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Specification :(In Japanese)3-ハロアラインを生成するための合成中間体及びその合成方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P6461914
Date of registration Jan 11, 2019
Date of issue Jan 30, 2019
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)3-ハロアラインを生成するための合成中間体及びその合成方法
IPC (International Patent Classification) C07F   7/08        (2006.01)
C07C  17/361       (2006.01)
C07C  25/02        (2006.01)
C07C  25/13        (2006.01)
C07C 231/12        (2006.01)
C07C 233/15        (2006.01)
C07D 295/067       (2006.01)
C07D 249/18        (2006.01)
C07D 243/14        (2006.01)
C07D 311/18        (2006.01)
FI (File Index) C07F 7/08 CSPC
C07C 17/361
C07C 25/02
C07C 25/13
C07C 231/12
C07C 233/15
C07D 295/067
C07D 249/18 501
C07D 243/14
C07D 311/18
Number of claims or invention 6
Total pages 26
Application Number P2016-507803
Date of filing Mar 11, 2015
International application number PCT/JP2015/057210
International publication number WO2015/137417
Date of international publication Sep 17, 2015
Application number of the priority 2014050883
Priority date Mar 13, 2014
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Date of request for substantive examination Mar 6, 2018
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】506208908
【氏名又は名称】学校法人兵庫医科大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】吉岡 英斗
【氏名】宮部 豪人
Representative (In Japanese)【識別番号】110002077、【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
Examiner (In Japanese)【審査官】水島 英一郎
Document or reference (In Japanese)Chem. Commun.,2010年,46,5154-5156
J. Org. Chem.,2009年,74,8842-8843
Nature Chemistry,2013年,5,54-60
Chemistry Letters,1983年,1211-1214
Field of search C07C
C07D
C07F
C07B
CAplus(STN)
CASREACT(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
-H(水素)基と、該-H基が結合する炭素原子に隣接する両隣の炭素原子に、トリアルキルシリルオキシ基と、-X基[XはF、Cl又はBrである]とを有する芳香族化合物を、リチウムアミド、又はマグネシウムアミドもしくは亜鉛アミドとリチウム塩とのアート錯体型の複塩と反応させる工程を含む、
トリアルキルシリル基と、該トリアルキルシリル基が結合する炭素原子に隣接する両隣の炭素原子に、-OSO2R1基[R1はCmF2m+1(mは整数)あるいはアルキルで置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール基である]と、-X基[XはF、Cl又はBrである]とを有する芳香族化合物を合成するための方法。
【請求項2】
-H(水素)基と、該-H基が結合する炭素原子に隣接する両隣の炭素原子に、トリアルキルシリルオキシ基と、-X基[XはF、Cl又はBrである]とを有する芳香族化合物を、リチウムアミド、又はマグネシウムアミドもしくは亜鉛アミドとリチウム塩とのアート錯体型の複塩と反応させ、トリアルキルシリル基と、該トリアルキルシリル基が結合する炭素原子に隣接する両隣の炭素原子に、-OSO2R1基[R1はCmF2m+1(mは整数)あるいはアルキルで置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール基である]と、-X基[XはF、Cl又はBrである]とを有する芳香族化合物を得る工程と、
前記芳香族化合物にフッ化物イオンを反応させる工程とを含む、アラインを生成するための方法。
【請求項3】
-H(水素)基と、該-H基が結合する炭素原子に隣接する両隣の炭素原子に、トリアルキルシリルオキシ基と、-X基[XはF、Cl又はBrである]とを有する芳香族化合物を、リチウムアミド、又はマグネシウムアミドもしくは亜鉛アミドとリチウム塩とのアート錯体型の複塩と反応させ、
トリアルキルシリル基と、該トリアルキルシリル基が結合する炭素原子に隣接する両隣の炭素原子に、-OSO2R1基[R1はCmF2m+1(mは整数)あるいはアルキルで置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール基である]と、-X基[XはF、Cl又はBrである]とを有する芳香族化合物を得る工程と、
該芳香族化合物にフッ化物イオンを反応させ、アラインを生成する工程と、
該アラインに求核剤を反応させる工程と、
を含む、多環性芳香族化合物又は置換芳香族化合物を合成するための方法。
【請求項4】
トリアルキルシリル基と、該トリアルキルシリル基が結合する炭素原子に隣接する両隣の炭素原子に、-OSO2R1基[R1はCmF2m+1(mは整数)あるいはアルキルで置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール基である]と、フルオロ基とを有する芳香族化合物であって、
前記トリアルキルシリル基、-OSO2R1基及びフルオロ基が直接結合している環が炭素六員芳香族環である該炭素六員芳香族環単環化合物又は該炭素六員芳香族環の縮合環化合物である、芳香族化合物。
【請求項5】
請求項4に記載の化合物からなるアラインの生成のための中間体。
【請求項6】
請求項4に記載の化合物にフッ化物イオンを反応させることを含む、アラインを生成するための方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、3-ハロアラインを生成するための合成中間体及びその合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アライン(1,2-ベンザインまたはo-ベンザイン、単にベンザインとも言う)は、芳香環上に三重結合を有する反応性の高い化学種の総称である。アラインは反応性に富むため、多環性複素環類等の生物活性物質や機能性分子の合成など多方面で利用されている(非特許文献1、特許文献1、2)。
アラインを生成する方法としては主に、高温や強塩基性などの過酷な反応条件を必要とするものが知られていた。1983年に温和な条件下でアラインを発生する方法として、芳香環上に隣接するトリメチルシリル基とトリフルオロメタンスルホン酸エステル基を用いる方法が報告された(非特許文献2)。また、3-ハロアラインを温和な条件下で生成する前駆体として、6-トリメチルシリル-2-ハロフェニルトリフルオロメタンスルホナート(非特許文献3)や6-ブロモ-4-トリメチルシリル-1H-インドール-5-イルトリフルオロメタンスルホナート(非特許文献4)が報告されたが、この前駆体は本発明とは異なる化合物であり、その合成法も異なる。
以下の文献は、それぞれが参照により本明細書に援用される。

【非特許文献1】P. M. Tadross and B. M. Stoltz, Chem. Rev., 2012, 112, 3550-3577.
【非特許文献2】H. Kobayashi, et al., Chem. Lett., 1983, 12, 1211-1214.
【非特許文献3】H. Yoshida, et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 8629-8632.
【非特許文献4】N. K. Garg, et al., J. Am. Chem. Soc., 2011, 133, 3832-3835.
【非特許文献5】R. C. Larock, et al., Org. Biomol. Chem., 2013, 11, 191-218.
【非特許文献6】S. M. Bronner and N. K. Garg, J. Org. Chem., 2009, 74, 8842-8843.
【非特許文献7】A. E. Goetz and N. K. Garg, Nature Chem., 2013, 5, 54-60.
【非特許文献8】M. F. Greanye, et al., Chem. Commun., 2013, 49, 7602-7604.
【特許文献1】特開平10-245367号公報
【特許文献2】国際公開第2014/024212号
【発明の概要】
【0003】
アライン生成の前駆体を合成するための従来の方法では、ハロゲン-リチウム交換反応を経由するため、目的の位置にハロゲンを選択的に導入し、あるいは除去するという多数の工程の実験操作が必要となっていた。また、ハロゲン置換された炭素六員環芳香族化合物は、ハロゲン原子隣接位へのアニオンの生成に伴い、ハロゲン原子が脱離してアラインを生成することが知られていた。ヘテロ環六員環芳香族化合物は、芳香環上のアニオンがより安定で生成しやすいため、ハロゲン-リチウム交換反応を経由することなく前駆体を合成することができ、この点でヘテロ環アライン前駆体化合物よりも、炭素六員環アライン前駆体を合成することの方がより困難を伴う。こうした背景から、ハロゲン置換された炭素六員環アライン前駆体化合物の系統的合成はほとんど行われていなかった。
【0004】
また、アラインを経由する各種芳香族化合物の合成においては、置換基を有する非対称なアラインを基質として用いた場合、2つの位置異性体が生成する可能性があるため、より反応位置選択性の高い方法が求められていた。
本発明では、より少ない工程数で、簡便に、様々なハロゲン置換されたアライン前駆体を合成することに成功した。また、ハロゲンを有することで、アラインの反応の位置選択性の向上も実現した。
【0005】
すなわち、本発明によると、トリアルキルシリル基と、該トリアルキルシリル基に隣接する両隣の位置に、-OSO2R1基と、-X基とを有する芳香族化合物が提供される。
特に、上記トリアルキルシリル基、-OSO2R1基及び-X基が直接結合している環が炭素六員環である芳香族化合物が好的に提供される。
また、上記芳香族化合物を含むアラインの生成のための合成中間体又は合成前駆体あるいは合成中間体又は合成前駆体としての使用が提供される。
また、上記芳香族化合物にフッ化物イオンを反応させることを含む、アラインの生成方法が提供される。
また、本発明によれば、-H(水素)基と、該-H基に隣接する両隣の位置に、トリアルキルシリルオキシ基と、-X基とを有する芳香族化合物を、リチウムアミド、又はマグネシウムアミドもしくは亜鉛アミドとリチウム塩とのアート錯体型の複塩と反応させる工程を含む、芳香族化合物(アライン生成中間体)を合成するための方法(合成方法)が提供される。ここで、更なる発明では、上記芳香族化合物(アライン生成中間体)は、-OSO2R1基及び-X基が直接結合している環が炭素六員環である上記芳香族化合物である。
【0006】
ここで、上記発明において、R1はCmF2m+1(mは整数)あるいはアルキルで置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール基である。XはF、Cl又はBrである。
【0007】
また、本発明によれば、芳香族部分が、ベンゼン、ナフタレン、インドール、ベンズイミダゾール、キノリン、イソキノリン又はベンゾフランを含む上記発明がさらに提供される。また、本発明によれば、芳香族部分が、ベンゼン、ナフタレン、インドール、キノリン、イソキノリン又はベンゾフランを含む上記発明がさらに提供される。なお、これらの芳香族部分はさらに置換されていてもよい。
【0008】
本発明では、少ない工程数で、簡便に合成されるアライン生成中間化合物が提供される。この化合物により、より簡便にアラインを経由した合成反応を行うことができる。また、特定の位置にハロゲンが導入されていることで、この合成中間体化号物から生成されたアラインの反応も位置選択的となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔用語の説明〕
本明細書中においては、次の用語は以下に示す意味を有する。

