Top > Search of Japanese Patents > (In Japanese)極細マルチフィラメント糸とその製造手段 > Specification

Specification :(In Japanese)極細マルチフィラメント糸とその製造手段

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P6562313
Date of registration Aug 2, 2019
Date of issue Aug 21, 2019
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)極細マルチフィラメント糸とその製造手段
IPC (International Patent Classification) D02J   1/22        (2006.01)
D02J   1/00        (2006.01)
FI (File Index) D02J 1/22 301Z
D02J 1/00 K
Number of claims or invention 12
Total pages 24
Application Number P2016-510198
Date of filing Mar 6, 2015
International application number PCT/JP2015/056630
International publication number WO2015/146542
Date of international publication Oct 1, 2015
Application number of the priority 2014059791
Priority date Mar 24, 2014
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Date of request for substantive examination Feb 23, 2018
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】鈴木 章泰
Representative (In Japanese)【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100116090、【弁理士】、【氏名又は名称】栗原 和彦
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
Examiner (In Japanese)【審査官】長谷川 大輔
Document or reference (In Japanese)国際公開第2006/095661(WO,A1)
特開2010-185162(JP,A)
国際公開第2005/083165(WO,A1)
Field of search D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
D01F1/00-6/96
9/00-9/04
D01D1/00-13/02
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
フィラメントの送出手段を有するP1気圧下の原フィラメント供給室と、該原フィラメント供給室に配設されており、該原フィラメントがその中を通過する多数本のオリフィスと、該オリフィスによって該原フィラメント供給室と接続されており、該オリフィスを通過してきた該原フィラメントが赤外線レーザービームにより加熱されることによって延伸されるP2気圧下(P1>P2でかつP2は減圧下)の延伸室と、該赤外線レーザービームを放射する赤外線レーザー発振装置とを具備している、延伸された極細フィラメントの製造装置において、
該原フィラメントが供給される多錘の原フィラメント供給手段と、
該延伸室内でオリフィス直下において走行するコンベアと、
該延伸室内で該コンベア上に集積された該延伸された極細フィラメントウェブを集束して通過させるインターレースノズルと、
該インターレースノズルが該延伸室外のP2気圧より高い外気を流入させる配管を有し、
該インターレースノズルを通過してきた糸状体を巻き取る巻取機と、
を有することを特徴とする、平均フィラメント径が1μm未満のナノフィラメントからなる極細マルチフィラメント糸の製造装置。
【請求項2】
前記オリフィスの多数本が前記コンベアの進行方向にほぼ平行して配列されている、請求項1記載の平均フィラメント径が1μm未満のナノフィラメントからなる極細マルチフィラメント糸の製造装置。
【請求項3】
前記オリフィスの多数本が前記コンベアの進行方向に対してほぼ直角方向に配列されている、請求項1記載の平均フィラメント径が1μm未満のナノフィラメントからなる極細マルチフィラメント糸の製造装置。
【請求項4】
前記インターレースノズルが複数個設けられており、前記コンベア上の複数の前記ウェブをそれぞれの該複数のインターレースノズル(複数のノズルA)を通過するように配置されており、さらに別個のインターレースノズル(ノズルB)が設けられており、該ノズルAを通過することによって形成された複数の糸状体を該ノズルBに通過させることによって、複数の糸状体がさらに交絡された糸状体が形成される、請求項1記載の平均フィラメント径が1μm未満のナノフィラメントからなる極細マルチフィラメント糸の製造装置。
【請求項5】
フィラメントが送出手段により送り出された多数本の原フィラメントが、P1気圧下で多数本のオリフィスに供給され、該オリフィスの前後における気圧の差が、P1≧2P2である減圧下のP2気圧下の延伸部に導かれ、該延伸部において赤外線光束により加熱されて延伸され、該オリフィス直下を走行するコンベア上に集積される極細フィラメントウェブの製造において、
該コンベア上に集積された該延伸された極細フィラメントウェブが集束されて、延伸室外のP2気圧より高い外気を導入できる配管を有するインターレースノズルを通過させて交絡される工程と、
該インターレースノズルを通過し、交絡された糸状体が巻取機に巻き取られる工程と、
を有することを特徴とする、平均フィラメント径が1μm未満のナノフィラメントからなる極細マルチフィラメント糸の製造方法。
【請求項6】
前記オリフィスの多数本が前記コンベアの進行方向にほぼ平行して配列されている、請求項5記載の平均フィラメント径が1μm未満のナノフィラメントからなる極細マルチフィラメント糸の製造方法。
【請求項7】
