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明細書 :キメラ抗原受容体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6842688号 (P6842688)
公開番号 特開2018-042531 (P2018-042531A)
登録日 令和3年2月25日(2021.2.25)
発行日 令和3年3月17日(2021.3.17)
公開日 平成30年3月22日(2018.3.22)
発明の名称または考案の名称 キメラ抗原受容体
国際特許分類 C12N  15/62        (2006.01)
C12N  15/13        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C07K  14/705       (2006.01)
A61K  35/17        (2015.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI C12N 15/62 ZNAZ
C12N 15/13
C07K 19/00
C12N 5/10
C07K 14/705
A61K 35/17 Z
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 10
全頁数 23
出願番号 特願2016-182078 (P2016-182078)
出願日 平成28年9月16日(2016.9.16)
審査請求日 令和元年6月14日(2019.6.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
発明者または考案者 【氏名】今井 千速
【氏名】笠原 靖史
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100141139、【弁理士】、【氏名又は名称】及川 周
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査官 【審査官】林 康子
参考文献・文献 国際公開第2006/036445(WO,A1)
国際公開第2013/033626(WO,A1)
調査した分野 C12N 15/00
CAplus/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
NKp44の免疫グロブリンドメインと、NKp44の細胞外ヒンジドメインと、CD28の膜貫通ドメインと、CD3ζの活性化シグナル伝達ドメインとを含む、キメラ抗原受容体。
【請求項2】
配列番号2に記載のアミノ酸配列のN末端から22~329番目のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のキメラ抗原受容体を発現する細胞。
【請求項6】
T細胞又はナチュラルキラー細胞である、請求項に記載の細胞。
【請求項7】
請求項に記載のポリヌクレオチド又は請求項に記載のベクターを細胞に導入する工程を含む、キメラ抗原受容体を発現する細胞の製造方法。
【請求項8】
前記細胞がT細胞又はナチュラルキラー細胞である、請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項又はに記載の細胞を含む、医薬組成物。
【請求項10】
請求項又はに記載の細胞を含む、腫瘍を治療又は予防するための医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、キメラ抗原受容体、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、キメラ抗原受容体を発現する細胞、及び前記細胞を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、がんに対する治療方法として、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)遺伝子を導入したT細胞(CAR-T)を用いる養子免疫療法が注目されている。CARは、単鎖抗体などを抗原結合部位とする人工受容体であり、1993年に、イスラエルのEshharらが初めてCARのコンセプトを確立した(非特許文献1)。CARは、リガンド結合ドメインと、膜貫通ドメインと、活性化シグナル伝達ドメインとを有し、リガンド結合ドメインにリガンドが結合することにより、活性化シグナルがT細胞内に伝達される。
【0003】
CARの臨床効果としては、リガンド結合ドメインに、CD19に結合する一本鎖抗体(single chain variable fragment:scFv)を使用したCARを導入したT細胞(特許文献1、非特許文献2)が、難治性・再発性B細胞性白血病に対して劇的な効果を示したことが報告されている(非特許文献3)。しかしながら、CD19はB細胞のみに発現する抗原であり、固形腫瘍等には適用できない。また、他の腫瘍抗原を標的とするCARの研究も進められているが、十分な臨床効果が得られていないのが現状である。
【0004】
固形腫瘍を含む悪性腫瘍に対して臨床効果を示すCARを開発するためには、抗原の選択が重要である。CARが標的とする抗原は、腫瘍細胞表面に存在する抗原である必要があり、かつ正常細胞では発現していないか極めて低発現の抗原である、若しくは喪失しても生体の生存に影響のない細胞に発現が限定されている抗原である必要がある。CAR-Tは、標的抗原を細胞表面上に有する細胞に対して、極めて高い細胞傷害活性を示す。そのため、抗体薬では問題とならなかったような正常細胞における低レベルの発現であっても、CAR-T療法においては、重篤な副作用を引き起こす恐れがある。したがって、既に抗体医薬の標的として実用化されている抗原であっても、CAR-T療法の標的抗原として使用できるもの限られている。このような標的抗原の少なさが、CAR-T療法の臨床応用における大きな障壁となっている。
【0005】
また、従来、CARのリガンド結合ドメインには、標的抗原に結合するscFvが使用されてきた。そのため、新たな抗原を標的とするCARを作成しようとする場合には、まず当該抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を取得し、さらに当該モノクローナル抗体の可変領域からscFvを作成する必要があった。
【0006】
一方、リガンド結合ドメインにscFvを使用せず、ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害性受容体(natural cytotoxicity receptor:NCR)の1種であるNKp30のリガンド結合ドメインを、CARのリガンド結合ドメインとして使用する方法が報告されている(特許文献2)。NCRは、NKp30のほかにNKp44及びNKp46が知られており、NK細胞の腫瘍細胞に対する細胞傷害性に重要な役割を果たしている。これらのNCRにリガンドが結合すると、NK細胞内に活性化シグナルが伝達されて、NK細胞が活性化され細胞傷害性顆粒の放出やサイトカイン産生が起こる。NKp30のリガンド結合ドメインを使用した場合、CARの作成にあたってscFvを取得しなくてもよいという利点がある。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】米国特許第8399645号明細書
【特許文献2】国際公開第2013/033626号
【0008】

【非特許文献1】Eshhar Z, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1993, 90(2): 720-4.
【非特許文献2】Imai C, et al. Leukemia 2004, 18(4): 676-84.
【非特許文献3】Maude SL, et al. N Engl J Med. 2004, 371(16): 1507-17.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、腫瘍に対するCAR-T療法では、現在までのところ、CD19以外に臨床的に有効な標的抗原が見出されていない。さらに、腫瘍は、その種類によって発現する抗原が異なっているため、ある腫瘍に有効な標的抗原が見出されても、他の腫瘍に対しては有効ではないことが多い。そのため、CAR-T療法を幅広い腫瘍に応用するためには、標的抗原の探索が重要な課題となっている。
【0010】
特許文献2には、NKp30のリガンド結合ドメインを使用したCARが記載されているが、臨床効果や適用範囲は未知数である。したがって、異なる抗原を標的とする新規CARの開発は、CAR-T療法の臨床応用を進めていくうえで、極めて重要である。
【0011】
そこで、本発明は、新たな抗原を標的とする新規CAR、及び当該CARを発現し、かつ腫瘍細胞に対して細胞傷害性を示すCAR発現細胞を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の通りである。
(1)NKp44の免疫グロブリンドメインと、膜貫通ドメインと、活性化シグナル伝達ドメインとを含む、キメラ抗原受容体。
(2)細胞外ヒンジドメインをさらに含む、(1)に記載のキメラ抗原受容体。
(3)共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む、(1)又は(2)に記載のキメラ抗原受容体。
(4)前記活性化シグナル伝達ドメインがCD3ζの活性化シグナルドメインを含む、(1)~(3)のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
(5)前記膜貫通ドメインが、NKp44、CD8α、及びCD28からなる群より選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む、(1)~(4)のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
(6)前記細胞外ヒンジドメインが、NKp44、CD8α、及びCD28からなる群より選択されるタンパク質の細胞外ヒンジドメインを含む、(2)~(5)のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
(7)配列番号2に記載のアミノ酸配列のN末端から22~329番目のアミノ酸配列を含む、(1)に記載のキメラ抗原受容体。
(8)(1)~(7)のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド。
(9)(8)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
(10)(1)~(7)のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体を発現する細胞。
(11)T細胞又はナチュラルキラー細胞である、(10)に記載の細胞。
(12)(8)に記載のポリヌクレオチド又は(9)に記載のベクターを細胞に導入する工程を含む、キメラ抗原受容体を発現する細胞の製造方法。
(13)前記細胞がT細胞又はナチュラルキラー細胞である、(12)に記載の製造方法。
(14)(10)又は(11)に記載の細胞を含む、医薬組成物。
(15)(10)又は(11)に記載の細胞を含む、腫瘍を治療又は予防するための医薬組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、NKp44リガンドを標的とする新規CAR、及び当該CARを発現し、かつ腫瘍細胞に対して細胞傷害性を示すCAR発現細胞が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態にかかる各種NKp44-based CARコンストラクトの模式図である。図中、SPはシグナルペプチド、Igは免疫グロブリンドメイン、EHは細胞外ヒンジドメイン、TMは膜貫通ドメイン、CSは共刺激分子伝達ドメイン、ASは活性化シグナル伝達ドメインを示す。
【図2】NKp44-based CAR遺伝子を導入したT細胞及びNK細胞におけるNKp44-based CARの発現をフローサイトメトリーで解析した結果を示す。
【図3】NKp44-based CAR遺伝子(EH(p44)-TM(CD28)-AS(CD3ζ))を導入したT細胞(NKp44-CART)の細胞傷害性評価試験の結果を示す。(A)は骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)、(B)はB細胞性白血病(B-cell acute lymphoblastic leukemia)、(C)はT細胞性白血病(T-cell acute lymphoblastic leukemia)の各細胞株をそれぞれ標的細胞として使用した。各グラフの右上に、標的細胞に使用した細胞株名を示した。(D)は自己の活性化T細胞(Auto-T cell)又は他家非活性化T細胞(Allo-T cell)を標的細胞として使用した。
【図4】骨髄性白血病株(K562)と共培養したNKp44-CARTのインターフェロンγ(IFN-γ)産生を評価した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[キメラ抗原受容体]
1実施形態において、本発明は、NKp44の免疫グロブリンドメインと、膜貫通ドメインと、活性化シグナル伝達ドメインとを含む、キメラ抗原受容体を提供する。

