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明細書 :不妊症の処置に用いられる医薬組成物およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第6256786号 (P6256786)
登録日 平成29年12月15日(2017.12.15)
発行日 平成30年1月10日(2018.1.10)
発明の名称または考案の名称 不妊症の処置に用いられる医薬組成物およびその製造方法
国際特許分類 A61K  35/35        (2015.01)
A61K  31/728       (2006.01)
A61K  38/22        (2006.01)
A61P  15/00        (2006.01)
A61P  15/08        (2006.01)
FI A61K 35/35
A61K 31/728
A61K 38/22
A61P 15/00
A61P 15/08
請求項の数または発明の数 11
全頁数 13
出願番号 特願2017-079148 (P2017-079148)
出願日 平成29年4月12日(2017.4.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 日本産科婦人科学会雑誌、第69巻第2号(平成29年2月1日)公益社団法人日本産科婦人科学会発行第845(S-629)頁に発表
審査請求日 平成29年5月26日(2017.5.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
発明者または考案者 【氏名】宮本 新吾
【氏名】四元 房典
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100100158、【弁理士】、【氏名又は名称】鮫島 睦
【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100122297、【弁理士】、【氏名又は名称】西下 正石
【識別番号】100145104、【弁理士】、【氏名又は名称】膝舘 祥治
審査官 【審査官】鳥居 福代
参考文献・文献 特開2016-007161(JP,A)
特開2015-082987(JP,A)
特表2010-528107(JP,A)
米国特許出願公開第2014/0271572(US,A1)
国際公開第2006/006692(WO,A1)
特表2007-524396(JP,A)
特表2008-545687(JP,A)
Human Reproduction,2012年,Vol.27, Suppl.2,Abstract Number:P-587
日本受精着床学会雑誌,2013年,Vol.30, No.2,p.230-233
日本臨床67巻 増刊号5,2009年,p.23-32
調査した分野 A61K 35/00-35/768
A61K 31/33-31/80
A61K 38/00-38/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
要約 【課題】不妊症を改善可能な医薬組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】脂肪組織に由来する再生細胞を含む医薬組成物である。また脂肪組織を脱凝集剤で処理して脱凝集組織を得ることと、脱凝集組織から遠心分離処理により再生細胞を濃縮することと、濃縮される再生細胞を回収することとを含む、不妊症の処置に用いられる医薬組成物の製造方法である。
【選択図】図6A
特許請求の範囲 【請求項1】
脂肪幹細胞、血管内皮細胞および血管周皮細胞を含む脂肪組織由来再生細胞を含み、不妊症の処置に用いられる子宮内投与用の医薬組成物。
【請求項2】
グリコサミノグリカンおよびその誘導体から選択される少なくとも1種を更に含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記グリコサミノグリカンがヒアルロン酸である請求項2に記載の医薬組成物
【請求項4】
エストロゲン受容体活性化因子を更に含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記エストロゲン受容体活性化因子がエストロゲンである請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
着床不全の改善に用いられる請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記脂肪組織由来再生細胞は、血管新生誘導作用を有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記脂肪組織由来再生細胞は、子宮内膜増殖能を有する請求項1から請求項のいずか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記脂肪組織由来再生細胞が、用時調製したもの又は凍結したものである請求項1から8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
