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明細書 :新規免疫抑制剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-145098 (P2018-145098A)
公開日 平成30年9月20日(2018.9.20)
発明の名称または考案の名称 新規免疫抑制剤
国際特許分類 A61K  38/00        (2006.01)
A61P  37/06        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C07K  14/00        (2006.01)
FI A61K 37/02 ZNA
A61P 37/06
A61P 43/00 111
C07K 14/00
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2017-037977 (P2017-037977)
出願日 平成29年3月1日(2017.3.1)
発明者または考案者 【氏名】野口 洋文
出願人 【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100152180、【弁理士】、【氏名又は名称】大久保 秀人
【識別番号】100174791、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 敬義
審査請求 未請求
テーマコード 4C084
4H045
Fターム 4C084AA02
4C084BA02
4C084BA18
4C084CA59
4C084DA01
4C084NA14
4C084ZB08
4C084ZC02
4C084ZC41
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA18
4H045EA20
4H045FA34
要約 【課題】カルシニューリン-NFATシグナリングをターゲットとした,より安全性の高い薬剤の開発。
【解決手段】下記式で表される化合物を有効成分とする免疫抑制剤。上記化合物は,11R-VIVITやFK506と同様に免疫抑制作用を発揮するとともに,11R-VIVITよりも薬物としての有効濃度範囲が広く,また,FK506で見られるような耐糖能障害などが見られないことから,より安全性の高い薬剤として期待できる(式)X1-Sp-mR、(X1は,KYELHAxTxxTPSVVVHVCxSで表されるアミノ酸配列;xは任意の天然アミノ酸;Spはスペーサー;でny;yは任意の天然のアミノ酸;nは0~5の整数;Rはアルギニン;mは9~13の整数)
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式からなる化合物を有効成分とすることを特徴とする免疫抑制剤

(式) X1-Sp-mR

X1は,KYELHAxTxxTPSVVVHVCxSで表されるアミノ酸配列であり,
アミノ酸配列中,xは任意の天然アミノ酸を,
Spは,スペーサーを,
Rは,アルギニンを,
mは,9から13の整数を表す。

【請求項2】
X1が,配列番号1から3に示されるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の免疫抑制剤

【請求項3】
Spがnyで表され,yが任意の天然アミノ酸,nが0から5の整数で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の免疫抑制剤

【請求項4】
前記化合物が,配列番号4からなるペプチドであることを特徴とする請求項1に記載の免疫抑制剤


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は,免疫抑制作用を有する薬剤に関する。より詳細にいうと本発明は,カルシニューリン-NFATシグナリングを阻害することにより,免疫抑制作用を発揮する薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロスポリンAやFK506などカルシニューリン阻害剤は,免疫抑制剤として広く用いられている。しかしながら,これらの薬剤は,腎機能低下,高血圧,インスリン分泌量低下,神経毒性など,様々な副作用を有することでも知られている。
このことから,カルシニューリン阻害とは異なるメカニズムを有する免疫抑制剤の開発が望まれている。そのような薬剤として,11R-VIVITと称される薬剤が開発されている(特許文献1)。
【0003】
11R-VIVITは,カルシニューリン-核内T細胞活性化因子(Nuclear Factor Actibated T cell,以下,「NFAT」)のシグナリング阻害をメカニズムとする薬剤である。
NFATには,NFAT1,NFAT2,NFAT3,NFAT4など複数のサブタイプが存在し,活性化されたカルシニューリンにより脱リン酸化され,活性化される。活性化したNFATは,核内に移動し,IL-2の発現を誘導する。NFATは,これら一連のメカニズムにより,免疫系において,転写調節因子として機能する。
【0004】
一方,VIVITと同様に,カルシニューリン-NFATシグナリングを阻害することで知られるタンパク質として,regulators of calcineurin(以下,「RCAN」)が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2003-252898
【0006】