【0016】
本明細書において、「キメラ抗原受容体(CAR)」とは、少なくとも1つのリガンド結合ドメインと、少なくとも1つの膜貫通ドメインと、少なくとも1つの活性化シグナル伝達ドメインとを含む、キメラタンパク質を意味する。なお、キメラタンパク質とは、少なくとも2種以上の異種タンパク質由来の領域を含むタンパク質を意味する。本明細書において、CARは、上記3つのドメインのみを含むものに限定されず、他のドメインを含むものを包含する。一般的に、細胞内ドメインとして、T細胞受容体(TCR)・CD3複合体の活性化シグナル伝達ドメインのみを有するものを第1世代CAR、活性化シグナル伝達ドメインに加えて共刺激分子由来の共刺激シグナル伝達ドメインを有するものを第2世代CAR、活性化シグナル伝達ドメインに加えて複数の共刺激シグナル伝達ドメインを有するものを第3世代CARと呼ぶが、本明細書におけるCARは、これら全てを包含する。

【0017】
<NKp44の免疫グロブリンドメイン>
本実施形態のCARは、リガンド結合ドメインとして、NKp44の免疫グロブリンドメインを含む。

【0018】
NKp44は、NK細胞のNCRの1種であり、腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞傷害活性に重要な役割を果たしている。NKp44にリガンドが結合すると、NK細胞内に活性化シグナルが伝達されて、NK細胞が活性化され、細胞傷害性顆粒の放出やサイトカイン産生が起こる。NKp44のリガンドは、造血器腫瘍を含む幅広い腫瘍細胞において発現していると報告されており、NKp44へのリガンドの結合を介して、これらのNKp44リガンド発現腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞傷害活性が発現される。なお、NKp44のリガンドとしては、現在までに、MLL5(Baycheiler F, et al. Blood 2013, 122(17): 2935-42)、及びPCNA(Rosental B, et al. J Immunol 2011, 187: 5693-5702)が報告されている。ヒトMLL5のアミノ酸配列の例としては、GenBank ID NP_061152(塩基配列:NM_018682.3)及びNP_891847.1(塩基配列:NM_182931.2)を挙げることができ、ヒトPCNAのアミノ酸配列の例としては、GenBank ID NP_002583.1(塩基配列:NM_002592.2)及びNP_872590.1(塩基配列:NM_182649.1)を挙げることができるが、これらに限定されない。NKp44は、非活性化NK細胞では発現しておらず、活性化NK細胞で発現する。本明細書において、「NKp44」とは、上記のような性質を有する全てのタンパク質を包含する。

【0019】
本実施形態のCARにおいて、NKp44の由来する生物は特に限定されず、ヒト由来のNKp44、並びにマウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ブタ、サル等の非ヒト哺乳動物のNKp44であることができるが、ヒトNKp44であることが好ましい。ヒトNKp44のアミノ酸配列としては、例えば、GenBank ID NP_004819.2(アイソフォーム1)、NP_001186438.1(アイソフォーム2)及びNP_001186439.1(アイソフォーム3)等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらのアミノ酸配列からなるヒトNKp44は、ヒトNKp44のバリアントであり、いずれも上記のようなNKp44の特徴を有する。ただし、NKp44は、これらのアミノ酸配列を有するものに限定されず、これらの変異体及び種間相同体を包含する。また、上記アイソフォーム1~3の他に、GenBankやDDBJ等の配列データベースに登録されている他のアミノ酸配列を有するものであってもよく、それらの変異体であってもよい。

【0020】
なお、上記のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列としては、GenBankにおいて、NM_004828.3(アイソフォーム1)、NM_001199509.1(アイソフォーム)2、及びNM_001199510.1(アイソフォーム3)が登録されている。ヒトNKp44のアミノ酸配列の典型例として、アイソフォーム1の塩基配列及びアミノ酸配列(NM_004828.3,NP_004819.2)をそれぞれ配列番号3及び4に示す。

【0021】
前記ヒトNKp44の変異体の例としては、例えば、配列番号4に記載のアミノ酸配列と比較して、1~50個、1~30個、1~20個、又は1~10個程度の変異を有し、かつ上記したNKp44の機能を保持するタンパク質等が挙げられる。なお、変異は、アミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び付加のいずれであってもよく、これらの組合せであってもよい。あるいは、前記ヒトNKp44の変異体の他の例としては、配列番号4に記載のアミノ酸配列と、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上の配列同一性(相同性)を有するアミノ酸配列からなり、かつ上記したNKp44機能を保持するタンパク質等が挙げられる。なお、アミノ酸配列同士の配列同一性は、2つのアミノ酸配列を、対応するアミノ酸が最も多く一致するように、挿入及び欠失に当たる部分にギャップを入れながら並置し、得られたアラインメント中のギャップを除くアミノ酸配列全体に対する一致したアミノ酸の割合として求められる。アミノ酸配列同士の配列同一性は、該技術分野で公知の各種相同性検索ソフトウェアを用いて求めることができる。

【0022】
NKp44の免疫グロブリンドメインは、NKp44のリガンド結合ドメインとして機能し、NKp44リガンドに結合する機能を有する。NKp44の免疫グロブリンドメインは、NKp44の細胞外領域に位置し、免疫グロブリン類似構造を有する。ヒトNKp44の免疫グロブリンドメインのアミノ酸配列としては、配列番号4に記載のアミノ酸配列のN末端から22~130番目のアミノ酸配列を有するもの等を挙げることができる。ただし、NKp44の免疫グロブリンドメインは、上記アミノ酸配列を含むものに限定されず、NKp44リガンドに対する結合能を有するポリペプチド全てを包含する。

【0023】
NKp44の免疫グロブリンドメインの例としては、例えば、以下の(i)~(iv)のいずれかに記載のポリペプチド等が挙げられるが、これらに限定されない。
(i)配列番号4のN末端から22~130番目のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii)(i)のアミノ酸配列と比較して、1~30個、1~20個、1~10個、又は1~5個、又は1~3個程度の変異を有し、かつNKp44リガンドに対する結合能を有するポリペプチド(前記変異は欠失、置換、挿入及び付加のいずれであってもよく、これらの組合せであってもよい);
(iii)(i)のアミノ酸配列と、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上の配列同一性(相同性)を有するアミノ酸配列を含み、かつNKp44リガンドに対する結合能を有するポリペプチド;並びに
(iv)(i)のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつNKp44リガンドに対する結合能を有するポリペプチド(前記複数個とは、2~30個であり、好ましくは2~20個であり、より好ましくは2~10個であり、さらに好ましくは2~5個である)。

