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明細書 :脳疾患診断装置、信号解析方法及び脳解析プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-019895 (P2018-019895A)
公開日 平成30年2月8日(2018.2.8)
発明の名称または考案の名称 脳疾患診断装置、信号解析方法及び脳解析プログラム
国際特許分類 A61B   5/0476      (2006.01)
A61B   5/05        (2006.01)
A61B  10/00        (2006.01)
FI A61B 5/04 322
A61B 5/05 A
A61B 10/00 H
A61B 5/04 320A
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2016-152769 (P2016-152769)
出願日 平成28年8月3日(2016.8.3)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 1(1)開催日 平成28年2月4日 (2)集会名、開催場所 福井工業大学 大学院工学研究科 社会システム学専攻 経営情報学コース 平成27年度 修士論文発表会 福井県福井市学園3丁目6番1号 福井工業大学 FUTタワー12階 T-1201教室 (3)公開者名 笠川 慎矢 (4)公開された発明の内容 笠川慎矢が、福井工業大学 大学院工学研究科 社会システム学専攻 経営情報学コース 平成27年度 修士論文発表会にて山西輝也、信川創、▲高▼橋哲也及び笠川慎矢が発明した「複雑ネットワークからの脳情報に関する信号解析」について公開した。 2(1)配布日 平成28年2月8日 (2)配布した場所 別紙参照 (3)公開者 笠川 慎矢 (4)配布物の内容 笠川慎矢が、山西輝也、信川創、▲高▼橋哲也及び笠川慎矢が発明した「平成27年度 修士論文 複雑ネットワークからの脳情報に関する信号解析」について別紙記載のとおり配布した。
発明者または考案者 【氏名】山西 輝也
【氏名】信川 創
【氏名】▲高▼橋 哲也
【氏名】笠川 慎矢
出願人 【識別番号】390013815
【氏名又は名称】学校法人金井学園
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001210、【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C127
Fターム 4C127AA03
4C127AA10
4C127FF00
4C127FF02
4C127GG09
4C127GG13
4C127GG15
要約 【課題】身体的負担を軽減でき、更に、脳波を用いた場合には安価かつ簡便に脳疾患を判断できる脳疾患診断装置等を提供すること。
【解決手段】脳疾患診断装置1が、脳波計12から受けた頭部の互いに異なる2つの部位からの信号の同期性に基づく同期性指標値を算出する同期性算出部35と、脳波計12から受けた頭部のいずれかの部位に関する信号の複雑性に基づく複雑性指標値を算出する複雑性算出部36と、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上での、算出された同期性指標値及び算出された複雑性指標値に基づく座標位置が、2次元平面上の予め定められた1つの直線によって2つに分断された2次元平面上の一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を生成する情報生成部37と、を備えるようにする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
頭部の複数部位から脳波又は脳磁波に基づく信号を前記各部位毎に複数取得する脳信号取得部と、
前記脳信号取得部が取得した前記各部位毎に複数存在する前記信号を解析する解析部と、を備え、
前記解析部は、
互いに異なる2つの前記部位の夫々に関して複数存在する前記信号の同期性に基づく同期性指標値を算出する同期性算出部と、
いずれかの前記部位に関して複数存在する前記信号の複雑性に基づく複雑性指標値を算出する複雑性算出部と、を有し、
更に、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上での、前記同期性算出部により算出された同期性指標値及び前記複雑性算出部により算出された前記複雑性指標値に基づく座標位置が、前記2次元平面上の予め定められた1つの直線によって2つに分断された前記2次元平面上の一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を生成する情報生成部を備える、脳疾患診断装置。
【請求項2】
頭部の互いに異なる2つの部位の夫々に関して、脳波又は脳磁波に基づいて複数存在する信号を、脳波計又は脳磁計から直接又は間接的に受けて、前記2つの部位の夫々に関して複数存在する前記信号の同期性に基づく同期性指標値を算出する同期性算出部と、
前記頭部のいずれかの部位に関して、脳波又は脳磁波に基づいて複数存在する信号を、前記脳波計又は前記脳磁計から直接又は間接的に受けて、前記いずれかの部位に関して複数存在する前記信号の複雑性に基づく複雑性指標値を算出する複雑性算出部と、
同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上での、前記同期性算出部により算出された同期性指標値及び前記複雑性算出部により算出された前記複雑性指標値に基づく座標位置が、前記2次元平面上の予め定められた1つの直線によって2つに分断された前記2次元平面上の一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を生成する情報生成部と、を備える、脳疾患診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脳疾患診断装置において、
前記情報生成部からの信号に基づいて前記座標位置が前記一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を出力する出力部を備える、脳疾患診断装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の脳疾患診断装置において、
前記同期性算出部は、前記2つの部位の夫々で複数存在する前記信号の夫々をヒルベルト変換に基づいて位相情報を含む位相情報含有信号に変換し、前記同期性指標値を、前記位相情報含有信号とフェーズ・ラグ・インデックス法とに基づいて算出する、脳疾患診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の脳疾患診断装置において、
前記同期性算出部は、前記2つの部位の夫々で複数存在する前記信号の夫々から特定の周波数帯域の特定周波数信号を抽出し、その特定周波数信号にヒルベルト変換を施して前記位相情報含有信号を算出する、脳疾患診断装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の脳疾患診断装置において、
前記複雑性算出部は、前記複雑性指標値を、前記いずれかの部位に関して複数存在する前記信号と、マルチ・スケール・エントロピー法とに基づいて算出する、脳疾患診断装置。
【請求項7】
頭部の複数部位からの脳波又は脳磁波に基づく信号が前記各部位毎に複数入力される入力端子を備え、さらに、互いに異なる2つの前記部位の夫々に関して複数存在する前記信号の同期性に基づく同期性指標値、及びいずれかの前記部位に関して複数存在する前記信号の複雑性に基づく複雑性指標値からなる2次元指標を、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上にプロットしたときの座標位置が、前記2次元平面上の予め定められた1つの直線によって2つに分断された前記2次元平面上での一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を出力部に出力させるための信号を、前記出力部に出力するための出力端子を備える、脳疾患診断装置。
【請求項8】
頭部の複数部位から脳波又は脳磁波に基づく信号を前記各部位毎に複数取得する取得ステップと、
互いに異なる2つの前記部位の夫々に関して複数存在する前記信号の同期性に基づく同期性指標値を算出する同期性算出ステップと、
いずれかの前記部位に関して複数存在する前記信号の複雑性に基づく複雑性指標値を算出する複雑性算出ステップと、
同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上に関して、前記同期性算出ステップで算出した前記同期性指標値及び前記複雑性算出ステップで算出した前記複雑性指標値で特定される座標位置が、前記2次元平面上の予め定められた1つの直線によって2つに分断された前記2次元平面上での一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を、出力部を介して出力する情報出力ステップと、
を含む信号解析方法。
【請求項9】
互いに異なる2つの頭部の部位の夫々に関して、脳波又は脳磁波に基づいて複数存在する信号の同期性に基づく同期性指標値を算出する処理と、
いずれかの頭部の部位に関して、脳波又は脳磁波に基づいて複数存在する信号の複雑性に基づく複雑性指標値を算出する処理と、
同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上での、算出した前記同期性指標値及び算出した前記複雑性指標値に基づく座標位置が、前記2次元平面上の予め定めされた1つの直線によって2つに分断された前記2次元平面上の一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を生成する処理と、をコンピュータに行わせるための脳解析プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脳疾患診断装置に関し、例えば、アルツハイマー型認知症の進行度合を客観的に診断可能な脳疾患診断装置に関する。また、本発明は、信号解析方法及び脳解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
