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明細書 :電極触媒および電極触媒の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6497525号 (P6497525)
登録日 平成31年3月22日(2019.3.22)
発行日 平成31年4月10日(2019.4.10)
発明の名称または考案の名称 電極触媒および電極触媒の製造方法
国際特許分類 H01M   4/90        (2006.01)
B01J  23/648       (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
B01J  37/34        (2006.01)
H01M   4/86        (2006.01)
H01M   4/88        (2006.01)
H01M   4/92        (2006.01)
FI H01M 4/90 M
B01J 23/648 M
B01J 37/08
B01J 37/34
H01M 4/86 B
H01M 4/88 K
H01M 4/92
請求項の数または発明の数 9
全頁数 19
出願番号 特願2016-510154 (P2016-510154)
出願日 平成27年2月26日(2015.2.26)
国際出願番号 PCT/JP2015/055572
国際公開番号 WO2015/146454
国際公開日 平成27年10月1日(2015.10.1)
優先権出願番号 2014070174
優先日 平成26年3月28日(2014.3.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年1月17日(2018.1.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】内田 誠
【氏名】渡辺 政廣
【氏名】柿沼 克良
個別代理人の代理人 【識別番号】100083116、【弁理士】、【氏名又は名称】松浦 憲三
審査官 【審査官】藤原 敬士
参考文献・文献 国際公開第2011/065471(WO,A1)
特開平02-114452(JP,A)
特開平07-246336(JP,A)
特表平10-507572(JP,A)
特開2006-147395(JP,A)
調査した分野 H01M 4/86 - 4/92
B01J 23/648
B01J 37/08
B01J 37/34
特許請求の範囲 【請求項1】
スズを含む酸化物の粒子からなる担体と、前記担体に担持された白金または白金を含む合金と、を含む電極触媒であって、
前記スズと、前記白金の一部もしくは全部または前記合金に含まれる前記白金の一部もしくは全部と、が合金を形成している、有機オリゴマーを液体燃料に用いる燃料電池に用いられる電極触媒。
【請求項2】
前記スズを含む酸化物は、ニオブ(Nb)、または、アンチモン(Sb)を含有する請求項1に記載の電極触媒。
【請求項3】
前記白金を含む合金が白金ルテニウムである請求項1または2に記載の電極触媒。
【請求項4】
前記白金または前記白金を含む合金は、前記担体と配向して前記担体に担持されている請求項1から3のいずれか1項に記載の電極触媒。
【請求項5】
前記有機オリゴマーがポリオキシメチレンジメチルエーテルである請求項1から4のいずれか1項に記載の電極触媒。
【請求項6】
前記担体は、前記酸化物の粒子が融着結合し連鎖状または房状の構造を形成している請求項1から5のいずれか1項に記載の電極触媒。
【請求項7】
スズを含む酸化物の粒子からなる担体を、化学炎法またはプラズマ法により製造し、
前記担体に白金または白金を含む合金を担持し、
600℃以上の温度で熱処理を行い、前記スズと前記白金の一部もしくは全部または前記合金に含まれる前記白金の一部もしくは全部と、で合金を形成する電極触媒の製造方法。
【請求項8】
前記熱処理の温度が900℃以下である請求項7に記載の電極触媒の製造方法。
【請求項9】
前記担体は、前記酸化物の粒子が融着結合し連鎖状または房状の構造を形成している請求項7または8に記載の電極触媒の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電極触媒および電極触媒の製造方法に係り、特に、燃料電池に用いられる電極触媒および電極触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイレクトメタノール型燃料電池の電極触媒として貴金属微粒子を100m/g以上の比表面積をもつ炭素粒子に担持させたものが多用されている。例えば、下記の特許文献1~3には、炭素粒子に、白金や白金とルテニウム、白金とテルルを担持させた粉末を、ダイレクトメタノール型燃料電池用電極触媒として用いることが開示されている。また、特許文献4には、高価なルテニウムを使用せず、貴金属担持カーボン触媒の性能を向上させるため、白金(Pt)とスズ(Sn)の合金を形成させたカーボン担持触媒をダイレクトメタノール型燃料電池用電極触媒として用いることが記載されている。
