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明細書 :節足動物の飼育容器及び節足動物の発育同調方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-157797 (P2018-157797A)
公開日 平成30年10月11日(2018.10.11)
発明の名称または考案の名称 節足動物の飼育容器及び節足動物の発育同調方法
国際特許分類 A01K  67/033       (2006.01)
FI A01K 67/033 502
請求項の数または発明の数 26
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2017-057691 (P2017-057691)
出願日 平成29年3月23日(2017.3.23)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 研究集会名:第25回国際昆虫学会議(XXV International Congress of Entomology 2016) 開催日:2016年9月25~30日 (公開日:2016年9月30日)
発明者または考案者 【氏名】鈴木 丈詞
出願人 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査請求 未請求
要約 【課題】ハダニ類を含む節足動物において孵化や脱皮を同調させる飼育、発育方法の提供。
【解決手段】雌の節足動物を基材上に接種し、産卵させる工程と、基材上の卵を水に浸漬した状態を維持する工程と、基材上から水を取り除き、基材上にて孵化直前に同調した卵を孵化させる工程とを有する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
雌の節足動物を基材上に接種し、産卵させる工程と、
基材上の卵を水に浸漬した状態を維持する工程と、
基材上から水を取り除き、基材上にて孵化直前に同調した卵を孵化させる工程と
を有する、節足動物の発育同調方法。
【請求項2】
上記基材は餌を備えない基材であることを特徴とする請求項1記載の節足動物の発育同調方法。
【請求項3】
基材上に保湿部材で囲った領域を形成し、当該領域に雌の節足動物を接種することを特徴とする請求項1記載の節足動物の発育同調方法。
【請求項4】
基材上の卵を水に浸漬する期間を3~4日間とすることを特徴とする請求項1記載の節足動物の発育同調方法。
【請求項5】
基材上の卵を水に浸漬する際の気温を25~26℃とすることを特徴とする請求項1記載の節足動物の発育同調方法。
【請求項6】
孵化直前に同調した卵を孵化させる際には、基材上から水を取り除いた後、基材周囲の相対湿度を低下させることを特徴とする請求項1記載の節足動物の発育同調方法。
【請求項7】
孵化直前に同調した卵を孵化させる際には、基材上の卵のある領域を保水部材で囲うことを特徴とする請求項1記載の節足動物の発育同調方法。
【請求項8】
上記節足動物はハダニ科に属することを特徴とする請求項1記載の節足動物の発育同調方法。
【請求項9】
成虫の前段階の静止期にある節足動物を基材上に接種し、25℃未満の低温且つ高湿度条件下に暴露する工程と、
その後、脱皮直前に同調した節足動物を、上記工程の温度条件より高温且つ低湿度条件下に暴露し、脱皮を促進する工程と
を有する、節足動物の発育同調方法。
【請求項10】
上記基材は餌を備えない基材であることを特徴とする請求項9記載の節足動物の発育同調方法。
【請求項11】
基材上に保湿部材で囲った領域を形成し、当該領域に成虫の前段階の静止期にある節足動物を接種することを特徴とする請求項9記載の節足動物の発育同調方法。
【請求項12】
基材上の節足動物を低温且つ高湿度条件に暴露する期間を1~2日間とすることを特徴とする請求項9記載の節足動物の発育同調方法。
【請求項13】
25℃未満の低温が18℃であり、高湿度条件が相対湿度100%であることを特徴とする請求項9記載の節足動物の発育同調方法。
【請求項14】
脱皮直前に同調した節足動物を脱皮させる際には、当該基材周囲の相対湿度を低下させ、気温を25℃以上にすることを特徴とする請求項9記載の節足動物の発育同調方法。
【請求項15】
上記節足動物はハダニ科に属することを特徴とする請求項9記載の節足動物の発育同調方法。
【請求項16】
節足動物の卵又は成虫の前段階の静止期にある節足動物を接種する基材を備え、水又は保水部材を収容できる容器と、
上記容器に対して着脱自在に取り付けることができる蓋部材とを備え、
上記基材に接種された上記卵を孵化直前に同調でき、上記基材に接種された成虫の前段階の静止期にある上記節足動物を脱皮直前に同調できる、節足動物用同調容器。
【請求項17】
上記蓋部材は、上記容器に取り付けられた状態において上記容器内を気密とすることを特徴とする請求項16記載の節足動物用同調容器。
【請求項18】
上記節足動物はハダニ科に属することを特徴とする請求項16記載の節足動物用同調容器。
【請求項19】
請求項16~18いずれか一項記載の節足動物用同調容器と、
節足動物の卵又は成虫の前段階の静止期にある節足動物と
を含む節足動物用同調キット。
【請求項20】
節足動物の卵を接種する餌と水又は保水部材とを収容できる第2の容器と、
上記第2の容器に対して着脱自在に取り付けることができる蓋部材とを備える節足動物用育成容器を更に備えることを特徴とする請求項19記載の節足動物用同調キット。
【請求項21】
上記蓋部材は、換気部を有してなり、上記第2の容器に取り付けられた状態で上記換気部を介して上記第2の容器部内を換気することを特徴とする請求項20記載の節足動物用同調キット。
【請求項22】
上記節足動物の餌を更に備えることを特徴とする請求項20記載の節足動物用同調キット。
【請求項23】
雌の節足動物を基材上に接種し、産卵させる工程と、
基材上の卵を水に浸漬した状態を維持する工程と、
基材上から水を取り除き、基材上にて孵化直前に同調した卵を供試物質の存在下に孵化させる工程と、
上記孵化させる工程において上記供試物質による孵化への影響を判定する工程とを含む、節足動物に対する発育制御関連物質のスクリーニング方法。
【請求項24】
雌の節足動物を基材上に接種し、産卵させる工程と、
基材上の卵を水に浸漬した状態を維持する工程と、
基材上から水を取り除き、基材上にて孵化直前に同調した卵を孵化させる工程と、
供試物質の存在下に孵化した幼虫を育成する工程と、
上記育成する工程において上記供試物質による幼虫への影響を判定する工程とを含む、節足動物に対する発育制御関連物質のスクリーニング方法。
【請求項25】
成虫の前段階の静止期にある節足動物を基材上に接種し、25℃未満の低温且つ高湿度条件下に暴露する工程と、
その後、脱皮直前に同調した節足動物を、上記工程の温度条件より高温且つ低湿度条件下に暴露し、供試物質の存在下に脱皮を促進する工程と、
