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明細書 :樹脂金属接合体の製造方法及び樹脂金属接合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-058279 (P2018-058279A)
公開日 平成30年4月12日(2018.4.12)
発明の名称または考案の名称 樹脂金属接合体の製造方法及び樹脂金属接合体
国際特許分類 B29C  65/20        (2006.01)
C23C  28/04        (2006.01)
C25D  11/18        (2006.01)
C25D  11/06        (2006.01)
FI B29C 65/20
C23C 28/04
C25D 11/18 A
C25D 11/06 B
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2016-197812 (P2016-197812)
出願日 平成28年10月6日(2016.10.6)
発明者または考案者 【氏名】細井 厚志
【氏名】川田 宏之
【氏名】阿部 暉
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114524、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 英俊
審査請求 未請求
テーマコード 4F211
4K044
Fターム 4F211AB25A
4F211AD03A
4F211AD16A
4F211AD24
4F211AD33
4F211AH17
4F211AH31
4F211TA01
4F211TC02
4F211TD02
4F211TH17
4F211TH21
4F211TN01
4F211TN07
4F211TQ04
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA13
4K044BA19
4K044BB04
4K044BC05
4K044CA17
4K044CA53
4K044CA64
要約 【課題】様々な樹脂とアルミニウム材とを接合する際に、ボルトやリベット等の接合部材や接着剤を用いることなく十分な接合強度を得ること。
【解決手段】本発明に係る樹脂金属接合体10の製造方法は、アルミニウム材11の表面に多数突出する針状の突起13Aからなるナノスパイクアレイ13を作製するナノスパイクアレイ作製工程と、ナノスパイクアレイ13が形成されたアルミニウム材11の表面にシランカップリング処理を行うシランカップリング処理工程と、各突起13Aの間に形成された隙間Sに溶融状態の樹脂21を侵入させてから固化することで、アルミニウム材11と樹脂21を接合する接合工程とを順に行う。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
樹脂とアルミニウム材を接合してなる樹脂金属接合体の製造方法において、
前記アルミニウム材の表面に多数突出する針状の突起からなるナノスパイクアレイを作製するナノスパイクアレイ作製工程と、前記各突起の間に形成された隙間に溶融状態の前記樹脂を侵入させてから固化することで、前記アルミニウム材と前記樹脂を接合する接合工程とを順に行うことを特徴とする樹脂金属接合体の製造方法。
【請求項2】
前記ナノスパイクアレイ作製工程では、前記アルミニウム材を陽極酸化処理することで、当該アルミニウム材の表面にポーラス構造のポーラスアルミナを形成した後、エッチング処理により前記ポーラスアルミナを除去することで、前記アルミニウム材の新たな表面に前記ナノスパイクアレイを形成することを特徴とする請求項1記載の樹脂金属接合体の製造方法。
【請求項3】
前記ナノスパイクアレイ作製工程と前記接合工程との間に、前記ナノスパイクアレイが形成された前記アルミニウム材の表面にシランカップリング処理を行うシランカップリング処理工程を行い、
前記接合工程では、シランカップリング処理後の前記アルミニウム材の表面に前記樹脂を接合することを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂金属接合体の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂は、母材に熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性炭素繊維強化樹脂であり、
前記接合工程では、加熱によって溶融状態となった前記樹脂の接合部分と、前記ナノスパイクアレイが形成された前記アルミニウム材の接合部分とを相互に接近させる方向に押圧するホットプレス処理により、前記各接合部分が接合されることを特徴とする請求項1、2又は3記載の樹脂金属接合体の製造方法。
【請求項5】
樹脂とアルミニウム材の接合体において、
前記樹脂に接合する前記アルミニウム材の接合部分には、平面視で多数散在する錐体状の突起が形成され、当該各突起の間に前記樹脂が入り込むことで、前記樹脂と前記アルミニウム材とが噛み合った状態で接合していることを特徴とする樹脂金属接合体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂金属接合体の製造方法及び樹脂金属接合体に係り、特に、ボルトやリベット等の接合部材を用いることなく、熱可塑性若しくは熱硬化性の炭素繊維強化樹脂とアルミニウム材とを接合する樹脂金属接合体の製造方法及び樹脂金属接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維と樹脂の複合材として炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が知られており、このCFRPとしては、母材に熱硬化性樹脂を用いた熱硬化性のCFRPの他に、母材に熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性炭素繊維強化プラスチック(CFRTP)がある。これらCFRPは、軽量且つ高強度であるため、航空機や自動車等の部品として広く用いられている。特に、自動車分野では、適材適所に種々の材料を採用するマルチマテリアル化がなされる傾向があり、成形性の観点から熱可塑性樹脂を母材としたCFRTPが用いられている。当該CFRTPは、保管や量産性に優れており、後加工も容易でリサイクル可能等の理由から、製造コストが安価となる。
【0003】