【0010】
「ハロゲン」もしくは「ハロ」という用語は、特記のない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
「シアノ」という用語は、-CN基を意味する。
「三級アミノ」という用語は、-NH2基において、水素が、水素以外の置換基Rに置換した基を意味する。好ましくは、Rは置換されていてもよいアルキル基である。
「ニトロ」という用語は、-NO2基を意味する。
「スルホニル」という用語は、二価の基である-S(=O)2-基を意味する。
「カルボニル」という用語は、二価の基である-(C=O)-基を意味する。

【0011】
「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」または「シクロアルキル」という用語は、一価の基のみならず、場合によっては二価またはそれ以上の基を意味する。例えば、二価の基を意味する場合、それぞれ、「アルキレン」、「アルケニレン」、「アルキニレン」または「シクロアルキレン」と同じ意味で用いられる。
「Cx-yアルキル」、「Cx-yアルケニル」、「Cx-yアルキニル」または「Cx-yシクロアルキル」という用語の接頭辞は、xからy個の炭素原子を有するそれぞれの基を意味し、以下に示す特定の鎖長の基は、「Cx-yアルキル」、「Cx-yアルケニル」、「Cx-yアルキニル」または「Cx-yシクロアルキル」の代表例である。
また、任意の二価以上の基について、単環あるいは複環を形成可能な位置で置換する場合、特に限定されない限り、その二価以上の基は環構造を形成してもよい。

【0012】
「C1-6アルキル」または「C1-6アルキレン」という用語は、1から6の炭素原子を有する、分岐状または直鎖状の飽和炭化水素基を意味し、例えば、C1-3アルキル、C1-4アルキル、C1-6アルキル、C2-6アルキル、C3-6アルキルなどを含む。代表的なC1-6アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル(例えば、プロパン-1-イル、プロパン-2-イル[もしくはiso-プロピル])、ブチル(例えば、2-メチルプロパン-2-イル[もしくはtert-ブチル]、ブタン-1-イル、ブタン-2-イル)、ペンチル(例えば、ペンタン-1-イル、ペンタン-2-イル、ペンタン-3-イル)、2-メチルブタン-1-イル、3-メチルブタン-1-イル、ヘキシル(例えば、ヘキサン-1-イル)などが挙げられる。

【0013】
「C2-6アルケニル」または「C2-6アルケニレン」という用語は、2から6の炭素原子と、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合とを有する直鎖状または分岐鎖状の非芳香族性の炭化水素基を意味し、例えば、C2-3アルケニル、C2-4アルケニル、C2-6アルケニル、C3-6アルケニル、C4-6アルケニルなどを含む。代表的なC2-6アルケニル基としては、例えば、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、iso-プロペニル、1,3-ブタジエニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、2,4-ヘキサジエニル、および5-ヘキセニルなどが挙げられる。

【0014】
「C2-6アルキニル」または「C2-6アルキニレン」という用語は、2から6の炭素原子と、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合とを有する直鎖状または分岐鎖状の非芳香族性の炭化水素基を意味し、例えば、C2-3アルキニル、C2-4アルキニル、C2-6アルキニル、C3-6アルキニル、C4-6アルキニルなどを含む。代表的なC2-6アルキニル基としては、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、2-メチル-1-プロピニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、3-メチル-2-ブチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、および5-ヘキシニルなどが挙げられる。
「C3-6シクロアルキル」という用語は、3から6の炭素原子を有する飽和単環性炭素環を意味する。代表的なC3-6シクロアルキルとしては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。

【0015】
「アルコキシ」または「アルキルオキシ」という用語は、Rが前述のアルキルである-O-R基を意味する。また、「Rオキシ」という用語を用いる場合、それは一価または二価の基である-O-R基を意味する。
例えば、「C1-6アルコキシ」という用語は、C1-6アルキル-O-基を意味し、例えば、C1-3アルコキシ、C1-4アルコキシ、C1-6アルコキシ、C2-6アルコキシ、C3-6アルコキシなどを含む。代表的なC1-6アルコキシとしては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロパ-オキシ(例えば、1-プロパ-オキシ、2-プロパ-オキシ[もしくはiso-プロポキシ])、ブトキシ(例えば、1-ブトキシ、2-ブトキシ、2-メチル-2-プロパ-オキシ[もしくはtert-ブトキシ])、ペンタ-オキシ(1-ペンタ-オキシ、2-ペンタ-オキシ)、ヘキサ-オキシ(1-ヘキサ-オキシ、3-ヘキサ-オキシ)などが挙げられる。

【0016】
「複素環基」という用語は、炭素以外の原子(ヘテロ原子)、例えば、窒素、酸素、硫黄、SOおよびS(=O)2から選択される一または複数のヘテロ原子を環中に含む単環、二環もしくは多環の、飽和または不飽和の非芳香族性基あるいは芳香族性基(ヘテロアリール基)を意味する。複素環基には、例えば、非芳香族性環状アミノ基が含まれ、好ましくは非プロトン性の基である。本発明における複素環基は、好ましくは、五~七員環、さらに好ましくは、五員環または六員環である。代表的な複素環基としては、例えば、モルホリノ、オキサジニル、ジヒドロオキサジニル、ピペラジニル、チオモルホリノ、ピペリジノ、ピロジニル、ホモモルホリノ、ピロリニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チエニルまたはフリルなどが挙げられる。

【0017】
「アリール」という用語は、単環、二環もしくは多環性炭素環芳香族環を意味する。代表的なアリールとしては、フェニル、ナフタレニルなどが挙げられる。
「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素、硫黄、SOおよびS(=O)2から選択される一または複数のヘテロ原子を含む単環、二環もしくは多環性ヘテロ芳香族環を意味する。代表的なヘテロアリールとしては、ピリジル、ピリミジニル、インドリル、チアゾリル、ベンゾフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、イミダゾリル、ピラゾリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾチオフェニルなどが挙げられる。

【0018】
「飽和又は不飽和の」という用語は、対象の基が、二重結合または三重結合を含まない飽和基であるか、あるいは、少なくとも一つの二重結合または三重結合を含む不飽和基であるかのどちらかであることを意味する。
「置換されていてもよい」という用語は、対象の基が、無置換であるか、あるいは、1または複数の特定の置換基により置換されているかのどちらかであることを意味する。例えば、置換数は、1、2、3、4、または5などであるが、好ましくは1、2または3、より好ましくは1または2、さらにより好ましくは1の置換数が用いられる。対象の基が複数の置換基により置換されている時、置換基は同じでもよく、異なっていてもよい。

【0019】
「中間体」、「合成中間体」又は「生成中間体」という用語は、製造工程又は化学反応(有機合成)において、出発原料又は前段階の反応物から反応によって生成し、またさらに反応して最終生成物を与えるもののことをいい、その用途により限定されたもののことをいう。すなわち、この場合、最終生成物は、中間体を経由して合成される。特に本願において、一工程もしくは一反応、又は実質的な一工程もしくは一反応(例えば、連続的な複数の反応を用いる場合)で最終生成物を与える中間体のことを、「前駆体」と称することもある(すなわち、中間体は前駆体を含む)。実質的に前駆体として用いられるものであっても、他の部分を修飾するために、複数の工程を経た後に最終生成物を与えることもある。

【0020】
上記の用語の一部は、構造式中に複数回用いられてもよく、それぞれの用語は、互いに独立した範囲であってもよい。
上記の用語の一部は、組み合わせて用いられ得るが、その場合、最初に記された基が、後に記された基上の置換基となり、置換点(付加点)は、その基全体の最後に記された部分上にある。

【0021】
〔発明の背景〕
アラインの生成方法としては、高温や強塩基性などの苛酷な条件を必要とするものがほとんどであり、工業的利用における経済性や、化合物中の他の構造に対する影響(置換基の保護が必要、等)などの点で、更なる改善が望まれていた。
加えて、従来、アラインの生成においては、芳香環上のハロゲン原子(F、Cl、Br及びI原子)は、強塩基を用いたアライン生成の脱離基として利用されてきた。
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【0022】
また、ハロゲン原子は、Grignard反応やハロゲン-金属交換反応を経由するアライン生成法にも利用されてきた。これらのことから、ハロゲン原子を有するアラインを従来法で効率的に発生するのは容易ではなかった。
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【0023】
ハロゲン原子を含むアライン前駆体化合物については、ほとんど報告されておらず、これまでに報告されている化合物及びその合成方法は、本発明の化合物及びその合成方法とは異なるものである。
例えば、塩素原子(臭素原子も同様)を有するアライン前駆体の合成方法として、下図式(1)のように、ハロゲン-リチウム交換を経て合成する方法が報告されていた(非特許文献3)。
また、フェノール性水酸基の隣接位に、ハロゲン-リチウム交換反応を用いず直接置換基を導入する方法として、式(2)のように、フェノール性水酸基に保護基兼配向性置換基を導入した後に、芳香環上にアニオンを発生させてアライン前駆体を合成する方法も報告されている(非特許文献6)。また、非特許文献6の手法を用いた隣接位に臭素原子を有するアライン前駆体の合成方法(非特許文献4)、アニオンが発生し易いというヘテロ環の特性を利用したヘテロ環アライン前駆体の合成方法(非特許文献7)も報告されているが、これらの何れも本発明とは異なるものである。

【0024】
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【0025】
なお、上記した既知のアライン前駆体の合成は、一般に高コストであり、発生効率も本発明の方が優れている。例えば、式(1)の方法では、原料中のハロゲン原子が反応中に除去されており、本発明と比較してハロゲン原子導入コストが高く、式(2)の方法では、保護基兼配向性基の導入と除去が必要であり、過剰量が用いられてもいるため、試薬のコストが高くなる。また、例えば、式(1)の方法や非特許文献4に記載された方法と比較して、本発明の方法はアラインの生成効率に優れている。

【0026】
〔実施形態〕
以下に本発明の実施の形態について説明する。

【0027】
本発明のある態様は、トリアルキルシリル基と、該トリアルキルシリル基に隣接する両隣の位置に、-OSO2R1基[R1はCmF2m+1(mは整数)あるいはアルキルで置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール基である]と、-X基[XはF、Cl又はBrである]とを有する芳香族化合物であって、前記トリアルキルシリル基、-OSO2R1基及び-X基が直接結合している環が炭素六員環である芳香族化合物である。
本発明の他の態様は、-H(水素)基と、該-H基に隣接する位置に、トリアルキルシリルオキシ基と、-X基[XはF、Cl又はBrである]とを有する芳香族化合物を、リチウムアミド、又はマグネシウムアミドもしくは亜鉛アミドとリチウム塩とのアート錯体型の複塩と反応させる工程を含む、アライン生成中間体化合物(トリアルキルシリル基と、該トリアルキルシリル基に隣接する両隣の位置に、-OSO2R1基[R1はCmF2m+1(mは整数)あるいはアルキルで置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール基である]と、-X基[XはF、Cl又はBrである]とを有する芳香族化合物)を合成するための方法(合成方法;または製造するための方法(製造方法))である。
本発明のある別の態様は、上記トリアルキルシリル基、-OSO2R1基及び-X基が直接結合している環が炭素六員環である、上記態様の方法である。

