【非特許文献1】Motoyama S, Nakatsu T, Miura M, Hinai Y, Minamiya Y, Ogawa J. Interleukin-6 -634G>C genetic polymorphism is associated with prognosis following surgery for advanced thoracic esophageal squamous cell carcinoma. Dig Surg. 2012;29(3):194-201 【非特許文献2】Lagmay JP, London WB, Gross TG, Termuhlen A, Sullivan N, Axel A,Mundy B, Ranalli M, Canner J, McGrady P, Hall B. Prognostic significance of interleukin-6 single nucleotide polymorphism genotypes in neuroblastoma: rs1800795 (promoter) and rs8192284 (receptor). Clin Cancer Res. 2009 Aug15;15(16):5234-9. 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明の課題の一つは、がん免疫療法の治療効果予測に有用な遺伝子多型を同定し、これを用いてがん免疫療法の治療効果予測方法を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明は、第一の側面(aspect)において、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)を検出することができるポリヌクレオチドを含む、がん免疫療法の治療効果の予測用組成物またはキットを提供する。 【0006】 本発明は、第二の側面において、ヒトIL-6、ヒトIP-10(interferon gamma-induced protein 10)および/またはヒトBAFF(B-cell activating factor)の蛋白質量を測定するための試薬を含む、がん免疫療法の治療効果の予測用組成物またはキットを提供する。 【0007】 本発明は、第三の側面において、被験者由来の試料から、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)を検出する工程を含む、がん免疫療法の治療効果の予測方法を提供する。 【0008】 本発明は、第四の側面において、被験者由来の血液試料から、ヒトIL-6、ヒトIP-10(interferon gamma-induced protein 10)および/またはヒトBAFF(B-cell activating factor)の蛋白質量を測定する工程を含む、がん免疫療法の治療効果の予測方法を提供する。 【0009】 本発明は、第五の側面において、IL-6阻害剤を含む、がん免疫療法増強剤またはがん免疫療法治療用キットを提供する。 【0010】 本発明は、第六の側面において、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)を含む、がん免疫療法の治療効果を予測するための遺伝子マーカーを提供する。 【発明の効果】 【0011】 本発明が提供するがん免疫療法の治療効果の予測方法により、被験者にとってがん免疫療法が有効であるか否かが予測される。 【図面の簡単な説明】 【0012】 【図1】結腸直腸がん(colorectal cancer)組織に発現するがんワクチン抗原の免疫組織学的解析結果を示す。ワクチンを投与していない結腸直腸がん患者のがん組織におけるワクチン抗原の発現を免疫組織化学により検討した。代表的なデータを示す。全ての写真はx200である。 【図2】Kaplan-Meier survival analysisの結果を示す。(A)60名の患者のペプチドワクチン投与後の生存カーブをKaplan-Meier methodにより決定した(実線)。(B)ペプチドワクチン療法の開始前に、2つ以上の化学療法の治療歴があり、そして、イリノテカン、オキサリプラチンおよびフルオロピリミジンの全てに忍容性がなかった患者の生存カーブをKaplan-Meier methodにより決定した(実線)。破線は95%信頼区間を示す。 【図3】ペプチドワクチンを投与した結腸直腸がん患者におけるIL-6R 48892A>C遺伝子多型と予後との関係を示す。(A)IL-6R 48892A>C遺伝子多型(IL-6R 48892A/CまたはC/C(n=40)vs IL-6R 48892A/A(n=20))に基づいて、ペプチドワクチンで治療した患者を2つのサブグループに分けた。生存カーブをKaplan-Meier methodにより決定した。生存カーブ間の違いは、log-rank testを用いて統計的に解析した。