これらCFRPが航空機や自動車等の部品の材料として用いられる際には、金属材料からなる他の部品との接合が必要になる。例えば、航空機では、CFRP製の部品とアルミニウム製の部品との接合に、ボルトやリベット等の接合部材が多く用いられる。しかしながら、このような接合部材を用いた接合は、ボルトやリベット自体の重量が嵩み、CFRPを用いることによる軽量化のメリットを阻害する要因となるばかりか、ボルト孔が損傷発生の起点となり易く、近年では、これらCFRP等の樹脂とアルミニウム材の接合をボルトレス化することが求められている。
【0004】
ところで、特許文献1~3には、ボルトやリベット等の接合部材を用いずに、CFRPと金属とを接合する様々な手法が開示されている。すなわち、特許文献1には、金属表面にナノメートルオーダの微細凹凸を設けた上で、当該金属表面とCFRPとをエポキシ系接着剤を用いて接着する方法が開示されている。また、特許文献2には、金属表面にトリアジンチオール誘導体を含有する層を形成した上で、当該層とCFRP間に熱可塑性樹脂層を更に設け、熱可塑性樹脂層を溶融させることで、金属とCFRPを接合する方法が開示されている。更に、特許文献3には、1000~100000本の単繊維を含有する短冊状の繊維束からなる炭素繊維を40~80重量%含有した熱可塑性樹脂と、接合面の面粗度が1~100μmとなる金属とを振動溶着する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2010-269534号公報
【特許文献2】国際公開WO2012/074083号公報
【特許文献3】特開2016-34734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の方法にあっては、接着剤としてエポキシ樹脂が必要になることから、接着剤の硬化に時間がかかるばかりか、接着剤の経年劣化による接着強度の低下を招来するとともに、当該接着剤の存在によりリサイクル性が低下するという問題がある。また、前記特許文献2の方法にあっては、接合対象の金属とCFRPとの間に、リアジンチオール誘導体層及び熱可塑性樹脂層が介在することになるため、金属とCFRPの接合体の高重量化を招来するとともに、特許文献1と同様にリサイクル性が低下するという問題がある。更に、前記特許文献3の方法にあっては、使用できる炭素繊維複合材料が限られており、広い種類のCFRPに適用することができない。
【0007】
なお、前記特許文献1の背景技術として、アルミニウム合金をエッチングすることで、アルミニウム合金の表面に凹凸を形成してから、当該凹部に溶融した熱可塑性樹脂を高圧で射出して侵入させることで、当該熱可塑性樹脂とアルミニウム合金を接合する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、前記凹部の形状から凹部に樹脂を十分侵入させるために射出成形が前提であり、複雑な形状の樹脂と金属との接合が困難になる。また、前記凹部の形状がある一定の領域に延びるなだらかな谷状になるため、当該凹部に樹脂が係合するスパイク効果が不十分となり得る。従って、特許文献1で提案されているように、この背景技術の手法のみでは十分な接着強度が得られず、接着剤を併用する必要性が生じる。
【0008】
また、前記特許文献2の背景技術として、微小なポーラスが表面に形成されたアルミニウム材に樹脂を射出することにより、ポーラス内に樹脂が入り込んで固化するアンカー効果によりCFRTPとアルミニウム材とを接合する方法が開示されている。この方法にあっても、射出成形が前提であることから、複雑な形状の樹脂と金属との接合が困難である他、ポーラスの奥まで樹脂が行き渡り難く、十分なアンカー効果が得られ難い。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、様々な樹脂とアルミニウム材とを接合する際に、ボルトやリベット等の接合部材や接着剤を用いることなく、十分な接合強度が得られる樹脂金属接合体の製造方法及び樹脂金属接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、主として、本発明は、樹脂とアルミニウム材を接合してなる樹脂金属接合体の製造方法において、前記アルミニウム材の表面に多数突出する針状の突起からなるナノスパイクアレイを作製するナノスパイクアレイ作製工程と、前記各突起の間に形成された隙間に溶融状態の前記樹脂を侵入させてから固化することで、前記アルミニウム材と前記樹脂を接合する接合工程とを順に行う、という手法を採っている。
【0011】
また、本発明は、樹脂とアルミニウム材の接合体において、前記樹脂に接合する前記アルミニウム材の接合部分には、平面視で多数散在する錐体状の突起が形成され、当該各突起の間に前記樹脂が入り込むことで、前記樹脂と前記アルミニウム材とが噛み合った状態で接合している、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、樹脂との接合部分となるアルミニウム材の表面に多数突出する針状の突起からなるナノスパイクアレイが形成され、各突起の間の隙間に溶融の樹脂を侵入させて固化することで、樹脂とアルミニウム材とが接合される。この際、突起の先端が尖っているため、樹脂とアルミニウム材との接合状態において、その突起を、樹脂の接合部分側から内部に向かって深く食い込んだ状態にすることができ、高いスパイク効果を得ることができる。また、突起の外周面が急峻になることから、その先端側から当該外周面に流れ込んだ樹脂が基部側に達し易くなり、前記隙間の奥まで樹脂を行き渡らせることができ、高いアンカー効果を得ることができる。これにより、本発明によれば、ボルトやリベット等の接合部材や接着剤を用いることなく、強固に接合された樹脂とアルミニウム材との接合体を得ることができる。加えて、本発明に係る製造方法は、射出成形が必須ではなく、熱可塑性樹脂熱及び硬化性樹脂の何れにも適用することができ、様々な樹脂をアルミニウム材に接合することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)本実施形態に係る樹脂金属接合体の製造方法での陽極酸化処理を経たアルミニウム材の状態を模式的に表した断面図であり、(B)は、(A)の状態からエッチング処理を経たアルミニウム材の状態を示す模式的に表した断面図である。
【図2】(A)、(B)は、本実施形態に係る樹脂金属接合体の製造方法での接合工程を順に模式的に表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の詳細と実施例について、適宜図面を使用しながら以下に説明する。