上記脱皮を促進する工程において上記供試物質による脱皮への影響を判定する工程とを含む、節足動物に対する発育制御関連物質のスクリーニング方法。
【請求項26】
成虫の前段階の静止期にある節足動物を基材上に接種し、25℃未満の低温且つ高湿度条件下に暴露する工程と、
その後、脱皮直前に同調した節足動物を、上記工程の温度条件より高温且つ低湿度条件下に暴露し、脱皮を促進する工程と、
供試物質の存在下に脱皮してなる成虫を育成する工程と、
上記育成する工程において上記供試物質による成虫への影響を判定する工程とを含む、節足動物に対する発育制御関連物質のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ハダニ等の節足動物を飼育するための飼育容器及び当該節足動物の発育同調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の生産現場(以下、生産現場)における主要害虫グループの1つがハダニ類(節足動物門鋏角亜門クモガタ綱ダニ目ケダニ亜目ハダニ科)である(非特許文献1)。ハダニ類の中でもナミハダニは、1100種以上の植物(内150種の重要農作物)に寄生する広食性害虫である(非特許文献2)。ナミハダニが抵抗性を示す農薬の有効成分数は、現時点で95種類が報告され、この数は昆虫も含めた害虫種の中で最も多い(非特許文献3)。そのため、ナミハダニの防除には、従来とは異なる作用機作を持つ農薬の開発が求められている。近年、ナミハダニの全ゲノム塩基配列が解読され(非特許文献4)、この情報を利用した新規の農薬開発が期待されている。他方、ナミハダニを含めたハダニ類の主要天敵であるカブリダニ類は、生物農薬として生産現場への導入が増えつつあり、より防除効果の高い天敵種の探索が求められている(非特許文献5)。
【0003】
また、ナミハダニのみならず、ハダニ科に属する他の節足動物(カンザワハダニ、リンゴハダニ及びミカンハダニ等)、ケダニ亜目に属する他の節足動物(ヒメハダニ科、フシダニ上科及びホコリダニ科等のダニ)、ダニ目に属する他の節足動物(コナダニ亜目等のダニ)についても、生産現場における有害な作用を持つものがある。これらについても、ナミハダニと同様に農薬の開発又は天敵種の探索が求められている。
【0004】
農薬の開発又は天敵種の探索では、それらの効果を検証するための生物検定は必須である。生物検定では、生物個体群に対して供試薬剤等を作用させ、その効果を検証する。このとき、生物検定では、均一な生理状態の個体からなる生物個体群(例えば、同一の齢及び発育段階)を使用することが好ましい。さらに、孵化や脱皮を標的とする供試薬剤の場合、孵化や脱皮を同調させて、その効果を検証することが好ましい。しかし、齢や発育段階を均一に揃えた個体群の準備や、孵化や脱皮の同調は非常に困難である。例えば、ハダニ類の場合、その発育段階(卵→幼虫→第1若虫→第2若虫→成虫)は1回の孵化、その後3回の脱皮を介して約1週間で移行する。したがって、ハダニ類については、特に均一な個体群の準備及び孵化や脱皮の同調が困難である。
【0005】
ここで、餌の植物の葉に付着したハダニ類の卵及び第2若虫後半(以下、第3静止期)の水への浸漬又は高湿度環境への暴露は、それぞれ孵化(非特許文献6)及び脱皮(非特許文献7)を抑制することが知られている。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】島野智之他1名編、「ダニのはなし」、2016年、株式会社朝倉書店、180ページ
【非特許文献2】Migeon, A., and Dorkeld, F. (2016) Spider Mites Web: a comprehensive database for the Tetranychidae. http://www.montpellier.inra.fr/CBGP/spmweb/
【非特許文献3】Whalon, M. E., Mota-Sanchez, D., Hollingworth, R. M., and Duynslager, L. (2016). Arthropod pesticide resistance database. http://www.pesticideresistance.org
【非特許文献4】Grbic, M., Van Leeuwen, T., Clark, R.M., Rombauts, S., Rouze, P., Grbic, V., et al. (2011). The genome of Tetranychus urticae reveals herbivorous pest adaptations. Nature 479(7374), 487-492. DOI: 10.1038/nature10640.
【非特許文献5】江原昭三他1名編、「原色植物ダニ検索図鑑」、2009年、全国農村教育協会、349ページ
【非特許文献6】Ubara, M., and Osakabe, M. (2015). Suspension of egg hatching caused by high humidity and submergence in spider mites. Environmental Entomology 44(4), 1210-1219. DOI: 10.1093/ee/nvv080.
【非特許文献7】Ikegami, Y., Yano, S., Takabayashi, J., and Takafuji, A. (2000). Function of quiescence of Tetranychus kanzawai (Acari: Tetranychidae), as a defense mechanism against rain. Applied Entomology and Zoology 35(3), 339-343. DOI: 10.1303/aez.2000.339.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ハダニ類を含む節足動物について、孵化や脱皮を同調させて、均一な個体群を準備する技術は知られていなかった。そこで、本発明は、このような実情に鑑み、ハダニ類を含む節足動物について、孵化や脱皮を同調できる節足動物の飼育容器及び節足動物の発育同調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、卵の水への浸漬又は高湿度環境への暴露後、低湿度環境に暴露することで、孵化を同調させることができること、更に、成虫の前段階の静止期にある個体の低温高湿度環境への暴露後、高温低湿度環境に暴露することで脱皮を同調させることができることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下を包含する。
(1)雌の節足動物を基材上に接種し、産卵させる工程と、
基材上の卵を水に浸漬した状態を維持する工程と、