【0003】
また、メタノールを燃料とする直接型燃料電池では、燃料の貯蔵・積載方法の問題がある。そのため、特許文献5では、燃料として毒性もなく、且つ、炭化水素燃料から直接、常温付近で発電する燃料電池として、直接型ジメチルエーテル燃料電池が提案されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2002-75384号公報
【特許文献2】特開平7-299359号公報
【特許文献3】特開2006-179445号公報
【特許文献4】特開平11-144751号公報
【特許文献5】特開2009-117287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献5に記載されている燃料電池用の電極触媒では、オンセット電位(燃料の酸化が始まる電位)が高く、十分な性能の燃料電池が得られていない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、より安全性の高い液体燃料を用いて、高い発電性能を有する燃料電池に用いられる高活性の電極触媒および電極触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、スズ(Sn)を含む酸化物の粒子からなる担体と、担体に担持された白金(Pt)または白金を含む合金と、を含む電極触媒であって、スズと、白金の一部もしくは全部または合金に含まれる白金の一部もしくは全部と、が合金を形成している、有機オリゴマーを液体燃料に用いる燃料電池に用いられる電極触媒を提供する。
【0008】
本発明の電極触媒によれば、触媒である白金の一部または全部が担体であるスズと合金を形成しているため、触媒活性を向上させることができる。また、燃料電池に用いた場合に、オンセット電位を低くすることができるので、燃料電池の性能を向上させることができる。また、燃料電池の液体燃料として、有機オリゴマーを用いることで、従来の液体燃料より安全性の高い燃料で燃料電池を駆動させることができる。
【0009】
本発明の別の態様においては、スズを含む酸化物は、ニオブ(Nb)、または、アンチモン(Sb)を含有することが好ましい。
【0010】
この態様によれば、スズを含む酸化物に、ニオブ、アンチモンを含有させることで、触媒の性能を向上させることができる。
【0011】
本発明の別の態様においては、白金を含む合金が白金ルテニウム(PtRu)であることが好ましい。
【0012】
この態様によれば、白金を含む合金を白金ルテニウムとすることで、触媒活性を向上させることができる。
【0013】
本発明の別の態様においては、白金または白金を含む合金は、担体と配向して担体に担持されていることが好ましい。
【0014】
この態様によれば、白金または白金を含む合金を、担体と配向して担持させているので、触媒の活性を向上させることができる。
【0015】
本発明の別の態様においては、有機オリゴマーがポリオキシメチレンジメチルエーテルであることが好ましい。
【0016】
本発明の電極触媒は、ホルムアルデヒドに対して、高い性能を有するため、液体燃料としてポリオキシメチレンジメチルエーテルを用いることで、メタノールとホルムアルデヒドに分解させることができ、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0017】
本発明の別の態様においては、担体は、酸化物の粒子が融着結合し連鎖状または房状の構造を形成していることが好ましい。
【0018】
この態様によれば、担体を構成する酸化物の粒子が、融着結合し連鎖状または房状の構造を形成しているので、電気伝導性を向上させることができ、高い触媒活性を得ることができる。
【0019】
本発明は前記目的を達成するために、スズを含む酸化物の粒子からなる担体を、化学炎法またはプラズマ法により製造し、担体に白金または白金を含む合金を担持し、600℃以上の温度で熱処理を行い、スズと白金の一部もしくは全部または合金に含まれる白金の一部もしくは全部と、で合金を形成する電極触媒の製造方法を提供する。
【0020】
本発明の電極触媒の製造方法によれば、担体に白金または白金を含む合金を担持した後、600℃以上の温度で熱処理を行うことで、担体を構成するスズと白金とで合金を形成することができる。したがって、触媒活性を向上させることができ、燃料電池の性能を向上させることができる。
【0021】
本発明の別の態様においては、熱処理の温度が900℃以下であることが好ましい。
【0022】
この態様によれば、熱処理温度を900℃以下とすることで、担体を構成するスズと白金との合金化が進行しすぎるのを抑制することができる。スズと白金の合金化が進行しすぎると表面積が小さくなるので、触媒活性が落ち、好ましくない。
【0023】
本発明の別の態様においては、担体は、酸化物の粒子が融着結合し連鎖状または房状の構造を形成していることが好ましい。
【0024】
