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明細書 :物質封入方法及びターゲット分子を検出する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6611714号 (P6611714)
登録日 令和元年11月8日(2019.11.8)
発行日 令和元年11月27日(2019.11.27)
発明の名称または考案の名称 物質封入方法及びターゲット分子を検出する方法
国際特許分類 G01N  35/02        (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
FI G01N 35/02 A
G01N 33/543 531
C12M 1/00 A
請求項の数または発明の数 10
全頁数 16
出願番号 特願2016-532426 (P2016-532426)
出願日 平成27年7月1日(2015.7.1)
国際出願番号 PCT/JP2015/003310
国際公開番号 WO2016/006208
国際公開日 平成28年1月14日(2016.1.14)
優先権出願番号 2014140700
優先日 平成26年7月8日(2014.7.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年4月10日(2018.4.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】野地 博行
【氏名】山内 里紗
個別代理人の代理人 【識別番号】230104019、【弁護士】、【氏名又は名称】大野 聖二
【識別番号】100149076、【弁理士】、【氏名又は名称】梅田 慎介
審査官 【審査官】赤坂 祐樹
参考文献・文献 国際公開第2012/121310(WO,A1)
特開2010-054335(JP,A)
特開2007-017253(JP,A)
国際公開第2014/034781(WO,A1)
調査した分野 G01N 35/02
G01N 33/543
C12M 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
物質を収容可能な複数の収容部が、側壁によって互いに隔てられて形成されている基板上に、当該物質を含む第一の溶媒を導入する物質導入工程、ここで前記基板の前記収容部を含む領域は外部に開放された開口ウェルとされ、前記第一の溶媒は該開口ウェルの開口から開口ウェル内に導入される、と、
前記物質導入工程の後に、前記第一の溶媒よりも比重が大きい第二の溶媒を前記第一の溶媒上に導入する物質収容工程、ここで該第二の溶媒は前記開口ウェルの開口から該開口ウェル内の前記第一溶媒に積層して導入される、と、を含み、
前記第一の溶媒上に積層された前記第二の溶媒が前記第一の溶媒の下方に移動し、前記第一の溶媒と前記第二の溶媒とが層置換することによって、前記物質が前記収容部に収容される
物質封入方法。
【請求項2】
前記第一の溶媒及び第二の溶媒の少なくとも一方が界面活性剤を含む請求項1記載の物質封入方法。
【請求項3】
前記第一の溶媒中の前記界面活性剤の濃度が、0.01%~1%である請求項2記載の物質封入方法。
【請求項4】
前記第二の溶媒が、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、シリコーンオイル、ヘキサフルオロプロピレンエポキシド系ポリマー、ハイドロフルオロエーテル構造を持つポリマー、パーフルオロポリエーテル、三フッ化塩化エチレンポリマー及びパーフルオロカーボン構造を持つポリマーからなる群より選択される少なくとも1つ又はこれを含む混合物である請求項1~3のいずれか一項に記載の物質封入方法。
【請求項5】
前記第一の溶媒が、水、親水性アルコール、親水性エーテル、ケトン、ニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド、及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1つ又はこれを含む混合物である請求項1~4のいずれか一項に記載の物質封入方法。
【請求項6】
前記側壁が、フッ素系高分子樹脂からなる疎水性の上面を有し、前記第二の溶媒がパーフルオロカーボン構造を有するポリマーである請求項4又は5に記載の物質封入方法。
【請求項7】
前記物質は、ビーズ、核酸、タンパク質、ウイルス、細胞及び脂質膜複合体から選択される1以上である請求項1~のいずれか一項に記載の物質封入方法。
【請求項8】
ターゲット分子を特異的に捕捉するビーズと、当該ターゲット分子とを反応させる反応工程と、
前記反応工程の後に、前記ビーズを用いて請求項1~のいずれか一項に記載の物質封入方法を行なうビーズ封入工程と、
前記ビーズ封入工程の後に、前記収容部の各々に前記ターゲット分子を捕捉したビーズが収容されているか否かを検出する検出工程とを含む、ターゲット分子を検出する方法。
【請求項9】
前記ビーズに、前記ターゲット分子に特異的に結合する分子が結合している請求項に記載のターゲット分子を検出する方法。
【請求項10】
基板上に形成された収容部に物質を含む親水性溶媒を導入し、前記収容部に導入された前記物質を含む親水性溶媒を疎水性溶媒で被覆することによって前記収容部内に前記物質を封入する方法であって、
前記物質を収容可能な複数の収容部が、側壁によって互いに隔てられて形成されている基板上に、前記物質を含む親水性溶媒を導入する物質導入工程、ここで前記基板の前記収容部を含む領域は外部に開放された開口ウェルとされ、前記親水性溶媒は該開口ウェルの開口から開口ウェル内に導入される、と、
前記物質導入工程の後に、前記親水性溶媒よりも比重が大きい疎水性溶媒を前記親水性溶媒上に導入する物質収容工程、ここで該疎水性溶媒は前記開口ウェルの開口から該開口ウェル内の前記親水性溶媒に積層して導入される、と、を含み、
前記親水性溶媒上に積層された前記疎水性溶媒が前記親水性溶媒の下方に移動し、前記親水性溶媒と前記疎水性溶媒とが層置換することによって、前記物質が前記収容部に収容される、
物質封入方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、物質封入方法及びターゲット分子を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、核酸等の生体分子を個々識別した態様で観察することにより種々の測定を行なう方法として、一分子測定が知られている。この一分子測定を行なうための手法がいくつか知られている。
【0003】
特許文献1には、一分子酵素活性検出に用いられるマイクロチャンバが記載されている。このマイクロチャンバは、液滴を封入することができ、この液滴により充填可能な容量が1000fL(フェムトリットル)以下である容器部を有する。容器部は、第1の部材と第2の部材とを貼り合わせることにより、少なくとも第1の部材又は第2の部材が有する窪みによって構成される。この液滴中で酵素反応を行うことにより、反応生成物の分子数が極めて少数でも濃度を高くすることができるため、酵素一分子の活性を検出することができる。
【0004】
非特許文献1には、液滴がオイルで覆われており、外部から液滴に直接アクセス可能なフェムトリットルオーダーの液滴のアレイを用いて、一分子酵素アッセイを行なう方法が記載されている。このアレイでは、親水性表面に高さ17nmの疎水性領域が形成されることにより、親水性領域のパターンが形成されている。
【0005】
非特許文献2には、一分子の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いてタンパク質を検出する方法が記載されている。この方法では、タンパク質特異的な抗体で覆われた微細なビーズによって微量のタンパク質を捕捉し、ビーズとタンパク質との複合体を蛍光標識させる。この複合体を含むビーズを遠心力によって反応チャンバーに導入し、タンパク質を捕捉しているビーズの数を数えることによって、タンパク質を定量測定する。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2004-309405号公報
【0007】