身体の疾患で血液検査により診断が可能な疾患、例えば、血糖値によって診断が可能な糖尿病等とは違い、認知症等の精神疾患の場合には、人体の体液を用いた生物学的かつ客観的で確立された診断手法が未だ存在しない。ここで、精神疾患を判断する場合、例えば、アルツハイマー型認知症であれば、脳に蛋白質のアミロイドベータが蓄積することによって正常な神経細胞が崩壊し、脳血流の低下や脳萎縮が生じることが知られている。そして、客観的な生物学的指標として、特許文献1に記載されている脳萎縮を捉えるMRI(Magnetic Resonance Imaging)や、脳血流を反映するSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)や、PET(Positron Emission Tomography)による脳アミロイド撮影によって、診断が実行されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2012-245113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の手法では、検査が大掛かりなものとなり、経済的負担が大きく、更には、PETおよびSPECTでは放射性核種を体内に投与するため、特に身体的負担も大きく、症状変化を捉えるための頻回の検査も制限される。
【0005】
そこで、本発明の目的は、身体的負担を軽減でき、更に、脳波を用いた場合には安価かつ簡便に脳疾患を判断できる脳疾患診断装置を提供することにある。また、脳の解析を行うにあたって有益であり、多様な用途で使用されることができる信号解析方法を提供することにある。また、そのような脳疾患診断装置の製造などの用途で使用できる脳解析プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る脳疾患診断装置は、頭部の複数部位から脳波又は脳磁波に基づく信号を前記各部位毎に複数取得する脳信号取得部と、前記脳信号取得部が取得した前記各部位毎に複数存在する前記信号を解析する解析部と、を備え、前記解析部は、互いに異なる2つの前記部位の夫々に関して複数存在する前記信号の同期性に基づく同期性指標値を算出する同期性算出部と、いずれかの前記部位に関して複数存在する前記信号の複雑性に基づく複雑性指標値を算出する複雑性算出部と、を有し、更に、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上での、前記同期性算出部によって算出された同期性指標値及び前記複雑性算出部によって算出された複雑性指標値に基づく座標位置が、前記2次元平面上の予め定められた1つの直線によって2つに分断された前記2次元平面上の一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を出力する出力部を備える。
【0007】
また、別の態様の本発明の脳疾患診断装置は、頭部の互いに異なる2つの部位の夫々に関して、脳波又は脳磁波に基づいて複数存在する信号を、脳波計又は脳磁計から直接又は間接的に受けて、前記2つの部位の夫々に関して複数存在する前記信号の同期性に基づく同期性指標値を算出する同期性算出部と、前記頭部のいずれかの部位に関して、脳波又は脳磁波に基づいて複数存在する信号を、前記脳波計又は前記脳磁計から直接又は間接的に受けて、前記いずれかの部位に関して複数存在する前記信号の複雑性に基づく複雑性指標値を算出する複雑性算出部と、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上での、前記同期性算出部により算出された同期性指標値及び前記複雑性算出部により算出された前記複雑性指標値に基づく座標位置が、前記2次元平面上の予め定められた1つの直線によって2つに分断された前記2次元平面上の一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を生成する情報生成部と、を備える。
【0008】
なお、前記予め定められた1つの直線上の点は、2つに分断された2つの領域における一方側の領域としてもよく、当該2つの領域の他方側の領域としてもよい。
【0009】
後に実施例で詳細に説明するが、本発明者は、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上での、被験者において実際に算出した同期性指標値と複雑性指標値とに基づく座標位置を特定した後、その座標位置が予め定められた1つの直線によって2つに分断された2次元平面上の一方領域に位置するか又は他方領域に位置するかで、脳疾患の発症の有無を判断でき、また、脳疾患によっては脳疾患の進行の度合いまでも判断できることを見出した。
【0010】
本発明によれば、被験者において実際に算出した同期性指標値と複雑性指標値とに基づく座標位置を特定し、更に、当該座標位置が予め定められた1つの直線によって2つに分断された前記2次元平面上での一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を生成する。したがって、被験者の頭部の複数部位から脳波又は脳磁波に基づく信号を取得するだけで、医師等の診断者が、算出した座標位置が一方領域に存在しているか否かを出力部(この出力部は、脳疾患診断装置に含まれてもよく、例えば、外部モニタのように脳疾患診断装置と別体に構成されて、脳疾患診断装置と電気的に接続されるものであってもよい)を介して特定でき、脳疾患の発症の有無や、場合によっては脳疾患の進行の度合いまで判断できる。よって、MRI、SPECT、又はPETを用いずに脳疾患の発症の有無等を判断できるので、被験者の身体的負担を軽減でき、更に、脳波を用いた場合には、安価かつ簡便に脳疾患の発症の有無等を判断できる。
【0011】
また、本発明において、前記情報生成部からの信号に基づいて前記座標位置が前記一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を出力する出力部を備えてもよい。
【0012】
また、本発明において、前記同期性算出部は、前記2つの部位の夫々で複数存在する前記信号の夫々をヒルベルト変換に基づいて位相情報を含む位相情報含有信号に変換し、前記同期性指標値を、前記位相情報含有信号とフェーズ・ラグ・インデックス法とに基づいて算出してもよい。
【0013】
本発明者は、同期性を判断する指標として位相情報を含む位相情報含有信号を用いて異なる部位における位相に関する同期性を同期性の尺度とすれば、脳疾患の発症の有無等(場合によっては脳疾患の進行の度合い)を正確に判断し易いことを見出した。
【0014】
上記構成によれば、脳信号取得部が取得した脳信号をヒルベルト変換に基づいて位相情報を含む位相情報含有信号に変換し、その位相情報含有信号に基づいて位相に関する同期性を算出する。よって、脳疾患の発症の有無等がより正確に判断し易くなる。
【0015】
また、本発明において、前記同期性算出部は、前記2つの部位の夫々で複数存在する前記信号の夫々から特定の周波数帯域の特定周波数信号を抽出し、その特定周波数信号にヒルベルト変換を施して前記位相情報含有信号を算出してもよい。
【0016】
本発明者は、脳信号の特定の周波数帯域に着目して、その特定の周波数帯域で同期性指標値や複雑性指標値を算出すると、脳疾患の発症の有無等(場合によっては脳疾患の進行の度合い)を正確に判断し易くなることを見出した。
【0017】
上記構成によれば、同期性算出部が、前記2つの部位の夫々で複数存在する信号の夫々から特定の周波数帯域の特定周波数信号を抽出し、その特定周波数信号にヒルベルト変換を施して位相情報含有信号を算出する。よって、特定の周波数帯域における同期性指標値が算出されることになるので、脳疾患の発症の有無等がより正確に判断し易くなる。
【0018】
また、本発明において、前記複雑性算出部は、前記複雑性指標値を、前記いずれかの部位に関して複数存在する前記信号と、マルチ・スケール・エントロピー法とに基づいて算出してもよい。
【0019】
本発明者は、複雑性指標値を、マルチ・スケール・エントロピー法に基づいて算出すると、脳疾患の発症の有無等(場合によっては疾患の進行の度合い)を正確に判断し易くなることを見出した。
【0020】
上記構成によれば、複雑性算出部が、複雑性指標値を、マルチ・スケール・エントロピー法に基づいて算出する。よって、脳疾患の発症の有無等が正確に判断し易くなる。
【0021】
また、本発明に係る脳疾患診断装置は、頭部の複数部位からの脳波又は脳磁波に基づく信号が前記各部位毎に複数入力される入力端子を備え、さらに、互いに異なる2つの前記部位の夫々に関して複数存在する前記信号の同期性に基づく同期性指標値、及びいずれかの前記部位に関して複数存在する前記信号の複雑性に基づく複雑性指標値からなる2次元指標を、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上にプロットしたときの座標位置が、前記2次元平面上の予め定められた1つの直線によって2つに分断された前記2次元平面上での一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を出力部に出力させるための信号を、前記出力部に出力するための出力端子を備える。
【0022】
本発明によれば、医師等の診断者が、出力情報によって、算出した座標位置が一方領域に存在しているか否かを特定でき、脳疾患の発症の有無や、場合によっては脳疾患の進行の度合いまでも判断できる。よって、MRI、SPECT、又はPETを用いずに脳疾患の発症の有無等を判断できるので、被験者の身体的負担を軽減でき、更に、脳波を用いた場合には、安価かつ簡便に脳疾患の発症の有無等を判断できる。
【0023】
また、本発明の信号解析方法は、頭部の複数部位から脳波又は脳磁波に基づく信号を前記各部位毎に複数取得する取得ステップと、互いに異なる2つの前記部位の夫々に関して複数存在する前記信号の同期性に基づく同期性指標値を算出する同期性算出ステップと、いずれかの前記部位に関して複数存在する前記信号の複雑性に基づく複雑性指標値を算出する複雑性算出ステップと、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上に関して、前記同期性算出ステップで算出した前記同期性指標値及び前記複雑性算出ステップで算出した前記複雑性指標値で特定される座標位置が、前記2次元平面上の予め定められた1つの直線によって2つに分断された前記2次元平面上での一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を、出力部を介して出力する情報出力ステップと、を含む。
