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明細書 :エピタキシャルウエハ及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6253150号 (P6253150)
公開番号 特開2015-214448 (P2015-214448A)
登録日 平成29年12月8日(2017.12.8)
発行日 平成29年12月27日(2017.12.27)
公開日 平成27年12月3日(2015.12.3)
発明の名称または考案の名称 エピタキシャルウエハ及びその製造方法
国際特許分類 C30B  29/16        (2006.01)
C30B  25/20        (2006.01)
C23C  16/40        (2006.01)
H01L  21/205       (2006.01)
H01L  21/365       (2006.01)
FI C30B 29/16
C30B 25/20
C23C 16/40
H01L 21/205
H01L 21/365
請求項の数または発明の数 9
全頁数 15
出願番号 特願2014-097751 (P2014-097751)
出願日 平成26年5月9日(2014.5.9)
審査請求日 平成29年4月20日(2017.4.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】後藤 健
【氏名】纐纈 明伯
【氏名】熊谷 義直
【氏名】村上 尚
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110002583、【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
【識別番号】100071526、【弁理士】、【氏名又は名称】平田 忠雄
【識別番号】100119208、【弁理士】、【氏名又は名称】岩永 勇二
【識別番号】100124246、【弁理士】、【氏名又は名称】遠藤 和光
【識別番号】100145171、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 浩行
審査官 【審査官】有田 恭子
参考文献・文献 国際公開第2013/035464(WO,A1)
特開2013-227202(JP,A)
特開2013-229554(JP,A)
国際公開第2013/035842(WO,A1)
国際公開第2013/035845(WO,A1)
特開2010-030896(JP,A)
特開2015-091740(JP,A)
調査した分野 C30B 1/00-35/00
C23C 16/00-16/56
H01L 21/205,21/365
特許請求の範囲 【請求項1】
HVPE法によるエピタキシャル結晶成長用の下地基板として用いられる半導体基板であって、β-Ga系単結晶からなり、β-Ga系単結晶の[010]軸に平行な面を主面とする半導体基板と、
前記半導体基板の前記主面上の5×1016(atoms/cm)以下のClを含むβ-Ga系単結晶からなるエピタキシャル層と、
を有するエピタキシャルウエハ。
【請求項2】
前記主面が、β-Ga系単結晶の[010]軸を回転軸として(100)面から(101)面へ向かう方向に38°以上90°以下の範囲内の角度で回転させた面である、
請求項1に記載のエピタキシャルウエハ。
【請求項3】
前記角度が、68±10°である、
請求項2に記載のエピタキシャルウエハ。
【請求項4】
前記角度が、38±1°、53.8±1°、68±1°、76.3±1°、77.3±
1°、83±1°、又は90±1°である、
請求項2に記載のエピタキシャルウエハ。
【請求項5】
β-Ga系単結晶からなり、β-Ga系単結晶の[010]軸に平行な面を主面とする半導体基板上に、β-Ga系単結晶からなるエピタキシャル層をHVPE法によるエピタキシャル結晶成長により形成する工程を含む、
エピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項6】
前記エピタキシャル層の成長レートが1.2μm/h以上である、
請求項に記載のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項7】
前記半導体基板の前記主面が、β-Ga系単結晶の[010]軸を回転軸として(100)面から(101)面へ向かう方向に38°以上90°以下の範囲内の角度で回転させた面である、
請求項又はに記載のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項8】
前記角度が、68±10°である、
請求項に記載のエピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項9】
前記角度が、38±1°、53.8±1°、68±1°、76.3±1°、77.3±1°、83±1°、又は90±1°である、