【非特許文献1】S. Sakakihara et al., Lab Chip, 2010, 10, 3355-3362
【非特許文献2】David M Rissin et al., Nature Biotechnology: doi: 10.1038/nbt.1641
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
低濃度の疾病マーカー等を検出し、疾病、感染症等の早期発見を行なうために、バイオセンシング技術のさらなる高感度化が求められている。例えば、体積1mm3の腫瘍に含まれる100万個の癌細胞からマーカータンパク質(各細胞から100分子ずつ)が5Lの血中に分泌された場合、このタンパク質の血中濃度は30aM程度である。このような非常に低濃度のターゲット分子を検出しうる技術が求められている。
【0009】
このようなターゲット分子を検出するために、上述した一分子酵素アッセイを用いて一分子単位の感度で検出する方法が考えられる。すなわち、ターゲット分子を特異的にフェムトリットルオーダーの液滴(超微小液滴)に封入した後、酵素によって標識された抗体等をターゲット分子に接続し、上述した方法で標識酵素の活性を検出する方法である。ターゲット分子を特異的に超微小液滴に封入する方法としては、ターゲット分子に特定的に結合する別の抗体等で標識されたビーズ等を用いる方法が考えられる。この方法では、ビーズにターゲット分子を結合させた後、ビーズを超微小溶液に封入する。
【0010】
ここで、溶液中に極わずかにしか存在しないターゲット分子、例えば上述したような30aM程度のターゲット分子等を効率的に検出するためには、100万個程度の非常に多数の超微小液滴アレイを用意し、このアレイにビーズを捕捉する必要がある。
【0011】
しかし、非特許文献2に記載の方法では、ビーズを強い遠心力によりアレイに導入する必要があり、時間と労力を要する。また、非特許文献2に記載の方法で用いているアレイの数は5万個程度であり、100万個程度のアレイに適用することは極めて困難である。そのため、非特許文献2に記載の方法では、多数のビーズをアレイに効率よく封入させることが困難である。また、特許文献1及び非特許文献1には、このような問題を解決する方法は記載されていない。
【0012】
本発明の目的は、ビーズや核酸、タンパク質、ウイルス、細胞、脂質膜複合体などの物質を多数、アレイに効率よく封入させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の物質封入方法等を提供する。
[1]物質を収容可能な複数の収容部が、側壁によって互いに隔てられて形成されている基板上に、当該物質を含む第一の溶媒を導入する物質導入工程と、前記物質導入工程の後に、前記第一の溶媒よりも比重が大きい第二の溶媒を前記第一の溶媒上に導入する物質収容工程と、を含む物質封入方法。
[2]前記第一の溶媒及び第二の溶媒の少なくとも一方が界面活性剤を含む[1]の物質封入方法。
[3]前記第一の溶媒中の前記界面活性剤の濃度が、0.01%~1%である[2]の物質封入方法。
[4]前記界面活性剤が、TWEEN20又はTriton X-100である[2]又は[3]の物質封入方法。