【0024】
<膜貫通ドメイン>
本実施形態のCARは、少なくとも1つの膜貫通ドメインを有する。本実施形態のCARに使用可能な膜貫通ドメインは、細胞膜を貫通する機能を有するポリペプチドであれば特に限定されない。膜貫通ドメインは、天然タンパク質に由来するものであってもよく、人為的に設計したものであってもよい。天然タンパク質に由来する膜貫通ドメインは、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質から取得することができる。本実施形態のCARにおいて、膜貫通ドメインは、NKp44免疫グロブリンドメインに対するリガンドの結合に対応して、活性化シグナル伝達ドメインに活性化シグナルを伝達し得る。

【0025】
本実施形態のCARに使用可能な膜貫通ドメインが由来するタンパク質としては、例えば、T細胞受容体のα鎖及びβ鎖、CD3ζ、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8α、CD8β、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154、GITR、NKp30、NKp44、NKp46等を挙げることができる。また、好ましい例としては、CD28、CD8α、NKp44等を挙げることができ、より好ましい例としては、CD28を挙げることができる。本実施形態のCARが含む膜貫通ドメインは、これらのタンパク質の膜貫通ドメインを含むものであることができ、これらのタンパク質の膜貫通ドメインからなるものであることができる。

【0026】
CD28、CD8α及びNKp44の膜貫通ドメインのアミノ酸配列の例としては、それぞれ配列番号8に記載のアミノ酸配列のN末端から153~179番目のアミノ酸配列、配列番号6に記載のアミノ酸配列のN末端から182~206番目のアミノ酸配列、及び配列番号4に記載のアミノ酸配列のN末端から191~213番目のアミノ酸配列を挙げることができるが、これらに限定されない。

【0027】
また、膜貫通ドメインは、上記のような天然タンパク質由来の膜貫通ドメインの変異体であってもよい。天然タンパク質由来の膜貫通ドメインの変異体の例としては、例えば、以下の(i)~(iii)のいずれかに記載のポリペプチド等が挙げられる。
(i)天然タンパク質由来の膜貫通ドメインのアミノ酸配列と比較して、1~30個、1~20個、1~10個、又は1~5個、又は1~3個程度の変異を有し、かつ膜貫通能を有するポリペプチド(前記変異は欠失、置換、挿入及び付加のいずれであってもよく、これらの組合せであってもよい);
(ii)天然タンパク質由来の膜貫通ドメインのアミノ酸配列と、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上の配列同一性(相同性)を有するアミノ酸配列を含み、かつ膜貫通能を有するポリペプチド;並びに
(iii)天然タンパク質由来の膜貫通ドメインのアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ膜貫通能を有するポリペプチド(前記複数個とは、2~30個であり、好ましくは2~20個であり、より好ましくは2~10個であり、さらに好ましくは2~5個である)。

【0028】
<活性化シグナル伝達ドメイン>
本実施形態のCARは、少なくとも1つの活性化シグナル伝達ドメインを含む。T細胞は、TCRにMHC・ペプチド複合体が結合すると、TCR・CD3複合体を介して細胞内にシグナルが伝達され、様々なリン酸化シグナルが惹起される(一次シグナル伝達)。本明細書において、「活性化シグナル伝達ドメイン」とは、上記のようなTCRに対する抗原ペプチドの結合によって誘導される一次シグナル伝達に関与するタンパク質の、当該シグナル伝達に関与するドメインを意味する。

【0029】
本実施形態のCARに使用可能な活性化シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達に関与するタンパク質の活性化シグナル伝達ドメインであれば、特に限定されない。一次シグナル伝達には、免疫受容体活性化チロシンモチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif:ITAM)が関与することが知られている。そのため、ITAMを有するタンパク質は、活性化シグナル伝達ドメインが由来するタンパク質の好適な例である。ITAMを有するタンパク質の例としては、例えば、CD3ζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66d等を挙げることができる。これらのタンパク質のITAMを含む活性化シグナル伝達ドメインは、本実施形態のCARに使用する活性化シグナル伝達ドメインの好ましい例である。本実施形態のCARが含む活性化シグナル伝達ドメインは、これらのタンパク質の活性化シグナル伝達ドメインを含むものであることができ、これらのタンパク質の活性化シグナル伝達ドメインからなるものであることができる。

【0030】
上記の中でも、より好ましい例としては、CD3ζのITAMを含む活性化シグナル伝達ドメインが挙げられる。CD3ζの活性化シグナルドメインのアミノ酸配列の例としては、配列番号12に記載のアミノ酸配列のN末端から52~163番目のアミノ酸配列を挙げることができるが、これに限定されない。

【0031】
また、活性化シグナル伝達ドメインは、上記のような天然タンパク質由来の活性化シグナル伝達ドメインの変異体であってもよい。天然タンパク質由来の活性化シグナル伝達ドメインの変異体の例としては、例えば、以下の(i)~(iii)のいずれかに記載のポリペプチド等が挙げられる。
(i)天然タンパク質由来の活性化シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列と比較して、1~30個、1~20個、1~10個、又は1~5個、又は1~3個程度の変異を有し、かつ一次シグナル伝達能を有するポリペプチド(前記変異は欠失、置換、挿入及び付加のいずれであってもよく、これらの組合せであってもよい);
(ii)天然タンパク質由来の活性化シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列と、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上の配列同一性(相同性)を有するアミノ酸配列を含み、かつ一次シグナル伝達能を有するポリペプチド;並びに
(iii)天然タンパク質由来の活性化シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ一次シグナル伝達能を有するポリペプチド(前記複数個とは、2~30個であり、好ましくは2~20個であり、より好ましくは2~10個であり、さらに好ましくは2~5個である)。

【0032】
また、活性化シグナル伝達ドメインは、天然ITAM、又は天然ITAMから改変された改変ITAMを1つ又は複数含むように、人為的に設計されたものであってもよい。一次シグナル伝達能を有する限りITAMの数は特に限定されないが、例えば、1~5個程度、又は1~3個程度とすることができる。

【0033】
また、本実施形態のCARが含む活性化シグナル伝達ドメインの数は、1つに限定されず、複数の活性化シグナル伝達ドメインを含むこともできる。この場合、CARが含む複数の活性化シグナル伝達ドメインは、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。例えば、CD3ζの活性化シグナル伝達ドメインに加えて、他のタンパク質由来の活性化シグナル伝達ドメインを含むようにしてもよい。本実施形態のCARは、活性化シグナル伝達ドメインを、例えば、1~5個、1~3個、又は1個若しくは2個含むことができる。

【0034】
<その他のドメイン>
本実施形態のCARは、NKp44の免疫グロブリンドメイン、膜貫通ドメイン、及び活性化シグナル伝達ドメインに加えて、他のドメインを含むこともできる。他のドメインの例としては、細胞外ヒンジドメイン、共刺激伝達ドメイン、シグナルペプチド等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0035】
(細胞外ヒンジドメイン)
本実施形態のCARは、好ましい態様において、細胞外ヒンジドメインを含み得る。本明細書において、「細胞外ヒンジドメイン」とは、細胞外のリガンド結合ドメインと膜貫通ドメインとを連結するドメインを意味する。細胞外ヒンジドメインは、細胞外ドメインと膜貫通ドメインを連結できるものであれば特に限定されない。天然タンパク質に由来するものであってもよく、人為的に設計されたものであってもよい。細胞外ヒンジドメインは、例えば、10~300個程度のアミノ酸、好ましくは20~100個程度のアミノ酸で構成することができる。細胞外ヒンジドメインは、NKp44の免疫グロブリンドメインのリガンド結合能を妨げず、かつ活性化シグナル伝達ドメインを介したシグナル伝達を妨げないものであることが好ましい。

【0036】
本実施形態のCARに使用可能な細胞外ヒンジドメインとしては、例えば、CD8α、CD8β、CD28、CD4、NKp30、NKp44、NKp46の細胞外ヒンジドメイン等が挙げられる。また、免疫グロブリン(例えば、IgG4等)のヒンジ領域を使用してもよい。好ましい例としては、CD8α、CD28及びNKp44の細胞外ヒンジドメインが挙げることができ、より好ましい例としてはNKp44の細胞外ヒンジドメインを挙げることができる。

