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明細書 :配位子、高分子錯体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6590254号 (P6590254)
登録日 令和元年9月27日(2019.9.27)
発行日 令和元年10月16日(2019.10.16)
発明の名称または考案の名称 配位子、高分子錯体及びその製造方法
国際特許分類 C08G  79/14        (2006.01)
C09D  11/03        (2014.01)
C09K  11/06        (2006.01)
C08L 101/00        (2006.01)
FI C08G 79/14
C09D 11/03
C09K 11/06 680
C08L 101/00
請求項の数または発明の数 11
全頁数 25
出願番号 特願2015-561073 (P2015-561073)
出願日 平成27年2月9日(2015.2.9)
国際出願番号 PCT/JP2015/053463
国際公開番号 WO2015/119268
国際公開日 平成27年8月13日(2015.8.13)
優先権出願番号 2014023813
優先日 平成26年2月10日(2014.2.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年1月24日(2018.1.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】長谷川 靖哉
【氏名】山本 昌紀
【氏名】中西 貴之
【氏名】伏見 公志
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】西澤 龍彦
参考文献・文献 特開2013-121921(JP,A)
国際公開第2012/150712(WO,A1)
特開2009-023914(JP,A)
George R. Newkome and David C. Hager,Chemistry of heterocyclic compounds. 27. An improved preparation of pyridyldiphenylphosphines,J. Org. Chem.,1978年,Vo.43, No.5,pp.947-949,DOI: 10.1021/jo00399a031
Michael A. Weiner and Paul. Schwartz,Cobalt(II) and nickel(II) complexes of methyldiphenyl-4-pyridylphosphonium bromide. Effects of a cat,Inorg. Chem.,1975年,Vol.14, No.7,pp.1714-1716,DOI: 10.1021/ic50149a057
Yasuchika Hasegawa, et al.,Metal-Ion Sensing Europium(III) Complexes with Bidentate Phosphine Oxide Ligands Containing a 2,2′-,Helvetica Chimica Acta,2009年,Vol.92, No.11,pp.2238-2248,DOI: 10.1002/hlca.200900143
Kohei Miyata, et al.,Chameleon Luminophore for Sensing Temperatures: Control of Metalto-Metal and Energy Back Transfer in,Angew. Chem. Int. Ed.,2013年,Vol.52,pp.6413-6416
長谷川靖哉,希土類が拓く次世代光機能材料の創成,希土類,2012年10月31日,No.61,Page.11-22
調査した分野 C08G
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体。
-(Ar-L1-X1-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)n (2)
一般式(2)中、
Arは、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1~3個含み、縮環していてもよい5~14員芳香族ヘテロ炭化水素基である芳香族ヘテロ炭化水素基を示し、前記Arは、ヘテロ原子として1~3個の窒素原子を含む5~8員単環芳香族ヘテロ炭化水素基である、
1は、連結基または直接結合であるリンカーを示し、
1は、O=P(Ar11Ar12)-で示されるホスフィンオキシド基(但し、Ar11及びAr12は、独立に、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、又は置換若しくは無置換アラルキル基を示す)を示し、
1は、希土類イオンであり、
2は、遷移金属イオンであり、
LGは、前記M1で示される希土類イオンに配位する多座配位子であり、mは、任意の整数であり、
nは、2~500,000の範囲である。
【請求項2】
下記一般式(5)で示される繰り返し単位をさらに含有する請求項に記載の高分子錯体。
-((Ar-L1-X1p-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)q (5)
一般式(5)中、Ar、L1、X1、M1、M2、LG及びmは、一般式(2)における定義と同義であり、pは2以上の整数であり、n+qは2~500,000の範囲である。
【請求項3】
下記一般式(5)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体。
-((Ar-L1-X1p-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)q (5)
一般式(5)中、Ar、L1、X1、M1、M2、LG及びmは、一般式(2)における定義と同義であり、pは2以上の整数であり、qは2~500,000の範囲である。
【請求項4】
前記X1に含まれるホスフィンオキシド基が前記M1で示される希土類イオンに配位結合し、
前記Arに含まれるヘテロ原子が前記M2で示される遷移金属イオンに配位結合する、請求項1~3のいずれかに記載の高分子錯体。
【請求項5】
前記多座配位子がジケト化合物である、請求項1~4のいずれかに記載の高分子錯体。
【請求項6】
ジケト化合物が一般式(3)で示される化合物である、請求項に記載の高分子錯体。
【化1】
JP0006590254B2_000011t.gif
一般式(3)中、Aは、独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Zは水素原子又は重水素原子を示す。
【請求項7】
ジケト化合物が、アセチルアセトン(acac)、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン(TMHD)、1,1,1-トリフルオロアセチルアセトン(TFA)、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)、及び1-(2-ナフチル)-4,4,4-トリフルオロ-1,3-ブタンジオンから成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項に記載の高分子錯体。


