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明細書 :腸内細菌の菌叢分析方法及び被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-063182 (P2018-063182A)
公開日 平成30年4月19日(2018.4.19)
発明の名称または考案の名称 腸内細菌の菌叢分析方法及び被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの検出方法
国際特許分類 G01N  33/68        (2006.01)
A61K  31/43        (2006.01)
A61K  31/4164      (2006.01)
A61K  31/4439      (2006.01)
A61K  31/7048      (2006.01)
A61P   1/00        (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
FI G01N 33/68
A61K 31/43
A61K 31/4164
A61K 31/4439
A61K 31/7048
A61P 1/00
A61P 31/04
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2016-201812 (P2016-201812)
出願日 平成28年10月13日(2016.10.13)
発明者または考案者 【氏名】阿部 理一郎
【氏名】朝長 毅
【氏名】白水 崇
出願人 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
【識別番号】505314022
【氏名又は名称】国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100141139、【弁理士】、【氏名又は名称】及川 周
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4C086
Fターム 2G045AA25
2G045DA36
4C086AA10
4C086BC38
4C086BC39
4C086CC04
4C086EA13
4C086GA07
4C086GA08
4C086NA20
4C086ZA66
4C086ZB35
要約 【課題】便の解析を行わない簡便な腸内細菌の菌叢分析方法、及び簡便且つ正確な被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの検出方法を提供する。
【解決手段】本発明の腸内細菌の菌叢分析方法は、被検体から得られた生体試料中のエクソソームに含まれるタンパク質を分析する分析工程を備える。本発明は、被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの検出方法であって、抗生物質を投与された前記被検体から得られた生体試料中のエクソソームに含まれるタンパク質を分析する分析工程を備える。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
被検体から得られた生体試料中のエクソソームに含まれるタンパク質を分析する分析工程を備えることを特徴とする腸内細菌の菌叢分析方法。
【請求項2】
被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの検出方法であって、
ヘリコバクター・ピロリ感染治療薬を投与された前記被検体から得られた生体試料中のエクソソームに含まれるタンパク質を分析する分析工程を備えることを特徴とする検出方法。
【請求項3】
前記分析工程において、Flagellum-specific ATP synthase、Mannose-6-phosphate isomerase、Methyl-accepting chemotaxis protein(TlpA)、Outer membrane protein assembly factor BamA、Iron(III) dicitrate transport protein(FecA)、Penta-phosphate guanosine-3-pyrophosphohydrolase(SpoT)、Transketolase、6-phosphogluconolactonase、Glucose-6-phosphate isomerase、Type III restriction enzyme R protein、Ferrodoxin-like protein、DNA gyrase subunit A、30S ribosomal protein S6、Inosine-5-monophosphate dehydrogenase、DNA polymerase III subunit alpha、UvrABC system protein B、及びFlagellar hook-associated protein 2、DNA-binding protein HU、Putative beta-lactamase HcpC、Flavodoxin、Cytochrome c-553、10kDa chaperonin、Probable peroxiredoxin、Superoxide dismutase [Fe]、Bacterial non-heme ferritin、50S ribosomal protein L7/L12、Elongation factor Tu、Putative peptidyl-prolyl cis-trans isomerase HP_0175、Thioredoxin reductase、Thioredoxin、Urease subunit beta、Catalase、COP-associated protein、Adenine specific DNA methyltransferase(Hpaim)、及びOuter membrane protein (Omp11)からなる群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質又はそのペプチド断片を検出する請求項2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記ヘリコバクター・ピロリ感染治療薬は、アモキシシリン、クラルスロマイシン、メトロニダゾール、ランソプラゾール、及びラベプラゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2又は3に記載の検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内細菌の菌叢分析方法及び被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腸内細菌叢は、免疫バランスへの関与や疾患関連性等、様々な分野での重要性が明らかになっている。しかし、腸内細菌がいかに全身の免疫や臓器に関与するのか全く不明であった。さらに、従来、腸内細菌叢は便の解析でしか解析できないものと考えられていた。
【0003】
また、ヒトの胃粘膜にはしばしば、ヘリコバクター属の細菌(例えば、Helicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)、Helicobacter heilmanii(ヘリコバクター・ハイルマニ)等)、又はカンピロバクター属の細菌が感染している。
【0004】
中でも、ヘリコバクター・ピロリはヒト等の胃に生息する螺旋桿菌であり、世界人口の40~50%が保菌者と考えられており、日本において40歳以上の約7割が保菌者である。また、ヘリコバクター・ピロリは、胃粘膜に感染して胃炎を惹起する。さらに、ヘリコバクター・ピロリ感染は生涯に渡って持続することが多く、粘膜の慢性活動性炎症を背景として、慢性胃炎、胃潰瘍、胃癌、特発性血小板減少性紫斑病等を引き起こす。さらに、慢性ヘリコバクター・ピロリ胃炎(B型胃炎)は、胃腺癌及び胃リンパ腫の前兆と考えられている。WHOによれば、ヘリコバクター・ピロリは最も癌のリスクが高いクラスの発癌要因であり、最近では、胃癌患者由来の血液試料中のエクソソームにヘリコバクター・ピロリ由来のCagAタンパク質が含まれることが明らかとなった(例えば、非特許文献1、参照。)。
【0005】
従来、ヘリコバクター・ピロリ感染は、HpSA(Helicobacter pylori Stool Antigen)試験によって、行われていた(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、HpSA試験では、便中に大量のヘリコバクター・ピロリ抗原が存在するときのみ機能するため、偽陰性の結果が得られることがあった。
これに対し、特許文献1には、便、唾液、及び分泌性の試料中の病原性生物を二抗体サンドイッチ結合アッセイによりヘリコバクター・ピロリ等の細菌感染を検出する方法が開示されている。
【0006】
また、ヘリコバクター・ピロリの除菌治療としては、2種類の抗生物質(アモキシシリン及びクラルスロマイシン)と1種類のプロトポンプ阻害薬(ランソプラゾール)とを1週間内服するのが一般的である。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特許第4122419号公報
【0008】