前記オリフィスの多数本が前記コンベアの進行方向に対してほぼ直角方向に配列されている、請求項5記載の平均フィラメント径が1μm未満のナノフィラメントからなる極細マルチフィラメント糸の製造方法。
【請求項8】
前記インターレースノズルが複数個設けられており、前記コンベア上には複数の前記ウェブが走行しており、該複数のウェブがそれぞれの該複数のインターレースノズル(複数のノズルA)を通過することで複数の糸状体が形成され、該複数の糸状体が合わさってさらに別個のインターレースノズル(ノズルB)を通過することによって、複数の糸状体がさらに交絡された糸状体が形成される、請求項5記載の平均フィラメント径が1μm未満のナノフィラメントからなる極細マルチフィラメント糸の製造方法。
【請求項9】
前記コンベアの走行速度Scに対して、前記インターレースノズルを出た糸状体の巻取速度Swを大きく(Sw/Sc>1)になるように延伸される、請求項5記載の平均フィラメント径が1μm未満のナノフィラメントからなる極細マルチフィラメント糸の製造方法。
【請求項10】
前記インターレースノズルを出た糸状体がさらにゾーン延伸される、請求項5記載の平均フィラメント径が1μm未満のナノフィラメントからなる極細マルチフィラメント糸の製造方法。
【請求項11】
前記マルチフィラメントを構成する個々のフィラメント間に交絡を有する前記インターレース糸であって、該個々のマルチフィラメントの平均フィラメント径が1μm未満であるポリエチレンテレフタレートからなり、該糸の嵩密度が0.1g/cm-3より小さく、切断強度が20MPa以上、弾性率が200MPa以上であることを特徴とする、請求項5記載の平均フィラメント径が1μm未満のナノフィラメントからなる極細マルチフィラメント糸の製造方法。
【請求項12】
前記マルチフィラメントを構成する個々のフィラメント間に交絡を有する前記インターレース糸であって、該個々のマルチフィラメントの平均フィラメント径が1μm未満であるポリ乳酸Poly( L-lactide)(PLLA)からなり、該糸の嵩密度が0.5g/cm-3より小さく、切断強度が30MPa以上、弾性率が300MPa以上であることを特徴とする、請求項5記載の平均フィラメント径が1μm未満のナノフィラメントからなる極細マルチフィラメント糸の製造方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、極細マルチフィラメント糸とその製造手段に関し、特に赤外線光束を照射して超高延伸倍率を行う延伸手段において、その延伸されたマルチフィラメントウェブをインターレースノズル中へ通過させるという簡便な手段により、抱合性があり、かつ嵩高で高弾性・高強度糸を得ることを可能にした極細マルチフィラメント糸及びその製造手段に関し、さらにこの極細マルチフィラメント糸をさらに高強度にする手段やこのマルチフィラメント糸から得られた手術用縫合糸や人工血管等の応用製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維径が1μm未満、すなわちナノメータ(数ナノメータから数百ナノメータ)範囲のファイバーが、IT、バイオ、環境分野などの幅広い分野で、将来の革新的素材になると注目されている。そして、そのナノファイバーの製造手段として、エレクトロスピニング法(以下ES法と略す場合がある。)が代表的である(米国特許第1,975,504号)。しかしこのES法は、ポリマーを溶剤に溶解する必要があることや、出来た製品も脱溶剤が必要であることから、製法において煩雑であり、また、フィラメントの分子配向がないことよりフィラメントの強度・弾性率が小さい。また、出来たファイバー集積体にダマやショットと呼ばれる樹脂の小さい固まりが混在するなど、品質的にも問題点が多かった。
【0003】
本発明人は、赤外線法により、分子配向を伴って、1,000倍以上という超高倍率の延伸倍率で極細フィラメントおよび不織布を得る手段について発明を行った(国際公開番号WO2005/083165A1など)。これらは、簡便な手段で、極細の分子配向したフィラメントおよびそれからなる不織布が得られた。また、これらを発展させ、さらにナノフィラメントの領域までに極細化を可能にした、極細フィラメントの製造手段を発明した(国際公開公報WO2008/084797A1)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】米国特許第1,975,504号明細書(第1-2頁、第1図、第4図)
【特許文献2】国際公開番号WO2005/083165A1(第1-2頁、図1,図3)
【特許文献3】国際公開公報WO2008/084797A1(第1-2頁、図1—3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記本発明人の先願発明をさらに発展させたものであって、その目的とするところは、本発明人の先願発明である極細フィラメントウェブ、特にナノフィラメントウェブ製造において、そのウェブをインターレースノズル中に通過させることにより極細マルチフィラメント糸を製造させることにある。このようにして得られて極細マルチフィラメント糸は抱合性があり、かつ嵩高性があって高強度である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、原フィラメントが延伸されることによって、ナノフィラメントの領域までに極細化される延伸装置内で製造されるナノフィラメントウェブから極細マルチフィラメント糸を得ることにある。本発明における原フィラメントとは、既にフィラメントとして製造されて、リール等に巻き取られたものである。また紡糸過程において、溶融または溶解フィラメントが冷却や凝固によりフィラメントとなったものを紡糸過程に引き続き使用され、本発明の原フィラメントとすることもできる。ここでフィラメントとは、実質的に連続した繊維であり、数ミリメータから数十ミリメータの長さである短繊維とは区別される。原フィラメントは、単独で存在することが望ましいが、数本ないし数十本に集合されていても使用することができる。
【0007】
本発明において延伸されたフィラメントは、全てフィラメントと表現するが、延伸された結果、上記ファイバーの領域に属するものも含まれる。本発明における延伸されたフィラメントは、殆ど延伸切れすることがないので、フィラメントの長さも数m以上であり、フィラメント径dが小さいことを考慮すると、実質的に連続フィラメントと見なすことができる場合が殆どである。しかし、条件によっては、上記ファイバーの領域に属する短繊維も製造することができる。
【0008】
