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明細書 :伸縮性導電体およびその製造方法と伸縮性導電体形成用ペースト

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6551843号 (P6551843)
登録日 令和元年7月12日(2019.7.12)
発行日 令和元年7月31日(2019.7.31)
発明の名称または考案の名称 伸縮性導電体およびその製造方法と伸縮性導電体形成用ペースト
国際特許分類 H01B   1/22        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
H01L  21/28        (2006.01)
H01L  21/288       (2006.01)
H01B   7/06        (2006.01)
FI H01B 1/22 B
H01B 13/00 503Z
H01B 1/22 A
H01L 21/28 301B
H01L 21/288
H01B 7/06
請求項の数または発明の数 15
全頁数 18
出願番号 特願2015-561037 (P2015-561037)
出願日 平成27年2月5日(2015.2.5)
国際出願番号 PCT/JP2015/053298
国際公開番号 WO2015/119217
国際公開日 平成27年8月13日(2015.8.13)
優先権出願番号 2014020830
優先日 平成26年2月5日(2014.2.5)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年1月31日(2018.1.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】関谷 毅
【氏名】染谷 隆夫
【氏名】松久 直司
個別代理人の代理人 【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100163496、【弁理士】、【氏名又は名称】荒 則彦
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
審査官 【審査官】井上 能宏
参考文献・文献 特表2012-533857(JP,A)
国際公開第2011/145411(WO,A1)
特開2010-153364(JP,A)
特開2014-236103(JP,A)
特開2010-221433(JP,A)
特開2012-33674(JP,A)
調査した分野 H01B 1/22
H01B 7/06
H01B 13/00
H01L 21/28
H01L 21/288
特許請求の範囲 【請求項1】
エラストマーからなる伸縮部と、この伸縮部に分散された少なくとも1種類の導電粒子とからなる混合物から構成され、前記混合物が有する界面の1つもしくは複数の位置に、前記混合物の内部側よりも前記導電粒子を密に集合させた導通部が形成されたことを特徴とする伸縮性導電体。
【請求項2】
前記導電粒子が前記エラストマーの質量に対し、400%以下含有されてなる請求項1に記載の伸縮性導電体。
【請求項3】
前記混合物は、表層部に界面活性剤が残ることを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮性導電体。
【請求項4】
前記混合物は、表層部が部分的に多孔質構造であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の伸縮性導電体。
【請求項5】
前記エラストマーが架橋されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の伸縮性導電体。
【請求項6】
前記エラストマーがフッ素ゴムであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の伸縮性導電体。
【請求項7】
エラストマーを溶解する少なくとも一つの第1溶媒と、該第1溶媒に溶解されたエラストマーと、前記第1溶媒に対し10%以上溶解しない第2溶媒と、少なくとも1種類の導電粒子を具備してなる伸縮性導電体成形用ペースト。
【請求項8】
前記導電粒子が前記エラストマーに対し400質量%以下含有されたことを特徴とする請求項7に記載の伸縮性導電体形成用ペースト。
【請求項9】
前記第2溶媒が水または水を主成分とする溶媒であり、更に水に溶解する界面活性剤が含まれてなることを特徴とする請求項7または8に記載の伸縮性導電体成形用ペースト。
【請求項10】
前記エラストマーがフッ素ゴムであることを特徴とする請求項7~9のいずれか一項に記載の伸縮性導電体形成用ペースト。
【請求項11】
エラストマーからなる伸縮部と、この伸縮部に分散された少なくとも1種類の導電粒子とからなる混合物から構成され、前記混合物が有する界面の1つもしくは複数の位置に、前記混合物の内部側よりも前記導電粒子を密に集合させた導通部が設けられた伸縮性導電体を製造するに際し、
第1溶媒にエラストマーを溶解し、前記第1溶媒に対し10%以上溶解しない第2溶媒および前記導電粒子を混合した後、導体状に印刷することを特徴とする伸縮性導電体の製造方法。
【請求項12】
前記第1溶媒と前記第2溶媒を相分離させるとともに前記溶媒を乾燥させることにより前記導通部を生成することを特徴とする請求項11に記載の伸縮性導電体の製造方法。
【請求項13】
前記導電粒子を前記エラストマーに対し400質量%以下含有させることを特徴とする請求項11または12に記載の伸縮性導電体の製造方法。
【請求項14】
前記エラストマーとしてフッ素ゴムを用いることを特徴とする請求項11~13のいずれか一項に記載の伸縮性導電体の製造方法。
【請求項15】
前記第2溶媒として水または水を主成分とする溶媒を用い、更に水に溶解する界面活性剤を含ませることを特徴とする請求項11~14のいずれか一項に記載の伸縮性導電体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性導電体およびその製造方法と伸縮性導電体形成用ペーストに関する。
本願は、2014年2月5日に、日本に出願された特願2014-020830号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルエレクトロニクスという新技術分野が最近大きな注目を集めている。エレクトロニクスに機械的可撓性を実現するための技術であり、従来の微細化の技術トレンドとは異なる方向である。特に、フレキシブルエレクトロニクスは、ディスプレイ、太陽電池、センサ、アクチュエータなど大面積エレクトロニクスにとって、重要な価値をもたらすものと考えられている。
例えば、エレクトロニクスデバイスが大きくなればなるほど、携帯性や耐衝撃性のためにフレキシビリティーは不可欠である。フレキシブルエレクトロニクスを実現する上での難しさは、プラスティックフィルム上に優れた電気的特性と機械的特性をどのようにして両立するかである。
【0003】
エレクトロニクスデバイスの伸縮性は運動や加重に伴い変形する構造体や生体に組み込むためのエレクトロニクスデバイスに必要な機能と考えられる。このような伸縮性を有したデバイスを実現するためには、デバイスを構成するトランジスタ等のアクティブな回路、抵抗やコンデンサ等のパッシブな回路がデバイスの変形に伴い、損傷を受けない構成であって、特性が変化しない構成とする必要がある。
【0004】
しかし、シリコンに代表される無機材料からなるトランジスタは、シリコン、酸化物無機材料などの伸縮性を有しない材料からなり、これらの材料は1%を大きく下回る歪で亀裂を生じてしまう。また、炭素を主骨格とする有機半導体を用いた有機トランジスタは、有機材料が柔らかく、延性を有することにより、1%程度の歪でも、破断を生じることがなく、フィルム状の基板に形成した場合、曲げ変形に強くフレキシブルなデバイスの実現に有効である。
また、3次元的な対象物の表面に密着するように、フィルム状のデバイスを貼り付けるためには、フレキシブルであることだけではなく、伸縮性を有することが必要である。また、ロボットや人の表面、特に関節部の表面にデバイスを張り付けるためのデバイスフィルムは、数10%の伸びに対応する必要がある。
【0005】
そこで、従来、電界効果型のトランジスタ集積回路を備えたフレキシブルなセンサを人体の一部に貼り付けることができるように構成し、感圧センサとして利用する研究が進められている(非特許文献1参照)。 この研究では、有機TFT(Organic Field Effect Transistor : OFET)を用いて折り曲げ可能な柔軟な回路を実現し、触覚センサなどのエリアセンサに有効な感圧センサアレイと周辺回路を集積した電子人工皮膚を試作している。
具体的には、可撓性を有する樹脂製のフィルム上に複数の有機トランジスタをマトリクス状に形成し、これらの上に感圧性導電ゴムのシートと、電極付樹脂フィルムと、ランドを持ったスルーホールを所定のピッチで備えた樹脂製のフィルムを積層し、圧力センサを構成している。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE ICD2004-29(2004-5)(社団法人、電子情報通信学会発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に記載されている有機TFTは、半径5mm程度まで弾性を持って曲げることができるので、人体やロボットの表面に巻き付けることができる。また、曲げ応力の印加により有機TFTのドレイン電流は減少するが、半径5mm程度まで曲げてもその減少の度合いは3%以下であり、更に半径1mm程度まで曲げてもトランジスタとして十分に機能し、機械的な柔軟性を示す感圧センサを提供できるとしている。