【0015】
本発明に係る製造方法は、樹脂とアルミニウム材との接合方法に特徴を有する樹脂金属接合体の製造方法である。当該製造方法は、前記樹脂との接合部分となるアルミニウム材の表面に多数突出する針状の突起からなるナノスパイクアレイを作製するナノスパイクアレイ作製工程と、ナノスパイクアレイが形成されたアルミニウム材の表面にシランカップリング処理を行うシランカップリング処理工程と、シランカップリング処理後のアルミニウム材の表面を樹脂の接合部分に接合する接合工程とが順に行われる。

【0016】
本発明においては、前記樹脂として、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等に適用可能であり、当該CFRPとして、母材に熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性炭素繊維強化プラスチック(CFRTP)と、母材に熱硬化性樹脂が用いられた熱硬化性のCFRPとの双方の適用が可能である。なお、CFRTPとしては、母材樹脂としてポリアミド(PA6、PA66、PA12等)の他に、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、エポキシ、AS樹脂、ABS樹脂等が用いられたもの等、様々な種類のものを適用できる。

【0017】
また、本発明においては、前記アルミニウム材として、純アルミニウムの他に、アルミニウムを主成分としたアルミニウム合金の適用が可能である。

【0018】
前記ナノスパイクアレイ作製工程では、脱脂したアルミニウム材を酸性の電解液中で陽極酸化することにより、図1(A)に示されるように、アルミニウム材11の表面に多孔性酸化被膜であるポーラスアルミナ層12を形成する陽極酸化処理と、陽極酸化処理で形成された多数のポーラスを有するポーラスアルミナ層12を除去するエッチング処理とが順に行われる。

【0019】
前記陽極酸化処理は、金属を陽極として電解液中で通電して当該金属の表面に酸化皮膜を形成する公知の手法が採用され、電解液としては、例えば、クエン酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、スルファミン酸、ホウ酸、クロム酸、マロン酸、セレン酸等を含むものが用いられる。