【請求項8】
下記工程(A)及び(B)を含む請求項1~7のいずれかに記載の高分子錯体の製造方法。
工程(A):一般式(1)で示される化合物、希土類化合物(但し、希土類化合物に含まれる希土類イオンはM1である)、多座配位子LGを反応させて一般式(4)又は(6)で示される錯体を調製する工程(A)、
1-L1-Ar (1)
[一般式(1)中、Arは、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1~3個含み、縮環していてもよい5~14員芳香族ヘテロ炭化水素基である芳香族ヘテロ炭化水素基を示し、前記Arは、ヘテロ原子として1~3個の窒素原子を含む5~8員単環芳香族ヘテロ炭化水素基である、
1は、連結基または直接結合であるリンカーを示し、
1は、O=P(Ar11Ar12)-で示されるホスフィンオキシド基(但し、Ar11及びAr12は、独立に、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、又は置換若しくは無置換アラルキル基を示す)を示す。]
Ar-L1-X1-M1(LG)m (4)
(Ar-L1-X1p-M1(LG)m (6)
[一般式(4)及び(6)中、X1、L1及びArは、前記一般式(1)と同義であり、M1、LG及びmは、請求項で示される一般式(2)と同義であり、pは請求項で示される一般式(5)と同義である。]
工程(B):前記一般式(4)で示される錯体及び一般式(6)で示される錯体の少なくとも1種と遷移金属化合物(但し、遷移金属化合物に含まれる遷移金属のイオンはM2である)とを反応させて、下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体、又は一般式(2)で示される繰り返し単位に一般式(5)で示される繰り返し単位をさらに含有する高分子錯体、又は一般式(5)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体を調製する工程(B)
-(Ar-L1-X1-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)n (2)
-((Ar-L1-X1p-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)q (5)
[一般式(2)及び(5)中のAr、L1、X1、M1、M2、LG、m及びnは、請求項で示される定義と同義であり、一般式(5)中のp及びqは、請求項又はで示される定義と同義である。]
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の錯体を発光材料として用いた発光素子。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の錯体を含有する、発光性インキ組成物。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の錯体を含有する、発光性プラスチック組成物。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、配位子化合物、高分子錯体及びその製造方法に関する。高分子錯体は、希土類イオン及び遷移金属イオンを含有し、かつこれらのイオンに有機配位子が配位する高分子の錯体である。さらに本発明は、上記本発明の高分子錯体の用途に関する。
[関連出願の相互参照]
本出願は、2014年2月10日出願の日本特願2014-23813号の優先権を主張し、その全記載は、ここに特に開示として援用される。
【背景技術】
【0002】
希土類錯体は、蛍光またはリン光などの発光を示すものが多く、かつ錯体を構成する配位子が有機物である場合にはポリマー等に相溶性を示すことからポリマー材料に混合して発光素子や蛍光インクなどに用いることが提案されている。さらにこれらの希土類錯体は、高い耐熱性を示すことも知られている(特許文献1、2、非特許文献1)。
【0003】
特許文献1:WO2012/15072
特許文献2:特許3668966号公報
【0004】
非特許文献1:K.Miyama,Y.Hasegawa et al, Chem.Eur.J.,2011,17,521-528
特許文献1、2、非特許文献1の全記載は、ここに特に開示として援用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、希土類錯体は、ポリマー等に相溶性を示すこと及び耐熱性に優れる発光体であることに主眼が置かれて開発され、ある程度の成果を挙げている。しかし、ディスプレイや発光印刷などの分野において実用されるためには、さらなる改良が必要であり、300℃を超える耐熱性を有し、かつ発光特性にも優れた新たな希土類錯体の提供が望まれている。
【0006】
そこで本発明は、ポリマー等に相溶性を示す有機配位子であって、希土類イオンと遷移金属イオンによる3次元ネットワーク構造有する錯体を提供できる新たな有機配位子の提供、及びこの有機配位子を用いた新しい機能(例えば、光機能、熱耐久性機能、電気特性機能)を有する希土類イオンと遷移金属イオンを含有する新たな高分子錯体を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記高分子錯体の製造方法、上記高分子錯体の製造中間体、さらには、上記高分子錯体の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
[1]
下記一般式(1)で示される化合物。
1-L1-Ar (1)
一般式(1)中、
Arは、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1~3個含み、縮環していてもよい5~14員芳香族ヘテロ炭化水素基である芳香族ヘテロ炭化水素基を示し、
1は、連結基または直接結合であるリンカーを示し、
1は、O=P(Ar11Ar12)-で示されるホスフィンオキシド基(但し、Ar11及びAr12は、独立に、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、又は置換若しくは無置換アラルキル基を示す)を示す。
[2]
前記Arは、ヘテロ原子として1~3個の窒素原子を含む5~8員単環芳香族ヘテロ炭化水素基である、[1]に記載の化合物。
[3]
前記Arは、ヘテロ原子として1個の窒素原子を含む5~8員単環芳香族ヘテロ炭化水素基である、[1]に記載の化合物。
[4]
下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体。
-(Ar-L1-X1-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)n (2)
一般式(2)中、Ar-L1-X1及びX1-L1-Arは、[1]~3のいずれかに記載の一般式(1)で示される化合物であり、
1は、希土類イオンであり、
2は、遷移金属イオンであり、
LGは、前記M1で示される希土類イオンに配位する多座配位子であり、mは、任意の整数であり、
nは、2~500,000の範囲である。
[5]
下記一般式(5)で示される繰り返し単位をさらに含有する[4]に記載の高分子錯体。
-((Ar-L1-X1p-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)q (5)
一般式(5)中、Ar、L1、X1、M1、M2、LG及びmは、一般式(2)における定義と同義であり、pは2以上の整数であり、n+qは2~500,000の範囲である。
[6]
下記一般式(5)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体。
-((Ar-L1-X1p-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)q (5)
一般式(5)中、Ar、L1、X1、M1、M2、LG及びmは、一般式(2)における定義と同義であり、pは2以上の整数であり、qは2~500,000の範囲である。
[7]
前記X1に含まれるホスフィンオキシド基が前記M1で示される希土類イオンに配位結合し、
前記Arに含まれるヘテロ原子が前記M2で示される遷移金属イオンに配位結合する、[4]~[6]のいずれかに記載の高分子錯体。
[8]
前記多座配位子がジケト化合物である、[7]に記載の高分子錯体。
[9]
ジケト化合物が一般式(3)で示される化合物である、[8]に記載の高分子錯体。
【化1】
JP0006590254B2_000002t.gif
一般式(3)中、Aは、独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Zは水素原子又は重水素原子を示す。
[10]
ジケト化合物が、アセチルアセトン(acac)、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン(TMHD)、1,1,1-トリフルオロアセチルアセトン(TFA)、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)、及び1-(2-ナフチル)-4,4,4-トリフルオロ-1,3-ブタンジオンから成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、[9]に記載の高分子錯体。
[11]
下記工程(A)及び(B)を含む[4]~[10]のいずれかに記載の高分子錯体の製造方法。
工程(A):[1]~[3]のいずれかに記載の一般式(1)で示される化合物、希土類化合物(但し、希土類化合物に含まれる希土類イオンはM1である)、多座配位子LGを反応させて一般式(4)又は(6)で示される錯体を調製する工程(A)、
Ar-L1-X1-M1(LG)m (4)
(Ar-L1-X1p-M1(LG)m (6)
[一般式(4)及び(6)中、X1、L1及びArは、[1]の一般式(1)と同義であり、M1、LG及びmは、[4]で示される一般式(2)と同義であり、pは[5]で示される一般式(5)と同義である。]
工程(B):前記一般式(4)で示される錯体及び一般式(6)で示される錯体の少なくとも1種と遷移金属化合物(但し、遷移金属化合物に含まれる遷移金属のイオンはM2である)とを反応させて、下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体、又は一般式(2)で示される繰り返し単位に一般式(5)で示される繰り返し単位をさらに含有する高分子錯体、又は一般式(5)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体を調製する工程(B)
-(Ar-L1-X1-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)n (2)
-((Ar-L1-X1p-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)q (5)
[一般式(2)及び(5)中のAr、L1、X1、M1、M2、LG、m及びnは、[4]で示される定義と同義であり、一般式(5)中のp及びqは、[5]又は[6]で示される定義と同義である。]
[12]
一般式(4)及び(6)で示される希土類錯体。
Ar-L1-X1-M1(LG)m (4)
(Ar-L1-X1p-M1(LG)m (6)
一般式(4)及び(6)中、
Arは、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1~3個含み、縮環していてもよい5~14員芳香族ヘテロ炭化水素基である芳香族ヘテロ炭化水素基を示し、
1は、連結基または直接結合であるリンカーを示し、
1は、O=P(Ar11Ar12)-で示されるホスフィンオキシド基(但し、Ar11及びAr12は、独立に、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、又は置換若しくは無置換アラルキル基を示す)を示し、
1は、希土類イオンであり、
LGは、前記M1で示される希土類イオンに配位する多座配位子であり、mは、任意の整数であり、pは2以上の整数である。
[13]
前記多座配位子がジケト化合物である、[12]に記載の希土類錯体。
[14]
ジケト化合物が一般式(3)で示される化合物である、[13]に記載の希土類錯体。
【化2】
JP0006590254B2_000003t.gif
一般式(3)中、Aは、独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Zは水素原子又は重水素原子を示す。
[15]
ジケト化合物が、アセチルアセトン(acac)、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン(TMHD)、1,1,1-トリフルオロアセチルアセトン(TFA)、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)、及び1-(2-ナフチル)-4,4,4-トリフルオロ-1,3-ブタンジオンから成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、[14]に記載の希土類錯体。
[16]
[4]~[15]のいずれか1項に記載の錯体を発光材料として用いた発光素子。
[17]
[4]~[15]のいずれか1項に記載の錯体を含有する、発光性インキ組成物。
[18]
[4]~[15]のいずれか1項に記載の錯体を含有する、発光性プラスチック組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリマー等に相溶性を示す有機配位子であって、耐熱性を有する新たな希土類イオンを含有する錯体を提供できる新たな有機配位子を提供することができる。さらに本発明は、この有機配位子を用いた耐熱性を有する希土類イオンを含有する新たな高分子錯体を提供することができる。さらに、本発明によれば、上記高分子錯体の製造方法、上記高分子錯体の製造中間体、さらには、上記高分子錯体の用途を提供するができる。上記高分子錯体の製造中間体は、それ自体も光機能を有し、高分子錯体と同様の用途に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例2で合成したEu(hfa)3(4-dppy)2の発光スペクトルを示す。
【図2】実施例3で得たEu-Pd配位高分子の発光スペクトルと発光寿命測定の結果を示す。
【図3】Pd(II)錯体のX線構造解析結果を示す。a)全体像 b)真横 c)真上
【図4】Eu(III)錯体に対する塩化パラジウム滴定時の吸収スペクトルの塩化パラジウムを0.1当量添加毎の変化の測定結果を示す。
【図5】Eu(III)錯体に対する塩化パラジウムの滴定曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<一般式(1)で示される化合物>
本発明は、本発明の希土類イオンを含有する高分子錯体における配位子として用いることかできる下記一般式(1)で示される化合物を包含する。
1-L1-Ar (1)