【非特許文献1】S Shimoda A., et al., “Exosomes as nanocarriers for systemic delivery of the Helicobacter pylori virulence factor CagA”, Scientific Reports, 6:18346, DOI: 10.1038/srep18346, 2016.
【非特許文献2】田中昭文ら、「糞便中のH.pylori抗原検査」、モダンメディア、第50巻、第5号、p117-121、2004年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、上記治療薬を用いたヘリコバクター・ピロリの除菌治療後の患者において、薬疹(薬剤が原因の発疹)以外の皮疹、すなわち、ヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーが起こることを初めて見出した。
しかしながら、特許文献1及び非特許文献2に記載の方法では、ヘリコバクター・ピロリの除菌治療後の皮疹が、薬疹か、ヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーかを判定することはできない。
また、便の解析以外の腸内細菌の菌叢分析方法の開発には未だ至っていなかった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、便の解析を行わない簡便な腸内細菌の菌叢分析方法、及び簡便且つ正確な被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ヘリコバクター・ピロリの除菌治療前後の患者由来の生体試料中のエクソソームにおいて、ヘリコバクター・ピロリ等の腸内細菌由来のタンパク質の種類及び量が変化することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]被検体から得られた生体試料中のエクソソームに含まれるタンパク質を分析する分析工程を備えることを特徴とする腸内細菌の菌叢分析方法。
[2]被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの検出方法であって、
ヘリコバクター・ピロリ感染治療薬を投与された前記被検体から得られた生体試料中のエクソソームに含まれるタンパク質を分析する分析工程を備えることを特徴とする検出方法。
[3]前記分析工程において、Flagellum-specific ATP synthase、Mannose-6-phosphate isomerase、Methyl-accepting chemotaxis protein(TlpA)、Outer membrane protein assembly factor BamA、Iron(III) dicitrate transport protein(FecA)、Penta-phosphate guanosine-3-pyrophosphohydrolase(SpoT)、Transketolase、6-phosphogluconolactonase、Glucose-6-phosphate isomerase、Type III restriction enzyme R protein、Ferrodoxin-like protein、DNA gyrase subunit A、30S ribosomal protein S6、Inosine-5-monophosphate dehydrogenase、DNA polymerase III subunit alpha、UvrABC system protein B、及びFlagellar hook-associated protein 2、DNA-binding protein HU、Putative beta-lactamase HcpC、Flavodoxin、Cytochrome c-553、10kDa chaperonin、Probable peroxiredoxin、Superoxide dismutase [Fe]、Bacterial non-heme ferritin、50S ribosomal protein L7/L12、Elongation factor Tu、Putative peptidyl-prolyl cis-trans isomerase HP_0175、Thioredoxin reductase、Thioredoxin、Urease subunit beta、Catalase、COP-associated protein、Adenine specific DNA methyltransferase(Hpaim)、及びOuter membrane protein (Omp11)からなる群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質又はそのペプチド断片を検出する[2]に記載の検出方法。
[4]前記ヘリコバクター・ピロリ感染治療薬は、アモキシシリン、クラルスロマイシン、メトロニダゾール、ランソプラゾール、及びラベプラゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種である[2]又は[3]に記載の検出方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、便の解析を行わない簡便な腸内細菌の菌叢分析方法、及び簡便且つ正確な被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)実施例1におけるDLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者、DLST陰性であり皮疹を呈しないヘリコバクター・ピロリ感染患者、及びヘリコバクター・ピロリ非感染者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌、大腸菌(E.coli)の死菌、又はPBSを添加した各試験群でのIL-2量を測定した結果を示すグラフである。(B)実施例1におけるDLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者、DLST陰性であり皮疹を呈しないヘリコバクター・ピロリ感染患者、及びヘリコバクター・ピロリ非感染者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌、大腸菌(E.coli)の死菌、又はPBSを添加した各試験群でのIL-4量を測定した結果を示すグラフである。(C)実施例1におけるDLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者、DLST陰性であり皮疹を呈しないヘリコバクター・ピロリ感染患者、及びヘリコバクター・ピロリ非感染者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌、大腸菌(E.coli)の死菌、又はPBSを添加した各試験群でのIL-6量を測定した結果を示すグラフである。(D)実施例1におけるDLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者、DLST陰性であり皮疹を呈しないヘリコバクター・ピロリ感染患者、及びヘリコバクター・ピロリ非感染者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌、大腸菌(E.coli)の死菌、又はPBSを添加した各試験群でのIFN-γ量を測定した結果を示すグラフである。(E)実施例1におけるDLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者、DLST陰性であり皮疹を呈しないヘリコバクター・ピロリ感染患者、及びヘリコバクター・ピロリ非感染者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌、大腸菌(E.coli)の死菌、又はPBSを添加した各試験群でのTNF-α量を測定した結果を示すグラフである。
【図2】実施例2におけるDLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者、及びDLST陰性であり皮疹を呈しないヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌、アモキシシリン、クラルスロマイシン、又はランソプラゾールを添加した各試験群でのリンパ球刺激試験の結果を示すグラフである。
【図3】実施例3におけるDLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者、及びDLST陰性であり皮疹を呈しないヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌、アモキシシリン、クラルスロマイシン、ランソプラゾール、又はPBSを添加した各試験群でのELISpotアッセイの結果を示す画像である。
【図4】(A)実施例4におけるDLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCに、アモキシシリン、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールの3種類の混合薬剤(各4μg/mL)を添加した試験群でのフローサイトメトリーによる解析結果を示すグラフである。(B)実施例4におけるDLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌を添加した試験群でのフローサイトメトリーによる解析結果を示すグラフである。
【図5】(A)実施例5におけるDLST陰性でありアモキシシリン、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールの3種類の混合薬剤の投与開始から10日後に皮疹を呈したヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌、アモキシシリン、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールの3種類の混合薬剤(各4μg/mL)、ヘリコバクター・ピロリの死菌及び前記混合薬剤、又はPBSを添加した各試験群でのフローサイトメトリーによるCD4T細胞数に対するCD154T細胞数の割合(%)を示すグラフである。(B)実施例5におけるDLST陰性であり前記混合薬剤の投与開始から10日より以前(薬剤投与中止から3日より以前)に皮疹を呈したヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌、アモキシシリン、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールの3種類の混合薬剤(各4μg/mL)、ヘリコバクター・ピロリの死菌及び前記混合薬剤、又はPBSを添加した各試験群でのフローサイトメトリーによるCD4T細胞数に対するCD154T細胞数の割合(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<腸内細菌の菌叢分析方法>
一実施形態において、本発明は、被検体から得られた生体試料中のエクソソームに含まれるタンパク質を分析する分析工程を備える腸内細菌の菌叢分析方法を提供する。