【0024】
また、本発明の脳解析プログラムは、互いに異なる2つの頭部の部位の夫々に関して、脳波又は脳磁波に基づいて複数存在する信号の同期性に基づく同期性指標値を算出する処理と、いずれかの頭部の部位に関して、脳波又は脳磁波に基づいて複数存在する信号の複雑性に基づく複雑性指標値を算出する処理と、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上での、算出した前記同期性指標値及び算出した前記複雑性指標値に基づく座標位置が、前記2次元平面上の予め定めされた1つの直線によって2つに分断された前記2次元平面上の一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を生成する処理と、をコンピュータに行わせる。
【0025】
また、本発明の脳疾患診断装置において、前記1つの直線は、頭部の互いに異なる2以上の前記部位での脳波又は脳磁波を表す信号に基づくいずれかの(1以上の)周波数帯域における、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上で、診断したい脳疾患(例えば、認知症(アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症)、統合失調症、気分障害、自閉症スペクトラム障害、等)において、複数のその脳疾患の脳疾患患者と、複数のその脳疾患を患っていない人と、を含む複数の人の集団において、各人毎に前記2次元平面上の座標位置を特定することによって得られた前記集団における複数の座標位置を、前記2次元平面上で主成分分析して算出された第1主成分軸であってもよい。
【0026】
また、本発明の脳疾患診断装置において、前記1つの直線は、頭部の互いに異なる2以上の前記部位での脳波又は脳磁波を表す信号に基づくいずれかの(1以上の)周波数帯域における、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上で、診断したい脳疾患(例えば、認知症(アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症)、統合失調症、気分障害、自閉症スペクトラム障害、等)において、複数のその脳疾患の重度の脳疾患患者と、複数のその脳疾患の軽度の脳疾患患者と、を含む複数の人の集団において、各人毎に前記2次元平面上の座標位置を特定することによって得られた前記集団における複数の座標位置を、前記2次元平面上で主成分分析して算出された第1主成分軸であってもよい。
【0027】
また、本発明の脳疾患診断装置において、前記1つの直線は、頭部の互いに異なる2以上の前記部位での脳波又は脳磁波を表す信号に基づくいずれかの(1以上の)周波数帯域における、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上で、診断したい脳疾患(例えば、認知症(アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症)、統合失調症、気分障害、自閉症スペクトラム障害、等)において、複数のその脳疾患を患っていない人と、複数のその脳疾患の重度の脳疾患患者と、複数のその脳疾患の軽度の脳疾患患者と、を含む複数の人の集団において、各人毎に前記2次元平面上の座標位置を特定することによって得られた前記集団における複数の座標位置を、前記2次元平面上で主成分分析して算出された第1主成分軸であってもよい。
【0028】
また、本発明の脳疾患診断装置における前記1つの直線を特定する方法では、頭部の互いに異なる2以上の前記部位での脳波又は脳磁波を表す信号に基づくいずれかの(1以上の)周波数帯域における、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上で、診断したい脳疾患(例えば、認知症(アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症)、統合失調症、気分障害、自閉症スペクトラム障害、等)において、複数のその脳疾患の脳疾患患者と、複数のその脳疾患を患っていない人と、を含む複数の人の集団において、各人毎に前記2次元平面上の座標位置を特定することによって得られた前記集団における複数の座標位置を、前記2次元平面上で主成分分析して算出された第1主成分軸が、前記予め定められた1つの直線であると特定してもよい。
【0029】
また、本発明の脳疾患診断装置における前記1つの直線を特定する方法では、頭部の互いに異なる2以上の前記部位での脳波又は脳磁波を表す信号に基づくいずれかの(1以上の)周波数帯域における、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上で、診断したい脳疾患(例えば、認知症(アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症)、統合失調症、気分障害、自閉症スペクトラム障害、等)において、複数のその脳疾患の重度の脳疾患患者と、複数のその脳疾患の軽度の脳疾患患者と、を含む複数の人の集団において、各人毎に前記2次元平面上の座標位置を特定することによって得られた前記集団における複数の座標位置を、前記2次元平面上で主成分分析して算出された第1主成分軸が、前記予め定められた1つの直線であると特定してもよい。
【0030】
また、本発明の脳疾患診断装置における前記1つの直線を特定する方法では、頭部の互いに異なる2以上の前記部位での脳波又は脳磁波を表す信号に基づくいずれかの(1以上の)周波数帯域における、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上で、診断したい脳疾患(例えば、認知症(アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症)、統合失調症、気分障害、自閉症スペクトラム障害、等)において、複数のその脳疾患を患っていない人と、複数のその脳疾患の重度の脳疾患患者と、複数のその脳疾患の軽度の脳疾患患者と、を含む複数の人の集団において、各人毎に前記2次元平面上の座標位置を特定することによって得られた前記集団における複数の座標位置を、前記2次元平面上で主成分分析して算出された第1主成分軸が、前記予め定められた1つの直線であると特定してもよい。
【0031】
また、一実施形態の脳疾患診断装置は、複数の脳疾患患者と、複数の脳疾患を患っていない人と、を含む複数の人の集団において各人毎に前記座標位置を特定することによって得られた前記集団における複数の前記座標位置を前記2次元平面上で主成分分析して算出された第1主成分軸(前記予め定められた1つの直線に対応)を特定可能な情報が予め記憶された記憶部を備えてもよい。
【0032】
また、一実施形態の脳疾患診断装置は、複数のその脳疾患の重度の脳疾患患者と、複数のその脳疾患の軽度の脳疾患患者と、を含む複数の人の集団において各人毎に前記座標位置を特定することによって得られた前記集団における複数の前記座標位置を前記2次元平面上で主成分分析して算出された第1主成分軸(前記予め定められた1つの直線に対応)を特定可能な情報が予め記憶された記憶部を備えてもよい。
【0033】
また、一実施形態の脳疾患診断装置は、複数のその脳疾患を患っていない人と、複数のその脳疾患の重度の脳疾患患者と、複数のその脳疾患の軽度の脳疾患患者と、を含む複数の人の集団において各人毎に前記座標位置を特定することによって得られた前記集団における複数の前記座標位置を前記2次元平面上で主成分分析して算出された第1主成分軸(前記予め定められた1つの直線に対応)を特定可能な情報が予め記憶された記憶部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る脳疾患診断装置によれば、被験者の身体的負担を軽減でき、更に、脳波を用いた場合には、安価かつ簡便に脳疾患の発症の有無等を判断できる。また、本発明に係る信号解析方法及び脳解析プログラムは、脳の解析を行うにあたって有益であり、多様な用途で使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る脳疾患診断装置の概略構成図である。
【図2】国際10-20法に従って配置された電極の配置を示す。
【図3】δ帯域での調査結果を表し、MSEのスケールファクターが互いに異なるグラフを示す。
【図4】δ帯域での調査結果を表し、MSEのスケールファクターが互いに異なるグラフを示す。
【図5】θ帯域での調査結果を表し、MSEのスケールファクターが互いに異なるグラフを示す。
【図6】θ帯域での調査結果を表し、MSEのスケールファクターが互いに異なるグラフを示す。
【図7】α帯域での調査結果を表し、MSEのスケールファクターが互いに異なるグラフを示す。
【図8】α帯域での調査結果を表し、MSEのスケールファクターが互いに異なるグラフを示す。
【図9】β帯域での調査結果を表し、MSEのスケールファクターが互いに異なるグラフを示す。
【図10】β帯域での調査結果を表し、MSEのスケールファクターが互いに異なるグラフを示す。
【図11】γ帯域での調査結果を表し、MSEのスケールファクターが互いに異なるグラフを示す。
【図12】γ帯域での調査結果を表し、MSEのスケールファクターが互いに異なるグラフを示す。
【図13】図3~図12で示された各グラフ毎に第1主成分軸に基づいて算出された、アルツハイマー型認知症の度合が軽度の患者群とアルツハイマー型認知症の度合が重度の患者群との2群間比較におけるt検定のt値を示すグラフである。
【図14】図13に示すt検定に基づいて計算された、アルツハイマー型認知症の度合が軽度の患者群とアルツハイマー型認知症の度合が重度の患者群との2群間比較で有意差がないとした場合の確率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下において記載される実施形態及び変形例の特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。

