TOP > 国内特許検索 > イオンセンサ > 明細書

明細書 :イオンセンサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6422869号 (P6422869)
登録日 平成30年10月26日(2018.10.26)
発行日 平成30年11月14日(2018.11.14)
発明の名称または考案の名称 イオンセンサ
国際特許分類 C08F 220/10        (2006.01)
C08F 220/06        (2006.01)
C08F 212/14        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
FI C08F 220/10
C08F 220/06
C08F 212/14
G01N 21/64 F
請求項の数または発明の数 11
全頁数 29
出願番号 特願2015-529405 (P2015-529405)
出願日 平成26年4月11日(2014.4.11)
国際出願番号 PCT/JP2014/060519
国際公開番号 WO2015/015844
国際公開日 平成27年2月5日(2015.2.5)
優先権出願番号 2013157754
優先日 平成25年7月30日(2013.7.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年4月5日(2017.4.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】福島 孝典
【氏名】石割 文崇
【氏名】長谷部 花子
【氏名】染谷 隆夫
【氏名】関谷 毅
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
審査官 【審査官】藤井 勲
参考文献・文献 特開平04-233918(JP,A)
特開2001-106734(JP,A)
特開2002-268258(JP,A)
特開2007-238467(JP,A)
特開2010-112777(JP,A)
特開2011-180018(JP,A)
米国特許出願公開第2009/0137059(US,A1)
米国特許出願公開第2009/0270279(US,A1)
米国特許出願公開第2010/0298590(US,A1)
米国特許出願公開第2013/0164531(US,A1)
調査した分野 C08F 12/00 - 34/04
C08F 212/00 - 234/04
C08L 1/00 - 101/14
G01N 21/64
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
側鎖にカルボキシル基を有する繰り返し単位(A)と、側鎖に凝集誘起発光能を示すエステル残基を有するカルボキシレート基を有する繰り返し単位(B)とを有するコポリマーであって、
繰り返し単位(A)が、アクリル酸、メタクリル酸、及びスチレンカルボン酸から選ばれるモノマー由来の繰り返し単位であり、
繰り返し単位(B)が、フェニル基上に1~5個の親水性基が置換していてもよいテトラフェニルエチレン基からなるエステル残基を有する、アクリレート、メタクリレート、及びスチレンカルボキシレートから選ばれるモノマー由来の繰り返し単位であるコポリマー。
【請求項2】
繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)のモル比(A/B)が、4~1000である請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
数平均分子量が10,000~1,000,000である請求項1又は2のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項4】
多価金属イオン蛍光検出用コポリマーである請求項1~のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項5】
さらに、多官能性モノマーに由来する繰り返し単位(C)を有する請求項1~のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項6】
繰り返し単位(C)を0.1~10モル%含有する請求項記載のコポリマー。
【請求項7】
繰り返し単位(C)が、2以上の重合性ビニル基を有するモノマー由来の繰り返し単位である請求項又は記載のコポリマー。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載のコポリマーを有する多価金属イオン検出用デバイス。
【請求項9】
固体基材上に請求項1~のいずれかに記載のコポリマーが固定化されている請求項9記載の多価金属イオン検出用デバイス。
【請求項10】
固体基材上への請求項1~のいずれかに記載のコポリマーの固定化手段が、固体基材と前記コポリマーとの共有結合によるものである請求項記載の多価金属イオン検出用デバイス。
【請求項11】
請求項10のいずれかに記載のデバイスに、試料を接触させ、蛍光強度を測定することを特徴とする試料中の多価金属イオン濃度の定量法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なコポリマー及びこれを用いた多価金属イオン検出用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムは、生体内で骨の成分として存在する他、筋肉の収縮、神経の興奮伝導、酵素の活性化、ホルモン分泌等に重要な作用をしており、具体的には細胞の浸透圧調整、Na、Kイオンとの拮抗作用、筋肉や神経の興奮性の調節、神経の刺激伝達、血液凝固、酵素活性の賦活因子として作用する。従って、生体内のカルシウムイオンの分布、変化をリアルタイムで測定することは、疾病の発見、治療経過、生理機能の研究等において重要である。細胞外のカルシウムイオン濃度は1~2mMであり、一方、細胞内のカルシウムイオン濃度は細胞外の10000分の1の50~100nMである。
【0003】
このようなカルシウムイオンのセンサとしては、例えばグリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)骨格を有する化合物(Fura-2)が報告されている(非特許文献1)。しかしながら、このセンサーは、pKaがおよそ6~10と会合定数が大きいことからnMオーダーのカルシウムイオン濃度は検出できるが、細胞外のカルシウムイオン濃度は検出できない。また細胞外カルシウム濃度下では不可逆的なセンシング能を有するにすぎず、デバイスとの一体化が困難であることから、細胞内のin vitroイメージングで使用されているにすぎない。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】J. Biol. Chem., 1985, 260, 3440
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、可逆的なセンシングが可能で、デバイス化可能なカルシウム等の多価金属イオンセンサとして有用な化合物及びその化合物を用いたイオンセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、ポリアクリル酸に代表される側鎖にカルボキシル基を有するポリマーに着目し、その一部に凝集誘起発光能を有する化合物を導入したコポリマーを製造し、種々の金属イオンセンシング効果を検討したところ、当該コポリマーがカルシウムイオン等の多価金属イオンと結合すると凝集誘起発光化合物による蛍光が生じ、かつその蛍光は可逆性であること、さらに当該コポリマーは固体基材等に固定化でき、デバイス化が可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、〔1〕~〔15〕を提供するものである。
【0008】
〔1〕側鎖にカルボキシル基を有する繰り返し単位(A)と、側鎖に凝集誘起発光能を示すエステル残基を有するカルボキシレート基を有する繰り返し単位(B)とを有するコポリマー。
〔2〕繰り返し単位(A)が、アクリル酸、メタクリル酸、及びスチレンカルボン酸から選ばれるモノマー由来の繰り返し単位である〔1〕記載のコポリマー。
【0009】
〔3〕繰り返し単位(B)が、次式(1)又は(2)で示される化合物由来のエステル残基を有する、アクリレート、メタクリレート、及びスチレンカルボキシレートから選ばれるモノマー由来の繰り返し単位である〔1〕又は〔2〕記載のコポリマー。
【0010】
【化1】
JP0006422869B2_000002t.gif

【0011】
(式(1)中、R1は同一又は異なって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環式基を示し、E1は、ケイ素原子又はゲルマニウム原子を示し、A1及びB1は同一又は異なって、炭化水素基を示し、nは1~4の整数を示す)
【0012】
【化2】
JP0006422869B2_000003t.gif

【0013】
(式(2)中、R2及びR3は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環式基を示し、A2及びB2は、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環式基を示す。)
【0014】
〔4〕式(1)又は(2)で表される化合物が、フェニル基上に1~5個の親水性基が置換していてもよい1-メチル-1,2,3,4,5-ペンタフェニルシロール、2,3,4,5-テトラフェニル-1,1-ジメチルシロール又はテトラフェニルエチレンである〔3〕記載のコポリマー。
【0015】
〔5〕繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)のモル比(A/B)が、4~1000である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のコポリマー。
【0016】
〔6〕数平均分子量が10,000~1,000,000である〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のコポリマー。
〔7〕多価金属イオン蛍光検出用コポリマーである〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のコポリマー。
〔8〕さらに、多官能性モノマーに由来する繰り返し単位(C)を有する〔1〕~〔7〕のいずれかのコポリマー。
〔9〕繰り返し単位(C)を0.1~10モル%含有する〔8〕記載のコポリマー。
〔10〕繰り返し単位(C)が、2以上の重合性ビニル基を有するモノマー由来の繰り返し単位である〔8〕又は〔9〕記載のコポリマー。
〔11〕〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のコポリマーを有する多価金属イオン検出用デバイス。
〔12〕固体基材上に〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のコポリマーが固定化されている〔11〕記載の多価金属イオン検出用デバイス。
〔13〕固体基材上への〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のコポリマーの固定化手段が、固体基材と前記コポリマーとの共有結合によるものである〔12〕記載の多価金属イオン検出用デバイス。
〔14〕〔1〕~〔13〕のいずれかに記載のデバイスに、試料を接触させ、蛍光強度を測定することを特徴とする試料中の多価金属イオン濃度の定量法。
〔15〕次式(3)で示される化合物。
【0017】
【化3】
JP0006422869B2_000004t.gif