【0011】
一般式(1)中、
Arは、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1~3個含み、縮環していてもよい5~14員芳香族ヘテロ炭化水素基である芳香族ヘテロ炭化水素基を示す。
ヘテロ原子は、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子からなる群から選ばれるが、ヘテロ原子が、本発明の高分子錯体において遷移金属イオンに対する配位部位となることを考慮すると、窒素原子又は酸素原子であることが好ましい。2個以上のヘテロ原子を含む場合には、同一又は異なる種類の原子であることができる。
Arに含まれるヘテロ原子の数は、1~3個であり、1個、2個または3個の何れであっても良い。芳香族ヘテロ炭化水素基は、例えば、単環であることができるが、構成する炭素原子及びヘテロ原子の数の数に応じて2環または3環に縮環した基であっても良い。Arは、例えば、1個の窒素原子を含む5~8員単環芳香族ヘテロ炭化水素基であることができる。

【0012】
単環の芳香族ヘテロ炭化水素基Arとしては、例えば、置換又は無置換のアゾール基、オキソール基、チオール基、ピリジン基、ピリリウムイオン基、チオピリリウムイオン基、アゼピン基、オキセピン基、チエピン基、イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、イミダゾリン基、ピラジン基、及びチアジン基を挙げることができる。

【0013】
多環の(縮環した)芳香族ヘテロ炭化水素基としては、例えば、置換又は無置換のインドール基、イソインドール基、ベンゾイミダゾール基、キノリン基、イソキノリン基、キナゾリン基、フタラジン基、プテリジン基、クマリン基、クロモン基、1,4-ベンゾジアゼピン、ベンゾフラン基、アクリジン基、フェノキサジン基、フェノチアジン基等を挙げることができる。

【0014】
1は、連結基または直接結合から選ばれるリンカーであり、連結基としては、例えば、飽和若しくは不飽和のアルキレン基、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を挙げることができる。不飽和のアルキレン基としては、例えば、-C≡C-、-CH=CH-を例示でき、飽和のアルキレン基としては、例えば、-CH2-CH2-を挙げることができる。リンカーの種類には特に制限はなく、上記何れのリンカーであっても良い。

【0015】
1は、O=P(Ar11Ar12)-で示されるホスフィンオキシド基を示す。Ar11及びAr12は、独立に、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、又は置換若しくは無置換アラルキル基を示す。

【0016】
置換されていてもよいアリール基のアリール基としては、特に限定されず、例えば、C6~20アリール基が挙げられる。C6~20アリール基としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリル、アンスリル等を例示できる。

【0017】
置換されていてもよいアリール基の置換基としては、特に限定されず、例えばC1-6アルキル基、C1-6ぺルフルオロアルキル基、C6-14アリール基、5~10員芳香族複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。

【0018】
C1-6アルキル基、C1-6ぺルフルオロアルキル基、アルコキシ基、シロキシ基及びジアルキルアミノ基については、前記芳香族ヘテロ炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有しもよい置換基で説明した基と同じである。

【0019】
C6-14アリール基としては、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリル、2-アンスリル等が挙げられる。5~10員芳香族複素環基としては、例えば、2-又は3-チエニル、2-,3-又は4-ピリジル、2-,3-,4-,5-又は8-キノリル、1-,3-,4-又は5-イソキノリル、1-,2-又は3-インドリル、2-ベンゾチアゾリル、2-ベンゾ[b]チエニル、ベンゾ[b]フラニル等が挙げられる。

【0020】
アリールオキシ基としては、例えば、C6-12アリールオキシ基が挙げられる。C6-12アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等を例示できる。

【0021】
置換されていてもよいアリール基の置換基の置換位置及び置換基の数は、特に限定されない。

【0022】
置換若しくは無置換ヘテロアリール基のヘテロアリール基としては、特に限定されず、例えば、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子からなる群から選ばれる原子を1~3個含む、縮環していてもよい5~14員芳香族複素環基が挙げられる。

【0023】
前記芳香族複素環基としては、フリル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、カリボリニル、フェナンスリジニル、アクリジニル等を例示できる。

【0024】
置換されていてもよいヘテロアリール基の置換基としては、前記置換されていてもよいアリール基で述べた置換基と同じである。

【0025】
前記置換されていてもよいヘテロアリール基の置換基の位置及び置換基の数は、特に限定されない。

【0026】
置換されていてもよいアラルキル基のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。

【0027】
置換されていてもよいアラルキル基の置換基としては、前記置換されていてもよいアリール基で述べた置換基と同じである。

【0028】
前記置換されていてもよいアラルキル基の置換基の位置及び置換基の数は、特に限定されない。

【0029】
1は、例えば、Ar11及びAr12がフェニル基であるジフェニルホスフィンオキシド基であることができる。

【0030】
<化合物の製造方法>
一般式(1)で示される化合物は、実施例に例示されているように、Ar-Hal(Halはハロゲン原子)を原料化合物として用い、トリアルキルシリルアセチレンを触媒(例えば、CuI及びPd(PPh3)Cl2、PPh3)の存在下に反応させ、得られた生成物をアルカリ処理して、アセチルArを得る。得られたアセチルArと修飾ホスフィンクロライド、例えば、ジフェニルホスフィンクロライドを反応させ、その後例えば、過酸化水素を用いて酸化することで、修飾ホスフィン基を修飾ホスフィンオキシド基(例えば、ジフェニルホスフィンオキシド基)に変換して一般式(1)で示される化合物を得ることができる。各反応は適当な有機溶媒(例えば、ジエチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)、トルエン、ジクロロメタン)中で実施できる。リンカーが連結基の場合も、常法により一般式(1)で示される化合物を得ることができる。例えば、連結基がエチレン基の場合には、上記トリアルキルシリルアセチレンに替えてトリアルキルシリルエチレンを用いることで、同様の反応を経て、一般式(1)で示される化合物を得ることができる。また連結基がアセチレンの場合には、園頭カップリング反応により合成することにより一般式(1)で示される化合物を得ることができる。

【0031】
Ar-Hal(Halはハロゲン原子)で示される原料化合物は、市販品として入手できる化合物がある他、Halが水素原子であるAr-Hで示される化合物を公知の方法でハロゲン化することでも入手できる。トリアルキルシリルアセチレンは、例えば、トリメチルシリルアセチレンは、市販品として入手できる。修飾ホスフィンクロライドも、例えば、ジフェニルホスフィンクロライドであれば市販品として入手できる。その他の修飾ホスフィンクロライドも、常法に従って適宜合成できる。合成した化合物は公知の方法で適宜精製することができる。

【0032】
<高分子錯体>
本発明は、上記本発明の化合物と希土類イオンを含む高分子錯体を包含する。この高分子錯体は、架橋成分として遷移金属イオンも含有する。本発明の高分子錯体は、下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有するか、一般式(2)で示される繰り返し単位に一般式(5)で示される繰り返し単位をさらに含有する高分子錯体、又は一般式(5)で示される繰り返し単位を有する。
-(Ar-L1-X1-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)n (2)
-((Ar-L1-X1p-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)q (5)

【0033】
一般式(2)及び(5)中、Ar-L1-X1及びX1-L1-Arは、前記本発明の一般式(1)で示される化合物である。

【0034】
1は、希土類イオンであり、X1に含まれるホスフィンオキシド基が希土類イオンM1に配位結合する。本発明の錯体において、希土類元素は、希土類元素イオンとして含有されているものと推察される。希土類元素は、例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから成る群から選ばれる1種又は2種以上の元素であることかできる。希土類元素イオンは、各元素に固有の価数のイオンであり、例えば、+2価又は+3価である陽イオンが挙げられる。希土類イオンとしては、発光体を得るという観点からは、例えば、Eu3+、Tb3+、Gd3+、Tm3+又はEr3+が好ましく、例えば、前記希土類元素がEu3+の場合、赤色発光を示し、前記希土類元素がTb3+の場合、緑色発光示す。本発明の錯体において、希土類元素は、単独で存在するもの、または2種以上が存在する錯体も包含する。

