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明細書 :水溶性多糖類を主たる成分とする放出制御型フィルム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-138521 (P2018-138521A)
公開日 平成30年9月6日(2018.9.6)
発明の名称または考案の名称 水溶性多糖類を主たる成分とする放出制御型フィルム
国際特許分類 A61K  47/36        (2006.01)
A61K   9/70        (2006.01)
A61K  47/10        (2006.01)
A61K  31/136       (2006.01)
A61K  31/137       (2006.01)
A61P   1/00        (2006.01)
A61K  33/44        (2006.01)
A61P  13/12        (2006.01)
FI A61K 47/36
A61K 9/70 401
A61K 47/10
A61K 31/136
A61K 31/137
A61P 1/00
A61K 33/44
A61P 13/12
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2017-033170 (P2017-033170)
出願日 平成29年2月24日(2017.2.24)
発明者または考案者 【氏名】安藝 初美
【氏名】池田 浩人
【氏名】芹口 結衣
【氏名】馬場 さおり
出願人 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100174791、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 敬義
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4C086
4C206
Fターム 4C076AA74
4C076BB22
4C076BB31
4C076CC16
4C076CC17
4C076EE30A
4C076FF32
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA06
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA57
4C086MA63
4C086NA12
4C086ZA66
4C086ZA81
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA77
4C206MA83
4C206NA12
4C206ZA66
4C206ZA81
要約 【課題】こんにゃくを用いた新規な技術開発。
【解決手段】水溶性多糖類を主たる組成成分とし,有用成分を含有する放出制御型フィルム。こんにゃくグルコマンナンをはじめとする水溶性多糖類を主たる組成物とし,有用成分を加えたうえでフィルムとしたものであり、これを,口腔内や皮膚に貼付してすることにより,フィルムの崩壊等により有用成分の放出がコントロールできる放出制御型フィルム。こんにゃくの新たな有用性を展開するものである放出制御型フィルム。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
水溶性多糖類を主たる組成成分とし,有用成分を含有することを特徴とする放出制御型フィルム

【請求項2】
前記水溶性多糖類が,グルコマンナンであることを特徴とする請求項1に記載の放出制御型フィルム

【請求項3】
皮膚もしくは口腔内に付着して用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載の放出制御型フィルム

【請求項4】
さらに,組成成分として,可塑剤を含むことを特徴とする請求項1から3に記載の放出制御型フィルム

【請求項5】
前記可塑剤が,グリセリン,ヒアルロン酸のいずれか又は複数から選択されることを特徴とする請求項4に記載の放出制御型フィルム

【請求項6】
前記有用成分が,薬物成分,栄養成分,活性炭のいずれか又は複数から選択されることを特徴とする請求項1から5に記載の放出制御型フィルム

【請求項7】
前記薬物成分として,Ambroxol Hydrochloride,Bromhexine Hydrochlorideのいずれか又は複数を含み,嚥下困難な患者の去痰薬として用いられることを特徴とする請求項6に記載の放出制御型フィルム