【0016】
本実施形態の腸内細菌の菌叢分析方法によれば、便の解析を行わず、簡便に腸内細菌の菌叢を分析することができる。

【0017】
本発明者らは、ヘリコバクター・ピロリ感染治療薬による除菌治療後の患者において、薬疹(薬剤が原因の発疹)以外の皮疹、すなわち、ヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーが起こることを初めて見出した。このとき、ヘリコバクター・ピロリ感染治療薬による除菌治療前後で、患者由来の生体試料中のエクソソームに含まれるタンパク質が変化することを、質量分析を行うことで明らかにした。また、前記エクソソームには、ヘリコバクター・ピロリ由来のタンパク質を含む種々の腸内細菌由来のタンパク質が含まれていることを明らかにした。前記分析結果から、特に、腸内の表層の細胞内に感染している菌がエクソソームに入り、体内に吸収されているものと考えられる。
また、ヒト等の動物の個体ごとに保有する腸内細菌の種類及び量が異なることから、個体ごとにエクソソームに含まれる腸内細菌由来のタンパク質が異なることが推測される。このことから、前記エクソソームに含まれる腸内細菌由来のタンパク質の違いが、個体の生育過程において胸腺でのT細胞の教育(自己抗原と非自己抗原との認識等)に関連していると考えられる。よって、エクソソームに含まれる腸内細菌由来のタンパク質を解析することで、免疫系疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレルギー性結膜炎、 アレルギー性胃腸炎、気管支喘息、小児喘息、食物アレルギー、薬物アレルギー、蕁麻疹等のアレルギー疾患;ギラン・バレー症候群、クローン病、バセドウ病、橋本病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス等の自己免疫疾患)等の機序の解明等へ応用することができる。

【0018】
一般的に、「エクソソーム」とは、様々な細胞が分泌する直径40nm~150nmの膜小胞である。この膜小胞の中には、miRNA、mRNA等の核酸、タンパク質、脂質が含まれている。さらに、エクソソームは、分泌細胞とその標的細胞の間でタンパク質や脂質を交換する重要なメッセンジャーであることが明らかとなりつつある。特に、エクソソームには生体内抗原や、抗原ペプチド/MHC複合体が含まれており、免疫細胞間での抗原情報の交換や、免疫細胞の活性化など様々な免疫応答を制御する可能性が示唆されている。よって、本実施形態の腸内細菌の菌叢分析方法においては、前記タンパク質のうち腸内細菌由来のタンパク質が腸内細菌の菌叢を反映しており、さらに免疫の獲得に関与していると考えられる。
また、エクソソームは血液等の生体試料中で数日~数週間程度安定的に存在する。そのため、エクソソームを用いた分析は安定した結果を得ることができる。
本実施形態の腸内細菌の菌叢分析方法における工程について、以下に詳細を説明する。

【0019】
[分析工程]
まず、被検体から生体試料を採取する。
前記被検体としては、例えば、特別な限定はなく、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、マウス、ラット等が挙げられ、これらに限定されない。また、被検体の種類は、目的等により任意に選択することができる。中でも、被検体はヒトであることが好ましい。被検体がヒトであることにより、ヒトにおける腸内細菌の菌叢を分析することができ、さらに免疫系疾患の機序の解明研究等へ応用することができる。

【0020】
前記生体試料としては、エクソソームを含むものであればよいが、エクソソームはほとんどの細胞から分泌されており、多くの生体試料中にはエクソソームが含まれている。このため、前記生体試料としては、特別な限定はなく、例えば、被検体から採取された体液試料、被検体から採取された細胞の抽出液、被検体から採取された細胞の培養上清等が挙げられ、これらに限定されない。
中でも、前記生体試料としては、採取が容易であることから、被検体から採取された体液試料であることが好ましい。

【0021】
前記体液試料としてより具体的には、例えば、血液、血清、血漿、尿、パフィーコート、唾液、涙液、痰、粘液、リンパ液、腹水、胸水、膀胱洗浄液等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、前記体液試料としては、採取が容易であり、その他検査における試料としても併用できることから、血液、血清、血漿、尿、パフィーコート、又は唾液であることが好ましい。

【0022】
前記被検体由来の細胞としてより具体的には、例えば、生体を構成する体細胞のうち消化器系、循環器系、泌尿器系、内分泌系の器官を構成する組織由来の細胞、生体を構成する体細胞のうち消化器系、循環器系、泌尿器系、内分泌系の器官を構成する組織から分離されたがん細胞等が挙げられ、これらに限定されない。
前記組織由来の細胞としては、例えば、腎臓、副腎、肝臓、膵臓、胃、結腸、小腸、大腸、膀胱、胸腺、血管組織、血液、心臓等の任意の組織から採取される細胞等が挙げられ、これらに限定されない。体細胞として、より具体的には、例えば、骨髄細胞、免疫細胞(例えば、Bリンパ球、Tリンパ球、好中球、マクロファージ、単球、等)、赤血球、血小板、周皮細胞、樹状細胞、上皮細胞、内皮細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、肝細胞、膵島細胞(例えば、α細胞、β細胞、δ細胞、ε細胞、PP細胞等)、心筋細胞、食道細胞、単核細胞等が挙げられ、これらに限定されない。

【0023】
前記がん細胞とは、体細胞のうち消化器系、循環器系、泌尿器系、内分泌系の器官を構成する組織由来の細胞から派生して無限の増殖能を獲得した細胞である。がん細胞の由来となる癌としては、例えば、膵癌(例えば、膵管癌等)、胃癌(例えば、乳頭腺癌、粘液性腺癌、腺扁平上皮癌等)、結腸癌(例えば、消化管間質腫瘍等)、直腸癌(例えば、消化管間質腫瘍等)、大腸癌(例えば、家族性大腸癌、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、消化管間質腫瘍等)、小腸癌(例えば、非ホジキンリンパ腫、消化管間質腫瘍等)、食道癌、十二指腸癌、舌癌、咽頭癌(例えば、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌等)、唾液腺癌、肝臓癌(例えば、原発性肝癌、肝外胆管癌等)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌、腎盂と尿管との移行上皮癌等)、胆嚢癌、胆管癌、膵臓癌、膀胱癌、尿道癌、血管腫、悪性リンパ腫(例えば、細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病等)、副甲状腺癌、血管線維腫、小児固形癌(例えば、小児腎腫瘍等)、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、慢性骨髄増殖性疾患、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病等)等が挙げられ、これらに限定されない。
なお、本明細書において、「癌」とは、診断名を表す際に用いられ、「がん」とは、悪性新生物の総称を表す際に用いられる。