【0018】
(式(3)中、R4は水素原子又はメチル基を示し、R5は直接結合、炭素数1~8のアルキレン基又はフェニレン基を示し、Xは、次式(1)又は(2)で示される化合物由来の基を示す。)
【化4】
JP0006422869B2_000005t.gif

【0019】
(式(1)中、R1は同一又は異なって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環式基を示し、E1は、ケイ素原子又はゲルマニウム原子を示し、A1及びB1は同一又は異なって、炭化水素基を示し、nは1~4の整数を示す。)
【0020】
【化5】
JP0006422869B2_000006t.gif

【0021】
(式(2)中、R2及びR3は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環式基を示し、A2及びB2は、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環式基を示す。)
【発明の効果】
【0022】
本発明のコポリマーを用いれば、カルシウムイオンに代表される多価金属イオンが高感度で検出でき、その検出性(発光性)は可逆的である。また、本発明のコポリマーは、樹脂性基材等への固定化が容易である。従って、本発明のコポリマーを用いれば、カルシウムイオンに代表される多価金属イオン検出用デバイスが作成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】メタノール/水混合溶媒中でのpoly-10.05の蛍光スペクトルを示す(10mg/L、励起光=307nm、以下同じ)。
【図2】Ca2+濃度に対するpoly-10.05の蛍光強度を示す。
【図3】Na+、K+、Mg2+、Ca2+濃度に対するpoly-10.05の蛍光強度変化を示す。
【図4】各種多価金属イオンに対するpoly-10.05のCa2+センシング能を示す。
【図5】Na+、Mg2+の存在下におけるpoly-10.05のCa2+センシング能を示す。
【図6】poly-10.05のCa2+センシング能に対するEDTAの効果を示す。
【図7】poly-1の組成変化によるCa2+センシング能の変化を示す。
【図8】poly-1の組成変化によるCa2+センシング能の変化を示す。
【図9】poly-10.20とpoly-10.05のメタノール/水=8/2におけるCa2+センシング能を示す。
【図10】poly-10.05の(a)5mg/L、(b)10mg/L、(c)50mg/Lにおける蛍光強度変化を示す。
【図11】poly-10.05の(a)5mg/L、(b)10mg/L、(c)50mg/Lにおける蛍光強度変化を示す。
【図12】poly-10.05のカルシウムセンシング能に対するEt3N及びTFAの添加効果を示す。
【図13】gel-1の組成変化によるCa2+センシング能を示す。
【図14】gel-10.015のCa2+の可逆性を示す。
【図15】ゲルの蛍光量子収率とCa2+センシング能の関係を示す。
【図16】Hepesbuffer:H2O=50:50溶液中でのゲルのCa2+センシング能を示す。
【図17】カルシウム濃度の変化と蛍光量子収率の再現性を示す。
【図18】フレキシブル基板上でOLEDやOPVと組み合わせてフレキシブルセンサーの構造概念図を示す。
【図19】)poly-10.05、poly-1-NMeのHO/MeOH=1/1中(濃度10mg/L)の規格化した吸収、蛍光スペクトルを示す。
【図20】poly-1-NMeの0、1、5 or 10mM(10mg/L,293K,in MeOH/water=1/1,λex=341nm)におけるCaCl2センシング能(FLスペクトル)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のコポリマーは、少なくとも、側鎖にカルボキシル基を有する繰り返し単位(A)と、側鎖に凝集誘起発光能を示すエステル残基を有するカルボキシレート基を有する繰り返し単位(B)とを有する。

【0025】
繰り返し単位(A)としては、側鎖にカルボキシル基(-COOH)を有する限り、主鎖は特に限定されないがラジカル重合による主鎖が好ましい。そのような主鎖としては、式(4)

【0026】
【化6】
JP0006422869B2_000007t.gif

【0027】
(式(4)中、R4は水素原子又はメチル基を示す。)
で表される主鎖が好ましい。

【0028】
また、主鎖とカルボキシル基との間は、直接結合していてもよく、炭素数1~8のアルキレン基、フェニレン基などの二価の炭化水素基を介していてもよいが、直接結合であるのがより好ましい。

【0029】
繰り返し単位(A)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンカルボン酸等のモノマー由来の繰り返し単位が好ましく、式(5)で表される繰り返し単位がさらに好ましい。

【0030】
【化7】
JP0006422869B2_000008t.gif

【0031】
(式(5)中、R4は水素原子又はメチル基を示し、R5は直接結合、炭素数1~8のアルキレン基又はフェニレン基を示す。)

【0032】
繰り返し単位(B)は、側鎖に、凝集誘起発光能を示すエステル残基を有するカルボキシレート基を有する。
凝集誘起発光能を示すエステル残基としては、次式(1)又は(2)で示される化合物由来の基が挙げられる。

【0033】
【化8】
JP0006422869B2_000009t.gif

【0034】
(式(1)中、R1は同一又は異なって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環式基を示し、E1は、ケイ素原子又はゲルマニウム原子を示し、A1及びB1は同一又は異なって、炭化水素基を示し、nは1~4の整数を示す。)

【0035】
【化9】
JP0006422869B2_000010t.gif

【0036】
(式(2)中、R2及びR3は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環式基を示し、A2及びB2は、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環式基を示す。)

【0037】
1、R2及びR3で示される芳香族炭化水素基としては、炭素数6~14の芳香族炭化水素基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が挙げられる。また、芳香族複素環式基としては、1~3個の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する芳香族複素環式基が好ましく、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、チエニル基、チアゾリル基等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基に置換し得る基としては、親水性基が好ましく、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、スルホ基、チオール基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、及びスルフィニル基から選ばれる1~5個がより好ましい。ここで、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基としては、C1~C6アルキルアミノ基、ジ(C1~C6アルキル)アミノ基が好ましい。

【0038】
1、R2及びR3の好ましい例は、前記1~5個の親水性置換基を有していてもよいフェニル基である。

【0039】
1及びB1で示される炭化水素基としては、炭素数1~6のアルキル基、芳香族炭化水素基が好ましい。ここでアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、前記R1、R2、R3と同様の芳香族炭化水素基、特に1~5個の親水性置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。

【0040】
2及びB2で示される炭化水素基、芳香族複素環式基としては、前記R1、R2及びR3として示した芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基が好ましい。また、これらの炭化水素基又は複素環式基に置換し得る基は、親水性基が好ましく、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、スルホ基、チオール基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、及びスルフィニル基から選ばれる1~5個がより好ましい。ここで、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基としては、C1~C6アルキルアミノ基、ジ(C1~C6アルキル)アミノ基が好ましい。

【0041】
2及びB2の好ましい例は、前記1~5個の親水性基を有していてもよいフェニル基である。

【0042】
nは、4が特に好ましい。

【0043】
式(1)で表される化合物の特に好ましい例は、フェニル基上に前記1~5個の親水性基が置換していてもよい2,3,4,5-テトラフェニル-1,1-ジメチルシロール又は1-メチル-1,2,3,4,5-ペンタフェニルシロール(TPS)である。式(2)で表される化合物の特に好ましい例は、フェニル基上に前記1~5個の親水性基が置換していてもよいテトラフェニルエチレン(TPE)である。

【0044】
繰り返し単位(B)の側鎖に前記のカルボキシレート基を有する限り、主鎖は特に限定されないがラジカル重合による主鎖が好ましい。そのような主鎖としては、式(6)

【0045】
【化10】
JP0006422869B2_000011t.gif

【0046】
(式(6)中、R4は水素原子又はメチル基を示す。)
で表される主鎖が好ましい。

【0047】
また、主鎖とカルボキシレート基との間は、直接結合していてもよく、炭素数1~8のアルキレン基、フェニレン基などの二価の炭化水素基を介していてもよいが、直接結合であるのがより好ましい。

【0048】
繰り返し単位(B)の具体例としては、アクリレート、メタクリレート、スチレンカルボキシレート等のモノマー由来の繰り返し単位が好ましく、式(7)で表される繰り返し単位がさらに好ましい。