【0008】
以上のようなエレクトロニクスデバイスを実現する上で、デバイスを構成するトランジスタ等のアクティブな回路、抵抗やコンデンサ等のパッシブな回路、物理量等を信号に変換するセンサー素子などを導電性の配線で接続する必要がある。
ところが、従来の金属による配線は1%に満たない歪で破断するため、曲がりくねった配線とすることで、ばねのように形体的な変形により伸びを実現していた。しかし、このような配線パターンによる解決方法では、基材の変形に大きな制限を設けなければならず、適用に限界を生じる問題がある。
【0009】
これに対し、ゴム材料にカーボン粒子やカーボンナノチューブ等の導電性材料を分散させた伸縮性導電材料は、配線自体が伸縮性を有する為、デザインの制約が無く、広くエレクトロニクスデバイスの配線に適用することができる。
しかし、従来のこの種の伸縮性導体は初期の抵抗値が高く、更に数10%の伸張に伴いその抵抗値が極めて大きくなる問題があった。この問題は、分散させる導電性材料の量を増やすことで、抵抗値を低くして解決することができるが、その場合は配線が極めて脆くなり、繰り返しの伸縮で破断するか、限界伸張度が極めて低くなるなどの課題がある。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、伸縮性に富み、伸張しても導電率の低下が少なく、脆いという問題を解消することができ、繰り返しの伸縮でも破断するおそれが少なく、限界伸張度の大きな伸縮性導電体および伸縮性導電体形成用ペーストと伸縮性導電体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1)本発明の伸縮性導電体は、エラストマーからなる伸縮部と、この伸縮部に分散された少なくとも1種類の導電粒子とからなる混合物から構成され、前記混合物が有する界面の1つもしくは複数の位置に、前記混合物の内部側よりも前記導電粒子を密に集合させた導通部が形成されたことを特徴とする。
(2)本発明の伸縮性導電体において、前記導電粒子が前記エラストマーの質量に対し、400%以下含有されてなることができる。
(3)本発明の伸縮性導電体において、前記伸縮性導体が、前記エラストマーを溶解する少なくとも1つの第1溶媒と、前記第1溶媒に10%以上溶解しない第2溶媒と、少なくとも1種類の導電粒子とからなる混合液を乾燥して得られたものでもよい。
(4)本発明の伸縮性導電体において、前記第2溶媒が水または水を主成分とする溶媒であり、更に水に溶解する界面活性剤を含んでいることもよい。
(5)本発明の伸縮性導電体において、前記エラストマーが架橋されていてもよい。
(6)本発明の伸縮性導電体において、前記エラストマーがフッ素ゴムであってもよい。
本発明の伸縮性導電体において、前記導電粒子は、良導電性金属材料製の鱗片状の微粒子とすることができる。本発明の伸縮性導電体において、前記伸縮部が30質量%以上の高濃度の界面活性剤水溶液を前記エラストマーの質量に対し30質量%以上混合し、乾燥させてなるものでもよい。
(7)本発明の伸縮性導電体形成用ペーストは、エラストマーを溶解する少なくとも一つの第1溶媒と、該第1溶媒に溶解されたエラストマーと、前記第1溶媒に対し10%以上溶解しない第2溶媒と、少なくとも1種類の導電粒子を具備してなることができる。
(8)本発明の伸縮性導電体形成用ペーストにおいて、前記導電粒子が前記エラストマーに対し400質量%以下含有されていてもよい。
(9)本発明の伸縮性導電体形成用ペーストにおいて、前記第2溶媒が水または水を主成分とする溶媒であり、更に水に溶解する界面活性剤が含まれていてもよい。
(10)本発明の伸縮性導電体形成用ペーストにおいて、前記エラストマーがフッ素ゴムであってもよい。
(11)本発明の伸縮性導電体の製造方法は、エラストマーからなる伸縮部と、この伸縮部に分散された少なくとも1種類の導電粒子とからなる混合物から構成され、前記混合物に形成される1つもしくは複数の界面に、前記混合物の内部側よりも前記導電粒子を密に集合させた導通部が設けられた伸縮性導電体を製造するに際し、第1溶媒にエラストマーを溶解し、第2溶媒および前記導電粒子を混合した後、導体状に印刷することを特徴とする。
(12)本発明の伸縮性導電体の製造方法において、前記第1溶媒と前記第2溶媒を相分離させるとともに前記溶媒を乾燥させることにより前記導通部を生成してもよい。
(13)本発明の伸縮性導電体の製造方法において、前記導電粒子を前記エラストマーに対し400質量%以下含有させることができる。
(14)本発明の伸縮性導電体の製造方法において、前記エラストマーとしてフッ素ゴムを用いることができる。
(15)本発明の伸縮性導電体の製造方法は、前記第2溶媒として水または水を主成分とする溶媒を用い、更に水に溶解する界面活性剤を含ませることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、伸縮部に導電粒子を分散させた混合物の界面の1つもしくは複数の位置に混合物の内部側よりも導電粒子を密に集合させた導通部を備えているので、伸縮性を有しながら導電率に優れた伸縮性導電体を提供できる。また、伸張に伴い導電率の低下が生じ難い優れた伸縮性導電体を提供できる。
このため、運動や加重に伴い変形する構造体や生体に組み込むエレクトロニクスに必要な伸縮性デバイスの回路を構成するために好適な伸縮性導電体を提供できる。
特に、伸縮性導電体を構成するフッ素ゴムとフッ素界面活性剤水溶液の混合物の比率を調整し、導電粒子の配合量を最適化することにより、200%前後のひずみが作用する伸張時であっても、100ジーメンスを超える従来にない優れた特性の伸縮性導電体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る伸縮性導電体を備えた伸縮性デバイスの第1実施形態を示す斜視図。
【図2】同伸縮性デバイスに設けられる半導体素子と伸縮性導電体による配線の接続部分を示す要部拡大平面図。
【図3】同伸縮性デバイスに設けられる半導体素子と配線の接続部分を示す要部拡大断面図。
【図4】同伸縮性デバイスに設けられる半導体素子内部構造の一例を示す断面斜視図。
【図5】同伸縮性デバイスに形成された伸縮性導電体による配線の部分断面図。
【図6】実施例で得られた伸縮性導電体を評価する方法の一例の説明図。
【図7】実施例においてフッ素ゴムに対するフッ素界面活性剤水溶液の配合割合を変更して得られた各伸縮性導電体試料についてひずみ量と抵抗の相関関係を示す図。
【図8】実施例においてフッ素ゴムの種類を変更して得られた各伸縮性導電体試料についてひずみ量と抵抗の相関関係を示す図。
【図9】実施例においてフッ素界面活性剤水溶液の濃度を変更して得られた各伸縮性導電体試料についてひずみ量と抵抗の相関関係を示す図。
【図10】実施例において銀フレークの添加量を変更して得られた各伸縮性導電体試料についてひずみ量と抵抗の相関関係を示す図。
【図11】実施例において得られた伸縮性導電体試料の表面状態を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図12】実施例において得られた伸縮性導電体試料の断面構造を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図13】比較例において得られた伸縮性導電体試料の表面状態を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図14】比較例において得られた伸縮性導電体試料の断面構造を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図15】実施例においてフッ素樹脂含有量に応じ作製された各伸縮性導電体試料におけるひずみ量と抵抗の相関関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の第一実施形態に係る伸縮性導電体を備えた伸縮性デバイスについて、図面を適宜参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る伸縮性デバイスの第1実施形態を示すもので、この第1実施形態の伸縮性デバイスAは、伸張性樹脂フィルム1の一面側にいずれも伸縮性導電体からなるゲート配線2、ソース配線3、ドレイン配線6がマトリクス状に配線され、これらの配線が交差する部分近傍であって、伸張性樹脂フィルム(伸張性基材)1の内部側に半導体素子(薄膜トランジスタ)4を内蔵した半導体搭載基材5が埋設されて構成されている。
薄膜トランジスタ4と各配線との接続構造を図2に示し、薄膜トランジスタ4の周囲部分と伸縮性導電体の断面構造を図3に示し、半導体搭載基材5の詳細構造を図4に示し、伸縮性導電体からなる配線の断面構造を図5に示す。
この例の薄膜トランジスタ4は、図4に示すように、樹脂基板7の上面側(一面側)にゲート電極8とこのゲート電極8を覆う酸化膜9が形成され、酸化膜9の上に修飾膜10が形成され、修飾膜10上に島状の有機半導体層11が形成され、有機半導体層11の平面視両側に相互に離間してソース電極12とドレイン電極13とが形成されたボトムゲート型の薄膜トランジスタである。
有機半導体はSi系半導体等に比較して歪による電子移動度の低下が少ないので、伸縮性デバイス用には好適である。また、有機半導体は低温プロセスで生成できるので、基板選択の自由度が高く、薄い樹脂基板上に作成可能であり、可撓性を確保し易い利点があるため、本実施形態に係る伸縮性デバイス用として好ましい。