[5]前記第二の溶媒が、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、シリコーンオイル、ヘキサフルオロプロピレンエポキシド系ポリマー、ハイドロフルオロエーテル構造を持つポリマー、パーフルオロポリエーテル、三フッ化塩化エチレンポリマー及びパーフルオロカーボン構造を持つポリマーからなる群より選択される少なくとも1つ又はこれを含む混合物である[1]~[4]のいずれかの物質封入方法。
[6]前記第一の溶媒が、水、親水性アルコール、親水性エーテル、ケトン、ニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド、及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1つ又はこれを含む混合物である[1]~[5]のいずれかの物質封入方法。
[7]前記側壁が、フッ素系高分子樹脂からなる疎水性の上面を有し、前記第二の溶媒がパーフルオロカーボン構造を有するポリマーである[5]又は[6]の物質封入方法。
[8]前記フッ素系高分子樹脂が、アモルファスフッ素樹脂である[7]の物質封入方法。
[9]前記基板の前記収容部を含む領域が、外部に開放されている[1]~[8]のいずれかに記載の物質封入方法。
[10]前記物質は、ビーズ、核酸、タンパク質、ウイルス、細胞及び脂質膜複合体から選択される1以上である[1]~[9]のいずれかに記載の物質封入方法。
[11]ターゲット分子を特異的に捕捉するビーズと、当該ターゲット分子とを反応させる反応工程と、前記反応工程の後に、前記ビーズを用いて[1]~[9]のいずれかに記載の物質封入方法を行なうビーズ封入工程と、前記ビーズ封入工程の後に、前記収容部の各々に前記ターゲット分子を捕捉したビーズが収容されているか否かを検出する検出工程とを含むターゲット分子を検出する方法。
[12]前記ビーズに、前記ターゲット分子に特異的に結合する分子が結合している[11]に記載のターゲット分子を検出する方法。
[13]基板上に形成された収容部に物質を含む親水性溶媒を導入し、前記収容部に導入された前記物質を含む親水性溶媒を疎水性溶媒で被覆することによって前記収容部内に前記物質を封入する方法であって、
前記物質を収容可能な複数の収容部が、側壁によって互いに隔てられて形成されている基板上に、前記物質を含む親水性溶媒を導入する物質導入工程と、前記物質導入工程の後に、前記親水性溶媒よりも比重が大きい疎水性溶媒を前記親水性溶媒上に導入する物質収容工程と、を含む物質封入方法。
[14]前記親水性溶媒及び前記疎水性溶媒の少なくとも一方が界面活性剤を含む[13]の物質封入方法。
[15]前記親水性溶媒中の前記界面活性剤の濃度が、0.01%~1%である[14]の物質封入方法。
[16]前記界面活性剤が、TWEEN20又はTriton X-100である[14]又は[15]の物質封入方法。
[17]前記疎水性溶媒が、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、シリコーンオイル、ヘキサフルオロプロピレンエポキシド系ポリマー、ハイドロフルオロエーテル構造を持つポリマー、パーフルオロポリエーテル、三フッ化塩化エチレンポリマー及びパーフルオロカーボン構造を持つポリマーからなる群より選択される少なくとも1つ又はこれを含む混合物である[13]~[16]のいずれかの物質封入方法。
[18]前記親水性溶媒が、水、親水性アルコール、親水性エーテル、ケトン、ニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド、及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1つ又はこれを含む混合物である[13]~[17]のいずれかの物質封入方法。
[19]前記側壁が、フッ素系高分子樹脂からなる疎水性の上面を有し、前記疎水性溶媒がパーフルオロカーボン構造を有するポリマーである[17]又は[18]の物質封入方法。
[20]前記フッ素系高分子樹脂が、アモルファスフッ素樹脂である[19]の物質封入方法。
[21]前記基板の前記収容部を含む領域が、外部に開放されている[13]~[20]のいずれかに記載の物質封入方法。
[22]前記物質は、ビーズ、核酸、タンパク質、ウイルス、細胞及び脂質膜複合体から選択される1以上である[13]~[21]のいずれかに記載の物質封入方法。
[23]ターゲット分子を特異的に捕捉するビーズと、当該ターゲット分子とを反応させる反応工程と、前記反応工程の後に、前記ビーズを用いて[13]~[21]のいずれかに記載の物質封入方法を行なうビーズ封入工程と、前記ビーズ封入工程の後に、前記収容部の各々に前記ターゲット分子を捕捉したビーズが収容されているか否かを検出する検出工程とを含むターゲット分子を検出する方法。
[22]前記ビーズに、前記ターゲット分子に特異的に結合する分子が結合している[21]に記載のターゲット分子を検出する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る物質封入方法を用いれば、ビーズや核酸、タンパク質、ウイルス、細胞、脂質膜複合体などの物質を多数、アレイに効率よく封入させることができるので、低濃度のターゲット分子を高感度に検出可能な技術に寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る物質封入方法の手順を説明するための模式図であり、アレイ1の側方断面図を示す。
【図2】本発明に係るターゲット分子検出装置の一実施形態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。

【0017】
本発明に係る物質封入方法において、基板上に形成された収容部に封入する物質は、ビーズ、核酸、タンパク質、ウイルス、細胞及び脂質膜複合体などであってよいが、以下の実施形態ではビーズ例として説明する。

【0018】
1.ビーズ封入方法
本発明に係るビーズ封入方法について、図1を参照して説明する。図1は、本発明に係るビーズ封入方法の手順を説明するための模式図であり、アレイ1の側方断面図を示す。

【0019】
本実施形態では、基板10を備えたアレイ1にビーズ21、21’を封入する場合について説明する。基板10は、ビーズ21、21’を1個のみ収容可能な複数の収容部13が、疎水性の上面を有する側壁12によって互いに隔てられて形成されている。