【0028】
本発明の芳香族化合物は、フッ化物イオンと反応させることにより、温和な条件で容易にアライン(3-ハロアライン)を発生させることができる。本芳香族化合物から生成したアラインは、種々の求核剤と位置選択的に反応し、種々の置換芳香族化合物を与える。更には、ジエン類などを付加させた場合には、多環性芳香族化合物も得ることができる。
本発明の芳香族化合物は、その特徴的な置換基の配置(トリアルキルシリル基に隣接する両隣の位置に、-OSO2R1基と、-X基とを有する配置)を利用して、一般的なアライン生成中間体化合物と異なり、少ない工程数で、より簡便に合成することができる。さらに、従来方法に比べ、用いる試薬数も少ないため、経済的であり得る。さらに、工程数や用いる試薬数が少ないため、生成物の処理や精製もより簡便となり得、総じて良好な収率を与える。これらのことにより、工業的に実現可能な水準で、多彩な置換基を有するアライン前駆体を供給し得る。

【0029】
特に、ハロゲン置換ヘテロ環アライン前駆体(非特許文献7)は、従来法でも合成することは可能ではあったが、ヘテロ環よりアニオンの発生しにくい炭素六員環を有するハロゲン置換アライン前駆体化合物(本発明の置換基配置を有するもの)については、従来法で合成することは容易ではなく、煩雑な反応が必要であった。
また、この芳香族化合物は、保存安定性も高く、例えば、-30℃~室温下で一~二年程度以上といった長期保存も可能となり得る。さらに、この芳香族化合物は、湿気のない条件での保存が好ましいが、通常の空気中でも保存し得る。

【0030】
上記態様のアライン生成中間体化合物は、「-H(水素)基と、該-H基に隣接する位置に、トリアルキルシリルオキシ基と、-X基[XはF、Cl又はBrである]とを有する芳香族化合物」(出発原料のシリルエーテル化合物)を、特定の強塩基で処理する工程を含む方法により、合成することができる。特定の強塩基としては、リチウムアミド、又はマグネシウムアミドもしくは亜鉛アミドとリチウム塩とのアート錯体型の複塩などが挙げられる。上記工程の反応により、「トリアルキルシリル基と、該トリアルキルシリル基に隣接する両隣の位置に、ヒドロキシル基と、-X基[XはF、Cl又はBrである]とを有する芳香族化合物」(目的のフェノール化合物)を合成することができる。この化合物を、ハロアルキルスルホン酸エステル化試薬あるいは(アルキル置換)アリール又はヘテロアリールスルホン酸エステル化試薬(これに限定されるものではないが、CmF2m+1SO2F(例えば、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、ヘプタフルオロプロピルスルホニルフルオリド、パーフルオロブタンスルホニルフルオリド)、Tf2O(トリフルオロメタンスルホン酸無水物)、TsCl(塩化p-トルエンスルホニル)、塩化ベンゼンスルホニル、N,N’-スルホニルジイミダゾール等)を用い、常法に従って対応するスルホン酸エステルへと変換することにより、目的のアライン生成中間体化合物を合成することができる。

【0031】
なお、出発原料である「-H(水素)基と、該-H基に隣接する位置に、トリアルキルシリルオキシ基と、-X基[XはF、Cl又はBrである]とを有する芳香族化合物」(出発原料のシリルエーテル化合物)は、これに限定されるものではないが、対応する「-H(水素)基と、該-H基に隣接する位置に、ヒドロキシル基と、-X基[XはF、Cl又はBrである]とを有する芳香族化合物」(出発原料のフェノール化合物)に、シリルエーテル化試薬(HMDS(ビス(トリメチルシリル)アミン(別称:1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン))、TMSCl(塩化トリメチルシラン)、TBDMSCl(塩化t-ブチルジメチルシラン)等)を反応させ、常法に従ってシリルエーテル化することによって、得ることができる。なお、出発原料の上記シリルエーテル化合物は、これに限定されるものではなく、芳香環に対して、置換基導入反応等を行うことにより、様々な経路で合成可能である。

【0032】
上記態様のアライン生成中間体化合物の合成反応は、当業者であれば、反応させるシリルエーテル化合物等に応じて、適切な溶媒、温度等の諸条件を適宜設定できる。具体的な反応条件は、例えば、非特許文献5などの公知文献を参照にして設定することもできるが、一例として、これに限定されるものではないが、溶媒:非プロトン性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテルやこれらの混合溶媒など)、温度:-80℃~0℃といった条件が挙げられる。さらに、湿気のない条件下、例えばAr雰囲気下等での反応がより好ましい。

【0033】
上記態様の発明は、これに限定されるものではないが、以下のように図示することができる(芳香族化合物部分は、フェニルを用いて例示している)。
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【0034】
本発明のアライン生成中間体化合物は図中(4)の化合物であり、本発明のアライン生成中間体化合物の合成方法は、出発原料であるシリルエーテル(2)からフェノール化合物(3)への反応を特徴とする方法である。なお、シリルエーテル(2)の合成方法の一例としては、出発原料のフェノール化合物(1)のような、対応するフェノール化合物のシリルエーテル化を挙げることができる。
シリルエーテル(2)からフェノール化合物(3)への反応においては、強塩基を用いて塩素原子のortho位(図中2位)をアニオンとし、転位反応による2位へのシリル基の導入と1位フェノール性水酸基の再生とを一挙に達成している。本反応において、ハロゲン原子の脱離に伴うアラインの生成を抑制するため、シリル基の導入をmeta位(図中1位)のシリルエーテル基からの転位反応により達成している。このように、本発明の合成法では、シリルエーテル基とハロゲン原子を活用して、ハロゲン-リチウム交換反応を用いず、位置選択的にアニオンを発生させ、シリル基を導入することに成功している。

【0035】
また、本発明の更なる他の態様は、上記態様の芳香族化合物からなるアラインの合成中間体又は合成前駆体(アラインの生成のための合成中間体又は合成前駆体)である。
また、本発明の更なる他の態様は、上記態様の化合物にフッ化物イオンを反応させることを含む、アライン(3-ハロアライン)の生成方法である。
また、本発明の更なる他の態様は、上記態様の化合物にフッ化物イオンを反応させることで得られるアライン又は得られたアライン(3-ハロアライン)、あるいは上記態様の化合物にフッ化物イオンを反応させることで得られるアライン又は得られたアライン(3-ハロアライン)を含む反応混合物または産物である。

【0036】
本発明のアライン生成中間体化合物は、フッ化物イオンと反応させることにより、温和な条件で容易にアライン(例えば、ベンザイン、ナフトライン、ピリダイン等)を生成することができる。生成されたアラインは、種々の求核剤と位置選択的に反応し、種々の置換芳香族化合物や多置換芳香族化合物を与える。アラインは、生物活性物質や機能性分子の合成など多方面で利用可能である。
本発明のアライン生成中間体化合物は、一般的なアライン生成中間体化合物と異なり、少ない工程数で、より簡便に合成することができるため、より効率的にアラインを生成させることができる。また、その合成の際に本発明の合成方法を用いることにより、より高い収率で合成することもできる。さらに、その保存安定性が高いことも、所望する時にアラインを生成させる際に利便性が高い。

【0037】
本発明のアライン生成中間体化合物を用いたアラインの発生については、例えば、非特許文献1又は5、あるいは特許文献1に記載の方法など、公知の方法に従い、フッ化物イオンと反応させることにより、温和な条件で容易にアラインを生成することができる。
フッ化物イオンの供給源としては、TBAF(テトラ-n-ブチルアンモニウム フルオリド)、TBAHF2、CsF、KF、TBAT(テトラ-n-ブチルアンモニウム ジフルオロトリフェニルシリカート)、TBAH2F3、HF・ピリジン、HF・トリエチルアミンを例示することができるが、好ましくは、TBAF、TBAHF2、CsF、KF、TBAT、TBAH2F3、より好ましくは、TBAF、TBAHF2、CsFを用いることができる。

【0038】
フッ化物イオンを用いたアラインの生成反応自体は当業者には公知の反応であり、当業者であれば、常法(例えば、非特許文献1又は5、あるいは特許文献1)に従い反応条件を適宜設定することができる。具体的には、反応条件はフッ化物イオンが作用する条件であれば特に限定されるものではなく、そのような条件の一例として、これに限定されるものではないが、溶媒:極性非プロトン性溶媒(例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド(試薬兼溶媒)やこれらの混合溶媒など;アルコール溶媒は好ましくない)、温度:0~100℃、より好ましくは20~80℃(-80℃などの超低温は好ましくない)といった条件が挙げられる。さらに、湿気のない条件下、例えばAr雰囲気下等での反応がより好ましい。
本発明により生成されたアラインについては、そのまま反応系中で、種々の球核剤と反応させ、所望の化学構造を有する目的化合物を得ることができる。本発明によるアラインの生成は、比較的温和な条件で行われるため、当該化合物に存在するその他の置換基は影響を受けにくく、合成工程の最終工程付近で本発明を用いることも可能である。

【0039】
上記態様の発明(アラインの発生及びその後の反応)は、これに限定されるものではないが、以下のように図示することができる(芳香族化合物部分は、フェニルを用いて例示しており、代表的な最終生成物X、Y、Zを例示している)。
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【0040】
本発明の好ましいある態様は、芳香族化合物が、置換されていてもよいアリール又はヘテロアリールに、前記トリアルキルシリル基、-OSO2R1基及び-X基が結合した芳香族化合物である、上記何れかの態様の芳香族化合物(合成中間体)又は方法である。本発明のアライン前駆体合成方法は、トリアルキルシリル基、-OSO2R1基及び-X基の配置と性質を利用するため、本発明で規定される置換基さえ適切な配置で有していれば、他の部分の構造・骨格(例えば、単環、縮合環等)によらず、実施することができる。