脂肪組織を脱凝集剤で処理して脱凝集組織を得ることと、脱凝集組織から遠心分離処理により再生細胞を濃縮することと、濃縮される再生細胞を回収することとを含む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項11】
前記脂肪組織は、皮下組織に由来する請求項10に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、不妊症の処置に用いられる医薬組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本においては、現在6組に1組の夫婦が不妊症と診断されている。不妊症の原因のうち、女性因子として子宮因子、頸管因子、排卵因子および卵管因子がある。子宮因以外の3つに対しては人工受精や体外受精などすでに確立した治療法がある。また子宮因子のうち、子宮自体の構造が問題になる器質性疾患(たとえば子宮腺筋膜症、子宮奇形等)があるが、これらは手術で治療可能とされている。一方、子宮の機能に問題がある機能性疾患で子宮内膜菲薄症いわゆる着床不全症に起因する不妊症については、有効な治療方法がないのが現状である。
【0003】
ところで、特許文献1には、生体組織から再生細胞を分離するための自動化システムが記載され、再生細胞が種々の疾患及び障害に適用可能であることが記載されている。また特許文献2には、脂肪組織から得られる再生細胞を心血管状態の治療に用いることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2012-75439号公報
【特許文献2】特開2012-51923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、不妊症を改善可能な医薬組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りであり、本発明は以下の態様を包含する。
第一態様は、脂肪組織由来再生細胞を含み、不妊症の処置に用いられる医薬組成物である。
第二態様は、脂肪組織を脱凝集剤で処理して脱凝集組織を得ることと、脱凝集組織から遠心分離処理により再生細胞を濃縮することと、濃縮される再生細胞を回収することとを含む、不妊症の処置に用いられる医薬組成物の製造方法である。
第三態様は、対象の不妊症を処置する方法であり、脂肪組織由来再生細胞を含む医薬組成物を、処置対象の子宮内に投与することを含む不妊症の処置方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不妊症を改善可能な医薬組成物およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】脂肪組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。
【図1B】脂肪組織の一例を示す模式図である。
【図2】マウスADRCsのフローサイトメトリー検出結果である。
【図3】正常マウスの子宮内膜を示す組織染色図である。
【図4A】対照群マウスの子宮の矢状断面を示す組織染色図である。
【図4B】対照群マウスの子宮の横断面を示す組織染色図である。
【図5A】試験群マウスの子宮の矢状断面を示す組織染色図である。
【図5B】試験群マウスの子宮の横断面を示す組織染色図である。
【図6A】マウスADRCsの子宮内膜増殖能を示す図である。
【図6B】マウスADRCsによる子宮腺数の増加能を示す図である。
【図7】マウスADRCsの子宮内膜増殖能を示す図である。
【図8A】マウスに対するヒトADRCsによる子宮内膜増殖能を示す図である。
【図8B】マウスに対するヒトADRCsによる子宮腺数の増加能を示す図である。
【図9A】対照群マウスの子宮の矢状断面を示す蛍光免疫染色図である。
【図9B】試験群マウスの子宮の矢状断面を示す蛍光免疫染色図である。
【図10】マウスADRCsの血管新生能を示す図である。
【図11】ADRCs有効性評価に用いた実験スケジュールの概略図である
【図12A】対照群マウスの胚移植後の摘出子宮を示す図である。
【図12B】試験群マウスの胚移植後の摘出子宮を示す図である。
【図13】マウスADRCsの着床率評価の結果を示す図である。
【図14】マウスに対するヒトADRCsの着床率評価の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、不妊症の処置に用いられる医薬組成物及びその製造方法を例示するものであって、本発明は、以下に示す医薬組成物及びその製造方法に限定されない。

