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明細書 :強心薬及び強心薬のスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-193317 (P2018-193317A)
公開日 平成30年12月6日(2018.12.6)
発明の名称または考案の名称 強心薬及び強心薬のスクリーニング方法
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
A61P   9/04        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
FI A61K 45/00
A61P 9/04
G01N 33/15 Z
G01N 33/50 Z
C12Q 1/02
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2017-097531 (P2017-097531)
出願日 平成29年5月16日(2017.5.16)
発明者または考案者 【氏名】武谷 立
【氏名】松山 翔
出願人 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4B063
4C084
Fターム 2G045AA40
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ61
4B063QR72
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA372
要約 【課題】新規の作用機序で心臓の収縮力を高めることができる強心薬及び強心薬のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】強心薬は、フォルミンタンパク質阻害剤を含有する。フォルミンタンパク質阻害剤は、フォルミンホモロジー2ドメインを阻害する、こととしてもよい。強心薬のスクリーニング方法は、フォルミンタンパク質に対する阻害活性を評価する評価ステップを含む。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
フォルミンタンパク質阻害剤を含有する、
強心薬。
【請求項2】
前記フォルミンタンパク質阻害剤は、
フォルミンホモロジー2ドメインを阻害する、
請求項1に記載の強心薬。
【請求項3】
フォルミンタンパク質に対する阻害活性を評価する評価ステップを含む、
強心薬のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、強心薬及び強心薬のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強心薬は、心臓に直接作用し、心臓の収縮力を改善する。強心薬は、心不全、特に心不全の急性期の症状に対して使用される。従来の強心剤は、細胞内のカルシウム(Ca2+)濃度又はcAMP(cyclic adenosine monophosphate)濃度を増加させることで、心筋の収縮装置であるサルコメアの収縮性を高める。強心薬としては、カテコラミン、PDE(phosphodiesterase)阻害剤及びジギタリス等が知られている。
【0003】
しかし、カテコラミン及びPDE阻害剤に関しては、致死性の心室性不整脈の発生頻度を上げる等の副作用が報告されている。また、ジギタリスについては、ジギタリス中毒という重篤な副作用が知られている。さらに、これら強心薬は、治療域が狭く、薬物相互作用が多い等の問題がある。
【0004】
近年、サルコメアに直接作用して心臓の収縮性を高める薬剤が開発されてきている。例えば、非特許文献1には、分子モーターとして機能する心筋ミオシンを活性化させるミオシン活性化剤omecamtiv mecarbilが心機能を改善することが示されている。当該ミオシン活性化剤は、臨床試験による評価が進められており、心不全に対する新たな治療薬として期待されている。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Fady I. Malik、外33名、「Cardiac myosin activation: a potential therapeutic approach for systolic heart failure.」、Science、2011年、331(6023)、1439-1443
【非特許文献2】Kenichiro Taniguchi、外7名、「Mammalian formin fhod3 regulates actin assembly and sarcomere organization in striated muscles.」、THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY、2009年、284、29873-29881
【非特許文献3】Meikun Kan-o、外7名、「Mammalian formin Fhod3 plays an essential role in cardiogenesis by organizing myofibrillogenesis.」、2012年、Biology Open、1、889-896
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
米国における心不全の患者数は550万人に及ぶと推定されている。心不全の高い疾病率及び死亡率を抑制するために、新規治療薬が求められている。心不全治療における選択肢の多様性を確保する観点から、既存の強心薬及び上記非特許文献1に開示されたミオシン活性化剤とは異なる新しい作用機序に基づく、より優れた薬効プロファイルを示す治療薬が強く求められている。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、新規の作用機序で心臓の収縮力を高めることができる強心薬及び強心薬のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
心臓は、筋原線維の構成単位であるサルコメアの中で心筋ミオシンがアクチン繊維を牽引することで収縮する。非特許文献2及び非特許文献3に示されるように、アクチン繊維の形成と恒常性維持には、Fhod3(Formin homology 2 domain containing 3)等のフォルミンタンパク質と呼ばれるアクチン結合タンパク質が関与する。非特許文献2によれば、培養心筋細胞においてFhod3を欠失させると、サルコメアの形成が見られなくなることが示されている。
【0009】
本発明者は鋭意研究を重ね、摘出した心臓標本にフォルミンタンパク質阻害剤を投与すると、心拍数にほとんど影響せずに、投与直後から心臓の収縮力を増加することを見出した。この結果に基づいて、本発明者はフォルミンタンパク質によるアクチン繊維の恒常性維持機構に対する人為的制御が心臓の収縮力を高めるという強心薬の新規の作用機序を明確にし、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の第1の観点に係る強心薬は、
フォルミンタンパク質阻害剤を含有する。
【0011】
この場合、前記フォルミンタンパク質阻害剤は、
フォルミンホモロジー2ドメインを阻害する、
こととしてもよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る強心薬のスクリーニング方法は、
フォルミンタンパク質に対する阻害活性を評価する評価ステップを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新規の作用機序で心臓の収縮力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】薬物を投与したカエルの心臓の収縮張力及び心拍数を示す図である。(A)は溶媒を投与した心臓の収縮張力及び心拍数を示す。(B)は10μMのフォルミンタンパク質阻害剤を投与した心臓の収縮張力及び心拍数を示す。(C)は33μMのフォルミンタンパク質阻害剤を投与した心臓の収縮張力及び心拍数を示す。(D)は100μMのフォルミンタンパク質阻害剤を投与した心臓の収縮張力及び心拍数を示す。(E)は0.1μMのイソプレナリンを投与した心臓の収縮張力及び心拍数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る実施の形態について説明する。なお、本発明は下記の実施の形態によって限定されるものではない。