【非特許文献1】Mulero MC1 et al. J Biol Chem. 2009 Apr 3;284(14):9394-401.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1において開示される11R-VIVITは,NFATを阻害するVIVITと呼ばれるペプチドに,細胞膜透過性を高めるための11個のアルギニンを導入してなるペプチドである。11R-VIVITは,カルシニューリン-NFATシグナリングを阻害するが,それ以外のカルシニューリンの脱リン酸化に影響を及ぼすことなく,免疫抑制効果を発揮するものであり,この点において,副作用の少ない,安全な免疫抑制剤として期待されるものである。
【0008】
しかるに発明者は,11R-VIVITが課題を有することを発見した。
すなわち,11R-VIVITは,上述のような優れた効果を有するものの,免疫抑制作用を発揮する有効濃度の10倍の濃度で細胞毒性を有してしまう。そのため,薬物としての安全濃度域が非常に狭い点において,11R-VIVITは,課題を有するものである。
【0009】
上記事情を背景として本発明では,カルシニューリン-NFATシグナリングをターゲットとした,より安全性の高い薬剤の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は,鋭意研究の結果,RCANの配列の一部がカルシニューリン-NFATシグナリングを阻害すること,ならびにRCANのサブタイプが共通した配列を有することに着目し,このRCANの配列の一部に,細胞膜透過性を高めるためのアルギニン残基を導入した化合物を作製した。かかる化合物が,11R-VIVITやFK506と比較してより安全性が高く,また,免疫作用を発揮することを見出し,発明を完成させたものである。
【0011】
本発明は,以下の構成からなる。
本発明の第一の構成は,下記式からなる化合物を有効成分とすることを特徴とする免疫抑制剤である。

(式) X1-Sp-mR

式中,X1は,KYELHAxTxxTPSVVVHVCxSで表されるアミノ酸配列であり,アミノ酸配列中,xは任意の天然アミノ酸を,Spはスペーサーを,Rはアルギニンを,mは9から13の整数を表す。
【0012】
本発明の第二の構成は,X1が,配列番号1から3に示されるアミノ酸配列であることを特徴とする第一の構成に記載の免疫抑制剤である。
本発明の第三の構成は,Spがnyで表され,yが任意の天然アミノ酸,nが0から5の整数で表されることを特徴とする第一又は第二の構成に記載の免疫抑制剤である。
本発明の第四の構成は,前記化合物が,配列番号4からなるペプチドであることを特徴とする第一の構成に記載の免疫抑制剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により,カルシニューリン-NFATシグナリングをターゲットとした,より安全性の高い薬剤の提供が可能となった。
すなわち,本発明にかかる免疫抑制剤において用いられる化合物は,11R-VIVITやFK506と同様に免疫抑制作用を発揮するとともに,11R-VIVITよりも薬物としての有効濃度範囲が広く,また,FK506で見られるような耐糖能障害などが見られないことから,より安全性の高い薬剤として期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】RCANならびに本発明の化合物の配列との関係を示した図
【図2】Jurkat cellにおける,11R-RCANの細胞取込み実験の画像を示した図
【図3】RCAN-11RによるNFATの核転写阻害実験の画像を示した図
【図4】RCAN-11RによるNFATの核転写阻害実験の核における蛍光を比較した結果を示した図
【図5】NFATレポーター活性測定の結果を示した図
【図6】各化合物におけるIL-2産生を比較した結果を示した図
【図7】各RCAN-11R濃度における,IL-2 mRNA産生を比較した結果を示した図
【図8】RCAN-11Rの培養時間におけるIL-2 mRNA産生への影響を調べた結果を示した図
【図9】RCAN-11Rの膵島定着率の影響を調べた結果を示した図
【図10】IPGTTによりRCAN-11Rの血中糖濃度への影響を調べた結果を示した図
【図11】インシュリン産生を比較した結果を示した図
【図12】細胞生存率を比較した結果を示した図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の免疫抑制剤について説明を行う。

【0016】
本発明は,発明者により見出された下記知見に基づくものである。
1.カルシニューリン-NFATシグナリングを阻害する配列として,RCANの複数のサブタイプからなる配列番号1から3に表されるアミノ酸配列が発明者により見出されるとともに,これらの配列においては,共通するアミノ酸配列を有することに発明者は着目した。
2.配列番号3に基づくアミノ酸配列に,複数のアルギニン残基を導入した配列番号4に示す化合物(以下,「RCAN-11R」)が,下記の効果を有することを実験的に明らかにした。
(1) RCAN-11Rは,細胞内に取り込まれ,NFATの核内移行を阻害するとともに,NFATレポーター活性を抑制することにより,カルシニューリン-NFATシグナリングを阻害する。
(2) 加えて,RCAN-11Rは,mRNAレベルにおいて,IL-2産生を抑制する。
(3) これらのメカニズムにより,RCAN-11Rは,免疫抑制作用を発揮する。
(4) 加えて,RCAN-11Rは,11R-VIVITが細胞毒性を発揮する濃度において細胞毒性を発揮せず,また,FK506にみられるような耐糖能障害を引き起こさない。