【0049】
【化11】
JP0006422869B2_000012t.gif

【0050】
(式(7)中、R4は水素原子又はメチル基を示し、R5は直接結合、炭素数1~8のアルキレン基又はフェニレン基を示し、Xは前記式(1)又は(2)で表される化合物由来の基を示す。)

【0051】
本発明のコポリマーにおける繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)のモル比(A/B)は、カルシウムイオン等に対する感度の点から、2以上1000以下であることが好ましく、3~1000がより好ましく、4~1000がさらに好ましく、5~1000がさらに好ましい。

【0052】
また、本発明のコポリマーは、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とを有する限り、他の繰り返し単位を有していてもよい。当該他の繰り返し単位としては、多官能性モノマーに由来する繰り返し単位(C)、エチレン、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等に由来する繰り返し単位等が挙げられる。このうち、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)に加えて、多官能性モノマーに由来する繰り返し単位(C)を有するコポリマーは、架橋構造形成によりゲル化し、多価金属イオンセンサとして特に好ましい。

【0053】
繰り返し単位(C)としては、2以上の重合性ビニル基を有するモノマー由来の繰り返し単位であればよく、例えばポリオールポリ不飽和カルボキシレート、直鎖又は分岐鎖アルキレンポリアクリルアミド、ポリオールポリアクリルアミド、ジビニルベンゼン類等が挙げられる。このうち、ポリオールポリ不飽和カルボキシレートとしては、ポリオールポリ(メタ)アクリレートが好ましい。ここで、ポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールを含む)、ポリブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ビスフェノールA、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカンジメタノール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、リン酸ビス(2-ヒドロキシエチル)、ヘキサフルオロヘキサンジオール、デカンジオール、ペンタンジオール等の2~5価のポリオールが好ましい。
直鎖又は分岐鎖アルキレンポリアクリルアミドとしては、炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキレンポリアクリルアミドが好ましく、メチレンビスアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、プロピレンビスアクリルアミド等が挙げられる。また、ポリオールジアクリルアミドとしては、(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド等が挙げられる。ジビニルベンゼン類としては、オルト-、メタ-又はパラ-ジビニルベンゼン等が挙げられる。

【0054】
繰り返し単位(C)は、ゲル形成性及びイオン測定感度の点から、本発明コポリマー中に0.1~10モル%含有するのが好ましく、0.1~8モル%含有するのがより好ましく、0.5~5モル%含有するのがさらに好ましく、1~5モル%含有するのがさらに好ましい。
また、繰り返し単位(C)の含有率によってゲルの膨潤度が上昇し、当該膨潤度はCa2+センシング能の点から、340%以上が好ましく、340~1500%がより好ましく、500~1500%がさらに好ましい。

【0055】
さらに本発明のコポリマーには、基材との結合部位となる官能基を有していてもよく、そのような官能基としては、アルコール、チオール、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、シロキサン、ビニル、アセチレン等が挙げられる。

【0056】
本発明のコポリマーの数平均分子量(Mn)は、カルシウムイオン等に対する感度の点から10,000以上1,000,000以下が好ましく、10,000~800,000がより好ましく、10,000~500,000がさらに好ましい。数平均分子量は、後記実施例記載の方法で測定できる。

【0057】
本発明のコポリマーの共重合形態は、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれでもよいが、ランダム共重合が好ましい。

【0058】
次に本発明のコポリマーの製造法について説明する。
本発明のコポリマーは、例えば繰り返し単位(A)となるモノマー及び繰り返し単位(B)となるモノマー、さらに必要に応じて繰り返し単位(C)となるモノマーをラジカル共重合させればよい。また、カルボキシル基が保護された繰り返し単位(A)となるモノマーと、繰り返し単位(B)となるモノマーと、必要に応じて繰り返し単位(C)となるモノマーとをラジカル共重合させた後、繰り返し単位(A)のカルボキシル基の保護基を脱離させる方法も挙げられる。

【0059】
ここで、前記式(7)で表される繰り返し単位となるモノマーは、次式(3)で示される。

【0060】
【化12】
JP0006422869B2_000013t.gif

【0061】
(式(3)中、R4、R5及びXは前記と同じ。)

【0062】
このモノマー(3)は、例えば(メタ)アクリルハライドとXOHとをトリエチルアミンのような塩基の存在下で反応させることにより得ることができる。

【0063】
繰り返し単位(A)のカルボキシル基の保護基としては、tert-ブチル基が好ましい。
前記ラジカル共重合反応は、重合開始剤の存在下に行なわれる。上記重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ系開始剤;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等の光重合開始剤;ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の過酸化物が挙げられ、これら重合開始剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
重合開始剤の合計使用量は、繰り返し単位(A)のモノマーに対し、通常0.0002~0.2質量倍程度である。

【0064】
また、ラジカル共重合反応には溶媒、連鎖移動剤を使用してもよい。溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶媒;1、4-ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられ、これら溶媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これら溶媒の合計使用量は、繰り返し単位(A)のモノマーに対し、通常0.5~15質量倍程度である。
また、上記連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、tert-ドデシルメルカプタン等が挙げられる。
また、共重合反応時間は通常0.5~24時間程度であり、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常0~120℃程度である。

【0065】
共重合反応後、繰り返し単位(A)のカルボキシル基の保護基、例えばtert-ブチル基の脱離は、トリフルオロ酢酸処理により容易に行うことができる。

【0066】
本発明のコポリマーは、カルシウムイオン等の非存在下では蛍光を発生せず、カルシウムイオンの濃度に依存して強い蛍光を発生する。これは、コポリマー中のカルボキシル基が多価金属イオンと結合して架橋構造を形成するため、凝集誘起発光能を有する基が凝集による蛍光が発生するものである。また、繰り返し単位(C)を有する本発明のコポリマーは、ゲル化しているため特定箇所に固定することができ、長期間安定して多価金属イオンを計測可能である。

【0067】
かくして、本発明のコポリマーは、後記実施例に示すように、カルシウム等の多価金属イオンと反応して蛍光を生じるので、種々の多価金属イオンセンサとして有用である。また、本発明のコポリマーは、キレート剤の存在下で蛍光を消失し、蛍光の発生が可逆的であるので、多価金属イオン検出用デバイスとして有用である。また、繰り返し単位(C)を有するコポリマーは、ゲルの形態になっており、長期間にわたって安定した多価金属イオンセンサとして有用である。

【0068】
本発明のコポリマーを多価金属イオンセンサデバイス(多価金属イオン検出用デバイス)とするには、基材上に本発明のコポリマーを形成させる。基材上にコポリマーを形成させるには、基材上で前記繰り返し単位(A)となるモノマーと前記繰り返し単位(B)となるモノマーとを共重合させるのが好ましい。例えば、基材上にα-ブロモ-α,α-ジメチルアセテート基を導入後、これに繰り返し単位(A)となるモノマーと繰り返し単位(B)となるモノマーとを表面開始共重合させることによって製造することができる。
また、繰り返し単位(C)を有する本発明のコポリマーは、ゲルであるためそのまま多価金属イオンセンサとして利用できる他、基材上でゲル重合させて固定化することにより、イオンセンサデバイスとすることもできる。本発明のコポリマーにより形成されるゲルはmMオーダーという細胞外カルシウム濃度に近い濃度範囲でのカルシウムセンシングが可能であることから、細胞外でカルシウム濃度を検出する、デバイスへの応用が可能である。すなわち、フレキシブル基板上で有機発光ダイオード(OLED)や有機太陽電池(OPV)と組み合わせてフレキシブルカルシウムセンサーが構築可能であると考えられる。また、それを集積することにより大面積のカルシウムセンシングデバイスの構築も可能になる。

【0069】
ここで基材としては、ガラス、透明樹脂フィルム、透明樹脂針等が挙げられる。透明樹脂の素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、エチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。

【0070】
多価金属イオン検出用デバイスに、試料を接触させ、発生した蛍光強度を測定すれば、試料中の多価金属イオン濃度が定量できる。ここで試料としては、カルシウムイオンの場合には、血液、血漿、血清、リンパ液、尿などの体液、各種組織等が挙げられる。また、カルシウムイオン以外の多価金属イオンとしては、亜鉛、鉛、カドミウム、水銀、銅、クロム、マンガン、ヒ素、コバルト等の重金属イオンが挙げられる。これらの重金属イオンの場合には、河川水、湖沼水、排水等の各種環境水、土壌等が挙げられる。