【0024】
分析工程において、生体試料中のエクソソームを単離及び精製して用いることが好ましい。単離及び精製方法としては、使用する生体試料の種類に応じて、適宜公知の方法に基づき行うことができる。
単離及び精製方法としては、例えば、遠心分離、超遠心分離、濾過、膜分離、吸着分離、免疫沈降、吸水処理等を用いて、精製することができる。また、これらの単離及び精製方法のうち、遠心分離、超遠心分離、及び濾過を組み合わせた分画遠心法(参考文献1:「Thery C. et al., “UNIT 3.22 Isolation and Characterization of Exosomes from Cell Culture Supernatants and Biological Fluids”, Current Protocols in Cell Biology, Chapter 3:Unit 3.22, doi: 10.1002/0471143030.cb0322s30, 2006.」、参考文献2:「Luga V. et al., “Exosomes Mediate Stromal Mobilization of Autocrine Wnt-PCP Signaling in Breast Cancer Cell Migration”, Cell, vol. 151, Issue 7, p1542-1556, 2012.」)を用いて、精製することができる。
前記分画遠心法としてはより具体的には、まず生体試料を800g及び2,000gにて連続遠心分離を行い、次いで、得られた上清をフィルター濾過し、さらに、100,000gにて遠心分離を行うことで、分離及び精製されたエクソソーム画分を得ることができる。分離処理を行うにあたっては、市販の分離器等の機器を用いればよい。

【0025】
また、分離処理時の温度は、試料の種類に応じて適宜設定することができ、例えば0℃以上10℃以下であればよく、例えば0℃以上5℃以下であればよい。

【0026】
得られた画分にエクソソームが含まれることについては、フローサイトメトリー法等により、エクソソームの膜に存在する抗原タンパク質(例えば、CD9、CD81、HLA-DR、及びHLA-ABC)を検出することで確認することができる。

【0027】
得られたエクソソーム画分は、PBS等を用いて洗浄し、さらに溶解緩衝液(例えば、尿素/SDS、ロイペプチン、ペプスタチン、及びフッ化フェニルメチルスルホニル含有緩衝液等)に再懸濁させて、エクソソームに含まれるタンパク質を抽出して用いればよい。

【0028】
次いで、生体試料中のエクソソームに含まれるタンパク質を分析する。
分析方法としては、例えば、質量分析法、タンパク質マイクロアレイ等が挙げられ、これらに限定されない。
前記質量分析法としては、例えば、MALDI法、ESI法等が挙げられ、MALDI-TOF、LC-MS/MSなどにより分析することができる。

【0029】
分析工程において、タンパク質の分析により得られた結果から、腸内細菌由来のタンパク質を選択し解析することで、被検体の腸内細菌の菌叢を推測することができる。
また、後述のヘリコバクター・ピロリ等の腸内細菌に対するアレルギーの有無を判定するための指標となり得る。
また、腸内細菌叢は、がん、心臓病、免疫系疾患、痴呆症等の各種疾患との関連性も指摘されているため、腸内細菌叢のバランスと前記疾患との関連性の解明研究に応用することができる。

【0030】
<被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの検出方法>
一実施形態において、本発明は、被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの検出方法であって、ヘリコバクター・ピロリ感染治療薬を投与された前記被検体から得られた生体試料中のエクソソームに含まれるタンパク質を分析する分析工程を備える検出方法を提供する。

【0031】
本実施形態の検出方法によれば、被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの有無を簡便且つ正確に判定することができる。また、被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの有無が明らかとなることで、ヘリコバクター・ピロリ感染の除菌治療に失敗した場合に、薬疹がなく被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーを有しない被検体においては、2次除菌を行うことができる。一方、薬疹がなく被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーを有する被検体においても、2次除菌を行いながら、ヘリコバクター・ピロリに対するアレルギー反応の抑制又は緩和治療も並行して行うことができる。

【0032】
被検体において、腸内において死滅したヘリコバクター・ピロリ等の腸内細菌は腸内を通って便として排出、又は腸管から吸収され体内を循環し、尿として排出される。このとき、体内を循環するヘリコバクター・ピロリ由来のタンパク質の一部はマクロファージ又は樹状細胞に取り込まれ、プロセッシングされた後、前記マクロファージ又は樹状細胞からヘリコバクター・ピロリ由来のタンパク質を含むエクソソームとして放出される。この放出されたエクソソームは免疫細胞の活性化に関与すると考えられる。よって、除菌治療により被検体の生体試料中のエクソソームに含まれるヘリコバクター・ピロリ由来のタンパク質の量が増加することで、免疫反応が惹起されると考えられる。これにより、ヘリコバクター・ピロリに対するアレルギー反応が皮疹等の形で現れる。
本実施形態の検出方法における工程について、以下に詳細に説明する。

【0033】
[分析工程]
まず、ヘリコバクター・ピロリ感染治療薬を投与された被検体から生体試料を採取する。
前記被検体としては、上述の<腸内細菌の菌叢分析方法>において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、被検体はヒトであることが好ましい。被検体がヒトであることにより、ヘリコバクター・ピロリ感染の2次除菌の実施可否を判断することができる。

【0034】
前記ヘリコバクター・ピロリ感染治療薬としては、例えば、アモキシシリン、クラルスロマイシン、メトロニダゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール等が挙げられ、これらに限定されない。これらの治療薬は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、治療薬は、アモキシシリン、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールを混合して用いることが好ましい。
服用方法及び服用量については、有効成分の種類、被検体の年齢、性別、体重、症状、投与方法、処理時間等を勘案して適宜調節される。例えば、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1回につき、アモキシシリン(形状:水和物)を750mg程度、クラルスロマイシンを200mg程度、及びランソプラゾール(形状:ナトリウム塩)を10mg程度同時に、1日2回、7日間続けて経口投与すればよい。
なお、クラルスロマイシンは、1回400mg、1日2回を上限として、必要に応じて適宜増量することができる。

【0035】
また、被検体において生体試料を採取するタイミングとしては、例えばヘリコバクター・ピロリ感染治療薬の投与期間の終了直後から15日以内であればよく、例えば投与期間の終了から3日以上10日以内であればよい。