【0017】
本発明における免疫抑制剤は,下記式の化合物を有効成分とする。

(式) X1-Sp-mR

式中,X1は,KYELHAxTxxTPSVVVHVCxSで表されるアミノ酸配列であり,アミノ酸配列中,xは任意の天然アミノ酸を,Spはスペーサーを,Rはアルギニンを,mは9から13の整数を表す。また,mについて,最も好ましくは11の整数とすることができる。

【0018】
上記式は,カルシニューリン-NFATシグナリングを阻害する配列として機能するX1,細胞透過性を高めるための配列として機能するmR,これらをつなぐリンカー化合物として機能するSpからなるものである。また,リンカーを介さず(Spをゼロの化合物とみなして),X1とmRが直接結合した形であってもよい。
加えて,X1,Sp,mRは,これらそれぞれの役割を果たす限り特に限定する必要はなく,種々の結合様式をとることができる。すなわち,化合物全体としてX1を,N末端ないしC末端,いずれの様式として構成してもよい。

【0019】
本発明において,「前記式からなる化合物を有効成分とする」とは,薬剤の有効成分が前記式からなる化合物である場合のみに限定されるものではない。すなわち,本発明の趣旨に鑑み,代謝による分解等により,体内において,前記式からなる化合物に変換され薬効を発揮する,いわゆるDDS化された場合を含むものである。

【0020】
X1は,KYELHAxTxxTPSVVVHVCxSで表されるアミノ酸配列であり,カルシニューリン-NFATシグナリングを阻害する複数のRCANサブタイプから,発明者が導き出したものである。また,アミノ酸配列中,xは,任意の天然アミノ酸から選択されるものである。
本発明において,xを所定のアミノ酸とし,X1を,配列番号1から3に示されるアミノ酸配列とすることが好ましい。これにより,化合物が,カルシニューリン-NFATシグナリングを阻害するRCAN1からRCAN3の配列の一部を含むこととなり,より確実な免疫抑制効果の発揮が期待できる。

【0021】
Spは,X1とmRをつなぐリンカーとしての役割を果たすものであり,かかる機能を果たす限り特に限定する必要はなく,種々の構成とすることができる。
すなわち,化合物全体としてカルシニューリン-NFATシグナリング阻害や細胞透過性を損なわないよう,疎水性や化合物自体の大きさを考慮して設計すればよい。このようなリンカー化合物として,メチレン鎖などの低分子化合物やアミノ酸化合物などが挙げられる。

【0022】
本発明において,Spがnyで表され,yが任意の天然アミノ酸,nが0から5の整数で表されることが好ましい。これにより,化合物全体をペプチド化合物として効率よく製造することが可能となり,本発明の化合物の性能ないし取扱性を向上させる効果を有する。また,nについては,化合物全体としての大きさを考慮して,より好ましくは0から3,さらに好ましくは0又は1の整数とすることができる。