【0020】
ここで、「ビーズ」は、「粒子」と同義に用いられ、当技術分野において慣用の技術用語である。ビーズの形状は、特に限定されないが、通常球形とされる。ビーズの材料も、特に限定されず、ガラス、シリカゲル、ポリスチレン、ポリプロピレン、メンブレン及び磁性体などであってよい。具体的な材料として、セルロース、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ガラス、シリカゲル、ポリスチレン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ビニルとアクリルアミドとのコポリマー、ジビニルベンゼンン等と架橋されたポリスチレン、ポリアクリルアミド、ラテックスゲル、ポリスチレンデキストラン、ゴム、ケイ素、プラスチック、ニトロセルロース、セルロース、天然スポンジ、シリカゲル、ガラス、金属プラスチック、セルロース、架橋デキストラン(Sephadex(登録商標))およびアガロースゲル(セファロース(登録商標))などが挙げられる。ビーズは、多孔性であってもよい。ビーズは、平均粒子径5μm以下であることが好ましく、例えば1μm~4μm程度とされる。これにより、アレイへの効率的な封入とアレイの高密度化とを達成することができる。なお、「平均粒子径」とは、ここでは電子顕微鏡観察又は動的光散乱法を用いて測定した数値をいう。

【0021】
本実施形態では、ターゲット分子を特異的に捕捉するビーズを用いる場合について説明するが、本発明は特にこれに限定されない。本実施形態では、封入するビーズは、ターゲット分子を捕捉していないビーズ21と、ターゲット分子を捕捉したビーズ21’との混合物である。

【0022】
ターゲット分子を特異的に捕捉するビーズとして、例えば、ターゲット分子を特異的に捕捉するための分子が結合されているビーズを用いることができる。ターゲット分子を特異的に捕捉するための分子は、ビーズの表面にある修飾基に、例えばリンカーを介して結合させてもよい。例えば、アミノ基修飾ビーズの表面にあるアミノ基に、N-ヒドロキシスクシニミド(N—hydroxysuccinimide)等を持つ架橋剤を介して共有結合させることにより結合させることができる。

【0023】
「ターゲット分子」とは、検出対象である分子(標的分子)、すなわちここではビーズに捕捉させることによって検出しようとする分子をさす。ターゲット分子としては、例えばタンパク質、核酸、糖等の生体分子、ならびにウイルス粒子そのものなどが挙げられる。

【0024】
ターゲット分子を特異的に捕捉するための分子(以下、「ターゲット捕捉分子」ともいう。)としては、ターゲット分子に応じて選択すればよく、例えばタンパク質、抗体、核酸等を用いることができる。なお、ターゲット捕捉分子は、ビーズ1個あたり10万分子以上結合されていることが好ましい。例えばターゲット捕捉分子が抗体の場合には、解離定数がnMオーダー程度であるが、上述した構成であれば、ビーズとターゲット分子とを反応させる際のターゲット捕捉分子の濃度を充分に高くすることができる(例えば、ビーズの濃度が8×106粒子/mLの場合、ターゲット捕捉分子が約1nMとなる)。

【0025】
本実施形態に係るビーズ封入方法は、ビーズ導入工程と、脱気工程と、ビーズ収容工程とを含む。各工程について、以下に詳細に説明する。

【0026】
[ビーズ導入工程]
ビーズ導入工程について、図1Aを参照して説明する。

【0027】
ビーズ導入工程は、基板10上に、ビーズ21、21’を含む第一の溶媒20を導入する工程である。第一の溶媒20の導入方法としては、特に限定されないが、基板10の収容部13を含む領域14を外部に開放された開口ウェルとし、第一の溶媒20を当該開口からウェル内に導入する方法を採用できる。

【0028】
第一の溶媒20としては、親水性溶媒が好ましく、例えば、水、親水性アルコール、親水性エーテル、ケトン、ニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)からなる群より選択される少なくとも1つ又はこれを含む混合物等を好適に用いることができる。親水性アルコールとしては、例えばエタノール、メタノール、プロパノール、グリセリン等が挙げられる。親水性エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、ポリエチレンオキサイド、1,4-ジオキサン等が挙げられる。ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えばアセトニトリル等が挙げられる。

【0029】
第一の溶媒20は、界面活性剤を含むことが好ましい。次に説明するビーズ収容工程では、第一の溶媒20上に第一の溶媒20よりも比重が大きい第二の溶媒30(図1B参照)を導入した後、第一の溶媒20と第二の溶媒30を比重の違いによって置換させて、第一の溶媒20の下層に第二の溶媒30を移動させる(図1H参照)。この際、第一の溶媒20及び/又は第二の溶媒30に界面活性剤を添加しておくことで、第一の溶媒20と第二の溶媒30との置換を促進できる。
界面活性剤は、特に限定されないが、例えばTWEEN20(CAS番号:9005-64-5、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)及びTriton X-100(CAS番号:9002-93-1、一般名ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(n≒10))などが挙げられる。第一の溶媒20への界面活性剤の添加濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.01~1%である。

【0030】
さらに、界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、天然由来の界面活性剤などを広く用いることができる。

【0031】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型に分類される。このうち、具体的には、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、α-スルホ脂肪酸メチルエステルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルエトキシレート硫酸ナトリウムなどが挙げられ、中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いることが好ましい。