基材上から水を取り除き、基材上にて孵化直前に同調した卵を孵化させる工程と
を有する、節足動物の発育同調方法。
(2)上記基材は餌を備えない基材であることを特徴とする(1)記載の節足動物の発育同調方法。
(3)基材上に保湿部材で囲った領域を形成し、当該領域に雌の節足動物を接種することを特徴とする(1)記載の節足動物の発育同調方法。
(4)基材上の卵を水に浸漬する期間を3~4日間とすることを特徴とする(1)記載の節足動物の発育同調方法。
(5)基材上の卵を水に浸漬する際の気温を25~26℃とすることを特徴とする(1)記載の節足動物の発育同調方法。
(6)孵化直前に同調した卵を孵化させる際には、基材上から水を取り除いた後、基材周囲の相対湿度を低下させることを特徴とする(1)記載の節足動物の発育同調方法。
(7)孵化直前に同調した卵を孵化させる際には、基材上の卵のある領域を保水部材で囲うことを特徴とする(1)記載の節足動物の発育同調方法。
(8)上記節足動物はハダニ科に属することを特徴とする(1)記載の節足動物の発育同調方法。
(9)成虫の前段階の静止期にある節足動物を基材上に接種し、25℃未満の低温且つ高湿度条件下に暴露する工程と、
その後、脱皮直前に同調した節足動物を、上記工程の温度条件より高温且つ低湿度条件下に暴露し、脱皮を促進する工程と
を有する、節足動物の発育同調方法。
(10)上記基材は餌を備えない基材であることを特徴とする(9)記載の節足動物の発育同調方法。
(11)基材上に保湿部材で囲った領域を形成し、当該領域に成虫の前段階の静止期にある節足動物を接種することを特徴とする(9)記載の節足動物の発育同調方法。
(12)基材上の節足動物を低温且つ高湿度条件に暴露する期間を1~2日間とすることを特徴とする(9)記載の節足動物の発育同調方法。
(13)25℃未満の低温が18℃であり、高湿度条件が相対湿度100%であることを特徴とする(9)記載の節足動物の発育同調方法。
(14)脱皮直前に同調した節足動物を脱皮させる際には、当該基材周囲の相対湿度を低下させ、気温を25℃以上にすることを特徴とする(9)記載の節足動物の発育同調方法。
(15)上記節足動物はハダニ科に属することを特徴とする(9)記載の節足動物の発育同調方法。
(16)節足動物の卵又は成虫の前段階の静止期にある節足動物を接種する基材を備え、水又は保水部材を収容できる容器と、
上記容器に対して着脱自在に取り付けることができる蓋部材とを備え、
上記基材に接種された上記卵を孵化直前に同調でき、上記基材に接種された成虫の前段階の静止期にある上記節足動物を脱皮直前に同調できる、節足動物用同調容器。
(17)上記蓋部材は、上記容器部に取り付けられた状態において上記容器内を気密とすることを特徴とする(16)記載の節足動物用同調容器。
(18)上記節足動物はハダニ科に属することを特徴とする(16)記載の節足動物用同調容器。
(19)上記(16)~(18)いずれか記載の節足動物用同調容器と、
節足動物の卵又は成虫の前段階の静止期にある節足動物と
を含む節足動物用同調キット。
(20)節足動物の卵を接種する餌と水又は保水部材とを収容できる第2の容器と、
上記第2の容器に対して着脱自在に取り付けることができる蓋部材とを備える節足動物用育成容器を更に備えることを特徴とする(19)記載の節足動物用同調キット。
(21)上記蓋部材は、換気部を有してなり、上記第2の容器に取り付けられた状態で上記換気部を介して上記第2の容器部内を換気することを特徴とする(20)記載の節足動物用同調キット。
(22)上記節足動物の餌を更に備えることを特徴とする(20)記載の節足動物用同調キット。
(23)雌の節足動物を基材上に接種し、産卵させる工程と、
基材上の卵を水に浸漬した状態を維持する工程と、
基材上から水を取り除き、基材上にて孵化直前に同調した卵を供試物質の存在下に孵化させる工程と、
上記孵化させる工程において上記供試物質による孵化への影響を判定する工程とを含む、節足動物に対する発育制御関連物質のスクリーニング方法。
(24)雌の節足動物を基材上に接種し、産卵させる工程と、
基材上の卵を水に浸漬した状態を維持する工程と、
基材上から水を取り除き、基材上にて孵化直前に同調した卵を孵化させる工程と、
供試物質の存在下に孵化した幼虫を育成する工程と、
上記育成する工程において上記供試物質による幼虫への影響を判定する工程とを含む、節足動物に対する発育制御関連物質のスクリーニング方法。
(25)成虫の前段階の静止期にある節足動物を基材上に接種し、25℃未満の低温且つ高湿度条件下に暴露する工程と、
その後、脱皮直前に同調した節足動物を、上記工程の温度条件より高温且つ低湿度条件下に暴露し、供試物質の存在下に脱皮を促進する工程と、
上記脱皮を促進する工程において上記供試物質による脱皮への影響を判定する工程とを含む、節足動物に対する発育制御関連物質のスクリーニング方法。
(26)成虫の前段階の静止期にある節足動物を基材上に接種し、25℃未満の低温且つ高湿度条件下に暴露する工程と、
その後、脱皮直前に同調した節足動物を、上記工程の温度条件より高温且つ低湿度条件下に暴露し、脱皮を促進する工程と、
供試物質の存在下に脱皮してなる成虫を育成する工程と、
上記育成する工程において上記供試物質による成虫への影響を判定する工程とを含む、節足動物に対する発育制御関連物質のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る節足動物の発育同調方法では、節足動物の卵を孵化直前から孵化へと同調させることができる。また、本発明に係る節足動物の発育同調方法では、成虫の前段階の静止期にある節足動物を脱皮直前から脱皮へと同調させることができる。
【0011】
また、本発明に係る発育制御関連物質のスクリーニング方法では、節足動物の卵の孵化及び成虫の前段階の静止期にある節足動物の脱皮を同調できるため、供試物質の孵化への影響、供試物質の孵化した幼虫への影響、供試物質の脱皮への影響、供試物質の脱皮した成虫への影響を観察することができる。したがって、本発明に係る発育制御関連物質のスクリーニング方法によれば、節足動物の孵化、孵化後の幼虫、脱皮、脱皮後の成虫に影響する物質をスクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した節足動物の発育同調方法の手順及び節足動物用同調容器を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る節足動物の発育同調方法は、節足動物の卵が孵化する段階における同調方法(同調方法1と称する)及び成虫の前段階の静止期にある節足動物が脱皮する段階における同調方法(同調方法2と称する)の両方を含む意味である。ここで、同調とは、個体群において発育が均一になることを意味する。よって、孵化が同調するとは、個体群に含まれる各個体が略同時期に孵化することを意味する。同様に、脱皮が同調するとは、個体群に含まれる各個体が略同時期に脱皮することを意味する。