【0037】
図1は、本発明の一実施形態に係る脳疾患診断装置1の概略構成図である。

【0038】
図1に示すように、脳疾患診断装置1は、脳信号取得部の一例としての既存の脳波計(Electroencephalograph:EEG)12に電気的に接続された解析部13を含む。脳波計(脳波測定器)12は、19個の電極(脳波を取るための電極)20と、脳波測定部21とを有する。脳疾患診断装置1は、19以下の電極20を使用でき、図1では、3つの電極20が使用される場合が図示されている。19以下の電極20が、被験者の頭部の複数部位に直接取り付けられるか、又は頭部周辺に装着する装着部材(キャップや装着ベルト等からなる)上にある19以下の電極20で脳波を取り込むようになっている。図2に、国際10-20法に従って配置された電極の配置を示す。国際10-20法では頭皮を10%もしくは20%の等間隔で区切り、計19個の電極配置位置が決定される。図2では、21個の配置位置が示されるが、その内2つは両耳にあり、ベース電流を測定するために用いられる。したがって、実際に脳波をとるために用いられるのは、19の配置位置となる。脳疾患診断装置1は、この19個の電極配置位置の数に一致する19個の電極20を有する。なお、脳疾患診断装置の電極の数は、2以上の数でかつ19より小さい如何なる数でもよく、20以上の数でもよい。また、少なくとも1つの電極は、国際10-20法で規定された電極配置位置に配置されなくてもよい。脳波測定部21は、19以下の電極20を用いて導出した電位変化を時間経過に従って記録する。脳波測定部21は、19以下の頭部部位の夫々で脳波を取得する。脳波の測定は、被験者の安静閉眼時において実行される。このことから、被験者に負担をかけずに容易に測定を実行できる。また、この実施例では、脳波のサンプリング周波数が200Hzであり、脳波の測定は1分間にわたって行われる。その結果、1秒間に200回の計測が行われ、合計12000回の計測がおこなわれる。なお、サンプリング周波数及び計測時間は、上記以外の値でもよい。また、脳波測定部21は、例えば、脳波を測定する時定数を0.3秒とし、脳波測定部21で脳波に1.5~60Hzのバンドパスフィルタを施してもよいが、これに限らない。