請求項に記載のエピタキシャルウエハの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャルウエハ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、β-Ga系基板上に、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法によるエピタキシャル結晶成長によりβ-Ga単結晶膜を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1によれば、β-Ga系基板の主面の面方位を所定の面方位とすることにより、MBE法により、β-Ga単結晶膜を高い成長レートで成長させることができる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2013/035464号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の1つは、HVPE法によりβ-Ga単結晶からなるエピタキシャル層を高い成長レートで成長させることができるβ-Ga単結晶からなる半導体基板、その半導体基板とエピタキシャル層を有するエピタキシャルウエハ、及びそのエピタキシャルウエハの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[4]の半導体基板を提供する。
【0007】
[1]HVPE法によるエピタキシャル結晶成長用の下地基板として用いられる半導体基板であって、β-Ga系単結晶からなり、β-Ga系単結晶の[010]軸に平行な面を主面とする、半導体基板。
【0008】
[2]前記主面が、β-Ga系単結晶の[010]軸を回転軸として(100)面から(101)面へ向かう方向に38°以上90°以下の範囲内の角度で回転させた面である、前記[1]に記載の半導体基板。
【0009】
[3]前記角度が、68±10°である、前記[2]に記載の半導体基板。
【0010】
[4]前記角度が、38±1°、53.8±1°、68±1°、76.3±1°、77.3±1°、83±1°、又は90±1°である、前記[2]に記載の半導体基板。
【0011】
また、本発明の他の態様は、上記目的を達成するために、下記[5]のエピタキシャルウエハを提供する。
【0012】
[5]前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の前記半導体基板と、前記半導体基板の前記主面上の5×1016(atoms/cm)以下のClを含むβ-Ga系単結晶からなるエピタキシャル層と、を有するエピタキシャルウエハ。
【0013】
また、本発明の他の態様は、上記目的を達成するために、下記[6]~[10]のエピタキシャルウエハの製造方法を提供する。
【0014】
[6]β-Ga系単結晶からなり、β-Ga系単結晶の[010]軸に平行な面を主面とする半導体基板上に、β-Ga系単結晶からなるエピタキシャル層をHVPE法によるエピタキシャル結晶成長により形成する工程を含む、エピタキシャルウエハの製造方法。
【0015】
[7]前記エピタキシャル層の成長レートが1.2μm/h以上である、前記[6]に記載のエピタキシャルウエハの製造方法。
【0016】
[8]前記半導体基板の前記主面が、β-Ga系単結晶の[010]軸を回転軸として(100)面から(101)面へ向かう方向に38°以上90°以下の範囲内の角度で回転させた面である、前記[6]又は[7]に記載のエピタキシャルウエハの製造方法。
【0017】
[9]前記角度が、68±10°である、前記[8]に記載のエピタキシャルウエハの製造方法。
【0018】
[10]前記角度が、38±1°、53.8±1°、68±1°、76.3±1°、77.3±1°、83±1°、又は90±1°である、前記[8]に記載のエピタキシャルウエハの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、HVPE法によりβ-Ga単結晶からなるエピタキシャル層を高い成長レートで成長させることができるβ-Ga単結晶からなる半導体基板、その半導体基板とエピタキシャル層を有するエピタキシャルウエハ、及びそのエピタキシャルウエハの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、第1の実施の形態に係るエピタキシャルウエハの垂直断面図である。
【図2】図2は、実施の形態に係る気相成長装置の垂直断面図である。
【図3】図3(a)、(b)は、評価に用いられたβ-Ga単結晶基板の主面の一部を表す斜視図と側面図である。
【図4】図4(a)、(b)は、θ=38°であるβ-Ga単結晶基板のSEM観察画像である。
【図5】図5(a)、(b)は、θ=68°であるβ-Ga単結晶基板のSEM観察画像である。
【図6】図6(a)、(b)は、θ=98°であるβ-Ga単結晶基板のSEM観察画像である。
【図7】図7は、評価により得られた、HVPE法によるβ-Ga単結晶の成長レートと下地面の面方位との関係を表すグラフである。
【図8】図8は、第2の実施の形態に係る横型トランジスタの垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1の実施の形態〕
(結晶積層構造体の構成)
図1は、第1の実施の形態に係るエピタキシャルウエハ10の垂直断面図である。エピタキシャルウエハ10は、半導体基板11と、半導体基板11の主面上にHVPE(Halide Vapor Phase Epitaxy)法によるエピタキシャル結晶成長により形成されたエピタキシャル層12を有する。

