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明細書 :セルロースナノウィスカーボール及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6731593号 (P6731593)
公開番号 特開2017-066241 (P2017-066241A)
登録日 令和2年7月9日(2020.7.9)
発行日 令和2年7月29日(2020.7.29)
公開日 平成29年4月6日(2017.4.6)
発明の名称または考案の名称 セルロースナノウィスカーボール及びその製造方法
国際特許分類 C08B  15/00        (2006.01)
FI C08B 15/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2015-191829 (P2015-191829)
出願日 平成27年9月29日(2015.9.29)
審査請求日 平成30年9月25日(2018.9.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】荒木 潤
【氏名】有田 稔彦
審査官 【審査官】早乙女 智美
参考文献・文献 特開2013-203859(JP,A)
特開2014-187901(JP,A)
特開平06-233691(JP,A)
国際公開第2013/077354(WO,A1)
特開2012-081533(JP,A)
国際公開第2015/074120(WO,A1)
特開2012-149153(JP,A)
国際公開第2008/123419(WO,A1)
特開平10-095803(JP,A)
上谷幸治郎ら,ζ電位から得られるセルロースナノファイバーの表面情報,日本木材学会大会研究発表要旨集(完全版)(CD-ROM),2011年,61,Z20-01-1000
荒木潤ら,結晶性セルロースの高性能フィラー化に向けた微粉体結晶性セルロース製造,繊維学会予稿集,2015年 6月 8日,70(1),2C07
JIANG, F. et al.,ACS Applied Materials & Interfaces ,2014年,6(22),pp. 20075-20084
調査した分野 C08B15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
幅10~50nm、長さ100~500nmの針状結晶であるセルロースナノウィスカーが、網目状に相互に絡み合った形態で、サブミクロンサイズからミクロンサイズのボール状に凝集してなる粉体状のセルロースナノウィスカーボールの製造方法であって、
微結晶セルロースを水を分散媒とする分散液中で粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程により得られた懸濁液の分散媒を水と混和する有機溶媒に置換する置換工程と、
前記置換工程により得られた懸濁液の分散媒を水と混和しない有機溶媒に置換する再置換工程と、
前記再置換工程により得られた懸濁液の分散媒を除去する乾燥工程と、
を備えることを特徴とするセルロースナノウィスカーボールの製造方法。
【請求項2】
前記微結晶セルロースが植物由来であることを特徴とする請求項1記載のセルロースナノウィスカーボールの製造方法
【請求項3】
水と混和する有機溶媒がアセトンであることを特徴とする請求項1または2記載のセルロースナノウィスカーボールの製造方法。
【請求項4】
水と混和しない有機溶媒がトルエンであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載のセルロースナノウィスカーボールの製造方法。
【請求項5】
幅10~50nm、長さ100~500nmの針状結晶であるセルロースナノウィスカーが、網目状に相互に絡み合った形態で、サブミクロンサイズからミクロンサイズのボール状に凝集してなることを特徴とする粉体状のセルロースナノウィスカーボール。
【請求項6】
前記セルロースナノウィスカーが植物由来であることを特徴とする請求項5に記載の粉体状のセルロースナノウィスカーボール
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はセルロースナノウィスカーボール及びその製造方法に関し、より詳細にはセルロースナノウィスカーが凝集してボール状に形成されたセルロースナノウィスカーボール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースナノファイバー(CNF)は天然のバイオマスであるセルロースをナノレベルの太さまで細かくほぐすことによって得られる。セルロースナノファイバーをさらに微細化したものがセルロースナノウィスカー(CNW)である。セルロースナノウィスカーをセルロースナノファイバーの範疇に含める場合もあるが、本明細書ではセルロースナノファイバーとセルロースナノウィスカーを分けて使用する。セルロースナノファイバーとセルロースナノウィスカーをあわせてナノセルロースという場合もある。