【0010】
医薬組成物
本発明の不妊症の処置に用いられる医薬組成物は、脂肪組織由来再生細胞(Adipose Tissue Derived Reproductive Cells:以下、「ADRCs」ともいう)を含むことを特徴とする。ADRCsは、例えば、血管新生、組織修復等を促進する特性があり、子宮内の菲薄化した子宮内膜に投与されることよって子宮内膜を修復することができると考えられる。その結果、受精卵の子宮内膜への着床率を改善することができ、不妊症を改善することが可能になると考えられる。


【0011】
医薬組成物は不妊症の処置に用いられる。本明細書において用いられる「処置」とは、不妊症について施される何らかの処置であればよく、例えば、不妊症の治療、改善、悪化の防止等が挙げられる。

【0012】
不妊症の女性因子のうち、子宮因子として子宮の機能に問題がある機能性疾患として、着床不全が知られている。着床不全とは、3回以上、体外受精による良好な胚を移植したにもかかわらず、妊娠しないか流産に終わった状態をいう。その原因の1つとして、子宮内膜が厚くならない(子宮内膜菲薄症ともいう)ことが挙げられる。子宮内膜菲薄症は、例えば、女性ホルモン(例えば、エストロゲンとプロゲステロン)の分泌低下によって、着床に適した子宮内膜の増殖が起こらない状態である。子宮内膜菲薄症に対して女性ホルモンを投与することによる改善が試みられるが、効果が認められない場合がある。その原因は不明であるが、子宮内膜の増殖能自体は維持されている場合がある。

【0013】
子宮内膜菲薄症による着床不全については以下のように考えられる。受精が成立した後、受精卵は卵管から子宮内部へ移動し、子宮内膜に着床して妊娠が成立する。ところが、子宮内膜が菲薄化していると、卵管から子宮内部に移動した受精卵は、子宮内膜と接着することができず、子宮内膜に着床することがうまくできないと考えられている。例えば、菲薄化した子宮内膜では血管新生が乏しく、子宮内膜増殖作用を持つエストロゲンの反応性が低いことが知られている。このような場合には、子宮内膜菲薄症による着床不全に対してホルモン剤治療を試みても、治療が効かないということになる。ここで本発明者らは、子宮内膜菲薄症に対して子宮内に脂肪幹細胞を注入する治療方法を着想し、本発明を完成するに至ったのである。

【0014】
本発明に用いられる脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)とは、脂肪組織から後述の方法により調製することができる再生細胞であって、例えば、脂肪幹細胞、前駆細胞等の少なくとも1種を含むものである。なかでもADRCsは、少なくとも脂肪幹細胞を含むことが好ましい。またADRCsは、少なくとも血管新生誘導作用(血管新生能ともいう)を有することが好ましく、子宮内膜増殖能を有することもまた好ましい。


【0015】
ADRCsは、陽性マーカーとしてSca-1、CD105およびCD29からなる群から選択される少なくとも1つ発現していることが好ましく、Sca-1、CD105およびCD29すべてを発現していることがより好ましい。またADRCsは、陰性マーカーであるCD45を発現していないことが好ましい。

【0016】
再生細胞が得られる脂肪組織は、生体のいずれの部位に存在するものであってもよく、皮下組織に存在する皮下脂肪であることが好ましい。皮下脂肪は生体のいずれの部位から採取されるものであってもよく、例えば、腰背部、大腿部等から採取してもよい。皮下脂肪の一例を図1Aの顕微鏡画像(Matsumoto D, et al., Tissue Engineering. Dec 2006, 12(12): 3375-3382.のFigure1Aより改変)および図1Bの模式図に示す。図1Bでは、大きな細胞として脂肪細胞10の周囲に小さい細胞として脂肪幹細胞20が描かれている。図1Bには、さらに血管30および細胞外基質40も描かれている。皮下脂肪における脂肪細胞10の存在率は、例えば20%程度であり、脂肪幹細胞20の存在率は、例えば1%から5%程度である。また血管30は15%から20%程度含まれている。脂肪幹細胞は、心臓、骨格筋、骨・軟骨、血管などの様々な臓器に分化することができる。また、脂肪幹細胞は生理活性物質を分泌するともに、血管新生を誘導する作用有している。

【0017】
医薬組成物に含まれるADRCsは、用時調製したものであってもよく、凍結保存したADRCsであってもよい。なお、凍結保存したADRCsは、連日投与が可能であり着床率をさらに改善することが期待できることから、より好ましい。なお、ADRCsの凍結保存には、通常用いられる細胞の凍結保存条件を適用することができる。またADRCsは、投与対象から採取した脂肪組織から調製されたものであってもよく、投与対象とは異なる個体から採取した脂肪組織から調製されたものであってもよい。さらにADRCsは、投与対象とは異種の動物から採取した脂肪組織から調製されたものであってよい。