【0036】
前記生体試料としては、上述の<腸内細菌の菌叢分析方法>において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、前記生体試料としては、採取が容易であることから、被検体から採取された体液試料であることが好ましい。

【0037】
前記体液試料としては、上述の<腸内細菌の菌叢分析方法>において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、前記体液試料としては、採取が容易であり、その他検査における試料としても併用できることから、血液、血清、血漿、尿、パフィーコート、又は唾液であることが好ましい。

【0038】
分析工程において、生体試料中のエクソソームを単離及び精製して用いることが好ましい。単離及び精製方法としては、使用する生体試料の種類に応じて、適宜公知の方法に基づき行うことができる。
単離及び精製方法としては、上述の<腸内細菌の菌叢分析方法>において例示されたものと同様のものが挙げられる。

【0039】
得られた画分にエクソソームが含まれることについては、フローサイトメトリー法等により、エクソソームの膜に存在する抗原タンパク質(例えば、CD9、CD81、HLA-DR、及びHLA-ABC)を検出することで確認することができる。

【0040】
得られたエクソソーム画分は、PBS等を用いて洗浄し、エクソソームに含まれるタンパク質を抽出して用いればよい。
エクソソーム中のタンパク質の抽出方法としては、例えば、界面活性剤又はカオトロピック試薬を用いた抽出方法等が挙げられる。
前記界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デオキシコール酸ナトリウム等の陰イオン界面活性化剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、トリトン(登録商標)X-100、n-Octyl-β-D-glucoside等の非イオン界面活性剤等を挙げることができ、これらに限定されない。
界面活性剤は、タンパク質量に応じて、所定の割合で添加すればよく、例えば、エクソソームを含む溶液における界面活性剤の濃度は、例えば0.0001(w/v)%以上1(w/v)%以下であればよく、例えば0.002(w/v)%以上0.05(w/v)%以下であればよく、例えば0.005(w/v)%以上0.5(w/v)%以下であればよい。
界面活性剤が陰イオン界面活性化剤、特にSDSである場合、エクソソームを含む溶液における界面活性化剤の濃度は、例えば0.001(w/v)%以上0.05(w/v)%以下であればよく、例えば0.005(w/v)%以上0.008(w/v)%以下であればよい。
このように比較的低い濃度の界面活性剤を用いることにより、効果的にタンパク質を抽出することができる。

【0041】
また、前記カオトロピック試薬としては、カオトロピック効果を生じさせる物質であればよく、例えば、チオシアン酸イオン等のカオトロピック塩であってもよく、具体的には、尿素、グアニジン塩酸、グアニジンイソチオシアネート等が挙げられる。
前記界面活性剤と前記カオトロピック試薬とは混合して用いてもよい。

【0042】
また、上記エクソソームの単離及び精製と、エクソソーム中のタンパク質の抽出方法について、市販のキット(例えば、DiagExo(登録商標)Serum Exosomal Protein Extraction kit(101 Bio社製)、Total Exosome RNA & Protein Isolation Kit(Thermo Fisher Scientific社製)等)を用いて行ってもよい。

【0043】
次いで、生体試料中のエクソソームに含まれるタンパク質を分析する。
分析方法としては、上述の<腸内細菌の菌叢分析方法>において例示されたものと同様のものが挙げられる。

【0044】
分析工程において、タンパク質の分析により得られた結果から、ヘリコバクター・ピロリ由来のタンパク質が検出された場合、被検体においてヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーを有すると判定することができる。

【0045】
前記ヘリコバクター・ピロリ由来のタンパク質としては、例えば、Flagellum-specific ATP synthase、Mannose-6-phosphate isomerase、Methyl-accepting chemotaxis protein(TlpA)、Outer membrane protein assembly factor BamA、Iron(III) dicitrate transport protein(FecA)、Penta-phosphate guanosine-3-pyrophosphohydrolase(SpoT)、Transketolase、6-phosphogluconolactonase、Glucose-6-phosphate isomerase、Type III restriction enzyme R protein、Ferrodoxin-like protein、DNA gyrase subunit A、30S ribosomal protein S6、Inosine-5-monophosphate dehydrogenase、DNA polymerase III subunit alpha、UvrABC system protein B、及びFlagellar hook-associated protein 2、DNA-binding protein HU、Putative beta-lactamase HcpC、Flavodoxin、Cytochrome c-553、10kDa chaperonin、Probable peroxiredoxin、Superoxide dismutase [Fe]、Bacterial non-heme ferritin、50S ribosomal protein L7/L12、Elongation factor Tu、Putative peptidyl-prolyl cis-trans isomerase HP_0175、Thioredoxin reductase、Thioredoxin、Urease subunit beta、Catalase、COP-associated protein、Adenine specific DNA methyltransferase(Hpaim)、Outer membrane protein (Omp11)等が挙げられ、これらに限定されない。また、これらのタンパク質のペプチド断片であってもよい。これらのタンパク質のうち、少なくとも1種が検出されることにより、被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの有無を判定することができる。