【0022】
半導体基板11は、β-Ga系単結晶からなる基板である。ここで、β-Ga系単結晶とは、β-Ga単結晶、又は、Al、In等の元素が添加されたβ-Ga単結晶を母結晶とする結晶をいう。例えば、Al及びInが添加されたβ-Ga単結晶の組成は、β-(GaAlIn(1-x-y)(0<x≦1、0≦y≦1、0<x+y≦1)で表される。Alを添加した場合にはβ-Ga単結晶のバンドギャップが広がり、Inを添加した場合にはバンドギャップが狭くなる。また、半導体基板11は、Si等の導電型不純物を含んでもよい。

【0023】
半導体基板11は、例えば、FZ(Floating Zone)法やEFG(Edge Defined Film Fed Growth)法等の融液成長法により育成したGa系単結晶のバルク結晶をスライスし、表面を研磨することにより形成される。

【0024】
半導体基板11の主面は、半導体基板11を構成するβ-Ga系単結晶の[010]軸に平行な面である。これは、β-Ga系単結晶基板の主面の面方位が(010)であるときに、β-Ga系単結晶層のHVPE法によるエピタキシャル成長の成長レートが極端に低くなるという本発明者らの発見に基づいて設定されたものである。

【0025】
本発明者らは、β-Ga系単結晶基板の主面の面方位が、このHVPE法によるβ-Ga系単結晶層の成長に適さない(010)面に垂直な面、すなわち[010]軸に平行な面であるときに、β-Ga系単結晶層のHVPE法によるエピタキシャル成長の成長レートが高くなることを見出した。

【0026】
好ましくは、半導体基板11の主面は、β-Ga系単結晶の[010]軸を回転軸として(100)面から(101)面へ向かう方向に38°以上90°以下の範囲内の角度で回転させた面である。

【0027】
より好ましくは、半導体基板11の主面は、β-Ga系単結晶の[010]軸を回転軸として(100)面から(101)面へ向かう方向に、68±10°回転させた面である。ここで、「±」は許容誤差を表し、例えば、68±10°は、58°以上78°以下の範囲内の任意の角度を表す。

【0028】
また、半導体基板11の主面は、β-Ga系単結晶の[010]軸を回転軸として(100)面から(101)面へ向かう方向に38±1°、53.8±1°、68±1°、76.3±1°、77.3±1°、83±1°、又は90±1°回転させた面であることも好ましい。

【0029】
エピタキシャル層12は、半導体基板11と同様に、β-Ga系単結晶からなる。また、エピタキシャル層12は、Si等の導電型不純物を含んでもよい。

【0030】
(気相成長装置の構造)
以下に、本実施の形態に係るエピタキシャル層12の成長に用いる気相成長装置の構造の一例について説明する。

【0031】
図2は、実施の形態に係る気相成長装置2の垂直断面図である。気相成長装置2は、HVPE法用の気相成長装置であり、第1のガス導入ポート21、第2のガス導入ポート22、第3のガス導入ポート23、及び排気ポート24を有する反応チャンバー20と、反応チャンバー20の周囲に設置され、反応チャンバー20内の所定の領域を加熱する第1の加熱手段26及び第2の加熱手段27を有する。

【0032】
HVPE法は、PLD法等と比較して、成膜レートが高い。また、膜厚の面内分布の均一性が高く、大口径の膜を成長させることができる。このため、結晶の大量生産に適している。

【0033】
反応チャンバー20は、Ga原料が収容された反応容器25が配置され、ガリウムの原料ガスが生成される原料反応領域R1と、半導体基板11が配置され、エピタキシャル層12の成長が行われる結晶成長領域R2を有する。反応チャンバー20は、例えば、石英ガラスからなる。