【0015】
前記構造の薄膜トランジスタ4において、樹脂基板7は一例としてポリイミド、PEN(ポリエチレンナフタレート)などからなる耐薬品性、耐熱性に優れた樹脂基板を用いることが好ましく、ゲート電極8は一例としてAl(アルミニウム)から構成することができ、酸化膜9はアルミニウム酸化膜から構成できる。ポリイミドの樹脂基板を用いる場合、一例として厚さ12.5μmの樹脂基板を用いることができ、Alのゲート電極を用いる場合、一例として厚さ100nmのゲート電極を用いることができ、アルミニウム酸化膜を用いる場合、一例として厚さ19nmのアルミニウム酸化膜を用いることができる。

【0016】
前記修飾膜10は、一例として自己組織化単分子膜(SAM)を用いることができ、有機半導体層11は一例としてジナフトチエノチオフェン(DNTT)を用いることができる。自己組織化単分子膜とは、基板を溶液等に浸すことにより自己組織化的に単分子の膜を形成する有機分子のことであり、一般的には表面修飾等に用いられる膜である。具体的には、nオクタデシルホスホン酸(C-18)を用いることができる。
アルミニウムの酸化膜9を自己組織化単分子膜の修飾層10で修飾することでハイブリッド型のゲート絶縁膜を構成することができ、3Vで駆動可能な有機トランジスタを提供できる。
前記構造の薄膜トランジスタ4を覆うように樹脂基板7上にパリレン(日本パリレン合同会社商品名、パラキシリレン系ポリマー)等の有機高分子材料からなる内部封止層15が形成され、半導体搭載基材5が構成されている。以上構成の半導体搭載基材5は一例であり、他の基板や配線を用いた有機トランジスタや他の構造のトランジスタであっても本実施形態の伸縮性デバイスに適用できるのは勿論である。