【0018】
医薬組成物は、ADRCsに加えて、必要に応じて、薬学的に許容される賦形剤等その他の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、薬学的に許容される賦形剤の他、界面活性剤、生理活性物質、安定化剤、液状媒体等を挙げることができる。その他の成分として具体的には、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のグリコサミノグリカンおよびその誘導体;エストロゲン、プロゲステロン等の女性ホルモン受容体活性化因子を挙げることができる。

【0019】
医薬組成物の形態は、不妊症の処置として投与可能な製剤の形態である限りにおいて特に限定されない。投与時における形態が液体であることが好ましい。

【0020】
医薬組成物の投与方法としては、例えば、有効量の医薬組成物を対象の子宮内に注入する方法が挙げられる。医薬組成物は子宮内に注入されることで、例えば、子宮内膜における血管新生を促進し、エストロゲン不応性の菲薄化した子宮内膜を増生させることによって、着床不全を改善することができる。

【0021】
医薬組成物の製造方法
不妊症の処置に用いられる医薬組成物の製造方法は、脂肪組織を脱凝集剤で処理して脱凝集組織を得ることと、脱凝集組織から遠心分離処理により再生細胞を濃縮することと、濃縮される再生細胞を回収することとを含む。

【0022】
製造方法に用いられる脂肪組織は、例えば皮下組織から採取される。皮下組織から採取された脂肪組織は、生理食塩水、緩衝若しくは非緩衝電解質溶液等で洗浄処理されてもよい。脂肪組織は、脱凝集剤で処理されて脱凝集組織が得られる。脱凝集剤としては、例えば、中性プロテアーゼ、コラゲナーゼ、トリプシン、リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、ペプシン等を挙げることができ、中でもコラゲナーゼが好ましい。脱凝集剤は生理食塩水等の他の溶液と共に脂肪組織に添加されてもよい。脱凝集剤による処理は、例えば、37℃またはその付近の温度で20分から120分振とうして実施することができる。

【0023】
脱凝集剤で処理されて得られる脱凝集組織から、遠心分離処理により再生細胞が濃縮される。遠心分離処理に先立ち脱凝集組織から非浮遊物成分を除去して、浮遊物層からなる画分を得ることが好ましい。浮遊物層からなる画分には再生細胞が含まれる。再生細胞を含む浮遊物層は、必要に応じて洗浄処理されてもよい。

【0024】
遠心分離処理により濃縮された再生細胞は、常法により回収されて医薬組成物を構成する。上述した脂肪組織から再生細胞を回収する方法の詳細については、例えば、特開2012-51923号公報、特開2012-75439号公報等を参照することができる。また、脂肪組織からの再生細胞の回収は、市販されているサイトリ(Cytori)社製のセリューションシステム(Celution System)を用いて実施してもよい。

【0025】
不妊症の処置方法
不妊症の処置方法は、対象の不妊症を処置する方法であり、脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)を含む医薬組成物の有効量を、処置対象の子宮内に投与することを含む。子宮内に投与される医薬組成物に含まれる脂肪組織由来再生細胞により、着床不全が改善されて着床率が向上する。医薬組成物に含まれる脂肪組織由来再生細胞は、用時調製したものであっても、凍結したものであってもよい。また不妊症の処置方法は、不妊症の治療方法であってもよい。

【0026】
不妊症の処置方法の対象となる動物は、哺乳動物であればよく、哺乳動物にはヒトが含まれる。有効量のADRCsとしては、例えば、細胞数として5×10から5×10個とすることができる。また医薬組成物の子宮内への投与は、常法により行うことができる。