この態様によれば、担体を構成する酸化物の粒子が、融着結合し連鎖状または房状の構造を形成しているので、電気伝導性を向上させることができ、高い触媒活性を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電極触媒および電極触媒の製造方法によれば、触媒である白金の一部または全部が担体であるスズと合金を形成しているため、触媒活性を向上させることができ、燃料電池用の電極触媒として使用した場合に、燃料電池の性能を向上させることができる。
【0026】
また、本発明の電極触媒は、現行のカーボン担体の触媒層と同等の電子伝導パス・ガス拡散パスをもつ触媒層を形成することができ、かつ、カーボン担体の触媒層より耐久性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】酸化スズ系担体の透過電子顕微鏡(TEM)の撮影像である。
【図2】担体の製造に用いられる火炎法装置の模式図である。
【図3】図2の火炎法装置に用いられるスプレーノズルの部分図である。
【図4】Sn0.96Nb0.042-d粉末のTEM像である。
【図5】Sn0.96Nb0.042-d粉末のX線回折パターンである。
【図6】担体に白金を担持する担持方法を説明するフローチャート図である。
【図7】担体に白金を担持する担持方法を説明する図である。
【図8】本発明の電極触媒の構造を示す模式図である。
【図9】還元処理の温度に対するPtRu/Nb-SnO触媒のX線回折(XRD)パターンである。
【図10】PtRu/Nb-SnO触媒の活性試験の結果を示すグラフである。
【図11A】触媒上での反応のメカニズムを説明する図である。
【図11B】触媒上での反応のメカニズムを説明する図である。
【図12】CV測定の結果を示すグラフである。
【図13A】Pt/Sn0.96Nb0.042-d電極触媒のTEM像(還元処理前)である。
【図13B】Pt/Sn0.96Nb0.042-d電極触媒のTEM像(150℃で還元処理後)である。
【図13C】Pt/Sn0.96Nb0.042-d電極触媒のTEM像(600℃で還元処理後(実施例1))である。
【図13D】Pt/Sn0.96Nb0.042-d電極触媒のTEM像(800℃で還元処理後(実施例2))である。
【図14A】PtRu/Sn0.96Nb0.042-d電極触媒のTEM像(600℃で還元処理後(実施例3))である。
【図14B】PtRu/Sn0.96Nb0.042-d電極触媒のTEM像(800℃で還元処理後(実施例4))である。
【図14C】PtRu/カーボン電極触媒のTEM像(比較例1)である。
【図14D】PtRu/カーボン電極触媒のTEM像(比較例2)である。
【図15A】温度25℃における各電極触媒のLSV測定の結果を示すグラフである(液体燃料:メタノール)。
【図15B】温度25℃における各電極触媒のLSV測定の結果を示すグラフである(液体燃料:POMM)。
【図15C】温度25℃における各電極触媒のLSV測定の結果を示すグラフである(液体燃料:POMM)。
【図15D】温度25℃における各電極触媒のLSV測定の結果を示すグラフである(液体燃料:ホルムアルデヒド)。
【図16A】温度80℃における角電極触媒のLSV測定の結果を示すグラフである(液体燃料:メタノール)。
【図16B】温度80℃における角電極触媒のLSV測定の結果を示すグラフである(液体燃料:POMM)。
【図16C】温度80℃における角電極触媒のLSV測定の結果を示すグラフである(液体燃料:POMM)。
【図16D】温度80℃における角電極触媒のLSV測定の結果を示すグラフである(液体燃料:ホルムアルデヒド)。
【図17A】各触媒の温度に対するオンセット電位を示すグラフである(液体燃料:メタノール)。
【図17B】各触媒の温度に対するオンセット電位を示すグラフである(液体燃料:POMM)。
【図17C】各触媒の温度に対するオンセット電位を示すグラフである(液体燃料:POMM)。
【図17D】各触媒の温度に対するオンセット電位を示すグラフである(液体燃料:ホルムアルデヒド)。
【図18A】各触媒の温度に対する質量活性を示すグラフである(液体燃料:メタノール)。
【図18B】各触媒の温度に対する質量活性を示すグラフである(液体燃料:POMM)。
【図18C】各触媒の温度に対する質量活性を示すグラフである(液体燃料:POMM)。
【図18D】各触媒の温度に対する質量活性を示すグラフである(液体燃料:ホルムアルデヒド)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に従って、本実施形態に係る電極触媒および電極触媒の好ましい実施の形態について説明する。本実施形態の電極触媒は、スズ(Sn)を含む酸化物の粒子が融着結合した担体に、白金(Pt)または白金を含む合金を担持し、白金の一部または全部がスズと合金を形成している。以下、各構成について説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。