【0034】
ここで、反応容器25は、例えば、石英ガラスであり、反応容器25に収容されるGa原料は金属ガリウムである。

【0035】
第1の加熱手段26と第2の加熱手段27は、反応チャンバー20の原料反応領域R1と結晶成長領域R2をそれぞれ加熱することができる。第1の加熱手段26及び第2の加熱手段27は、例えば、抵抗加熱式や輻射加熱式の加熱装置である。

【0036】
第1のガス導入ポート21は、Clガス又はHClガスであるCl含有ガスを、不活性ガスであるキャリアガス(Nガス、Arガス又はHeガス)を用いて反応チャンバー20の原料反応領域R1内に導入するためのポートである。

【0037】
第2のガス導入ポート22は、酸素の原料ガスであるOガスやHOガス等の酸素含有ガス及びエピタキシャル層12にSi等のドーパントを添加するための塩化物系ガス(例えば、四塩化ケイ素等)を、不活性ガスであるキャリアガス(Nガス、Arガス又はHeガス)を用いて反応チャンバー20の結晶成長領域R2へ導入するためのポートである。

【0038】
第3のガス導入ポート23は、不活性ガスであるキャリアガス(Nガス、Arガス又はHeガス)を反応チャンバー20の結晶成長領域R2へ導入するためのポートである。

【0039】
(エピタキシャル層の成長)
以下に、本実施の形態に係るエピタキシャル層12の成長工程の一例について説明する。

【0040】
まず、第1の加熱手段26を用いて反応チャンバー20の原料反応領域R1を加熱し、原料反応領域R1の雰囲気温度を所定の温度に保つ。

【0041】
次に、第1のガス導入ポート21からCl含有ガスを、キャリアガスを用いて導入し、原料反応領域R1において、上記の雰囲気温度下で反応容器25内の金属ガリウムとCl含有ガスを反応させ、塩化ガリウム系ガスを生成する。

【0042】
このとき、上記の原料反応領域R1内の雰囲気温度は、反応容器25内の金属ガリウムとCl含有ガスの反応により生成される塩化ガリウム系ガスのうち、GaClガスの分圧が最も高くなるような温度であることが好ましい。ここで、塩化ガリウム系ガスには、GaClガス、GaClガス、GaClガス、(GaClガス等が含まれる。

【0043】
GaClガスは、塩化ガリウム系ガスに含まれるガスのうち、Ga結晶の成長駆動力を最も高い温度まで保つことのできるガスである。高純度、高品質のGa結晶を得るためには、高い成長温度での成長が有効であるため、高温において成長駆動力の高いGaClガスの分圧が高い塩化ガリウム系ガスを生成することが、エピタキシャル層12の成長のために好ましい。

【0044】
なお、エピタキシャル層12を成長させる際の雰囲気に水素が含まれていると、エピタキシャル層12の表面の平坦性及び結晶成長駆動力が低下するため、水素を含まないClガスをCl含有ガスとして用いることが好ましい。

【0045】
また、塩化ガリウム系ガスのうちのGaClガスの分圧比を高くするため、第1の加熱手段26により原料反応領域R1の雰囲気温度を300℃以上に保持した状態で反応容器25内の金属ガリウムとCl含有ガスを反応させることが好ましい。

【0046】
また、例えば、850℃以上の雰囲気温度下では、GaClガスの分圧比が圧倒的に高くなる(GaClガスの平衡分圧がGaClガスより4桁大きく、GaClガスより8桁大きい)ため、GaClガス以外のガスはGa結晶の成長にほとんど寄与しない。

【0047】
なお、第1の加熱手段26の寿命や、石英ガラス等からなる反応チャンバー20の耐熱性を考慮して、原料反応領域R1の雰囲気温度を1000℃以下に保持した状態で反応容器25内の金属ガリウムとCl含有ガスを反応させることが好ましい。