【0014】
なお、個体群のうち、特に限定されないが、例えば30%の個体数、好ましくは40%の個体数、更に好ましくは50%の個体数、更に好ましくは60%の個体数、更に好ましくは70%の個体数、更に好ましくは80%の個体数、更に好ましくは90%の個体数、更に好ましくは95%の個体数、最も好ましくは100%の個体数が略同時期に孵化又は脱皮する場合、孵化が同調する又は脱皮が同調するということができる。

【0015】
ここで、略同時期とは、特に限定されないが、数時間以内、具体的には5時間以内、好ましくは4時間以内、更に好ましくは3時間以内、更に好ましくは2時間以内、更に好ましくは1時間以内、更に好ましくは30分以内、最も好ましくは15分以内を意味する。

【0016】
本発明に係る節足動物の発育同調方法は、広く節足動物一般に適用することができる。具体的には、節足動物とは、節足動物門に分類される動物である。節足動物門は、更に、鋏角亜門、多足亜門、甲殻亜門及び六脚亜門に分類される。本発明に係る節足動物の発育同調方法は、これらの中でも特に鋏角亜門に分類される動物に適用することが好ましい。

【0017】
さらに、鋏角亜門は、クモガタ綱(蛛形綱)、ウミグモ綱及びカブトガニ綱に分類される。発明に係る節足動物の発育同調方法は、これらの中でも特にクモガタ綱(蛛形綱)に分類される動物に適用することが好ましい。クモガタ網は、更に、ダニ目、クモ目、ザトウムシ目、カニムシ目、サソリ目、ヒヨケムシ目、ヤトイムシ目、サソリモドキ目、ウデムシ目、コヨリムシ目、及びクツコムシ目に分類される。本発明に係る節足動物の発育同調方法は、これらの中でも特にダニ目に分類される動物に適用することが好ましい。