【0071】
測定は、具体的には、デバイスと試料を接触後、デバイスに励起光を照射して、発生する蛍光を測定することにより行なわれる。従って、蛍光測定キットには、前記デバイス、励起光照射器、及び蛍光測定器が含まれる。得られた蛍光強度から多価金属イオン濃度を定量するには、予め作成された検量線を用いるのが簡単である。
【実施例】
【0072】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0073】
実施例1
(1)アルゴンガス雰囲気下、亜鉛粉末(15.6g)及びテトラヒドロフラン200mlを反応容器に投入した。-5~0℃に冷却し、10℃以下に維持したシリンジでTiCl4(13.2ml)をゆっくり添加した。混合物を室温にて0.5時間攪拌し、2.5時間加熱還流した。再び-5~0℃に冷却し、ピリジン(5.0ml)を加え10分攪拌した。p-ヒドロキシベンゾフェノン(4.80g)及びベンゾフェノン(5.28g)のテトラヒドロフラン(30ml)溶液をシリンジでゆっくり加えた。添加後、反応混合物を70℃に加熱し、TLCで原料がなくなるまで還流した。10%K2CO3水溶液を加え、次いでジクロロメタンを加えた。有機相を水及び食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥後、減圧で乾固し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3)で精製し、p-ヒドロキシテトラフェニルエチレン(p-ヒドロキシTPE)を2.76g(収率32%)得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 6.98-7.15(m,15H), 6.89(dd,J=8.68,2.07Hz,2H), 6.56(dd,J=8.76,2.23Hz,2H), 4.63(s,1H)ppm.
【実施例】
【0074】
(2)p-ヒドロキシテトラフェニルエチレン(0.910g)及びトリエチルアミン(1.46ml)のジクロロメタン(30ml)溶液を0℃に冷却し、アクリロイルクロリド(420μL)のジクロロメタン5ml溶液を滴下した。反応混合物を、TLCで原料がなくなるまで室温で3時間攪拌した。反応液に炭酸水素ナトリウムを加え、さらにジクロロメタンを加えた。有機相を水及び食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥後、減圧で乾固した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:CHCl3=1:1)で精製し、p-ヒドロキシテトラフェニルエチレン アクリレート0.756g(p-ヒドロキシTPEアクリレート)(収率72%)を得た。テトラフェニルエチレンをTPEと略した。
1H NMR(400MHz, CDCl3, 293 K) δ7.01-7.11(m,15H), 6.89(d,J=9.0Hz,2H), 6.56(dd,J=17.3,1.3Hz,1H), 6.27(dd,J=10.5,17.3Hz,1H), 5.99(dd,J=10.5,1.3Hz,1H)ppm.
13C NMR(100MHz, CDCl3, 293K) δ 164.3, 149.0, 143.7, 143.6, 143.5, 141.4, 141.3,140.0, 132.4, 132.3, 131.4, 131.3, 128.1, 127.9, 127.8, 127.7, 126.6, 126.5, 120.7ppm.
FT-IR(KBr) ν 3076, 3054, 3024, 1756, 1677, 1599, 1502, 1443, 1356, 1200, 1166, 1140, 1017, 763, 748, 699, 613, 572, 498 cm-1.
HRMS(FAB)Cald for C29H22O2[M]+m/z=402.1620, Found:m/z=402.167
【実施例】
【0075】
実施例2
(1)実施例1で得たp-ヒドロキシTPE(21.3mg,5モル%)、tert-ブチルアクリレート(146μL,95モル%)及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)のジメチルホルムアミド(1ml)溶液を、減圧/アルゴンガスを使用して3回脱酸素した。60℃で12時間攪拌し、室温まで冷却し、溶媒留去して、(p-ヒドロキシTPEアクリレート)0.05-(tert-ブチルアクリレート)9.95-コポリマーを156mg得た。
1H NMR(400MHz, CDCl3, 293 K) δ 6.79-7.11, 2.05-2.39, 1.71-1.86, 1.20-1.63ppm.
FT-IR(KBr) ν 2979, 2935, 1731, 1481, 1457, 1393, 1368, 1257, 1149, 1034, 909, 846, 751, 701, 471, 430cm-1.
Mn=24,000, Mw=44,000, PDI=1.86(GPC : eluent ; DMF, PSt standards).
【実施例】
【0076】
(2)(1)で得られたコポリマー10.0mgをトリフルオロ酢酸(58.0μL)に溶解し、室温で12時間攪拌した。反応液を溶媒留去して(p-ヒドロキシTPEアクリレート)0.05-(アクリル酸)9.95-コポリマーを9.80mg得た。
1H NMR(400 MHz, CD3OD, 293 K) δ 6.79-7.21, 2.28-2.65, 1.40-2.22 ppm.
FT-IR(KBr) ν 2961, 2361, 1716, 1503, 1454, 1417, 1249, 1168, 802, 701, 614, 503, 414 cm-1.
【実施例】
【0077】
実施例3
(1)実施例2(1)と同様にして、(p-ヒドロキシTPEアクリレート)0.01-(tert-ブチルアクリレート)9.99-コポリマーを得た。
1H NMR(400 MHz, CDCl3, 293 K) δ 6.78-7.15, 2.08-2.35, 1.71-1.89, 1.20-1.62ppm.
FT-IR (KBr) ν 2980, 2936, 1731, 1481, 1458, 1394, 1368, 1258, 1148, 1035, 909, 847, 752, 701, 471, 435cm-1.
Mn=21000, Mw=29000, PDI=1.36 (GPC : eluent ; DMF, PSt standards).
【実施例】
【0078】
(2)実施例2(2)と同様にして、(p-ヒドロキシTPEアクリレート)0.01-(アクリル酸)9.99-コポリマーを得た。
【実施例】
【0079】
1H NMR(400MHz, CD3OD, 293 K) δ 6.82-7.21, 2.22-2.64, 1.42-2.10ppm
FT-IR(KBr) ν 2961, 2349, 1717, 1456, 1417, 1253, 1169, 802, 701, 617, 511, 463,436, 404cm-1.
【実施例】
【0080】
実施例4
(1)実施例2(1)と同様にして、(p-ヒドロキシTPEアクリレート)0.02-(tert-ブチルアクリレート)0.80-コポリマーを得た。
1H NMR(400MHz, CDCl3, 293 K) δ 6.45-7.24, 0.60-2.76ppm.
FT-IR(KBr) ν 3439, 3055, 2978, 2933, 2360, 1757, 1728, 1599, 1503, 1493, 1408, 1444, 1393, 1368, 1256, 1200, 1149, 1075, 1031, 1018, 846, 762, 749, 700, 614, 572, 473, 430cm-1.
Mn=34,000, Mw=67,000, PDI=1.98(GPC : eluent ; DMF, PSt standards).
【実施例】
【0081】
(2)実施例2(2)と同様にして、(p-ヒドロキシTPEアクリレート)0.20-(アクリル酸)0.80-コポリマーを得た。
1H NMR(400MHz, CD3OD, 293 K) δ 6.62-7.21, 1.10-2.79ppm.
FT-IR(KBr) ν 3054, 2932, 2362, 1718, 1599, 1502, 1444, 1406, 1198, 1166, 1075, 1030, 1017, 803, 763, 748, 699, 613, 572cm-1.
【実施例】
【0082】
実施例5
(1)実施例2(1)と同様にして、(p-ヒドロキシTPEアクリレート)0.50-(tert-ブチルアクリレート)0.50-コポリマーを得た。
1H NMR(400 MHz, CDCl3, 293 K) δ 6.50-7.20, 1.05-2.95ppm.
FT-IR(KBr) ν 3440, 3054, 3022, 2977, 2932, 2360, 1757, 1727, 1599, 1502, 1493, 1444, 1393, 1368, 1251, 1200, 1165, 1147, 1075, 1030, 1018, 845, 762, 748, 699, 614, 572, 496cm-1.