【請求項8】
前記有用成分に少なくとも活性炭を含み,動物腎尿毒症の治療に用いられることを特徴とする請求項6に記載の放出制御型フィルム

【請求項9】
前記活性炭を極性有機溶媒で前処理したうえで,水溶性多糖類溶液に添加することにより作製されたことを特徴とする請求項8に記載の放出制御型フィルム

【請求項10】
前記極性有機溶媒が,エタノールであることを特徴とする請求項9に記載の放出制御型フィルム

【請求項11】
前記水溶性多糖類の分子量が,約40万であることを特徴とする請求項1から10に記載の放出制御型フィルム

【請求項12】
口腔内に有用成分を含んだフィルムを付着させ,フィルムが経時的に崩壊することにより,有用成分を,口腔内を含む消化管に放出することを特徴とする有用成分放出システム
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は,水溶性多糖類を主たる成分とする放出制御型フィルムに関する。さらに詳しくいうと本発明は,水溶性多糖類としてこんにゃくグルコマンナンを主たる成分として作製されたフィルムであり,このフィルムに有用成分を含有させ,嚥下が困難な患者や投与が困難な動物の口腔内に付着して用いるなどすることにより,フィルムの崩壊とともに有用成分の放出等のコントロールが可能な,放出制御型フィルムならびに有用成分放出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
こんにゃくは,古くから日本の食文化に根付いた食物であり,近年では,低カロリーであり食物繊維も豊富なことから,ダイエット食品としての認知度が高い。
しかるに,日本人の食生活の変化や天候不順による原材料の高騰など,種々の事情により,近年,こんにゃくの消費は大きく落ち込んでいるのが現状である。結果として,多くのこんにゃく製造企業は廃業や倒産を余儀なくされており,日本の伝統的産業であるこんにゃく産業の衰退に,歯止めが掛からない状況である。
【0003】
こんにゃくについて,科学的には,こんにゃくグルコマンナン(以下,「KGM」)と呼ばれる水溶性多糖類を豊富に含むものであり,こんにゃくを成分として含んだフィルムに関する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2002-355918
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術は,こんにゃくを成分として含んだフィルム技術を提供する点で有用であるものの,用途として単にフィルムとしての用途にとどまるにすぎない。
このように,こんにゃく粉を原料とするフィルムは,食品用ラップ,有機EL薄膜の表面保護膜などへの応用が研究されているが,こんにゃくそのものが有する,可食性かつ生分解性であるという特徴を活かしきれていないのが現状である。
【0006】
こんにゃくは古くから「腹中の砂下ろし」などと言われ,生理作用は科学的に明らかではないが,経験的に体に良いものとして伝えられてきた。こんにゃくという日本独自の伝統的な農産物を使い,こんにゃく由来の新規製品を開発することは,こんにゃくの需要を高め,こんにゃく農家の飛躍を支える一助となると考えられる。
【0007】
上記事情を背景として本発明では,こんにゃくを用いた新規な技術開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは,鋭意研究の結果,酸加水分解によってKGMの平均分子量の調整を行い,かかる調製されたKGMを用いたフィルムの作製を行った。かかるフィルムが,口腔内において崩壊することにより,フィルム内から有用成分を放出することを実験的に確認し,発明を完成させたものである。
【0009】
本発明は,以下の構成からなる。
本発明の第一の構成は,水溶性多糖類を主たる組成成分とし,有用成分を含有することを特徴とする放出制御型フィルムである。
【0010】
本発明の第二の構成は,前記水溶性多糖類が,こんにゃく由来であることを特徴とする第一の構成に記載の放出制御型フィルムである。
本発明の第三の構成は,皮膚もしくは口腔内に付着して用いられることを特徴とする第一又は第二の構成に記載の放出制御型フィルムである。
本発明の第四の構成は,さらに,組成成分として,可塑剤を含むことを特徴とする第一から第三の構成に記載の放出制御型フィルムである。
本発明の第五の構成は,前記可塑剤が,グリセリン,ヒアルロン酸のいずれか又は複数から選択されることを特徴とする第四の構成に記載の放出制御型フィルムである。
【0011】
本発明の第六の構成は,前記有用成分が,薬物成分,栄養成分,活性炭のいずれか又は複数から選択されることを特徴とする第一から第五の構成に記載の放出制御型フィルムである。
本発明の第七の構成は,前記有用成分として,Ambroxol Hydrochloride,Bromhexine Hydrochlorideのいずれか又は複数を含み,嚥下困難な患者の去痰薬として用いられることを特徴とする第六の構成に記載の放出制御型フィルムである。
本発明の第八の構成は,前記有用成分に少なくとも活性炭を含み,動物腎尿毒症の治療に用いられることを特徴とする第六の構成に記載の放出制御型フィルムである。
本発明の第九の構成は,前記活性炭を極性有機溶媒で前処理したうえで,水溶性多糖類溶液に添加することにより作製されたことを特徴とする第八の構成に記載の放出制御型フィルムである。
本発明の第十の構成は,前記極性有機溶媒が,エタノールであることを特徴とする第九の構成に記載の放出制御型フィルムである。
本発明の第十一の構成は,前記水溶性多糖類の分子量が,約40万であることを特徴とする第一から第十の構成に記載の放出制御型フィルムである。
本発明の第十二の構成は,口腔内に有用成分を含んだフィルムを付着させ,フィルムが経時的に崩壊することにより,有用成分を,口腔内を含む消化管に放出することを特徴とする有用成分放出システムである。
【0012】
本発明により,こんにゃくを用いた新規な技術の提供が可能となった。すなわち本発明の放出制御型フィルムによれば,こんにゃくをはじめとする水溶性多糖類を主たる組成物として含有するものであり,口腔内に貼付等して用いることにより,有用成分の放出をコントロールすることが可能である。これにより本発明の放出制御型フィルムは,こんにゃくの新たな有用性を展開するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】こんにゃくフィルムの外観等を示した図
【図2】こんにゃくフィルムの破断強度の測定結果を示した図
【図3】活性炭によるインドール吸着除去率の比較結果を示した図
【図4】こんにゃくフィルムのインドール吸着除去率の比較結果を示した図
【図5】各pHで作製を行ったこんにゃくフィルムの外観を示した図
【図6】各pHで作製を行ったこんにゃくフィルムのインドール吸着除去率の比較結果を示した図
【図7】各こんにゃく粉比率で作製を行ったこんにゃくフィルムのインドール吸着除去率の比較結果を示した図
【図8】各グリセリン比率で作製を行ったこんにゃくフィルムのインドール吸着除去率の比較結果を示した図
【図9】各こんにゃく粉比率で作製を行ったこんにゃくフィルムのAmbroxol Hydrochloride溶出率の比較結果を示した図
【図10】各こんにゃく粉比率で作製を行ったこんにゃくフィルムのBromhexine Hydrochloride溶出率の比較結果を示した図
【図11】各グリセリン比率で作製を行ったこんにゃくフィルムのAmbroxol Hydrochloride溶出率の比較結果を示した図
【図12】各グリセリン比率で作製を行ったこんにゃくフィルムのBromhexine Hydrochloride溶出率の比較結果を示した図
【図13】加水分解回数によるこんにゃく粉KGMの平均分子量の変化を示した図
【図14】加水分解の還流時間によるこんにゃく粉KGMの平均分子量の変化を示した図
【図15】KGMの平均分子量とフィルムの崩壊速度定数の変化を示した図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の放出制御型フィルム等について説明を行う。