【0048】
次に、結晶成長領域R2において、原料反応領域R1で生成された塩化ガリウム系ガスと、第2のガス導入ポート22から導入された酸素含有ガスとを混合させ、その混合ガスに半導体基板11を曝し、半導体基板11上にエピタキシャル層12をエピタキシャル成長させる。このとき、反応チャンバー20を収容する炉内の結晶成長領域R2における圧力を、例えば、1atmに保つ。

【0049】
ここで、Si、Al等の添加元素を含むエピタキシャル層12を形成する場合には、ガス導入ポート22より、添加元素の原料ガス(例えば、四塩化ケイ素(SiCl)等の塩化物系ガス)も塩化ガリウム系ガス及び酸素含有ガスに併せて結晶成長領域R2に導入する。

【0050】
なお、エピタキシャル層12を成長させる際の雰囲気に水素が含まれていると、エピタキシャル層12の表面の平坦性及び結晶成長駆動力が低下するため、酸素含有ガスとして水素を含まないOガスを用いることが好ましい。

【0051】
また、GaClガスの平衡分圧の低下を抑え、エピタキシャル層12を効率的に成長させるためには、結晶成長領域R2におけるOガスの供給分圧のGaClガスの供給分圧に対する比が0.5以上である状態でエピタキシャル層12を成長させることが好ましい。

【0052】
また、高品質のエピタキシャル層12を成長させるために、成長温度を900℃以上にすることが好ましい。

【0053】
なお、エピタキシャル層12は、例えば、5×1016(atoms/cm)以下のClを含む。これは、エピタキシャル層12がCl含有ガスを用いるHVPE法により形成されることに起因する。通常、HVPE法以外の方法によりGa単結晶膜を形成する場合には、Cl含有ガスを用いないため、Ga単結晶膜中にClが含まれることはなく、少なくとも、1×1016(atoms/cm)以上のClが含まれることはない。

【0054】
(半導体基板の主面の面方位)
以下に、半導体基板11の主面の面方位と、エピタキシャル層12の成長レートの関係の評価結果を示す。この評価は、(010)面である主面にラインアンドスペースパターンの凹凸が形成されたβ-Ga単結晶基板を用いて行った。

【0055】
図3(a)、(b)は、評価に用いられたβ-Ga単結晶基板30の主面の一部を表す斜視図と側面図である。β-Ga単結晶基板30の主面の凸部の上面を面31、凹部の底面を面32、凸部の側面を面33、34とする。

【0056】
面31、32の面方位は(010)である。面33、34は面31、32に垂直な面であり、[010]軸を回転軸として(100)面から(101)面へ向かう方向へ角度θだけ回転させた面である。なお、面34の面方位はθからさらに180°回転しており、面33の面方位と等価である。

【0057】
HVPE法によりβ-Ga単結晶基板30上にβ-Ga単結晶をエピタキシャル成長させ、面33、34に垂直な方向のβ-Ga単結晶の成長を観察することにより、[010]軸に平行な面の面方位とβ-Ga単結晶の成長レートとの関係を評価した。

【0058】
図4(a)、(b)は、θ=38°であるβ-Ga単結晶基板30のSEM(Scanning Electron Microscope)観察画像である。図4(a)は主面に垂直な方向から観察した画像であり、図4(b)は斜め上方から観察した画像である。

【0059】
図5(a)、(b)は、θ=68°であるβ-Ga単結晶基板30のSEM観察画像である。図5(a)は主面に垂直な方向から観察した画像であり、図5(b)は斜め上方から観察した画像である。

【0060】
図6(a)、(b)は、θ=98°であるβ-Ga単結晶基板30のSEM観察画像である。図6(a)は主面に垂直な方向から観察した画像であり、図6(b)は斜め上方から観察した画像である。

【0061】
図4(b)、図5(b)、図6(b)に示される厚さtは、面33、34に垂直な方向へ成長したβ-Ga単結晶の厚さを表す。

【0062】
図7は、評価により得られた、HVPE法によるβ-Ga単結晶の成長レートと下地面の面方位との関係を表すグラフである。図7の横軸は面33の角度θを表し、縦軸は面33、34に垂直な方向のβ-Ga単結晶の成長レート(厚さtの単位時間あたりの増加量)を表す。