本発明における原フィラメントは、一本のフィラメントからなるシングルフィラメントである場合と、複数のフィラメントからなるマルチフィラメントである場合が含められる。本発明においては、延伸されたフィラメントは数ミクロン領域の極細フィラメントの領域から1ミクロン未満のナノフィラメント領域のフィラメントを原料にして極細のマルチフィラメント糸が製造される。
【0009】
本発明の原フィラメントは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、脂肪族ポリエステルおよびポリエチレンナフタレートを含むポリエステル、ナイロン(含むナイロン6、ナイロン66)を含むポリアミド、ポリプロピレンやポリエチレンを含むポリオレフィン、ポリビニルアルコール系ポリマー、また、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などを含むフッ素系ポリマー、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の耐熱性のポリマーにも適用される。特に、生分解性ポリマーであるポリ乳酸(PLLA)や生体内分解吸収性ポリマーであるポリグリコール酸などは、他の手段ではナノフィラメント化が困難とされているので、本発明の手段が有効である。
【0010】
本発明においては、フィラメントの送出手段から送り出された原フィラメントについて延伸が行われる。送出手段は、ニップローラや数段の駆動ローラの組み合わせなどの一定の送出速度でフィラメントを送り出すことが出来るものであれば種々のタイプのものが使用できる。
【0011】
本発明において、送出手段から送り出されてくる原フィラメントは、多錘であることを特徴とする。多錘とは、独立して行動するフィラメント又はフィラメントの束が複数本存在することを意味する。複数本は、2本から数100本を意味する。
【0012】
フィラメントの送出手段より送り出された多錘の原フィラメントは、さらにオリフィスを通して、オリフィス中を原フィラメントの走行方向に流れる気体によって送られる。原フィラメントがこのフィラメント送出手段を経てオリフィスに送り込まれるまでは、P1気圧の雰囲気下で行われ、P1気圧下の状態に保たれている場所を原フィラメント供給室とする。P1が大気圧のときは、特に圧力を一定にする囲いは必要ない。P1が加圧下や減圧下の場合は、その圧力を保つための囲い(部屋)が必要であり、加圧ポンプまたは減圧ポンプも必要となる。なお本発明では、オリフィス入口部がP1であることが必要であるが、原フィラメントの貯蔵部、原フィラメントの送り出し部分は、必ずしもP1気圧である必要はない。しかし、それらを別々の部屋を設けるのは煩雑であるので、それらの部分が同一気圧であることが好ましい。
【0013】
オリフィスの出口以降は、P2気圧下に保たれ、オリフィスから出てきた原フィラメントを赤外線光束(ビーム)によって加熱することによって延伸される延伸室となる。原フィラメントは、P1気圧の原フィラメント供給室とP2気圧下の延伸室との圧力差(P1-P2)によって生じるオリフィス中を流れる空気の流れによってオリフィス中を送られていく。
【0014】
P1とP2の気圧の差は、P1>P2である。そして、実験の結果、P1≧2P2であることが好ましく、さらに好ましくはP1≧3P2、P1≧5P2であることが最も好ましいことがわかった。
【0015】
本発明は、P2が減圧下(大気圧未満の圧力)で行われることを特徴とする。そうすることにより、P1を大気圧で実施でき、装置を著しく簡便に出来、また、減圧は比較的簡便な手段であるからである。さらに、オリフィスからエアーが減圧下に噴出されることにより、通常存在する大気圧のエアーに邪魔されることないので、噴出されるエアーも、それに伴うフィラメントも非常に安定し、その結果、延伸性が安定し、ナノフィラメント領域までの延伸が可能になる。さらにもう一つの特徴として、本発明ではインターレースノズルを使用するが、通常のインターレースノズルは圧縮エアーを必要とする。しかし、本発明のインターレースノズルは減圧下の延伸室内で使用されるため、圧縮エアーは必要とせず、インターレースノズルの圧縮エアー挿入口を延伸室外の外気に配管するのみでよく、コンプレッサーも必要とせず、省エネルギーでもある。このような簡便な手段で、ナノミクロン領域のフィラメント糸が得られることに本発明の特徴がある。
【0016】
なおP1またはP2は、通常室温の空気が使用される。しかし、原フィラメントを予熱したい場合や、延伸したフィラメントを熱処理したい場合は、加熱エアーも使用される。また、フィラメントが酸化されるのを防ぐ場合は、窒素ガス等の不活性ガスが使用され、水分の飛散を防ぐ場合は、水蒸気や水分を含む気体も使用される。
【0017】
本発明における原フィラメント供給室と延伸室は、オリフィスによってつながっている。オリフィス中では、原フィラメントとオリフィス内径との間の狭い隙間に、P1>P2の圧力差で生じた高速気体の流れが生じる。この高速気体の流れを生じるために、オリフィスの内径Dと繊維の径dとは、あまり大きくかけはなれてはならない。実験結果、D>dであって、D<30d、好ましくはD<10d、さらに好ましくはD<5dであってD<2dであることが最も好ましい。
【0018】
オリフィス内を高速の気体が流れるので、オリフィスの内部は抵抗の少ない構造が望ましい。本発明のオリフィスの形状は、1本1本独立したものも使用されるが、板状物に多数の孔を開けて多錘のオリフィスとすることもできる。オリフィスの内部の断面も円形のものが望ましいが、複数のフィラメントを通過させる場合や、フィラメントの形状が楕円やテープ状の場合には、断面が楕円や矩形のものも使用される。また、オリフィス入り口では、原フィラメントを導入しやすいように大きく、出口部分のみ狭い形状が、フィラメントの走行抵抗を小さくし、オリフィスの出口からの風速も大きくできるので好ましい。
【0019】