【0015】
本発明の放出制御型フィルムは,水溶性多糖類を主たる組成成分とし,有用成分を含有することを特徴とする。

【0016】
水溶性多糖類は,グルコースやマンノースなどの単糖類の重合体であり,水などを加えることによりゲル化が可能な化合物として定義される。このような水溶性多糖類として,典型的には,グルコマンナンを用いることができる。また,水溶性多糖類はゲル化が可能であれば,適宜,部分的にその化学構造を修飾ないし置換したものであっても構わない。
加えて,本発明の趣旨に鑑みれば,水溶性多糖類は,天然由来のものを用いてもよいし,化学的に合成したものを用いてもかまわない。すなわち,グルコマンナン自体は,(C6H10O5)nで表さる分子であり,かかる化合物や類する化合物を化学合成して,水溶性多糖類として用いることができる。

【0017】
天然由来のものとしてこんにゃく由来のグルコマンナンを用いる場合は,所定のpH溶液にてKGMを加水分解処理し,分子量を調整してから用いればよい。分子量については,用いる有用成分の量や種類,適用する対象に応じて適宜調整することができる。
すなわち,本発明の放出制御型フィルムにおいては,水溶性多糖類の含有量が同じ場合,平均分子量が減少するほど,有用成分の溶出が速くなる傾向にある。このことから,一つの目安として,活性炭のように経時的かつ徐々に放出を行う場合はKGMの平均分子量を大きく,去痰薬のように比較的速やかに放出を行う場合は平均分子量を小さくすればよい。

【0018】
平均分子量としては,約40万程度のものを用いることが好ましい。これにより,フィルムとしての崩壊性を最適化することが可能となり,本発明の放出制御型フィルムの性能を向上させる効果を有する。
KGMでこの範囲の平均分子量に調整する場合,こんにゃく粉10.0gに70% エタノール100mLを加えて1Mクエン酸溶液でpH2.7に調整,130℃で2時間還流した後,ろ過洗浄し,105℃で1時間乾燥することにより,調整することができる。
このように,天然由来の水溶性多糖類を用いる場合,加水分解をして調整を行うことが好ましい。これにより,KGM平均分子量の調整が可能となるとともに,夾雑物の除去が可能となり,本発明の放出制御型フィルムの品質を向上させる効果を有する。