【0063】
図7中の点線は(010)面、(001)面、(-101)面、(-201)面に対応する角度θを表しており、例えば、θ=53.8°のときに面33が(101)面に一致しており、面34は(-10-1)面に一致することを表している。

【0064】
図7中のプロットマーク◆は、上記のβ-Ga単結晶基板30を用いた評価方法による測定値である。プロットマーク◇は、β-Ga単結晶基板30を用いずに、対応する面方位の平坦な主面を有するβ-Ga単結晶基板上にβ-Ga単結晶を成長させ、主面に垂直な方向の成長を観察して得た測定値である。

【0065】
以下の表1に、図7に示される各測定点の数値を表す。

【0066】
【表1】
JP0006253150B2_000002t.gif

【0067】
なお、(010)面を主面とするβ-Ga単結晶基板上にβ-Ga単結晶を同じ成長条件で成長させたところ、主面に垂直な方向のβ-Ga単結晶の成長レートは、0.3μm/hであった。

【0068】
図7、表1に示されるように、[010]軸に平行な面上のβ-Ga単結晶の成長レートは、0≦θ≦180°の全範囲において、(010)面上の成長レートよりも格段に高い。例えば、図7、表1に示される[010]軸に平行な面上のβ-Ga単結晶の成長レートのうちの、最も低い成長レートである1.20μm/h(θ=126.2)であっても、(010)面上の成長レートである0.3μm/hの4倍である。このことから、β-Ga単結晶基板の主面が[010]軸に平行な面であるときに、β-Ga単結晶のHVPE法によるエピタキシャル成長の成長レートが高くなるといえる。

【0069】
また、図7、表1に示されるように、38°≦θ≦90°の範囲において、特にβ-Ga単結晶の成長レートが高い。

【0070】
さらに、38°≦θ≦90°の範囲においては、角度θが68°付近に近づくほどβ-Ga単結晶の成長レートが高くなる傾向がみられ、68±10°の範囲で特に高い成長レートが得られることが推測される。

【0071】
また、β-Ga単結晶基板の主面の傾きがおよそ±1°以内であれば、成長レートは大きく変化しないため、実測値から、θ=38±1°、53.8±1°、68±1°、76.3±1°、77.3±1°、83±1°、又は90±1°のときにβ-Ga単結晶の成長レートが高くなるといえる。

【0072】
以上の評価は、β-Ga単結晶基板上にβ-Ga単結晶を成長させることにより行われたが、基板の材料及び成長結晶としてβ-Ga単結晶の代わりに他のβ-Ga系単結晶を用いて評価を行う場合や、ドーパントを含むβ-Ga系単結晶を用いて評価を行う場合にも、同様の結果が得られる。

【0073】
このため、エピタキシャル層12のHVPE法によるエピタキシャル成長の成長レートを高くするためには、エピタキシャルウエハ10の半導体基板11の主面が[010]軸に平行な面であることが好ましいといえる。

【0074】
また、半導体基板11の主面が、β-Ga系単結晶の[010]軸を回転軸として(100)面から(101)面へ向かう方向に38°以上90°以下の範囲内の角度で回転させた面であることがより好ましいといえる。

【0075】
さらに、半導体基板11の主面が、β-Ga系単結晶の[010]軸を回転軸として(100)面から(101)面へ向かう方向に、68±10°回転させた面であることがより好ましいといえる。

【0076】
また、半導体基板11の主面は、β-Ga系単結晶の[010]軸を回転軸として(100)面から(101)面へ向かう方向に38±1°、53.8±1°、68±1°、76.3±1°、77.3±1°、83±1°、又は90±1°回転させた面であることも好ましいといえる。