【0035】
2は、遷移金属イオンであり、Arに含まれるヘテロ原子が遷移金属イオンM2に配位結合する。遷移金属イオンM2は、Arに含まれるヘテロ原子が配位結合することによって、錯体を形成することができ、1つの遷移金属イオンM2が複数、例えば、2つのAr-L1-X1-M1-X1-L1-Arを架橋することができる。本発明の錯体において、遷移金属元素は遷移金属イオンとして含有されているものと推察される。遷移金属元素には、第一遷移元素(3d遷移元素)、第二遷移元素(4d遷移元素)及び第三遷移元素(5d遷移元素)を挙げることができる。第一遷移元素としては、Sc スカンジウム、Ti チタン、V バナジウム、Cr クロム、Mn マンガン、Fe 鉄、Co コバルト、Ni ニッケル、Cu 銅、及びZn 亜鉛を例示できる。第二遷移元素としては、Y イットリウム、Zr ジルコニウム、Nb ニオブ、Mo モリブデン、Tc テクネチウム、Ru ルテニウム、Rh ロジウム、Pd パラジウム、Ag 銀、及びCd カドミウム を例示できる。
第三遷移元素(5d遷移元素) としては、W タングステン、Re レニウム、Os オスミウム 、Ir イリジウム 、Pt 白金 、Au 金、Pb鉛を例示できる。
遷移金属イオンも各元素に固有の価数のイオンとなる。

【0036】
LGは、希土類イオンM1に配位する多座配位子であり、mは、任意の整数である。

【0037】
LGで示される多座配位子は、多座配位化合物からなり、多座配位化合物は、例えば、2座配位化合物、3座配位化合物、又は4座配位化合物であることができる。多座配位化合物の中でも2座配位化合物の例としては、ジケト化合物を挙げることができ、ジケト化合物としては一般式(3)で示される化合物を例示できる。一般式(3)中、Aは、独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Zは水素原子又は重水素原子を示す。炭素数1~6のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-及びiso)、ブチル基(n-及びtert-)、ペンチル基、ヘキシル基である。

【0038】
【化3】
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【0039】
一般式(3)で示されるジケト化合物は、より具体的には、例えば、アセチルアセトン(acac)、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン(TMHD)、1,1,1-トリフルオロアセチルアセトン(TFA)、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)、及び1-(2‐ナフチル)-4,4,4-トリフルオロ-1,3-ブタンジオンから成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。これらの化合物は公知化合物である。

【0040】
mは、LGの希土類イオンM1に配位する配位数であり、LGの種類(配位座の種類と数)及び希土類イオンM1の価数により決定される任意の整数である。例えば、1~10の範囲いずれかの整数、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であることができる。

【0041】
nは、一般式(2)で示される繰り返し単位の繰り返し数であり、2~500,000の範囲である。本発明の高分子錯体に求められる物性を考慮して、nは、この範囲で適宜決定できる。nは、製造方法及び条件、遷移金属イオンの種類やArの種類を調整することにより適宜調整できる。但し、分子量が大きいほど耐熱性に優れる傾向があり、一方で、分子量が大きくなると、他の材料との混合や分散がしにくくなる傾向があることから、これらの点を踏まえ、かつ構成成分の種類等も踏まえ、適宜決定できる。nは、実用的には、用途や構成する配位子、希土類イオン及び遷移金属イオンの種類に応じて、例えば、2~100,000の範囲、2~10,000の範囲、2~1,000の範囲、2~500の範囲、3~300の範囲であることができる。また、本発明の高分子錯体は、通常は、nの異なる複数の錯体が共存する混合物であり、混合物の場合には、nはそれら混合物中の各錯体のnの平均値を意味する。

【0042】
一般式(2)で示される繰り返し単位に一般式(5)で示される繰り返し単位をさらに含有する高分子錯体においては、pが2以上の整数であり、3つ以上の配位子(Ar-L1-X1)がM1に配位する。即ち、pが2の場合には、3つの配位子(Ar-L1-X1)がM1に配位し、pが3の場合には、4つの配位子(Ar-L1-X1)がM1に配位する。一般式(5)で示される繰り返し単位をさらに含有する高分子錯体となるか否かは、M1の種類と多座配位子LGの種類及び高分子錯体調製時の各物質の使用量により決定される。3つ目以上の(Ar-L1-X1)中の少なくとも一部に含まれるArは、他の高分子錯体鎖中のM2に配位子結合し、架橋構造を形成することもできる。他の高分子錯体鎖中のM2に配位子結合せずに遊離状態であるものもあり得る。一般式(2)で示される繰り返し単位と一般式(5)で示される繰り返し単位は、ランダムに存在することも規則的に、例えば、各繰り返し単位がブロックを形成して存在することもできる。構造は重合反応を制御することで、適宜選択できる。qは、1以上の整数であり、n+qは2~500,000の範囲である。n+qは、実用的には、用途や構成する配位子、希土類イオン及び遷移金属イオンの種類に応じて、例えば、2~100,000の範囲、2~10,000の範囲、2~1,000の範囲、2~500の範囲、3~300の範囲であることができる。

【0043】
一般式(5)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体においては、pが2以上の整数であり、3つ以上の配位子(Ar-L1-X1)がM1に配位する。即ち、pが2の場合には、3つの配位子(Ar-L1-X1)がM1に配位し、pが3の場合には、4つの配位子(Ar-L1-X1)がM1に配位する。3つ目以上の(Ar-L1-X1)中の少なくとも一部に含まれるArは、他の高分子錯体鎖中のM2に配位子結合し、架橋構造を形成することもできる。他の高分子錯体鎖中のM2に配位子結合せずに遊離状態であるものもあり得る。qは、2~500,000の範囲であり、実用的には、用途や構成する配位子、希土類イオン及び遷移金属イオンの種類に応じて、例えば、2~100,000の範囲、2~10,000の範囲、2~1,000の範囲、2~500の範囲、3~300の範囲であることができる。

【0044】
<高分子錯体の製造方法>
上記本発明の高分子錯体は、例えば、下記工程(A)及び(B)を含む方法により製造することかできる。
工程(A):前記一般式(1)で示される化合物、希土類化合物(但し、希土類化合物に含まれる希土類のイオンはM1である)、多座配位子LGを反応させて一般式(4)又は(6)で示される錯体を調製する工程。
Ar-L1-X1-M1(LG)m (4)
(Ar-L1-X1p-M1(LG)m (6)
[一般式(4)及び(6)中、X1、L1及びArは、一般式(1)と同義であり、M1、LG及びmは、一般式(2)と同義であり、一般式(6)中のpは、一般式(5)と同義である。]

【0045】
一般式(1)で示される化合物と希土類元素含有化合物と多座配位子LGとを溶媒中で混合して、前記化合物と前記希土類元素と多座配位子LGとの錯体を得る。一般式(1)で示される化合物と希土類元素含有化合物と多座配位子LGとの混合比は、一般式(1)で示される化合物、希土類イオン、多座配位子LGの種類に応じて適宜決定できる。(一般式(1)で示される化合物のモル数/希土類元素のモル数)は、例えば、0.5~10の範囲とすることができ、好ましくは0.5~5の範囲とすることができ、より好ましくは1~3の範囲とすることができる。(多座配位子LGのモル数/希土類元素のモル数)は、例えば、0.5~10の範囲とすることができ、好ましくは0.5~8の範囲とすることができ、より好ましくは1~5の範囲とすることができる。

【0046】
溶媒としては、本発明の化合物及び希土類元素含有化合物の両者を溶解する溶媒を用いる。例えば、限定する意図ではないが、メタノール、エタノール、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ピリジン、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)等を用いることができる。溶媒中での混合は、例えば、室温(例えば、20℃)~120℃の範囲で、使用する溶媒の沸点も考慮して適宜選択できる。反応促進とうい観点からは加熱下で行うことが好ましく、例えば、40℃以上、または50℃以上で溶媒の沸点以下の温度とすることができる。反応時間は、原料及び反応条件と生成物の収量等を考慮して適宜決定できる。例えば、1分~100時間の範囲とすることができる。但し、この範囲に限定される意図ではない。