【0019】
本発明において有用成分とは,人体もしくは動物において,何らかの有用性をもたらす成分として定義される。また,有用成分は,成分分子そのものが有用性を発揮する場合に限定されるものではなく,腸管もしくは経皮,経粘膜により吸収された後,分解された分子が有用性を発揮する,いわゆるDDS化された分子を含むものとして定義される。
このような有用成分として,例えば,薬物成分,糖やアミノ酸などの栄養成分,活性炭などが挙げられる。すなわち,腸管もしくは経皮,経粘膜により吸収される有用成分を用いてもよいし,それらから吸収されない,活性炭のような有用成分を用いることもできる。

【0020】
本発明の有用成分において,活性炭を用いることが好ましい。これにより,腸管内への経時的な活性炭の放出により,インドールの吸着ならびに体外排泄が可能となり,動物腎尿毒症の治療に用いることが期待できる。

【0021】
活性炭を用いる場合,これを極性有機溶媒で前処理したうえで,水溶性多糖類を含む溶液に添加することが好ましい。
すなわち,かかる前処理により,疎水性の極めて高い活性炭に極性有機溶媒を吸着させ,水溶性多糖類を含む水溶液への親和性を高めることができる。これにより,活性炭を効率よく放出制御型フィルム内に均一に分散させることが可能となり,本発明の放出制御型フィルムの製造効率ないし性能を向上させる効果を有する。

【0022】
極性有機溶媒としては,特に限定する必要はなく,用いる有用成分やフィルムの用途などを考慮し,適宜選択することができる。極性有機溶媒として,エタノールを用いることが好ましい。これにより,安価かつ効率的に活性炭を分散することが可能となるとともに,フィルムの安全性を高めることができ,本発明の放出制御型フィルムの性能を向上させる効果を有する。
前処理を行う場合,典型的には,活性炭を極性有機溶媒に十分浸した後,これをろ過などにより極性有機溶媒を除去したものを,水溶性多糖類溶液に添加すればよい。

【0023】
本発明の放出制御型フィルムは,可塑剤を組成成分として含むことが好ましい。これにより,製造時の放出制御型フィルムの取扱性を向上させることが可能となるという効果を有する。
可塑剤としては,用いる水溶性多糖類の種類や有用成分,フィルムの使用用途,安全性等を考慮して適宜選択することができるが,典型的には,グリセリンやヒアルロン酸を用いることができる。
添加するグリセリンまたはヒアルロン酸については,用いる水溶性多糖類の種類や有用成分,フィルムの柔軟性等を考慮して,適宜調整できるが,典型的には,0.1%から0.3%前後とすることができる。