【0016】
(実施の形態)
本実施の形態に係る強心薬は、フォルミンタンパク質阻害剤を含有する。フォルミンタンパク質は、細胞質分裂及び細胞極性等に必要なアクチン線維を供給するアクチン重合促進因子である。フォルミンタンパク質としては、上述のFhod3に加え、DAAM1(Dishevelled-associated activator of morphogenesis-1)、DAAM2(Dishevelled-associated activator of morphogenesis-2)、mDia2、FMNL1(Formin-like protein 1)及びFMNL2(Formin-like protein 2)等が挙げられる。

【0017】
フォルミンタンパク質は、C末端側にフォルミンホモロジー1(FH1)ドメイン-フォルミンホモロジー2(FH2)ドメインユニット構造というファミリー独特のドメイン構造を有する。FH1ドメインは、アクチン単量体結合タンパク質であるプロフィリンに結合するポリプロリンモチーフを有している。一方、FH2ドメインは、リング状のホモダイマーを形成し、単量体アクチンから線維核が形成される重合核形成を促進する。FH2ドメインは、アクチン線維の重合端に連続的に結合しながら、アクチン線維を伸ばす。

【0018】
フォルミンタンパク質阻害剤は、フォルミンタンパク質の機能を阻害するものであれば特に限定されない。フォルミンタンパク質阻害剤は、例えば、フォルミンタンパク質に結合してフォルミンタンパク質の活性を抑制する化合物、抗体、タンパク質、ペプチド及び核酸等である。フォルミンタンパク質阻害剤は、フォルミンタンパク質をコードする遺伝子の発現抑制を介して、フォルミンタンパク質の機能を阻害してもよい。

【0019】
本実施の形態に係る強心薬のスクリーニング方法は、フォルミンタンパク質に対する阻害活性を評価する評価ステップを含む。評価ステップでは、例えば、被験物質がフォルミンタンパク質の機能に対する阻害活性を有するか否かを公知の方法でスクリーニングすればよい。フォルミンタンパク質阻害剤のスクリーニングには、例えば、ピレン蛍光アッセイが用いられる。ピレン蛍光アッセイでは、ATP及びMg存在下で、ピレンで標識した球状アクチン(G-アクチン)、マウスフォルミンmDia1(FH1FH2)又はmDia2(FH1FH2)、マウスプロフィリンMmPRF1及び被験物質を含む試料を重合反応させる。G-アクチンが重合するとピレンの蛍光強度が増加するため、被験物質がフォルミンタンパク質に対する阻害活性に応じて、G-アクチンの重合が阻害され、蛍光強度が低下する。このため、当該アッセイによれば蛍光強度を指標にフォルミンタンパク質阻害剤を同定できる。

【0020】
評価ステップでは、被験物質を含まないコントロール試料として、例えば溶媒のみの試料で重合反応を行い、蛍光強度を測定してもよい。コントロール試料を用いる場合、上記スクリーニング方法は、評価ステップに続いて、比較ステップを含む。比較ステップでは、被験物質を含む試料の蛍光強度とコントロール試料における蛍光強度とを比較する。こうすることで、被験物質を含む試料の蛍光強度がコントロール試料における蛍光強度よりも低い場合に、該被験物質をフォルミンタンパク質阻害剤とすることができる。