【0046】
また、本実施形態の検出方法において、薬剤アレルギー検査を並行して実施してもよい。前記薬剤アレルギー検査としては、例えば、パッチテスト(スクラッチパッチテスト)、プリックテスト、内服テスト(誘発テスト)、薬剤によるリンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test;DLST)等が挙げられ、これらに限定されない。
薬剤アレルギー検査を実施することにより、2次除菌の実施可否を判断することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
[実施例1]
(1)ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来の末梢血単核球の採取
まず、ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者(15名、内皮疹を呈した患者12名、及び皮疹を呈しない患者3名)から採血し、ヘパリン含有採血管に採取した。次いで、フィコール比重遠心法により、末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cell;PBMC)を単離した。
なお、ヘリコバクター・ピロリ感染患者におけるヘリコバクター・ピロリ除菌は、1回につき、アモキシシリン(形状:水和物)750mg、クラルスロマイシン200mg、及びランソプラゾール(形状:ナトリウム塩)10mgを同時に経口投与し、1日2回、7日間続けて経口投与することで行った。
【実施例】
【0049】
得られたPBMCは、10cmディッシュに播種し、37℃、5%二酸化濃度の環境下で培養し、培養開始90分後に非接着細胞を取り除き、接着した細胞を7日間培養し、維持した。PBMCの培養には、10%ウシ胎児血清(FBS)、4mM L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、及び100ng/mLヒト組換え顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte/Macrophage-Colony Stimulating Factor:GM-CSF)(RD systems社製)含有RPMI培地を用いた。
【実施例】
【0050】
(2)ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来のPBMCを用いたリンパ球刺激試験
次いで、得られたPBMCのうち皮疹を呈したヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来のPBMCを用いて、薬剤によるリンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test;DLST)を行った。具体的には、前記PBMCを浮遊培養し、アモキシシリン、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールの3種類の薬剤を各4μg/mLで添加し、5日間培養した。次いで、トリチウムチミジン(H-チミジン)(パーキンエルマー社製)を投与し、12時間培養し、DNA合成に使用されたチミジン量を液体シンチレーションカウンターで計測した。すなわち、前記治療薬の添加により、H-チミジン取り込み量が増加した場合、薬剤特異的T細胞が存在すると判断することができる。
【実施例】
【0051】
DLSTにより、ヘリコバクター・ピロリ除菌後、皮疹を呈した患者12名のうち、3名はDLST陽性であり、残りの9名はDLST陰性であった(図示せず)。
よって、上記9名については、薬剤以外の要因により皮疹が起きたことが示唆された。
【実施例】
【0052】
(3)サイトカイン量の測定
次いで、DLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者、DLST陰性であり皮疹を呈しないヘリコバクター・ピロリ感染患者、及びヘリコバクター・ピロリ非感染者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌(1.0×10/CFU)、対照群として大腸菌(E.coli)(ATCC25992株)の死菌(1.0×10/CFU)、又はコントロールとしてPBSを添加し、24時間培養した。次いで、各培養液を4℃で5分間2,500rpmで遠心分離した。次いで、Bio-Plex Human Cytokine 27-Plex panel(Bio-Rad社製)を用いて、得られた上清に含まれるサイトカイン量を測定した。具体的には、ELISAキット(RD systems社製)を用いて、サイトカインとして、interleukin(IL)-2、IL-4、IL-6、interferon(IFN)-γ、及びtumor necrosis factor(TNF)-αの量を測定した。結果を図1(A)~(E)に示す。図1(A)~(E)において、「HP(-)」とはヘリコバクター・ピロリ非感染者由来のPBMCを意味し、「HP(+)」とはヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCを意味し、「SE(+)」とは皮疹を呈する患者由来のPBMCを意味する。すなわち、「HP(-)」とは、ヘリコバクター・ピロリ非感染者由来のPBMCを用いた試験群であり、「HP(+)SE(-)」とは、皮疹を呈しないヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCを用いた試験群であり、「HP(+)SE(+)」とは、皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCを用いた試験群である。また、図1(A)~(E)において、「HP」はヘリコバクター・ピロリの死菌を添加した試験群であり、「E.coli」は大腸菌の死菌を添加した対照群であり、「PBS」はPBSを添加したコントロール群である。
【実施例】
【0053】
図1(A)~(E)から、「HP(+)SE(+)」群のうち、ヘリコバクター・ピロリの死菌を添加した試験群において、各種サイトカインの有意な上昇が認められた。これに対し、「HP(-)」群、及び「HP(+)SE(-)」群においては、各種サイトカインの上昇は認められなかった。
このことから、DLST陰性であり、皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCでは、ヘリコバクター・ピロリの死菌の存在により、サイトカインの分泌が惹起されたと推察された。
【実施例】
【0054】
[実施例2]
(1)ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来のPBMCの採取
実施例1で採取したPBMCを実施例2においても使用した。
【実施例】
【0055】
(2)ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来のPBMCを用いたリンパ球刺激試験
次いで、DLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者、及びDLST陰性であり皮疹を呈しないヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCを用いて、アモキシシリン、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールの3種類の薬剤(各4μg/mL)の他に、ヘリコバクター・ピロリの死菌(1.0×10/CFU)を添加した以外は、実施例1の(2)と同様の方法を用いて、リンパ球刺激試験を行った。結果を図2に示す。図2において、「Patient 5」とはDLST陰性であり皮疹を呈する特定のヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCを用いた試験群であり、「Patient 6」とはDLST陰性であり皮疹を呈する特定のヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCを用いた試験群であり、「HP(+)SE(-)」とは、皮疹を呈しないヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCを用いた試験群である。
【実施例】
【0056】
図2から、「Patient 5」群おいて、ヘリコバクター・ピロリの死菌の存在により、ヘリコバクター・ピロリ特異的T細胞が存在することが確かめられた。
【実施例】
【0057】
[実施例3]
(1)ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来のPBMCの採取
実施例1で採取したPBMCを実施例3においても使用した。
【実施例】
【0058】
(2)ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来のPBMCを用いたELISpotアッセイ