【0029】
(触媒)
本実施形態に用いられる触媒としては、白金または白金を含む合金を用いることができる。白金を含む合金としては、白金ルテニウム(PtRu)、白金イリジウム(PtIr)を用いることができる。触媒の粒子の平均粒径は1.0~10nmであることが好ましい。また、触媒の担持量は、担体の重量に対して1.0~50重量%であることが好ましい。

【0030】
白金とスズの合金化は、白金または白金を含む合金の粒子の10%以上がスズと合金化していることが好ましい。白金とスズの合金化の程度は、TEM-EDX(Transmission Electron Microscope - Energy Dispersive X-ray Spectroscope)、XRD(X-ray diffraction)、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)などにより確認することができる。

【0031】
(担体)
本実施形態に用いられる担体としては、酸化スズ(SnO)ナノ粒子を用いることができる。また、このSnOナノ粒子に他の金属をドープさせることができる。ドープさせる他の金属としては、ニオブ(Nb)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)などを挙げることができ、ニオブをドープさせることが好ましい。スズ以外の他の金属をドープさせる量は、スズと他の金属との比率を99:1~50:50との範囲とすることが好ましい。他の金属をドープする量を上記範囲とすることで、電極反応の性能を十分発揮させることができる。

【0032】
また、SnOナノ粒子は融着結合し、融合体となり担体を形成している。融合体は、平均粒径が5nm~100nmの大きさをもつ金属酸化物の単結晶である結晶粒子からなる一次粒子の少なくとも80%以上が5個以上相互に融着結合しており、3次元構造や枝分かれ構造を有する連鎖状または房状の構造を形成し、電極触媒用担体としている。結晶子の融着結合している個数が5個以下であれば電気伝導性の向上は認めず、好ましくない。図1は、酸化スズ系担体の透過電子顕微鏡(TEM)の撮影像である。図1に示すように、粒子が融着結合していることが確認できる。一次粒子の融着結合状態は、このように、透過電子顕微鏡および/または透過電子顕微鏡の撮影像によって確認することができる。なお、本発明において、「粒子が融着結合している」とは、融着結合する一次粒子同士の中心間距離(r)が、融着結合する一次粒子のそれぞれの半径(r、r)の和より小さいことである。また、半径(r、r)は、一次粒子の平均粒径に対する半径である。

【0033】
担体の比表面積は、30~100m/gであり、図1に示すように、担体の粒子同士が部分的に融着結合することで、導電パスとガス拡散パスが形成されていることが確認できる。

【0034】
(担体の製造方法)
次に担体の製造方法について説明する。担体は、化学炎法またはプラズマ法(高周波、マイクロ波)などと呼ばれる高温条件下での微粒子の製造法により製造される。化学炎法またはプラズマ法などを用いることにより、高温条件下に原料が導入されることで、瞬時に反応および冷却が行われ、目的とする粒子が製造されるとともに、その粒子同士が部分的に融着結合をするため、高い比表面積を有する担体を合成することができる。

【0035】
担体の製造方法として、以下にニオブをドープした酸化スズの例で説明する。図2は、火炎法装置30の模式図であり、図3は、図2の火炎法装置30に用いられるスプレーノズル20の部分図である。図3に示すスプレーノズル20を用いて化学炎を形成する。炎を形成するガスとして、ガス導入部1から空気を、ガス導入部2から燃料ガスであるプロパンガスおよび酸素を導入し、ガス混合器3で混合し、ステンレス管4を通過し、バーナー10にて化学炎を生成する。

【0036】
原料溶液(例えば、オクチル酸スズおよびオクチル酸ニオブをモル比で0.96:0.04の割合でミネラルターペンに溶解させた溶液)を原料タンク22で調整し、溶液導入部5から1~3g/minの割合で導入する。

【0037】
また、キャリヤガス導入部6から導入した空気ガスにより、原料溶液は、混合機7およびステンレス管8を通過し、フルイドノズル、エアノズル、リテーナーキャップ9を介してミストにされ、バーナー10にて混合溶液のミストを化学炎中に導入する。化学炎は、回収器24に向けて形成し、化学炎の温度は、プロパンガスと溶媒(ミネラルターペン)の燃焼熱により約1600℃に上昇し、その化学炎中にて担体の粉末(例えば、Sn0.96Nb0.042-d粉末)が生成する。生成した粉末は、図2に示す火炎法装置のナノ粒子回収フィルター26にて回収される。製造された粉末は、透過電子顕微鏡(TEM像)にて形状観察し、X線回折パターン(XRD)にて相を同定することができる。図4は、Sn0.96Nb0.042-d粉末の透過電子顕微鏡(TEM像)であり、図5は、Sn0.96Nb0.042-d粉末のX線回折パターン(XRD)である。

【0038】
(触媒の担持方法)
次に製造された担体粉末(Sn0.96Nb0.042-d粉末)に触媒(例えば、白金)を担持する方法について説明する。図6は、白金の担持方法を説明するフローチャート図であり、図7は、白金の担持方法を説明する図である。白金の担持には、コロイド法を用い、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析(Inductively Coupled Plasma - Mass Spectrometry))により確認することができる。