【0077】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、第1の実施の形態に係るエピタキシャルウエハ10を含む半導体素子についての形態である。この半導体素子の一例として、いかに、MESFET(Metal Semiconductor Field Effect Transistor)構造を有する横型トランジスタについて説明する。

【0078】
(半導体素子の構造)
図8は、第2の実施の形態に係る横型トランジスタ40の垂直断面図である。横型トランジスタ40は、半導体基板11上に形成されたエピタキシャル層12と、エピタキシャル層12上のゲート電極41、ソース電極42、及びドレイン電極43を含む。ゲート電極41は、ソース電極42とドレイン電極43との間に配置される。

【0079】
ソース電極42及びドレイン電極43は、エピタキシャル層12の上面(半導体基板11に接している面の反対側の面)に接触してオーミック接合を形成する。また、ゲート電極41はエピタキシャル層12の上面に接触してショットキー接合を形成し、エピタキシャル層12中のゲート電極41下に空乏層が形成される。この空乏領域の厚さにより、横型トランジスタ40は、ノーマリーオフ型のトランジスタ又はノーマリーオン型のトランジスタとして機能する。

【0080】
半導体基板11は、Mg、Be、Zn、Fe等のp型ドーパントを含むGa系結晶からなり、高い電気抵抗を有する。

【0081】
エピタキシャル層12は、Si、Sn等のn型ドーパントを含む。ソース電極42及びドレイン電極43との接触部付近におけるn型ドーパントの濃度は、他の部分におけるn型ドーパントの濃度よりも高い。エピタキシャル層12の厚さは、例えば、0.1~1μmである。

【0082】
ゲート電極41、ソース電極42、及びドレイン電極43は、例えば、Au、Al、Ti、Sn、Ge、In、Ni、Co、Pt、W、Mo、Cr、Cu、Pb等の金属、これらの金属のうちの2つ以上を含む合金、ITO等の導電性化合物、又は導電性ポリマーからなる。導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン誘導体(PEDOT:ポリ(3,4)-エチレンジオキシチオフェン)にポリスチレンスルホン酸(PSS)をドーピングしたものや、ポリピロール誘導体にTCNAをドーピングしたもの等が用いられる。また、ゲート電極41は、異なる2つの金属からなる2層構造、例えばAl/Ti、Au/Ni、Au/Co、を有してもよい。

【0083】
横型トランジスタ40においては、ゲート電極41に印加するバイアス電圧を制御することにより、エピタキシャル層12内のゲート電極41下の空乏層の厚さを変化させ、ドレイン電流を制御することができる。

【0084】
上記の横型トランジスタ40は、第1の実施の形態に係るエピタキシャルウエハ10を含む半導体素子の一例であり、その他にも、エピタキシャルウエハ10を用いて様々な半導体素子を製造することができる。

【0085】
例えば、エピタキシャル層12をチャネル層として用いるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)やHEMT(High Electron Mobility Transistor)、半導体基板11とエピタキシャル層12にオーミック電極とショットキー電極がそれぞれ接続されるショットキーダイオード等を製造することができる。製造する半導体素子の種類によって、半導体基板11とエピタキシャル層12に含まれるドーパントの種類や濃度を適宜設定する。

【0086】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態によれば、HVPE法によりβ-Ga単結晶からなるエピタキシャル層を高い成長レートで成長させることができるβ-Ga単結晶からなる半導体基板を提供することができる。

【0087】
また、その半導体基板上にエピタキシャル層をエピタキシャル成長させることにより、効率よくエピタキシャルウエハを製造することができる。また、エピタキシャル層を高い成長レートで成長させることにより、半導体基板からの不純物の拡散を抑制することができるため、このエピタキシャルウエハは、高品質のエピタキシャル層を有する。

【0088】
さらに、そのエピタキシャルウエハを用いることにより、効率よく高品質な半導体素子を製造することができる。

【0089】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。

【0090】
また、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0091】
10…エピタキシャルウエハ、 11…半導体基板、 12…エピタキシャル層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
7