【0017】
本実施形態の伸縮性デバイスAにおいて、半導体搭載基材5とその周囲構造を図3に示すが、エラストマーからなる伸張性樹脂フィルム1の内部に半導体搭載基材5が埋設されている。この半導体搭載基材5の周面と上部側を直接、ドーム形状をなして覆うようにエラストマーからなる第1封止層31が形成され、第1封止層31の周囲を覆い、伸張性樹脂フィルム1の一部を兼ねるようにエラストマーからなる第2封止層32が形成されている。半導体搭載基材5において樹脂基板7の裏面側に内部被覆層20が形成され、この内部被覆層20の周面側も第1封止層31により覆われている。また、内部被覆層20の外面側と伸張性樹脂フィルム1の外面側がエラストマーからなる保護層35で覆われている。

【0018】
第2封止層32には第1封止層31に近い領域から離れる領域において徐々にヤング率が低下するヤング率のグラデーション(勾配)が生成され、伸張性樹脂フィルム1の裏面側には半導体素子4に接続した伸縮性導電体からなるゲート配線2、ソース配線3、ドレイン配線6が形成されている。本実施形態では、ゲート配線2、ソース配線3、ドレイン配線6が導電回路として設けられている。

【0019】
本実施形態において、伸張性樹脂フィルム1、第1封止層31、第2封止層32、内部被覆層20、保護層35がそれぞれPDMS(ポリジメチルシロキサン)等の2液性のエラストマーからなる。ここで用いる2液性のエラストマーは、主剤と架橋剤(硬化剤)を所定の比率(質量比)で混合し、適切な温度に所定時間加熱することで架橋反応を生じさせ、硬化させて伸張性樹脂フィルムを形成できる材料である。

【0020】
本実施形態では、前記PDMSの一例として、高透明シリコーンの一種として知られているシルガード184(東レ・ダウコーニング株式会社商品名)を用いることができる。ここでは、主剤:架橋剤の割合を第1封止層31では7:1の割合で配合したものを架橋させて得られる。同様に、伸張性樹脂フィルム1と第2封止層では主剤:架橋剤の割合を20:1の割合で配合したもの、内部被覆層20では主剤:架橋剤の割合を10:1の割合で配合したもの、保護層35は主剤:架橋剤の割合を20:1の割合で配合したものをそれぞれ架橋させて得られる。また、上述のシルガード184(東レ・ダウコーニング株式会社商品名)は主剤:架橋剤の割合が10:1の場合に標準配合比であるので、架橋剤が過剰な第1封止層31から周囲側に架橋剤の拡散がなされる結果として、第2封止層32には架橋度(換言するとヤング率)の勾配が生成されている。
また、本実施形態で用いる2液性のエラストマーとして、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等を用いることもできる。

【0021】
前記PDMSの場合、第1封止層31は数MPa程度、例えば1~2MPa程度のヤング率となり、第1封止層31から離れた位置の第2封止層32は数百kPa程度、例えば200~300kPa程度のヤング率となる。
また、第2封止層32において、第1封止層31に近い領域は、架橋剤の拡散によりヤング率が第1封止層31のヤング率に近くなり、第1封止層31から離れるにつれて第2封止層32を構成するエラストマーに含まれていた本来の架橋剤配合比のヤング率を呈するようになる。また、このヤング率のグラデーションは、第2封止層32の面方向と厚さ方向の両方に生成されている。換言すると、このようにヤング率のグラデーションを伸張性樹脂フィルム1の面方向と厚さ方向の両方に生成できることで、伸縮性デバイスAに歪が付加された場合のトランジスタ特性劣化をより効果的に抑制できる。なお、架橋剤の拡散がなされていない領域の第2コート層30に相当する部分が伸張性樹脂フィルム1となっている。

【0022】
本実施形態の構造に適用されているゲート配線2、ソース配線3、ドレイン配線6は、いずれも図5に断面構造を示す伸縮性導電体40から形成されている。
この伸縮性導電体40は、界面活性剤を含むフッ素ゴムなどのエラストマーからなる伸縮部41と、この伸縮部41に分散配合された複数の導電粒子42とを備えた混合物からなり、伸縮部41の表層側に伸縮部41の内部側よりも導電粒子42が密に集合された導通部43を備えた概略構造を有している。この導通部43は、伸縮性導電体40の界面である表層部に存在し、導電粒子42が密に集合して粒子間に絶縁物(エラストマーからなる伸縮部41)が少ない部分的に多孔質に近い構造とされている。
なお、この例では表層側に導通部43を設けた構造を例示したが、導通部43は伸縮性導電体40の裏面側など、他の部分に密に集合した構造を採用することも可能である。例えば、伸縮性樹脂フィルム1などのようなフィルムの上ではなく、洋服などの表面や布の表面などに伸縮性導電体40を形成する場合は、繊維との界面あるいは周囲の空気との界面に沿って導通部43を構成する場合があるので、導通部43は伸縮性導電体40のいずれかの位置に他の部分に対し密に形成されている構造を適宜採用できる。導通部43は後述する第1溶媒と第2溶媒の相分離性を利用して形成されるので、相分離状態を調整することで、導電粒子42の集合状態を調整可能である。