【0041】
本発明の好ましいある別の態様は、芳香族化合物が、置換されていてもよいベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ナフタレン、インドール、ベンズイミダゾール、キノリン、イソキノリン、ベンゾフランまたはベンゾチオフェンあるいは置換されていてもよいベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ナフタレン、インドール、キノリン、イソキノリン、ベンゾフランまたはベンゾチオフェンに、前記トリアルキルシリル基、-OSO2R1基及び-X基が結合した芳香族化合物である、上記何れかの態様の芳香族化合物(合成中間体)又は方法である。芳香族部分は、さらに好ましくはベンゼン、ピリジン、ナフタレ、キノリン、ピリミジン、イソキノリンであり、さらにより好ましくはベンゼン、ピリジン、ナフタレンである。これらの部分を有する化合物では、より確実に本発明の効果を奏することができる。

【0042】
また、産業上の有用性、反応のより確実な進行あるいはアラインの反応選択性の観点に加え、従来の合成法による合成の困難性の観点(本発明により特に有利に合成することができる点)からは、芳香族部分は、ベンゼン環を含むことが好ましく、ベンゼン、ナフタレン、インドール、ベンズイミダゾール、キノリン、イソキノリン、ベンゾフランまたはベンゾチオフェンあるいはベンゼン、ナフタレン、インドール、キノリン、イソキノリン、ベンゾフランまたはベンゾチオフェンであることがさらに好ましく、ベンゼン、ナフタレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェンがさらにより好ましく、ベンゼン、ナフタレンがさらにより好ましい。

【0043】
上記何れかの態様の芳香族化合物(合成中間体)又は方法において、トリアルキルシリル基、-OSO2R1基及び-X基が直接結合する環は、六員環であることが好ましく、炭素六員環であることがさらに好ましい。本発明によれば、特に、炭素六員環アライン前駆体については、ヘテロ六員環アライン前駆体と比べ、従来法よりもさらに容易に合成することができる。

【0044】
また、上記芳香族化合物の芳香族部分(母環)は、目的化合物の構造に応じた任意の置換基によって置換されていてもよい。本発明のアライン生成中間体化合物の合成方法及び当該アライン生成中間体化合物からのアラインの生成方法は、温和な条件で進行する特異性の高い反応であるため、置換基についての制限は少なく、特に、脱プロトン化されにくく、転位しにくい官能基であれば有利に反応を進めることができる。

【0045】
このような一又は複数の置換基Rの具体例としては、これに限定されるものではないが、ハロゲン、ニトロ、シアノ、三級アミノ(二置換アミノ)、アルキル、ハロアルキル、アルケン、ハロアルケン、アルキン、ハロアルキン、アルコキシ、エステル(例えば、Rがここに定義されるRC(O)O-又はROC(O)-など)、スルホン酸エステル(例えば、Rがここに定義されるROS(=O)2O-など)、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、アリールアルコキシ、複素環基等が挙げられる。また、これらの置換基Rは、さらに一又は複数の置換基Rによって置換されていてもよい。上記置換基Rは、好ましくは、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、アルケン、アルキン、アリール、アリールオキシであり、より好ましくはハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシである。二以上の置換基Rは、一緒になって、環構造を形成していてもよい。
なお、本発明のアライン生成中間体化合物の芳香族部分に対する置換基としては、1~3、1又は2、あるいは1の何れの数の置換基が好適に用いられる。

【0046】
本発明のある態様は、Xがクロロ又はフルオロである、上記何れかの態様の芳香族化合物(合成中間体)又は方法である。Xがクロロ又はフルオロであることにより、本発明のアライン生成中間体化合物をより高い収率で合成することができる。収率やアラインの反応選択性の観点からはXがフルオロであることが有利であり、アラインを利用した反応生成物において、Xをアルキル、アリール、アルコキシ、ホルミル、アルキルカルボニルなど他の置換基へ変換することが容易であるという観点からは、Xがクロロであることが有利である。

【0047】
本発明のある態様は、R1がCmF2m+1(mは整数)である、上記何れかの態様の芳香族化合物(合成中間体)又は方法である。これに限定されるものではないが、m=1~4のものが好適に用いられ、特に、mが1又は4である-OSO2R1基、すなわちトリフルオロメタン/パーフルオロブタンスルホン酸基は、有機合成化学の分野において汎用されており、より容易に本発明を実施することができる。mが1であるトリフルオロメタンスルホン酸基が最も好ましい。

【0048】
本発明のある態様は、R1がアルキルで置換されていてもよいアリールである、上記何れかの態様の芳香族化合物(合成中間体)又は方法である。アリールがベンゼン、またはヘテロアリールがイミダゾールである、上記何れかの態様の芳香族化合物(合成中間体)又は方法である。特に、R1がトルエニルである-OSO2R1基、すなわちトルエンスルホン酸基は、有機合成化学の分野において汎用されており、より容易に本発明を実施することができる。

【0049】
本発明のある態様は、上記アルキルシリル基が、トリ低級アルキルシリル基、特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基又はtert-ブチルジメチルシリル基である、上記何れかの態様の芳香族化合物(合成中間体)又は方法である。これらの態様では、より確実に効率よく反応を行うことができるが、反応の効率の観点からは、トリメチルシリル基又はトリエチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が更に好ましい。

【0050】
本発明のある態様は、リチウムアミド、又はマグネシウムアミドもしくは亜鉛アミドとリチウム塩とのアート錯体型の複塩が、マグネシウムビステトラメチルピペリジド・2リチウム塩(Mg(TMP)2・2LiX)、リチウムアルキルアミド、ジンクビステトラメチルピペリジド・2リチウム塩(Zn(TMP)2・2LiX)、クロロ又はブロモマグネシウムテトラメチルピペリジド・リチウム塩((TMP)MgX・LiX)、あるいはクロロ又はブロモジンクテトラメチルピペリジド・リチウム塩((TMP)ZnX・LiX)である、上記何れかの態様の方法である(XはCl又はBrである)。これらの強塩基は、有機合成の分野で一般的に用いられており、より安価で確実に本発明の反応を行うことができる。これらの中では、収率の観点からは、Mg(TMP)2・2LiClが好ましく、調製の容易さなどの観点からは、リチウムアルキルアミドが好ましい。リチウムアルキルアミドの例には、これに限定されるものではないが、リチウムジイソプロピルアミド(LiN(i-Pr)2;LDA)やリチウムテトラメチルピペリジド(Li(TMP))が含まれる。

【0051】
本発明の芳香族化合物(アライン生成中間体化合物)から生成したアラインは、種々の求核剤と位置選択的(例えば、芳香族上の置換基Xに対するmeta位)に反応し、多置換芳香族化合物を与える。アラインと求核剤とを用いた反応としては多数の反応が公知であり、目的とする化合物の構造に応じて所望の求核剤及び反応を用いることができる。反応の例としては、ジエン類(例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、アントラセン等)を用いたDiels-Alder型の付加反応により、多環性芳香環を合成できるほか、公知の方法により様々な多環性複素環(例えば、イソキノリン、キサンテン、クマリン、インドリン、クロメン、ジヒドロベンゾフラン、ベンゾフランの誘導体)を合成することが挙げられる。

【0052】
また、芳香環上にF、Cl又はBrを有する化合物(例えば、エファピレンツ、シタフロキサンなどの医薬品、又はバーバマート、シハロホップブチル、ハロキシホップなどの農薬、又はそれらの誘導体)は、本発明のアライン生成中間体化合物の構造を利用して合成することもできる。
また、実際の合成例は後述するが、ベンゾジアゼピン系化合物の合成中間体(テトラヒドロベンゾジアゼピン系化合物)を簡便に合成することもでき、種々のベンゾジアゼピン系医薬品および誘導体の合成に利用することができる。
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【0053】
さらに、本発明のアライン生成中間体化合物の反応選択性を利用して、アライン経由の置換基導入を行った後に、公知の各種カップリング反応により、芳香環上の置換基Xを、炭素原子、窒素原子、酸素原子等に変換することにより、従来にない戦略で所望の構造の化合物を合成することもできる。