【0039】
まず、図7の(a)部に示すように、塩化白金酸を超純水で希釈した塩化白金酸水溶液(HPtCl水溶液)を用意する(ステップS10)。この塩化白金酸水溶液に還元剤として亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)を添加、室温で撹拌し、塩酸(HCl)を除去する(ステップS12)。その後、超純水で希釈し(ステップS14)、水酸化ナトリウム、過酸化水素(H)を滴下し、pHを5に調整する(ステップS16、S18)。

【0040】
次に、図7の(b)部に示すように、Nb-SnO担体(Sn0.96Nb0.042-d粉末)を溶液中に添加する。該溶液を90℃、3時間撹拌することで、図7の(c)部に示すように、Nb-SnO担体に白金(Pt)粒子を担持させる(ステップS20)。

【0041】
その後、該溶液を40℃で放冷、ろ過し、ろ物に対して煮沸洗浄を行い(ステップS22)、80℃、12時間の条件で乾燥を行う(ステップS24)。最後に、所定の温度、窒素雰囲気下で2時間、還元処理(熱処理)を行うことで(ステップS26)、白金を担持したSnO系ナノ粒子担体を得ることができる(ステップS28、図7の(d)部)。

【0042】
図8は、上記のように形成された本実施形態の電極触媒の構造を示す模式図である。図8に示すように、本実施形態の電極触媒は、触媒である白金とスズを反応させて合金触媒(白金スズ合金PtSn、PtSn)を形成している。また、担体40である酸化スズ系の結晶粒子が、連鎖状または房状の構造に成形した担体の母材に触媒である白金または白金を含む合金42を担持した構造を有する。本実施形態の触媒は、従来の触媒であるPt担持カーボン、PtRu担持カーボンと比較し、アセトアルデヒド、有機オリゴマーなどの酸化が始まるオンセット電位が低く、0.5Vに至るまでに大きな酸化電流値を示す。

【0043】
また、本実施形態においては、上述したように、比表面積が高く、結晶性も高いため、白金触媒は、担体と配向して強固に担持され、白金の分散性と平均粒子径(5nm以下)を維持することができる。比表面積の小さい担体に白金ナノ粒子を担持させると熱処理に伴い、白金の凝集が生じるが、比表面積の大きい担体を用いているため、白金の凝集を抑制することができる。白金の触媒表面積は、チャンネルフロー二重電極法により評価することができ、触媒表面積は18m/g以上であることが好ましい。

【0044】
本発明の製造方法においては、還元処理の温度を600℃以上で行う。還元処理の温度を600℃以上とすることで、担体のスズ(Sn)と触媒の白金(Pt)とで粒子同士が部分的に合金化することで、触媒活性を大きく向上させることができる。温度の上限は、900℃以下であることが好ましい。還元処理の温度が900℃を超えると、スズ(Sn)と白金(Pt)の合金化が進みすぎ、比表面積が小さくなるので、好ましくない。

【0045】
図9は、還元処理の温度を25℃~900℃まで変更して製造した触媒担持担体(PtRu/Nb-SnO触媒)のXRDパターンである。500℃以下の温度で還元処理を行い製造した担体では、PtRuのピークが所定の位置(46.2degree)に確認されるが、還元処理の温度を高くし、600℃以上とすることで、PtRuのピークの位置が、低角度側にシフトしており、PtとSnの合金であるPtSn、または、PtSnが形成されていることが確認できる。

【0046】
また、還元処理の温度は、希釈水素(1%水素)中では、250℃以上で行うことで、担体と触媒との合金化を行うことができる。希釈水素(1%水素)中で行うことで、より低温で合金化を行うことができる。

【0047】
図10は、200℃または600℃で還元処理を行ったPtRu/Nb-SnO触媒(触媒PtRu、担体:Nb-SnO)の活性試験の結果を示す図である。また、比較として担体としてカーボンを使用し、触媒にPtRuを用いた電極触媒についても試験を行った。図10に示すように、600℃で還元処理を行った電極触媒は、他の触媒と比較し、高い活性を示した。

【0048】
<液体燃料>
本発明の電極触媒を用いた燃料電池に使用される液体燃料としては、有機オリゴマーを用いることができる。有機オリゴマーとしては、ポリオキシメチレンジメチルエーテル(POMM:Cn+2n+12n+6)を用いることができる。本発明の電極触媒は、用いた液体燃料の酸化が始まるオンセット電位を低くする(低電位で触媒活性が現れる)ことができるので、燃料極と空気極との電圧差を大きくすることができ、大きな酸化電流値を示すことができる。