【0032】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩型、アルキルアミン型、複素環アミン型に分類される。具体的には、例えば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリピリジニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。

【0033】
非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、N-メチルアルキルグルカミドなどが挙げられる。中でも、ドデシルアルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、ラウロイルジエタノールアマイドの他、Triton X(Triton X-100など)、Pluronic(登録商標)(Pluronic F-123、F-68など)、Tween (Tween 20、40、60、65、80、85など)、Brij(登録商標)(Brij 35、58、98など)、Span (Span 20、40、60、80、83、85)の名前で市販されているものが好ましい。

【0034】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、3-(テトラデシルジメチルアミニオ)プロパン-1-スルホナートなどがあるが、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホナート(CHAPSO)などを用いることが好ましい。

【0035】
天然由来の界面活性剤としては、例えば、レシチン、サポニンが好ましく、レシチンとして称される化合物のうち、具体的には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロールなどが好ましい。また、サポニンとしてはキラヤサポニンが好ましい。

【0036】
第一の溶媒20は、ビーズ21、21’の他に、例えばビーズ21’に捕捉されたターゲット分子を特異的に検出するための物質をさらに含んでいてもよい。このような物質としては、例えば、ビーズ21’に捕捉されたターゲット分子又はこれに特異的に結合した分子に結合した所定の酵素によって分解されて、蛍光物質を遊離する蛍光基質などであってもよい。ターゲット分子に特異的に結合する分子としては、例えば二次抗体、核酸等であってもよい。また、所定の酵素としては、例えばβ-ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ等が挙げられる。蛍光基質としては、例えばFluorescein-di-β-galactopyranoside(FDG)、Amplex red(登録商標)等が挙げられる。

【0037】
[ビーズ収容工程]
ビーズ収容工程について、図1B~Hを参照して説明する。

【0038】
ビーズ収容工程は、第一の溶媒20よりも比重が大きい第二の溶媒30を第一の溶媒20上に導入する工程である。第二の溶媒30の導入方法としては、特に限定されないが、基板10の収容部13を含む領域14を外部に開放された開口ウェルとし、第二の溶媒30を当該開口からウェル内に導入する方法を採用できる。この際、第二の溶媒30は、図1Bに示すように、第一の溶媒20上に積層するようにして導入することが好ましい。

【0039】
第二の溶媒30は、ビーズ導入工程で用いた第一の溶媒20よりも比重が大きい溶媒であればよい。第一の溶媒20と第二の溶媒30は、層置換をし得る程度に相互に親媒性を有するものであることが好ましいが、互いに相溶しないことが必要である。第一の溶媒20と第二の溶媒30との間の親媒性が低すぎると、第一の溶媒20と第二の溶媒30との層置換が生じない。また、第一の溶媒20と第二の溶媒30とが互いに相溶する場合にも、第一の溶媒20と第二の溶媒30との層置換が生じない。第一の溶媒20と第二の溶媒30とが混ざり合うことを防止するため、第一の溶媒20に親水性溶媒を用い、第二の溶媒30に疎水性溶媒を用いることが好ましい。第二の溶媒30は、第一の溶媒20と同様に、層置換を促進するために界面活性剤を含んでいてもよい。

【0040】
このような第二の溶媒30として、疎水性溶媒が好ましく、例えば飽和炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、シリコーンオイル、ヘキサフルオロプロピレンエポキシド系ポリマー、ハイドロフルオロエーテル構造を持つポリマー、パーフルオロポリエーテル、三フッ化塩化エチレンポリマー及びパーフルオロカーボン構造を持つポリマーからなる群より選択される少なくとも1つ又はこれを含む混合物等を好適に用いることができる。飽和炭化水素としては、例えばアルカン、シクロアルカンなどが挙げられる。アルカンとしては、例えばデカン、ヘキサデカン等が挙げられる。不飽和炭化水素としては、例えばスクアレン等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、トルエン等が挙げられる。ヘキサフルオロプロピレンエポキシド系ポリマーとしては、例えば、Krytox143(デュポン社製)、Krytox GPL(デュポン社製)等が挙げられる。ハイドロフルオロエーテル構造を持つポリマーとしては、例えば、アサヒクリンAE3000(旭硝子社製)、Novec 7000(住友3M社製)等が挙げられる。パーフルオロカーボン構造を持つポリマーとしては、例えば、フロリナートFC-40、フロリナートFC-43(住友3M社製)等が挙げられる。

【0041】
第一の溶媒20上に導入され積層された第二の溶媒30は、第一の溶媒20よりも比重が大きいため、第一の溶媒20の下方に移動する。すなわち、第一の溶媒20と第二の溶媒30とが置換されて、上層が第二の溶媒30で下層が第一の溶媒20となった状態(図1B参照)から上層が第一の溶媒20で下層が第二の溶媒30となった状態(図1H参照)となる。層置換を生じる様子を図1C~Gに模式的に示す。この層置換において、領域14の底部に沈降しているビーズ21、21’が、第一の溶媒20の下方へ移動していく第二の溶媒30によって押し込まれるようにして収容部13の各々に収容されていく(図1D~F参照)。その結果、基板10上に多数作製した収容部13の各々に、ビーズを高い効率で封入できる。第一の溶媒20に親水性溶媒を用い、第二の溶媒30に疎水性溶媒を用いる場合、収容部13の各々に、第二の溶媒30により覆われたドロップレット(第一の溶媒20の液滴)が効率よく形成される。