【0023】
前記伸縮部41を形成する場合、本実施形態では初めに、塊状で入手される架橋済みのフッ素ゴムをペレット状に細かく分断する。これは次工程でフッ素ゴムを溶剤に溶けやすくするためである。
次に、ペレット状のフッ素ゴムと、導電性材料とを計量し、フッ素ゴムを良好に溶かす4メチル2ペンタノンなどの第1溶媒に混ぜて、撹拌によりフッ素ゴムを溶解させ、同時に導電性材料を溶液中に均質に分散させる。フッ素ゴムなどのゴムを良好に溶解する第1溶媒は、この例のように4メチル2ペンタノンの他に、2ヘプタノン、メチルエチルケトン等を用いることができる。
即ち、第1溶媒として4メチル2ペンタノン(メチルイソブチルケトン)を用いることができるが、フッ素ゴムなどのゴムを溶解できる溶媒であれば、これに限らない。なお、第1溶媒は第2溶媒に対する溶解性が低い必要が有るので、第2溶媒が10%以上第1溶媒に溶解しないように選定することが好ましい。
より具体的には、2元系フッ素ゴムあるいは3元系フッ素ゴムとして知られているフッ素ゴム、例えば、G801、G901、G902、G912、G952(ダイキン工業株式会社商品名)を用いることができる。これらのフッ素ゴムは、パーオキサイド加硫によるフッ素ゴムとして知られている。
なお、フッ素ゴムの他に第1溶媒に溶解可能なゴムとして、ウレタンゴムやシリコーンゴム等のゴムを用いることもできる。
前記伸縮部41には、例えば、カーボンナノチューブ等の導電材料を別途添加しても良い。

【0024】
導電粒子42は、銀フレークなどの良導電性金属材料製の鱗片状の微粒子あるいはカーボンナノチューブやグラフェン等の導電粒子からなることが好ましい。なお、導電粒子42は、銀の他に金や白金などの貴金属の鱗片状の微粒子、あるいはアルミニウムや銅などからなる鱗片状の良伝導性金属微粒子であっても良い。これら粒子の形状は鱗片状に限らず、薄片状、偏平状などのいずれの形状であっても良い。鱗片状の導電粒子42は伸縮性導電体40の表層部においてそれらの面方向を揃えて密に重なるように多孔質体の形状をなして分散され、良好な導電性を発揮する。
導電粒子42として、好ましくは、粒径10μm以下、より好ましくは、1~5μm程度の粒径の銀薄片などの金属薄片微粒子が好ましい。導電粒子42は、前記エラストマーとしてのフッ素ゴムの質量に対し400質量%以下、望ましくは400質量%未満の添加量であることが好ましい。添加量が多すぎると伸縮により伸縮性導電体40が脆くなるおそれがある。

【0025】
前記第1溶媒に対し水あるいはエチレングリコールまたはエチレングリコールを不含む水などの水を主成分とする第2溶媒を配合する。なお、この第2溶媒の相分離性を調整するため、良好にするために必要量の界面活性剤を第2溶媒に添加してもよい。
ここで用いるフッ素界面活性剤水溶液の一例として、ゾニルFS300(Zonyl FS300:デユポン株式会社商品名)の40質量%濃度のものを使用できる。フッ素界面活性剤水溶液は30質量%濃度以上の高濃度のものを用いることが好ましい。

【0026】
各成分を混合する場合の比率は、一例として、質量比において銀フレーク:フッ素ゴム:第1溶媒(有機溶媒):第2溶媒(フッ素系界面活性剤水溶液;濃度40質量%)、=3:1:2:1の割合で混合することができる。
前記第2溶媒は水もしくはエタノールまたはこれらに界面活性剤を配合した溶媒を用いることができる。

【0027】
各成分の混合比として、フッ素ゴムと第2溶媒(フッ素界面活性剤水溶液)との混合比は、質量比としてフッ素ゴムに対し第2溶媒(フッ素界面活性剤水溶液)を等量以上添加することが最も好ましい。第2溶媒(フッ素界面活性剤水溶液)の添加量を増加することで伸縮性導電体40の伸張性を向上させることができるが、50%歪を超えても良好な導電性を確保するためには、質量比においてフッ素ゴムの40%以上、より好ましくは質量比においてフッ素ゴムに対し80~100%のフッ素界面活性剤を添加することが好ましい。
ただし、界面活性剤はゴムを溶解するための第1溶媒と水またはエタノールの第2溶媒の混合状態を調節して相分離状態を生じさせるために有用な添加物であるが、界面活性剤の添加を無くして第1溶媒と第2溶媒を混合しても良い。

【0028】
前記フッ素界面活性剤水溶液の濃度は、水量が一定の場合、水:フッ素界面活性剤水溶液が5:2~3:2の範囲であることが好ましい。
前記銀フレークの添加量は3:1の割合とすることができる。添加量が多すぎる場合は繰り返しの伸張で伸縮性導電体40が破断する可能性が高く、添加量が低い場合は良好な導電性が得られない可能性がある。

【0029】
なお、上述の混合物として、カーボンナノチューブとイオン性液体(EMITFSI:1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)と4メチル2ペンタノンをジェットミリング等の手法で12時間混合攪拌し、得られた混合物に銀フレークとフッ素ゴムを添加し、マグネチックスターラー等で12時間程度混合攪拌してインク状混合物を得た後、5時間程度乾燥させて溶媒を揮発させてインク混合物を用いることもできる。なおまた、上述の混合物においてカーボンナノチューブは、添加しなくても良い。

【0030】
以上説明のインク状またはペースト状混合物をインクジェット法、ディスペンサー、スクリーン印刷、孔版印刷などの印刷法により前述の伸張性樹脂フィルム1の上に印刷することで、図5に断面構造を示す伸縮性導電体からなるゲート配線2、ソース配線3、ドレイン配線6を形成することができる。
なお、上述の方法で形成した伸縮性導電体について更に架橋してエラストマーとしてのフッ素ゴムを安定化することができる。
架橋する場合、120℃前後での加硫できる低温加硫型のポリオール加硫やパーオキサイド加硫など、材料に適した方法で加硫することができる。また、シリコーンゴムの場合はLTV(低温加硫型)シリコーンゴムや、材料が熱に弱い場合は、紫外線硬化型のシリコーンゴムや紫外線硬化型のウレタンゴムなどの公知の技術を用いることができる。