【0037】
CD8α、CD28及びNKp44の細胞外ヒンジドメインのアミノ酸配列の例としては、それぞれ配列番号6に記載のアミノ酸配列のN末端から128~182番目のアミノ酸配列、配列番号8に記載のアミノ酸配列のN末端から153~179番目のアミノ酸配列、及び配列番号4に記載のアミノ酸配列のN末端から131~190番目のアミノ酸配列を挙げることができるが、これらに限定されない。

【0038】
また、細胞外ヒンジドメインは、上記のような天然タンパク質由来の細胞外ヒンジドメインの変異体であってもよい。天然タンパク質由来の細胞外ヒンジドメインの変異体の例としては、例えば、以下の(i)~(iii)のいずれかに記載のポリペプチド等が挙げられる。
(i)天然タンパク質由来の細胞外ヒンジドメインのアミノ酸配列と比較して、1~20個、1~10個、又は1~5個、又は1~3個程度の変異を有し、かつNKp44免疫グロブリンドメインと膜貫通ドメインとを連結可能なポリペプチド(前記変異は欠失、置換、挿入及び付加のいずれであってもよく、これらの組合せであってもよい);
(ii)天然タンパク質由来の細胞外ヒンジドメインのアミノ酸配列と、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上の配列同一性(相同性)を有するアミノ酸配列を含み、かつNKp44免疫グロブリンドメインと膜貫通ドメインとを連結可能なポリペプチド;並びに
(iii)天然タンパク質由来の細胞外ヒンジドメインのアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつNKp44免疫グロブリンドメインと膜貫通ドメインとを連結可能なポリペプチド(前記複数個とは、2~30個であり、好ましくは2~20個であり、より好ましくは2~10個であり、さらに好ましくは2~5個である)。

【0039】
(共刺激シグナル伝達ドメイン)
本実施形態のCARは、一態様において、共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。T細胞上に発現する共刺激分子は、抗原提示細胞上に発現する各共刺激分子に特異的なリガンドとの結合により、細胞内に共刺激シグナルを伝達し、T細胞の活性化を補助することが知られている(二次シグナル伝達)。本明細書において、「共刺激シグナル伝達ドメイン」とは、上記のような共刺激分子の共刺激シグナル伝達に関与する細胞内ドメインを意味する。

【0040】
本実施形態のCARに使用可能な共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の共刺激シグナル伝達に関与する細胞内ドメインであれば、特に限定されない。共刺激分子の例としては、例えば、CD2、CD4、CD5、CD8α、CD8β、CD28、OXO40(CD134)、4-1BB(CD137)、ICOS,CD154等を挙げることができる。本実施形態のCARは、これらの共刺激分子の共刺激シグナル伝達ドメインを含むことができ、これらの共刺激分子の共刺激シグナル伝達ドメインからなるものであることができる。本実施形態のCARが含む共刺激シグナル伝達ドメインの好ましい例としては、4-1BB、CD28、及びOXO40の共御刺激シグナル伝達ドメインを挙げることができ、より好ましい例としては4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインを挙げることができる。4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列の例としては、配列番号10に記載のアミノ酸配列のN末端から214~255番目のアミノ酸配列を挙げることができるが、これに限定されない。

【0041】
また、共刺激シグナル伝達ドメインは、上記のような天然タンパク質由来の共刺激シグナル伝達ドメインの変異体であってもよい。天然タンパク質由来の共刺激シグナル伝達ドメインの変異体の例としては、例えば、以下の(i)~(iii)のいずれかに記載のポリペプチド等が挙げられる。
(i)天然タンパク質由来の共刺激シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列と比較して、1~30個、1~20個、1~10個、又は1~5個、又は1~3個程度の変異を有し、かつ共刺激シグナル伝達能を有するポリペプチド(前記変異は欠失、置換、挿入及び付加のいずれであってもよく、これらの組合せであってもよい);
(ii)天然タンパク質由来の共刺激シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列と、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上の配列同一性(相同性)を有するアミノ酸配列を含み、かつ共刺激シグナル伝達能を有するポリペプチド;並びに
(iii)天然タンパク質由来の共刺激シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ共刺激シグナル伝達能を有するポリペプチド(前記複数個とは、2~30個であり、好ましくは2~20個であり、より好ましくは2~10個であり、さらに好ましくは2~5個である)。

【0042】
本実施形態のCARが含み得る共刺激シグナル伝達ドメインの数は、1つに限定されず、複数であってもよい。本実施形態のCARは、共刺激シグナル伝達ドメインを、例えば、1~5個、1~3個、又は1個若しくは2個含むことができる。本実施形態のCARが複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む場合、複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。例えば、4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインに加えて、他の共刺激分子の共刺激シグナル伝達ドメインを含むようにしてもよい。

【0043】
(シグナルペプチド)
本実施形態のCARは、一態様において、シグナルペプチドを含み得る。シグナルペプチドは、膜タンパク質や分泌タンパク質の局在化を指示するペプチドである。シグナルペプチドは、一般的に、膜タンパク質のN末端に存在する5~60個程度のアミノ酸からなるペプチドであり、局在化の完了した成熟タンパク質では除去されている。

【0044】
本実施形態のCARで使用可能なシグナルペプチドは、細胞膜への局在化を指示するシグナルペプチドであることが好ましく、膜タンパク質のシグナルペプチドであることが好ましい。シグナルペプチドの例としては、T細胞受容体のα鎖及びβ鎖、CD3ζ、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8α、CD8β、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154、GITR、NKp30、NKp44、NKp46等のシグナルペプチドを挙げることができる。好ましい例としては、NKp44のシグナルペプチドを挙げることができる。NKp44のシグナルペプチドのアミノ酸配列の例としては、配列番号4に記載のアミノ酸配列のN末端から1~21番目のアミノ酸配列を挙げることができるが、これに限定されない。

【0045】
<CARの全体構造>
本実施形態のCARにおいて、NKp44免疫グロブリンドメイン、膜貫通ドメイン、及び活性化シグナル伝達ドメインは、前記の順番でN末端側から配置される。これらの各ドメインは、互いに直接連結されていてもよく、他のドメインやスペーサー配列等を介して連結されていてもよい。

【0046】
本実施形態のCARが細胞外ヒンジドメインを含む場合、細胞外ヒンジドメインは、NKp44の免疫グロブリンドメインと膜貫通ドメインとの間に配置される。また、本実施形態のCARがシグナルペプチドを含む場合、シグナルペプチドは、CARのN末端に配置される。

【0047】
また、本実施形態のCARが共刺激シグナル伝達ドメインを含む場合、共刺激シグナル伝達ドメインは、膜貫通ドメインと活性化シグナル伝達ドメインとの間か、活性化シグナル伝達ドメインのC末端側に配置される。なお、本実施形態のCARが活性化シグナルドメイン及び共刺激シグナル伝達ドメインのいずれか又は両方を複数個含む場合、それらのドメインは、膜貫通ドメインのC末端側において、任意の順番で配置することができる。好ましくは、共刺激シグナル伝達ドメインは、膜貫通ドメインと活性化シグナル伝達ドメインとの間に配置される。