【0024】
本発明の放出制御型フィルムは,皮膚もしくは口腔内に付着して用いられることが好ましい。これにより,フィルムを通じて,腸管もしくは経皮,経粘膜への有用成分の放出またはそれらからの吸収を図ることが可能となる。
特に,本発明の放出制御型フィルムは,口腔内粘膜に付着して用いることが好ましい。これにより,嚥下が困難なヒトや服用をコントロールすることが難しい動物などに,経粘膜もしくはフィルムの崩壊とともに口腔内を含む消化管に経時的に有用成分を放出することが可能となる。その結果,比較的安全にこれら被験者に用いることができ,本発明の放出制御型フィルムの有用性を向上させる効果を有する。
さらにいうと本発明は,上記の放出制御型フィルムにより具現化される,有用成分放出システムないし方法としての権利を主張するものである。
すなわち,本発明の有用成分放出システムは,口腔内に有用成分を含んだフィルムを付着させ,フィルムが短時間または経時的に崩壊することにより,有用成分を,口腔内を含む消化管に放出することを特徴とするものである。
【実施例】
【0025】
実施例を挙げて,本発明の放出制御型フィルムについて説明を行う。
【実施例】
【0026】
<<I.活性炭含有こんにゃくフィルムの調製>>
種々の条件で作成した活性炭含有こんにゃくフィルムについて,放出制御型フィルムとしての製造条件を調べることを目的として検討を行った。
【実施例】
【0027】
1.各実験に用いる所定pHに調整した溶液40mLに,平均分子量を調整したこんにゃく粉所定量を添加し,冷蔵庫内で一日放置し,膨潤させた。(A液)
2.各実験に用いる所定の活性炭を,過剰量のエタノールに浸し,室温で一日放置した。(B液)
3.A液に所定量のグリセリンを加え,氷冷しながら12分間超音波処理を行い,吸引ろ過を行った。
4.B液をろ過後,ろ取した活性炭をA液に加え,真空ポンプで脱気した。
5.上記溶液10gを,直径4cmのステンレス製シャーレに流し込み,50℃で15時間乾燥した。
【実施例】
【0028】
<<II.こんにゃくフィルムの物性>>
こんにゃくフィルムの基礎的物性を明らかにするため,フィルムを作製し,検討を行った。
【実施例】
【0029】
1.こんにゃくフィルムの外観等を図1に示す。
(1) 図1aは,活性炭を含まないこんにゃくフィルム(実験例1),図1bは,活性炭を含んだこんにゃくフィルム(実験例2)である。いずれのフィルムも,直径約3.5cmの円状フィルムとして形成している。
(2) 実験例1では,無色半透明の外観であった(図1a)。一方,実験例2では,フィルム内に分散された活性炭を反映して黒色の外観であった(図1b)。
(3) これらを水に濡らしたのち,皮膚に付着させたところ,ともに,ぴったりと皮膚に付着し,逆さまにしても剥がれ落ちることはなかった(図1c,図1d)。
【実施例】
【0030】
3.各フィルムについて,破断強度を測定した結果を図2に示す。比較としてオブラート(比較例1)を用いた。
(1) それぞれの最大応力は,実験例1が8.13N,実験例2が2.42N,比較例1が0.78Nであった。
(2) また,最大変形距離は,実験例1が3.78mm,実験例2が2.80mm,比較例1が0.87mmであった。
(3) これらより,実験例1が最も強度があり,しなやかで伸びやすいものであった。
(4) 一方,実験例2は,オブラートより伸びやすかったが,実験例1より強度は小さく伸びにくいものであった。これについては,実験例2が不溶性の活性炭を含んでいたためと考えられ,活性炭ではなく,有用成分として水溶性成分を含んだフィルムであれば,実験例1と同様の物性を有するフィルムが作製できるものと思われた。
【実施例】
【0031】
<<III.インドール吸着の最適化>>
インドールは,尿毒症毒素インドキシル硫酸の前駆体である。加えて,活性炭は,腸管から吸収されず,糞便として体外に排泄される。
これらより,本発明における有用成分として活性炭を用いることにより,腸管中のインドールを体外へ排出し,尿毒症を防止・抑制することが期待される。そのため,インドール吸着に最適な活性炭種を選定するとともに,選定された活性炭を用いたフィルムが,どのような吸着性能を示すかについて検討を行った。
【実施例】
【0032】
1.球形吸着炭(クレメジン(登録商標),粒径:2~4mm,以下,実験例3),ならびに黒色粉末活性炭(粒径150μm,以下,実験例4),これら2種類の活性炭を用いて検討を行った。
2.それぞれ67mgを,30mg/Lインドール溶液(pH7.4PBS)100mL中に入れ,撹拌を行い,溶液中の遊離インドールの濃度を,紫外可視分光光度計(269nm)で180分間経時的に測定し,下記式に従い,インドール吸着除去率を算出した。
【実施例】
【0033】
JP2018138521A_000003t.gif
【実施例】
【0034】
3.結果を図3に示す。
(1) 実験例3では,緩やかにインドールの吸着が進み,90分後からはほぼ一定値となり,180分後では98.6%の吸着除去率であった。