【0018】
さらに、ダニ目には、アシナガダニ亜目、カタダニ亜目、マダニ亜目、トゲダニ亜目、ケダニ亜目、ササラダニ亜目、コナダニ亜目が含まれる。

【0019】
本発明に係る節足動物の発育同調方法は、これらの中でも特にケダニ亜目に分類される動物、さらにケダニ亜目の中でも特にハダニ科に属する動物に適用することが更に好ましい。

【0020】
ハダニ科(Tetranychidae)に属する動物は、ビラハダニ亜科(Bryobiinae)及びナミハダニ亜科(Tetranychinae)に分類される。ビラハダニ亜科は、更にビラハダニ族(Bryobiini)、サキハダニ族(Hystrichonychini)及びホモノハダニ族(Petrobiini)等に分類される。ナミハダニ亜科は、更にヒロハダニ族(Eurytetranychini)及びナミハダニ族(Tetranychini)等に分類される。

【0021】
ビラハダニ亜科のビラハダニ族には、アトヘリビラハダニ、キクビラハダニ、クローバービラハダニ、及びニセクローバービラハダニ等を含むビラハダニ属(Bryobia);及びマルビラハダニ等を含むマルビラハダニ属(Pseudobryobia)が含まれる。ビラハダニ亜科のサキハダニ族には、オニハダニ等を含むオニハダニ属(Tetranycopsis)が含まれる。ビラハダニ亜科のホモノハダニ族には、ホモノハダニ等を含むホモノハダニ属(Petrobia);及びカタバミハダニ等を含むカタバミハダニ属(Tetranychina)が含まれる。

【0022】
また、ナミハダニ亜科のヒロハダニ族には、アラカシハダニ等を含むアラカシハダニ属(Eurytetranychoides);トウヨウハダニ等を含むトウヨウハダニ属(Eutetranychus);及びイトマキヒラタハダニ及びタイリクヒラハダニ等を含むヒラハダニ属(Aponychus)が含まれる。ナミハダニ亜科のナミハダニ族には、ササマルハダニ、エルムマルハダニ、リンゴハダニ、クワオオハダニ、ミカンハダニ及びモクセイマルハダニ等を含むマルハダニ属(Panonychus);ミドリハダニ及びヒメミドリハダニ等を含むミドリハダニ属(Sasanychus);シイノキマタハダニ、ヤナギマタハダニ、ヒメササマタハダニ、カシノキマタハダニ、サヤマタハダニ、タケトリマタハダニ、カツラマタハダニ、コトマタハダニ等を含むマタハダニ属(Schizotetranychus);タケスゴモリハダニ、ケナガスゴモリハダニ、ススキスゴモリハダニ、ヒメスゴモリハダニ及びササスゴモリハダニ等を含むスゴモリハダニ属(Stigmaeopsis);ケウスハダニ等を含むケウスハダニ属(Yezonychus);ウチダアケハダニ、アンズアケハダニ、カジノキアケハダニ、ミチノクアケハダニ、ミズキアケハダニ、ルイスアケハダニ、ハンノキアケハダニ、クリアケハダニ、シナノキアケハダニ、クルミアケハダニ、スギナミハダニ、エノキアケハダニ、ムクノキアケハダニ、スミスアケハダニ、ヒメカエデアケハダニ、ホオノキアケハダニ、ウシノセアケハダニ、ニセカツラアケハダニ、イヌシデアケハダニ、コナラアケハダニ、オオカエデアケハダニ、コウノアケハダニ及びミヤケアケハダニ等を含むアケハダニ属(Eotetranychus);マツツメハダニ、エゾスギツメハダニ、カツラマツツメハダニ、スギノハダニ、リュウキュウツメハダニ、ウスコブツメハダニ、ツバキツメハダニ、トドマツノハダニ、ビャクシンツメハダニ、クリノツメハダニ、ブナカツメハダニ、マンゴーツメハダニ、ニョゴツメハダニ、サトウキビツメハダニ、イネツメハダニ、シュレイツメハダニ、ウルマツメハダニ及びススキツメハダニ等を含むツメハダニ属(Oligonychus);オウトウハダニ及びミズナラクダハダニ等を含むクダハダニ属(Amphitetranychus);及びアシノワハダニ、ミツユビナミハダニ、ナンゴクナミハダニ、サガミナミハダニ、カンザワハダニ、ニセカンザワハダニ、アララギナミハダニ、ナンセイナミハダニ、ナミハダニ、ナミハダニモドキ、ミスマイナミハダニ、イシイナミハダニ及びミヤラナミハダニ等を含むナミハダニ属(Tetranychus)等が含まれる。

【0023】
上述したハダニ科に属する動物のなかでも特に、ナミハダニを含むナミハダニ属(Tetranychus)の動物、リンゴハダニを含むマルハダニ属の動物、ルイスアケハダニを含むアケハダニ属の動物、及びマンゴーツメハダニを含むOligonychus属の動物に対して、本発明に係る節足動物の発育同調方法を適用することが好ましい。