【0049】
ポリオキシメチレンジメチルエーテルは、以下の化学式で示すように、酸によりメタノールとホルムアルデヒドに分解する。本発明の電極触媒においては、燃料としてホルムアルデヒドを用いることにより、高い性能を示すことができる。ポリオキシジメチルエーテルを用いることにより、ホルムアルデヒドを燃料とすることができる。また、ポリオキシジメチルエーテルは、従来の液体燃料であるメタノール、および、ホルムアルデヒドと比較し、安全性が高いため、ポータブル燃料電池の燃料としても好ましく、用いられる。

【0050】
CHO-(CHO)-CH → 2CHOH + nHCHO
(nは特に限定されず、nが大きいほどホルムアルデヒドが生成されるので、好ましいが、製造上の観点からnは2~8の範囲であることが好ましい。)
<オンセット電位が低くなるメカニズム>
次に、本発明の電極触媒を用いることにより、オンセット電位が低くなるメカニズムについて説明する。

【0051】
ポリオキシメチレンジメチルエーテル(POMM:Cn+2n+12n+6)は、上述したように、ホルムアルデヒド(HCHO)とメタノール(CHOH)に加水分解する。そして、このホルムアルデヒドとメタノールが電極触媒上で酸化することにより発電することができる。ここで、ホルムアルデヒドとメタノールなどは、水素(H)と一酸化炭素(CO)に解離して触媒上に吸着する。単味のPt触媒上では、Hは簡単に酸化されるが、COが酸化されCOとなるためには、酸素(O)の付与が必要となる。しかしながら、PtはCOとの結合力が強いため、単味のPt触媒では、全PtがCOで被覆されてしまう(図11A)。そのため、Oの供給源となる水(HO)を吸着することができず、高電位(すなわち、高い活性化エネルギー)を与えないと、COが除かれず、ホルムアルデヒド、メタノールの継続的な電極酸化反応(発電反応)を進めることができない。

【0052】
これに対し、本発明のPtとSnが合金を形成している触媒上では、SnがHOやOと非常に親和性が高いため、低電位(低い活性化エネルギー)で、SnにHO(またはO)を吸着させることができる(図11B)。図11Bに示すように、本発明の電極触媒は、Pt上にCO、Sn上にHO(またはO)を吸着することができ、このCOとHOが反応し、発電反応を進行させることができる。したがって、単味のPt触媒と比較し、低いオンセット電位で発電させることができる。

【0053】
以下は、ポリオキシメチレンジメチルエーテルが触媒内で起こる反応を示す反応式である。上述したように、単味のPt触媒の場合は、(2)式、(3)式の反応が進むため、(5)式のPtとHOの反応が進行しにくくなる。そのため、(6)式の反応も進行しにくくなり、COが除去されず、発電反応が進行しにくい。

【0054】
これに対し、PtとSn合金を形成した触媒を用いることで、(7)式の反応が容易に進行するため、(8)式の反応を進めることができ、発電反応を容易に進行させることができ、低いオフセット電位で発電させることができる。