【0042】
ここで、本発明に係るビーズ封入方法で用いる第一の溶媒20と第二の溶媒30の好適な例を挙げると、「表1」及び「表2」の通りである。

【0043】
【表1】
JP0006611714B2_000002t.gif

【0044】
【表2】
JP0006611714B2_000003t.gif

【0045】
ビーズ収容工程においては、ビーズ21,21’として磁性を有するものを用いる場合、ビーズの収容部13内への移動を促進するため磁気的手段を用いてもよい。ビーズ導入工程において、収容部13を含む領域14にビーズ21,21’を含む第一の溶媒20を導入した後、本工程において、第二の溶媒30を第一の溶媒20上に導入する前あるいは後に、ビーズ21,21’に外部磁場を印加する。これにより、ビーズ21,21’に収容部13へ向かう力を作用させて、ビーズ21,21’の収容部13内への移動を促進できる。磁場の印加は、例えば、基板10の収容部13が設けられた側の反対側(アレイ1の底面側)に磁石を近づけることによって行えばよい。

【0046】
本実施形態によれば、多数の収容部を有する大面積のアレイを実現することが可能である。例えば、100万個以上の収容部を有するアレイであっても、効率よくビーズ21、21’を各収容部に封入することが可能である。したがって、本実施形態であれば、ターゲット分子を高感度に検出することができるため、10aM程度の非常に低濃度のターゲット分子であっても検出することが可能となる。

【0047】
[脱気工程]
基板10の収容部13を含む領域14は、先に述べた通り、上部開放空間とされていてよいが、領域14を閉鎖空間とする場合には、ビーズ導入工程とビーズ収容工程との間に、領域14内を脱気する脱気工程を行ってもよい。脱気方法としては、例えば、アレイ1を減圧環境下において放置する方法等を好適に用いることができる。具体的には、約0.1気圧の減圧デシケータ内にアレイ1を約30秒放置する方法などである。

【0048】
本発明において、脱気工程は必須の工程ではないが、脱気工程を行なうことにより、収容部13内の空気が除去され、ビーズ21、21’を収容部13内に効率よく導入できる。

【0049】
2.ターゲット分子を検出する方法
次に、本発明に係るターゲット分子を検出する方法について、説明する。本発明に係るターゲット分子を検出する方法は、反応工程と、ビーズ封入工程と、検出工程とを含む。

【0050】
本実施形態では、ビーズとして、ターゲット分子を特異的に捕捉するビーズを用いる。例えば、ビーズは、ターゲット分子を特異的に捕捉するための分子が結合されているものであってもよい。なお、ビーズ、ターゲット分子、及びターゲット分子を特異的に捕捉するための分子については、上記のビーズ封入方法の説明において例示したものと同様のものを好適に用いることができる。

【0051】
反応工程は、ビーズとターゲット分子とを反応させる工程である。例えばビーズを含む溶液と、ターゲット分子を含む溶液とを混合させることにより反応させることができる。

【0052】
ビーズ封入工程は、反応工程において反応させたビーズを用いて上述したビーズ封入方法を行なう工程である。すなわち、ビーズ封入工程は、ビーズ導入工程と、ビーズ収容工程とを含む工程、または、ビーズ導入工程と、脱気工程と、ビーズ収容工程とを含む工程である。なお、ビーズ導入工程、脱気工程及びビーズ収容工程については、上述した「ビーズ封入方法」における各工程と同様に行なうことができるため、ここでは説明を省略する。

【0053】
検出工程は、ビーズ封入工程の後に、収容部13の各々にターゲット分子を捕捉したビーズ21’が収容されているか否かを検出する工程である。

【0054】
ターゲット分子を捕捉したビーズ21’が収容されているか否かを検出する方法としては、例えば抗原抗体反応、ストレプトアビジン-ビオチン反応、核酸の相補的な結合等、公知の分子認識反応を好適に用いることができる。例えば、ターゲット分子又はこれに特異的に結合した分子に結合した所定の酵素によって、蛍光基質が分解されて遊離した蛍光物質を検出する方法が挙げられる。蛍光物質の検出方法としては、蛍光顕微鏡、イメージセンサ等を用いて各収容部における蛍光強度を検出する方法などが挙げられる。

【0055】
また、検出工程においては、各収容部13にビーズ21又はビーズ21’が収容されているか否かをも検出することが好ましい。各収容部13にビーズ21又はビーズ21’が収容されているか否かを検出する方法としては、例えば顕微鏡下においてビーズ21又はビーズ21’の有無を観察することにより検出することができる。また、ビーズ21、21’の有無を検出する方法として、ビーズによる散乱光を検出する方法、電界効果トランジスタ(FET)による電位計測を利用する方法などもある。

【0056】
検出工程の結果、ビーズ21又はビーズ21’が収容されている収容部13の数と、ターゲット分子を捕捉したビーズ21’が収容されている収容部13の数とを用いて、ビーズの全数のうちターゲット分子を捕捉したビーズの数の割合を算出することができる。これにより、ターゲット分子の濃度を定量化することが可能となる。