【0024】
ところで、本発明に係る節足動物の発育同調方法(同調方法1)では、先ず、上述した節足動物(雌)を基材上に接種して産卵させる。ここで、基材としては、特に限定されないが、ガラスや樹脂、金属等の節足動物の餌とならない材料からなるものが挙げられる。なお、基材は餌を備えていても良いし、餌を備えていなくても良い。ここで、餌としては、対象とする節足動物の種類によって異なるが、ナミハダニを対象とする場合、植物の葉が挙げられる。特に、餌を備えない機材上に産卵させることが好ましい。

【0025】
より具体的に、ナミハダニを対象とする場合、例えば、ガラス製の容器を使用することができる。容器としては、水及び/又は保水部材を収納できる内径90mm程度の底部及び高さ50mm程度の側壁部を有する構造のものを使用することができる。また、容器は、上部に必要に応じて蓋部材を取り付けることができる。容器は蓋部材を取り付けることで内部を密閉することができる。保水部材としては、保水能を有する材料からなり、例えば表面積が大きい高分子(例えば繊維)を適用することができる。

【0026】
本同調方法1では、先ず、容器にナミハダニの雌成虫を200~500頭程度接種する。これにより、容器の底部表面に卵を産み付けることができる。このとき、直径が30~50mm程度の領域を水で湿らせた保水部材で囲い、当該保水部材で囲われた領域内にナミハダニの雌成虫を接種することが好ましい。一般に、ハダニ類は保水部材上を歩行できないため、接種された雌成虫の行動は、保水部材で囲われた領域内に制限され、その結果、産卵場所を当該領域内に限定することができる。

【0027】
また、ハダニ類に産卵させるには、例えば、上記容器を密封した状態で、気温25~26℃とし約24時間放置する。この条件により、容器内の雌成虫に産卵させことができる。なお、容器内を所定の温度に維持するには、当該容器を配設できる空間を有するインキュベータを利用することができる。

【0028】
次に、容器内から雌成虫及び保水部材を取り除き、容器の底部上に卵のみ残す。そして、少なくともすべての卵の表面が覆われる量の水を容器内に注いだ状態を所定期間維持する。これにより、生み付けられた卵(群)を孵化直前の状態にとすることができる。より具体的には、容器を密閉し、気温25~26℃の空間に3~4日間設置する。また、水の温度は、特に限定されないが、20~30℃とすることができ、好ましくは22~28℃、更に好ましくは25~26℃である。なお、水の蒸発により卵表面が外方に露出しない条件であれば、容器を密封する必要はない。

【0029】
次に、容器内の水を取り除き、所定期間維持することで、容器内の卵(群)の孵化を同調することができる。より具体的には、容器内の水を取り除いた後、蓋部材を取り外したまま、相対湿度50%程度及び気温25~26℃の環境に曝す。これにより、大凡3時間以内に70%以上の卵が孵化し、幼虫になる。

【0030】
特に、容器底部に餌を備えない場合には、上述したように同調して孵化した幼虫が、餌のない状態に置かれることとなる。換言すれば、この同調方法1によれば、餌のない状態であっても卵が同調して孵化することとなる。そして、この同調方法1によれば、孵化した幼虫が餌のないよう状態に置かれるため、採餌に起因する生理状態のばらつきがない均一な幼虫群を得ることができる。

【0031】
一方、本発明に係る節足動物の発育同調方法(同調方法2)では、成虫の前段階の静止期にある節足動物を基材上に接種し、25℃未満の低温且つ高湿度条件下に暴露する。ここで、成虫の前段階の静止期とは、上述した節足動物において所謂、蛹の状態にある期間を意味する。一例として、上述したハダニ類(ナミハダニ)は、卵から孵化した後、幼虫→第1若虫→第2若虫→成虫といった順に3回の脱皮を介して成虫となる。したがって、上述したハダニ類(ナミハダニ)において、成虫の前段階の静止期とは、第2若虫の後期における静止期(第3静止期ともいう)を意味する。

【0032】
本工程における気温条件である、25℃未満の低温とは、上述した節足動物の蛹が脱皮の遅延を引き起こさない通常の気温より低温であることを意味する。具体的に、上述したハダニ類(ナミハダニ)では、16~19℃の温度条件とすることができ、好ましくは18~19℃の温度条件とし、更に好ましくは18℃の温度条件とする。さらに、本工程において、高湿度条件とは、例えば相対湿度が90%以上の条件、好ましくは95%以上の条件、更に好ましくは100%の条件とすることができる。

【0033】
本工程において、上述した温度条件及び湿度条件に曝す期間は、特に限定されず、例えば1日から5日程度とすることができ、好ましくは1~3日間、より好ましくは1~2日間とすることができる。本工程における気温条件をより低温とする場合には当該期間をより長く設定することが好ましく、また、本工程における湿度条件をより低くする場合には当該期間をより短く設定することが好ましい。

【0034】
同調方法2における本工程は、上述した同調方法1で使用した容器を使用することができる。同調方法2における本工程では、例えば、容器の底部において、直径が30~50mm程度の領域を水で湿らせた保水部材で囲い、当該保水部材で囲われた領域内に上記静止期の節足動物を接種する。そして、当該容器を密閉することで内部の相対湿度を上述した範囲に維持することができる。

【0035】
本工程により、上記静止期にある節足動物(群)の発育を進め、脱皮直前の状態に維持することができる。次に、同調方法2では、脱皮直前の静止期にある節足動物(群)を、上記工程の温度条件より高温且つ低湿度条件下に暴露する。これにより、脱皮直前の静止期にある節足動物(群)の脱皮を同調することができる。