【0047】
上記反応に用いる希土類元素含有化合物は、希土類元素を含有する化合物であれば、特に限定はない。希土類元素含有化合物は、例えば、配位化合物及び希土類イオン含有化合物であることができ、配位化合物及び希土類イオン含有化合物は、例えば、配位化合物を配位子の少なくとも一部として有する希土類イオン錯体化合物であることができる。好ましくは、配位化合物を配位子の一部として有し、かつ残りの配位子が、一般式(1)で示される化合物の希土類イオンに対する配位力より弱い配位力を有する配位子である希土類イオン錯体化合物であることが、一般式(4)及び(6)の希土類錯体の合成を容易にするという観点から好ましい。一般式(1)で示される化合物の希土類イオンに対する配位力より弱い配位力を有する配位子の例としては、例えば、水(H20)、メタノール、エタノール等を挙げることができる。

【0048】
一般式(4)及び(6)で示される希土類錯体は、新規化合物であり、本発明の1つの態様である。一般式(4)及び(6)中のX1、L1及びArは、前記一般式(1)と同義であり、M1、LG及びmは、前記一般式(2)と同義であり、pは、一般式(5)と同義である。一般式(4)及び(6)で示される希土類錯体を最終生成物として利用する場合には、常法により精製することもできる。また、工程(B)への中間体として用いる場合にも必要に応じて適宜精製することもできる。

【0049】
工程(B):一般式(4)で示される錯体及び一般式(6)で示される錯体の少なくとも1種と遷移金属化合物(但し、遷移金属化合物に含まれる遷移金属のイオンはM2である)とを反応させて、下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体、又は一般式(2)で示される繰り返し単位に一般式(5)で示される繰り返し単位をさらに含有する高分子錯体、又は一般式(5)で示される繰り返し単位を有する高分子錯体を調製する。
-(Ar-L1-X1-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)n (2)
-((Ar-L1-X1p-M1(LG)m-X1-L1-Ar-M2-)q (5)
[一般式(2)中のAr、L1、X1、M1、M2、LG、m、n、p及びqは、前記定義と同義である。]

【0050】
一般式(4)で示される錯体及び一般式(6)で示される錯体の少なくとも1種と遷移金属化合物とを溶媒中で混合して、前記一般式(2)で示される高分子錯体を得る。遷移金属化合物は、遷移金属元素を含有する化合物であれば、特に限定はない。遷移金属化合物は、例えば、遷移金属塩であることができ、塩は無機塩(塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩など)、及び有機塩(酢酸塩、クエン酸塩など)を挙げることができる。一般式(4)及び一般式(6)で示される錯体の少なくとも1種で示される錯体と遷移金属化合物との混合比は、一般式(4)及び(6)で示される錯体と遷移金属化合物の種類等に応じて適宜決定できる。(一般式(4)で示される錯体及び一般式(6)で示される錯体の少なくとも1種のモル数/遷移金属化合物に含まれる遷移金属元素のモル数)は、例えば、0.5~10の範囲とすることができ、好ましくは0.5~5の範囲とすることができ、より好ましくは1~3の範囲とすることができる。(多座配位子LGのモル数/希土類元素のモル数)は、例えば、0.5~10の範囲とすることができ、好ましくは0.5~8の範囲とすることができ、より好ましくは1~5の範囲とすることができる。一般式(4)で示される錯体及び一般式(6)で示される錯体を併用する場合には、生成物中に含まれる各繰り返し単位の数に応じて反応させることができる。

【0051】
溶媒としては、一般式(4)で示される錯体及び一般式(6)で示される錯体の少なくとも1種及び遷移金属化合物の両者を溶解し得る溶媒を用いることが好ましい。例えば、限定する意図ではないが、メタノール、エタノール、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ピリジン、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)等を用いることができる。溶媒中での混合は、例えば、室温(例えば、20℃)~120℃の範囲で、使用する溶媒の沸点も考慮して適宜選択できる。反応促進とうい観点からは加熱下で行うことが好ましく、例えば、40℃以上、または50℃以上で溶媒の沸点以下の温度とすることができる。反応時間は、原料及び反応条件と生成物の収量等を考慮して適宜決定できる。例えば、1分~100時間の範囲とすることができる。但し、この範囲に限定される意図ではない。生成した本発明の高分子錯体は、常法により精製することができる。

【0052】
尚、一般式(2)及び(5)で示される高分子錯体の繰り返し数n及びqは、使用する原料の種類及び原料の混合比によって調整することが可能である他、原料である一般式(4)で示される錯体及び一般式(6)で示される錯体の少なくとも1種と遷移金属化合物の混合を一度に行うか、あるいは一般式(4)で示される錯体及び一般式(6)で示される錯体の少なくとも1種に対して遷移金属化合物を分割して混合するかによっても調整することができる。後述する滴定実験の結果から、遷移金属化合物を分割して徐々に混合することで、よりn及びqが大きい高分子錯体が得られやすい傾向があると考えられる。

【0053】
<発光素子>
本発明は、上記本発明の一般式(2)及び/又は(5)で示される高分子錯体または一般式(4)又は(6)で示される希土類錯体を発光材料として用いた発光素子を包含する。本発明の発光素子は本発明の錯体の薄膜を有するものであることができる。より具体的には、本発明の高分子錯体及び希土類錯体は、例えば、白色LED素子の発光層(発光媒体)及び有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層に用いることができる。本発明の発光素子はディスプレイまたは照明であることもできる。さらに、本発明の高分子錯体及び希土類錯体は、例えば、発光性インキ組成物に用いることもできる。

【0054】
前記高分子錯体及び希土類錯体をこれらの用途に用いる場合、前記高分子錯体又は希土類錯体を一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。

【0055】
また、前記高分子錯体又は希土類錯体を必須成分として含有し、さらに該錯体以外のイオン、化合物等をさらに含有する混合物として用いることもできる。前記混合物には、前記高分子錯体又は希土類錯体が含まれていればよく、本発明の効果を阻害しない範囲内で、希土類金属イオン、前記本発明の化合物が配位していない希土類錯体等をさらに含んでいてもよい。以下、高分子錯体を例に説明するが、希土類錯体を用いる場合も同様である。

【0056】
(1)白色LED素子
本発明の白色LED素子は、発光層を構成する発光媒体(例えば、蛍光体)中に前記高分子錯体を含有させる以外は、公知のLED素子と同様の構成を採用できる。例えば、LEDチップと発光媒体とからなる発光層を有するLED素子が挙げられる。

【0057】
LEDチップは、電極より電気エネルギーを受けて、発光し光を放射する。LEDチップから放射される光を吸収した発光媒体は、吸収した光とは異なる波長の光を放射する。この時、LEDチップから放射される光と発光体から放射される光とが組み合わさることにより、新たな光の色が形成される。本発明では、発光体中に前記高分子錯体を含有させることにより、白色の光を発することができる。また、前記高分子錯体は、有機媒体に好適に溶解し、有機媒体中で析出することが基本的にないため、効率よく(高い光取り出し効率で)、白色光を放射できる。

【0058】
LEDチップとしては、紫外~近紫外~可視~近赤外領域の光を放出する素子であればよく特に限定されない。例えば、青色LED、近紫外LED等が挙げられる。

【0059】
発光媒体は、前記高分子錯体が有機媒体に溶解してなるものである。本発明では、前記高分子錯体中の希土類元素イオン(中心元素イオン)を適宜選択することにより、発光媒体から放射される光の色を制御できる。例えば、中心元素イオンが全てEu3+である高分子錯体を含む発光媒体は、赤色の光を放射できる。また、中心元素イオンが全てTb3+である高分子錯体を含む発光媒体は、緑色の光を放射できる。さらに、中心元素イオンがEu3+及びTb3+以外の希土類元素イオン(例えば中心元素イオンが全てTm3+)である高分子錯体を含む発光媒体は、青色の光を放射できる。