【0021】
フォルミンタンパク質阻害剤は、Fhod3、DAAM1、DAAM2、mDia2、FMNL1及びFMNL2等の少なくとも1種のタンパク質を標的とするものであってもよい。この場合、スクリーニング方法における評価ステップでは、例えば、Fhod3、DAAM1、DAAM2、mDia2、FMNL1又はFMNL2等を標的とするフォルミンタンパク質阻害剤をスクリーニングすればよい。当該スクリーニングには、好適には、転写因子である血清応答因子(Serum Response Factor、SRF)に発現制御されるルシフェラーゼレポーターアッセイが用いられる。SRF依存性の転写活性は、アクチンの重合に相関する。主にNIH3T3細胞等の培養細胞において、SRFコアクチベータであるMAL/MRTF-Aは静止状態ではG-アクチンと結合しているが、アクチン重合の際に解離してSRFに直接相互作用する。実際、フォルミンタンパク質によって誘導されたアクチン重合によって、SRF依存性の転写が活性化する。

【0022】
SRF依存性の転写活性を定量するために、SRFが結合する血清応答要素(Serum Response Element、SRE)をルシフェラーゼ遺伝子の上流に連結したレポーターベクターとともに、Fhod3、DAAM1、DAAM2、mDia2、FMNL1又はFMNL2等のフォルミンタンパク質発現ベクターを導入した培養細胞を被験物質存在下で培養すればよい。なお、ベクターの導入効率に関して標準化するために、上記ルシフェラーゼ遺伝子と異なるルシフェラーゼ遺伝子を含むベクターをさらに培養細胞に導入してもよい。培養後、培養上清におけるルシフェラーゼ活性を、公知のキット等を用いてルミノメーターで決定すればよい。

【0023】
ルシフェラーゼレポーターアッセイでは、被験物質が上記のフォルミンタンパク質に対する阻害活性を示す場合、G-アクチンの重合が阻害され、SRF依存性の転写活性が低下し、ルシフェラーゼの発光反応による発光強度が低下する。発光強度の比較のために、評価ステップでは、上記の培養細胞を、コントロール試料を含む培養液で培養してもよい。コントロール試料を用いる場合、比較ステップにおいて、コントロール試料を用いた培養で得られた培養上清と、被験物質存在下での培養で得られた培養上清との間で、ルシフェラーゼ活性を比較する。こうすることで、コントロール試料に係る発光強度よりも低いルシフェラーゼ活性の試料に含まれる被験物質をフォルミンタンパク質阻害剤とすることができる。

【0024】
好ましくは、フォルミンタンパク質阻害剤は、フォルミンホモロジー2ドメインを阻害する。具体的には、フォルミンホモロジー2ドメインを阻害するフォルミンタンパク質阻害剤としては、例えば、SMIFH2(Small Molecule Inhibitor of Formin Homology 2 domain、1-(3-ブロモフェニル)-5-(2-フラニルメチレン)ジヒドロ-2-チオキソ-4,6(1H,5H)-ピリミジンジオン)が挙げられる。

【0025】
心臓の収縮力は、心臓の収縮張力として評価してもよい。心臓の収縮張力は、例えば、灌流装置を用いて灌流したカエルの心臓で評価できる。灌流方法としては、八木式灌流法及び洞房標本灌流法等が挙げられる。フォルミンタンパク質阻害剤の心臓の収縮張力に及ぼす影響は、灌流したカエルの心臓に、灌流液を介してフォルミンタンパク質阻害剤を投与することで評価すればよい。収縮張力は、心尖部にセルフィンを介してトランスデューサを接続し、増幅器を介して記録できる。なお、心臓の収縮張力の評価には、げっ歯類等の心臓を用いてもよい。

【0026】
本実施の形態に係る強心薬は、フォルミンタンパク質阻害剤を有効成分として含むように既知の方法で製造される。該強心薬は、有効成分として0.000001~99.9重量%、0.00001~99.8重量%、0.0001~99.7重量%、0.001~99.6重量%、0.01~99.5重量%、0.1~99重量%、0.5~60重量%、1~50重量%又は1~20重量%のフォルミンタンパク質阻害剤を含む。

【0027】
本実施の形態に係る強心薬の投与方法は、特に限定されないが、注射、経鼻、経皮、経肺及び経口等で投与される。投与方法としては、静脈内投与、動脈内投与又は経口投与が特に好ましい。強心薬の剤形は、投与方法に応じて適宜選択される。強心薬の剤形としては、注射剤及び経口剤が好ましい。その他、該強心薬の剤形は、直腸坐剤、膣坐剤、経鼻吸収剤、経皮吸収剤、経肺吸収剤及び口腔内吸収剤等であってもよい。当該強心薬は、薬理的に許容される担体と配合された合剤であってもよい。薬理的に許容される担体は、各種の有機担体物質又は無機担体物質である。薬理的に許容される担体は、例えば、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、又は液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等として当該強心薬に配合される。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤及び甘味剤等の添加物を用いることもできる。

