なる。本実施の形態では、シャッタ制御部29は、平均輝度が所定の輝度より高い場合は予め定めた比較的高い第1の周波数のシャッタ雑音を選択し、選択した第1の周波数のシャッタ雑音を重畳するように、電子シャッタ12の駆動を制御する。また、シャッタ制御部29は、平均輝度が上記所定の輝度以下の場合は、上記比較的高い周波数より低い値として予め定めた第2の周波数のシャッタ雑音を探索し、選択した第2の周波数のシャッタ雑音を重畳するように、電子シャッタ12の駆動を制御する。

【0069】
本実施の形態では、全体的に明るい場面の多いコメディ系等の映画を対象とする場合は上記第1の周波数のシャッタ雑音を選択し、全体的に暗い場面の多いホラー系等の映画を対象とする場合は上記第2の周波数のシャッタ雑音を選択する。これは、盗撮防止の対象とする映像を映画とする場合に特に有用である。
なお、上記平均輝度が高くなるほど高い周波数のシャッタ雑音を選択するようにしてもよい。また、混入する雑音には直流成分を加算するようにしてもよい。

【0070】
[第3の実施の形態]
本第3の実施の形態では、映画投影機から投影する映像の映像信号に、上述したシャッタ雑音に対応するノイズを直接重畳する場合の形態例について、図7及び図8を参照しつつ説明する。なお、図7は、本実施の形態に係る映画投影機17の構成例を示すブロック図であり、図8は、映画投影機17で行われる処理の一例を示すフローチャートである。

【0071】
本実施の形態に係る映画投影機17は、映像信号取得部30と、ノイズ信号記憶部34と、ノイズ信号重畳部32と、投影駆動部36と、を備える。映像信号取得部30は、スクリーン20に映像を投影するための映像信号を取得する。ノイズ信号記憶部34は、上述の電子シャッタ12によって発生するシャッタ雑音に対応する予め定めたノイズ信号を示す情報を記憶する。ノイズ信号重畳部32は、映像信号取得部30によって取得された映像信号に対して、ノイズ信号記憶部34に記憶されたノイズ信号を重畳する。投影駆動部36は、ノイズ信号重畳部32によってノイズ信号が重畳された映像信号に基づいて、映像を投影する映像投影部38を制御する。なお、本実施の形態に係る映像投影部38は、前述した第1の実施の形態と同様の光変調器16Bや光源16Cを含む。

【0072】
このように映画投影機17を構成した上で、図8のステップ100において、映像信号取得部30がスクリーン20に投影するための映像信号を所定の単位で順次取得してノイズ信号重畳部32へ出力する。また、次のステップ102において、ノイズ信号重畳部32がノイズ信号記憶部34に予め記憶したノイズ信号を示す情報を読み出す。そして、ステップ104において、ノイズ信号重畳部32が読み出した情報により示されるノイズ信号を映像信号に重畳して投影駆動部36に出力する。

【0073】
このとき、ノイズ信号記憶部34に、上述の(1)式及び(2)式を満たす所定の周波数Nのノイズ信号を示す情報を記憶しておき、映像信号に重畳する。

【0074】
そして、ステップ106において、投影駆動部36が、ノイズ信号が重畳された映像信号に基づいて、映像投影部38の光変調器16Bを制御して、光源16Cから出射された光を変調する。これにより、上記第1の実施の形態と同様に、鑑賞する観客の視覚には影響を与えずに、盗撮された映像の画質を劣化させることができる。さらに、電子シャッタ12も不要となるので、映画投影機17を、上記の実施の形態よりも更に省スペースな構成とすることができる。

【0075】
ここで、図8で示した処理では、ステップ100において、一度に映像信号を取得せずに、所定の単位で順次取得する場合を例に示した。そこで、ステップ108において、取得対象とする映像信号が終了したか否かを映像信号取得部30が判断し、次の映像信号がある場合には上記ステップ100からの処理を再度繰り返し、次の映像信号がない場合に一連の処理を終了する。なお、上記ステップ100において全ての映像信号を一度に取得するようにしてステップ108を省略するようにしてもよい。

【0076】
なお、図7の構成では、上記第1の実施の形態におけるコントローラ18が映画投影機17に含まれる例を示したが、これに限るものではなく、例えば、一般的な映画投影機16を用いて、映像信号取得部30、ノイズ信号重畳部32、及びノイズ信号記憶部34をコントローラ18に設けることにより、上記第1の実施の形態のように、一般的な映画投影機16と、コントローラ18とを含む構成としてもよい。