本発明におけるオリフィスは、本発明者らによる従来の延伸前の送風管とは役割を異にしている。従来の送風管は、レーザーをフィラメントの定位置に当てる役目であり、できるだけ抵抗が少なく、定位置に原フィラメントを搬送する役目であった。本発明はそれに加えて、高速の整流気体が原フィラメント供給室の気圧P1と延伸室の気圧P2の気圧差で発生する点で異なる。なお、通常のスパンボンド不織布製造においては、エアーサッカー等によって溶融フィラメントに張力を与えられる。しかし、スパンボンド不織布製造におけるエアーサッカーと本発明におけるオリフィスとは、その作用機構と効果が全く異なる。スパンボンド法では、溶融フィラメントをエアーサッカー内の高速流体で送られ、エアーサッカー内でそのフィラメント径の細化の殆どが完了する。それに対して、本発明では固体の原フィラメントがオリフィスで送られ、オリフィス内ではフィラメントの細化は始まらず、オリフィスを出た所でレーザービームが照射されることによって、始めて延伸が開始される。またスパンボンド法では、エアーサッカー内に高圧エアーを送りこむことにより高速流体を発生させるが、本発明では、オリフィス前後における部屋の気圧差でオリフィス内の高速流体を発生させる点で異なる。またその効果も、スパンボンド法では、せいぜい10μm前後のフィラメント径しか得られないのに対して、本発明では1μm未満のナノフィラメントが得られるという大きな効果が得られる点が異なる。
【0020】
本発明は、原フィラメントが赤外線光束によって加熱されて延伸されることを特徴とする。赤外線は、波長0.78μmから1mmまでとされているが、高分子化合物のC-Cボンドは、3.5μmの吸収を中心としており、0.78μmから20μmが特に好ましい。これらの赤外線は、鏡やレンズにより点状または線状に焦点を絞り、原フィラメントの加熱域を絞り込むスポットヒータやラインヒータと呼ばれる加熱ヒータが使用できる。ラインヒータは、複数本の原フィラメントが並列して走行している場合に好適である。
【0021】
本発明の赤外線光束は、レーザー光であることが特に好ましい。中でも、10.6μmの波長の炭酸ガスレーザーと、1.06μmの波長のYAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット系)レーザーが特に好ましい。レーザーは、放射範囲(光束)を小さく絞り込むことが可能であり、また、特定の波長に集中しているので、無駄なエネルギーも少ない。
【0022】
オリフィスから送り出されてきた原フィラメントは、オリフィス直下で、赤外線光束によって加熱され、オリフィスからの高速流体によってフィラメントに与えられる張力によって、原フィラメントは延伸される。オリフィスの直下とは、実験結果、赤外線光束の中心がオリフィス先端より30mm以下、好ましくは10mm以下、5mm以下であることが最も好ましい。オリフィスから離れると、原フィラメントが振れ、定位置に収まらず、赤外線光束に安定して捉えられないからである。またオリフィスからの高速気体によってフィラメントに与えられる張力が、オリフィスから離れることによって弱くなり、また安定性も小さくなるからと思われる。
【0023】
本発明の原フィラメントは、赤外線ビームにより延伸適温に加熱されるが、延伸適温に加熱される範囲がフィラメントの中心でフィラメントの軸方向に沿って、上下4mm(長さ8mm)以内であることが好ましく、さらに好ましくは上下3mm以下、最も好ましくは上下2mm以下で加熱される。このビームの径は、走行するフィラメントの軸方向に沿って測定する。本発明においては、原フィラメントが複数本であるので、原フィラメントの軸方向で測定される。本発明は、狭い領域で急激に延伸されることにより、高度に極細化され、ナノ領域までに細くした延伸を可能にし、しかも超高倍率延伸であっても、延伸切れを少なくすることができた。なお、この赤外線光束が照射されるフィラメントがマルチフィラメントである場合は、上記のフィラメントの中心は、マルチフィラメントのフィラメント束の中心を意味する。
【0024】
延伸室内で、多数の原フィラメントが赤外線光束によって加熱されて延伸され、極細の延伸フィラメント群となる。延伸されたフィラメント群は延伸室内を走行するコンベア上に集積され、極細フィラメントウェブとなる。本発明のコンベアとして、網(ネット)状の移動体が通常使用されるが、ベルトやシリンダ上に集積させてもよい。
【0025】
原フィラメントが多数本使用されるので、原フィラメントが通過するオリフィスも多数本使用される。この多数のオリフィスの配列には大別して二通りの方式がある。多数本のオリフィスがコンベアの進行方向にほぼ平行して配列されている縦型配列の場合と、オリフィスの多数本がコンベアの進行方向に対してほぼ直角方向に配列されている横型配列の場合である。縦型配列では、極細フィラメントウェブは狭い幅でコンベア上を走行し、横型配列では、極細フィラメントウェブは広い幅でコンベア上を走行する。なお、オリフィスの配列を、コンベアの走行方向に対して、平行又は直角と説明したが、角度は厳密ではなく、数度乃至は数十度傾斜していてもよい。
【0026】
コンベア上の極細フィラメントウェブは、集束されてインターレースノズル中を通過する。
インターレースノズルは、合成繊維のマルチフィラメント紡糸において近年開発されたもので、「圧縮空気を吹き出し、糸条により合わせに相当する抱合効果を付与するためのノズル」(JIS L0364)である。マルチフィラメント紡糸においてインターレースノズルが使用される以前は、紡糸されたマルチフィラメントは巻き取られた後、別工程で撚が加えられていた。撚のないマルチフィラメント糸は、糸切れ、絡みつき、織物不良となり、きわめて扱いにくい。しかし、別工程での撚加工は、作業能率が悪く、コストアップとなっていた。そこで紡糸工程中にインターレースノズルを設け、マルチフィラメントにより合わせに相当する抱合効果を付与し、マルチフィラメント糸として使用できるようにした。インターレースノズルは、マルチフィラメントが通過する通路Aと、通路Aの直角方向から導入される圧縮空気の通路Bからなる。直角方向から流入したエアーにより、マルチフィラメントを構成する複数のフィラメントを相互に絡ませることで、撚のもつ集束性と抱合効果を持たせることができる。
【0027】
本発明のインターレースノズルは、圧縮空気を必要としない点に特徴がある。本発明のインターレースノズルは、減圧下のP2圧で使用されるので、上記の通路Bを延伸室外の通常の外気に接続することで、外気の流入が圧縮空気と同等の効果をもたらす。圧縮空気を使用しない点で、繊維産業で通常使用されているインターレースノズルとは機構を異にするが、構造は殆ど同一であるので本発明でもインターレースノズルの用語を使用する。
【0028】
延伸室内にインターレースノズルを複数個設け、またコンベア上には複数列の極細フィラメントウェブが走行しており、この複数のウェブがそれぞれの複数のインターレースノズル(複数のノズルA)を通過することで複数の糸状体が形成させることができる。そして、この複数の糸状体を合わせて、さらに別個のインターレースノズル(ノズルB)を通過させることによって、複数の糸状体(ダブルの糸)がさらに交絡された糸状体を形成させることができる。2本撚ることでマルチフィラメント径を小さくでき、さらに引張強度を高めることができた。