【0031】
図5に示す伸縮性導電体40からなるゲート配線2、ソース配線3、ドレイン配線6であるならば、数10%~200%程度まで伸縮させても優れた導電率を維持できる配線を得ることができる。例えば、200%程度伸張させても100ジーメンスの導電率を維持できる伸縮性導電体からなる配線は、従来技術では得られない優れた伸縮性と導電率を示す配線を提供できる。
また、伸縮性導電体を形成する伸張性樹脂フィルム1などの基体の表面をUVオゾン処理することにより、導電率を向上させ、繰り返し伸張による導電率の低下を抑制することができる。
以上のように優れた伸縮性を示す導体を得ることができる要因として本発明者は以下に説明する現象が作用していると推定している。

【0032】
図5に示す断面構造の伸縮性導電体40において、表層部に銀フレークの導電粒子42を密集させた導通部43が生成するのは、フッ素ゴムにフッ素界面活性剤水溶液を混合しているので、フッ素ゴムと水とでミセルを生成し、乾燥時に表層部が部分的に多孔質のような状態となり易いと考えられる。フッ素界面活性剤とともに水が存在することにより伸縮性導電体40の表面が親水性になり、水と導電粒子42がフッ素ゴムの表面に集まりやすくなるため、相分離が起こり、最表面に導電粒子42が集まり易く、導電粒子42の間に絶縁物が生成され難くなり、表面層に導電粒子42が密集し、それら粒子間に絶縁物が少ない導電粒子42が密集した部分的に多孔質のような構造が得られると考えられる。この部分的な多孔質構造は、高い導電性を有し、仮に導体が伸縮した場合であっても、導電粒子42間の導通が保たれ、導電率の低下を抑制できる。なお、ゴムを溶解する第1溶媒に対し水の第2溶媒が存在し相分離することが重要であり、ここに界面活性剤を含むことで、相分離状態を調整することができる。界面活性剤は必須の成分ではなく、相分離を起こす第1溶媒と第2溶媒の存在が重要であると考えられる。

【0033】
水が無い場合、ミセルの形成にフッ素界面活性剤が用いられないため、導電粒子42の間にフッ素界面活性剤が残って絶縁物となり易く、この絶縁物が導電性を妨げる。導電粒子42が伸縮性導電体40の内部に多すぎる場合、攪拌時に泡が生成されなくなる。なお、水を多く含むため、乾燥のさせ方、伸張性樹脂フィルムの親水性、疎水性によって相分離の状態が異なることが考えられ、これらの状態により導電性に影響が生じることが考えられる。また、銀フレークの表面を界面活性剤が改質し、銀フレークとフッ素ゴムとの界面の結合力が強くなり、大きな伸張に耐える構造になっていると推定できる。

【0034】
図2、図3に示す薄膜トランジスタ4に配線する場合、図3に示すように樹脂基板7と内部被覆層20と保護層35を貫通するようにレーザー光などでビアホールを形成し、このビアホールを介しゲート電極8に接続する幅500μm程度のゲート配線2を形成し、図2に示すようにゲート配線2の一部を覆い隠す絶縁膜60を形成し、ゲート配線2と交差するように伸縮性導電体を用いて幅500μm程度のソース配線3、ドレイン配線6を形成する。
以上の方法により配線2、3、6を形成することにより図1~図3に示す構造の伸縮性デバイスAを得ることができる。

【0035】
以上説明したように製造した伸縮性デバイスAは、薄膜トランジスタ4の周囲をヤング率の高い第1封止層31で覆い、その外側をヤング率の低い第2封止層32で覆い、伸縮性導電体によるゲート配線2、ソース配線3、ドレイン配線6を設けているので、伸縮性デバイスAを引き伸ばしたり、曲げることで歪を付加した場合であっても、半導体素子4のトランジスタとしての特性劣化を生じ難い構造を提供できる。

【0036】
第2封止層32には、第1封止層31に近い領域から離れる領域において徐々にヤング率が低下するヤング率のグラデーション(勾配)が生成されているので、歪が付加された場合に半導体素子4のトランジスタ特性劣化を抑制した構造を提供できる。
第2封止層32において、その厚さ方向、換言すると伸張性樹脂フィルム1の厚さ方向にもヤング率のグラデーションが生成されているので、トランジスタ特性に対し歪の影響を抑制した伸縮性デバイスAを得ることができる。

【0037】
更に、ひずみ50%~200%程度まで伸張させても導電率の低下し難い伸縮性導電体40でゲート配線2、ソース配線3、ドレイン配線6を形成しているので、伸縮性デバイスAを伸縮させてもこれら配線2、3、6の導電率が低下することがなく、各薄膜トランジスタ4を安定動作させることができる。
前記伸縮性デバイスAは、ゴムのように伸縮性に優れ、ロボットの関節のような機械の可動部に貼り付けて使用することができる伸縮性の電子人工皮膚を実現可能とするなどの優れた特徴を有する。

【0038】
本実施形態において、ゲート配線2、ソース配線3、ドレイン配線6を形成している伸縮性導電体40を図1~図3に示す伸縮性デバイスAに適用したのは、一つの例であり、その他種々の伸縮性デバイス一般に広く伸縮性導電体40を適用できるのは勿論である。
伸縮性デバイスは図1、図2に示すようなアクティブマトリックス回路に限らず、抵抗やコンデンサ等との組み合わせで実現されるパッシブ回路、物理量を信号に変換するセンサ素子の回路等、広く適用できるので、これらに対し伸縮性導電体40を適用できるのは勿論である。
これらいずれの用途に伸縮性導電体40を適用しても、伸縮性に優れ、伸び縮みした場合でも導電率の低下を引き起こし難い、伸縮性に優れた回路を提供できる。

【0039】
また、これまで説明した実施形態では伸張性基材として伸張性樹脂フィルム1を用いた例について説明したが、伸張性樹脂フィルム1に替えて繊維を編み構造とした編物状の柔軟性基材を用い、この柔軟性基材の外面または内部に先に説明した伸縮性導電体を用いて配線することも可能である。
このように繊維の編み組み構造とした柔軟性基材に対し伸縮性導電体を適用する場合、界面活性剤を含む伸縮性導電体を用いると、柔軟性基剤を洗濯する場合に界面活性剤が抜けて伸縮性導電体が損傷するおそれがある。このため、洋服やシャツなどの繊維の編み組み構造の柔軟性基材に伸縮性導電体を適用する場合、第2溶媒に界面活性剤を添加することなく第1溶媒に加え、伸縮性導電体を構成することが好ましい。