【0057】
本実施形態であれば、多数の収容部を有する大面積のアレイを実現することが可能であり、100万個以上の収容部を有するアレイであっても、効率よくビーズ21、21’を各収容部に封入することが可能である。したがって、本実施形態であれば、ターゲット分子を高感度に検出することができるため、10aM程度の非常に低濃度のターゲット分子であっても検出することが可能となる。

【0058】
3.アレイ
次に、アレイ1の構成について、図1を参照して詳細に説明する。

【0059】
アレイ1において、基板10は、板状部材11と疎水性の上面を有する側壁12とを備えている。基板10には、複数の収容部13が側壁12によって互いに隔てられて形成されている。

【0060】
板状部材11は親水性表面を有していることが好ましい。「親水性表面」とは、親水性溶媒との親和性が疎水性溶媒との親和性よりも高い表面を指す。板状部材11としては、固体材料であればよいが、例えばガラス、シリコン、高分子樹脂等を用いることができる。

【0061】
側壁12は、板状部材11の表面上、好ましくは親水性表面上に設けられて、複数の収容部13の各々を隔てている。側壁12は、疎水性の上面を有している。「疎水性」とは、ここでは「親油性」と同じ意味で用いられ、疎水性溶媒との親和性が親水性溶媒との親和性よりも高いことをいう。

【0062】
なお、側壁12は、その上面が疎水性であることが望ましく、側面、すなわち収容部13内の内壁は、疎水性であっても親水性であってもよい。

【0063】
例えば、側壁12は、親水性の構造物と、その上面に形成されている疎水性層とにより構成されていてもよい。親水性の構造物には、例えばガラス、シリコン、高分子樹脂等を用いることができる。疎水性層には、例えば撥水性の樹脂、フッ素系高分子樹脂等を用いることができる。フッ素系高分子樹脂としては、例えばアモルファスフッ素樹脂等が挙げられる。アモルファスフッ素樹脂は、高い疎水性を有し、かつ、生体試料に対する毒性が低いという理由で、好ましく用いられる。

【0064】
第二の溶媒30には、側壁12の上面を形成する疎水性層を溶解しない程度に、疎水性層に対する親和性を有するものを用いることが望ましい。第二の溶媒30の疎水性層に対する親和性が低いと、第一の溶媒20との層置換が阻害されるおそれがある。また、第二の溶媒30の疎水性層に対する親和性が高すぎると、疎水性層が溶解し、側壁12の形状を維持できないおそれがある。このような観点から、側壁12の上面がフッ素系高分子樹脂により形成されている場合は、第二の溶媒30としてパーフルオロカーボン構造を有するポリマー(フロリナートFC-40、フロリナートFC-43等)を用いることが好ましい。

【0065】
上記アモルファスフッ素樹脂としては、例えば、CYTOP(登録商標)、TEFLON(登録商標)AF2400、およびTEFLON(登録商標)AF1600から選択した少なくとも1つを好適に用いることができる。中でも、微細加工が容易であるという理由で、CYTOP(登録商標)が最も好ましい。

【0066】
また、側壁12は、疎水性の材料により構成されていてもよい。側壁12として、例えばフッ素系高分子樹脂、パラキシリレン系高分子樹脂等を用いることができる。フッ素系高分子樹脂としては、例えばアモルファスフッ素樹脂等が挙げられる。アモルファスフッ素樹脂としては上述の樹脂を好適に用いることができる。

【0067】
側壁12は、板状部材11上に複数の収容部13が形成されるように構成されていればよく、例えば収容部13が形成される位置に孔が形成されている板形状の構造物であってもよい。

【0068】
板状部材11の表面からの側壁12の高さ(垂直方向の厚み)は、ビーズ収容工程において一旦収容部13に収容されたビーズ21、21’が、再度収容部13から排出されない程度の高さであればよい。例えば収容部13に収容されたビーズ21、21’の大部分、好ましくは全てが側壁12の上面よりも下に収まる高さであってもよい。

【0069】
なお、側壁12の高さは、ビーズ21、21’を収容部13に効率よく収容するという観点から、ビーズ21、21’の平均粒子径の1倍以上であることが好ましい。また側壁12の高さは、ビーズ21、21’を1個のみ収容部13に収容させるという観点から、ビーズ21、21’の平均粒子径の1.5倍以下であることが好ましい。

【0070】
複数の収容部13の各々は、ビーズ21、21’を1個のみ収容可能な凹部であり、互いに側壁12によって隔てられている。収容部13は、板状部材11の表面の一部を底面としており、底面が親水性である。

【0071】
収容部13は、ビーズ21、21’が1個のみ収容される形状及び大きさであればよい。収容部13の底面及び側面によって囲まれた領域の形状は、例えば円柱形状、角柱形状等であってもよい。