【0003】
セルロースナノファイバーは植物繊維から機械的な解繊処理によって製造することができる。セルロースナノファイバーの大きさは、幅4~100nm、長さ5μm以上程度である。セルロースナノウィスカーは、酸加水分解を利用して製造される。セルロースナノウィスカーは針状結晶であり、幅10~50nm、長さ100~500nmである。
セルロースナノファイバーとセルロースナノウィスカーは、ともに、軽量でヤング率が高く、植物由来であり環境への負荷が小さいといった特性を有する。セルロースナノウィスカーはセルロースナノファイバーと比較してさらに結晶性が高く、ヤング率が高いことから補強用の材料としてより有効に利用できる可能性がある。
【0004】
ナノセルロースを製造する従来方法には、天然セルロースを濃硫酸を用いて処理する方法、木材パルプから得られたミクロフィブリルを化学処理する方法(特許文献1)、有機溶媒を分散媒として粉砕する方法(特許文献2)等がある。
【0005】
ナノセルロースは食品、化粧品、医療分野等へも利用されている。これらの分野ではマイクロスケールの粒子が利用される。ナノセルロースからマイクロスケールの粒子を作製する方法として、ナノセルロースの懸濁液を噴霧乾燥する方法でナノセルロースからなるマイクロ粒子を作製する方法が報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2008-1728号公報
【特許文献2】特開2009-261993号公報
【0007】

【非特許文献1】Kojiro Uetani, Hiroyuji Yano “Self-organizing capacity of nanocelluloses via droplet evaporation” Soft Matter,2013,9,3396
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したナノセルロースからなるマイクロ粒子は粒子状に形成されることから、補強材といった物理作用を利用する用途の他に、食品、化粧品、医療分野といった従来のナノセルロースとは異なる種々の用途への利用が可能である。
本発明者は、セルロースナノウィスカーを作製する過程において、従来のナノセルロースからなるマイクロ粒子を作製する方法とは異なる、新規な製法を見出した。
本発明に係るセルロースナノウィスカーボール及びその製造方法は、セルロースナノウィスカーボールを作製する新規な方法を提供するものであり、その方法により、特殊な製造装置を利用することなく容易にセルロースナノウィスカーボールを作製することができ、新規な構成を備えるセルロースナノウィスカーボール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、天然のセルロースを素材とし、水あるいは有機溶媒を分散媒として粉砕する操作を利用することにより、乾燥後の状態で、セルロースナノウィスカーが粉体として得られる方法について鋭意研究を重ねてきた。その研究の過程で、特定の処理工程を経過させることにより、従来のセルロースナノウィスカーとは全く構造が異なるセルロースナノウィスカーボールが得られることを発見し、本発明に想到したものである。
【0010】
本発明に係るセルロースナノウィスカーボールの製造方法は、幅10~50nm、長さ100~500nmの針状結晶であるセルロースナノウィスカーが、網目状に相互に絡み合った形態で、サブミクロンサイズからミクロンサイズのボール状に凝集してなる粉体状のセルロースナノウィスカーボールの製造方法であって、微結晶セルロースを水を分散媒とする分散液中で粉砕する粉砕工程と、前記粉砕工程により得られた懸濁液の分散媒を水と混和する有機溶媒に置換する置換工程と、前記置換工程により得られた懸濁液の分散媒を水と混和しない有機溶媒に置換する再置換工程と、前記再置換工程により得られた懸濁液の分散媒を除去する乾燥工程と、を備えることを特徴とする。
を分散媒として微結晶セルロースを粉砕処理した状態においては、ナノセルロースは懸濁液中で緩く凝集している。この懸濁液の分散媒を水と混和しない有機溶媒に置換することにより、セルロースナノウィスカーは凝集してボール状(セルロースナノウィスカーボール)になる。
【0011】
前記水と混和しない有機溶媒としてトルエン等の有機溶媒を使用することができる。水と混和しない有機溶媒に置換して有機溶媒を除去することにより、セルロースナノウィスカーボールの粉体を容易に得ることができる。この粉体は角質化したり塊状に凝集したりせず、水等の分散媒に容易に分散する再分散性に優れた粉体として得られる。