【0023】
本発明においてmRは,細胞透過性を高めるため配列として機能するものであり,かかる機能を果たす限り特に限定する必要はない。すなわち,X1やSpを含めた化合物全体の構造を勘案しながら,mについて9から13の任意の整数を選択すればよい。
【実施例】
【0024】
<<実験1,ペプチドの合成>>
1.下記に示される各ペプチドについて,ペプチド合成装置(BIOSYNTHESIS,Lewisville社製)により合成を行った。なお,各ペプチドにおけるRCANとの関係については,図1に示す。
配列番号4(RCAN-11R):KYELHAATDTTPSVVVHVCESGGRRRRRRRRRRR
配列番号5(scRCAN-11R):SAVTHKLESVDPATVYCETHVGGRRRRRRRRRRR
配列番号6(11R-VIVIT):RRRRRRRRRRRGGMAGPHPVIVITGPHEE
2.各ペプチドについては,FITCをコンジュゲートすることより,蛍光標識したものを合わせて合成した。
3.合成した各ペプチドについては,HPLCにより精製した。精製後の各ペプチドについて,アミノ酸組成分析ならびにMassにより,95%以上の純度であることを確認し,以降の検討に用いた。
【実施例】
【0025】
<<実験2,RCAN-11Rの細胞への取込確認>>
1.Jurkat cellを,FITCで標識したRCAN-11R,10μMを含む培地中で培養を行った。
2.結果を図2に示す。Jurkat cellから,FITCの蛍光とみられる緑色の発色が確認された。
3.これより,RCAN-11Rが,細胞内に取り込まれていることが確認された。
【実施例】
【0026】
<<実験3,RCAN-11RによるNFATの核転写阻害>>
1.GFP-NFAT-1プラスミドを移植したHEK293細胞を,それぞれ,1μM FK506,10μM RCAN-11RもしくはscRCAN-11Rの存在下,500nM ionomycinを含む培地で培養を行った。
2.結果を図3,図4に示す。
(1) コントロールで示される通り,通常,GFP-NFAT-1のシグナルは,細胞におけるサイトゾル中に広く拡散し,核では欠損像として現れる(図3,control 0min)。
(2) ionomycinにより20分の培養後,コントロールもしくはscRCAN-11Rでは,HEK293細胞の核において蛍光が増加していた(図3,control 20min,scRCAN-11R 20min)。
(3) これに対しRCAN-11Rでは,核での蛍光はほとんど見られず,細胞質から核へのGFP-NFAT-1の移動が抑制されていることが分かった。(図3,図4,RCAN-11R)。
(4) また,FK506においても,核での蛍光はほとんど見られず,細胞質から核へのGFP-NFAT-1の移動が強く抑制されていることが分かった。(図3,図4,FK506)。
3.これらより,RCAN-11Rは,FK506と同様に,NFATの核内移行を抑制することが分かった。
【実施例】
【0027】
<<実験4,NFATレポーター活性測定>>
1.pNFAT-SEAP 5μgを,Jurkat cellにエレクトロポレートし,これを,各ペプチドもしくはFK506存在下,PMAおよびionomycinを含む培地で培養を行った。
2.結果を図5に示す。
(1) PMAならびにionomycinによる刺激により,NFATレポーター活性は向上していた(図5,Medium)。
(2) FK506では,NFATレポーター活性は有意に抑制されていた(図5,FK506)。
(3) 同様に,RCAN-11Rでも,有意にレポーター活性は抑制されていた(図5,RCAN-11R)。
(4) 一方,scRCAN-11Rでは,NFATレポーター活性は抑制されておらず,刺激されたもの(Medium)との有意な差はなかった。
3.これらの結果から,RCAN-11Rは,FK506と同様,NFATレポーターの活性を抑制することが分かった。
【実施例】
【0028】
<<実験5,各化合物におけるIL-2産生の比較>>
1.Jurkat cellを,各ペプチドもしくはFK506存在下,200nM PMAおよび4μM ionomycinを含む培地で,12時間,培養を行った。培養後,培地中に含まれるIL-2を,ELISA kitにより,測定した。
2.結果を図6に示す。
(1) PMAならびにionomycinによる刺激により,IL-2産生は上昇していた(図6,Medium)。
(2) FK506では,IL-2産生が優位に抑制されていた(図6,FK506)。
(3) RCAN-11Rは,FK506ほどではないものの,有意にIL-2産生は抑制されていた(図6,RCAN-11R)。
(4) 一方,scRCAN-11Rでは,IL-2産生は抑制されておらず,刺激されたもの(Medium)との有意な差はなかった。
3.これらの結果から,RCAN-11Rは,FK506ほどではないものの,IL-2産生を抑制することが分かった。
【実施例】
【0029】
<<実験6,RCAN-11Rの各濃度におけるIL-2 mRNA産生の比較>>