(B)IL-6R 48892A>C遺伝子多型(IL-6R 48892A/CまたはC/C vs IL-6R 48892A/A)およびワクチン投与前血漿のIL-6レベルに基づいて、ペプチドワクチンで治療した患者を4つのサブグループに分けた。生存カーブをKaplan-Meier methodにより決定した。生存カーブ間の違いは、log-rank testを用いて統計的に解析した。IL-6陰性の患者において、IL-6R 48892A/CまたはC/CおよびIL-6R 48892A/Aの遺伝子多型間で有意差があった(IL-6(-),IL-6R 48892A/CまたはC/C (n=18) vs IL-6(-),IL-6R 48892A/A (n=11);p=0.0252)が、IL-6陽性患者においては有意差がなかった(IL-6(+),IL-6R 48892A/CまたはC/C (n=21) vs IL-6(+),IL-6R 48892A/A (n=9);p=0.1184)。 【発明を実施するための形態】 【0013】 用語の説明 本明細書において、「ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型」は、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のSNPデータバンクで用いられているReference SNP IDが、rs8192284と表示されている遺伝子多型である。この遺伝子多型は、配列番号1または配列番号2で表されるIL-6Rのアミノ酸配列において、358番目のアミノ酸残基がAspまたはAlaとなる相違に関係している。ヒトIL-6受容体遺伝子(ヒトIL-6R遺伝子)の48892番目の遺伝子型(Reference SNP ID:rs8192284)には、C/C、A/CおよびA/Aが挙げられる。 本明細書において、「がん免疫療法」とは、非特異的免疫療法(例えば、免疫賦活剤投与による治療、免疫チェックポイント阻害剤による治療)、能動特異的免疫療法(例えば、ペプチドワクチン療法、自家がん細胞ワクチン療法、樹状細胞ワクチン療法)および受動特異的免疫療法(例えば、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞療法、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)療法、遺伝子改変T細胞療法)を含む。例えばがん免疫療法は、ペプチドワクチン療法、樹状細胞ワクチン療法、または免疫チェックポイント阻害剤による治療であり、好ましくはペプチドワクチン療法である。 本明細書において、「がん」は、がん免疫療法の対象となり得るものであり、例えば、がんの例としては、限定はされないが、前立腺がん、すい臓がん、肺がん、子宮頸がん、子宮体がん、胃がん、メラノーマ、甲状腺がん、脳腫瘍、造血器種、食道がん、肝臓がん、大腸がん(結腸直腸がん)、胆道がん、乳がん、膀胱がん、腎がん、骨軟部腫瘍、精巣がん、頭頸部がんおよび卵巣がんが挙げられる。また、がんは進行した(advanced)がんであり得る。
【0014】 がん免疫療法の治療効果の予測用組成物またはキット 本発明は、第一の側面において、ヒトIL-6受容体遺伝子(ヒトIL-6R遺伝子)の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)を検出することができるポリヌクレオチドを含む、がん免疫療法の治療効果の予測用組成物またはキットを提供する。
【0015】 本発明で使用されるヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)を検出することができるポリヌクレオチドは、プライマーであっても、プローブであってもよく、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)を含む、10~200塩基、好ましくは10~50塩基、より好ましくは15塩基~30塩基のヒトIL-6R遺伝子配列の部分配列またはその相補鎖配列からなるポリヌクレオチドであり得る。例えば、上記プローブは、配列番号3または配列番号4で表されるヒトIL-6R遺伝子またはその断片と特異的にハイブリダイズするプローブであってもよい。また、例えば、上記プライマーは、配列番号3または配列番号4で表されるヒトIL-6R遺伝子またはその断片をPCRにて増幅できるプライマーであってもよい。 特異的にハイブリダイズするプローブやプライマーは、該プローブやプライマーがハイブリダイズするオリゴヌクレオチドと100%相補的であるプローブやプライマーであってもよく、また、該プローブやプライマーがハイブリダイズするオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするプローブやプライマーであってもよい。ハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook J., etc., Molecular Cloning, Cold Spring Harbour Laboratory Press, New York, USA 2nd edition, 1989等に記載される方法に準じて行うことができる。ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションには、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄する工程を含むハイブリダイゼーションが挙げられる。洗浄ステップにおける塩濃度や温度を適宜調整することにより、高ストリンジェンシーな条件(塩濃度が低く, 高温)や低ストリンジェンシーな条件(塩濃度が高く、低温)とすることができる。高ストリンジェンシーでの洗浄条件では、例えば、0.1%SDSを含む0.5×SSC中にて65℃で洗浄(例えば15分間×2回)が実施され、低ストリンジェンシーでの洗浄条件では、例えば、0.1%SDSを含む2×SSC中にて室温で洗浄(例えば5分間×2回)が実施される。 プローブおよび/またはプライマーは、ヒトIL-6R遺伝子と同一性が無い、または低い(例えば、0~10%)配列からなる付加的配列を含んでもよく、放射性同位元素(例えば、125I、3H、14C)、酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ)、蛍光物質(例えば、フルオレセイン、SYBR(登録商標)Green)、発光物質(例えば、ルミノール、ルシフェリン、イクオリン)、アビジン、ビオチン等の標識物質で標識されていてもよい。標識は、1物質による標識であっても、複数物質による標識であってもよく、例えば、蛍光物質(例えば、FAM、VIC)の近傍に該蛍光物質の発する蛍光エネルギーを吸収するクエンチャーが結合されていてもよい。
【0016】 遺伝子多型の検出方法によって、それに適したヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)を検出することができるポリヌクレオチドであるプライマーやプローブが使用される。遺伝子多型の検出方法としては、限定はされないが、リアルタイムPCR検出法(例えば、TaqMan(登録商標)プローブ法)、Invaderプローブ法、DNAチップを用いたSNPタイピング法、PCR-RFLP法、PCR-SSCP法などが挙げられる。
【0021】 本発明に使用されるヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)を検出することができるポリヌクレオチド(例えば、プローブ、プライマー)は、各々別個に、または混合して、凍結乾燥状態で、適切な緩衝液(例えば、TE buffer)中に適当な濃度(例えば、1~50μM)で溶解し、-20℃で凍結した状態で、組成物として提供することができる。 ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)を検出することができるポリヌクレオチドの他に、当業者は、採用する遺伝子多型の検出方法に適した試薬、器材等の物質を含めて、がん免疫療法の治療効果の予測用キットとして提供できる。例えば、遺伝子多型の検出方法としてリアルタイムPCR検出法を採用する場合には、10XPCR反応液、10XMgCl2水溶液、Taq DNAポリメラーゼ等をキットに含めることができる。例えば、遺伝子多型の検出方法としてInvaderプローブ法を採用する場合には、Cleavase(エンドヌクレアーゼ)をキットに含めることができる。例えば、遺伝子多型の検出方法としてDNAチップを用いたSNPタイピング法を採用する場合には、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)を検出することができるポリヌクレオチドを含むDNAチップ、ハイブリダイゼーション用洗浄液(例えば、0.1% Tween 20を含む1XTBS)をキットに含めることができる。例えば、遺伝子多型の検出方法として、PCR-RFLP法やPCR-SSCP法を用いる場合には、制限酵素や電気泳動用ゲルをキットに含めることができる。
【0022】 本発明は、第二の側面において、被験者の血液試料中のヒトIL-6、ヒトIP-10(interferon gamma-induced protein 10)および/またはヒトBAFF(B-cell activating factor)の蛋白質量を測定するための試薬を含む、がん免疫療法の治療効果の予測用組成物またはキットを提供する。 血液試料は、血清または血漿であり得る。 被験者の血液中のIL-6、IP-10(interferon gamma-induced protein 10)および/またはBAFF(B-cell activating factor)を検出するための試薬は、例えば、抗ヒトIL-6抗体、抗ヒトIP-10抗体および/または抗ヒトBAFF抗体であり得る。抗体は、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。 