【0048】
本実施形態のCARの好ましい例としては、例えば、以下の(a)~(j)のいずれかに記載の構造が挙げられるが、これらに限定されない。なお、(a)~(j)における各ドメインの記載順序は、各ドメインのN末端側からの配置順序に対応する。
(a)NKp44の免疫グロブリンドメインと、NKp44の細胞外ヒンジドメインと、NKp44の膜貫通ドメインと、NKp44の活性化シグナル伝達ドメインと、CD3ζの活性化シグナル伝達ドメインと、を含むCAR。
(b)NKp44の免疫グロブリンドメインと、NKp44の細胞外ヒンジドメインと、NKp44の膜貫通ドメインと、CD3ζの活性化シグナル伝達ドメインと、を含むCAR。
(c)NKp44の免疫グロブリンドメインと、NKp44の細胞外ヒンジドメインと、CD8αの膜貫通ドメインと、CD3ζの活性化シグナル伝達ドメインと、を含むCAR。
(d)NKp44の免疫グロブリンドメインと、CD8αの細胞外ヒンジドメインと、CD8αの膜貫通ドメインと、CD3ζの活性化シグナル伝達ドメインと、を含むCAR。
(e)NKp44の免疫グロブリンドメインと、NKp44の細胞外ヒンジドメインと、CD28の膜貫通ドメインと、CD3ζの活性化シグナル伝達ドメインと、を含むCAR。
(f)NKp44の免疫グロブリンドメインと、CD28の細胞外ヒンジドメインと、CD28の膜貫通ドメインと、CD3ζの活性化シグナル伝達ドメインと、を含むCAR。
(g)NKp44の免疫グロブリンドメインと、NKp44の細胞外ヒンジドメインと、CD8αの膜貫通ドメインと、4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζの活性化シグナル伝達ドメインと、を含むCAR。
(h)NKp44の免疫グロブリンドメインと、CD8αの細胞外ヒンジドメインと、CD8αの膜貫通ドメインと、4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζの活性化シグナル伝達ドメインと、を含むCAR。
(i)NKp44の免疫グロブリンドメインと、NKp44の細胞外ヒンジドメインと、CD28の膜貫通ドメインと、4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζの活性化シグナル伝達ドメインと、を含むCAR。
(j)NKp44の免疫グロブリンドメインと、CD28の細胞外ヒンジドメインと、CD28の膜貫通ドメインと、4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζの活性化シグナル伝達ドメインと、を含むCAR。

【0049】
上記(a)~(j)の中でも、好ましいものとしては(c)~(j)を挙げることができ、より好ましいものとしては(e)を挙げることができる。(e)のCARのアミノ酸配列の例としては、配列番号2に記載のアミノ酸配列を挙げることができる。配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むCARは、本実施形態のCARの好適な例である。また、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるCARは、本実施形態のCARのより好適な例である。なお、配列番号2に記載のアミノ酸配列において、N末端から1~21番目のアミノ酸配列はシグナルペプチドであり、細胞膜への局在化の過程で除去される。したがって、本実施形態のCARは、配列番号2に記載のアミノ酸配列のN末端から22~329番目のアミノ酸配列を含むポリペプチドであることもでき、配列番号2に記載のアミノ酸配列のN末端から22~329番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドであることもできる。

【0050】
[キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド]
1実施形態において、本発明は、上記実施形態のCARをコードするポリヌクレオチドを提供する。

【0051】
本実施形態のポリヌクレオチドは、NKp44免疫グロブリンドメインをコードする塩基配列と、膜貫通ドメインをコードする塩基配列と、活性化シグナル伝達ドメインをコードする塩基配列とを含む。また、これらの塩基配列に加えて、任意に、細胞外ヒンジドメインをコードする塩基配列、共刺激シグナル伝達ドメインをコードする塩基配列、及びシグナルペプチドをコードする塩基配列等を含むことができる。

【0052】
上記各ドメインの由来するタンパク質は、上記[キメラ抗原受容体]の項で記載したとおりであり、これらのドメインのアミノ酸配列は、公知のものを特に制限なく利用することができる。また、上記各ドメインのアミノ酸配列は、GenBank、DDBJ等の配列データベースから取得することもできる。そして、上記各ドメインをコードする塩基配列も、公知のものを利用することができ、GenBank、DDBJ等の配列データベースに登録されているものを利用することができる。

【0053】
また、上記各ドメインをコードする塩基配列は、公知のものに限定されず、上記各ドメインをコードする塩基配列であれば、使用可能である。遺伝子コードの縮重により、1つのアミノ酸に対応するコドンは複数存在する。したがって、同一のアミノ酸配列をコードする塩基配列は多数存在する。本実施形態のポリヌクレオチドの塩基配列は、上記実施形態のCARをコードする限り、遺伝子コードの縮重によって生じる複数の塩基配列のいずれであってもよい。

【0054】
本実施形態のポリヌクレオチドにおいて、NKp44の免疫グロブリンドメインをコードする塩基配列としては、配列番号4に記載のアミノ酸配列のN末端から22~130番目のアミノ酸配列をコードする塩基配列を例示することができる。
また、膜貫通ドメインとして、NKp44、CD8α、及びCD28のいずれかの膜貫通ドメインを用いる場合、これらのドメインをコードする塩基配列としては、それぞれ、配列番号4に記載のアミノ酸配列のN末端から191~213番目のアミノ酸配列をコードする塩基配列、配列番号6に記載のアミノ酸配列のN末端から181~206番目のアミノ酸配列をコードする塩基配列、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列のN末端から153~179番目のアミノ酸配列をコードする塩基配列を例示することができる。
また、活性化シグナル伝達ドメインとしてCD3ζの活性化シグナル伝達ドメインを用いる場合、当該ドメインをコードする塩基配列としては、配列番号12に記載のアミノ酸配列のN末端から52~163番目のアミノ酸配列をコードする塩基配列を例示することができる。

【0055】
また、本実施形態のポリヌクレオチドが、細胞外ヒンジドメインをコードする塩基配列を含み、当該ドメインにNKp44、CD8α、及びCD28のいずれかの細胞外ヒンジドメインを用いる場合、これらのドメインをコードする塩基配列としては、それぞれ、配列番号4に記載のアミノ酸配列の131~190番目のアミノ酸配列をコードする塩基配列、配列番号6に記載のアミノ酸配列のN末端から128~182番目のアミノ酸配列をコードする塩基配列、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列のN末端から113~152番目のアミノ酸配列をコードする塩基配列を例示することができる。
また、本実施形態のポリヌクレオチドが、共刺激シグナル伝達ドメインを含み、当該ドメインに4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインを用いる場合、当該ドメインをコードする塩基配列としては、配列番号10に記載のアミノ酸配列のN末端から214~255番目のアミノ酸配列をコードする塩基配列を例示することができる。
また、本実施形態のポリヌクレオチドが、シグナルペプチドを含み、当該シグナルペプチドにNKp44のシグナルペプチドを用いる場合、当該シグナルペプチドをコードする塩基配列としては、配列番号4に記載のアミノ酸配列のN末端から1~21番目のアミノ酸配列をコードする塩基配列を例示することができる。

【0056】
なお、上記各ドメインをコードするポリヌクレオチドのうち、NKp44の免疫グロブリンドメインをコードするポリヌクレオチドは、NK細胞から抽出したDNAをテンプレートとして、PCR法等を用いて増幅することにより得ることができる。あるいは、NK細胞から抽出したRNAをテンプレートとして逆転写反応によりcDNAを合成し、合成したcDNAをテンプレートとして、PCR法等を用いて増幅することにより得ることもできる。

【0057】
また、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、又は活性化シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドは、T細胞から抽出したDNAをテンプレートとして、PCR法等を用いて増幅することにより得ることができる。あるいは、T細胞から抽出したRNAをテンプレートとして逆転写反応によりcDNAを合成し、合成したcDNAをテンプレートとして、PCR法等を用いて増幅することにより得ることもできる。

【0058】
細胞外ヒンジドメインをコードするポリヌクレオチド、又は共刺激シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドもまた、T細胞から抽出したDNAをテンプレートとして、PCR法等を用いて増幅することにより得ることができる。あるいは、T細胞から抽出したRNAをテンプレートとして逆転写反応によりcDNAを合成し、合成したcDNAをテンプレートとして、PCR法等を用いて増幅することにより得ることもできる。

【0059】
シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた、NK細胞又はT細胞等から抽出したDNA又はRNAから得ることができる。また、シグナルペプチドに長さが短いものを使用する場合には、ホスホロアミダイト法等の公知の核酸合成法により合成してもよい。

【0060】
上記各ドメインをコードするポリヌクレオチドを増幅するためのプライマーは、各ドメインの公知の遺伝子配列から設計することができる。プライマーの例としては、例えば、本明細書の実施例に記載のもの等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0061】
本実施形態のポリヌクレオチドに、上記以外のドメインをコードする塩基配列を含ませる場合には、目的のドメインを発現する細胞からDNA又はRNAを抽出し、適切なプライマーを設計してPCR法等を用いて増幅することにより、目的のドメインをコードするポリヌクレオチドを取得すればよい。上記のようにして得られた各ドメインをコードするポリヌクレオチドは、翻訳後の各ドメインの機能が失われない範囲内で、置換、欠失、付加等の改変を行ってもよい。