【0027】
着床不全改善方法
着床不全改善方法は、対象の着床不全を改善する方法であり、肪組織由来再生細胞(ADRCs)を含む医薬組成物の有効量を、処置対象の子宮内に投与して、子宮内膜細胞を増殖させることを含む。医薬組成物に含まれる脂肪組織由来再生細胞は、用時調製したものであっても、凍結したものであってもよい。

【0028】
着床不全改善方法の対象となる動物は、哺乳動物であればよく、哺乳動物にはヒトが含まれる。有効量のADRCsとしては、例えば、細胞数として5×10から5×10個とすることができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
マウス(ICR、雌、5週齢)の両肢の皮下から、マウス脂肪組織を採取した。採取した脂肪組織1gから2gに対して10mlの0.2%コラゲナーゼ溶液(GIBCO 17100-017)を加えて脂肪組織を浸漬した状態で、はさみで細切りにした。細切りにした脂肪組織に0.2%コラゲナーゼ溶液20mlを加え、37℃で120rpm、1時間振とうした。その後セルストレーナー(FALCON社製、REF 352360)で濾過し、濾液を400Gで5分間遠心処理した。上清を除去し、得られたペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)10mlに懸濁して400Gで5分間遠心処理することを3回繰り返して細胞ペレットを得た。得られた細胞ペレットをマウスADRCsとした。
【実施例】
【0031】
得られたマウスADRCsについて、マルチカラーフローサイトメトリーキット(R&Dシステム社製、カタログ番号:FMC003)を用いて、陽性マーカーであるSca-1、CD105及びCD29、並びに陰性マーカーであるCD45の抗体を用いて染色して陽性細胞をフローサイトメトリーで検出した。結果を図2に示す。図2から、上記で得られたADRCsは、Sca-1、CD105及びCD29が陽性で、CD45が陰性であることが分かる。
【実施例】
【0032】
(実施例2)
書面でのインフォームドコンセントに同意した被験者について、全身麻酔下に腰背部および大腿部の皮下組織から、ヒト脂肪組織を採取した。採取したヒト脂肪組織から、サイトリ社製のセリューションシステムを用いて再生細胞を抽出して得られた細胞ペレットをヒトADRCsとした。
【実施例】
【0033】
子宮内膜菲薄化モデルマウスの作製
マウス(ICR、雌、5週齢)の背部を切開して、子宮周囲の脂肪組織を同定した。同定した子宮周囲の脂肪組織を牽引して子宮を固定し、子宮内に95%エタノールを注入して、子宮内膜菲薄化モデルマウスを作製した。
【実施例】
【0034】
(試験例1)
ADRCs有効性評価1 子宮内膜増殖能の評価
上記で作製した子宮内膜菲薄化モデルマウスを用いて、以下のようにしてマウスADRCsの子宮内膜増殖能の評価を行った。95%エタノールを注入してから10日後(月経周期2サイクル後)の子宮内膜菲薄化モデルマウスの子宮内に、被験薬を注入した。被験薬を注入してから7日後に子宮内膜の状態を調べた。なお、被験薬として、試験群にはマウスADRCsを1×10個含む組成物(PBS 30μl)を注入し、対照群には生理食塩水(30μl)を注入した。なお、試験群には9頭のモデルマウスを用い、対照群には8頭のモデルマウスを用いた。子宮内膜の組織ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色図(100倍)を図3、図4A、図4B、図5Aおよび図5Bに示す。
【実施例】
【0035】