一つの実施態様として、がん免疫療法の治療開始前の被験者の血液中のIL-6、IP-10および/またはBAFFの蛋白質量が、本発明が提供するキットにより測定される。 本発明が提供するキットは、例えば、抗ヒトIL-6抗体、抗ヒトIP-10抗体および/または抗ヒトBAFF抗体を含む他、血液から血清を調製するために使用するEDTA、クエン酸またはヘパリンを含んだ溶液を含んでもよい。抗ヒトIL-6抗体、抗ヒトIP-10抗体および抗ヒトBAFF抗体は、凍結乾燥状態で、または、1~10mg/mlの濃度でPBS等の緩衝液に溶解した状態で提供され得る。本発明が提供するがん免疫療法の治療効果の予測用キットには、IL-6、IP-10および/またはBAFFの蛋白質量を測定するための試薬、器材等を含んだELISAキットであってもよい。このようなELISAキットには、上記抗体の他、プレート(例えば、96穴プレート)、ブロッキング溶液(例えば、BSA溶液、乳蛋白質溶液)および洗浄液(界面活性剤を含むリン酸緩衝液(例えば、Tween20を含むPBS))が含まれ得る。
【0028】 活性成分が蛋白質またはペプチドの場合、それらをコードする遺伝子を含むベクターを調製し、それを患者に投与することにより、がん免疫療法を行うこともできる。よって、このようなベクターは、本発明が提供するがん免疫療法の治療効果の予測用キットに含まれ得る。また、患者体外において例えば患者由来の樹状細胞にベクターを導入し、所望のペプチドを発現させた細胞を患者に戻しても良い。これら方法は当業界において周知である(Hrouda D, Dalgleish AG. Gene therapy for prostate cancer. Gene Ther 3: 845-52, 1996)。 ベクターとしては、各種プラスミドおよびウィルスベクター、例えばアデノウィルス、アデノ関連ウィルス、レトロウィルス、ワクシニアウィルス等が挙げられる(Liu M, Acres B, Balloul JM, Bizouarne N, Paul S, Slos P, Squiban P. Gene-based vaccines and immunotherapeutics. Proc Natl Acad Sci U S A 101 Suppl, 14567-71, 2004)。ベクターの調製方法は当業界にて周知である(Molecular Cloning: A laboraroy manual, 2nd edn. New York, Cold Spring Harbor Laboratory)。
【0031】 がん免疫療法の治療効果の予測方法 本発明は、第三の側面において、被験者由来の試料から、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)を検出する工程を含む、がん免疫療法の治療効果の予測方法を提供する。 被験者は、がん患者であり得、例えば、がん免疫療法を受ける前のがん患者または既にがん免疫療法を受けているがん患者であり得る。また、被験者は、化学療法(例えば、イリノテカン、オキサリプラチンおよび/またはフルオロピリミジンによる化学療法)を受けており、当該化学療法が有効でなかったがん患者であってもよく、ペプチドワクチン療法に用いる予定のペプチドに対する抗体を血中に有するがん患者であってもよい。がん免疫療法は、能動免疫療法であっても受動免疫療法であってもよく、限定はされないが、ペプチドワクチン療法、樹状細胞ワクチン療法および免疫チェックポイント阻害剤による治療が例示され、好ましくは、ペプチドワクチン療法である。がんの例としては、限定はされないが、前立腺がん、すい臓がん、肺がん、子宮頸がん、子宮体がん、胃がん、メラノーマ、甲状腺がん、脳腫瘍、造血器種、食道がん、肝臓がん、大腸がん(結腸直腸がん)、胆道がん、乳がん、膀胱がん、腎がん、骨軟部腫瘍、精巣がん、頭頸部がん、卵巣がんが挙げられ、例えば、初期または進行した大腸がんが挙げられる。 被験者由来の試料は、がん患者由来の遺伝子サンプル(例えば、ゲノムDNA、RNA)であり得る。がん患者の組織由来の遺伝子サンプルの例には、限定はされないが、血液から得られた遺伝子サンプル、口腔粘膜から得られた遺伝子サンプルが挙げられる。被験者由来の試料は、例えば、被験者の末梢血単核球(Peripheral blood mononuclear cells)から抽出されたDNAであってもよい。
【0032】 ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)の検出は、リアルタイムPCR検出法(例えば、TaqMan(登録商標)プローブ法)、Invaderプローブ法、DNAチップを用いたSNPタイピング法、PCR-RFLP法、PCR-SSCP法等の当業者に周知の方法により達成することができる。