【0062】
本実施形態のポリヌクレオチドは、上記のようにして得られた各ドメインをコードするポリヌクレオチドを、直接又はスペーサー介して連結することにより、得ることができる。なお、各ドメインをコードするポリヌクレオチドは、スペーサー等の介在配列を介さず、直接連結されていることが好ましい。各ドメインをコードするポリヌクレオチドの連結は、例えば、オーバーラップ伸長PCR法等の公知の方法を用いて行うことができる。

【0063】
本実施形態のポリヌクレオチドの好適な例としては、配列番号1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチドを挙げることができ、より好ましくは配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを挙げることができる。

【0064】
本実施形態のポリヌクレオチドは、上記実施形態のCARをコードする塩基配列の他に、プロモーター、エンハンサー、ポリA付加シグナル等の制御配列や、他のタンパク質をコードする塩基配列等を含んでいてもよい。

【0065】
[キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含むベクター]
1実施形態において、本発明は、上記実施形態のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。

【0066】
本実施形態において、ベクターの種類は特に限定されず、一般的に使用される発現ベクター等を使用することができる。ベクターの例としては、例えば、ウイルスベクター、プラスミドベクター、エピソーマルベクター、人工染色体ベクター等を挙げることができる。

【0067】
ウイルスベクターとしては、例えば、センダイウイルスベクター、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)ベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ポリオウイルスベクター、シルビスウイルスベクター、ラブドウイルスベクター、パラミクソウイルスベクター、オルソミクソウイルスベクター等が挙げられる。

【0068】
プラスミドベクターとしては、例えば、pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo等の、動物細胞発現用プラスミドベクターが挙げられる。

【0069】
エピソーマルベクターは、染色体外で自律複製可能なベクターである。エピソーマルベクターを用いる具体的手段は、公知である(Yu et al., Science, 324, 797-801 (2009))。エピソーマルベクターとしては、例えば、EBV、SV40等に由来する自律複製に必要な配列をベクター要素として含むベクターが挙げられる。自律複製に必要なベクター要素としては、具体的には、複製開始点と、複製開始点に結合して複製を制御するタンパク質をコードする遺伝子であり、例えば、EBVにあっては複製開始点oriPとEBNA-1遺伝子、SV40にあっては複製開始点oriとSV40LT遺伝子が挙げられる。

【0070】
人工染色体ベクターとしては、例えば、YAC(Yeast artificial chromosome)ベクター、BAC(Bacterial artificial chromosome)ベクター、PAC(P1-derived artificial chromosome)ベクター等が挙げられる。

【0071】
本実施形態のベクターは、上記実施形態のCARをコードする塩基配列の他に、プロモーター、エンハンサー、ポリA付加シグナル等の制御配列、複製開始点、複製開始点に結合して複製を制御するタンパク質をコードする塩基配列、他のタンパク質をコードする塩基配列などを含んでいてもよい。

【0072】
上記実施形態のCARをコードする塩基配列は、適切なプロモーターの制御下で発現されるように、ベクター内に配置されることが好ましい。プロモーターとしては、例えば、SRαプロモーター、SV40初期プロモーター、レトロウイルスのLTR、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーター、EF1αプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター等が挙げられる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。一例としては、CAGプロモーター(サイトメガロウイルスエンハンサーとニワトリβ-アクチンプロモーターとβ-グロビン遺伝子のポリAシグナル部位を含む)等を挙げることができる。

【0073】
また、他のタンパク質をコードする塩基配列としては、例えば、蛍光タンパク質遺伝子、レポーター遺伝子、薬剤耐性遺伝子等のマーカー遺伝子、サイトカイン等のT細胞活性化に関与する分子をコードする遺伝子等を挙げることができる。また、他のタンパク質をコードする塩基配列は、CAR発現細胞を投与したがん患者等の体内で、投与したCAR発現細胞のアポトーシスを適宜誘導するために、チミジンキナーゼ等の自殺遺伝子をコードする塩基配列であってもよい。

【0074】
本実施形態のベクターは、プロモーター等の適切な塩基配列を有するベクターに、上記実施形態のCARをコードするポリヌクレオチドを挿入することにより、得ることができる。CARをコードするポリヌクレオチドは、プロモーター配列の3’末端側に挿入されることが好ましい。本実施形態のベクターの作成には、市販の発現ベクター等を用いてもよい。

【0075】
[キメラ抗原受容体を発現する細胞]
1実施形態において、本発明は、上記実施形態のCARを発現する細胞を提供する。

【0076】
本実施形態の細胞は、上記実施形態のポリヌクレオチド又はベクターを、細胞に導入することにより得ることができる。したがって、一態様において、本発明は、上記実施形態のポリヌクレオチド又はベクターを細胞に導入する工程を含む、CARを発現する細胞の製造方法を提供する。

【0077】
本実施形態において、細胞は、哺乳動物由来の細胞であることが好ましく、例えば、ヒト由来の細胞、又はマウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ブタ、サル等の非ヒト哺乳動物由来の細胞を用いることができる。細胞の種類は、特に限定されず、血液、骨髄液等の体液や、脾臓、胸腺、リンパ節などの組織、腫瘍やがん性腹水等から採取された細胞等を使用することができる。好ましい例としては、免疫細胞を挙げることができ、末梢血から分離された末梢血単核球等を好適に用いることができる。末梢血単核球に含まれる細胞の中でも、特に好ましい細胞としては、T細胞及びNK細胞並びにこれらの前駆細胞を挙げることができる。T細胞の種類は、特に限定されず、αβT細胞、γδT細胞、CD8陽性T細胞、CD4陽性T細胞、腫瘍浸潤T細胞、ナチュラルキラーT細胞等のいずれのT細胞であってもよい。

【0078】
上記実施形態のポリヌクレオチド又はベクターを細胞に導入する方法としては、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法、エレクトロポーレーション法、パーティクルガン法等を挙げることができる。

【0079】
また、例えば上記実施形態のベクターがレトロウイルスベクターである場合、ベクターが有しているLTR配列及びパッケージングシグナル配列に基づいて適切なパッケージング細胞を選択し、これを使用してレトロウイルス粒子を調製してもよい。パッケージング細胞としては、例えば、PG13、PA317、GP+E-86、GP+envAm-12、Psi-Crip等を例示することができる。また、トランスフェクション効率の高い293細胞や293T細胞をパッケージング細胞として用いることもできる。各種レトロウイルスベクター及び当該ベクターのパッケージングに使用可能なパッケージング細胞は、広く市販されているためこれらの市販品を用いてもよい。

【0080】
上記実施形態のポリヌクレオチド又はベクターを細胞に導入する際には、導入効率を向上させる機能性物質を用いることもできる。そのような機能性物質の例としては、フィブロネクチン、フィブロネクチンフラグメント等のウイルスベクターに結合する活性を有する物質が挙げられる。例えば、レトロウイルスベクターを導入する際には、ヘパリン結合部位を有するフィブロネクチンフラグメントであるレトロネクチン(登録商標)を好適に用いることができる。これらの機能性物質は適切な固相(例えば、プレート、シャーレ、コニカルチューブ、マイクロチューブ等)又は担体(マイクロビーズ等)に固定化された状態で使用することができる。

【0081】
上記実施形態のポリヌクレオチド又はベクターを細胞に導入した後、当該細胞のCARの発現は、フローサイトメトリー、RT-PCR、ノーザンブロッティング、ウエスタンブロッティング、ELISA、蛍光免疫染色等の公知の方法により確認することができる。

【0082】
本実施形態の細胞は、上記実施形態のCARを細胞膜上に発現している。前記CARのNKp44免疫グロブリンドメインにNKp44リガンドが結合すると、本実施形態の細胞が活性化されて、細胞傷害性顆粒の放出やサイトカイン産生が起こる。これら細胞傷害性顆粒やサイトカインにより、NKp44リガンド発現細胞が破壊される。