【0039】
解析部13は、脳波計12が測定した脳波を表す信号(以下、脳波信号という)を入力端子を介して受ける。解析部13は、例えばコンピュータで構成される。解析部13は、脳波計12からの信号を直接受けてもよく、脳波計12からの信号を他の計器を介して間接的に受けてもよい。コンピュータには、中央処理装置(CPU)30、主記憶装置(メモリ)31及びハードディスク等で構成される補助記憶装置32が内蔵され、中央処理装置30は、同期性算出部35と、複雑性算出部36と、情報生成部37とを有する。同期性算出部35は、互いに異なる2つの頭部部位の夫々に関して複数存在する脳波信号の同期性に基づく同期性指標値を算出し、複雑性算出部36は、いずれかの頭部部位に関して複数存在する脳波信号の複雑性に基づく複雑性指標値を算出する。

【0040】
詳しくは、同期性算出部35は、脳波測定部21からの脳波信号にフィルタをかけて各脳波信号を、δ波(2-4Hz)、θ波(4-8Hz)、α波(8-13Hz)、β波(13-30Hz)及びγ波(30-60Hz)の5帯域に分ける。各脳波信号を5帯域に分ける手法としては、バンドパスフィルタを好適に用いることができるが、これに限らない。その後、同期性算出部35は、時間と振幅を変数として表された5帯域に分けられた各波を、ヒルベルト変換を用いて、時間と位相を変数とする2次元指標からなる位相情報含有信号に変換する。バンドパスフィルタで波の特定の周波数帯域を抽出する手法や、ヒルベルト変換で、時間と振幅を変数として表された波を、時間と位相を変数とする2次元指標に変換する手法は公知であるため、ここでは詳述しない。

【0041】
その後、同期性算出部35は、フェーズ・ラグ・インデックス(Phase Lag Index (PLI))の手法を用いて、電極20の互いに異なる2つの組で位相の同期性の尺度となる同期性指標値を求める。例えば、電極20を21個用いた場合、同期性指標値は、212=21×20/2=210個求められる。同期性算出部35は、同期性指標値を次のように算出する。先ず、12000のデータのうちフィルタが施された影響で測定誤差が大きい可能性がある最初と最後の1000個のデータは、算出に使用しない。また、残りの10000個の測定点を、1000個の測定点からなる10個のブロックに分ける。その後、互いに異なる2つの電極20からの信号に起因する位相情報含有信号に基づいて、各ブロックの各測定点毎に一方の電極を用いた測定に起因する位相情報含有信号に対して他方の電極を用いた測定に起因する位相情報含有信号の位相が進んでいるか否かを特定する。そして、進んでいる場合には、その測定点の値として1を割り当て、遅れている場合には、その測定点の値として-1を割り当てる。これを各ブロックの1000の測定点の全てで行い、1000個の測定点の値の総和を求める。そして、その後、当該総和の絶対値を1000で割った値を、そのブロックでの部分同期性指標値とする。係る算出からわかるように、各ブロックでの部分同期性指標値の最大値は、0.1となり、10個のブロックの部分同期性指標値の総和からなる同期性指標値の最大値は、1となる。同期性指標値は、その値が大きい程、2つの部位の信号の同期性が高いことを意味する。

【0042】
次に、複雑性算出部36の複雑性指標値の算出について説明する。複雑性算出部36は、マルチ・スケール・エントロピー(Multiscale Entropy (MSE))解析の手法によって複雑性指標値を算出する。MSE解析では、脳波信号そのものを使用し、各測定点における脳波信号の振幅の値を使用する。MSE解析は、連続するN個の脳波データ[x1,x2,…,xN]から、パターン長mと、許容値rを決定し、各スケールファクター(Scale Factor (SF))τ毎にサンプルエントロピーを求める手法である。本実施例では、複雑性算出部36は、N個の脳波データ[x1,x2,…,xN]として、少なくとも一つの部位で得られた12000個存在する脳波信号の振幅データを用い、パターン長mとして2を使用し、許容値rとして、0.2を用いる。そして、スケールファクターτ毎に複雑性指標値を算出する。なお、MSE解析を用いて、N個の脳波データ[x1,x2,…,xN]、パターン長m、許容値r、スケールファクターSFから複雑性指標値を求める手法は公知であるので、本明細書では説明を省略する。MSE解析を行った論文としては、例えば、次の論文が知られている。1. Takahashi T, Yoshimura Y, Hiraishi H, Hasegawa C, Munesue T, Higashida H, Minabe Y, Kikuchi M, Enhanced Brain Signal Variability in Children with Autism Spectrum Disorder during Early Childhood. Hum Brain Mapp. 2016;37:1038-50、 2. Polizzotto N, Takahashi T, Walker P, Cho R, Wide Range Multiscale Entropy Changes through Development. Entropy. 2016;18:12.

【0043】
主記憶装置31又は補助記憶装置32には、バンドパスフィルタのためのソフト、ヒルベルト変換を行うためのソフト、PLI解析を行うためのソフト、及びMSE解析を行うためのソフトが予め記憶されている。更には、主記憶装置31又は補助記憶装置32には、1以上の脳疾患の夫々で、頭部の2以上の部位かつ1以上の周波数帯域毎に、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面(以下、2次元平面といえば、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面のことをいう)上において1つの直線が予め記憶されている。この1つの直線の決定のしかたについては後で詳細に説明する。なお、バンドパスフィルタ及びヒルベルト変換の処理を、ソフトウェアで実現する場合について説明した。しかし、バンドパスフィルタやヒルベルト変換は、ハードウェアで実現されてもよい。すなわち、入力信号を、ハードウェアで構成されたバンドパスフィルタ部の入力部に入力すると、バンドパスフィルタ部の出力部から、当該入力信号にバンドパスフィルタ処理が施された信号が出力される構成でもよい。また、同様に、入力信号を、ハードウェアで構成されたヒルベルト変換部の入力部に入力すると、ヒルベルト変換部の出力部から、入力信号にヒルベルト変換を施した信号が出力される構成でもよい。なお、この場合、ハードウェアで構成されたバンドパスフィルタ部や、ハードウェアで構成されたヒルベルト変換部が、同期性算出部に含まれるのはいうまでもない。

【0044】
情報生成部37は、被験者で算出された2次元平面上での座標位置と、その被験者の発症の有無等(場合によっては進行の度合い)を診断したい疾患に関する当該2次元平面での上記1つの直線とが同時にプロットされた2次元平面を、出力部の一例としての表示部14に表示させることを命令する制御信号を生成する。表示部14は、例えば、液晶ディスプレイ等のモニタで構成される。表示部14は、コンピュータで構成される解析部13の出力端子を用いて解析部13に電気的に接続される。表示部14は、解析部13の出力端子を介して受けた情報生成部37からの制御信号で、被験者で算出された2次元平面上での座標位置と、その被験者の発症の有無等(場合によっては進行の度合い)を診断したい疾患に関する当該2次元平面での上記1つの直線とが同時にプロットされた2次元平面を表示する。