1.Jurkat cellを,FK506もしくは各濃度でのRCAN-11R存在下,1時間培養後,さらにPMAおよびionomycinを加え,12時間,培養を行った。培養後,IL-2 mRNAを,RT-PCRにより,測定した。
2.結果を図7に示す。
(1) FK506により,IL-2 mRNA産生が抑制されていた(図7,FK506)。
(3) 一方,RCAN-11Rは,0.1μMでは抑制効果は見られなかったものの,濃度を増すごとにその抑制効果が上がっていった(図7,RCAN-11R)。
3.これらの結果から,RCAN-11Rは,濃度依存的に,IL-2 mRNAの産生を抑制することが分かった。また,実験5で見られたIL-2産生抑制は,mRNAレベルでの産生抑制により起こっていることが示された。
【実施例】
【0030】
<<実験7,RCAN-11Rの各時間におけるIL-2 mRNA産生の比較>>
1.Jurkat cellを,FK506で1時間,もしくは20μM RCAN-11Rで各時間培養後,さらにPMAおよびionomycinを加え,12時間,培養を行った。培養後,IL-2 mRNAを,RT-PCRにより,測定した。
2.結果を図8に示す。
(1) FK506により,実験6と同様,IL-2 mRNA産生が抑制されていた(図8,FK506)。
(2) 一方,RCAN-11Rは,培養時間が経過するごとにIL-2 mRNA産生抑制が徐々に減少していた(図8,RCAN-11R)。
3.これらの結果から,RCAN-11Rは,その効果を徐々に失っていくことが分かった。
【実施例】
【0031】
<<実験7,RCAN-11Rの膵島定着率への影響>>
1.C57BL/6マウスをドナー,BALB/cマウスにレシピエントとして実験を行った。なお,BALB/cマウスについては,STZの腹腔内投与により,糖尿病モデルとしたものを用いた。
2.C57BL/6マウスの膵島を,BALB/cマウスの左腎皮膜下に移植を行った。
3.Kaplan-Meier log-rank testに基づき,膵島生着率の評価を行った結果を図9に示す。
(1) scRCAN-11Rでは,11日目から膵島拒絶される個体が発生し,20日後にはすべての個体において膵島が拒絶された。
(2) 一方,RCAN-11Rでは,25日に初めて膵島が拒絶される個体が発生し,scRCAN-11Rと比較して,明らかな移植膵島の延命効果が確認された。
4.これらの結果から,RCAN-11Rは,インビボにおいて免疫抑制効果を発揮していることが示された。
【実施例】
【0032】
5.また,IPGTT(Intraperitoneal glucose tolerance testing)の結果を図10に示す。すなわち,移植10日後において,腹腔内にグルコースを投与(2.0g/kg body weight)し,血中におけるグルコース濃度を経時的に測定した。
(1) scRCAN-11Rでは,投与後,血中グルコース濃度が上昇し,その後,なだらかに減少していった。
(2) 一方,RCAN-11Rでは,投与後,血中グルコース濃度は上昇するものの,その後,比較的速やかに減少していった。その減少度合いについては,scRCAN-11Rと比較して,有意な減少であった。
6.この結果から,移植10日目においてRCAN-11Rでは,多くの膵島が生着していることが確認された。
【実施例】
【0033】
<<実験8,インシュリン産生比較>>
1.βTC6細胞を,50000個/ウェルで96穴プレートに加え,FK506もしくはRCAN-11R存在下,培養を行った。加えて,FK506ならびにRCAN-11Rを加えていないものについて,同様の操作を行い,コントロールサンプルとした。
2.培地については,24時間毎に交換を行った。96時間後の培地交換から1時間後,培地をサンプルとして採取し,インシュリンの測定を行った。
3.結果を図11に示す。
(1) コントロールと比較して,FK506では,濃度依存的に,単位DNAあたりのインシュリン量が低下していた。これについては,従来知られているFK506の耐糖能障害を示す結果であった。
(2) 一方,RCAN-11Rでは,全ての濃度においてコントロールと変わらなかった。
4.これらの結果から,RCAN-11Rは,FK506で見られるような耐糖能障害を引き起こさないことが示された。
【実施例】
【0034】
<<実験9,細胞生存率の比較>>
1.RCAN-11Rもしくは11R-VIVITで処置した後のβTC6細胞について,24時間後の生存率の評価を行った。
2.結果を図12に示す。
(1) コントロールと比較して,11R-VIVITでは,濃度依存的に,細胞生存率が低下していた。
(2) 一方,RCAN-11Rでは,全ての濃度においてコントロールと変わらなかった。
3.これらの結果から,RCAN-11Rは,11R-VIVITで見られるような細胞障害を起こさない可能性が示された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
11