Mn=18,000, Mw=35,000, PDI=1.95(GPC : eluent ; DMF, PSt standards).
【実施例】
【0083】
(2)実施例2(2)と同様にして、(p-ヒドロキシTPEアクリレート)0.50-(アクリル酸)0.50-コポリマーを得た。
1H NMR(400 MHz, CDCl3, 293 K) δ 6.39-7.24, 0.65-3.05ppm.
FT-IR(KBr) ν 3438, 3053, 3024, 2931, 2361, 1950, 1752, 1599, 1576, 1502, 1493, 1444, 1199, 1166, 1075, 1030, 1017, 762, 749, 698, 613, 572, 496cm-1.
【実施例】
【0084】
実施例2-実施例5で得られたコポリマーの構造及び特性を表1に示す。
【実施例】
【0085】
【化13】
JP0006422869B2_000014t.gif
【実施例】
【0086】
【表1】
JP0006422869B2_000015t.gif
【実施例】
【0087】
実施例6(メタノール/水混合溶媒中のpoly-10.05の発光)
Poly-10.05の溶解性を調べたところ、メタノールに対しては溶解性を示すが、水には不溶であることが分かった。本発明では、生体内でのCa2+認識を目的にしているため、水系で実験を行う必要があったが、ここではまずメタノールと水の混合溶媒系での実験を行うことにした。
そこで、様々な組成比のメタノール/水混合溶媒(メタノール/水=100/0~メタノール/水=1/99)中で、poly-10.05のUVスペクトル、蛍光スペクトルを測定した。
UV-visスペクトルにおいて、水を加えていくに従い、沈殿形成に伴う光散乱が観測されたが、それ以外に大きな変化は観測されなかった。
一方、蛍光スペクトルにおいては大きな変化が観測された(図1)。すなわちpoly-10.05は、メタノール100%溶液において蛍光性はほとんど観測されなかったが、水を加えるに従い蛍光性が大きく上昇した。
以降の実験では、メタノール/水=5/5の混合溶媒でCa2+との反応性を評価した。
【実施例】
【0088】
実施例7(Ca2+センシング能)
(1)前述の通り、poly-10.05は水に不溶であるため、メタノール/水=5/5の混合溶媒にpoly-10.05を溶解させ、Ca2+を添加した時の蛍光挙動の変化について検討した。具体的には、10mg/Lのpoly-10.05溶液に対し、CaCl2を少量ずつ添加したときの、蛍光スペクトルを観察した。その蛍光スペクトルの変化は、図2に、Ca2+濃度に対して、極大蛍光波長(λmax=465nm)における蛍光強度をプロットした。
【実施例】
【0089】
図2の蛍光スペクトルにおいてはCaCl2を加えるに従い、蛍光強度の上昇が観測された。この蛍光強度の上昇は、poly-10.05はCa2+の存在下では、ポリマー鎖の凝集が誘起され、TPE部位の分子内回転運動が抑制されて、蛍光強度が上昇するために起こると考えられる。このスペクトル変化が単なる塩析による溶解性の低下に起因するものか否かについて調べるために、NaCl、KCl、MgCl2の他の金属イオンについても同様にpoly-10.05に添加していき、蛍光強度の変化を観察した。図3に、金属塩濃度に対して、極大蛍光波長(λmax=465nm)における蛍光強度をプロットしたグラフを示す。
【実施例】
【0090】
図3より、Na+、K+、Mg2+をpoly-10.05に添加していったところ、驚くべきことに蛍光強度の上昇はCa2+に比べ僅かであり、poly-10.05はCa2+を選択的にセンシングできることが分かった。すなわち、この蛍光スペクトル変化が単なる塩析による溶解性の低下に起因するのではなく、Ca2+を添加することで、ポリマー鎖の凝集が誘起され、TPE部位の分子内回転運動が抑制されたことに起因することが示唆された。
【実施例】
【0091】
(2)また図3より、同じ2価の金属イオンであるCa2+とMg2+では、蛍光スペクトルの変化に大きな差があることが分かる。この選択性について考察するために、他のアルカリ土類金属であるSr2+やBa2+、また遷移金属であるZn2+、Fe2+の塩化物をpoly-10.05に添加し、蛍光スペクトルを測定した。図4に、金属塩濃度に対して、極大蛍光波長(λmax=465nm)における蛍光強度をプロットした。
【実施例】
【0092】
Ca2+をpoly-10.05に対して添加していった際には、約1.0mMのCaCl2を添加することで蛍光強度はほぼ飽和するが、Sr2+、Ba2+では約0.1mMの添加で蛍光強度は飽和した。またZn2+の場合では、約0.4mMの添加で蛍光強度は飽和した。すなわちpoly-10.05は、Sr2+、Ba2+、Zn2+に対してはCa2+よりも敏感に応答することが分かった。
アルカリ土類金属においては、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+の順にイオン半径が大きくなるが、poly-10.05の応答性はおよそこの順になっており、イオン半径の大きいアルカリ土類金属イオンほどpoly-10.05と強く相互作用し、ポリマーの凝集を促進することが示唆された。遷移金属であるZn2+の添加による蛍光スペクトルの変化は、Ca2+に比べ大きかった。一方、Fe2+の添加によりpoly-10.05の蛍光強度は減少していったため、Fe2+は消光剤として働くことが考えられる。このように遷移金属イオンではZn2+のようにpoly-10.05に添加することで蛍光強度を上昇させるものと、Fe2+のように蛍光強度を減少させるものがあることが分かった。
【実施例】
【0093】
(3)次に、Na+やMg2+の存在下でもpoly-10.05はCa2+を選択的にセンシングすることができるか検討した。1.0mMのNa+、Mg2+が添加されたpoly-10.05の溶液に、1.0mMのCa2+を添加したときの蛍光スペクトルの変化を観察した(図5)。
【実施例】
【0094】
まず、1.0mMのNaClまたはMgCl2をpoly-10.05に添加したところ蛍光強度はほとんど上昇しなかった。そこにCaCl2を1.0mM添加したところ、蛍光強度は大幅に上昇した。このことは、Na+やMg2+存在下でも、poly-10.05はCa2+を選択的にセンシングできることを示している。このことは多くの共雑物が存在する生体内においても、poly-10.05はCa2+を選択的にセンシングできる可能性を示唆している。
【実施例】
【0095】
(4)また、poly-10.05のCa2+センシングの可逆性を調べるために、Ca2+が添加されたpoly-10.05にEDTAを添加した。EDTAはCa2+キレート剤であり、Ca2+の会合定数はpKa=10.76である。1.0mMのCa2+が添加されたpoly-10.05に対してEDTAを1.0mM添加し、蛍光スペクトルの変化を観測した(図6)。
【実施例】
【0096】
1.0mMのCa2+が添加されたpoly-10.05に1.0mMのEDTAを添加したところ、蛍光強度はCa2+添加前の強度まで減少した(図6)。これはpoly-10.05と相互作用していたCa2+がEDTAにキレートされ、poly-10.05はCa2+添加前の状態に戻ったことに由来すると考えられる。このことからpoly-10.05のCa2+センシングは可逆性があることが示唆される。
【実施例】
【0097】
実施例8(Poly-1の組成変化によるCa2+センシング能の変化)
TPE部位とポリアクリル酸部位の組成比の違いによって、poly-1のCa2+センシング能にどのような影響があるのか調べるために、poly-10.01、poly-10.05、poly-10.20、poly-10.50のCa2+に対する応答挙動について検討した。まず、様々な組成比のメタノールと水の混合溶媒、またはDMFと水の混合溶媒を用いて、poly-10.01、poly-10.05、poly-10.20、poly-10.50の蛍光スペクトルの変化を観測した。poly-10.50はメタノールに溶解しなかったため、DMF/水混合溶媒を用いた。そこで図7(a)~(d)に、メタノール/水またはDMF/水混合溶媒中の水の組成比に対して、極大蛍光波長(λmax=465nm)における蛍光強度をプロットしたグラフを示す。
【実施例】
【0098】
図7(a)~(d)をみると、poly-10.01、poly-10.05では含水量が40%付近から蛍光強度が上昇するが、poly-10.20やpoly-10.50では含水量が10%付近から上昇し始め、50%のときにすでに蛍光強度が飽和している。これは、poly-10.20やpoly-10.50は、より疎水的であることに由来するものと考えられる。
そこで、組成比の異なるpoly-10.01、poly-10.05、poly-10.20、poly-10.50に対して、メタノール/水=1/1またはDMF/水=1/1の混合溶媒を用いてCaCl2を添加していき、蛍光スペクトルの変化を観測した。図8に、Ca2+濃度に対して、極大蛍光波長(λmax=465nm)における飽和値で規格化した蛍光強度をプロットしたグラフを示す。