【0045】
なお、脳疾患診断装置1は、複数の脳疾患の発症の有無等を診断できてもよく、その場合、脳疾患診断装置1は、医師等のユーザが、データを選択するための脳疾患名を入力するための入力部(例えば、キーやボタン等で構成される)を有してもよい。そして、医師等のユーザが、その入力部を用いて脳疾患名を入力すると、その脳疾患に対応するデータが使用されるようになっていてもよい。

【0046】
次に、疾患毎に予め主記憶装置31又は補助記憶装置32に記憶された直線の決定の仕方について説明する。図3~図12は、上述の方法で、同期性指標値を算出するための電極位置として、Fzと、F3,F4(図2参照)とを用い、複雑性指標値を算出するための電極位置として、T6(図2参照)を用いた場合において、同期性指標値を横軸として、複雑性指標値を縦軸とした場合での、アルツハイマー型認知症を発症している人を含む多数の人によるデータを表す図である。

【0047】
詳しくは、図2に示すように、Fzに対してF3,F4は頭部の左右方向に対称に位置する。そこで、横軸の指標としては、FzとF3との間で算出された同期性指標値と、FzとF4との間で算出された同期性指標値との和を2で割った値がプロットされている。また、図3及び図4は、δ帯域での調査結果を表し、MSEのスケールファクター(以下、SFという)が互いに異なる20のグラフを示す。また、図5及び図6は、θ帯域での調査結果を表し、SFが互いに異なる20のグラフを示し、図7及び図8は、α帯域での調査結果を表し、SFが互いに異なる20のグラフを示す。また、図9及び図10は、β帯域での調査結果を表し、SFが互いに異なる20のグラフを示し、図11及び図12は、γ帯域での調査結果を表し、SFが互いに異なる20のグラフを示す。

【0048】
また、各グラフで、×は、アルツハイマー型認知症ではないと医学的に診断された人のデータであり、○は、アルツハイマー型認知症と診断された被験者のうちでミニメンタルステート検査(認識機能検査MMSE)が30点満点中16点以上の人のデータである。また、▽は、アルツハイマー型認知症と診断された被験者のうちでミニメンタルステート検査が15点以下の人のデータである。なお、ミニメンタルステート検査とは、被験者に、例えば、今年は何年ですか、ここは何市ですか、といった質問を30問、出題して、その合計点で認知症の進行度合い等が評価される検査であり、20点以下で認知症が疑われるとされている。また、各グラフ(2次元平面)において、1つ引かれている直線は、各グラフにおける複数のデータから算出される統計量の分散が最も大きくなる主成分分析における第1主成分軸である。

【0049】
また、図13は、各2次元平面において第1主成分軸に基づいて算出されたt検定値を示すグラフであり、図14は、そのt検定値に基づいて計算された各人のデータが第1主成分軸に重なる確率を示すグラフである。

【0050】
各グラフを参照すると、図9~図12に示す周波数が13Hz以上のβ帯域及びγ帯域において、アルツハイマー型認知症を患っていない人と、アルツハイマー型認知症の患者とが2次元平面上ではっきり分離されている。したがって、この例では、第1主成分軸を用いなくても、β帯域及びγ帯域のデータを用いれば、アルツハイマー型認知症を患っているか否かを正確に判断できる。

【0051】
更には、図7及び図8に示す、α帯域では、第1主成分軸を境に、軽度のアルツハイマー型認知症の患者(認識機能検査MMSEが16点以上の患者)と、重度のアルツハイマー型認知症の患者(認識機能検査MMSEが15点以下の患者)とが分離され、特に、SFが8以上のグラフでは、第1主成分軸を境に、アルツハイマー型認知症の度合が軽度の患者と、アルツハイマー型認知症の度合が重度の患者とが正確に分離されている。ここで、注目されるのは、α帯域のグラフでは、アルツハイマー型認知症でない人のデータが、第1主成分軸を境にした、いずれの領域にも分布しているということである。したがって、α帯域を用いた場合、アルツハイマー型認知症を発症しているか否かを判断することはできないが、アルツハイマー型認知症の進行度合を、正確に判断できる。なお、図13及び図14の結果により、アルツハイマー型認知症の度合が軽度の患者群とアルツハイマー型認知症の度合が重度の患者群との2群間比較で有意差がないとした場合の確率が非常に小さいことがわかる。

【0052】
以上、図3~図12で用いた集団のサンプルを用いれば、同期性指標値を算出するための電極位置として、Fzと、F3,F4(図2参照)とを用い、複雑性指標値を算出するための電極位置として、T6(図2参照)を用い、更に、2次元グラフとして、α帯域でSFが8以上のグラフを用いれば、アルツハイマー型認知症の進行度合を正確に判断できる。

【0053】
なお、全ての脳疾患において、分析がされることは不可能であるが、上述のアルツハイマー型認知症を含む幾つかの脳疾患においては、分析が進んできている。その結果、それらの脳疾患においては、本発明の脳疾患診断装置で、脳疾患の発症の有無、又は場合によっては、脳疾患の進行の度合いが判断できることがわかりつつある。したがって、診断を所望する脳疾患毎に、その脳疾患において、その脳疾患を患っている複数の人と、その脳疾患を患っていない複数の人とを含む集団(適切な集団)を構成するか、又は、複数のその脳疾患の重度の脳疾患患者と、複数のその脳疾患の軽度の脳疾患患者と、を含む複数の人の集団(適切な集団)を構成するか、又は、複数のその脳疾患を患っていない人と、複数のその脳疾患の重度の脳疾患患者と、複数のその脳疾患の軽度の脳疾患患者と、を含む複数の人の集団(適切な集団)を構成すれば、その集団のサンプルで、その脳疾患の発症の有無や、場合によってはその脳疾患の進行の度合いを判断できる2次元平面(第1主成分軸が算出されたもの)が存在すると推察される。

【0054】
また、頭部の各部位毎かつ各周波数帯域毎に、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上において、各脳疾患(例えば、認知症(アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症)、統合失調症、気分障害、自閉症スペクトラム障害、等)毎に、複数の脳疾患患者と、複数の脳疾患を患っていない人とを含んで構成される複数の人の集団か、又は、複数のその脳疾患の重度の脳疾患患者と、複数のその脳疾患の軽度の脳疾患患者とを含んで構成される複数の人の集団か、又は、複数のその脳疾患を患っていない人と、複数のその脳疾患の重度の脳疾患患者と、複数のその脳疾患の軽度の脳疾患患者とを含んで構成される複数の人の集団において各人毎に前記2次元平面上の座標位置を特定することによって得られた集団における複数の座標位置を前記2次元平面上で主成分分析して算出された第1主成分軸が、予め定められた1つの直線として採用されると好ましいことがわかる。