【0055】
n+2n+12n+6 + HO → nHCHO + 2CHOH (1)
3Pt + HCHO → 2H-Pt + CO-Pt (2)
5Pt + CHOH → 4H-Pt + CO-Pt (3)
H-Pt → 2H + e + Pt (4)
Pt + HO → HO-Pt (5)
CO-Pt + HO-Pt → CO + Pt +Sn (6)
Sn + HO → HO-Sn (7)
CO-Pt + HO-Sn → CO + Pt +Sn (8)
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
[白金とスズが合金化したPt/Sn0.96Nb0.042-d触媒の製造]
(担体:Sn0.96Nb0.042-d(以下、「NTO」ともいう)の製造)
担体は図2に示す火炎法装置を用い、化学炎法(火炎法)により製造した。酸素、空気およびプロパンガスを14L/min(0.5MPa)、1L/min(0.05MPaの流量で図3に示すスプレーノズルのガス導入部1、2から導入し、ガス混合機3にて混合した。混合ガスはステンレス管4へ導入され、バーナー10にて化学炎を生成させた。
【実施例】
【0058】
一方、オクチル酸スズおよびオクチル酸ニオブをモル比で0.96:0.04の割合でミネラルターペンに溶解させた溶液を溶液導入部5へ1分間に1~10gの量で導入すると共に、キャリヤガス導入部6に入れられた空気ガスによって、混合機7及びステンレス管8を通過させた。
【実施例】
【0059】
更に、フルイドノズル、エアノズル、リテーナーキャップ9を介してミストにされ、バーナー10にて化学炎中に導入した。化学炎の温度はプロパンガスとミネラルターペンの燃焼熱により約1600℃に上昇し、その化学炎中にてSn0.96Nb0.042-d粉末を製造した。生成した粉末は回収フィルター26にて回収した。粉末回収量は20分間の運転で10gであった。
【実施例】
【0060】
(触媒:白金の担持方法)
製造したSn0.96Nb0.042-d粉末に白金の担持を行った。塩化白金酸を超純水で希釈した塩化白金酸水溶液(HPtCl水溶液)に還元剤として亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)を添加、室温で撹拌し、塩酸(HCl)を除去した。その後、超純水で希釈し、水酸化ナトリウム、過酸化水素(H)を滴下し、pHを5に調整した。
【実施例】
【0061】
この溶液に、製造した担体(Sn0.96Nb0.042-d粉末)を添加した。この溶液を90℃、3時間撹拌することで、担体(Sn0.96Nb0.042-d粉末)に白金(Pt)粒子を担持させた。
【実施例】
【0062】
その後、この溶液を40℃で放冷、ろ過し、ろ物に対して煮沸洗浄を行い、80℃、12時間の条件で乾燥を行った。最後に、600℃、窒素雰囲気下で2時間、還元処理(熱処理)を行い、白金とスズが合金化したPt/Sn0.96Nb0.042-d触媒(Pt/NTO-600℃)を得た。
【実施例】
【0063】
(実施例2)
白金担持後の還元処理の温度を800℃とした以外は、実施例1と同様の方法により触媒を製造した。
【実施例】
【0064】
(実施例3)
実施例1の塩化白金酸を塩化白金酸及び塩化ルテニウムとした以外は実施例1と同様の方法により触媒を製造した。
【実施例】
【0065】
(実施例4)
白金ルテニウム担持後の還元処理の温度を800℃とした以外は、実施例1と同様の方法により触媒を製造した。
【実施例】
【0066】
(比較例1-2)
カーボンブラック(CB)にPtRuを担持した市販のPtRu/CB(田中貴金属工業社製TEC81E81)(比較例1)、PtRu/CB(田中貴金属工業社製TEC90110)(比較例2)を用いた。
【実施例】
【0067】
表1に製造した触媒の白金とルテニウムの比、および、白金とルテニウムの重量%を示す。
【実施例】
【0068】
【表1】
JP0006497525B2_000002t.gif
【実施例】
【0069】
製造した触媒について、CV測定(サイクリックボルタンメトリー)を行った。代表例として、実施例3-4、比較例1-2の結果を図12に示す。電解液には、0.1mol/lの過塩素酸水溶液を、参照極には標準水素電極(RHE(Reversible Hydrogen Electrode))を用いた。電位の走査速度は0.1V/secとし、0.05~0.6Vまでの電位範囲で測定を行った。
【実施例】
【0070】
表2に、図12の0.05V~0.6V付近での酸素吸着波に起因するピーク面積から求めた白金電気化学表面積(ECSA(Electrochemical Surface Area))(mg-1)を表2に示す。また、各触媒の触媒幾何表面積(mg-1)、および、Upt(%)(Pt触媒の利用率:電気化学的に反応に寄与している表面積率)を表2に示す。表2より従来のカーボン担体にPtRuを担持した触媒と同程度のPt利用率を示していることが確認できる。
【実施例】
【0071】
【表2】
JP0006497525B2_000003t.gif
【実施例】
【0072】