【0040】
繊維の編み組み構造の柔軟性基材に伸縮性導電体を形成する場合、導電材粒子を含む第1溶媒と第2溶媒の混合物であるインク状またはペースト状混合物を繊維の編み組み構造の柔軟性基材に塗布し乾燥させることで柔軟性基材に食い込んで一体化した構造に形成できる。この場合、導電性粒子からなる導通部は、編み組み構造の柔軟性基材表面に密に集合する構造にできるが、編み組み構造の柔軟性基材の裏面側に密に集合する構造にすることもできる。また、編み組み構造の繊維とそれを取り囲む混合物の乾燥体との界面に形成することもできる。
以上のことから、伸縮性導電体においては、形成する基材に合わせて表面、裏面あるいは編み組み構造体の繊維との界面などのいずれかの界面位置に導電粒子を密に集合させた構造の導通部を形成し、利用することができる。還元すると、導電粒子を密に集合させて導通部とする領域は、エラストマーからなる伸縮部と、この伸縮部に分散配合された複数の導電粒子とを備えた混合物において、その表面と裏面あるいは基材との境界部分、即ち、混合物の界面に沿って形成されていることが好ましい。

【0041】
伸縮性導電体において、用いるインク状またはペースト状の混合物を塗布乾燥した状態で用いても良いが、混合物に含まれるエラストマーを架橋して安定化した状態で用いても良い。
本発明では水に代表される第2溶媒は、エラストマーが溶解した第1溶媒に対して10%以上は溶解しないため、第2溶媒はミセル状に分散した(W/O型)エマルションを形成していると推察される。この時、界面活性剤を混入することでミセルが界面に集まり、導電性粒子を密に界面に集合させる。水は乾燥性が高いため、印刷プロセスでの品質管理が難しい場合がある。その場合は、沸点の高いエチレングリコールを用いる、あるいは水とエチレングリコールの混合溶媒を第2溶媒に用いることが有効である。エチレングリコールは第2溶媒の表面張力を低下させ、実効的に界面活性剤と同様に機能する。また、第1溶媒への溶解度も水と同様であり、伸縮性導体形成用ペーストの組成物としては好適である。繊維は水に対する親和性が高いため、伸縮性導体形成用ペーストとの界面に第2溶媒を好適に集合させることができる。このように気液界面あるいは固液界面が第2溶媒との親和性を高くすることで、界面に選択的に導通部を形成することができる。

【0042】
(実施例)
「実施例1」
フッ素ゴム(G801:ダイキン工業株式会社製商品名)を原料として用い、4メチル2ペンタノンの第1溶媒と平均粒径10μm以下の銀フレークを質量比2:1:3の割合で混合し、混合物をマグネチックスターラーにて12時間攪拌混合し、インク状の混合物を得た。この混合物にフッ素界面活性剤(Zonyl-FS300(40質量%):デュポン株式会社商品名)水溶液(第2溶媒)を混合してマグネチックスターラーにて12時間攪拌混合し、ペースト状の混合物を得た。

【0043】
このペースト状混合物を用い、孔版印刷法により図6に示す短冊状の伸張性樹脂フィルム50の上に長さ3cm、幅500μm、高さ20~30μmの伸縮性導電体51を形成した。伸張性樹脂フィルム50はその両端側にポリイミド製の矩形状の足場片52、52を備えており、これらに伸縮性導電体51の両端部を橋渡し状に形成して試験体を構成した。
伸張性樹脂フィルムは、PDMS(シルガード184(東レ・ダウコーニング株式会社商品名):主剤:架橋剤の割合=20:1)製の短冊状の伸張性樹脂フィルム(ヤング率210kPa)を用いた。

【0044】
「実施例2」
前記ペースト状の混合物を作製する場合、フッ素ゴムとフッ素界面活性剤水溶液(第2溶媒)との混合比を変更して複数の伸縮性導電体を作製し、それぞれの伸縮性導電体を用いて図6に示す試験体を作製して評価した。
作製した各試験体について、短冊状の伸張性樹脂フィルムの長さ方向に伸張力を作用させながら(速さ:3mm/分)4端子法でひずみに対する導電率を測定した。その結果を図7に示す。

【0045】
図7に示す結果から、フッ素ゴムにフッ素界面活性剤水溶液(濃度40質量%:第2溶媒)を添加する量を増加させると添加量に応じ伸張性が向上することがわかる。特に、50%以上のひずみであっても100ジーメンス以上の導電率を得るためには、質量比でフッ素ゴムに対し20%以上のフッ素界面活性剤水溶液(濃度40質量%)を添加することが好ましいと判る。また、質量比でフッ素ゴムに対し80%~100%のフッ素界面活性剤水溶液を添加するならば、200%前後のひずみを負荷しても100ジーメンスを超える導電率が得られる。

【0046】
「実施例3」
前記ペースト状の混合物を作製する場合、用いるフッ素ゴムとして、上述のG801に替えてG8001、G912、LT-302(いずれもダイキン工業株式会社商品名)のいずれかを用いて伸縮性導電体の試験体を作製した。作製した各試験体について、短冊状の伸張性樹脂フィルムの長さ方向に伸張力を作用させながら(速さ:3mm/分)4端子法でひずみに対する導電率を測定した。その結果を図8に示す。
図8に示す結果から、用いるフッ素ゴムとしてG801(ダイキン工業株式会社商品名)が最も優れた伸張性を発揮していると判る。なお、G912(ダイキン工業株式会社商品名)等のフッ素ゴムであっても、伸張性は向上していることが判る。

【0047】
「実施例4」
前記インク状の混合物を作製する場合、用いるフッ素界面活性剤水溶液の濃度を変更して複数の伸縮性導電体を作製し、それぞれの伸縮性導電体を用いて図6に示す試験体を作製し、各試験体について4端子法でひずみに対する導電率を測定した。各伸縮性導電体において、水:フッ素界面活性剤水溶液(Zonyl-FS300:デュポン株式会社商品名)を15:2、10:1、5:2、3:2、1:0の割合で変量し、フッ素界面活性剤水溶液とフッ素ゴムの配合比は1:1、フッ素ゴムはG801(ダイキン工業株式会社商品名)を用いている。測定結果を図9に示す。