【0033】 一つの実施態様では、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)の検出法としてリアルタイムPCR検出法(例えば、TaqMan(登録商標)プローブ法)を採用することができる。リアルタイムPCR検出は、例えば以下の工程を含む: (i)フォワードプライマー、リバースプライマーおよびプローブを用意する(ここで、フォワードプライマーとリバースプライマーは、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の塩基を含むヒトIL-6R遺伝子断片を増幅することができる、例えば10~50塩基、15~40塩基、15~35塩基のオリゴヌクレオチドである;プローブは、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の塩基を含む、該フォワードプライマーと該リバースプライマーで増幅されるヒトIL-6R遺伝子断片に結合する例えば10~50塩基、15~40塩基、15~35塩基のオリゴヌクレオチドであってレポーター蛍光色素(例えば、FAM(6-カルボキシ-フルオレセイン)のようなフルオレセイン系蛍光色素)とクエンチャー蛍光色素(例えば、TAMRA(6-カルボキシ-テトラメチル-ローダミン)のようなローダミン系蛍光色素)が結合する)、 (ii)(i)で用意したプライマーとプローブを用い、被験者由来のDNAを鋳型にPCRを行う。 上記(i)~(ii)の工程を行うことにより、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型を検出することができる。 TaqMan(登録商標)プローブ法を採用する場合は、アプライドバイオシステムズ社が提供するキットを用いることができる。適切なフォワードプライマー、適切なリバースプライマーおよび適切なTaqManプローブを用いたPCRを行うことにより、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型を検出することができる。
【0035】 一つの実施態様では、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)の検出法としてDNAチップを用いたSNPタイピング法を採用することができる。例えば、口腔粘膜、血液等の被験者由来の試料よりmRNAを抽出し、抽出したmRNAより蛍光基を結合させたcDNAを調製し、調製したcDNAをDNAチップに添加し、DNAチップ上の検出したいヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子型を含むプローブとハイブリダイズさせ、洗浄後蛍光を測定することにより、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型を検出することができる。
【0036】 一つの実施態様では、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型(Reference SNP ID:rs8192284)の検出法としてPCR-RFLP法またはPCR-SSCP法を採用することができる。例えば、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の塩基を含むヒトIL-6R遺伝子断片を増幅することができるフォワードプライマーとリバースプライマー(両プライマーは、例えば、10~50塩基、15~40塩基、15~35塩基のオリゴヌクレオチドである)を用いてPCRを行い、得られたPCR産物を、PCR-RFLP法では適切な制限酵素で分解し、PCR-SSCP法では、ホルムアミドの存在下で熱変性(加熱・急冷)させて、電気泳動(アガロースゲル電気泳動またはポリアクリルアミドゲル電気泳動)することにより、ヒトIL-6R遺伝子の48892番目の遺伝子多型を検出することができる。
【0040】 がん免疫療法が、ペプチドワクチン療法の場合、本発明が提供するがん免疫療法の治療効果の予測方法は、さらに、ペプチドワクチン投与前および/または投与後の被験者由来の血液試料中の該ペプチド特異的IgGの量を測定することを含んでもよい。例えば、抗ペプチド抗体(IgG)のレベルは、Luminex(商標)法により既報のように測定できる(Komatsu N et al, Scand J Clin Invest 2004;64:1-11)。一つの実施態様において、ペプチドワクチン投与後の血液試料中(血清または血漿中)の該ペプチド特異的IgGの量が、ペプチドワクチン投与前に比較し増加した場合には、被験者はがん免疫療法が有効であると予測される。かかる結果はまた、被験者において当該ペプチドワクチンによるがん免疫療法が有効であることのひとつの指標として用いることができる。例えば、ペプチドワクチン投与後の血液試料中(血清または血漿中)の該ペプチド特異的IgGの量が、ペプチドワクチン投与前に比較し2倍以上増加した場合には、被験者はがん免疫療法が有効であると予測される。一つの実施態様において、ペプチドワクチン投与直前の血清または血漿のペプチド特異的IgGの量と、1週間1回投与で6回投与後の血清または血漿のペプチド特異的IgGの量を比較し、2倍以上増加した場合には、被験者はがん免疫療法が有効であると予測される。