【0029】
本発明のコンベアの走行速度Scに対して、インターレースノズルを出た糸状体の巻取速度のSwを大きく(Sw/Sc>1)することにより、巻き取られる糸に延伸効果を生じさせることができる。延伸倍率λは、λ=Sw/Scで表示できる。コンベアとインターレースノズルの間に延伸張力がコンベア上に及ばないように、ニップローラ、フリクションローラ等の張力遮断のための手段を設けることもできる。
【0030】
インターレースノズルを出た糸状体は巻取ビームを有する巻取機に巻かれて行く。本発明では抱合性のある糸として巻き取られるので、マルチフィラメントの個々のフィラメントの糸切れも少なく、非常に作業性よく巻き取られる。
【0031】
本発明において、インターレースノズルを出て巻き取られた糸は、さらに延伸されて糸の強度をアップすることができる。延伸は、合成繊維の延伸に用いられている糸を熱板や加熱ローラ、オーブン(熱風室)等の加熱源を介してニップローラ間で延伸することによっても達成することができる。さらに、本発明の巻き取られた糸の有効な延伸手段としてゾーン延伸がある。ゾーン延伸は、上記の加熱源を糸が通過する距離を極端に狭くすることで、糸の加熱域を非常に狭くする。局所加熱のため、加熱軟化された部分に応力が集中し、延伸切れを少なくし、延伸倍率をアップさせることでき、高強度の糸となる。さらに、高張力下の熱処理もされているので、糸の耐熱性も向上する。
【0032】
極細マルチフィラメントからなる糸は、通常の市販のマルチフィラメント糸とはフィラメント本数が桁違いに多く、それだけに取り扱いが難しい。本発明により、この取り扱いが難しい極細マルチフィラメントに抱合性を持たせ取り扱いを良くした。この糸の製造工程における延伸(Sw/Sc)やその後のゾーン延伸等において、糸の強度や弾性率がアップした。本発明による極細マルチフィラメント糸は、極細フィラメントからなる織布やニット等の衣料用、医療用、産業用素材としても使用される。さらに、本発明を利用して生体内分解吸収性ポリマーからなるマルチフィラメント糸を製造し、この糸より組紐技術により手術用縫合糸や人工血管(円筒状組紐)等に応用することができる。
【0033】
本発明における極細マルチフィラメント糸の熱物性は、株式会社リガク製THEM PLUS2 DSC8230Cにより示差熱分析(DSC)を用い、昇温速度10℃/minで測定した。
【0034】
また、極細マルチフィラメント糸の結晶性については、FT-IR(フ-リエ変換赤外分光光度計)によっても測定される。本発明では、JASCO社製FT/IR4200装置を使用した。
【0035】
なお、ナノフィラメントの強伸度は、フィラメント径があまりにも小さいので1本のフィラメントについて直接測定することは困難である。そこで、1本のマルチフィラメント糸の強度を測定し、1本のマルチフィラメント糸の強伸度として求めた。なお、マルチフィラメント糸を構成するナノファイバーの本数nMFは(1)式から概算できる。
(dav/2)2πLMFρnMF =WMF (1)
ここで、davは極細フィラメントの平均繊維径、LMFは極細フィラメントの長さ、ρは極細フィラメントの密度、WMFは糸の所定の長さ当たりの重量である。
【発明の効果】
【0036】
本発明の極細マルチフィラメントは、製造工程より抱合性のある1本の糸として取り扱い性の良い糸となり、極細フィラメントの実用性を高めることができた。さらに、本発明の極細マルチフィラメント糸は、フィラメントの交絡があるので、伸度があり、また嵩高性があり、柔らかく風合いのある衣料用糸となる。嵩高性は、単位容積当たりの重量(g/cm-3)である嵩密度で表示される。また、強度×伸度の値が大きいので、タフな糸となり、衣料用、医療用、産業用糸となり、糸単体として、さらに織布やニット等に加工される。さらに、この糸の製造工程における延伸(Sw/Sc)やその後のゾーン延伸やゾーン熱処理において、糸の強度、弾性率、耐熱性をアップすることができ、上記の特性に併せて、高強度の糸としての特性を有する。
【0037】
本発明の極細マルチフィラメント糸はインターレースノズルを使用することを特徴とする。このインターレースノズルは通常繊維産業のマルチフィラメント紡糸における使用とは異なり、加圧エアーを用いないことを特徴とする。したがって、コンプレッサーを必要としないし、電力エネルギーも必要としない。本発明の図3にあるように、複数のインターレースノズルを使用する場合はなおさら重要である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の極細マルチフィラメント糸製造装置(縦型)の例を示す斜視図。
【図2】本発明の極細マルチフィラメント糸製造装置(横型)の例を示す斜視図。
【図3】本発明の極細マルチフィラメント糸製造装置の他の例を示す斜視図。
【図4】本発明で使用されるインターレースノズルの種々のタイプを示す概念図。
【図5】本発明のゾーン延伸の原理を示す斜視図。
【図6】本発明によって得られたPETナノマルチフィラメント糸の外観写真(倍率50倍と1000倍)。
【図7】本発明によって得られたPETナノマルチフィラメント糸の径dMFとそれを構成する極細フィラメントの平均径dav。
【図8】本発明によって得られたPETマルチフィラメント糸の引張試験結果。
【図9】本発明によって得られたPETマルチフィラメント糸のDSC測定結果。
【図10】本発明によって得られたPETマルチフィラメント糸のFT-IR測定結果。
【図11】本発明のダブルでインターレースノズルを通過させたPETナノマルチフィラメント糸のSEMによる外観写真(倍率50倍と1000倍)。
【図12】本発明のシングルとダブルでインターレースノズルを通過させたPETナノマルチフィラメント糸の径dMFとそれを構成する極細フィラメントの平均径dav。
【図13】本発明のダブルでインターレースノズルを通過させたPETナノマルチフィラメント糸の引張試験結果。
【図14】本発明によって得られたPLLA極細マルチフィラメント糸のSEMによる外観写真(倍率200倍)。
【図15】レーザーパワーLp(W)を変化させた場合のPLLAマルチフィラメント糸を構成する極細フィラメントの平均径dav。
【図16】本発明によって得られたPLLAマルチフィラメント糸をゾーン延伸した糸の強度、弾性率測定結果。
【図17】本発明によって得られたPLLAマルチフィラメント糸とそれをゾーン延伸した糸の広角度X線図。
【図18】本発明によって得られたPLLAマルチフィラメント糸とそれをオーブン熱処理した糸およびゾーン延伸した糸の強伸度曲線。