【0036】
具体的に上記容器を使用する場合には、密閉するための蓋を取り外し、通常の実験条件の気温範囲(25~26℃)の環境に曝すことで、節足動物(群)の同調した脱皮を促進することができる。このとき、湿度条件としては、上記工程の相対湿度条件より低ければ良く、例えば70%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは50%程度とする。これにより、大凡3時間以内に70%以上の静止期にある節足動物が脱皮し、成虫になる。

【0037】
なお、同調方法2では、先ず、成虫の前段階の静止期にある節足動物を基材上に接種しているが、一例として、本工程を以下の手順に従って実施することができる。

【0038】
先ず、上述した容器と同様な材料からなる容器(第2の容器)を準備する。なお、第2の容器は、上述した容器と異なり、通気フィルタ付きの換気孔を有する蓋部材を取り付けることができる。容器は、通気フィルタ付きの換気孔を有する蓋部材を取り付けることで、外方からの異物(小バエ等)混入を防止しながら内部を飽和水蒸気圧以下の水蒸気圧に維持することができる。

【0039】
次に、容器内の底部の全面に、保水部材を配設する。配設した保湿部材上にナミハダニの餌のインゲンの葉を、表面を上にして載置する。このインゲンの葉上にナミハダニの雌成虫を50頭程度接種する。

【0040】
次に、この容器を通気フィルタ付きの換気孔を有する蓋部材で閉じ、25~26℃の気温条件で24時間放置する。これにより、接種された雌成虫は、容器内のインゲンの葉上に産卵する。雌成虫による産卵を確認した後、容器内の葉上から雌成虫を取り除く。その後、容器を再び通気フィルタ付きの換気孔を有する蓋部材で閉じ、容器外の環境が相対湿度50%程度及び気温25~26℃として7~8日間放置する。これにより、容器内の葉上に産下された卵の発育を第3静止期まで進めることができる。以上のようにして容器内で第3静止期にあるナミハダニを得ることができ、これを用いて上述した同調方法2を実施することができる。

【0041】
以上、同調方法2では、上述したように同調して脱皮した成虫を獲ることができる。同調方法2では、餌を備えない基材上において、脱皮直前の静止期にある節足動物(群)が同調して脱皮することが好ましい。これにより、同調方法2によれば、餌のない状態であっても静止期にある節足動物(群)が同調して脱皮することとなる。そして、同調方法2によれば、脱皮した成虫が餌のないよう状態に置かれるため、採餌を起因する生理状態のばらつきがない均一な成虫群を得ることができる。

【0042】
本発明に係る節足動物の発育同調方法(同調方法1及び2)によれば、上述したように、孵化或いは脱皮が同調することができ、孵化した幼虫群や脱皮した成虫群を生育ステージの揃った状態として得ることとができる。本発明に係る節足動物の発育同調方法(同調方法1)によれば、上述したように孵化してから生理状態のばらつきのない均一な幼虫群を得ることができる。したがって、本発明に係る節足動物の発育同調方法を適用することにより、農薬の開発及び天敵種の探索等に必須な生物検定に好適な供試材料を得ることができる。すなわち、上述した本発明に係る節足動物の発育同調方法を適用することで、農薬の候補物質である、節足動物に対する発育制御関連物質をスクリーニングすることができる。ここで、節足動物に対する発育制御関連物質とは、孵化を抑制又は促進する作用を有する物質、孵化した幼虫群の成長を抑制又は促進する物質、脱皮を抑制又は促進する作用を有する物質、脱皮した成虫群の成長を抑制又は促進する物質を含む意味である。

【0043】
例えば、上述した同調方法1において、孵化直前に同調した卵を供試物質の存在下に孵化し、上記供試物質による孵化への影響を判定する。詳細には、供試物質の存在下・非存在下のそれぞれで孵化を観察し、供試物質が孵化を抑制しているか(促進しているか)を判定する。この判定には、特に限定されないが、例えば、所定時間(例えば3時間)において孵化した卵の割合や、所定の割合(例えば70%)の卵が孵化するのに要した時間といった指標を利用することができる。

【0044】
また、上述した同調方法1において、基材上にて孵化直前に同調した卵を孵化した後、供試物質の存在下に孵化した幼虫を育成し、上記供試物質による孵化直後の幼虫への影響を判定する。詳細には、供試物質の存在下・非存在下のそれぞれで幼虫の行動及び生死を観察し、供試物質がそれらを抑制しているか(促進しているか)を判定する。この判定には、特に限定されないが、例えば、所定時間(例えば3時間)における移動速度、摂食時間、死滅した幼虫の割合や及び所定の割合(例えば70%)の幼虫が死滅するのに要した時間といった指標を利用することができる。

【0045】
一方、上述した同調方法2において、脱皮直前に同調した節足動物を供試物質の存在下に脱皮を促進し、上記供試物質による脱皮への影響を判定する。詳細には、供試物質の存在下・非存在下のそれぞれで脱皮を観察し、供試物質が脱皮を抑制しているか(促進しているか)を判定する。この判定には、特に限定されないが、例えば、所定時間(例えば3時間)において脱皮した蛹の割合や、所定の割合(例えば70%)の蛹が脱皮するのに要した時間といった指標を利用することができる。