図3は正常マウスの子宮内膜を示す組織HE染色図である。図4Aは子宮内膜菲薄化モデルマウスに生理食塩水を注入した対照群の子宮の矢状断面を示し、図4Bはその子宮の横断面を示す組織HE染色図である。図5Aは子宮内膜菲薄化モデルマウスにマウスADRCsを注入した試験群の子宮の矢状断面を示し、図5Bはその子宮の横断面を示す組織HE染色図である。また図6Aに子宮内膜の厚みを、図6Bに子宮腺の数を示す。子宮内膜の厚みは、対照群では54±5.2μm(mean±SD,N=8)であり、試験群では268±28.6μm(mean±SD,N=9)とADRCsを注入した試験群で有意に高値であった(p<0.01)。また子宮腺の数は、対照群では2.4±0.8個(mean±SD,N=8)であり、試験群では37±8.6個(mean±SD,N=9)とADRCsを注入した試験群で有意に高値であった(P<0.01)。なお、統計学的検討には、Mann-Whitney’s U testを用いた。以上から、マウスADRCsを子宮内に投与することで子宮内膜菲薄化モデルマウスの子宮内膜が増殖することが分かる。
【実施例】
【0036】
(試験例2)
被験薬として、マウスADRCsにヒアルロン酸を添加した組成物、マウスADRCsにヒアルロン酸およびエストロゲンを添加した組成物、凍結マウスADRCsにヒアルロン酸を添加した組成物、並びに凍結マウスADRCsにヒアルロン酸およびエストロゲンを添加した組成物を用いて、試験例1と同様にして子宮内膜増殖能を評価した。ここでマウスADRCsとしては、マウスADRCsを1×10個含むPBSを用い、組成物中のヒアルロン酸の添加量は20μL(0.2mg)、エストロゲンの添加量は3μL(3pg)であった。子宮内膜の厚みを測定した結果を図7に示す。
【実施例】
【0037】
図9から、ADRCsにヒアルロン酸、エストロゲンを添加しても子宮内膜増殖能は大きくは変化しないことが分かる。またADRCsは凍結保存後であってもフレッシュな(用時調製した)ADRCsと同等の子宮内膜増殖能を有することが分かる。
【実施例】
【0038】
(試験例3)
被験薬として、マウスADRCsの代わりにヒトADRCsを用いて、試験例1と同様にしてマウスにおける子宮内膜増殖能を評価した。結果として図8Aに子宮内膜の厚みを、図8Bに子宮腺の数を示す。
【実施例】
【0039】
図8Aおよび図8Bから、ヒトADRCsを子宮内膜菲薄化モデルマウスの子宮内に注入した場合でも、子宮内膜増殖能を示すことが分かる。
【実施例】
【0040】
(試験例4)
ADRCs有効性評価2 血管新生能の評価
組織をHE染色する代わりに、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)蛍光免疫染色用抗体(abcam社製、ab46154)を用いて染色したこと以外は、試験例1と同様にして、子宮内膜菲薄化モデルマウスを用いたマウスADRCsの子宮内膜における血管新生能の評価を行った。子宮内膜のVEGF蛍光免疫組織学的染色の結果を、図9A、図9Bおよび図10に示す。
【実施例】
【0041】
図9Aは子宮内膜菲薄化モデルマウスに生理食塩水を注入した対照群の子宮の矢状断面を示し、図9Bは子宮内膜菲薄化モデルマウスにマウスADRCsを注入した試験群の子宮の矢状断面を示す蛍光免疫組織染色図(200倍)である。また図10はVEGF発現量を、子宮内膜領域における発光面積の割合(%)で評価した図である。子宮内膜におけるVEGF発現量は、対照群では3.4±2.5%(mean±SD,N=8)であり、試験群では34.8±9.5%(mean±SD,N=9)とADRCsを注入した試験群で有意に高値であった。またVEGFは、特に子宮内膜の間質部位で高発現していることが分かる。
【実施例】
【0042】
(試験例5)
ADRCs有効性評価3 着床率の評価
上記で作製した子宮内膜菲薄化モデルマウスを用いて、図11に示す実験スケジュールにしたがって、着床率についてのADRCs有効性評価を実施した。
具体的には95%エタノールを注入してから10日後の子宮内膜菲薄化モデルマウスの子宮内に、被験薬を注入した。その後、交配して胚移植した。胚移植してから5日後に屠殺して受精卵の着床状態を調べた。被験薬として、試験群にはマウスADRCsを1×10個含む組成物を注入し、対照群には生理食塩水を注入した。図12Aに対照群から摘出した子宮の画像を、図12Bに試験群から摘出した子宮の画像を示す。
【実施例】
【0043】