【図19】本発明によって得られたPLLA極細マルチフィラメント糸により作製された組紐のSEMによる外観写真(倍率30左倍と右100倍)。
【図20】本発明によって得られたPLLA極細マルチフィラメント糸により作製された中空組紐のSEMによる外観写真(倍率 左50倍と右30倍)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態の例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の極細マルチフィラメント糸製造装置(縦型)の例を斜視図で示す。原フィラメント1a、1b、1c、・・・は、リール2に巻かれた状態から繰り出され、コーム等を経て、繰出ニップローラ3により一定速度で送り出され、オリフィス4a、4b、4c、・・・へと導かれる。オリフィス4a、4b、4c、・・・は板5に開けられた穴で形成されている。この図におけるここまでの工程は、原フィラメント供給室の気圧P1が大気圧に保たれて、特別の部屋を必要としない場合について図示してあるが、ここまでを加圧された一定圧P1の部屋とすることもできる。オリフィス4a、4b、4c、・・・の出口以降は、負圧状態のP2気圧下にある延伸室6となる。気圧P2は、配管7を通じて真空ポンプ(図示されていない)へ導かれている。オリフィス4a、4b、4c、・・・を出た原フィラメント1a、1b、1c、・・・は、原フィラメント供給室と延伸室6の気圧差P1-P2によってもたらされる高速エアーと共に延伸室6に導かれる。炭酸ガスレーザー発振装置8より出たレーザービーム9は、オリフィス4a、4b、4c、・・・直下において、原フィラメント1a、1b、1c、・・・に照射される。なお、レーザービーム9を延伸室内へ導くには、Zn-Seからなる窓10を通過し、延伸室6の背後の壁にもZn-Se窓11を設け、延伸室6を出たレーザービーム9は、パワーメータ12に到る。レーザービーム9により加熱され、P1-P2の気圧差によってもたらされる高速エアーが下方のフィラメントに与える張力により、原フィラメント1a、1b、1c、・・・は延伸されて、延伸されたフィラメント13a、13b、13c、・・・となって下降し、下方の一定速度で走行するコンベアベルト14上に集積され、延伸された極細フィラメントウェブ15となる。オリフィス4a、4b、4c、・・・は、コンベア14の進行方向に平行に並べられ、レーザービーム9は、オリフィス4a、4b、4c、・・・の列より若干傾けられて照射され、全ての原フィラメント1a、1b、1c、・・・にレーザービーム9が当たるようにされている。このようにオリフィス4a、4b、4c、・・・の列とコンベア14の進行方向はこの図ではほぼ平行に配置され、縦型の捕集パターンを形成する。コンベア14上の延伸された極細フィラメントウェブ15は、集束されてインターレースノズル16を通過する。インターレースノズル16の横腹には配管17が設けられており、バルブ18を介して延伸室6の外に通じている。バルブ18を開にすることで、減圧になっている延伸室6へ外気が吸引される。なお、インターレースノズル16へ導入されるエアーの量は、バルブ18によって調整される。インターレースノズル16内の極細フィラメントウェブ15は、インターレースノズル16内の横腹から流入してきた外気と衝突し、極細フィラメントウェブ15を構成するマルチフィラメントがお互いに交絡して、抱合性をもったマルチフィラメント糸19となり、巻取リール20へ巻き取られる。

【0040】
なお、図1において、コンベア14の走行速度Scに対して、インターレースノズル16を出た糸状体19の巻取速度のSwを大きく(Sw/Sc>1)することにより、巻き取られる糸に延伸効果を生じさせることができる。延伸倍率λは、λ=Sw/Scで表示できる。コンベアとインターレースノズルの間に延伸張力がコンベア上に及ばないように、ニップローラ、フリクションローラ等の張力遮断のための手段が設けることもできる。

【0041】
図2は、本発明の極細マルチフィラメント糸製造装置(横型)の例を斜視図で示す。原フィラメント1a、1b、1c、・・・は、リール2に巻かれた状態から繰り出され、コーム等を経て、繰出ニップローラ3により一定速度で送り出され、オリフィス4a、4b、4c、・・・へと導かれる。オリフィス4a、4b、4c、・・・は板5に開けられた穴で形成されているが、図1と異なり、オリフィス4a、4b、4c、・・・の配列がコンベア14の進行方向とは直角方向に並べられており、コンベア14上に集積した延伸された極細フィラメントウェブ15は、幅の広いウェブとなる。この極細フィラメントウェブ15は、図1と同様集束されてインターレースノズル16を通過し、抱合性をもったマルチフィラメント糸19となり、巻取リール20へ巻き取られる。図2ではインターレースノズル16の外気への配管は省略されている。

【0042】
図3は、本発明の極細マルチフィラメント糸製造装置の他の例を斜視図で示す。1群の原フィラメント21a、21b、21c、・・・は、リール22に巻かれた状態から繰り出され、コーム等を経て、繰出ニップローラ23により一定速度で送り出され、オリフィス24a、24b、24c、・・・へと導かれる。オリフィス24a、24b、24c、・・・は板25に開けられた穴で形成されている。他の1群の原フィラメント26a、26b、26c、・・・は、リール27に巻かれた状態から繰り出され、コーム等を経て、繰出ニップローラ23により一定速度で送り出され、オリフィス28a、28b、28c、・・・へと導かれる。オリフィス28a、28b、28c、・・・も板25に開けられた穴で形成されている。この図におけるここまでの工程は、原フィラメント供給室の気圧P1が大気圧に保たれている。オリフィス24a、24b、24c、・・・及びオリフィス28a、28b、28c、・・・の出口以降は、負圧状態のP2気圧下にある延伸室29となる。気圧P2は、配管30を通じて真空ポンプ(図示されていない)へ導かれている。オリフィス24a、24b、24c、・・・及びオリフィス28a、28b、28c、・・・を出た原フィラメント21a、21b、21c、・・・、及び26a、26b、26c、・・・は、原フィラメント供給室と延伸室29の気圧差P1-P2によってもたらされる高速エアーと共に延伸室29に導かれる。原フィラメント21a、21b、21c、・・・、及び26a、26b、26c、・・・オリフィス24a、24b、24c、・・・及びオリフィス28a、28b、28c、・・・直下において、炭酸ガスレーザー発振装置8より出たレーザービーム9によって照射される。