【0055】
本発明者は、脳疾患の場合、各脳疾患で、その脳疾患に特有の頭部の各部位と、その脳疾患に特有の周波数帯域を用いた上記2次元平面を用いれば、複数の人のサンプルから得られた主成分分析の第1主成分軸を境とした場合のいずれの領域に属するかで、その疾患の発症の有無や、場合によっては、その疾患の進行程度を判断できることを世界で初めて見い出した。

【0056】
同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上を用い、更に、各脳疾患で、複数のその脳疾患の脳疾患患者と、その脳疾患を患っていない複数の人とを含む複数の人の集団か、又は、複数のその脳疾患の重度の脳疾患患者と、複数のその脳疾患の軽度の脳疾患患者とを含む複数の人の集団か、又は、複数のその脳疾患を患っていない人と、複数のその脳疾患の重度の脳疾患患者と、複数のその脳疾患の軽度の脳疾患患者と、を含む複数の人の集団において各人毎に2次元平面上の座標位置を特定することによって得られた集団における複数の座標位置を上記2次元平面上で主成分分析して算出された第1主成分軸を用いる手法は、本発明者が、世界で初めて用いた手法である。この成果は、近く発表される予定になっている。

【0057】
再度繰り返すと、上の説明では、アルツハイマー型認知症を例に説明を行ったが、それ以外の脳疾患の場合についても、上述の手法で、配置される電極位置や、判断に用いる周波数帯域を適切に選択することで、疾患の発症の有無や、場合によっては疾患の進行の度合までも判断できると考えられる。なお、脳疾患診断装置は、アルツハイマー型認知症の進行度合のみを診断できる装置であってもよい。

【0058】
また、本脳疾患診断装置1は、使用する電極位置を判断するための疾患名を入力する電極判断入力部(例えば、キーやボタン等で構成される)を有し、医師等のユーザがその電力判断入力部を用いて脳疾患名を入力すれば、使用する電極位置が表示部14に表示されるようにしてもよく、また、その表示された電極位置を用いた被験者の脳波測定の後、表示部に、その被験者のデータと、その脳疾患において過去の集団サンプルを用いて予め算出されて、主記憶装置31又は補助記憶装置32等に記憶されている第1主成分軸とがプロットされた、脳疾患の診断をできる周波数帯域の2次元平面のグラフが表示されてもよい。

【0059】
例えば、アルツハイマー型認知症を例に説明すると、アルツハイマー型認知症が電極判断入力部から入力されば、Fz,F3,F4,T6が表示され、また、それらの電極位置Fz,F3,F4,T6を用いた被験者の1分間の脳波測定の後、表示部14に、過去の集団サンプルを用いて予め算出されて、補助記憶装置32等に記憶されているアルツハイマー型認知症に関する第1主成分軸と、その患者のデータとがプロットされた、α帯域の1以上の2次元平面グラフと、β帯域及びγ帯域の2次元平面グラフのうちの1以上の2次元平面グラフと、が表示されてもよい。この場合、医師等のユーザは、β帯域及びγ帯域の2次元平面グラフのうちの少なくとも一方のグラフから、その被験者がアルツハイマー型認知症を発症しているか否かを確認でき、更に、α帯域の2次元平面グラフからアルツハイマー型認知症の進行の度合までも正確に判断できる。又は、表示部14には、脳波測定の後、当該第1主成分軸と、その患者のデータとがプロットされたα帯域における1以上の2次元平面グラフのみが表示されてもよい。アルツハイマー型認知症を発症していることが既知の場合、β帯域やγ帯域の2次元平面グラフは必要がないからである。

【0060】
上記実施形態によれば、解析部13が、被験者において実際に算出した同期性指標値と複雑性指標値とに基づく座標位置を特定し、更に、表示部14が、当該座標位置が予め定められた1つの直線(第1主成分軸)によって2つに分断された2次元平面上での一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を出力する。したがって、被験者の頭部の複数部位から脳波又は脳磁波に基づく信号を取得するだけで、医師等の診断者が、算出した座標位置が一方領域に存在しているか否かを特定でき、脳疾患の発症の有無や、場合によっては脳疾患の進行の度合いまでも判断できる。よって、MRI、SPECT、又はPETを用いずに脳疾患の発症の有無等を判断できるので、安価かつ簡便に脳疾患の発症の有無等を判断でき、かつ、被験者の身体的負担も軽減できる。

【0061】
また、同期性算出部35が、脳波計12が取得した脳信号をヒルベルト変換に基づいて位相情報を含む位相情報含有信号に変換し、その位相情報含有信号に基づいて位相に関する同期性を算出する。よって、脳疾患の発症の有無等がより正確に判断し易くなる。

【0062】
また、同期性算出部35が、2つの部位の夫々で複数存在する信号から特定の周波数帯域の特定周波数信号を抽出し、その特定周波数信号にヒルベルト変換を施して位相情報含有信号を算出する。よって、特定の周波数帯域における同期性指標値が算出されることになるので、脳疾患の発症の有無等がより正確に判断し易くなる。

【0063】
また、複雑性算出部36が、複雑性指標値を、マルチ・スケール・エントロピー法に基づいて算出する。よって、脳疾患の発症の有無等が正確に判断し易くなる。

【0064】
アルツハイマー型認知症の進行を診断する場合には、認識機能検査MMSEを含めた種々の神経心理検査を用いた診断は、被験者の精神状態(気分)や体調によって、正確に診断できないか又は診断を行うことができない場合がある。これに対し、本脳疾患診断装置1によれば、アルツハイマー型認知症の進行の度合いを診断する場合、被験者の精神状態に因らずに、簡易、自動的かつ正確に進行の度合いを診断できる。

【0065】
尚、頭部の複数部位から脳波又は脳磁波に基づく信号を前記各部位毎に複数取得する取得ステップと、互いに異なる2つの前記部位の夫々に関して複数存在する前記信号の同期性に基づく同期性指標値を算出する同期性算出ステップと、いずれかの前記部位に関して複数存在する前記信号の複雑性に基づく複雑性指標値を算出する複雑性算出ステップと、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上に関して、前記同期性算出ステップで算出した前記同期性指標値及び前記複雑性算出ステップで算出した前記複雑性指標値で特定される座標位置が、前記2次元平面上の予め定められた1つの直線によって2つに分断された前記2次元平面上での一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を、出力部を介して出力する情報出力ステップと、を含む信号解析方法を用いれば、脳の解析を行うにあたって有益であり、多様な用途で使用されることができる。