(2) 一方,実験例4では速やかにインドールの吸着が進み,15分後でほとんど飽和に達し,最終的な吸着除去率は96.1%であった。
4.これらの結果から,いずれの活性炭についても十分な吸着能を有することが確認されたが,実験例4の黒色粉末活性炭の方が,粒子径が小さく,フィルムを作製する際に液中に分散しやすいことから,以降の検討では,黒色粉末活性炭を用いた。
【実施例】
【0035】
5.黒色活性炭67mgを含有するフィルム(実験例5),または活性炭のみ67mg(比較例2)を,30mg/Lインドール溶液(pH7.4PBS)100mL中に入れ,溶液中の遊離インドールの濃度を,紫外可視分光光度計(269nm)で180分間経時的に測定し,前述の式に従い,インドール吸着除去率を算出した。
【実施例】
【0036】
6.結果を図4に示す。
(1) 比較例2では速やかにインドールの吸着が進み,15分後でほとんど飽和に達し,最終的な吸着除去率は96.1%であった。
(2) 一方,実験例5では,穏やかにインドールの吸着が進み,180分後で84.0%の吸着除去率であった。
【実施例】
【0037】
7.これらの結果より,黒色活性炭を含んだ徐放性フィルムは,フィルム崩壊に伴い活性炭が徐々に放出され,十分なインドール吸着能を有することが示された。よって,黒色活性炭を含んだフィルムは,尿毒症の予防ないし治療に期待できることが示された。
【実施例】
【0038】
<<IV.調製条件によるフィルム性能の変化>>
フィルムについて,製造を行う際の各種条件を変化させ,インドール吸着除去率にどのような影響を及ぼすかについて,検討を行った。なお,各実験例における概容と除去速度定数(k値)を表1に示す。
【実施例】
【0039】
【表1】
JP2018138521A_000004t.gif
【実施例】
【0040】
1.フィルムについて,各pHで作製した外観を図5に,インドール吸着除去率を比較した結果を図6に示す。なお,その他の条件については,黒色活性炭の添加量を0.5%,グリセリンの添加量を0.3%,こんにゃく粉の添加量を1.0%に調整した。
(1) 実験例6ならびに実験例7では,黒色粉末活性炭が比較的均一に分散している一方,実験例8では分散状態に偏りが見られた(図5)。また,フィルムの柔軟性については,実験例6が最も柔軟性が高かった。
(2) インドール吸着については,実験例8が最も高い吸着除去率とk値を示した。一方,実験例6と実験例7は同様の吸着曲線であった。
(3) これらの結果より,いずれのpHについても十分な吸着除去能を示すことが示された。以降の検討においては,フィルムとしての取扱性に優れるpH3でフィルムを作製した。
【実施例】
【0041】
2.フィルムについて,こんにゃく粉の比率で比較した結果を図7に示す。
(1) インドール吸着について,実験例10が最も高い吸着除去率とk値を示した。
(2) また,吸着除去率の立ち上がりについても早く,実験例3(クレメジン)と類似の挙動を示したため,こんにゃく粉については,0.5%の比率が最も適していると考えられた。
【実施例】
【0042】
3.フィルムについて,グリセリンの比率で比較した結果を図8に示す。
(1) 実験例12ならびに実験例13について,インドール吸着除去率ならびにk値はほとんど変わらなかった。同様に,実験例14と15について,インドール吸着除去率はほとんど変わらず,実験例12等と比較すると,低い吸着除去率であった。
(2) これらの結果より,グリセリンについては比率の少ない0.3%で,十分と考えられる。
【実施例】
【0043】
<<V.薬物含有こんにゃくフィルムからの薬物溶出率の変化>>
速放性フィルムの利用可能性として,去痰薬である2種類の薬物を有用成分として添加し,各種条件を変化させて薬物溶出率がどのように変化するかを調べることを目的として検討を行った。なお,各実験例における概容と溶出速度定数(kd値)を表2に示す。
【実施例】
【0044】
1.去痰薬であるAmbroxol Hydrochloride(以下,「AMBX」),Bromhexine Hydrochloride (以下,「BRMH」)を有用成分として,フィルム1枚につき各薬物を約10mgずつ添加し,表2に示す条件にて,フィルムの作製を行った。
2.作製したフィルムについて,精製水に浸し,ゆっくりと撹拌を行った。
3.撹拌後,溶液を適時採取し,採取した溶液を0.45μmフィルターにてろ過し,HPLCにて分析を行った。
4.HPLCによる分析で各有用成分のピーク面積値を算出した。このピーク面積値を,精製水に完全に溶解させた各有用成分のHPLC分析から算出したピーク面積値で割ることにより,溶出率として算出を行った。
【実施例】
【0045】
【表2】
JP2018138521A_000005t.gif
【実施例】
【0046】
1.こんにゃく粉比率を変化させて検討した各薬物の溶出結果を図9(AMBX),10(BRMH)に示す。
(1) AMBX,BRMHともに,こんにゃく粉の量が増加するほど,薬物溶出速度定数(kd)は小さくなり,フィルムからの薬物溶出速度は遅くなる傾向であった。