【0054】
なお、上記態様により説明される合成中間体化合物並びに各合成方法等は、本発明を限定するものではなく、例示することを意図して開示されているものである。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載により定められるものであり、当業者は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲において種々の設計的変更が可能である。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【実施例】
【0056】
〔アライン前駆体の合成〕
TMSエーテル(シリルエーテル)調製の手順
出発原料のフェノール化合物(20.0mmol)の、新たに蒸留したTHF(20mL)溶液に、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS、6.26mL、30.0mmol)を、室温、Ar雰囲気下で添加した。3~12時間、50℃で攪拌した後、反応混合液を減圧下で濃縮した。残渣を精製せずに、次の反応に用いた。
【実施例】
【0057】
試薬MgTMP2・2LiCl調製の手順
金属マグネシウム(削り屑状、535mg、22.0mmol)の、新たに蒸留したTHF(55mL)懸濁液に、1,2-ジクロロエタン(1.72mL、22.0mmol)を、室温、Ar雰囲気下で添加し、室温で1時間攪拌し、MgCl2溶液を調製した。別の二口フラスコで、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(TMPH、7.43mL, 44.0mmol)を、25℃でAr雰囲気下、新たに蒸留したTHF(22mL)に溶解させた。この溶液を-80℃に冷却し、n-BuLi(1.6Mヘキサン溶液、27.5 mL、44.0mmol)を滴下した。添加が完了した後、反応混合液を0℃に温め、その温度で30分間攪拌した。その後、上記MgCl2溶液をLiTMP溶液に滴下して加え、反応混合液を0℃で1時間攪拌し、MgTMP2・2LiCl溶液を調製した。
【実施例】
【0058】
2-TMS-1-ヒドロキシアレン類(ortho位TMS化フェノール化合物)の調製法(1)
TMSエーテル(20.0mmol)の、新たに蒸留したTHF(20mL)溶液に、MgTMP2・2LiCl(THF溶液、22.0mmol又は、24.0mmol)を-80℃、Ar雰囲気下で添加した。1時間、同じ温度で攪拌した後、反応混合液を0℃まで上昇させ、同じ温度で12時間攪拌した。反応混合液は、冷0.5M(+)-酒石酸ナトリウム溶液で希釈し、その後、ヘキサンあるいは酢酸エチルを用いて抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン=0:1~1:1)により精製し、2-TMS-1-ヒドロキシアレン類を得た。
【実施例】
【0059】
2-TMS-1-ヒドロキシアレン類(ortho位TMS化フェノール化合物)の調製法(2)
N,N-ジイソプロピルアミン(3.4mL、24.0mmol)の、新たに蒸留したTHF(12mL)溶液に、n-BuLi(1.6Mヘキサン溶液、15.0mL、24.0mmol)を-80℃、Ar雰囲気下で滴下した。添加が完了した後、反応混合液を0℃に温め、その温度で30分間攪拌し、LiN(i-Pr)2溶液を調製した。別の二口フラスコで、TMSエーテル(20.0mmol)の、新たに蒸留したTHF(20mL)溶液に、上記LiN(i-Pr)2溶液を-80℃、Ar雰囲気下で添加した。1時間、同じ温度で攪拌した後、反応混合液を0℃まで上昇させ、同じ温度で12時間攪拌した。反応混合液は、冷飽和食塩水で希釈し、その後、酢酸エチルを用いて抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン=0:1~1:1)により精製し、2-TMS-1-ヒドロキシアレン類を得た。
【実施例】
【0060】
スルホン酸エステルの調製法(1)
2-TMS-1-ヒドロキシアレン類(6.0mmol)の無水ジクロロメタン(15mL)溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.20mL、6.9mmol)を室温、Ar雰囲気下で添加した。この溶液を-40℃まで冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物あるいは塩化p-トルエンスルホニル(6.6mmol)を添加した。3~12時間、同一の温度で攪拌した後、反応混合液を氷水で希釈し、その後、ジクロロメタンを用いて抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン=0:1~1:6)により精製し、スルホン酸エステルを得た。
【実施例】
【0061】
スルホン酸エステルの調製法(2)
2-TMS-1-ヒドロキシアレン類(6.0mmol)の無水ピリジン(15mL)溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸無水物あるいは塩化p-トルエンスルホニル(6.6mmol)を-20℃、Ar雰囲気下で添加した。添加が完了した後、反応混合液を0℃に温め、3~12時間、同一の温度で攪拌した。反応混合液を冷飽和食塩水で希釈し、その後、酢酸エチルを用いて抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン=0:1~1:2)により精製し、スルホン酸エステルを得た。
【実施例】
【0062】
〔実験例〕
上記手順またはこれと同様の手順に従い、以下のアライン前駆体を合成した。特記のない原料等については、市販のものを用いた。
【実施例】
【0063】
〔3-クロロ-アライン前駆体の合成〕
(シリルエーテルの合成)
1-クロロ-3-(トリメチルシリルオキシ)ベンゼン
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.15 (1H, br t, J = 8.0 Hz), 6.95 (1H, ddd, J = 8.0, 2.1, 1.0 Hz), 6.85 (1H, br t, J = 2.1 Hz), 6.72 (1H, ddd, J = 8.2, 2.1, 1.0 Hz), 0.27 (9H, s).
(フェノール化合物の合成)
3-クロロ-2-(トリメチルシリル)フェノール
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.11 (1H, br t, J = 8.0 Hz), 6.91 (1H, d, J = 7.8 Hz), 6.60 (1H, d, J = 8.2 Hz), 5.20 (1H, br s), 0.45 (9H, s).
(アライン前駆体の合成1)
3-クロロ-2-(トリメチルシリル)フェニル トリフルオロメタンスルホナート
無色オイル。 IR (KBr) 2959, 1586, 1422, 1361 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.37 (1H, dd, J = 7.9, 1.5 Hz), 7.34 (1H, dd, J = 7.9 Hz), 7.26 (1H, dd, J = 7.9, 1.5 Hz), 0.49 (9H, s). 13C-NMR δC : 154.5, 142.4, 131.9, 131.2, 129.8, 118.9, 118.6, 1.3. 19F-NMR δF : -73.1 (3F, s). HRMS (ESI-) calcd for C7H335ClF3O3S (M-TMS-): 258.9449, Found: 258.9400; calcd for C7H337ClF3O3S (M+2-TMS-): 260.9420, Found: 260.9403.
(アライン前駆体の合成2)
3-クロロ-2-(トリメチルシリル)フェニル p-トルエンスルホナート
無色結晶。 Mp 70-72℃(ジクロロメタン-ヘキサン). IR (KBr) 2956, 2900, 1597, 1581, 1556, 1423, 1374 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.70 (2H, br d, J = 8.2 Hz), 7.32 (2H, br d, J = 8.2 Hz), 7.23 (1H, dd, J = 7.8, 1.0 Hz), 7.14 (1H, br t, J = 8.0 Hz), 6.87 (1H, dd, J = 8.2, 1.0 Hz), 2.45 (3H, s), 0.37 (9H, s). 13C-NMR δC : 154.8, 145.5, 141.9, 132.9, 132.4, 130.5, 129.8, 128.6, 128.5, 119.7, 21.7, 1.4. HRMS (ESI+) calcd for C16H1935ClO3SSiNa (M+Na+): 377.0405, Found: 377.0351; calcd for C16H1937ClO3SSiNa (M+2+Na+): 379.0097, Found: 379.0325.
【実施例】
【0064】
〔3,5-ジクロロ-アライン前駆体の合成〕
(シリルエーテルの合成)
1,3-ジクロロ-5-(トリメチルシリルオキシ)ベンゼン
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 6.98 (1H, t, J = 1.8 Hz), 6.74 (2H, d, J = 1.8 Hz), 0.28 (9H, s).
(フェノール化合物の合成)
3,5-ジクロロ-2-(トリメチルシリル)フェノール
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 6.93 (1H, d, J = 1.8 Hz), 6.64 (1H, d, J = 1.8 Hz), 5.77 (1H, br s), 0.43 (9H, s).
(アライン前駆体の合成)
3,5-ジクロロ-2-(トリメチルシリル)フェニル トリフルオロメタンスルホナート
無色オイル。 IR (KBr) 2959, 1579, 1538, 1429, 1368 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.39 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.28 (1H, d, J = 1.8 Hz), 0.48 (9H, s). 13C-NMR δC : 154.2, 142.9, 136.4, 130.5, 129.8, 119.6, 118.5 (q, J = 322 Hz), 1.2. 19F-NMR δF : -73.0 (3F, s). HRMS (ESI-) calcd for C10H1035Cl2F3O3SSi (M-H-): 364.9456, Found: 364.9396; calcd for C10H1035Cl37ClF3O3SSi (M+2-H-): 366.9426, Found: 366.9345. Calcd for C7H235Cl2F3O3S (M-TMS-): 292.9059, Found: 292.8981; Calcd for C7H235Cl37ClF3O3S (M+2-TMS-): 294.9093, Found: 294.8974.
【実施例】
【0065】
〔3-クロロ-5-トリフルオロメチル-アライン前駆体の合成〕
(シリルエーテルの合成)
1-クロロ-3-(トリメチルシリルオキシ)-5-(トリフルオロメチル)ベンゼン
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.22 (1H, br s), 7.00 (1H, t, J = 1.8 Hz), 6.96 (1H, br s), 0.30 (9H, s).
(フェノール化合物の合成)
3-クロロ-5-トリフルオロメチル-2-(トリメチルシリル)フェノール
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.17 (1H, br s), 6.84 (1H, br s), 0.47 (9H, s); 交換可能なOH基プロトンの検出は不明瞭であった。
(アライン前駆体の合成)
3-クロロ-5-トリフルオロメチル-2-(トリメチルシリル)フェニル トリフルオロメタンスルホナート
無色オイル。 IR (KBr) 2961, 1554, 1449, 1431 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.62 (1H, br d, J = 1.0 Hz), 7.48 (1H, br s), 0.51 (9H, s). 13C-NMR δC : 154.1, 143.3, 136.9, 133.6 (q, J = 35 Hz), 126.5 (q, J = 4 Hz), 122.2 (q, J = 273 Hz), 118.5 (q, J = 322 Hz), 116.1, 1.1. 19F-NMR δF : -63.9 (3F, s), -72.9 (3F, s). HRMS (ESI-) calcd for C8H235ClF6O3S (M-TMS-): 326.9323, Found: 326.9303; calcd for C8H237ClF6O3S (M+2-TMS-): 328.9294, Found: 328.9269.
【実施例】
【0066】
〔4-ブロモ-3,6-ジクロロ-アライン前駆体の合成〕
(シリルエーテルの合成)
1-ブロモ-2,5-ジクロロ-4-(トリメチルシリルオキシ)ベンゼン
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.59 (1H, s), 6.99 (1H, s), 0.30 (9H, s).
(フェノール化合物の合成)
4-ブロモ-3,6-ジクロロ-2-(トリメチルシリル)フェノール
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.20 (1H, s), 0.56 (9H, s); 交換可能なOH基プロトンの検出は不明瞭であった。