【実施例】
【0099】
poly-10.01、poly-10.05では、CaCl2を添加すると蛍光強度は上昇したが、poly-10.20、poly-10.50ではCaCl2を添加しても、蛍光強度にほとんど変化は見られなかった。これは、含水量が50%のpoly-10.20、poly-10.50では、溶媒の効果によって既に蛍光強度が飽和状態であるためpoly-10.20、poly-10.50は既に凝集しており、Ca2+を添加してもpoly-10.20、poly-10.50はさらに凝集することができなかったためと考えられる。
そこで低含水条件において、poly-10.20、poly-10.50のCa2+滴定実験を行った。メタノール/水=8/2またはDMF/水=8/2の混合溶媒中では蛍光強度は飽和していないことが分かる(図7(c),(d))。そこでこの組成比の混合溶媒中のpoly-10.20、poly-10.50に対してCaCl2を添加し蛍光スペクトル変化を観測した。図9に、Ca2+濃度に対して、極大蛍光波長(λmax=465nm)における蛍光強度をプロットしたグラフを示す。
【実施例】
【0100】
溶媒組成比がメタノール/水=8/2のpoly-10.20およびDMF/水=8/2のpoly-10.50にCa2+を添加すると、蛍光強度は上昇し、0.1mMのCa2+濃度で飽和した。よって、TPE部位を多くもつpoly-1でも、低含水条件ではCa2+をセンシングできることが分かった。
また、poly-10.01、poly-10.05のCa2+濃度の検出範囲が0mM~1.0mMであるのに対し(図8)、poly-10.20、poly-10.50はCa2+濃度の検出範囲は0mM~0.1mMであることも分かる(図9)。これは、poly-10.20、poly-10.50がpoly-10.01、poly-10.05に比べより疎水的であることや、Ca2+と相互作用しポリマー鎖の凝集を引き起こすカルボン酸部位が少ないことに由来するものと考えられる。つまり、poly-1の組成を変えることによって、Ca2+濃度の検出範囲が変化することが分かった。
【実施例】
【0101】
実施例9(Poly-10.05の濃度変化によるCa2+センシング能の変化)
Poly-10.05の濃度の違いによって、poly-1のCa2+センシング能にどのような変化があるか検討した。そこで(a)5mg/L、(b)10mg/L、(c)50mg/Lの濃度の異なる3種類のpoly-10.05の溶液に対してCaCl2を添加し、蛍光スペクトルの変化を観測した。図10に、Ca2+濃度に対して、極大蛍光波長(λmax=465nm)における飽和時の蛍光強度で規格化した蛍光強度をプロットしたグラフをに示す。
【実施例】
【0102】
5mg/Lの濃度のpoly-10.05では約0.3mMのCa2+の添加で蛍光強度は飽和し、50mg/Lの濃度のpoly-10.05では30~50mMのCa2+の添加で蛍光強度は飽和した。これは、薄い濃度のpoly-10.05では、濃い濃度のpoly-10.05に比べポリマー数が少なくなり、Ca2+と相互作用しポリマー鎖の凝集を引き起こすカルボン酸部位が少なくないため、より少量のCa2+の添加で蛍光強度は飽和するものと考えられる。
そこで、図10の横軸をPAA部位のカルボン酸(COOH)に対するCa2+量の比に変換したグラフを図11に示す。
【実施例】
【0103】
このようにポリマーとCa2+の量比で規格化しても、poly-10.05の濃度が異なると、蛍光強度が飽和するカルボン酸(COOH)に対するCa2+量の比が異なることが分かった。すなわち5mg/Lの濃度のpoly-10.05はカルボン酸(COOH)に対するCa2+量の比が約10のとき蛍光強度は飽和しているが、50mg/Lの濃度のpoly-10.05はカルボン酸(COOH)に対するCa2+の量が50~100のときに飽和している。これは、カルボン酸はCa2+と相互作用する場合にはプロトンが解離したカルボキシラート(COO-)の状態で相互作用しており、poly-10.05の濃度が薄くなることによって、カルボン酸(COOH)の解離度が上昇し、カルボン酸(COOH)とCa2+の相互作用が起こりやすくなっていることに由来する。
この考えに基づくと、poly-10.05に塩基や酸を添加し、カルボン酸(COOH)の解離度を変化させることで、Ca2+センシング挙動も変化すると考えられる。そこで0.1mMもしくは1.0mMのCa2+が添加されたpoly-10.05にTFAまたはトリエチルアミンを加え、蛍光スペクトルの変化を観察した。図12にその蛍光スペクトルを示す。
【実施例】
【0104】
0.1mMのCaCl2が添加されたpoly-10.05に、トリエチルアミンを添加することで、蛍光強度が上昇し0.5mMのトリエチルアミンを加えた時点で飽和した。また1mMのCaCl2が添加されたpoly-10.05に、TFAを添加すると、蛍光強度は減少した。これらの変化は、トリエチルアミンをpoly-10.05に加えることで、カルボン酸(COOH)の解離度が上昇し多くのカルボキシラートが生成し、Ca2+との相互作用が強くなり、ポリマー鎖の凝集が誘起され、TFAをpoly-10.05に加えることで、カルボン酸(COOH)の解離度は減少し、Ca2+との相互作用が弱くなり、Ca2+放出することに由来するものと考えられる。このように、酸性度・塩基性度の変化によって、poly-10.05のCa2+センシング能は変化することが分かった。
【実施例】
【0105】
実施例10(TPEへの親水性基導入の効果)
ジメチルアミノ基を有し、546nm付近に極大蛍光波長を有するカルシウムセンサーの構築を行った。
ジメチルアミノ化TPEを有するアクリレートモノマー、およびポリマーは以下のようにして合成した。
【実施例】
【0106】
(1)アルゴンガス雰囲気下、亜鉛粉末(3.25g)及びテトラヒドロフラン60mlを反応容器に投入した。-5~0℃に冷却し、10℃以下に維持したシリンジでTiCl4(2.75ml)をゆっくり添加した。混合物を室温にて0.5時間攪拌し、2.5時間加熱還流した。再び-5~0℃に冷却し、ピリジン(1.0ml)を加え10分攪拌した。p-ヒドロキシベンゾフェノン(0.99g)及び4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン(1.34g)のテトラヒドロフラン(30ml)溶液をシリンジでゆっくり加えた。添加後、反応混合物を70℃に加熱し、TLCで原料がなくなるまで還流した。10%K2CO3水溶液を加え、次いでジクロロメタンを加えた。有機相を水及び食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥後、減圧で乾固し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=95:5)で精製し、Rf値0.30のスポットの生成物を集め粗精製物を(310mg)得た。
この粗精製物(43.4mg)及びトリエチルアミン(56μL)のジクロロメタン(0.5ml)溶液を0℃に冷却し、アクリロイルクロリド(16μL)のジクロロメタン5ml溶液を滴下した。反応混合物を、TLCで原料がなくなるまで室温で3時間攪拌した。反応液に炭酸水素ナトリウムを加え、さらにジクロロメタンを加えた。有機相を水及び食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥後、減圧で乾固した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=99:1)で精製し、4-ヒドロキシ-4’,4”-ビス(ジメチルアミノ)テトラフェニルエチレン アクリレート42.7mg(4’,4”-ビス(ジメチルアミノ)TPE-アクリレート)(2段階収率12%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3, 293 K) δ 7.03-7.26 (m, 7H), 6.87-6.91 (m, 6H), 6.56 (dd,J = 17.29, 1.32 Hz, 1H), 6.47 (d, J = 8.96 Hz, 2H), 6.45 (d, J = 8.96 Hz, 2H), 6.28 (dd, J = 17.29, 1.32 Hz, 1H), 5.96 (dd, J = 10.44, 1.32 Hz, 1H), 2.90 (s, 6H), 2.88 (s, 6H) ppm
13C NMR (100MHz, CDCl3, 293 K) δ 164.4, 148.9, 148.9, 148.3, 145.0, 142.9, 141.7, 135.9, 132.5, 132.4, 132.2, 132.0, 131.6, 128.2, 127.6, 125.6, 120.4, 111.5, 111.4, 40.4 ppm.
FT-IR: ν 3449, 3083, 3035, 2921, 2889, 2802, 1746, 1608, 1519, 1444, 1402, 1354, 1294, 1248, 1198, 1166, 1153, 1126, 1065, 1018, 976, 946, 902, 818, 768, 739, 700, 589, 471, 454, 432, 420 cm-1.