次いで、DLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者、及びDLST陰性であり皮疹を呈しないヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌(1.0×10/CFU、又は3.3×10/CFU)、アモキシシリン、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールの3種類の薬剤(各4μg/mL)、又はPBSを添加し、24時間培養した。次いで、各PBMCを回収し、ヒトIFN-γ ELISpotPRO キット(Mabtech AB社製)を用いて、抗原特異的IFN-γ産生細胞の存在を確かめた。データは、2×10細胞のPBMC当たりのスポット形成単位(CFU)として表示した。また、ポジティブコントロールとして、ポリクローナル活性化剤である抗CD3抗体を用いた。スポットの計測は、CTL-ImmunoSpot S5 UV Analyzer(Cellular Technology社製)及びCTL ImmunoSpot Professional Software version 5.0 reader(Cellular Technology社製)を用いて行った。結果を図3に示す。図3において、「HP」は、ヘリコバクター・ピロリの死菌を1.0×10/CFU添加した試験群であり、「HP(one third of dilution)」はヘリコバクター・ピロリの死菌を3.3×10/CFU添加した試験群であり、「Amoxicillin」はアモキシシリンを4μg/mL添加した試験群であり、「Clarithromycin」はクラルスロマイシンを4μg/mL添加した試験群であり、「Lansoprazole」はランソプラゾールを4μg/mL添加した試験群であり、「PBS」はPBSを添加したコントロール群である。また、「Patient 5」とはDLST陰性であり皮疹を呈する特定のヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCを用いた試験群であり、「Patient 6」とはDLST陰性であり皮疹を呈する特定のヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCを用いた試験群であり、「HP(+)SE(-)」とは、皮疹を呈しないヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCを用いた試験群である。
【実施例】
【0059】
図3から、「Patient 5」群おいて、ヘリコバクター・ピロリの死菌の濃度依存的に、PBMC中のIFN-γ産生T細胞の数が上昇していた。一方、薬剤を添加した試験群ではIFN-γ産生T細胞は認められなかった。
【実施例】
【0060】
[実施例4]
(1)ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来のPBMCの採取
実施例1で採取したPBMCを実施例4においても使用した。
【実施例】
【0061】
(2)ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来のPBMCを用いたフローサイトメトリー
次いで、DLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌(1.0×10/CFU)、又はアモキシシリン、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールの3種類の混合薬剤(各4μg/mL)を添加し、24時間培養した。次いで、各PBMCを回収し、以下の抗体及び試薬を用いて染色した。
・FITC結合抗CD4抗体(BD Bioscience社製)
・PE-Cy7結合抗CD3抗体(BD Bioscience社製)
・PE結合抗CD154抗体(BD Bioscience社製)
・FITC結合抗CD81抗体 (BioLegend社製)
・PE結合抗CD9抗体(BioLegend社製)
・Pacific Blue結合抗CD63抗体(BioLegend社製)
・PE-Cy7結合抗HLA-ABC抗体(BioLegend社製)
・PerCP cy5.5結合抗HLA-DR抗体(BioLegend社製)
・Sytox Blue (Thermo Fisher Scientific社製)
【実施例】
【0062】
次いで、染色した細胞をFACS Canto II or Aria III cytofluorometer(BD Bioscience社製)を用いて、測定した。次いで、得られたデータをFlowJo software(Tree Star社製)を用いて、解析した。結果を図4(A)及び(B)に示す。図4(A)において、「medications」は、アモキシシリン、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールの3種類の混合薬剤(各4μg/mL)を添加した試験群であり、図4(B)において、「HP」はヘリコバクター・ピロリの死菌を1.0×10/CFU添加した試験群である。
【実施例】
【0063】
図4(A)及び(B)から、「HP」群では、ヘリコバクター・ピロリの添加により初期活性マーカーであるCD154が高発現していることが確かめられた。このことから、「HP」群では、ヘリコバクター・ピロリ特異的CD4T細胞が存在することが確かめられた。
【実施例】
【0064】
[実施例5]
(1)ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来のPBMCの採取
実施例1で採取したPBMCを実施例5においても使用した。
【実施例】
【0065】
(2)ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来のPBMCを用いたフローサイトメトリー
次いで、DLST陰性でありアモキシシリン、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールの3種類の混合薬剤の投与開始から10日後(薬剤投与中止から3日後)に皮疹を呈したヘリコバクター・ピロリ感染患者、及びDLST陰性であり前記混合薬剤の投与開始から10日より以前(薬剤投与中止から3日より以前)に皮疹を呈したヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCに、ヘリコバクター・ピロリの死菌(1.0×10/CFU)、アモキシシリン、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールの3種類の混合薬剤(各4μg/mL)、ヘリコバクター・ピロリの死菌(1.0×10/CFU)及び前記混合薬剤、又はPBSを添加し、24時間培養した以外は、実施例4の(2)と同様の方法を用いて、フローサイトメトリーを行った。次いで、得られたデータから、CD4+T細胞数に対するCD154+細胞数の割合(%)を計算した。結果を図5(A)及び(B)に示す。
図5(A)及び(B)において、「H.Pylori + drug」はヘリコバクター・ピロリの死菌及び前記混合薬剤を添加した試験群であり、「H.Pylori」はヘリコバクター・ピロリの死菌のみを添加した試験群であり、「drugs」は前記混合薬剤のみを添加した試験群であり、「PBS」はPBSを添加したコントロール群である。
また、図5(A)において、「≧10days」はDLST陰性であり前記混合薬剤の投与開始から10日後(薬剤投与中止から3日後)に皮疹を呈したヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCを用いた試験群であり、「<10days」はDLST陰性であり前記混合薬剤の投与開始から10日より以前(薬剤投与中止から3日より以前)に皮疹を呈したヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCを用いた試験群である。
【実施例】
【0066】
図5(A)及び(B)から、「≧10days」群では、ヘリコバクター・ピロリの添加により、CD154T細胞の割合が上昇していることが確かめられた。このことから、「≧10days」群では、ヘリコバクター・ピロリ特異的CD4T細胞が存在することが確かめられた。
【実施例】
【0067】
[実施例6]
(1)ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来の血液試料の採取
実施例1において採血した各血液試料のうちDLST陰性であり皮疹を呈したヘリコバクター・ピロリ感染患者の血液試料について、採血管を転倒講和して30分間静置した。次いで、3,000rpm、5分間の遠心分離を行い、上清(血清)を得た。得られた血清は使用するまで、冷蔵保存した。
【実施例】
【0068】
(2)血液試料からエクソソームの単離
次いで、(1)で得られた血清について、300×gで遠心分離を行い、上清を得た。次いで、得られた上清を100,000×gで超遠心分離して、エクソソームのペレットを得た。得られたエクソソームのペレットをPBSで洗浄した後、少量のPBSに再懸濁した。
また、得られたエクソソームについて、エクソソームマーカー(CD9、CD81、HLA-DR、及びHLA-ABC)を各マーカーに対する抗体(BD Bioscience社製)を用いた染色を行い、フローサイトメトリーにより解析し確認した。
【実施例】
【0069】
(3)液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)によるエクソソームに含まれるタンパク質の解析