【0012】
有機溶媒に置換する工程として、水と混和する有機溶媒に置換する置換工程と、この置換工程の後工程として、水と混和しない有機溶媒に置換する再置換工程とを備えることにより、粉砕処理後の懸濁液の分散媒を水と混和しない有機溶媒に確実に置換することができる。後工程で水と混和しない有機溶媒に置換した後、有機溶媒を除去することによりセルロースナノウィスカーボールの粉体を得ることができる。
前記水と混和しない有機溶媒に置換した後、乾燥工程により有機搭媒を容易に除去することができる。
【0013】
本発明に係る粉体状のセルロースナノウィスカーボールは、幅10~50nm、長さ100~500nmの針状結晶であるセルロースナノウィスカーが、網目状に相互に絡み合った形態で、サブミクロンサイズからミクロンサイズのボール状に凝集してなることを特徴とする。このウィスカーボールは粉体として提供され、各種用途に容易に利用することができる。
セルロースナノウィスカーボールを構成するセルロースナノウィスカーは相互に絡み合った網目状となっており、セルロースナノウィスカーの聞には空隙が存在する。したがって、セルロースナノウィスカーボールの内部に機能性材料( 薬剤等の化学品や適宜物質)を取り込むこと( 複合化) が可能であり、セルロースナノウィスカーボールの表面を機能性材料によって修飾するといた複合化も可能である。
【発明の効果】
【0014】
発明に係るセルロースナノウィスカーボールの製造方法によれば、きわめて容易にセルロースナノウィスカーボールを製造することができ、セルロースナノウィスカーボールを粉体状の製品として容易に提供することができる。
また、本発明に係るセルロースナノウィスカーボールは、セルロースナノウィスカーが凝集してボール状の形態に形成され、セルロースナノウィスカーボール間の凝集力が抑制されることにより、粉体として提供される。セルロースナノウィスカーボールの表面あるいは内部に機能性材料を包括させることにより、さまざまな機能を備えるセルロース材料として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明方法により得られた粉砕組成物の写真である。
【図2】図1に示す粉砕組成物のSEM像である。
【図3】図1に示す粉砕組成物のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<微結晶セルロースの調製工程>
微結晶セルロースはセルロース材料から非晶部分を取り除いた繊維状の一次粒子である。セルロース材料から非晶部分を取り除く方法としては、酸加水分解や酵素による分解を利用することができる。
微結晶セルロースの形状、寸法はとくに限定されるものではないが、平均長さが5~500μmであり、平均径が5~1,500nmであるものを好適に用いることができる。
微結晶セルロースの平均長さと平均径は走査型電子顕微鏡(SEM)による観察で、任意の100個の微結晶セルロースについて計測した平均値として算出した。

【0017】
<粉砕工程>
本発明においては、微結晶セルロースを水を分散媒として粉砕する。水を分散媒として微結晶セルロースを粉砕する際の微結晶セルロースの濃度は、水100mLに対する微結晶セルロースの重量(w、単位:g)の割合はとくに限定されるものではない。実験では微結晶セルロースの割合を10w/v%としたが、微結晶セルロースの割合をさらに大きくすることもできる。
微結晶セルロースを粉砕する方法はとくには限定されない。粉砕装置としては、たとえば、回転二枚刃ホモジナイザ、Waring型ブレンダー、臼(石臼、セラミック臼など)、ロールミル、高圧水流衝突型ホモジナイザ、湿式微粒化装置、自動乳鉢等を用いることができる。
前記回転二枚刃ホモジナイザを用いる例として、常圧下、温度0~100℃において100~20000rpmで5分間~2時間の条件が挙げられる。

【0018】
<有機溶媒に置換する工程>
上記粉砕工程、懸濁液の分散媒を有機溶媒に置換する。水を分散媒として粉砕処理した状態ではナノセルロースは懸濁液中で緩く凝集している。水を分散媒とした懸濁液から分散媒を有機溶媒に置換することにより、セルロースナノウィスカーは凝集してボール状(セルロースナノウィスカーボール)になる。
ここで、水と混和しない有機溶媒に置換すると、セルロースナノウィスカーボールを含む懸濁液の分散媒を乾燥除去することにより、セルロースナノウィスカーボールを含む粉末状の組成物を得ることができ、得られたセルロースナノウィスカーボールの粉末は水等の溶媒に簡単に分散する再分散性のよい粉末として得られる。

【0019】
<水と混和する有機溶媒に置換する工程(置換工程)
上記粉砕工程後の懸濁液の分散媒を有機溶媒に置換する処理を行う場合、トルエン等の水と混和しない有機溶媒に一気に置換することは難しい。したがって、先ず、水と混和する有機溶媒に置換する処理を行い、次いで、水と混和しない有機溶媒に置換する処理を行うのがよい。