【0083】
[キメラ抗原受容体発現細胞を含む医薬組成物]
1実施形態において、本発明は、上記実施形態の細胞を含む、医薬組成物を提供する。

【0084】
上記実施形態の細胞は、NKp44リガンド発現細胞に対して、特異的な細胞傷害性を示す。そのため、上記実施形態の細胞は、NKp44リガンド発現細胞が関与する疾患を治療又は予防するために使用することができる。NKp44リガンドは、造血器腫瘍を含む幅広い腫瘍細胞に発現していることから、上記実施形態の細胞を含む医薬組成物は、腫瘍を治療又は予防するための医薬組成物として提供することができる。より具体的には、本実施形態の医薬組成物は、NKp44リガンドを発現する腫瘍を治療又は予防するための医薬組成物として好適である。例えば、肺がん、悪性黒色腫、子宮頸がん、大腸がん、B細胞性リンパ腫、T細胞性白血病、すい臓がん、乳がん、神経芽細胞腫、肝細胞がんを含む肝臓がん、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病等は、NKp44リガンドを発現することが報告されている(Byrd A, et al. Plos One 2007, 2(12): e1339; Baychelier F, et al. Blood 2013, 122(17): 2935-2942)。したがって、本実施形態の医薬組成物は、これらの腫瘍を治療又は予防するために好適に用いることができる。なお、本実施形態の医薬組成物は、前述した腫瘍に限定されず、NKp44リガンドを発現する腫瘍であれば、適用可能である。腫瘍がNKp44リガンドを発現しているか否かは、抗NKp44リガンド抗体や、NKp44のリガンド結合領域と免疫グロブリン定常領域との融合タンパク質等を使用して、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング、ELISA、蛍光免疫染色等の公知の方法を行うことにより確認することができる。

【0085】
本実施形態の医薬組成物は、上記実施形態の細胞に加えて、薬学的に許容される担体等の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、薬学的に許容される担体のほか、サイトカイン等のT細胞活性化因子、免疫賦活剤、免疫チェックポイント阻害剤、他のCARを発現する細胞、抗炎症剤等を挙げることができるが、これらに限定されない。薬学的に許容される担体としては、細胞培養培地、生理食塩水、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液を挙げることができる。

【0086】
本実施形態の医薬組成物は、好ましくは、注射又は輸注により、患者に投与することができる。投与経路としては、静脈内投与が好ましいが、これに限定されず、腫瘍内への注入等により投与してもよい。

【0087】
本実施形態の医薬組成物は、上記実施形態の細胞を治療的有効量含むことができる。投与量及び投与間隔は、投与対象の年齢、性別及び体重等、疾患の種類、進行度及び症状等、並びに投与方法等により、適宜選択することができる。投与量としては、治療的有効量を投与することができ、例えば、1回の投与において、投与細胞の個数でとして、1x10~1x1010個/kg(体重)、好ましくは1x10~1x10個/kg(体重)、より好ましくは1x10~1x10個/kg(体重)とすることができる。

【0088】
本実施形態の医薬組成物の投与間隔としては、例えば、1週毎、10~30日毎、1月毎、3~6月毎、1年毎等とすることができる。また、上記実施形態の細胞は、投与対象の体内で自律的に増殖できるため、1回きりの投与とすることもできる。また、投与後に体内のCAR発現細胞の数をモニタリングし、その結果に応じて投与時期を決定するようにしてもよい。