【0060】
発光媒体には、2種類以上の前記高分子錯体を含有させてもよい。発光媒体には、光取り出し効率が低下する等の観点から、公知の発光性無機化合物粒子を含有させないほうがよいが、本発明の効果を妨げない範囲であれば、必要に応じて前記粒子を含有させてもよい。

【0061】
前記粒子としては、Y3Al5O12(YAG)にCeを付活してなる粒子等の黄色光を放射する無機化合物粒子;Sr10(PO46Cl2にEuを付活してなる粒子、Ca10(PO46l2にEuを付活してなる粒子、Ba10(PO46l2にEuを付活してなる粒子、BaMgAl1017にEuを付活してなる粒子、Ba3MgSi28にEuを付活してなる粒子等の青色光を放射する無機化合物粒子;SrGa24にEuを付活してなる粒子、CaAl24にEuを付活してなる粒子、BaAl24にEuを付活してなる粒子、SrAl24にEuを付活してなる粒子等の緑色光を放射する無機化合物粒子;SrSにEuを付活してなる粒子、CaSにEuを付活してなる粒子、CaAlSiN3にEuを付活してなる粒子、Ba3MgSi28にEu、Mnを付活してなる粒子等の赤色光を放射する無機化合物粒子等が挙げられる。これらの粒子は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0062】
例えば、下記LEDチップと発光媒体との組み合わせの場合、好適に白色光を得ることができる。
(1)LEDチップ:青色LED(例えばInGaN)、発光媒体:赤色光を放射する高分子錯体+黄色光を放射する無機化合物粒子(例えば、Y3Al5O12(YAG)結晶にCeを付活してなる粒子)
(2)LEDチップ:青色LED(例えばInGaN)、発光媒体:赤色光を放射する高分子錯体+緑色光を放射する高分子錯体
(3)LEDチップ:近紫外LED(例えばInGaN)、発光媒体:青色光を放射する無機化合物粒子(例えば、Sr10(PO46Cl2にEuを付活してなる粒子、Ca10(PO46Cl2にEuを付活してなる粒子、Ba10(PO46l2にEuを付活してなる粒子等)+赤色光を放射する高分子錯体+緑色光を放射する高分子錯体
(4)LEDチップ:近紫外LED(例えばInGaN)、発光媒体:赤色光を放射する高分子錯体+緑色光を放射する高分子錯体+青色光を放射する高分子錯体
前記有機媒体としては、例えば、有機溶媒、液状ポリマー等が挙げられる。

【0063】
前記有機溶媒としては、例えばフッ素系溶媒等が挙げられる。これら有機溶媒は、一種単独で又は二種以上からなる混合溶媒として使用できる。

【0064】
前記液状ポリマーとしては、例えばフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。前記フッ素系樹脂、前記シリコーン系樹脂等としては、市販品を好適に用いることができる。フッ素系樹脂の市販品としては、例えば、テフロン(登録商標)AF(デュポン社製)、サイトップ(旭ガラス製)等が挙げられる。シリコーン樹脂の市販品としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等が挙げられる。

【0065】
特に、前記有機媒体としては、液状ポリマーが好ましく、フッ素系樹脂がより好ましい。フッ素系樹脂は、高ガラス転移点、高防湿性、低気体透過性等の特性を有するため、前記有機媒体としてフッ素系樹脂を用いることにより、発光媒体3の発光特性、発光寿命、耐久性等を向上させることができる。

【0066】
発光媒体中における前記高分子錯体の含有量は、特に限定されないが、5~90質量%程度が好ましい。

【0067】
発光媒体中における前記発光性無機化合物粒子の含有量は、本発明を妨げない範囲である限り特に限定されない。

【0068】
本発明の白色LED素子は、砲弾型LED、表面実装型LED等の種々のLEDに用いることができる。前記LEDの具体的構成は、前記白色LED素子が配置される以外は公知のLEDと同様の構成を採用できる。

【0069】
(2)有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子
本発明の有機EL素子は、前記高分子錯体を含む発光層を有する。

【0070】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、通常、基板、陽極、電荷(正孔)輸送層、前記発光層、電荷(電子)輸送層及び陰極が順に積層された構造を有する。前記発光層中における前記高分子錯体の含有量は、例えば、5~100質量%程度であることができる。

【0071】
前記発光層は本発明の高分子錯体単独で形成されていてもよいし、本発明の高分子錯体以外の化合物をさらに含有していてもよい。例えば下記に示す電荷(正孔)輸送層の材料もしくは電荷(電子)輸送層の材料等をホスト化合物として含有していても良い。

【0072】
前記発光層の膜厚は、少なくともピンホールが発生しないような厚みが必要であるが、厚すぎると素子の抵抗が増し、高い駆動電圧が必要となるためあまり好ましくない。従って前記発光層の膜厚は、0.0005~10μm程度、好ましくは0.001~1μm程度、より好ましくは、0.005~0.2μm程度である。

【0073】
前記発光層の形成方法は、特に限定されないが、例えば、前記高分子錯体を正孔輸送層上に蒸着する方法、或いは、後述する発光性インキ組成物をスピンコート法、インクジェット法等の印刷方法により塗布する方法が挙げられる。

【0074】
前記基板は、透明のものであればよく、例えば、ガラス、石英、光透過性プラスチックフィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート(PC)等)等が挙げられる。前記基板の厚みは、本発明の効果を妨げない範囲であればよく特に限定されない。

【0075】
前記陽極の材料として、例えば、仕事関数の大きな導電性材料であるITO(インジウム錫酸化物)等を用いることができる。前記陽極の厚みは、0.1~0.3μm程度とすることができる。

【0076】
前記電荷(正孔)輸送層の材料としては、例えば、トリアリールアミン等のアリールアミン系化合物等が用いられる。前記材料は一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0077】
前記電荷(電子)輸送層の材料としては、例えば、トリス(8-ヒドロキシキノリノール)アルミニウム、トリアゾール類、フェナントロリン類、オキサジアゾール類等が用いられる。前記材料は一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0078】
これら電荷輸送層の厚みは、それぞれ通常0.0005μm~10μm程度であり、好ましくは0.001~1μm程度である。

【0079】
前記陰極の材料としては、仕事関数が小さな金属であるアルミニウム、マグネシウム、インジウム、アルミ-リチウム合金、マグネシウム-銀合金等が使用される。前記陰極の厚みは、0.01~0.5μm程度が好ましい。

【0080】
前記陽極、前記正孔輸送層、前記電子輸送層及び前記陰極は、前記各種材料を用いて抵抗加熱蒸着、真空蒸着、スパッタリング法等の公知の方法に従って形成できる。

【0081】
本発明の有機EL素子は、カラー液晶表示器のバックライト等の照明器、ディスプレイ等に用いることができる。

【0082】
(3)発光性インキ組成物
本発明の発光性インキ組成物は、前記高分子錯体を含有する。前記高分子錯体は、天然光の下では放射する光の色は実質的に無色である。

【0083】
一方、前記高分子錯体に紫外光を照射する場合、該錯体は有色の光を放射するので、その放射光を観察することができる。従って、前記高分子錯体を溶解させたインキ組成物を種々の基材上に印刷することにより、ブラックライト等を使用した紫外線照射下でのみ印刷内容の視認が可能になる。例えば、紙幣、文書、書類、カード等の基材に前記インキ組成物を印刷することにより、偽造、不正複写等を防止できるセキュリティー機能を持たせることができる。

【0084】
前記放射光の色は、前記高分子錯体の中心元素イオンの種類に応じて異なる。例えば、中心元素イオンがEu3+の場合、前記錯体は強い赤色の光を放射し、中心元素イオンがTb3+の場合、前記錯体は強い緑色の光を放射する。なお、前記高分子錯体が中心元素イオンを複数個有する場合、複数の希土類元素イオンは全て同一であることが好ましい。