水と混和する有機溶媒にはアセトン、アルコール類(脂肪族・芳香族の両者を含む)、THF、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ピリジン、アセトニトリル、酢酸、エチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサメチルりん酸トリアミド(HMPA)などを使用することができる。
これらの水と混和する有機溶媒に置換することにより、セルロースナノウィスカーが凝集したセルロースナノウィスカーボールを含む懸濁液が得られる。

【0020】
<水と混和しない有機溶媒に置換する工程(再置換工程)
水と混和する有機溶媒に置換する処理を行た後、水と混和しない有機溶媒に置換する処理を行う。分散媒を水と混和しない有機溶媒に置換する工程において使用できる有機溶媒としては、トルエン、炭化水素系溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼンおよびその誘導体など)、ハロゲン化溶媒類(ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、その他)、エステル系溶媒類(酢酸エチル)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなど)、ニトロメタンなどが挙げられる。
水と混和しない有機溶媒に置換することにより、この置換工程の後工程である乾燥工程により、セルロースナノウィスカーボールの乾燥粉末を得ることができる。水と混和しない有機溶媒に置換する処理は、ナノセルロースが角質化したり、粉末が塊状となったりせず、さらさらとしたセルロースナノウィスカーボールの粉末として得ることができる点で有効である。


【0021】
なお、水粉砕処理後の分散媒を、トルエンのような水と混和しない有機溶媒に直接置換する処理が、まったく不可能であるという訳ではない。たとえば、トルエンと水との比が99.5:0.5といった条件であれば、水からトルエンに直接置換処理することが可能である。置換処理を1段階で行うことにより、セルロースナノウィスカーボールの粉末を容易にかつ効率的に得ることができる。

【0022】
<乾燥工程>
乾燥工程は、ナノセルロースを水と混和しない有機溶媒に置換した後、溶媒を乾燥除去する工程である。乾燥方法としては、熱風受熱乾燥法、伝導受熱乾燥法、除湿空気乾燥法、冷風乾燥法、マイクロ波乾燥法、赤外線乾燥法等が利用でき、もっとも簡単な方法として風乾により有機溶媒を散逸させる方法が利用できる。
乾燥処理により、セルロースナノウィスカーボールを含有する粉末状の組成物(セルロースナノウィスカーボール含有粉末)を得ることができる。得られた粉末状の組成物に含まれるセルロースナノウィスカーボールの割合は90重量%以上とすることができる。
また、得られたセルロースナノウィスカーボールの粉末は、水を分散媒として簡単に再分散させることができるという特徴がある。
【実施例】
【0023】
<セルロースナノウィスカーボールの作製例>
(微結晶セルロースの調製工程)
セルロース材料として脱脂綿(セルロース、オオサキメディカル株式会社製)50gに、煮沸した2.5mol/L塩酸(和光純薬社製、試薬一級)500mLを加え、還流下、脱脂綿全体が十分塩酸に浸漬するようにガラス棒で撹拌しながら、マントルヒーターを用いて煮沸が継続されるように40分間加熱し、脱脂綿を塩酸加水分解させた。
次いで、500mLのイオン交換水を加えて室温まで冷却し、ブフナーロートと定量濾紙(JIS P 3801:5種B)を用いて、イオン交換水を流しながら濾液が中性になるまで濾過による洗浄を行い、セルロースを加水分解した残渣として微結晶セルロースを得た。
【実施例】
【0024】
(粉砕工程)
得られた微結晶セルロースを10w/v%となるように水に懸濁させ、微結晶セルロースの10%水懸濁液(粉砕前微結晶セルロース懸濁液)を得た。この微結晶セルロースの懸濁液について、回転二重刃型ホモジナイザ(ポリトロンPT2500E:Kinematical社製)及びジェネレータシャフト(PT-DA20/2EC-E192)を用いて、回転数12,000rpmで15分間粉砕を実施した。粉砕処理後の懸濁液は、ナノセルロースが沈降せずに分散した白色不透明な懸濁液である。
【実施例】
【0025】
(アセトン置換工程)
次いで、粉砕処理した懸濁液を遠心分離し(5,000rpm、10分間)、回収した固体を別の遠沈管に入れ、水と混和する有機溶媒であるアセトン10mLを添加し、振とうして分散させた後、遠心分離し(5,000rpm、10分間)、固体を回収した(1回目)。また、さらにアセトンを添加して分散させ、遠心分離する操作を行い(2回目)、分散媒をアセトンに置換した。