なお、レーザービーム9を延伸室内へ導くには、Zn-Seからなる窓10を通過し、延伸室6の背後の壁にもZn-Se窓11を設け、延伸室6を出たレーザービーム9は、パワーメータ12に到る。レーザービーム9により加熱され、P1-P2の気圧差によってもたらされる高速エアーが下方のフィラメントに与える張力により、原フィラメント21a、21b、21c、・・・、及び26a、26b、26c、・・・は延伸されて、延伸されたフィラメント31a、31b、31c、・・・及び32a、32b、32c、・・・となって下降し、下方の一定速度で走行するコンベア33上に集積され、延伸された極細フィラメントウェブ34及び35となる。コンベア33上の延伸された極細フィラメントウェブ34及び35は、それぞれ集束されてインターレースノズル36及び37を通過する。インターレースノズル36及び37を通過することによって抱合性のある糸となったマルチフィラメント糸38、39は合わさってインターレースノズル40を通過してマルチフィラメント糸41となり、巻取リ-ル42へ巻き取られる。なお、インターレースノズル36、37及び40は、図1のインターレースノズル15と同様に外気につなぐ配管があるが、この図では省略されている。

【0043】
図4は、本発明で使用されるインターレースノズルの種々のタイプの例を概念図で示す。図4のa-1図において、インターレースノズル51はマルチフィラメントが通過する通路52と、通路52の直角方向から導入される空気流入通路53からなる。a-2図は、インターレースノズル51を断面図で示し、空気流入通路53から流入した空気の流れがノズルの壁と衝突するエアーの乱流が、通路52を通ってくるマルチフィラメントの個々のフィラメントを交絡させて、マルチフィラメント全体として抱合性のある糸となる。空気流入通路53からの空気は、繊維産業で使用されるインターレースノズルでは加圧エアー(圧縮空気)が使用されるが、本発明では、インターレースノズルが減圧下の延伸室に設置されるので、加圧エアーの必要がなく、延伸室外の外気の自然流入である点が大きな相違点であり、省エネルギーである特徴を有する。通路52の断面は円ばかりでなく、半円や矩形等の種々のタイプも使用される。b図は、別のタイプのインターレースノズル54を断面図で示し、マルチフィラメントが通過する通路55は、入口から出口にかけて徐々に径が大きくなっている。また空気流入通路56は通路56に対して必ずしも直角である必要はなく、傾斜している例を示した。c図は、インターレースノズル58において、マルチフィラメントが通過する通路58に段差が設けられている例を示した。

【0044】
図5は、本発明で使用されるゾーン延伸・熱処理の原理を示す斜視図である。図5Aにおいて、糸61がスピードコントロールモータ62に取り付けられた糸供給リール63から一定速度Saで繰り出される。繰り出された糸61は、加熱域wのゾーンヒータ64のギャップgを通過し、スピードコントロールモータ65に取り付けられた糸巻取リール66へ一定速度Sbで巻き取られる。ゾーン延伸の延伸倍率はSb/Saである。ゾーン延伸においては、加熱域w及びギャップgが極めて小さいことが特徴で、これらの値は、Sa,Sb/Sa,糸を構成するポリマー、糸の径、ゾーンヒータの温度などより最適値を求めて決定される。なお、この図ではSa、Sbはスピードコントロールモータ62、65によって決められるが、繰出ニップロール、引取ニップローラ等の一定速度で繰出、引取が行われる他の手段も使用することができる。図5Bは一定張力型ゾーン延伸・熱処理の原理を示す。糸61がスピードコントロールモータ62に取り付けられた糸供給リール63から一定速度Saで繰り出される。ゾーンヒータ64の手前に一定張力付与具67が設けられており、一定張力付与具は、定滑車68a、68bと動滑車69、及びウエイト70からなる。一定張力の糸61は、ゾーンヒータ64によって加熱されて、スピードコントロールモータ65に取り付けられた糸巻取リール66へ一定速度Sbで巻き取られる。ここでは、動滑車69の位置が一定範囲に収まるように、ゾーンヒータ64の温度、ウエイト70、引取速度Sb等が制御される。
【実施例1】
【0045】
原フィラメントとして未延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィラメント(繊維径110.4μm、DSC融点:256.0℃、DSC結晶化度:19.11%)を10本使用し、第2図の装置(横型捕集)により実験を行った。この時の赤外線照射装置はコヒーレント社製の炭酸ガスレーザー発振装置を使用し、レーザー出力(Lp)を20W、30W、40W、50Wで実験した。オリフィス径は、0.3mmであり、延伸室の真空度は35kPaに調整した。原フィラメントの送出速度は、0.1m/分、コンベア速度0.5m/min、巻取速度0.52m/minであった。使用したインターレースノズルは、湯浅糸道社C204030-Lを使用し、バルブ(図1の18)を調節して外気を取り込んで使用した。レーザーの照射ワット数Lp(W)を変更しつつ実験して得られた極細マルチフィラメント糸の外観SEM写真を図6に、得られたマルチフィラメント糸の径dMF(μ)、それを構成する極細フィラメントの平均繊維径dav(μ)を図7に示した。平均フィラメント径davは、0.3-0.6μmの範囲にあり、ナノフィラメントの領域である。また、得られたマルチフィラメント糸の引張試験結果を図8に示し、レーザーのW数が多くなると強度St、弾性率Eがアップしている。また、DSC測定結果を図9に、FT-IR(フ-リエ変換赤外分光光度計)によって得られた結果を図10に示し、レーザーのW数が多くなると融点Tm2(℃)、結晶化度Xc1、Xc2(%)が向上する。表1に得られたマルチフィラメント糸の切断強度、弾性率、嵩密度等を示した。嵩密度が0.1g/cm-3より小さい場合でも、切断強度が20MPa以上、弾性率が200MPaを超えている。
【実施例1】
【0046】
【表1】
JP0006562313B2_000002t.gif
【実施例2】
【0047】