【0077】
[第4の実施の形態]
上記第3の実施の形態では、上述の電子シャッタ12によって発生するシャッタ雑音に対応する予め定めたノイズ信号をノイズ信号記憶部34に予め記憶するようにした。図7の構成におけるノイズ信号記憶部34の代わりに、上述の(1)式の人間の眼に知覚されないノイズの周波数Z1、及び(2)式の人間の眼に知覚されるノイズの周波数Z2の各々の範囲又は値を入力する入力部を設ける。図7のノイズ信号重畳部32が、この入力部によって入力されたZ1及びZ2の値に基づいてノイズ信号を生成して、映像信号に重畳するようにしてもよい。

【0078】
本第4の実施の形態では、この場合の処理の流れについて、図9を参照しつつ説明する。なお、図9は、この場合に映画投影機17で行われる処理の一例を示すフローチャートであり、図8と同一の処理を行うステップについては図8と同一のステップ番号を付して、その説明を極力省略する。

【0079】
まず、ステップ94において、映画投影機17は、(1)式のZ1、及び(2)式のZ2の各々の範囲(又は値)を入力するための設定入力画面を図示しない表示部に表示する。ここで、映画投影機17は、Z1及びZ2の各々の範囲(又は値)が入力されるまでステップ96で待機して、これらが入力されたところでステップ98へ移行する。なお、本実施の形態では、映画投影機17の本体に液晶ディスプレイ等の表示装置を設けておき、これを上記表示部として適用しているが、これに限らず、当該表示部として映画投影機17とは別体で表示装置を用いる形態等、他の形態としてもよいことは言うまでもない。

【0080】
ステップ98では、入力されたZ1及びZ2の範囲(又は値)に基づいて、(1)式及び(2)式を満たすノイズ信号をノイズ信号重畳部32が生成する。すなわち、ノイズ信号重畳部32は、(1)式及び(2)式を満足する周波数Nを求めて、当該周波数Nのノイズ信号を生成する。また、次のステップ100において、映像信号取得部30が、スクリーン20に投影するための映像信号を所定の単位で順次取得してノイズ信号重畳部32へ出力する。そして、次のステップ103において、ノイズ信号重畳部32が、映像信号にステップ98で生成したノイズ信号を重畳して投影駆動部36に出力する。なお、以降の処理は、図8と同様に行う。

【0081】
このように、(1)式のZ1及び(2)式のZ2の値を入力可能な構成にすることにより、要求される投影映像の品質や、要求される盗撮映像の劣化の度合い等に応じて最適化されたノイズを映像信号に重畳することが可能となる。

【0082】
なお、上記第1の実施の形態において、本第4の実施の形態と同様に(1)式のZ1、及び(2)式のZ2の各々の値の範囲又は値を入力する入力部を設けて、入力結果に基づいて、所定の周波数Nを求め、電子シャッタ12を駆動するようにしてもよい。

【0083】
[第5の実施の形態]
上記第1~第4の実施の形態では、撮影映像に対してノイズを重畳させる場合の形態例について説明したが、本第5の実施の形態では、撮影映像に対して、文字、マーク等の意味を有する画像(以下、「メッセージ画像」という。)を重畳させる場合の形態例について説明する。なお、本実施の形態では、本発明のノイズ付加装置を、絵画、彫刻、工芸品等の美術品に対する盗撮を防止する美術品盗撮防止装置に適用した場合を一例として説明するが、美術品以外の物品の盗撮を防止する他の盗撮防止装置としてもよい。

【0084】
図10は、本第5の実施の形態に係る美術品盗撮防止装置50の要部の概略構成を示す斜視図である。

【0085】
図10に示すように、本実施の形態に係る美術品盗撮防止装置50は、液晶パネル52と、該液晶パネル52の駆動を制御する制御装置54と、を備えている。なお、液晶パネル52は本発明の重畳部に相当し、制御装置54は本発明の信号生成部に相当する。

【0086】
本実施の形態に係る液晶パネル52は、図10に示すように、美術品60に可視光を照射する投光器56のレンズユニット56Aと、美術品60との間に設けられる。本実施の形態では、図10に示すように、投光器56のレンズユニット56Aに当接して液晶パネル52を配置するが、投光器56から出射された可視光の一部、より好ましくは全部が液晶パネル52を透過する範囲に含まれる位置であれば、レンズユニット56Aから離れて配置してもよい。

【0087】
液晶パネル52には、制御装置54が接続されており、制御装置54によって液晶パネル52による表示状態が制御される。

【0088】
なお、本実施の形態に係る美術品盗撮防止装置50では、投光器56としてスポットライトを用いているが、これに限らず、フラッドライト、探照灯等の他の一般的なものを用いることができる。本実施の形態に係る投光器56は、光源56Bから出射された可視光をレンズユニット56Aを介して美術品60に投光する。なお、本実施の形態に係る投光器56は電源スイッチ56Cが設けられており、電源スイッチ56Cがオン状態にされると光源56Bの発光が開始されて、当該光源56Bから可視光が出射され、オフ状態にされると光源56Bの発光が停止される。