【0020】
前記エッチング処理では、リン酸、クロム酸、シュウ酸等の少なくとも1種類を含む酸性の処理液に、ポーラスアルミナ層12を含むアルミニウム材11の部分を浸漬してポーラスアルミナ層12を除去することで、図1(B)に示されるように、その後のアルミニウム材11の新たな表面に残されたナノスパイクアレイ13が表出することになる。このナノスパイクアレイ13は、前記表面上を突出する先端の尖った針状の突起13Aが平面視で多数散在する華道用剣山のような形状をなす。これら突起13Aは、その基部側からほぼ点状をなす先端側に向かって次第に窄まる錐体状となっている。ここで形成されたナノスパイクアレイ13は、樹脂と接合するアルミニウム材11の接合部分11Aとなる。

【0021】
前記シランカップリング処理工程では、ナノスパイクアレイ13が形成されたアルミニウム材11を樹脂により強固に接合するために、ナノスパイクアレイ13の部分にシランカップリング剤が塗布される。ここで用いられるシランカップリング剤としては、主として、イソシアネート基を有するものが用いられるが、本発明はこれに限らず、アミノ基、メルカプト基、チオール基、ジスルフィド基、シアノ基、ハロゲン基、スルフォン基を有するものを用いることもできる。

【0022】
前記接合工程では、前記樹脂が熱可塑性のCFRTPである場合、図2(A)に示されるように、加熱によって溶融状態となった樹脂21の接合部分21Aとアルミニウム材11の接合部分11Aとを相互に接近する方向に押圧するホットプレス処理により、各接合部分11A,21A同士が接合される。具体的に、ここでのホットプレス処理は、シランカップリング剤が接合部分11Aに塗布されたアルミニウム材11をホットプレートH等に載置する等によって加熱し、その接合部分11Aに樹脂21の接合部分21Aを重ね合わせて樹脂21を溶融させた上で、樹脂21をアルミニウム材11に向かって加圧したまま、樹脂21を冷却して固化させることで、アルミニウム材11と樹脂21とが接合される。なお、ホットプレス処理の温度条件としては、母材樹脂の種類によって異なり、ガラス転移温度以上で、所望とする形状を維持可能な温度未満に設定される。

【0023】
また、前記樹脂21が熱硬化性のCFRPの場合、当該樹脂21を成形する際に、その接合部分21Aにアルミニウム材11の接合部分11Aを重ね合わせた状態で行われる。例えば、半硬化状態のプリプレグシートを使い、オートクレーブ等によって加圧しながら硬化させる過程で、アルミニウム材11を樹脂21に接合させる。

【0024】
以上の接合工程においては、アルミニウム材11の接合部分11Aがナノスパイクアレイ13となっているため、当該接合部分11Aが樹脂21側に突き刺さるように強固に接合され、スパイク効果を高めることができる。また、溶融状態の樹脂12が各突起13Aの間に形成される隙間Sに侵入する際に、各突起13Aの先端側がほぼ点状となっており、当該先端間の樹脂入口部分を広く確保できるとともに、隙間Sの深部に向かって隣り合う突起13Aの離間距離が次第に狭くなるため、突起S内への樹脂21の流入を効率的且つ十分に行うことができ、アンカー効果をも高めることができる。

【0025】
前記製造方法で得られた樹脂金属接合体10は、図2(B)に示されるように、アルミニウム材11の接合部分11Aに、平面視で多数散在する先端が尖った針状の突起13Aが形成され、それぞれ隣り合う各突起13Aの間に樹脂21が入り込んで、アルミニウム材11と樹脂21とが噛み合って接合した状態となる。

【0026】
なお、本発明においては、前記シランカップリング処理工程を省略して、前記ナノスパイクアレイ作製工程の後に前記接合工程に移行しても良いが、シランカップリング処理工程を経た方が、アルミニウム材11と樹脂21との接合強度を高めることができる。

【0027】
次に、樹脂金属接合体10の製造方法に係る一実施例について説明する。

【0028】
アルミニウム材11としては、A1050のアルミニウム材からなる板材を用い、樹脂21としては、母材をポリアミド(PA6)として炭素繊維と複合させた熱可塑性のCFRTPからなる板材を用い、次の手順により、アルミニウム材11と樹脂21の接合体10が得られた。