【実施例】
【0107】
(2)(1)で得た4’,4”-ビス(ジメチルアミノ)TPE-アクリレート(12.2mg,5モル%)、tert-ブチルアクリレート(69.0μL,95モル%)及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)のジメチルホルムアミド(0.5ml)溶液を、減圧/アルゴンガスを使用して3回脱酸素した。60℃で12時間攪拌し、室温に冷却し、溶媒留去して、(4’,4”-ビス(ジメチルアミノ)TPE-アクリレート)0.05-(tert-ブチルアクリレート)9.95-コポリマーを73.0mg得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3, 293 K) δ 6.72-7.16 (m), 6.35-6.53 (m), 2.80-2.95 (m), 2.12-2.45 (m), 1.14-1.93 (m) ppm.
FT-IR(KBr) ν3437, 2978, 2933, 1729, 1609, 1520, 1480, 1450, 1393, 1367, 1256, 1149, 947, 845, 752, 700, 578, 471, 449, 418 cm-1.
Mn=24,000, Mw=44,000, PDI=1.86(GPC : eluent ; DMF, PSt standards).
【実施例】
【0108】
(3)(2)で得られたコポリマー30.0mgをトリフルオロ酢酸(400μL)に溶解し、室温で12時間攪拌した。反応液を溶媒留去して(4’,4”-ビス(ジメチルアミノ)TPE-アクリレート)0.05-(アクリル酸)9.95-コポリマーを17mg得た。
1H NMR δ 6.83-7.21 (m), 3.01-3.24 (m), 2.31-2.60 (m), 1.45-2.18 (m) ppm
FT-IR (KBr) ν 3448, 2959, 1719, 1509, 1451, 1411, 1250, 1196, 1018, 901, 800, 723, 703, 605, 579, 521, 482, 443, 418 cm-1
【実施例】
【0109】
(4)(3)で得られたコポリマーを水/メタノール=1/1混合溶媒に溶解させ(10mg/L)、カルシウムクロリドを滴下して行ったところ、蛍光強度は増大し、カルシウムセンサーとして機能した。その蛍光スペクトルは546nmに極大波長を有し、黄色に発光した。このように、このセンサーでは異なる発光波長のAIE色素を用いることにより、その発光波長を選択することが可能であることが分かった。
【実施例】
【0110】
実施例11(基材への固定化)
このポリマーは表面開始重合(SIP: Surface-Initiated Polymerization)法を用いて基材へ固定化することも可能である。ここではガラス基板への固定化方法について説明する。まず、基板への固定化が可能なRAFT剤を調整する。トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(298mg)、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボナート(105mg)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN,16mg)をトルエン(1.0ml)溶液に溶解させ、減圧/アルゴンガスを使用して3回脱酸素した。80℃で12時間撹拌し、溶媒を減圧留去することによってトリメトキシシリル基を有するRAFT剤を得る。
硫酸、塩酸、UVオゾンクリーナーで対象となるガラス基板をよく洗浄する。0.01モル/Lのシトリメトキシシリル基を有するRAFT剤のトルエンに基板を浸漬し80℃で16時間静置する。系を室温に戻し基板を取り出し、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノール、アセトンで洗浄し、真空下で乾燥させることにより、RAFT開始基が固定化されたガラス基板を得る。
【実施例】
【0111】
TPE-アクリレート(12.2mg,5モル%)、tert-ブチルアクリレート(69.0μL,95モル%)及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)のトルエン(0.5ml)溶液に修飾ガラス基板を浸漬し、減圧/アルゴンガスを使用して3回脱酸素した。60℃で12時間攪拌し、室温に冷却し、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノール、アセトンで基板を洗浄し、(TPE-アクリレート)0.05-(tert-ブチルアクリレート)9.95-コポリマーが固定化されたガラス基板を得た。(ATR-FT-IR (Ge) ν 2979, 2935, 1729, 1481, 1457, 1393, 1367, 1258, 1149, 846, 752, 471 cm-1)この基板をトリフルオロ酢酸に浸漬し、12時間放置し、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノール、アセトンで基板を洗浄することにより、(TPE-アクリレート)0.05-(アクリル酸)9.95-コポリマーが固定化されたガラス基板を得た。(ATR-FT-IR (Ge) ν 2960, 1717, 1456, 1419, 1250, 1170, 802, 738 cm-1.)このガラス基板の蛍光スペクトルを測定したところ、テトラフェニルエテン部分に由来する発光が確認され、基材への固定化が確認された。シランカップリング材で表面修飾可能な基材であればどのような基材への固定化も可能である。
【実施例】
【0112】
実施例12
SIP法のほかにも、ゲル化によってもポリマーを不溶化させることができる。TPE-アクリレート(20.1mg,5モル%)、アクリル酸(61.7μL,90モル%)、テトラエチレングリコールビスアクリレート(15.1mg,5モル%)及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)のジメチルホルムアミド(0.5ml)溶液を、減圧/アルゴンガスを使用して3回脱酸素した。60℃で12時間攪拌することによって不溶の固体が得られる。この固体を、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトンで基板を洗浄することによって目的のゲルを得た。(FT-IR (KBr) ν2934, 1729, 1645, 1444, 1388, 1254, 1167, 1106, 807, 702, 669 cm-1.)
このゲルをメタノール/水=1/1混合溶液中に浸漬し、カルシウムクロリドを添加しながら蛍光量子収率を測定して行ったところ、カルシウムクロリドを添加するに従って、蛍光量子収率は上昇し、カルシウムセンサーとして機能することが分かった。
【実施例】
【0113】
実施例13
光重合開始剤をAIBN 1モル%から2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IRGACURE651、BASF社)2モル%に代え、白色光を照射して重合した。その結果、実施例12と同様のゲルが得られた。
【実施例】
【0114】
実施例14
実施例13と同様の方法で、各モノマーの比率を変化させて、ゲル重合してコポリマーを得た。得られたコポリマーの構造とモル比と膨潤度の関係を表2に示す。ここで膨潤度は、HEPES buffer(pH7.4)/メタノール=1/1の混合溶媒を用いてゲルを30分間膨潤させた時の膨潤度を示す。
【実施例】
【0115】
【化14】
JP0006422869B2_000016t.gif
【実施例】
【0116】
【表2】
JP0006422869B2_000017t.gif
【実施例】
【0117】
表2より、zのモル比により膨潤度が変化し、ゲル化重合していることがわかる。
【実施例】
【0118】
実施例15
(1)実施例13で得られたコポリマーのCa2+センシング能を評価した。HEPES buffer/メタノール=1/1の混合溶媒に30分膨潤させたgel-10.01~gel-10.10にCa2+を添加し実施例7と同様にして蛍光量子収率を測定した。その結果を図13に示す。
図13から、zのモル比が0.05モル(5モル%)以下で、蛍光量子収率が変化し、Ca2+の測定が可能であることがわかる。
【実施例】
【0119】
(2)次に、gel-1のCa2+センシングにおける可逆性を検討した。gel-10.03,gel-10.02,gel-10.015,gel-10.01にCa2+を0.2mM添加し蛍光量子収率を測定した。その後、溶媒を加え、Ca2+濃度を1/2(0.1mM)に希薄化し、蛍光量子収率を測定した。
【実施例】
【0120】