【0046】
また、上述した同調方法2において、基材上にて脱皮直前に同調した節足動物を脱皮した後、供試物質の存在下に脱皮した成虫を育成し、上記供試物質による脱皮直後の成虫への影響を判定する。詳細には、供試物質の存在下・非存在下のそれぞれで成虫の行動及び生死を観察し、供試物質がそれらを抑制しているか(促進しているか)を判定する。この判定には、特に限定されないが、例えば、所定時間(例えば3時間)における移動速度、摂食時間、産卵数、死滅した成虫の割合及び所定の割合(例えば70%)の成虫が死滅するのに要した時間といった指標を利用することができる。

【0047】
以上のように、孵化や脱皮に影響する発育制御関連物質をスクリーニングするに際し、上述した同調方法1及び2を適用して得られた孵化直前の卵(群)及び静止期の節足動物(群)を利用することができる。このため、本発明を適用したスクリーニング方法によれば、孵化や脱皮といった段階に対する作用を高精度に判定することができる。

【0048】
ところで、このように、本発明に係る節足動物の発育同調方法(同調方法1及び2)を提供したスクリーニング方法は、上述した容器と蓋部材とからなる節足動物用同調容器と、節足動物の卵又は成虫の前段階の静止期にある節足動物とを含む節足動物用同調キットとして実現することができる。当該キットは、更に、節足動物の卵を接種する餌と水又は保水部材とを収容できる容器(第2の容器)と、第2の容器に対して着脱自在に取り付けることができる蓋部材とを備える節足動物用育成容器を備えていてもよい。さらに、当該キットは、上記節足動物の餌を更に備えていてもよい。これらキットを使用することによって、上述した発明に係る節足動物の発育同調方法(同調方法1及び2)を提供したスクリーニング方法を実施することが可能となる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
〔実施例1〕
本実施例では、節足動物の一例としてナミハダニを対象とし、卵を孵化直前の段階とし孵化を同調させる条件を検討した。具体的な手順及び使用した収納容器を図1Aに示した。
【実施例】
【0051】
先ず、容器内の底部材上の直径30~50mm程度を、水で湿らせた保水部材で囲った。保湿部材で囲われた領域にナミハダニの雌成虫を200~500頭程度接種した。接種されたナミハダニの移動は保水部材で囲われた領域に制限された。
【実施例】
【0052】
次に、用容器を蓋部材で密閉し、気温25~26℃の空間内(インキュベータ)に24時間放置した。この条件下で、容器内の雌成虫に産卵させた。
【実施例】
【0053】
24時間後、容器内から雌成虫及び保水部材を取り除き、底部材上に卵のみを残した。そして、少なくともすべての卵の表面が覆われる量の水を容器内に注いた。この状態で容器を蓋部材で密閉し、気温25~26℃の空間内に3~4日間放置した。この条件下で,容器内の卵の発生を進め、孵化直前の状態に維持することができた。
【実施例】
【0054】
その後、容器内の水を取り除き、蓋部材を取り外したまま、卵を相対湿度50%程度及び気温25~26℃の環境に3時間程度曝した。その結果、3時間以内に70%以上の卵が孵化し、幼虫になったことが観察された。
【実施例】
【0055】
〔実施例2〕
本実施例では、節足動物の一例としてナミハダニを対象とし、幼虫を脱皮直前の段階(第2若虫の第3静止期)とし脱皮を同調させる条件を検討した。具体的な手順及び使用した容器を図1Bに示した。
【実施例】
【0056】
本実施例では、先ず、容器内の底部材上の全面に保水部材を設置した。その保湿部材上にインゲンの葉を、表面を上にして設置した。その葉上にナミハダニの雌成虫を50頭程度接種した。
【実施例】
【0057】
次に、この容器を蓋部材で密閉し、気温25~26℃の空間内(インキュベータ)に24時間放置した。この条件下で、容器内の葉上の雌成虫に産卵させることができた。
【実施例】
【0058】
24時間後、容器内の葉上から雌成虫を取り除いた。この容器を通気フィルタ付きの換気孔を有する蓋部材で閉じ、容器外の環境が相対湿度50%程度及び気温25~26℃の条件下で7~8日間放置した。この条件下で容器内の葉上に産下された卵の発育を第3静止期まで進めることができた。
【実施例】
【0059】
次に、容器内の底部材上の直径30~50mm程度を、水で湿らせた保水部材で囲った。容器内の葉上で第3静止期になった雌を、保湿部材で囲われた領域内に接種した。そして、この容器を蓋部材で密閉し、気温18℃の空間に1~2日間放置した。このとき、容器内の相対湿度は100%に維持された。気温18℃及び相対湿度100%の環境条件下で、容器内の幼虫を第3静止期の発育を進め、脱皮直前の状態に維持することができた。
【実施例】
【0060】
次に、容器内の保水部材を取り除き、蓋部材を取り外したまま、第3静止期の雌を相対湿度50%及び気温25~26℃の環境に3時間程度曝した。その結果、3時間以内に70%以上の第3静止期の雌が脱皮し,成虫になったことが観察された。
図面
【図1】
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