【0066】
また、互いに異なる2つの頭部の部位の夫々に関して、脳波又は脳磁波に基づいて複数存在する信号の同期性に基づく同期性指標値を算出する処理と、いずれかの頭部の部位に関して、脳波又は脳磁波に基づいて複数存在する信号の複雑性に基づく複雑性指標値を算出する処理と、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上での、算出した前記同期性指標値及び算出した前記複雑性指標値に基づく座標位置が、前記2次元平面上の予め定めされた1つの直線によって2つに分断された前記2次元平面上の一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報(前記座標位置が前記一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を出力部に出力させるための制御信号)を生成する処理と、をコンピュータに行わせるための脳解析プログラムも、本発明の脳疾患診断装置の製造を含む多様な用途で有益に使用されることができる。

【0067】
また、本発明は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。

【0068】
例えば、上記実施形態では、第1主成分軸と、被験者に関するデータ(座標位置)とがプロットされた2次元平面が表示部14に表示される場合について説明した。しかし、中央処理装置30が、被験者に関するデータ(座標位置)が、第1主成分軸(予め定められた1つの直線)によって分断される2次元平面上の2つの領域の一方の領域にあるか否かを判定する判定部を有してもよい。そして、その判定部の判定に基づいて脳疾患の発症の有無を表示部に表示させてもよく、又は、それに加えるか、単独で、脳疾患の進行の度合いを表示部に表示させてもよい。なお、この場合、被験者のデータが、第1主成分軸上に位置した場合、どちらの判断を優先させてもよい。上述のアルツハイマー型認知症の進行度合いを判断する場合を例に挙げると、被験者のデータが第1主成分軸上に位置した場合は、その被験者のアルツハイマー型認知症の進行度合いが、軽度である旨、表示してもよく、又は、当該進行度合いが、重度である旨、表示してもよい。また、判定部が判定した結果(例えば、ある脳疾患が発症しているか否かを示す文言や、ある脳疾患の進行の度合いが重度であるか軽度であるかを示す文言等)のみを表示部に表示させてもよく、判定部が判定した結果に加えて、第1主成分軸と、被験者に関するデータ(座標位置)とがプロットされた2次元平面も表示部に表示させてもよい。

【0069】
また、上記実施形態では、脳信号取得部としての脳波計12、及び出力部としての表示部14が、脳疾患診断装置1と別体に設けられているので、脳波計12及び表示部14のうちの少なくとも一方又は両方が、脳疾患診断装置1に含まれないとしてもよい。又は、脳波計12及び表示部14は、脳疾患診断装置1に含まれるとしてもよい。すなわち、脳疾患診断装置1は、解析部13を含んでいればよい。なお、上記実施形態と異なり、脳信号取得部は、脳疾患診断装置と一体に設けられ、脳疾患診断装置に含まれてもよい。また、出力部も、脳疾患診断装置に内蔵される等して脳疾患診断装置と一体に設けられ、脳疾患診断装置に含まれてもよい。家庭用のコンパクトな脳疾患診断装置の場合、出力部を脳疾患診断装置と一体に設けるほうが好ましい場合があるからである。なお、脳疾患診断装置は、脳信号取得部と、それに別体に構成される解析部とを含んでもよく、脳疾患診断装置は、解析部と、それに別体に構成される出力部とを含んでもよい。又は、脳疾患診断装置は、互いに別体に構成される、脳信号取得部、解析部、及び出力部を含んでもよい。

【0070】
また、出力部が、モニタで構成される表示部14である場合について説明したが、出力部は、表示部に拘わらず、ランプや、音発生装置等であってもよい、そして、例えば、上述の判定部の判定結果を、例えば、脳疾患が発症している場合に光らせるランプと、脳疾患が発症していない場合に光らせるランプとを変えることによって、医師等のユーザに判断結果を出力して報知する構成でもよい。又は、脳疾患が発症している場合に出力する音と、脳疾患が発症していない場合に出力する音とを変えることによって、医師等のユーザに判断結果を出力して報知する構成でもよい。又は、光や音を用いて判定結果を出力するのではなく、振動等のそれ以外の物理現象又は化学現象を用いた出力を行ってもよい。出力部は、同期性指標値を一方の軸とし複雑性指標値を他方の軸とする2次元平面上での、被験者の同期性指標値及び複雑性指標値に基づく座標位置が、2次元平面上の予め定められた1つの直線によって2つに分断された2次元平面上の一方領域に存在しているか否かを特定可能な情報を医師等のユーザに報知できれば、如何なる装置等で構成されてもよい。

【0071】
また、1秒間に200回の計測を行い、かつ、計測を1分行う場合について説明したが、1秒間に200回以外の数の計測を行ってもよく、また、計測を1分以外の時間行ってもよい。

【0072】
また、同期性を判断するのに、位相の同期性の指標として用いられるPLIを用いた場合について説明したが、PLIの代わりに、位相の同期性の指標として用いられるPLV(Phase Locking Value)の手法を用いて、同期性指標値を算出してもよい。又は、同期性を判断するのに、PLIの代わりに、SL(Synchronization Likelihood)の手法を用いて位相以外の同期性に基づいて同期性指標値を算出してもよい。又は、それ以外の手法を用いて同期性指標値を算出してもよい。

【0073】
また、ヒルベルト変換を用いて同期性指標値を算出する場合について説明したが、ヒルベルト変換を用いずに同期性指標値を算出してもよい。また、脳波信号にフィルタをかけて脳波信号を複数の特定の周波数帯域に分離したが、脳波信号を特定の周波数帯域に分離せずに同期性指標値及び複雑性指標値の少なくとも一方又は両方を算出してもよい。

【0074】
また、複雑性指標値を、信号のバンドパスフィルタ処理を用いずに算出したが、複雑性指標値を、信号のバンドパスフィルタ処理を用いて算出してもよい。また、複雑性指標値を、MSEの手法に基づいて算出したが、複雑性指標値を、MSEの手法に基づかずに算出してもよく、複雑性指標値は、MSEの手法を用いずに算出された振幅の変動の大きさの尺度となる指標値であってもよい。

【0075】
要は、同期性指標値は、同期性の尺度となる値であれば如何なる値であってもよく如何なる手法で算出されてもよい。また、複雑性指標値も、複雑性の尺度となる値であれば如何なる値であってもよく如何なる手法で算出されてもよい。

【0076】
また、予め定められた1つの直線は、第1主成分軸でなくてもよく、例えば、回帰分析(最小二乗法)によって算出された直線等であってよく、第1主成分軸以外の統計量に基づく如何なる直線であってもよい。また、解析に脳波を用いる場合について説明したが、解析に脳波の代わりに脳磁波を用いてもよく、脳波計の代わりに脳磁計を用い、電極の代わりに磁場を検出する端子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 脳疾患診断装置、 12 脳波計、 13 解析部、 14 表示部、 30 中央処理装置、 31 主記憶装置、 32 補助記憶装置、 35 同期性算出部、 36 複雑性算出部、 37 情報生成部。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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