【実施例】
【0026】
(トルエン置換工程)
次に、分散媒をアセトンとした懸濁液を遠心分離し、(5,000rpm、10分間)固体を回収し、回収した固体を別の遠沈管に入れ、トルエン(VETEC社製、LRグレード)100mLを添加し、振とうして分散させた後、遠心分離し、(5,000rpm、10分間)固体を回収した(1回目)。さらにトルエンを添加して分散させ、遠心分離する操作を行い(2回目)、分散媒をトルエンに置換した。
【実施例】
【0027】
(乾燥工程)
上記工程により得られた、分散媒がトルエンの懸濁液をガラスシャーレに流し込み、室内に静置して風乾させ、トルエンを除去して、白色の粉砕物を得た。
【実施例】
【0028】
図1は得られた粉砕物の写真である。図1に見られるように、粉砕物は粉体として得られ、指でつまむと簡単にほぐれ、さらさらした微粉末である。
図2、3は粉砕物のSEM像である。図2は倍率1200倍、図3は7000倍である。
図2のSEM像から、粉砕物が、ボール状の塊状(セルロースナノウィスカーボール)に形成されていることがわかる。
図3のSEM像はセルロースナノウィスカーボールの微細構造を示す。セルロースナノウィスカーボールは、セルロースナノウィスカーが互いに交錯した網目状の外観形態をなす。
【実施例】
【0029】
セルロースナノウィスカーボールはセルロースナノウィスカーがボール状に凝集して形成されたものである。セルロースナノウィスカーボールは製造方法により数百nm~数百μmの大きさのものを得ることができる。
図1に示すように、セルロースナノウィスカーボールからなる微粉末は、さらさらした粉末として得られる。これはセルロースナノウィスカーが凝集してセルロースナノウィスカーボールとなることにより、それ以上凝集することが抑制されていることを示す。
【実施例】
【0030】
<セルロースナノウィスカーボールの他の作製例>
セルロースナノウィスカーボールの他の作製例として、水を分散媒として粉砕して得られたナノウィスカーの懸濁液から有機溶媒に置換する工程で、懸濁液にまず電解質を添加し、ナノウィスカーを凝集させた後、有機溶媒に置換する処理を行ってもよい。懸濁液にあらかじめ電解質を添加することによりナノウィスカーの凝集を促進させることができ、遠心分離して得られた固体を有機溶媒に置換することにより、確実にセルロースナノウィスカーボールを形成することができる。
【実施例】
【0031】
また、セルロースナノウィスカーは水中では安定に分散しているが、わずかな電解質の添加により凝集を形成することが知られている。したがって、粉砕処理によって得られたナノウィスカーの水懸濁液に、種々の電解質を添加することにより、セルロースナノウィスカーボールを作製することが可能であると考えられる。
水懸濁液に加える電解質の種類としては、無機、有機のいずれの電解質でもよく、価数は1価以上であればすべての電解質が使用可能であるが、2価以上の電解質はより急速にナノボールを形成可能である。電解質の濃度は、極めて微量(たとえば、1Lのナノウィスカー懸濁液に2~3滴の1mol/Lの塩酸水溶液は凝集形成に十分である)から数十%の濃度範囲まで可能である。
【実施例】
【0032】
<セルロースナノウィスカーボールの再分散性>
水を分散媒として粉砕処理により得られた懸濁液を有機溶媒に置換する処理によって得られたセルロースナノウィスカーボールの乾燥粉末は、水等の溶媒への再分散性に優れている。
再分散性を調べるため、水に1%の濃度でセルロースナノウィスカーボールの粉末を投入して振とうした後、静置して外観を観察する実験を行った。振とう後、1時間後においても沈降しない成分を含み、白濁した上清部を含んでいた。
一方、水を分散媒として粉砕処理により得られたナノウィスカーの水懸濁液を自然乾燥して得られた乾燥物は、堅く角質化した板状凝集物であり、さらさらした粉体としては得られなかった。この乾燥物を水に投入して振とうしても、2~3分で沈降してしまい、完全に透明な上澄みを生じ、まったく再分散性を示さなかった。
【実施例】
【0033】
<比較例>
セルロースナノウィスカーボールの粉体を得る方法として、トルエン等の水と混和しない有機溶媒に置換する工程が必要であることを確かめるため、上記実施例で、水に混和しない有機溶媒として使用したトルエンに替えて、水と混和する有機溶媒であるアセトニトリルを使用し、トルエンと同様の置換処理を行い、乾燥処理を行った。
乾燥処理後のアセトニトリル置換試料は、水懸濁液を乾燥したときと同様な堅い板状の凝集物として得られ、SEM観察でセルロースナノウィスカーボールは観察されなかった。また、アセトニトリル置換資料は、水懸濁液の乾燥試料と同様に、2~3分で沈降し、再分散性は認められなかった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2