実施例1と同じ原フィラメントを使用し、第3図の装置で実験を行った。原フィラメントの送出速度は、0.1m/分、コンベア速度0.5m/min、巻取速度0.52m/minであった。使用したインターレースノズルは、一段目として使用する2個は湯浅糸道社C204030-L、それで作製された2個のマルチフィラメント糸を合わせた後に使用されるインターレースノズルは、湯浅糸道社C106030Wを使用した。レーザーの照射ワット数(W)を変更しつつ実験して得られた極細マルチフィラメント糸の外観SEM写真を図11に示す。また、得られたマルチフィラメント糸の径dMF(μ)、それを構成する極細フィラメントの平均繊維径dav(μ)を実施例2の2本の糸をもう一個のインターレーサーで合わせた場合(ダブル)と、合わせなかった実施例1の場合(シングル)を比較して図12に示した。平均フィラメント径davは、0.3-0.6μmの範囲にあり、ナノフィラメントの領域である。また、得られたマルチフィラメント糸の引張試験結果を図13に示した。レーザーのW数が多くなると強度St(MPa)、弾性率E(MPa)がアップしている。表2に得られたダブルの場合のマルチフィラメント糸の切断強度、弾性率、嵩密度等を示した。嵩密度が0.25g/cm-3より小さい場合でも、切断強度が40MPa以上、弾性率が400MPaを超えている。
【実施例2】
【0048】
【表2】
JP0006562313B2_000003t.gif
【実施例3】
【0049】
原フィラメントとしてポリ乳酸(PLLA)フィラメント(繊維径50.74μm、DSC融点ピーク:156.2℃、164.6℃、DSC結晶化度:44.4%)を25本使用し、第1図の装置(縦型捕集)により実験を行った。この時の赤外線照射装置はコヒーレント社製の炭酸ガスレーザー発振装置を使用し、レーザー出力(Lp)を10W、20W、30W、40Wで実験した。オリフィス径は、0.3mmであり、延伸室の真空度を30kPa、40kPa,50kPaに調整した。原フィラメントの送出速度は、0.1m/分、コンベア速度0.5m/minで巻取速度0.7m/minで実験した。使用したインターレースノズルは、湯浅糸道社C204030-Lを使用し、バルブ(図1の18)を調節して外気を取り込んで使用した。レーザーの照射ワット数(W)を変更しつつ実験して得られた極細マルチフィラメント糸の外観SEM写真を図14に、得られたマルチフィラメント糸の径dMF(μ)、それを構成する極細フィラメントの平均繊維径dav(μ)を図15に示し、平均フィラメント径davはレーザーワット数が20W以上ではナノフィラメントの領域である。また、得られたマルチフィラメント糸の切断強度、弾性率、嵩密度等を表3に示した。嵩密度が0.5g/cm-3より小さい場合でも、切断強度が30MPa以上、弾性率が300MPaを超えている。
【実施例3】
【0050】
【表3】
JP0006562313B2_000004t.gif
【実施例4】
【0051】
実施例3の原フィラメント及び装置において、コンベア速度0.5m/minの場合に巻取速度を種々変化させて実験し、得られたマルチフィラメント糸の強伸度測定結果を表4に示す。コンベアの走行速度Scに対して、インターレースノズルを出た糸状体の巻取速度のSwを大きく(Sw/Sc>1)にすることにより、巻き取られた糸の強度、弾性率が向上している。
【実施例4】
【0052】
【表4】
JP0006562313B2_000005t.gif
【実施例5】
【0053】
実施例4でSw/Sc=1.4で得られた極細マルチフィラメント糸を図5の装置でゾーン延伸を行った。ウエイトを7.8g、14.8g、21.8g、24.8gと変化させ、またゾーンヒータの温度も60℃、85℃、95℃で実験した。糸の送出速度Saを0.5m/min、ゾーン延伸倍率1.4倍で得られた糸を使用した。得られた糸の強伸度データを図16に示す。また得られた糸の広角度X線パターンを図17に示す。ゾーン延伸により強度、弾性率、配向度、耐熱度が向上していることがわかる。また、ゾーン延伸は熱処理効果もアップする。ゾーン延伸で得られた糸を、元の糸、真空オーブン(150℃)で熱処理した糸と比較して、強伸度特性を図18に示す。ゾーン延伸により強度、弾性率ばかりでなく、熱処理効果も増大していることがわかる。
【実施例6】
【0054】
実施例3で得られた極細マルチフィラメント糸15本を使用して、組紐(図19)及び中空組紐(図20)を作製した。これらは、手術用縫合糸や人工血管を作製する際に重要となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明による極細マルチフィラメント糸は、衣料用布や産業用の糸ばかりでなく、手術用縫合糸や人工血管等の医療用分野にも使用される。
【符号の説明】
【0056】
1a、1b、1c、・・・:原フィラメント、 2:リール、 3:ニップロール、
4a、4b、4c、・・・:オリフィス、 5:板、 6:延伸室、 7:配管、
8:炭酸ガスレーザー発振装置、 9:レーザービーム、
10、11:窓、 12:パワーメータ、
13a、13b、13c、・・・:延伸されたフィラメント、
14:コンベア、 15:極細フィラメントウェブ、
16:インターレースノズル、 17:配管、 18:バルブ、
19:極細マルチフィラメント糸、 20:巻取ビーム。
21a、21b、21c、・・・:原フィラメント、
22:リール、 23:ニップロール、
24a、24b、24c、・・・:オリフィス、 25:板、
26a、26b、26c、・・・:原フィラメント、 27:リール、
28a、28b、28c、・・・:オリフィス、 29:延伸室、 30:配管、
31a、31b、31c、・・・:延伸されたフィラメント、
32a、32b、32c、・・・:延伸されたフィラメント、
33:コンベア、 34、35:極細フィラメントウェブ、
36、37、40:インターレースノズル、
38,39、41:極細マルチフィラメント糸、 42:巻取ビーム。
51,54、57:インターレースノズル、
52、55、57:通路、 53、56、59:空気流入通路。
61:糸、 62、65:スピードコントロールモータ、
63:糸供給リール、 64:ゾーンヒータ、 66:糸巻取リール、
67:定張力付与具、 68a、68b:定滑車、 69:動滑車、
70:ウエイト。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
7
(In Japanese)【図9】
8
(In Japanese)【図10】
9
(In Japanese)【図11】
10
(In Japanese)【図12】
11
(In Japanese)【図13】
12
(In Japanese)【図14】
13
(In Japanese)【図15】
14
(In Japanese)【図16】
15
(In Japanese)【図17】
16
(In Japanese)【図18】
17
(In Japanese)【図19】
18
(In Japanese)【図20】
19