【0029】
先ず、ナノスパイクアレイ作製工程により、アルミニウム材11の表面にナノスパイクアレイ13を形成する。すなわち、ここでは、最初に、アルミニウム合金に対して脱脂等の前処理を行う。ここでの脱脂は、アセトン中にアルミニウム材を浸し、超音波洗浄により行われるが、この前処理として、アルミニウム材11の表面酸化膜を無機材で完全にエッチングする処理を行うこともでき、その後、以降の処理を行うことで、より効果的なナノスパイクアレイ13の作製が可能になると考えられる。その上で、アルミニウム材11の陽極酸化処理が行われる。ここでの電解液としては、2重量%のクエン酸、2重量%のエチレングリコールを含むものが用いられる。また、印加電圧を400V、電流密度を1.2mA/cmとし、電解液を冷却する冷却水の温度を0℃とし、通電時間を9時間とした。すると、アルミニウム材11の表面に、図1(A)に模式的に示されるポーラスアルミナ層12が形成された。次に、ポーラスアルミナ層12を除去するためのエッチング処理が行われる。ここでは、処理液として、2重量%のリン酸、1.5重量%のクロム酸を含むものが用いられ、温度63℃で60分間行われる。すると、図1(B)に模式的に示される針状の突起13Aを多数有するナノスパイクアレイ13が、アルミニウム材11の表面に多数残され、このナノスパイクアレイ13が樹脂21に接合される接合部分11Aとなる。

【0030】
更に、シランカップリング処理工程により、アルミニウム材11の表面側のナノスパイクアレイ13の部分にシランカップリング処理が施される。ここでは、先ず、アルミニウム材11をアセトンに浸漬しながら超音波洗浄を行う。そして、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランを主成分とするシランカップリング剤を1重量%に希釈し、5分間撹拌する。更に、ナノスパイクアレイ13が形成されたアルミニウム材11の表面部分に、シランカップリング剤を1重量%で希釈した溶液を含浸させた紙製のウエスを被せ1分間放置する。その後、当該ウエスを取り除いたアルミニウム材11を100℃に加熱したオーブンに入れ、アルミニウム材11の表面に付着したシランカップリング剤が乾燥するまでアルミニウム材11を放置する。

【0031】
次に、接合工程により、ナノスパイクアレイ13が形成されたアルミニウム材11と樹脂21との各接合部分11A,21Aが接合される。ここでは、シランカップリング剤が塗布されたアルミニウム材11について、図2(A)に示されるように、ナノスパイクアレイ13が形成された接合部分11A側を上向きにして、290℃に加熱したホットプレートH上に載置して1分間放置した後、接合部分11Aに樹脂21の接合部分21Aを重ね合わせる。その上で、接合部分21A側が溶融状態になった樹脂21の同図中上方から125.4kPaの圧力を加えて加圧状態とし、そのまま3分間放置する。その後、当該加圧状態を維持したまま、ホットプレートHの電源を落とし、空冷により室温程度まで温度を低下させることで、樹脂21を固化させてアルミニウム材11に接合し、図2(B)のような樹脂金属接合体10が得られた。

【0032】
本発明者らによって行われた樹脂金属接合体10の接合強度実験(せん断試験)によれば、本実施例に係る樹脂金属接合体10の接合強度は、27.8MPaとなった。一方、前記実施例と同一のアルミニウム材11について、ナノスパイクアレイ13を形成せずに、シランカップリング処理を行ってから実施例と同一の樹脂21とを接合してなる従来の樹脂金属接合体(比較例1)について、前述と同一条件の接合強度実験を行うと、その接合強度が22.6MPaとなった。また、前記実施例と同一のアルミニウム材11について、ナノスパイクアレイ13を形成せずに、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる粘接着シートを用いて前記実施例と同一の樹脂21とを接合してなる従来の樹脂金属接合体(比較例2)について、前述と同一条件の接合強度実験を行うと、その接合強度が25.0MPaとなった。

【0033】
以上の実験結果によれば、本実施例に係る樹脂金属接合体10は、各比較例に係る従来の樹脂金属接合体よりも、アルミニウム材11と樹脂21との接合強度が高くなることが実証された。

【0034】
なお、他の実施例として、前記実施例に対して、シランカップリング処理工程を省略することによっても、図2(B)に模式的に示される樹脂金属接合体10が得られた。

【0035】
本発明は、前述した樹脂の他の樹脂にも適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 樹脂金属接合体
11 アルミニウム材
11A 接合部分
12 ポーラスアルミナ層
13 ナノスパイクアレイ
13A 突起
21 樹脂
21A 接合部分
H ホットプレート
S 隙間
図面
【図1】
0
【図2】
1