【0089】
次に、本実施の形態に係る美術品盗撮防止装置50の作用について説明する。

【0090】
上記第1の実施の形態に係る映画盗撮防止装置10では、盗撮カメラで撮影されることにより得られる撮影映像に対して電子シャッタ12によるシャッタ雑音を重畳させていたが、本実施の形態に係る美術品盗撮防止装置50では、上記シャッタ雑音に代えて、液晶パネル52により、上記メッセージ画像を撮影映像に対して重畳させるものである。

【0091】
本実施の形態に係る美術品盗撮防止装置50では、投光器56の電源スイッチ56Cをオン状態にすると共に、制御装置54により液晶パネル52に上記メッセージ画像の表示及び非表示を、前述した(1)式及び(2)式を満足する所定の周波数Nで周期的に実行する。

【0092】
この際、本実施の形態に係る美術品盗撮防止装置50では、(1)式及び(2)式におけるmの値を0(零)として、上記Z1及びZ2の条件を満足する周波数Nを予め導出しておき、これを適用する。従って、この場合、(1)式及び(2)式におけるフレーム周波数Pは考慮されないこととなる。なお、本実施の形態に係る美術品盗撮防止装置50では、上記メッセージ画像として、「本作品は撮影が禁止されております。」とのメッセージを示す画像を適用している。

【0093】
これにより、美術品60を鑑賞している人の眼にはメッセージ画像は視認されず、盗撮カメラで撮影された撮影映像には、一例として図11に示すように、上記メッセージ画像が重畳された状態となる。なお、上記メッセージ画像は、上述したような「本作品は撮影が禁止されております。」等の撮影の禁止を促すメッセージに限るものではない。例えば、メッセージ画像として、‘×’印、‘/’印等の撮影の禁止を意味するマークを適用してもよいことは言うまでもない。

【0094】
本実施の形態に係る美術品盗撮防止装置50においても、上記第1の実施の形態に係る映画盗撮防止装置10と同様の効果を奏することができる。

【0095】
特に、近年の殆どのカメラでは、リアルタイムで被写体の撮影状態を確認することができる液晶ディスプレイ等の電子ビュー・ファインダ(所謂EVF(Electronic View Finder))が搭載されているが、この種のカメラを用いて美術品60を撮影する場合には、当該電子ビュー・ファインダによって、美術品60の映像に対してリアルタイムで上記メッセージ画像が表示されるため、盗撮する意識がなく、撮影が禁止されていることを知らずに結果的に盗撮してしまうといったことを未然に防止することもできる。

【0096】
なお、本実施の形態では、液晶パネル52によって周波数Nでメッセージ画像の表示/非表示を切り換える場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、メッセージ画像を示す部材を固定的に設ける一方、投光器56による可視光の出射/非出射を周波数Nで切り換える形態としてもよい。

【0097】
図12には、この形態の構成例を示している。同図に示す例では、本実施の形態の液晶パネル52に代えて、投光器56により可視光が照射された場合にメッセージ画像の影が美術品60に投影される、一例として平板状の紙、プラスチック板等の部材53を適用する。なお、同図に示す例では、部材53として、透明なプラスチックの板材に対して‘×’印を黒色で印刷したものを適用している。

【0098】
また、この例では、投光器56による可視光の出射/非出射を周期的に切り換えるコントローラ58を設ける。そして、この形態においても、(1)式及び(2)式におけるmの値を0(零)として、上記Z1及びZ2の条件を満足する周波数Nを予め導出しておき、コントローラ58により、当該周波数Nで投光器56による可視光の出射/非出射を切り換えるように投光器56を制御する。この場合も、本第5の実施の形態と同様の効果を奏することができる。

【0099】
また、本実施の形態に係る液晶パネル52に代えてDMDを適用し、当該DMDのミラーをオンオフさせることにより、本実施の形態と同様のメッセージ画像の表示/非表示を周波数Nで切り換える形態としてもよいことは言うまでもない。

【0100】
また、本実施の形態では、本発明のノイズ付加装置を、美術品に対する盗撮を防止する美術品盗撮防止装置に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、コンサート・ホール等でコンサートを行っている人、演劇場での演者等に対する盗撮を防止する装置に、本発明のノイズ付加装置を適用してもよい。

【0101】
さらに、本実施の形態における投光器56に代えて上記第1の実施の形態に係る映画投影機16を適用することにより、映画の映像にメッセージ画像を重畳させる形態としてもよい。この場合も、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。

【0102】
日本出願2014-005188の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。

【0103】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記載された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3A】
2
【図3B】
3
【図4A】
4
【図4B】
5
【図4C】
6
【図5A】
7
【図5B】
8
【図6】
9
【図7】
10
【図8】
11
【図9】
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【図10】
13
【図11】
14
【図12】
15