【0089】
また、他の態様において、本発明は、腫瘍を治療又は予防するための医薬組成物の製造における、上記実施形態の細胞の使用を提供する。
また、他の態様において、本発明は、上記実施形態の細胞を対象に投与することを含む、腫瘍を治療又は予防する方法を提供する。
また、他の態様において、本発明は、腫瘍を治療又は予防するための上記実施形態の細胞を提供する。
【実施例】
【0090】
以下、実験例により本発明を説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【実施例】
【0091】
[実験例1]NKp44-based CAR遺伝子の作成
(NKp44遺伝子のクローニング)
実施例で作成した全てのCARにおいて、抗原認識部位には、NKp44のリガンド結合部位である免疫グロブリンドメインを使用した。なお、以下では、抗原認識部位にNKp44のリガンド結合部位を用いたCARを、「NKp44-based CAR」という。NKp44の免疫グロブリンドメインのクローニングは以下の手順で行った。
健常ドナーから同意のもとで末梢血を10mL採取し、Ficoll密度勾配遠心法にて単核球を分離した。分離した単核球をフィーダー細胞(K562-mb15-41BBL)と1週間共培養し、ナチュラルキラー(natural killer:NK)細胞を増幅した。増幅したNK細胞からNucleoSpinTM RNA(TaKaRa)を用いてRNAを抽出した。抽出したRNAから、SuperScript(登録商標) III First-Strand Synthesis System for RT-PCR(Invitrogen)を用いて、逆転写反応により相補的DNA(cDNA)を合成した。このcDNAをテンプレートとして用いて、PrimeSTAR(登録商標) HS DNA Polymerase(TaKaRa)を酵素に用いたポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)法にて、野生型NKp44遺伝子アイソフォーム1(NCBI Reference Sequence:タンパク質:NP_004819.2(配列番号4),mRNA:NM_004828.3(配列番号3))をクローニングした。なお、NKp44には、3種のアイソフォームが知られているが、他のアイソフォームのIDは以下の通りである;アイソフォーム2:NP_001186438.1,NM_001199509.1;アイソフォーム3:NP_001186439.1,NM_001199510.1。
【実施例】
【0092】
(抗原認識部位以外のCARの各要素配列のクローニング)
CARを構成する要素には、抗原認識ドメインの他に、細胞外ヒンジドメイン(EH)、膜貫通ドメイン(TM)、共刺激シグナル伝達ドメイン(CS)、及び活性化シグナル伝達ドメイン(AS)がある。細胞外ヒンジドメイン及び膜貫通ドメインには、CD8α及びCD28由来の要素を使用し、共刺激シグナル伝達ドメインには4-1BB由来の要素を使用した。活性化シグナル伝達ドメインにはCD3ζ由来の要素を使用した。これらの配列のクローニングは以下の手順で行った。
フィトヘムアグルチニンで刺激したヒト末梢血T細胞からRNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを得た。得られたcDNAをテンプレートとして、CD8α(NP_001759.3:配列番号6,NM_001768.6:配列番号5)の細胞外ヒンジドメインの配列及び膜貫通ドメインの配列をPCR法でクローニングした。同様に、4-1BB(NP_001552.2:配列番号10,NM_001561.5:配列番号9)、及びCD3ζ(NP_000725.1:配列番号12,NM_000734.3:配列番号11)の活性化シグナル伝達ドメインの配列をクローニングした。CD28(NP_006130.1:配列番号8,NM_006139.3:配列番号9)の細胞外ヒンジドメイン及び膜貫通ドメインの配列は、T細胞性白血病細胞株JurkatからRNAを抽出し、逆転写反応により得たcDNAをテンプレートとして、PCR法でクローニングした。なお、RNAの抽出、逆転写反応、及びPCR法は、上記「(NKp44遺伝子のクローニング)」で記載した方法と同様の方法で行った。
各要素のクローニングに使用したプライマーの配列を表1に示す。また、クローニングした各要素の全長アミノ酸配列における位置を、表2に示す。
【実施例】
【0093】
【表1】
JP0006842688B2_000002t.gif
【実施例】
【0094】
【表2】
JP0006842688B2_000003t.gif
【実施例】
【0095】
(CAR遺伝子コンストラクトの構築)
Splicing by Overlap Extension-PCR法を用いて、CARの各要素間に余分なヌクレオチドを挟むことなく、繋ぎ合わせることにより、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激シグナル伝達ドメイン、及び活性化シグナル伝達ドメインの組合せの異なる複数種類のNKp44-based CAR遺伝子を作成した。各要素の配列は、配列間に余分なヌクレオチドを挟んでいないため、作成されたCAR遺伝子から合成されるCARは、各要素間に余分なアミノ酸は含まない。
【実施例】
【0096】
共刺激シグナル伝達ドメインを有さないCARは第一世代CARと呼ばれ、共刺激シグナル伝達ドメインと活性化シグナル伝達ドメインとを有するものは第二世代CARと呼ばれる。NKp44-based CAR遺伝子として、第一世代CARをまず作成し、次いで第二世代CARを作成した。また、抗原認識ドメインにNKp44の免疫グロブリンドメインを有するが、活性化シグナル伝達ドメインを有さないCAR(truncated CAR)をコントロールとして作成した。作成したCARコンストラクトの模式図を図1に示す。
【実施例】
【0097】
(CAR遺伝子形質転換用ベクターの作成)
作成したNKp44-based CARのDNAは全て、5’側に制限酵素EcoRIの認識部位を、3’側にXhoIの認識部位を有している。EcoRI及びXhoIでNKp44-based CARのDNAを切断した後、Murine stem cell virus(MSCV)レトロウイルスベクターとライゲーションを行った。ライゲーション産物を用いて、コンピテントセルを形質転換した。LB培地上に形成された大腸菌コロニーを採取し、シークエンス解析により配列を確認した上で、採取した大腸菌を大容量のLB液体培地で培養し、高濃度のNKp44-based CARプラスミドを得た。得られたCARプラスミド、ウイルス構造蛋白プラスミド(pEQ-PAM3-E)、及びエンベローププラスミド(RDF)をリポフェクション法により293T細胞に一過性に感染させた(3プラスミドシステム)。2~4日後に上清を採取し、NKp44-based CARのレトロウイルス液を作成した。レトロウイルス液の力価は、ポリブレンの存在下でHela細胞への感染効率を測定することで決定した。
【実施例】
【0098】
[実験例2]ヒトT細胞及びヒトprimary NK細胞へのCAR遺伝子の導入
(ヒトT細胞へのCAR遺伝子の導入)
健常ドナーの末梢血からFicoll密度勾配遠心法にて単核球を分離した。分離した単核球から、RosetteSepTM human T Cell (STEMCELL technology)を用いてCD3陽性細胞を単離した。T細胞活性化・増殖刺激用ビーズ(Dynabeads(登録商標) Human T-Activator CD3/CD28, gibco)及びrIL-2を用いて、T細胞を48~72時間刺激した。一方、レトロネクチン(登録商標)(TaKaRa)を吸着させた15mLラウンドボトムチューブに、力価を測定したNKp44-based CARレトロウイルス液を加え、32℃、1200~1300gで120分間遠心し、レトロウイルスをコニカルチューブに吸着させた(RetroNectin-bound virus感染法)。このようにして作成したレトロネクチンコートチューブに、0.5~2x10個のT細胞、及び10%の最終濃度でウシ血清(FBS)を加えた培地(RPMI1640, SigmaAldrich)を2~3mL加え、37℃、5% COの条件でインキュベーター内にて培養することで、T細胞へのNKp44-based CAR遺伝子の導入を行った。CAR遺伝子導入後、2~3日毎に200U/mLのrIL-2を添加した。
【実施例】
【0099】
(ヒトNK細胞へのCAR遺伝子の導入)
健常ドナーの末梢血から分離した単核球を、rIL-2投与下でフィーダー細胞 K562-mb15-41BBL)と共培養し、NK細胞を増幅した。1週後、EasySep(登録商標) CD3 positive selection cocktail (STEMCELL technology)を用いてT細胞を除去した後に、RetroNectin-bound virus感染法により、NK細胞へCAR遺伝子の導入を行った。遺伝子導入を行ったNK細胞は、10%の最終濃度でFBSを加えたRPMI1640培地で培養し、2~3日毎に100U/mLのrIL-2を添加した。
【実施例】
【0100】
(導入したCAR遺伝子の発現評価)
本試験で使用したMSCVレトロウイルスベクターには、内部リボソーム侵入部位(IRES)配列の下流に緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子が組み込まれている。T細胞へのCAR遺伝子導入の効率は、フローサイトメトリーを用い、GFPの蛍光波長の検出域であるFL1のシグナル強度の測定により決定した(BD FACSCaliburTM, BD sciences)。
CAR遺伝子導入1週後に、T細胞又はNK細胞の細胞表面に存在するNKp44をモノクローナル抗体(NKp44-PE, BECKMAN COULTER)で染色し、フローサイトメトリーで測定することにより、NKp44-based CARの発現量を比較した。フローサイトメトリーでの解析結果を図2に示す。
ヒトT細胞においては、GFP発現を元に算出された遺伝子導入効率は93.5%(n=17、62.4~97.1%)であった。ヒトNK細胞における遺伝子導入効率は42.3%(n=8、24.0~49.2%)であった。NKp44-based CARの発現は、GFP発現量を基準として評価した。T細胞及びNK細胞のいずれにおいても、最も良好な細胞表面のNKp44-based CARの発現を認めた遺伝子コンストラクトは、細胞外ヒンジドメイン(EH)にNKp44、膜貫通ドメイン(TM)にCD28、活性化シグナル伝達ドメイン(AS)にCD3ζを用いたコンストラクトである、「EH(p44)-TM(CD28)-AS(CD3ζ)」だった。そのため、後述する細胞傷害性評価試験では、当該コンストラクトを導入したヒトT細胞を使用した。なお、EH(p44)-TM(CD28)-AS(CD3ζ)の塩基配列及びアミノ酸配列を、それぞれ配列番号1及び配列番号2に示す。
【実施例】
【0101】
[実験例3]CAR導入T細胞の細胞傷害性評価
細胞傷害性評価試験では、NKp44リガンドの表面発現が確認されているT細胞性白血病細胞株(MOLT4,Jurkat)、骨髄性白血病細胞株(K562,THP-1)、B細胞性白血病細胞株(OP-1)を標的細胞として用いた。これらの標的細胞に対し、EH(p44)-TM(CD28)-AS(CD3ζ)遺伝子を導入したT細胞(NKp44-CART)の細胞傷害性の評価を、遺伝子導入後1週以降に行った。標的細胞を、CellTraceTM Calcein Red-Orange, AM(thermofisher)を用いて染色した後に、NKp44-CARTと標的細胞とを様々なeffector target ratio(E:T比)で、37℃、5% COの条件下でインキュベーター内にて、96ウェルU底プレートを用いて6時間共培養した。標的細胞のみを含むウェルを所定時間培養し、コントロールとした。比較対象として、空ベクター(mock)を遺伝子導入したT細胞(mock-T)を用いた。また、自己および他者の正常細胞ヘの攻撃の可能性を確認するため、rIL-2投与下で培養し刺激・増殖させた自己の活性化T細胞(Auto-T cell)を細胞傷害性試験の対象細胞に用いた。同様に、T細胞の提供者とは別の健常ドナーの末梢T細胞を分離し対象細胞として用いた(Allo-T cell)。
細胞傷害性評価試験の結果を図3に示す。NKp44-CARTは、mock-Tと比べ、K562、THP-1、OP-1、MOLT4及びJurkatの各細胞株に対する細胞傷害性の著しい増強が認められた。一方で、NKp44-CARTは、mock-Tと同様に、Auto-T細胞及びAllo-T細胞に対する細胞傷害性は全く認められなかった。
【実施例】
【0102】
[実験例4]インターフェロンγアッセイ
標的細胞(K562)とNKp44-CARTとを、37℃、5%COの条件下で、インキュベーター内にて96ウェル丸底プレートを用いて共培養した。共培養に用いたNKp44-CARTの細胞数は1x10個とし、E:T比は1:1とした。200U/mLのrIL-2を添加し、10%の最終濃度のFBSを加えた200μLのRPMI1640を培養培地として用いた。共培養開始24時間後に上清を採取し、上清中のインターフェロンγをEIA法により測定した。陰性コントロールとして、1x10個のmock-Tを同条件でK562と24時間共培養した。
インターフェロンγアッセイの結果を図4に示す。NKp44-CARTでは、mock-Tと比較して、インターフェロンγ産生量が顕著に増加した。
【実施例】
【0103】
以上の結果より、NKp44-CARTは、腫瘍細胞特異的に細胞傷害性を示すことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、NKp44リガンドを標的とする新規CAR、及び当該CARを発現し、かつ腫瘍細胞に対して細胞傷害性を示すCAR発現細胞が提供される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3