【0085】
前記インキ組成物中には2種類以上の前記高分子錯体組成物を含有させてもよい。

【0086】
例えば、第1の発光体に、波長365nm及び254nmの紫外線を放射するブラックライトランプ照射で強い緑色発光を示す中心元素イオンがTb3+からなる本発明の高分子錯体を、第2の発光体に波長365nmの紫外線を放射するブラックライトランプ照射で強い赤色発光を示し、波長254nmの紫外線を放射するブラックライトランプ照射ではほとんど赤色発光を示さない中心元素イオンがEu3+からなる本発明の高分子錯体を混ぜ合わせた、2色混合型のインキを作成することができる。

【0087】
前記インキ組成物は、波長365nmの紫外線を放射するブラックライトランプを照射した場合、第1の発光体と第2の発光体が、それぞれ緑と赤の混色である黄色に近い色を発光する。一方、波長254nmの紫外線を放射するブラックライトランプを照射した場合、第2の発光体はほとんど発光せず、第1の発光体の緑色のみが発光する。

【0088】
この様に、前記2つの波長領域を使用して異なる色相を判別することになるため、真偽判別性をより高めることができる。

【0089】
本発明の発光性インキ組成物中における前記高分子錯体の含有量は、前記基材の種類等に応じて適宜設定すればよいが、0.001~30質量%程度が好ましく、0.05~3質量%程度がより好ましい。

【0090】
本発明の発光性インキ組成物には、必要に応じて、溶媒、樹脂(バインダー)、浸透剤、消泡剤、分散剤、着色剤等の添加物を含有させてもよい。特に、本発明のインキ組成物は、前記高分子錯体が溶媒中に溶解したものが好ましい。

【0091】
前記溶媒としては、前記高分子錯体を溶解することができるものであればよく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。これらの溶媒は発光性インキ組成物の用途等に応じて適宜選択すればよく、一種単独で又は二種以上の混合溶媒として使用できる。

【0092】
前記樹脂(バインダー)は、前記高分子錯体を前記基材上に良好に定着でき、且つ、上記溶媒に良好に溶解するものが好ましい。前記樹脂は、光学的に透明であってもよいし、不透明であってもよい。例えば、ポリビニル系樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は発光性インキ組成物の用途等に応じて適宜選択すればよく、一種単独で用いてもよく二種以上を併用してもよい。

【0093】
浸透剤は、紙等へのインク組成物の浸透を早め、見かけの乾燥性を早くする目的で加える。前記浸透剤としては、例えば、グリコールエーテル、アルキレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。これらの浸透剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0094】
消泡剤は、インク組成物の移動やインク組成物製造時の泡の発生を防止する目的で添加する。前記消泡剤としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性及び両イオン性界面活性剤を使用できる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。両イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド、ホスファチジルコリン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0095】
前記分散剤としては、例えば、ステアリン酸石鹸、オレイン酸石鹸、ロジン酸石鹸、Na-ジ-β-ナフチルメタンジサルフェート、Na-ラウリルサルフェート、Na-ジエチルヘキシルスルホサクシネート、Na-ジオクチルスルホサクシネート等の界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0096】
前記着色剤としては、公知の顔料や染料を使用できる。例えば、アゾ系、アゾメチン系、キナクドリン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、キノリン系、ペリレン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の有機染顔料を使用できる。これらの着色剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。

【0097】
本発明の発光性インキ組成物中における上記各種添加剤の含有量は特に限定されず、前記基材の種類、用途等に応じて適宜設定すればよいが、本発明の発光性インキ組成物中における前記樹脂(バインダー)の含有量は0.5~30質量%程度が好ましく、1~10質量%程度がより好ましい。前記樹脂の含有量が0.5質量%未満の場合、非浸透性の基材に対して前記高分子錯体を十分に定着できない。また前記樹脂の含有量が30質量%を超える場合、発光性インキ組成物中において前記高分子錯体の周囲を前記樹脂(バインダー)が厚く覆うこととなるため前記高分子錯体の発光の低下を招く恐れがある。