(2) 加えて,実験例19と23を除き,いずれのフィルムにおいても溶出率は,錠剤における溶出試験の判定基準(AMBX:20分で80%以上,BRMH:30分で75%以上)を満たしていた。
2.この結果から,こんにゃく粉の比率を変化させることにより,フィルムからの薬物溶出速度をコントロールできる可能性が示された。さらに,こんにゃく粉については,0.1%の含有率が速放性フィルムとして最も適していると考えられた。
【実施例】
【0047】
3.こんにゃく粉の添加量を0.1%とし,グリセリン比率を変化させて検討を行った結果を図11(AMBX),12(BRMH)に示す。
(1) AMBX,BRMHともに,速やかな薬物溶出を示し,グリセリンの添加量による大きな変化は見られなかった。
(2) 加えて,いずれの薬物においても溶出率は,5分以内に80%以上となった。
4.この結果から,グリセリン添加量については,0.05%と0.10%では薬物溶出にほとんど影響を及ぼさないことが示された。
5.可塑剤であるグリセリン量が少なすぎると,フィルムが硬くなったため,口腔内速放性フィルムの作製にはこんにゃく粉量0.1%およびグリセリン量0.1%が適していると考えられた。
【実施例】
【0048】
<<VI.こんにゃく粉処理による分子量の変化>>
放出制御型フィルムを作製する際に用いるこんにゃく粉の基礎的性質を確認するため,こんにゃく粉処理方法により,KGMの平均分子量がどのように変化するかについて調べることを目的に検討を行った。
【実施例】
【0049】
1.こんにゃく粉について,そのエタノール溶液をクエン酸酸性下で還流し,加水分解を行った。なお,KGMの平均分子量については,JP16粘度測定法第1法毛細管粘度計法により測定を行った。
【実施例】
【0050】
2.加水分解の回数を変化させた結果を図13に示す。加水分解を繰り返すごとに平均分子量は徐々に低下していった。
3.還流時間を変化させた結果を図14に示す。還流時間によっても平均分子量は低下していった。
【実施例】
【0051】
4.これらの結果から,こんにゃく粉の加水分解回数や還流時間を変化させることにより,こんにゃく粉のKGM分子量の調整が可能であることが示された。
【実施例】
【0052】
<<VII.KGMの平均分子量とフィルムの崩壊速度定数の変化>>
こんにゃく粉のKGM平均分子量の調整が可能なことから,フィルム中のKGM平均分子量が,薬物の溶出速度にどのような影響をもたらすかの基礎的知見を得ることを目的に検討を行った。
【実施例】
【0053】
1.こんにゃく粉 0.3%,グリセリン 0.3%,pH3.0 調製液で作成したフィルムを50℃,20時間乾燥した。なお,それぞれのサンプルについては,加水分解回数を変えて,KGM平均分子量の調整を行った。
2.メチレンブルー(0.005%)で染色し,水溶液中でフィルムから溶出するメチレンブルーの濃度から,フィルムの崩壊速度定数(kdis)を求めた。
【実施例】
【0054】
3.結果を図15に示す。
(1) 図15中,右からそれぞれ加水分解数が0回,1回,3回,5回,7回,8回,10回であり,加水分解数が増えるほど,KGM平均分子量(Mw)が小さくなっていくことが確認された。
(2) また,Mwが減少するほど,崩壊速度定数(kdis)が大きくなっていった。このことは,KGMの平均分子量が減少するほど,同量のこんにゃく粉で作製するフィルムは柔らかくなるとともに,フィルム崩壊速度が速くなり,含有物質の溶出速度が増加することを意味する。
【実施例】
【0055】
4.これらの結果から,KGMの平均分子量を調整することにより,薬物溶出速度のコントロールが可能なことが示された。
【実施例】
【0056】
<<VIII.考察>>
1.今回,実験例で使用したこんにゃく粉は,もともと,KGMの平均分子量が80万から100万である。
2.水溶性多糖類としてこんにゃく粉を用いる場合,こんにゃく臭の原因である窒素含有物等の夾雑物が含まれる場合も多い。そのため,1回は加水分解をして夾雑物を除去することが好ましい。
3.今回の実験例において加水分解した後のこんにゃく粉は,元素分析により窒素原子が含まれていないこと,およびKGMの理論値と合致していることを確かめてフィルム作製に用いた。
4.加水分解を行う場合,加水分解の回数を繰り返してKGMの分子量を減少させるのも良いが,それほど時間と労力を掛けなくとも,1回の加水分解で約40万程度の分子量のKGMを調製することができる。また,放出制御型フィルムとして用いる場合,KGMの平均分子量は,30万以上が好ましく,フィルムとしての性能を効果的に発揮しうると考えられる。
5.これらより,放出制御型フィルムは,有用物質の物性を踏まえ,主としてこんにゃく粉量および調整液のpHを変えることにより,放出制御が可能となるものである。



図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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