【0072】
各収容部13の水平方向の幅w(水平方向の断面が円であればその直径、正方形であればその一辺の長さなど)は、ビーズ21、21’の平均粒子径よりも大きければよいが、例えばビーズ21、21’の平均粒子径の1倍~2倍であることが好ましい。各収容部13の深さは、本実施形態では側壁12の高さと同じである。なお、本発明における収容部の深さは、ビーズを収容部に効率よく収容するという観点から、ビーズの平均粒子径の1倍以上であることが好ましい。また本発明における収容部の深さは、ビーズを1個のみ収容部に収容させるという観点から、ビーズの平均粒子径の1.5倍以下であることが好ましい。

【0073】
アレイ1の作成のためのフォトリソグラフィー、エッチング、基板積層などの技術は、汎用のマイクロチップやアレイを作成するための技術と同様である。

【0074】
本実施形態では、収容部13の底面が親水性であり、かつ側壁12の上面が疎水性である。このため、ビーズ導入工程において親水性の第一の溶媒20を用いた場合において、ビーズ21、21’を含む第一の溶媒20をより効率よく収容部13の中に導入できる。さらに、ビーズ収容工程で用いる疎水性の第二の溶媒30が収容部13に入り込むことを防止できるので、収容部13内の親水性の第一の溶媒20を疎水性の第二の溶媒30によって被覆し密閉して、ドロップレット(液滴)を形成できる。

【0075】
本実施形態に係るアレイ1の一例としては、例えば100万個以上の収容部が形成されたアレイである。このような大面積のアレイであっても、本実施形態に係るビーズ封入方法又はターゲット分子を検出する方法を用いることにより、効率よくビーズを各収容部に封入することが可能である。したがって、本実施形態であれば、ターゲット分子を高感度に検出することができるため、10aM程度の非常に低濃度のターゲット分子をも検出可能なアレイを提供することができる。

【0076】
4.キット
アレイ1とビーズ21は、キットとして構成することができる。アレイ1の収容部13の各々は、このキットが備えるビーズ21を1個のみ収容可能であるように構成されている。

【0077】
このキットが備えるビーズ21は、ターゲット分子を特異的に捕捉するものであってもよく、例えばターゲット分子に特異的に結合する分子が結合したものであってもよい。ターゲット分子、及びこれに特異的に結合する分子としては、前述したものを好適に用いることができる。

【0078】
また、このキットは、ターゲット分子を特異的に検出するための物質をさらに備えていてもよい。ターゲット分子を特異的に検出するための物質としては、上述したものを好適に用いることができる。また、キットは、第一の溶媒、第二の溶媒等をさらに備えていてもよい。

【0079】
5.ターゲット分子検出装置
次に、本発明に係るターゲット分子検出装置50の構成について、図2を参照して説明する。図2は、本発明に係るターゲット分子検出装置の一実施形態を模式的に示す図である。

【0080】
本実施形態に係るターゲット分子検出装置50は、アレイ1と、イメージセンサ51と、光源52とを備える。ここでは、アレイ1をマルチウェルプレートとして示した。マルチウェルプレートの各ウェルが、図1の領域14に相当する。アレイ1の構成は上述の通りであるので説明は省略する。

【0081】
イメージセンサ51は、収容部13の各々から、ターゲット分子を捕捉したビーズが収容された場合に発せられる光を検出するセンサである。例えば、ターゲット分子又はこれに特異的に結合した分子に結合した所定の酵素によって、蛍光基質が分解されて発せられる蛍光を検出するセンサであってもよい。イメージセンサ51としては、例えばCMOSイメージセンサ等を好適に用いることができる。

【0082】
光源52は、アレイ1に光を照射する光源である。なお、図2では、光源52はアレイ1の上に設けられているが、本発明は特にこれに限定されず、例えばアレイ1の横から光を照射するものであってもよい。

【0083】
なお、アレイ1とイメージセンサ51との間には、干渉フィルタ、ライトガイドアレイ等が設けられていてもよい。また、光源52とアレイ1との間には励起フィルタ等が設けられていてもよい。

【0084】
本実施形態であれば、アレイ1とイメージセンサ51とが直結されているため、顕微鏡等の他の装置を用いることなく、各収容部13にターゲット分子を捕捉したビーズが収容されているか否かを容易に検出することができる。したがって、簡便かつ高速に検出することが可能になる。また、安価な商品として提供することができる。

【0085】
6.本発明に係る物質封入方法の応用例
本発明に係る物質封入方法において、基板上に形成された収容部に封入する物質は、ビーズ、核酸、タンパク質、ウイルス、細胞及び脂質膜複合体などであってよい。上記の実施形態では、ビーズ例として説明した。

【0086】
本発明において、核酸には、DNA及びRNAが含まれる。また、タンパク質及びウイルスには、これらの重合体(オリゴマー)や、これらと他の物質との複合体も含まれる。細胞は、特にはバクテリア細胞を含み、脂質膜複合体は、特にはリポソーム及びエキソソーム、さらにはミトコンドリアなどの細胞内小器官(オルガネラ)を含む。

【0087】
封入対象を核酸、タンパク質、ウイルス、細胞及び脂質膜複合体などとする場合、本発明に係る物質封入方法は、例えばELISA-PCRなどのアプリケーションに用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、低濃度のターゲット分子を検出するための方法、アレイ、装置等に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1:アレイ、10:基板、11:板状部材、12:側壁、13:収容部、14:領域、20:第一の溶媒、21、21’:ビーズ、30:第二の溶媒


図面
【図1】
0
【図2】
1