【0098】
<高分子錯体含有プラスチック>
本発明は、本発明の高分子錯体を含有する発光性のプラスチック組成物を包含する。発光性のプラスチック組成物に用いるプラスチック材料としては、特に制限されず、種々の材料を適用することができる。プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。高分子錯体を配合して成形加工する方法としては、特に限定されないが、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、押出成形、反応成形、中空成形、熱成形、FRP成形等が挙げられる。
【実施例】
【0099】
以下本発明を実施例によりさらに説明する。但し、本発明は実施例により限定される意図ではない。
【実施例】
【0100】
本発明の配位子及び高分子錯体を、それぞれ以下のスキームに従い合成した。原料、触媒および溶媒は市販品(関東化学、東京化成工業、和光純薬工業)を用いた。各化合物は既報の文献に従って合成し、構造決定は1H-NMR、EI-MS、元素分析により行った。
【実施例】
【0101】
実施例1
配位子(4-pyridinldiphenylphosphine oxide, 4-dppy)合成
【化4】
JP0006590254B2_000005t.gif
【実施例】
【0102】
上記反応スキームに従って、目的化合物である4-dppyを合成した。
フレイムドライ後Ar雰囲気下にした100 ml三つ口フラスコに4-bromopyridine hydrochloride (1.95 g, 10.0 mmol)、超脱水トルエン(17 ml)を加えて撹拌した。反応容器を-78℃以下まで冷却した後、n-BuLi (16 ml, 25.6 mmol)を5~10分掛けて滴下し、その後-20℃まで昇温させた。再び反応容器を-78℃以下まで冷却してから、PPh2Cl2 (2.7 ml, 15 mmol)をゆっくり滴下し、約8時間撹拌させた。撹拌終了後、反応液をCH2Cl2と飽和NaCl水溶液で抽出を行った後、MgSO4 で乾燥させ、溶媒を除去すると褐色油状物が得られた。氷浴中で、得られた褐色油状物をCH2Cl2(20 ml)に溶解させた後、反応溶液に30% H2O2 水溶液(12ml)をゆっくり滴下し、約4時間撹拌させた。撹拌終了後、反応液をCH2Cl2と飽和NaCl aqで抽出を行った後、MgSO4 で乾燥させ、溶媒を除去すると黄色の粗生成物が得られた。得られた黄色の液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH=5:95)で精製を行い、第3成分を回収した。回収した第3成分をCH2Cl2に溶かし、濾過で不純物(特にシリカ)を取り除くことで、精製された配位子 4-dppyを黄色固体として得られた。Yield:0.54 g (19 %, 薄黄色粗結晶 or 白色粗結晶)
(4-dppyの物性)
1H-NMR、ESI-MSで同定した。
1H NMR : δ8.71-8.76(t, 2H,o-HC2pyr),δ7.40-7.88(m, 12H, Ar)ppm.
ESI-Mass : Calcd. for [M+H]+ : 280.09. Found, 280.09
【実施例】
【0103】
実施例2
中間錯体(Eu(III)錯体)合成
【化5】
JP0006590254B2_000006t.gif
上記反応スキームに従って、実施例1で合成した配位子4-dppyを用いて、Eu(III)錯体Eu(hfa)3(4-dppy)2を合成した。
配位子 4-dppy (0.24 g, 0.86 mmol)、Eu(hfa)3(H2O)2 (0.70 g, 0.87 mmol)をMeOH (50 ml)に溶かし、65℃で4時間加熱還流した。反応後、溶媒を除去し、CH2Cl2を加え、不溶物を濾過により取り除き、濾液を集め、再び溶媒を飛ばすと、目的物が薄黄色粉末として得られた。Yield: 0.54 g (47 %, 薄黄色粉末)
(Eu(III)錯体Eu(hfa)3(4-dppy)2の物性)
1H-NMR、ESI-MSで同定した。
1H NMR : δ8.71-8.76(t, 4H,o-HC2pyr),δ7.40-7.88(m, 24H, Ar), δ3.89(s, 3H, hfa) ppm
ESI-Mass : Calcd. for [M+H]+ : 1125.06. Found, 1125.06
【実施例】
【0104】
EEu(hfa)3(4-dppy)2の発光スペクトルを図1に示す。
τobs=0.95 ms, ΦLn=73 %(粉体)
この発光スペクトルから4f-4f遷移に基づくEu(III)特有の5つの発光バンド(578 nm (5D07F0)、591 nm (5D07F1)、614 nm (5D07F2)、650 nm (5D07F3)、698 nm (5D07F4) )が観測された。また原料であるEu(hfa)3(H2O)2と比較すると、614nm 付近の遷移が明らかに変化している。このスペクトルの増大は、Euの配位環境の変化したことに起因していると考えられる。
【実施例】
【0105】
実施例3
高分子錯体(Eu-Pd配位高分子)合成
【化6】
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実施例2で得られたEu(III)錯体と塩化パラジウムを錯化させることで、上記反応スキームに従って、段階的にEu-Pd配位高分子を合成した。
100 mlナス型フラスコに実施例2で得られたEu(III)錯体(0.53 g (0.40 mmol))、PdCl2(0.071 g (0.40 mmol))、ベンゼン(40ml)を加えて撹拌し、80℃のオイルバス中で約22時間還流した。還流終了後、茶色の不純物を濾過で取り除き、得た濾液の溶媒を除去したところ黄色固体が得られた。
【実施例】
【0106】
合成したEu-Pd配位高分子錯体の発光スペクトルと発光寿命測定の結果を図2に示す。発光寿命は、0.78 ms、発光量子収率は38%であった。参考として実施例2で合成したEu(III)錯体ユニットの発光スペクトルと発光寿命も示す。Eu-Pd配位高分子錯体の光物性及び実施例2の希土類錯体の光物性を下記表にまとめて示す。
【実施例】
【0107】
【表1】
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【実施例】
【0108】
参考例1
リンカー部位の構造を調べる為に、以下に示した合成スキームでPd錯体の合成を行い、単結晶X線構造解析を行った。
【化7】
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100 mlナス型フラスコに配位子(0.41 g, 1.47 mmol)、PdCl2(0.13 g, 0.73 mmol)、ベンゼン (50 ml)を加えて撹拌し、80℃のオイルバス中で約22時間還流した。還流終了後、茶色の不純物を濾過で取り除き、得た濾液の溶媒を除去したところ黄色固体が得られた。MeOHで再結晶を行い、層状結晶が得られた。Yield: 0.41 g (76%, 黄色結晶)Pd(II)錯体は1H-NMR、ESI-MSで同定した。
1H NMR : δ8.92-8.94(m, 4H,o-HC2pyr),δ7.45-7.75(m, 24H, Ar)ppm.
ESI-Mass : Calcd. for [M+Cl]+ : 768.97. Found, 770.97
【実施例】
【0109】
図3にPd(II)錯体のX線構造解析の結果を示す。
X線構造解析の結果から、パラジウムには配位子の窒素部位が結合し、平面四配位構造を取ることがわかる。このことから、この配位子を用いたEu(III)錯体をパラジウムで架橋できることが示唆される。また、ピリジン環とパラジウムは同一平面上に存在していることが確認でき、架橋部位として平面構造を有していることがわかる。
【実施例】
【0110】
試験例1
Eu(III)錯体と塩化パラジウムが錯形成するかを確認する為に、錯形成滴定を実施した。塩化パラジウムを0.1当量加えた毎に吸収スペクトルを測定し、2.5当量まで行った。図4(左図)に塩化パラジウムの各当量における吸収スペクトルを示す。このスペクトルから、300-320nm付近のピーク強度が徐々に減少していることがわかる図4(右図)。さらに、塩化パラジウムの滴下量と吸収度の関係を図5に示す。滴定曲線から、0.5-1.0当量までで1段階目の錯形成、1.5-2.0当量までで2段階目の錯形成が観測された。さらに、吸収スペクトル上の等吸収点が0.6当量までの時、280 nmに現れていたものが、2.5当量目までで等吸収点が270 nmに変化した。このことからも、Eu(III)錯体と塩化パラジウムの錯形成が、下記にスキームを示すように2段階で起こっていると考えられ、Eu-Pd配位高分子の形成が確認された。
【実施例】
【0111】
【化8】
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【実施例】
【0112】
試験方法
上記実施例及び試験例における分析は下記方法により行った。
(1)単結晶X線構造解析
単結晶X線構造解析にはRigaku R-AXIS RAPIDを用いた。各Eu(III)錯体の無色単結晶を流動パラフィンと一緒にテフロン製マウントループ(φ=0.3-0.4 mm, HAMPTON RESEARCH社製)に固定した。線源はMo-Kα、測定温度は-150±1℃でX線照射角度は最大2θ = 54.9 °とした。強度減衰とLorentz-分極効果の補正は経験的吸収補正(empirical absorption correction)によって行い、補正したデータを直接法で解析し、フーリエ変換を用いて拡張した。非水素原子は異方的に、水素原子はriding modelを用いて精密化した。モデルの精密化は観測した回折点と有効なパラメータに基づいて行われ、全ての計算は結晶学解析ソフトRigaku Crystal Structureで行った。
【実施例】
【0113】
(2)光物性測定
1) 吸収スペクトル測定
Eu(III)錯体Eu(hfa)3(4-dppy)2のMeOH溶液(0.025 M)を調製し、30分間Ar バブリングを行った。測定にはJASCO V-550(UV/VIS Spectrophotometer)及び1 cm × 1 cm の四面石英セルを使用し、測定範囲300-600 nm 、40 nm / min の走査速度で測定した。
【実施例】
【0114】
2) 発光スペクトル測定
Eu(III)錯体Eu(hfa)3(4-dppy)2は液体・固体状態、配位高分子[Eu(hfa)3(4-dppy)2PdCl2]n は固体状態で測定した。液体状態測定では、Eu(III)錯体のMeOH溶液(0.025 M)を調製し、30分間Ar バブリングを行った。測定にはJASCO FP-6600 及び液体状態では1 cm × 1 cm の四面石英セル、固体状態では1 cm × 0.1 cm の薄型石英セルを使用し、測定範囲:550‐750 nm、励起波長:370 nm と465 nm で行った。
【実施例】
【0115】
3) 発光寿命測定
Eu(III)錯体Eu(hfa)3(4-dppy)2は液体・固体状態、配位高分子[Eu(hfa)3(4-dppy)2PdCl2]n は固体状態で測定した。励起光源にはSpectra-Physics YAGレーザーヘッド(H-INDI2-LW)を用いた。YAG レーザーに対する応答は日本テクトロニクス-デジタルオシロスコープ(TDS3052B)を用いた。求められる発光寿命は発光減衰プロファイルの縦軸の値を自然対数でプロットし、得られた直線の傾きから算出した。
【実施例】
【0116】
4) 発光量子収率計算
Eu(III)錯体Eu(hfa)3(4-dppy)2及び配位高分子[Eu(hfa)3(4-dppy)2PdCl2]n を測定した発光スペクトルおよび発光寿命測定の結果から、発光量子効率ΦLn を算出した。Φ=0.65をリファレンスに用いた比較法と絶対法による発光量子収率の測定を行った。吸収スペクトル測定から得られたデータについて、横軸に波長(nm)を波数(cm-1)に変換した後、465 nm での吸収帯の面積を求めた。次に465 nm の励起での発光スペクトル (測定範囲:550-750 nm) における5D07F0 5D07F1 5D07F2 5D07F35D07F4に起因する発光バンドの総面積を求めた。吸収の面積に対する発光の面積の比を計算し、その値をリファレンスの値と比較することで発光量子収率を算出した。
【実施例】
【0117】
(3)錯形成滴定
Eu(III)錯体Eu(hfa)3(4-dppy)2のMeOH溶液(2×10-5 M)とPdCl2のMeOH溶液(6×10-4 M)を調製した。Eu(hfa)3(4-dppy)2のMeOH溶液 3 ml を加えた1 cm × 1 cm の四面石英セルにPdCl2のMeOH溶液10μlを加える毎に吸収スペクトル測定を行った。条件は測定範囲250-500 nm、走査速度20 nm/min とした。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、発光体や発光体に関連する分野に有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4