【0048】
図9に示す結果から、用いるフッ素界面活性剤水溶液の濃度として3:2のものが最も良好なひずみに対する導電率を示した。図9において1:0で示す試料はフッ素界面活性剤を含まない水のみの試料を示すが、界面活性剤の添加がない試料であっても歪に対するある程度良好な導電性を示した。
なお、水を抜いてフッ素界面活性剤のみを混合して得た伸縮性導電体は、導電性を発現しなかったので、フッ素界面活性剤を水溶液として用いることが重要であり、水の添加、還元すると第1溶媒に対し相分離する機能を有する第2溶媒としての水の添加が重要であることが判る。

【0049】
「実施例5」
前記インク状の混合物を作製する場合、用いる銀フレークの添加量を変更して複数の伸縮性導電体を作製し、それぞれの伸縮性導電体を用いて図6に示す試験体を作製し、各試験体について4端子法でひずみに対する導電率を測定した。各伸縮性導電体において、フッ素界面活性剤水溶液(Zonyl-FS300(40質量%濃度):デュポン株式会社商品名)とフッ素ゴムの配合比は1:1、フッ素ゴムはG801を用いている。測定結果を図10に示す。

【0050】
図10に示す測定結果から、銀フレークの添加量が多すぎると伸張性が向上しないことが判る。このことから、銀フレークの添加量の調整も重要であることが判る。

【0051】
「実施例6」
先に実施例1で用いたフッ素ゴム(G801:ダイキン工業株式会社製商品名):第1溶媒(4メチル2ペンタノン):銀フレーク(平均粒径10μm以下):界面活性剤水溶液を質量比1:2:3:1の割合で混合して得られた伸縮性導電体について、表面を走査型電子顕微鏡で撮影(5000倍)するとともに、横断面を走査型電子顕微鏡で撮影(5000倍)した結果を図11と図12に示す。

【0052】
図11に示す表面状態は鱗片状の銀フレークが伸縮性導電体の表面に集合して一部が部分的な多孔質体のような状態となっている様子を示している。表層部分にこのように鱗片状の銀フレークが密集していることから、伸縮性導電体において、表層部分に密集した銀フレームが導電性を確保していると推定できる。
図12に示す横断面構造は、伸縮性導電体の内部側深い部分に銀フレークが疎に分散されていて、表層部分に銀フレークが密集していることを示している。この銀フレークの相分離は、フッ素界面活性剤を含む水溶液を配合したことによる効果と推定できる。また、伸縮性導電体の表層部分に密に集合している銀フレークが存在することから、200%前後のひずみを受けるように伸張させたとしても、銀フレーク間の導電パスを確保することができることから、優れた導電性を維持したまま伸張性を有していると推定できる。

【0053】
「実施例7」
先に実施例1で用いたフッ素ゴム(G801:ダイキン工業株式会社製商品名):第1溶媒(4メチル2ペンタノン):銀フレーク(平均粒径10μm以下)を質量比1:2:3の割合で混合し、更にフッ素界面活性剤水溶液を配合せずに得られた伸縮性導電体について、表面を走査型電子顕微鏡で撮影(5000倍)するとともに、部分断面を走査型電子顕微鏡で撮影(5000倍)した結果を図13と図14に示す。

【0054】
図13に示す表面状態は鱗片状の銀フレークがフッ素ゴムの内部に分散されている状態を示している。隣接する銀フレーク間には絶縁物としてのフッ素ゴムが存在するので、銀フレークによる良好な導電率を得ることは難しい。
図14に示す横断面構造は、銀フレークがフッ素ゴム中にランダムに分散されていて、表層部分の銀フレークは密集していないことを示している。この銀フレークの分散状態は、フッ素界面活性剤水溶液を配合していないことによると推定できる。
図13と図14に示す銀フレークの周囲は、絶縁体であるフッ素ゴムで分離されており、伸張によりひずみが作用すると導電率が著しく低下することを示唆する構造であると推定できる。

【0055】
「実施例8」
先に実施例1で用いた銀フレーク(平均粒径10μm以下):フッ素ゴム(G801:ダイキン工業株式会社製商品名):界面活性剤:第1溶媒(4メチル2ペンタノン):第2溶媒(水)を質量比3:6:4:12:6の割合で混合して得られたペースト混合物から得られた伸縮性導電体について歪と抵抗の関係を測定した結果を図15に示す。
また、フッ素ゴムの量と界面活性剤の合計量を1として、合計量1に対するフッ素ゴムの混合量を0.7、0.8、0.9、0.95、1.0の6通りに変更してそれぞれペースト混合物を作製し、これらのペースト混合物から得られた伸縮性導電体について歪と抵抗の関係を測定した結果を図15に示す。

【0056】
図15に示す結果から、フッ素ゴムと界面活性剤の混合量を変更する場合、歪に対し強い伸縮性導電体を得るためには、界面活性剤に対するフッ素ゴムの混合量を0.7~0.9の範囲とすることが有利であるとわかる。例えば、歪150%に耐える伸縮性導電体を得るためには、界面活性剤に対するフッ素ゴムの混合量を0.7、0.9にすることにより対応でき、歪100%に耐える伸縮性導電体を得るためには、界面活性剤に対するフッ素ゴムの混合量を0.7~0.9にすることにより対応できる。
また、図15に示す結果から、界面活性剤を0として水のみの第2溶媒とした試験例において50%の歪でも抵抗変化の少ない伸縮導電体を得られることがわかった。
【符号の説明】
【0057】
A…伸縮性デバイス、1…伸張性樹脂フィルム、2…ゲート配線(導電回路)、3…ソース配線(導電回路)、5…半導体搭載基材、6…ドレイン配線(導電回路)、7…樹脂基板、8…ゲート電極、9…酸化膜、10…修飾膜、11…有機半導体層、12…ソース電極、13…ドレイン電極、15…内部封止層、20…内部被覆層、31…第1封止層、32…第2封止層、35…保護層、40…伸縮性導電体、41…伸縮部、42…導電粒子、43…導通部。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
11
【図13】
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【図14】
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【図15】
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