図13Aから図13D、図14Aから図14Dは、電極触媒のTEM像であり、図13AはPt/NTO触媒により還元処理する前のTEM像、図13BはPt/NTO触媒で150℃で還元処理したTEM像、図13CはPt/NTO触媒で600℃で還元処理(実施例1)したTEM像、図13DはPt/NTO触媒で800℃で還元処理(実施例2)したTEM像、図14AはPtRu/NTO触媒を600℃で還元処理(実施例3)したTEM像、図14BはPtRu/NTO触媒を800℃で還元処理(実施例4)したTEM像、図14Cは市販のPtRu/カーボン粉末(Pt:Ru 2:3)(比較例1)のTEM像、図14Dは市販のPtRu/カーボン粉末(Pt:Ru 1:1)(比較例2)のTEM像である。NTO担体に触媒を担持させたサンプルについては、還元処理の温度を高くするとともに、触媒粒子が増加していることが確認できる。
【実施例】
【0073】
次に、製造した電極触媒を用いてリニアスイープボルタンメトリー(LSV)法により酸化電位を測定した。測定の温度は、25℃、40℃、60℃、80℃とし、走査速度は0.005V/secとした。また、液体燃料は、1.0Mメタノールと同じ6.0M電子で統一するため、0.3M POMM、0.25M POMMで測定を行った。また、参考のため、1.0Mメタノール、1.5Mホルムアルデヒドについても同様に測定を行った。なお、0.3M POMMについては、POMMが完全に分解したCHOHとHCHOの混合液である0.6M CHOHと0.6M HCHOの混合液を用いた。同様に、0.25M POMMについては、0.5M CHOHと0.75M HCHOの混合液を用いた。図15Aから図15Dに温度25℃におけるLSV測定の結果を示す。図15Aはメタノール、図15BはPOMM、図15CはPOMM、図15Dはホルムアルデヒドを液体燃料とした場合のLSV測定の結果である。なお、10μAの電流が流れた電圧をオンセット電圧とし、オンセット電圧が低い方が低い電圧とすることで、空気極(プラス極)との電位差を大きくすることができるので好ましい。
【実施例】
【0074】
図15Aから図15Dに示すように、メタノールにおいては、各触媒においてオンセット電圧に差は見られなかったが、ホルムアルデヒドの量が多くなるにつれ、カーボンブラックにPtRuを担持した触媒(比較例1、2)より、Nb-SnOからなる担体にPtRuまたはPtを担持し、還元処理の温度を800℃にした触媒(実施例2、4)は、オンセット電位を低くできることが確認できる。
【実施例】
【0075】
また、図16Aから図16Dは、温度80℃におけるLSV測定の結果である。図16Aから図16Dは、メタノール、POMM、POMM、ホルムアルデヒドを液体燃料とした場合のLSV測定の結果である。以下、図17Aから図17Dおよび図18Aから図18Dについても同様である。温度80℃においても、温度25℃の場合と同様に、ホルムアルデヒドの量が増えるにつれ、オンセット電位を下げることができる。
【実施例】
【0076】
また、図17Aから図17Dは、各温度における電流が10μA上昇した時の電圧(オンセット電圧)をプロットした図である。図17Aから図17Dにおいては、温度に対する電圧が低い方が、性能が良いことを示す。図15Aから図15D、図16Aから図16Dと同様に、液体燃料としてメタノールを用いた場合は、各触媒で大きな差は見られなかったが、ホルムアルデヒドの量が多くなるにつれ、800℃で還元処理を行った触媒では、オンセット電圧を下げることができ、性能が良好である触媒であることが確認できる。
【実施例】
【0077】
図18Aから図18Dは、各温度における触媒1g当たりの質量活性を示す図である。図18Aから図18Dにおいても、今までの図と同様に、液体燃料にメタノールを用いた場合は、担体に従来のカーボンブラックを用いた場合と同程度、または、従来の触媒の方が、性能は良かったが、ホルムアルデヒドの量が多くなるにつれ、本発明の触媒の方が良好な活性を示すことが確認できる。
【実施例】
【0078】
以上より、本実施形態の触媒によれば、液体燃料としてホルムアルデヒドを用いることにより、良好な活性を示すことが確認できる。ただし、ホルムアルデヒドは、毒性が強いため、燃料電池用の液体燃料として持ち運ぶのは安全性の点で問題があり、ポリオキシメチレンジメチルエーテルを液体燃料として用いる燃料電池の触媒として用いることが効果的である。また、ポリオキシメチレンジメチルエーテルを液体燃料として用いることで、従来の液体燃料であるメタノールよりも安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0079】
1…ガス導入部、2…ガス導入部、3…ガス混合機、4…ステンレス管、5…溶液導入部、6…キャリヤガス導入部、7…混合機、8…ステンレス管、9…リテーナーキャップ、10…バーナー、20…スプレーノズル、24…回収器、26…ナノ粒子回収フィルター、30…火炎法装置、40…担体、42…白金または白金を含む合金
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11A】
10
【図11B】
11
【図12】
12
【図13A】
13
【図13B】
14
【図13C】
15
【図13D】
16
【図14A】
17
【図14B】
18
【図14C】
19
【図14D】
20
【図15A】
21
【図15B】
22
【図15C】
23
【図15D】
24
【図16A】
25
【図16B】
26
【図16C】
27
【図16D】
28
【図17A】
29
【図17B】
30
【図17C】
31
【図17D】
32
【図18A】
33
【図18B】
34
【図18C】
35
【図18D】
36