(アライン前駆体の合成)
4-ブロモ-3,6-ジクロロ-2-(トリメチルシリル)フェニル トリフルオロメタンスルホナート
無色オイル。 IR (KBr) 2961, 2901, 1552, 1434, 1361 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.47 (1H, s), 0.59 (9H, s). 13C-NMR δC : 145.1, 144.6, 135.2, 132.4, 130.0, 124.3, 118.5 (q, J = 322 Hz), 3.6. 19F-NMR δF : -73.8 (3F, s). HRMS (ESI-) calcd for C10H979Br35Cl2F3O3SSi (M-H-): 442.8560, Found: 442.8544; calcd for C10H9BrCl2F3O3SSi (M+2-H-): 444.8536, Found: 444.8517; calcd for C10H9BrCl2F3O3SSi (M+4-H-): 446.8509, Found: 446.8502. Calcd for C7H79Br35Cl2F3O3S (M-TMS-): 370.8164, Found: 370.8146; calcd for C7HBrCl2F3O3S (M+2-TMS-): 372.8140, Found: 372.8121; calcd for C7HBrCl2F3O3S (M+4-TMS-): 374.8113, Found: 374.8145.
【実施例】
【0067】
〔3-クロロ-4-メチル-アライン前駆体の合成〕
(シリルエーテルの合成)
2-クロロ-1-メチル-4-(トリメチルシリルオキシ)ベンゼン
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.06 (1H, d, J = 8.2 Hz), 6.86 (1H, d, J = 2.5 Hz), 6.65 (1H, dd, J = 8.2, 2.5 Hz), 2.29 (3H, s), 0.26 (9H, s).
(フェノール化合物の合成)
3-クロロ-4-メチル-2-(トリメチルシリル)フェノール
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.07 (1H, d, J = 8.2 Hz), 6.56 (1H, d, J = 8.2 Hz), 5.19 (1H, br s), 2.27 (3H, s), 0.46 (9H, s).
(アライン前駆体の合成)
3-クロロ-4-メチル-2-(トリメチルシリル)フェニル トリフルオロメタンスルホナート
無色オイル。 IR (KBr) 2959, 1575, 1422 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.28 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.15 (1H, d, J = 8.2 Hz), 2.38 (3H, s), 0.49 (9H, s). 13C-NMR δC : 152.4, 134.2, 136.9, 132.5, 131.9, 118.8, 118.5 (q, J = 323 Hz), 20.7, 1.5. 19F-NMR δF : -73.0 (3F, t, J = 2 Hz). HRMS (ESI-) calcd for C8H535ClF3O3S (M-TMS-): 272.9605, Found: 272.9602; calcd for C8H537ClF3O3S (M+2-TMS-): 274.9577, Found: 274.9544.
【実施例】
【0068】
〔2-クロロ-3,4-アライン前駆体の合成〕
(シリルエーテルの合成)
2-クロロ-3-(トリメチルシリルオキシ)ピリジン
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 8.02 (1H, dd, J = 4.6, 1.8 Hz), 7.18 (1H, dd, J = 7.8, 1.8 Hz), 7.13 (1H, dd, J = 7.8, 4.6 Hz), 0.31 (9H, s).
(フェノール化合物の合成)
2-クロロ-3-ヒドロキシ-4-(トリメチルシリル)ピリジン
無色固体。 IR (KBr) 3059 (br), 2958, 2634, 1572, 1394 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.93 (1H, d, J = 4.6 Hz), 7.19 (1H, d, J = 4.6 Hz), 5.81 (1H, br s), 0.33 (9H. s). 13C-NMR δC : 151.8, 140.5, 137.5, 136.7, 128.8, -1.7.
(アライン前駆体の合成1)
2-クロロ-4-(トリメチルシリル)ピリジン-3-イル トリフルオロメタンスルホナート
無色結晶。 Mp 59-60℃(ジクロロメタン-ヘキサン). IR (KBr) 2960, 2905, 1571, 1507, 1415, 1361 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 8.35 (1H, d, J = 4.6 Hz), 7.40 (1H, d, J = 4.6 Hz), 0.44 (9H, s). 13C-NMR δC : 148.6, 147.6, 145.2, 144.6, 129.4, 118.5 (q, J = 323 Hz), -0.6. 19F-NMR δF : -72.0 (3F, s). HRMS (ESI-) calcd for C9H1035ClF3NO3SSi (M-H-): 331.9797, Found: 331.9746; calcd for C9H1037ClF3NO3SSi (M+2-H-): 333.9769, Found: 333.9715. Calcd for C6H235ClF3NO3S (M-TMS-): 259.9402, Found: 259.9352; calcd for C6H237ClF3NO3S (M+2-TMS-): 261.9372, Found: 261.9320.
(アライン前駆体の合成2)
2-クロロ-4-(トリメチルシリル)ピリジン-3-イル トルエンスルホナート
無色結晶。 Mp 101-102℃(アセトン-ヘキサン). IR (KBr) 2956, 2901, 1597, 1569, 1362 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 8.22 (1H, dd, J = 4.6, 1.0 Hz), 7.81 (2H, br d, J = 8.2 Hz), 7.37 (1H, br d, J = 5.0 Hz), 7.35 (2H, br d, J = 8.2 Hz), 2.47 (3H, s), 0.47 (9H, d, J = 1.0 Hz). 13C-NMR δC : 149.4, 146.2, 146.1, 145.8, 145.4, 133.5, 129.8, 129.2, 128.7, 21.8, -0.3. HRMS (ESI+) calcd for C15H1835ClNO3SSiNa (M+Na+): 378.0357, Found: 378.0302; calcd for C15H1837ClNO3SSiNa (M+2+Na+): 380.0332, Found: 380.0270.
【実施例】
【0069】
〔5-クロロ-3,4-アライン前駆体の合成〕
(シリルエーテルの合成)
5-クロロ-3-(トリメチルシリルオキシ)ピリジン
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 8.20 (1H, d, J = 1.8 Hz), 8.11 (1H, d, J = 2.3 Hz), 7.17 (1H, t, J = 2.3 Hz), 0.30 (9H, s).
(フェノール化合物の合成)
5-クロロ-3-ヒドロキシ-4-(トリメチルシリル)ピリジン
無色固体。 IR (KBr) 3133 (br), 2956, 2790, 2640, 1577, 1465, 1406 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 10.79 (1H, br s), 8.04 (1H, s), 7.99 (1H, s), 0.46 (9H, s). 13C-NMR δC : 159.9 (d, J = 7 Hz), 139.1 (br), 139.0 (d, J = 4 Hz), 135.5 (d, J = 6 Hz), 133.2 (d, J = 4 Hz), 1.0.
(アライン前駆体の合成)
5-クロロ-4-(トリメチルシリル)ピリジン-3-イル トリフルオロメタンスルホナート
無色オイル。 IR (KBr) 2961, 2905, 1507, 1429, 1305 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 8.54 (1H, br s), 8.48 (1H, br s), 0.52 (9H, s). 13C-NMR δC : 150.4, 148.8, 141.6, 139.9, 138.7, 118.5 (q, J = 322 Hz), 0.56. 19F-NMR δF : -72.8 (3F, d, J = 2 Hz). HRMS (ESI-) calcd for C9H1035ClF3NO3SSi (M-H-): 331.9797, Found: 331.9804; calcd for C9H1037ClF3NO3SSi (M+2-H-): 333.9769, Found: 333.9732. Calcd for C6H235ClF3NO3S (M-TMS-): 259.9402, Found: 259.9407; calcd for C6H237ClF3NO3S (M+2-TMS-): 261.9372, Found: 261.9385.
【実施例】
【0070】
〔2-クロロ-3,4-アライン前駆体の合成〕
(シリルエーテルの合成)
2-クロロ-4-(トリメチルシリルオキシ)ピリジン
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 8.17 (1H, d, J = 5.5 Hz), 6.79 (1H, d, J = 2.3 Hz), 6.69 (1H, dd, J = 5.5, 2.3 Hz), 0.33 (9H, s).
(フェノール化合物の合成)
2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(トリメチルシリル)ピリジン
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.91 (1H, d, J = 6.0 Hz), 6.57 (1H, d, J = 6.0 Hz), 0.44 (9H, s); 交換可能なOH基プロトンの検出は不明瞭であった。
(アライン前駆体の合成)
2-クロロ-3-(トリメチルシリル)ピリジン-4-イル トリフルオロメタンスルホナート
無色オイル。 IR (KBr) 2960, 2904, 1567, 1541, 1427, 1335 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 8.43 (1H, d, J = 5.5 Hz), 7.29 (1H, d, J = 5.5 Hz), 0.50 (9H, s). 13C-NMR δC : 162.1, 159.0, 151.5, 127.4, 118.4 (q, J = 323 Hz), 113.7, 0.9. 19F-NMR δF : -73.0 (3F, s). HRMS (ESI-) calcd for C9H1035ClF3NO3SSi (M-H-): 331.9797, Found: 331.9812; calcd for C9H1037ClF3NO3SSi (M+2-H-): 333.9769, Found: 333.9804. Calcd for C6H235ClF3NO3S (M-TMS-): 259.9401, Found: 259.9407; calcd for C6H237ClF3NO3S (M+2-TMS-): 261.9372, Found: 261.9376.
【実施例】
【0071】
〔3-フルオロ-アライン前駆体の合成〕
(シリルエーテルの合成)
1-フルオロ-3-(トリメチルシリルオキシ)ベンゼン
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.17 (1H, td, J = 8.2, 7.8 Hz), 6.68 (1H, tdd, J = 8.2, 2.3, 1.0 Hz), 6.62 (1H, br dd, J = 8.2, 2.3 Hz), 6.56 (1H, dt, J = 10.6, 2.3 Hz), 0.27 (9H, s).
(フェノール化合物の合成)
3-フルオロ-2-(トリメチルシリル)フェノール
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.16 (1H, td, J = 8.2, 6.9 Hz), 6.57 (1H, td, J = 8.2, 1.0 Hz), 6.48 (1H, dd, J = 8.2, 1.0 Hz), 5.15 (1H, br s), 0.37 (9H, d, J = 1.8 Hz).
(アライン前駆体の合成)
3-フルオロ-2-(トリメチルシリル)フェニル トリフルオロメタンスルホナート