【0028】
賦形剤は、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、デンプン、結晶セルロース及び軽質無水ケイ酸等である。滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク及びコロイドシリカ等である。結合剤は、例えば、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドン等である。崩壊剤は、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム及びカルボキシメチルスターチナトリウム等である。

【0029】
溶剤は、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール及びマクロゴール等である。溶解補助剤は、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウム等である。懸濁化剤は、界面活性剤及び親水性高分子等であって、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース等である。

【0030】
等張化剤は、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン及びD-マンニトール等である。緩衝剤は、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びクエン酸塩の緩衝液等である。無痛化剤は、例えば、ベンジルアルコール等である。防腐剤は、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ジヒドロ酢酸及びソルビン酸等である。抗酸化剤は、例えば、亜硫酸塩及びアスコルビン酸等である。

【0031】
本実施の形態に係る強心薬の投与量は、患者の性別、年齢、体重及び症状等によって適宜決定される。当該強心薬は、フォルミンタンパク質阻害剤が治療上有効量となるように投与される。有効量とは、所望の結果を得るために必要なフォルミンタンパク質阻害剤の量であり、治療又は処置する状態の進行の遅延、阻害、予防、逆転又は治癒をもたらすのに必要な量である。当該強心薬の1日当たりの投与量は、典型的には、0.01~1000mg/kg、好ましくは0.1~200mg/kg、より好ましくは0.2~20mg/kg又は0.05~1mg/kgであり、1日に1回、又はそれ以上に分割して投与することができる。当該強心薬は、毎日、隔日、1週間に1回、隔週及び1ヶ月に1回等の様々な投与頻度で投与されてもよい。なお、必要に応じて、当該強心薬は、上記の範囲外の量で使用されてもよい。

【0032】
本実施の形態に係る強心薬は、下記実施例に示すように、心臓の収縮張力を増加させる。このため、急性心不全及び慢性心不全の治療又は予防に使用されるのが好ましい。好適には、該強心薬は、特に心不全の急性期の症状の緩和又は治療に使用される。

【0033】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る強心薬は、新規の作用機序で心臓の収縮力を高めることができる。また、本実施の形態に係る強心薬のスクリーニング方法によれば、新規の作用機序で心臓の収縮力を高める強心薬を創出できる。

【0034】
また、別の実施の形態では、心不全の患者に、フォルミンタンパク質阻害剤を投与する投与ステップを含む、心不全の治療又は予防方法が提供される。また、他の実施の形態では、フォルミンタンパク質阻害剤が心不全の治療又は予防に使用される。
【実施例】
【0035】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
切り出したウシガエルの心臓を、八木式灌流装置(KN-363、夏目製作所製)に装着し、リンゲル液で灌流した。心尖部にセルフィンを介してトランスデューサであるFD-ピックアップ(TB-612T、日本光電社製)を接続し、増幅器(AD-611J、日本光電社製)を介してデータ取得ソフトウェア(LabChart、ADインスツルメンツ社製)で心臓の収縮張力を測定した。
【実施例】
【0037】
汎フォルミン阻害剤であるSMIFH2(カタログ番号:4401、Toris社製)のDMSO(ジメチルスルホキシド)溶液又はアドレナリンβ受容体作動薬であるイソプレナリン(l-イソプレナリン塩酸塩注射剤、興和社製)を、リンゲル液で所定の濃度に希釈し、上記のリンゲル液を保持する液溜めに添加した。
【実施例】
【0038】
(結果)
図1(A)に示すように、SMIFH2に対するコントロール試験としてDMSOを投与しても、収縮張力には影響せず、心拍数にはほとんど影響しないことを確認した。図1(B)~(D)は、それぞれ10μM、33μM及び100μMのSMIFH2を投与した心臓の収縮張力の経時変化及び心拍数の変化を示す。SMIFH2を投与後、心臓の収縮張力が増加した。SMIFH2は、心拍数にはほとんど影響しなかった。図1(E)は、0.1μMのイソプレナリンを投与した心臓の収縮張力の経時変化及び心拍数の変化を示す。イソプレナリンを投与後、心臓の収縮張力が増加した。イソプレナリンの投与によって、心拍数が増大した。
【実施例】
【0039】
以上の結果より、フォルミンタンパク質阻害剤は、心臓の収縮張力を増加させることが明らかになった。その際、フォルミンタンパク質阻害剤は、心拍数にほとんど影響を与えないことが示された。
【実施例】
【0040】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等な発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、心不全の治療又は予防に好適である。
図面
【図1】
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