架橋度の低いgel-10.02,gel-10.015,gel-10.01では、Ca2+濃度を0.1mMまで希薄化すると蛍光量子収率は減少し、Ca2+センシングが可逆的であることが示唆された。架橋度が高いgel-1では、Ca2+を一度取り込むと濃度を希薄化してもCa2+を放出しにくくなると考えられる。
【実施例】
【0121】
次にgel-10.015を用いて、可逆性についてさらなる知見を得るために、Ca2+濃度を繰り返し変化させ、蛍光量子収率の変化を測定した(図14)。Ca2+濃度を高くすると蛍光量子収率は高くなり、またCa2+濃度を低くするとそれに伴い蛍光量子収率は低くなり、その変化は繰り返し確認できた。このことから、gel-10.015のCa2+センシングは可逆的であると考えられる。
【実施例】
【0122】
実施例16
実施例12と同様に、重合開始剤としてAIBN(熱重合開始剤)を用い、架橋剤であるモノマー(C)のモル比を変化させてゲル重合を行った。その結果、架橋剤のモル比が1~5モル%(z=0.01~0.05)の範囲で、ゲル化し、かつCa2+センシング能に優れたコポリマーが得られた。また、膨潤度が340%以上、さらに340~1500%、特に500~1500%のゲルがCa2+センシング能に優れていた。
【実施例】
【0123】
この時重合濃度と架橋剤添加量(z)を変えながらゲルを合成した(表3)。全てのゲルは、メタノールとアセトンでソックスレー抽出器でそれぞれ12時間ずつ洗浄することにより精製した。重合濃度2.0Mではz<1の条件ではゲルは生成しなかった。これらのゲルをHEPES buffer(pH7.4)/メタノール=1/1中で30分膨潤させた後の膨潤度(表3)と、その後カルシウム添加に対する蛍光量子収率の変化(図15)を測定した。4.0Mの重合濃度で調製したゲルは、zが小さいほど高い膨潤度を示したがいずれも低い値であった。また、カルシウムを添加しても蛍光量子収率はほとんど変化しなかった。一方で、2.0Mの重合濃度で調製したゲルは、zが小さいほど顕著に高い膨潤度を示した。また、これらのゲルにカルシウムを添加し、蛍光量子収率を測定した所、gel-1e,fはほとんど蛍光量子収率に変化はないが、gel-1g,hはカルシウムの添加に伴い蛍光量子収率が顕著に増大した。さらに重合濃度を薄めて1.5Mの重合濃度で調製したゲルはより高い膨潤度を示した。また、これらのゲルにカルシウムを添加し、蛍光量子収率を測定した所、膨潤度のより高いgel-1jはカルシウムの添加に伴い蛍光量子収率が顕著に増大した。
膨潤度の高いゲルほどゲル中の高分子鎖の運動性が高いために、蛍光量子収率の大きな変化が起ったものと考えられる。
【実施例】
【0124】
【表3】
JP0006422869B2_000018t.gif
【実施例】
【0125】
実施例17(水中でのカルシウムセンシング)
また、gel-1jは、HEPES buffer(pH7.4)/メタノール=1/1中だけではなく、HEPES buffer(pH7.4)中でもカルシウムセンシング能を示した(図16)。また、ゲルの周囲のカルシウム濃度を減少させることにより、蛍光量子収率は初期値まで減少した。その後も、周囲のカルシウム濃度の濃度を上下させることにより、ゲルの蛍光量子収率も再現性良く上下した(図17)。
【実施例】
【0126】
実施例18
(1)フレキシブル基板上でOLEDやOPVと組み合わせてフレキシブルセンサーを構築する概念図を図18に示す。
【実施例】
【0127】
(2)異なる吸収波長、蛍光波長のセンサーの構築
このようなOLED、OPVと組み合わせた際には励起光、蛍光の波長の調節も重要である。このような場合、蛍光性部位の化学構造を変化させることにより調節可能である。
例えば、テトラフェニルエテンにジメチルアミノ基を二つ導入した誘導体は、無置換のそれよりも長波長側に吸収と蛍光を有する。そこで我々は、ジメチルアミノ基を有するテトラフェニルエテンにビニル基を導入したモノマー1-NMeを合成した。
【実施例】
【0128】
【化15】
JP0006422869B2_000019t.gif
【実施例】
【0129】
(3)アルゴンガス雰囲気下、亜鉛粉末(3.25g)及びテトラヒドロフラン60mlを反応容器に投入した。-5~0℃に冷却し、10℃以下に維持したシリンジでTiCl4(2.75ml)をゆっくり添加した。混合物を室温にて0.5時間攪拌し、2.5時間加熱還流した。再び-5~0℃に冷却し、ピリジン(1.0ml)を加え10分攪拌した。p-ヒドロキシベンゾフェノン(0.99g)及びジメチルアミノベンゾフェノン(1.34g)のテトラヒドロフラン(30ml)溶液をシリンジでゆっくり加えた。添加後、反応混合物を70℃に加熱し、TLCで原料がなくなるまで還流した。10%K2CO3水溶液を加え、次いでジクロロメタンを加えた。有機相を水及び食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥後、減圧で乾固し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH=95.5)で精製し、p-ヒドロキシジメチルアミノテトラフェニルエチレンを310mg(収率14%)得た。
【実施例】
【0130】
p-ヒドロキシジメチルアミノテトラフェニルエチレン(43.4mg)及びトリエチルアミン(56.0μL)のジクロロメタン(500μL)溶液を0℃に冷却し、アクリロイルクロリド(16.0μL)のジクロロメタン500μL溶液を滴下した。反応混合物を、TLCで原料がなくなるまで室温で2時間攪拌した。反応液に炭酸水素ナトリウムを加え、さらにジクロロメタンを加えた。有機相を水及び食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥後、減圧で乾固した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=99:1)で精製し、p-ヒドロキシテトラジメチルアミノフェニルエチレン アクリレート42.7(収率88%)を得た。これを以下、1-NMe2と略す。
Yellow solid: 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.00 - 7.15 (m, 7H), 6.85 - 6.93 (m, 6H), 6.56 (dd, J = 17.0, 1.3 Hz, 1H), 6.46 (t, J = 8.7 Hz, 4H), 6.27 (dd, J = 10.5, 17.3 Hz, 1H), 5.99 (dd, J = 10.5, 1.3 Hz, 1H), 2.89 (d, J = 4.9 Hz, 12H) ppm.
FT-IR (KBr) ν 3469, 3034, 2886, 2801, 1747, 1608, 1520, 1444, 1403, 1354, 1294, 1249, 1167, 1065, 1017, 977, 947, 903, 819, 768, 740, 702, 580, 538 cm-1.
HRMS (FAB) Calcd for C33H32N2O2 [M]+ m/z = 488.2464. Found: m/z = 488.2470.
【実施例】
【0131】
(4)次に、1-NMe2を実施例2(1、2)と同様にして、同様の手法で重合し、ジメチルアミノ化テトラフェニルエテンを蛍光性部位として有するポリアクリル酸(poly-1-NMe2)を合成した。
【実施例】
【0132】
【化16】
JP0006422869B2_000020t.gif
【実施例】
【0133】
poly-2-NMe2
Yellow solid: 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.72 - 7.15, 6.38 - 6.56, 2.79 - 2.92, 2.09 - 2.50, 2.34 - 2.98 ppm.
FT-IR (KBr) ν 3437, 2979, 2933, 1730, 1609, 1521, 1480, 1450, 1393, 1367, 1256, 1149, 846, 752, 700, 472 cm-1.
【実施例】
【0134】
poly-1-NMe2
Yellow solid: 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.79 - 7.37, 2.28 - 2.57, 1.36 - 2.14 ppm.
FT-IR (KBr) ν 3448, 2959, 1719, 1509, 1451, 1411, 1251, 1197, 800, 723, 704 cm-1.
【実施例】
【0135】
(5)得られたpoly-1-NMeはpoly-1よりも長波長側に吸収と蛍光を示した(図19)。さらに、この溶液にCaClを添加した所、蛍光強度は増大し、このpoly-1-NMeもカルシウムセンサーとして機能する(図20)。
これらの結果よりAIE部位の構造を変えることにより吸収波長(励起波長)、蛍光波長(検出波長)を変化させることが可能であり、様々なOLED、OPVに対応できるカルシウムセンサーを設計できることがわかる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19