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.41 (1H, td, J = 8.2, 6.4 Hz), 7.16 (1H, br d, J = 8.7 Hz), 7.03 (1H, td, J = 8.2, 1.0 Hz), 0.42 (9H, d, J = 1.8 Hz). 13C-NMR δC : 167.3 (d, J = 247 Hz), 154.1 (d, J = 15 Hz), 131.9 (d, J = 11 Hz), 120.3 (d, J = 35 Hz), 118.5 (q, J = 322 Hz), 166.1 (br), 115.1 (d, J = 27 Hz), 0.3 (d, J = 4 Hz). 19F-NMR δF : -73.5 (3F, s). -94.1 (1F, m). HRMS (ESI-) calcd for C7H3F4O3S (M-TMS-): 242.9745, Found: 242.9793.
【実施例】
【0072】
〔3-フルオロ-6-メトキシ-アライン前駆体の合成〕
(シリルエーテルの合成)
1-フルオロ-4-メトキシ-3-(トリメチルシリルオキシ)ベンゼン
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 6.77 (1H, dd, J = 8.8, 5.6 Hz), 6.63-6.59 (2H, m), 3.78 (3H, s), 0.25 (9H, s).
(フェノール化合物の合成)
5-フルオロ-2-メトキシ-6-(トリメチルシリル)フェノール
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 6.77 (1H, dd, J = 8.7, 5.0 Hz), 6.47 (1H, t, J = 8.7 Hz), 5.97 (1H, br d, J = 1.4 Hz), 3.85 (3H, s), 0.35 (9H, d, J = 1.8 Hz).
(アライン前駆体の合成)
5-フルオロ-2-メトキシ-6-(トリメチルシリル)フェニル トリフルオロメタンスルホナート
無色結晶。 Mp 21-23℃(ヘキサン). IR (KBr) 2960, 1578, 1464, 1417 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.00 (1H, dd, J = 9.2, 7.6 Hz), 6.97 (1H, dd, J = 9.2, 5.5 Hz), 3.84 (3H, s), 0.43 (9H, d, J = 1.8 Hz). 13C-NMR δC : 160.1 (d, J = 239 Hz), 147.3 (d, J = 3 Hz), 141.6 (d, J = 15 Hz), 122.8 (d, 35 Hz), 118.8 (q, J = 323 Hz), 115.2 (d, J = 29 Hz), 114.3 (d, J = 10 Hz), 56.1, 0.3 (d, J = 4 Hz). 19F-NMR δF : -71.9 (3F, m), -105.9 (1F, m). HRMS (ESI-) calcd for C11H13F4O4SSi (M-H-): 345.0245, Found: 345.0236. Calcd for C8H5F4O4S (M-TMS-): 272.9850, Found: 272.9844.
【実施例】
【0073】
〔3,4,5-トリフルオロ-アライン前駆体の合成〕
(シリルエーテルの合成)
1,2,3-トリフルオロ-5-(トリメチルシリルオキシ)ベンゼン
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 6.44 (2H, m), 0.26 (9H, s).
(フェノール化合物の合成)
3,4,5-トリフルオロ-2-(トリメチルシリル)フェノール
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 6.34 (1H, ddd, J = 11.0, 5.0, 2.3 Hz), 5.52 (1H, br s), 0.36 (9H, d, J = 1.8 Hz).
(アライン前駆体の合成)
3,4,5-トリフルオロ-2-(トリメチルシリル)フェニル トリフルオロメタンスルホナート
無色オイル。 IR (KBr) 2963, 1626, 1496, 1430 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ: 7.06 (1H, ddd, J = 9.6, 5.0, 2.3 Hz), 0.43 (9H, d, J = 1.8 Hz). 13C-NMR δC : 155.0 (ddd, J = 247, 10, 5 Hz), 151.3 (ddd, J = 255, 12, 6 Hz), 147.1 (ddd, J = 16, 12, 5 Hz), 139.3 (ddd, J = 257, 20, 14 Hz), 118.4 (q, J = 322 Hz), 118.3 (dt, J = 31, 4 Hz), 106.5 (d, J = 21 Hz), 0.2 (d, J = 4 Hz). 19F-NMR δF : -73.4 (3F, s), -117.4 (1F, ddd, J = 23, 7, 2 Hz), -129.6 (1F, dt, J = 20, 10 Hz), -160.1 (1F, ddd, J = 23, 20, 5 Hz). HRMS (ESI-) calcd for C10H9F6O3SSi (M-H-): 350.9951, Found: 350.9825. Calcd for C7HF6O3S (M-TMS-): 278.9556, Found: 278.9551.
【実施例】
【0074】
〔3-ブロモ-アライン前駆体の合成〕
(シリルエーテルの合成)
1-ブロモ-3-(トリメチルシリルオキシ)ベンゼン
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.09 (2H, m), 7.01 (1H, br t, J = 1.6 Hz), 6.76 (1H, m), 0.27 (9H, s).
(フェノール化合物の合成)
3-ブロモ-2-(トリメチルシリル)-フェノール
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.13 (1H, dd, J = 7.8, 1.0 Hz), 7.03 (1H, br t, J = 7.8 Hz), 6.64 (1H, dd, J = 7.8, 1.0 Hz), 5.35 (1H, br s), 0.48 (9H, s).
(アライン前駆体の合成)
3-ブロモ-2-(トリメチルシリル)フェニル トリフルオロメタンスルホナート
無色オイル。 IR (KBr) 2960, 1583, 1552, 1421 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.58 (1H, dd, J = 7.8, 1.4 Hz), 7.34-7.23 (2H, m), 0.52 (9H, s). 13C-NMR δC : 155.2, 134.9, 134.4, 132.3, 132.2, 120.4, 119.4, 2.5. 19F-NMR δF : -73.1 (3F, s). HRMS (ESI-) calcd for C10H1179BrF3O3SSi (M-H-): 374.9339, Found: 374.9281; calcd for C10H1181BrF3O3SSi (M+2-H-): 376.9319, Found: 376.9253. Calcd for C7H379BrF3O3S (M-TMS-): 302.8944, Found: 302.8868; calcd for C7H381BrF3O3S (M+2-TMS-): 304.8923, Found: 304.8881.
【実施例】
【0075】
〔アライン前駆体合成反応における強塩基の検討〕
上述した3-クロロアライン前駆体の合成反応(下記シリルエーテル(2)からフェノール化合物(3)への反応)について、各強塩基を用いた場合の収率を検討し、結果を下記の表1に示した。
表1に示されるように、Mg(TMP)2・2LiClが最も収率が良かった。他方、調製の容易なLDAでも、本反応を用いることで、中程度の収率で目的のフェノール(3)を得ることができた。
JP0006461914B2_000008t.gif【表1】
JP0006461914B2_000009t.gif
(反応時間は、(1)→(2)については約6~16時間、(2)→(3)については約16時間とした。)
【実施例】
【0076】
〔アライン前駆体からアラインの生成〕
アライン前駆体からのアラインの発生については、例えば、非特許文献5に記載の方法など、公知の方法に従い、フッ化物イオンと反応させることにより、温和な条件で容易にアラインを生成することができる。また、生成したアラインは、種々の求核剤と位置選択的に反応し、多置換芳香族化合物を与える。アラインと求核剤とを用いた反応は、非特許文献5に記載されるように多数の反応が公知であり、目的とする化合物の構造に応じて所望の求核剤及び反応を用いることができる。
以下に、典型的なアライン発生反応及び発生されたアラインの反応の例を示すが、本発明はこれに限られるものではなく、非特許文献5等、公知の方法にしたがって、アラインを発生させ、これを利用することができる。
【実施例】
【0077】
〔従来のアライン前駆体との比較〕
JP0006461914B2_000010t.gif 図中、従来のアライン前駆体化合物を1aで示し、本発明のアライン前駆体化合物を1bで示した。
1a、bからアラインを発生させるにあたり、従来のアライン前駆体化合物1aからは、副反応として生じる転位体と目的とする3-クロロアラインとが反応した二量化体2aが生じることが報告されている(非特許文献8)。他方、対応本発明のアライン前駆体化合物1bからは、同様の実験条件を用いても副反応を経由した二量化体2bを生じることなく、発生したアラインは、溶媒であるアセトニトリルと反応し、化合物3、4が生じた。
【実施例】
【0078】
N-(3-クロロフェニル)アセトアミド:化合物3
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.62 (1H, s), 7.34 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.27 (1H, br s), 7.23 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.08 (1H, d, J = 7.8 Hz), 2.18 (3H, s). 13C-NMRδC : 168.3, 139.0, 134.6, 130.0, 124.3, 119.8, 117.7, 24.6. HRMS (ESI+) calcd for C8H835ClNONa (M+Na+): 192.0187, Found: 192.0191; calcd for C8H837ClNONa (M+2+Na+): 194.0159, Found: 194.0169.
N,N-ビス(3-クロロフェニル)アセトアミド:化合物4
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.32-7.25 (6H, br m), 7.16 (2H, br d, J = 7.8 Hz), 2.07 (3H, s). 13C-NMRδC : 170.1, 154.6 (br), 135.0 (br), 130.4 (br), 127.6 (br), 125.4 (br), 23.8; One aryl carbon peak was missing due to overlapping with other aryl carbon peak. HRMS (ESI+) calcd for C14H1135Cl2NONa (M+Na+): 302.0110, Found: 302.0123; calcd for C14H1135Cl37ClNONa (M+2+Na+): 304.0082, Found: 304.0087.
【実施例】
【0079】
また、1a、bから上記とは別反応でアラインを発生させるにあたり、従来のアライン前駆体化合物1aからは、生成したアラインが反応した結果の化合物5が収率41%で得られたことが報告されている(非特許文献3)。これに対し、本発明のアライン前駆体1bを用いた場合、同様の実験条件を用いると、より高い収率(91%)で化合物5が得られた。
(2-クロロ-6-フルオロフェニル)トリブチルすず:化合物5
無色オイル。 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.20 (1H, td, J = 7.8, 6.9 Hz), 7.13 (1H, d, J = 7.8 Hz), 6.88 (1H, br t, J = 7.8 Hz), 1.58-1.48 (6H, m), 1.33 (6H, sex, J = 7.3 Hz), 1.28-1.12 (6H, m), 0.89 (9H, t, J = 7.3 Hz). 13C-NMRδC : 167.3 (d, J = 240 Hz), 142.7 (d, J = 17 Hz), 130.9 (d, J = 9 Hz), 128.6 (d, J = 50 Hz), 124.8 (d, J = 3 Hz), 112.7 (d, J = 30 Hz), 28.9 (t, J = 10 Hz), 27.2 (t, J = 33 Hz), 13.6, 12.0 (d, J = 3 Hz). 19F-NMR δF : -91.0 (1F, t, J = 7 Hz). HRMS (ESI-) calcd for C14H2135ClFSn (M-Bu-): 363.0339, Found: 363.0352; calcd for C14H2137ClFSn (M+2-Bu-): 365.0330, Found: 365.0375.
【実施例】
【0080】
以上のように、従来の構造のアライン前駆体化合物と比較して、本発明のアライン前駆体化合物は、アラインを生成させるにあたり、より高い反応選択性と収率とを有することが確認された。
【実施例】
【0081】
〔アラインの生成及びアラインの反応(アミン付加反応)〕