図12Aおよび図12Bに示すように、子宮内膜菲薄化モデルマウスに生理食塩水を注入した対照群の子宮では、移植胚の着床は認められなかったが、ADRCsを注入した試験群の子宮では、移植胚の着床が認められた。
【実施例】
【0044】
(試験例6)
被験薬として、マウスADRCsにヒアルロン酸を添加した組成物、マウスADRCsにヒアルロン酸およびエストロゲンを添加した組成物、凍結マウスADRCsにヒアルロン酸を添加した組成物、並びに凍結マウスADRCsにヒアルロン酸およびエストロゲンを添加した組成物を用いて、試験例5と同様にして着床状態を調べて着床率を評価した。ここでマウスADRCsとしては、マウスADRCsを1×10個含むPBSを用い、組成物中のヒアルロン酸の添加量は20μL(0.2mg)であり、エストロゲンの添加量は3μL(3pg)であった。結果を図13に示す。
【実施例】
【0045】
マウスADRCsを含む組成物を注入した試験群はいずれも、生理食塩水を注入した対照群と比べて、着床率が向上していることが分かる。特に、マウスADRCsにヒアルロン酸およびエストロゲンを添加した組成物において、着床率がより向上する傾向が認められた。
【実施例】
【0046】
(試験例7)
被験薬として、マウスADRCsの代わりにヒトADRCsを用いて、試験例5と同様にして子宮内膜菲薄化モデルマウスの着床状態を調べて着床率を評価した。結果を図14に示す。
【実施例】
【0047】
図14から、ヒトADRCsを子宮内膜菲薄化モデルマウスの子宮内に注入した場合でも、着床率が向上することが分かる。
【実施例】
【0048】
(試験例8)
ADRCsの品質検証
全身麻酔下にミニブタの臀部から脂肪組織を採取し、サイトリ社製のセルーションシステムを用いてADRCsを採取した。全身麻酔下のミニブタを開腹して子宮を露出させ子宮体部の2箇所に、以下のADRCs液またはコントロール液を注入して閉腹した。なお、ADRCs液は脂肪組織を採取した個体と同一の個体に注入し、コントロール液は別の個体に注入した。その後4週間、ミニブタの全身状態の観察と体重測定(注入前、注入後2週、注入後4週)を実施した。また注入前および注入後4週に血液検査を行った。さらに注入後4週に剖検した。
(1)ADRCs液 2ml:PBSで懸濁したADRCs(1×10cells)0.7ml+ヒアルロン酸1.1ml+エストロゲン**0.2ml
(2)コントロール液 2.0ml:PBS0.7ml+ヒアルロン酸1.1ml+エストロゲン**0.2ml
*ヒアルロン酸:ナトリウム「生化学」(アルツ25mg/2.5ml、生化学工業株式会社)
**エストロゲン:17β-Estradiol(10μg/ml in EtOH、Abcom(ab120657))
【実施例】
【0049】
<結果>
ADRCs液投与個体は、コントロール液投与個体と比較して、4週間、全身状態に変化なく、体重減少もみとめられなかった。血液検査については、注入前および注入後4週で有意な差はかった。脳(大脳、小脳、延髄)、肺(気管支を含む)、心臓、肝臓(胆嚢を含む)、脾、腎臓、腎副および移植した子宮に肉眼的な異常はく、器官重量も注入前および注入後4週で有意な差はなく、病理学的異常も認められなかった。
【符号の説明】
【0050】
10 脂肪細胞、20 脂肪幹細胞、30 血管、40 細胞外基質
図面
【図1A】
0
【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
4
【図4B】
5
【図5A】
6
【図5B】
7
【図6A】
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【図6B】
9
【図7】
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【図8A】
11
【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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