次いで、(2)で得られたエクソソームのペレットについて、相関移動溶解法(PTS(Phase Transfer Surfactant)法)を用いて、タンパク質を抽出した。具体的には、前記(2)で得られたエクソソームのペレットに、陰イオン性界面活性剤であるデオキシコール酸ナトリウム(Sodium Deoxycholate;SDC)及びN-ラウロイルサルコシンナトリウム(N-Lauroylsarcosine sodium salt)を12mMとなるように添加し、膜タンパク質を溶解した。次いで、有機溶媒として酢酸エチル(ethyl acetate)(最終濃度50%)を添加し、さらにトリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid;TFA)(最終濃度0.5%)を添加して酸性条件下とすることで有機相に界面活性剤を移動させて、水相を回収することで界面活性剤を除去した。次いで、水相に含まれるエクソソームに含まれていたタンパク質を1質量%のトリプシンを用いて、37℃で一晩消化処理した。次いで、UltiMate 3000 nano-flow HPLC system(Dionex社製)及びHTC-PAL autosampler(CTC Analytics社製)、並びにQ-Exactive mass spectrometer(Thermo Fisher Scientific社製)を用いた液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により、消化処理されたタンパク質を測定した。測定データはMaxQuant software(version 1.5.1.2)を用いて解析した。また、ピークリストはAndromeda search engineを用いて、UniProt HP protein databaseと照合して解析した。質量分析において、「precursor mass tolerance」=7ppm、「fragment ion mass tolerance」=0.01Daとなるように設定した。タンパク質の解析結果のうち、ヘリコバクター・ピロリ由来のタンパク質を以下の表1に示す。
【実施例】
【0070】
【表1】
JP2018063182A_000002t.gif
【実施例】
【0071】
表1から、DLST陰性であり皮疹を呈したヘリコバクター・ピロリ感染患者の血液試料由来のエクソソームには、ヘリコバクター・ピロリ由来のタンパク質が存在することが確かめられた。
【実施例】
【0072】
[実施例7]
(1)ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来のPBMCの採取
実施例1で採取したPBMCのうち、DLST陰性であり皮疹を呈したヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCを実施例7においても使用した。
【実施例】
【0073】
(2)血液試料からエクソソームの単離
次いで、血清の代わりに前記PBMCの培養上清を用いた以外は、実施例6の(2)と同様の方法を用いて、エクソソームを単離した。
【実施例】
【0074】
(3)液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)によるエクソソームに含まれるタンパク質の解析
次いで、実施例6の(3)と同様の方法を用いて、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)によるエクソソームに含まれるタンパク質の解析を行った、タンパク質の解析結果のうち、ヘリコバクター・ピロリ由来のタンパク質を以下の表2に示す。
【実施例】
【0075】
【表2】
JP2018063182A_000003t.gif
【実施例】
【0076】
表2から、DLST陰性であり皮疹を呈したヘリコバクター・ピロリ感染患者由来のPBMCの培養上清に含まれるエクソソームには、ヘリコバクター・ピロリ由来のタンパク質が存在することが確かめられた。
【実施例】
【0077】
[実施例8]
(1)ヘリコバクター・ピロリ除菌後の患者由来の血液試料の採取
DLST陰性であり皮疹を呈するヘリコバクター・ピロリ感染患者において、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールの3種類の混合薬剤の投与開始直後、3日後、7日後、及び10日後に採血を行った。次いで、採血管を転倒講和して30分間静置した。次いで、3,000rpm、5分間の遠心分離を行い、上清(血清)を得た。得られた血清は使用するまで、冷蔵保存した。
【実施例】
【0078】
(2)血液試料からエクソソームの単離
次いで、採血日の異なる血清を複数用いた以外は、実施例6の(2)と同様の方法を用いて、エクソソームを単離した。
【実施例】
【0079】
(3)安定同位体ラベル化法を用いたペプチドの標識及びイオン交換カラムを用いたタンパク質の分離
次いで、得られたエクソソームについて、実施例6の(3)と同様にPTS法を用いて、タンパク質を抽出した。次いで、抽出されたエクソソームに含まれていたタンパク質をアミン反応性TMT10plex(登録商標) Isobaric Label Reagent Set (Thermo Fisher Scientific社製)を用いた安定同位体ラベル化法により、タンパク質を標識した。次いで、標識されたタンパク質を含む溶液をイオン交換カラムを用いて、分画した。
【実施例】
【0080】
(4)質量分析法(MS/MS)によるエクソソームに含まれるタンパク質の解析
次いで、分画されたタンパク質について、Q-Exactive mass spectrometer(Thermo Fisher Scientific社製)を用いたー質量分析法(MS/MS)により、測定した。測定データはMaxQuant software(version 1.5.1.2)を用いて解析した。また、ピークリストはAndromeda search engineを用いて、UniProt HP protein databaseと照合して解析した。質量分析において、「precursor mass tolerance」=7ppm、「fragment ion mass tolerance」=0.01Daとなるように設定した。タンパク質の解析結果のうち、ヘリコバクター・ピロリ由来以外の腸内細菌由来のタンパク質を以下の表3に示す。
【実施例】
【0081】
【表3】
JP2018063182A_000004t.gif
【実施例】
【0082】
表3から、クラルスロマイシン、及びランソプラゾールの3種類の混合薬剤の投与より、ヘリコバクター・ピロリ以外の腸内細菌由来のタンパク質について、エクソソームにおける含有量が減ることが確かめられた。このことから、薬剤の投与より、ヘリコバクター・ピロリ以外の腸内細菌についても除菌されることが推察される。
また、薬剤の投与後に増加するヘリコバクター・ピロリ以外の腸内細菌由来のタンパク質も存在する。例えば、表3において、「Campylobacter jejuni subsp. jejuni serotype O:23/36」はギラン・バレー症候群の原因菌とされている。このことから、エクソソームに含まれる腸内細菌由来のタンパク質を解析することは、各種疾患と腸内細菌叢との関連性を解明するために有用であると考えられる。
【実施例】
【0083】
以上のことから、ヘリコバクター・ピロリ感染患者の血液試料由来のエクソソームに含まれているタンパク質を分析することにより、前記患者におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの有無を判定することができる。また、被検体の血液試料由来のエクソソームに含まれているタンパク質を分析することにより、被検体の腸内細菌の菌叢を簡便に分析することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の腸内細菌の菌叢分析方法によれば、便の解析を行わず、簡便に腸内細菌の菌叢を分析することができる。さらに、腸内細菌叢は、がん、心臓病、免疫系疾患、痴呆症等の各種疾患との関連性も指摘されているため、腸内細菌叢のバランスと前記疾患との関連性の解明研究に応用することができる。
また、本発明の検出方法によれば、被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの有無を簡便且つ正確に判定することができる。さらに、被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーの有無が明らかとなることで、ヘリコバクター・ピロリ感染の除菌治療に失敗した場合に、薬疹がなく被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーを有しない被検体においては、2次除菌を行うことができる。一方、薬疹がなく被検体におけるヘリコバクター・ピロリに対するアレルギーを有する被検体においても、2次除菌を行いながら、ヘリコバクター・ピロリに対するアレルギー反応の抑制又は緩和治療も並行して行うことができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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