CsF(91mg、0.60mmol)の無水アセトニトリル(2mL)溶液に、二級アミン(0.40mmol)を室温、Ar雰囲気下で添加した。つづいて、本発明のアライン前駆体化合物であるトリフラート化合物(0.20mmol)を添加し、3時間、同一の温度で攪拌した。反応混合液を氷水で希釈し、その後、酢酸エチルを用いて抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣を分取TLC(AcOEt:ヘキサン=1:10~1:2)により精製し、アミン付加体を得た。
〔実験例〕
上記手順またはこれと同様の手順に従い、以下の生成物が得られるように、アラインの反応を行った。特記のない原料等については、市販のものを用いた。
【実施例】
【0082】
1-(3-クロロフェニル)ピロリジン(本生成物:付加反応位置異性体の比率=88:12)
無色オイル。 IR (KBr) 2969, 2839, 1596, 1497, 1485 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ : 7.12 (1H, t, J = 8.2 Hz), 6.62 (1H, ddd, J = 7.8, 1.8, 1.0 Hz), 6.53 (1H, br t, J = 2.1 Hz), 6.43 (1H, dd, J = 8.2, 2.3 Hz), 3.26 (4H, br t, J = 6.7 Hz), 2.01 (4H, m). 13C-NMRδC : 148.8, 134.9, 129.9, 115.0, 111.3, 109.8, 47.5, 25.4. HRMS (ESI+) calcd for C10H1335ClN (M+H+): 182.0731, Found: 182.0748; calcd for C10H1337ClN (M+2+H+): 184.0703, Found: 184.0720.
【実施例】
【0083】
1-(2-クロロフェニル)ピロリジン
無色オイル。 IR (KBr) 2969, 2874, 1592, 1481, 1440 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ: 7.29 (1H, dd, J = 7.8, 1.4 Hz), 7.14 (1H, ddd, J = 8.2, 7.3, 1.4 Hz), 6.89 (1H, dd, J = 8.2, 1.4 Hz), 6.78 (1H, br td, J = 7.6, 1.4 Hz), 3.37 (4H, m), 1.95 (4H, m). 13C-NMRδC : 147.1, 131.2, 127.1, 123.4, 120.1, 117.0, 30.69, 25.2. HRMS (ESI+) calcd for C10H1335ClN (M+H+): 182.0731, Found: 182.0693; calcd for C10H1337ClN (M+2+H+): 184.0703, Found: 184.0749.
【実施例】
【0084】
1-(3,5-ジクロロフェニル)ピロリジン
白色固体。 IR (KBr) 2971, 2846, 1585, 1551, 1475, 1461 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ: 6.60 (1H, t, J = 1.8 Hz), 6.38 (2H, d, J = 1.8 Hz), 3.24 (4H, m), 2.01 (4H, m). 13C-NMRδC : 149.0, 135.2, 114.8, 109.8, 47.6, 25.4. HRMS (ESI+) calcd for C10H1235Cl2N (M+H+): 216.0341, Found: 216.0204; calcd for C10H1235Cl37ClN (M+2+H+): 218.0313, Found: 218.0238.
【実施例】
【0085】
〔アラインの生成及びアラインの反応([3+2]環化付加反応)〕
CsF(76mg、0.50mmol)の無水アセトニトリル(2mL)溶液に、アジド化合物(0.20mmol)を室温、Ar雰囲気下で添加した。つづいて、本発明のアライン前駆体化合物であるトリフラート化合物(0.20mmol)を添加し、3時間、同一の温度で攪拌した。反応混合液を氷水で希釈し、その後、酢酸エチルを用いて抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣を分取TLC(AcOEt:ヘキサン=1:6)により精製し、ベンゾトリアゾール誘導体を得た。
〔実験例〕
上記手順またはこれと同様の手順に従い、以下の生成物が得られるように、アラインの反応を行った。特記のない原料等については、市販のものを用いた。
【実施例】
【0086】
1-ベンジル-4-クロロ-1,2,3-ベンゾトリアゾール
無色結晶。 Mp 78-80℃ (AcOEt-ヘキサン). IR (KBr) 3067, 3033, 1609, 1581, 1494, 1454, 1424 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ: 7.37-7.23 (8H, m), 5.86 (2H, s). 13C-NMRδC : 144.0, 134.2, 134.1, 129.1, 128.6, 127.9, 127.6, 125.5, 123.8, 108.5, 52.7. HRMS (ESI+) calcd for C13H1135ClN3 (M+H+): 244.0636, Found: 244.0637; calcd for C13H1137ClN3 (M+2+H+): 246.0609, Found: 246.0610.
【実施例】
【0087】
〔アラインの生成及びアラインの反応(三成分連結反応)〕
CsF(91mg、0.60mmol)の無水DMF(2mL)溶液に、活性メチレン化合物(0.30mmol)を室温、Ar雰囲気下で添加した。つづいて、本発明のアライン前駆体化合物であるトリフラート化合物(0.20mmol)を添加し、3時間、同一の温度で攪拌した。反応混合液を氷水で希釈し、その後、酢酸エチルを用いて抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣を分取TLC(AcOEt:ヘキサン=1:6~1:1)により精製し、クマリン類を得た。
(クマリンの基本骨格)
JP0006461914B2_000011t.gif〔実験例〕
上記手順またはこれと同様の手順に従い、以下の生成物が得られるように、アラインの反応を行った。特記のない原料等については、市販のものを用いた。
【実施例】
【0088】
5-クロロ-2-オキソ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸, エチルエステル
淡黄色結晶。 Mp 140-143℃ (AcOEt-ヘキサン). IR (KBr) 3087, 2980, 1766, 1719, 1595, 1562, 1451 cm-1. 1H-NMR (CDCl3) δ: 8.84 (1H, s), 7.55 (1H, t, J = 8.2 Hz), 7.37 (1H, dd, J = 8.2, 1.0 Hz), 7.26 (1H, br d, J = 8.7 Hz), 4.43 (2H, q, J = 7.1 Hz), 1.41 (3H, t, J = 7.1 Hz). 13C-NMRδC : 162.7, 155.9, 155.8, 144.6, 134.2, 134.0, 125.4, 119.0, 116.6, 115.6, 62.2, 14.2. HRMS (ESI+) calcd for C12H935ClO4Na (M+Na+): 275.0082, Found: 275.0121; calcd for C12H937ClO4Na (M+2+Na+): 277.0056, Found: 277.0065.
【実施例】
【0089】
5-フルオロ-2-オキソ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸, エチルエステル
淡黄色結晶。 Mp 124-126 ℃ (ジクロロメタン-ヘキサン). 1H-NMR (CDCl3) δ: 8.73 (1H, s), 7.60 (1H, br td, J = 8.4, 6.0 Hz), 7.16 (1H, br d, J = 8.2 Jz), 7.04 (1H, br t, J = 8.4 Hz), 4.43 (2H, q, J = 7.2 Hz), 1.42 (3H, t, J = 7.2 Hz). 13C-NMRδC : 162.6, 159.3 (d, J = 260 Hz), 155.9, 155.4 (d, J = 5 Hz), 141.4 (d, J = 4 Hz), 134.9 (d, J = 11 Hz), 118.4, 112.6 (d, J = 4 Hz), 110.6 (d, J = 19 Hz), 108.3 (d, J = 18 Hz), 62.2, 14.2. 19F-NMRδF : -117.0 (1F, dd, J = 9, 6 Hz). HRMS (ESI+) calcd for C12H9FO4Na (M+Na+): 259.0377, Found: 259.0372.
【実施例】
【0090】
5-ブロモ-2-オキソ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸, エチルエステル
褐色結晶。 Mp 113-114 ℃ (ジクロロメタン-ヘキサン). 1H-NMR (CDCl3) δ: 8.82 (1H, s), 7.56 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.48 (1H, t, J = 8.2 Hz), 7.32 (1H, d, J = 8.2 Hz), 4.44 (2H, q, J = 7.2 Hz), 1.42 (3H, t, J = 7.2 Hz). 13C-NMRδC : 162.7, 156.1, 155.7, 147.1, 134.5, 128.9, 123.9, 119.4, 118.1, 116.3, 62.3, 14.2. HRMS (ESI+) calcd for C12H979BrO4Na (M+Na+): 318.9576, Found: 318.9597; calcd for C12H981BrO4Na (M+2+Na+): 320.9557, Found: 320.9584.
【実施例】
【0091】
〔アラインの生成及びアラインの反応(ベンゾジアゼピン系化合物)〕
CsF(91mg、0.60mmol)の無水DMI(1mL)溶液に、本発明のアライン前駆体化合物であるトリフラート化合物(0.20mmol)を添加し、3時間、同一の温度で攪拌した。反応混合液を酢酸エチルで希釈し、MgSO4を加え、濾別し有機相を得た。これを減圧下で濃縮し、残渣を分取TLC(AcOEt:ヘキサン=2:1)により精製し、ベンゾジアゼピン類を得た。
(ベンゾジアゼピンの基本骨格の一例)
JP0006461914B2_000012t.gif〔実験例〕
上記手順またはこれと同様の手順に従い、以下の生成物が得られるように、アラインの反応を行った。特記のない原料等については、市販のものを用いた。
【実施例】
【0092】
6-クロロ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-ジメチル-5H-1,4-ベンゾジアゼピン-5-オン
無色結晶。 Mp 166-168 ℃ (ジクロロメタン-ヘキサン). 1H-NMR (CDCl3) δ: 7.23 (1H, br t, J = 8.0 Hz), 7.06 (1H, dd, J = 7.8, 1.0 Hz), 6.81 (1H, d, J = 7.8 Hz), 3.41 (2H, br m), 3.22 (3H, s), 3.18 (2H, br m), 2.79 (3H, s). 13C-NMRδC : 167.1, 148.1, 132.7, 131.0, 128.8, 124.1, 116.2, 57.1, 47.8, 10.1, 33.4. HRMS (ESI+) calcd for C11H1435ClN2O (M+H+): 225.0789, Found: 225.0734; calcd for C11H1437ClN2O (M+2+H+): 227.0762, Found: 227.0693.
【実施例】
【0093】
6-クロロ-8-トリフルオロメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-ジメチル-5H-1,4-ベンゾジアゼピン-5-オン
無色結晶。 Mp 139-140 ℃ (ジクロロメタン-ヘキサン). 1H-NMR (CDCl3) δ: 7.31 (1H, br d, J = 1.0 Hz), 7.01 (1H, br s)3.44 (2H, br s), 3.24 (2H, br s), 3.22 (3H, s), 2.84 (3H, s). 13C-NMRδC : 165.9, 148.4, 133.7, 133.2 (q, J = 33 Hz), 131.5, 123.1 (q, J = 274 Hz), 120.6 (q, J = 4 Hz), 113.1 (q, J = 4 Hz), 56.9, 47.6, 10.1, 33.5. 19F-NMR δF : -63.7 (3F, s). HRMS (ESI+) calcd for C12H1235ClF3N2ONa (M+Na+): 315.0482, Found: 315.0502; calcd for C12H1237ClF3N2ONa (M+2+Na+): 317.0456, Found: 317.0473.
【実施例】
【0094】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
なお、本明細書に引用された特許、特許出願、および出版物の開示内容は全て、参照により本明細書に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明により生成されたアラインは、種々の求核剤と位置選択的に反応し、種々の置換芳香族化合物や多環性芳香族化合物を与えることができる。したがって、本発明は、生物活性物質、医薬品、医薬品中間体や、電子デバイス材料(絶縁膜)などの機能性分子の合成など、多方面で利用可能である。