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明細書 :吸放湿性膜を備えたデバイス及び吸放湿性膜を備えたデバイスを備えた水蒸気分離器及び熱交換器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6352915号 (P6352915)
登録日 平成30年6月15日(2018.6.15)
発行日 平成30年7月4日(2018.7.4)
発明の名称または考案の名称 吸放湿性膜を備えたデバイス及び吸放湿性膜を備えたデバイスを備えた水蒸気分離器及び熱交換器
国際特許分類 F28F   3/08        (2006.01)
B01D  53/22        (2006.01)
B01D  63/06        (2006.01)
B01D  53/26        (2006.01)
B01J  20/28        (2006.01)
F28D   7/16        (2006.01)
FI F28F 3/08 301B
B01D 53/22
B01D 63/06
B01D 53/26 200
B01J 20/28 A
F28D 7/16 A
請求項の数または発明の数 11
全頁数 27
出願番号 特願2015-528361 (P2015-528361)
出願日 平成26年7月25日(2014.7.25)
国際出願番号 PCT/JP2014/069739
国際公開番号 WO2015/012398
国際公開日 平成27年1月29日(2015.1.29)
優先権出願番号 2013154984
優先日 平成25年7月25日(2013.7.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年5月11日(2017.5.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】渡邊 裕
【氏名】堀部 明彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100099324、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 正剛
審査官 【審査官】富永 正史
参考文献・文献 特開2009-106799(JP,A)
特開平11-009991(JP,A)
国際公開第2007/116567(WO,A1)
特開2007-119969(JP,A)
特開2011-012894(JP,A)
特表2007-507344(JP,A)
特開平06-280317(JP,A)
特開2006-305482(JP,A)
特開2006-205122(JP,A)
特表2009-507630(JP,A)
特開平06-343916(JP,A)
特開平08-281047(JP,A)
特開平07-024924(JP,A)
調査した分野 B01D 53/22
B01D 53/26
B01D 61/00-71/82
B01J 20/26-20/34
F28D 7/16
F28D 19/04
特許請求の範囲 【請求項1】
気体が流通される流通路を備えた水蒸気分離で用いられる、吸放湿性膜を備えた水蒸気分離器用デバイスであって、
前記吸放湿性膜は、開口部が形成された担持体と、水分を吸放湿する吸放湿剤が担持されるとともに前記担持体に覆われてかつ前記開口部で露出される担持部材と、を有し、
前記担持体と前記担持部材とを固定するとともに前記担持体の表面又は前記担持部材の表面から突出する突出部を備えた固定具とを備え、
前記水蒸気分離器用デバイスを重ねた際に前記突出部により前記水蒸気分離器用デバイス間に間隙が形成され、この間隙部によって前記流通路の少なくとも一部が形成可能とされている、水蒸気分離器用デバイス。
【請求項2】
開口部が形成された担持体と、水分を吸放湿する吸放湿剤が担持されるとともに前記担持体に覆われてかつ前記開口部で露出される担持部材と、を有する吸放湿性膜を備えたデバイスと、
互いに前記デバイスを介して接すると共に、それぞれ気体が流通される第1流通路及び第2流通路と、
を有する水蒸気分離器であって、
前記デバイスは、前記担持体と前記担持部材とを固定するとともに前記担持体の表面又は前記担持部材の表面から突出する突出部を備えた固定具を備え、
前記第1流通路及び前記第2流通路は、前記デバイスを重ねた際に前記突出部により前記デバイス間に形成された間隙によって形成される、水蒸気分離器。
【請求項3】
前記吸放湿性膜を備えたデバイスはチューブ状とされ、前記チューブ内に形成される流通路が前記第1流通路、前記チューブ外に形成される通路が前記第2流通路とされてシェルアンドチューブ型水蒸気交換器を構成する、請求項に記載の水蒸気分離器。
【請求項4】
前記水分を吸放湿する吸放湿剤は、水分を吸放出し、かつ、アンモニアは吸放出しないものであり、
水蒸気分離時には、前記第1流通路を流れる気体と前記第2流通路を流れる気体との間で、一方の流通路を流れる気体中の水分が、前記開口部で前記一方の流通路に露出された前記担持部材の一方の表面で、前記担持された吸放湿剤により吸湿され、その後に前記担持部材内を水分子として移動して前記担持部材の他方の表面から気化することで前記他方の流通路を流れる気体に移動し、かつ、アンモニアは前記担持された吸放湿剤を透過しない、請求項2に記載の水蒸気分離器。
【請求項5】
前記担持体は、第1担持体と第2担持体とを含み、前記デバイスは、前記第1担持体と前記第2担持体との間に前記担持部材が設けられており、前記突出部は、前記第1担持体の表面及び第2担持体の表面から突出されている、請求項2又は4に記載の水蒸気分離器。
【請求項6】
前記第1担持体の開口部と前記第2担持体の開口部とは、前記担持部材を挟んだ状態で少なくとも一部が重なるように設けられている、請求項2、4又は5のいずれか一項に記載の水蒸気分離器。
【請求項7】
前記担持部材は、繊維体からなるシート状の担持部材に高分子吸放湿剤を担持させたものである、請求項2、4、5又は6のいずれか一項に記載の水蒸気分離器。
【請求項8】
前記第1担持体と前記第2担持体とは、可撓性を有する素材で形成されている、請求項2、4、5、6又は7のいずれか一項に記載の水蒸気分離器。
【請求項9】
前記突出部は、平頭状の頭部を有する、請求項2、4、5、6、7又は8のいずれか一項に記載の水蒸気分離器。
【請求項10】
前記突出部は、丸頭状の頭部を有する、請求項2、4、5、6、7又は8のいずれか一項に記載の水蒸気分離器。
【請求項11】
開口部が形成された担持体と前記開口部に形成されて水分を吸放湿する吸放湿剤を含む膜部とを有する吸放湿性膜を備えて気密性を有するデバイスと、
互いに前記吸放湿性膜を備えたデバイスを介して接すると共に、それぞれ気体が流通される第1流通路及び第2流通路と、
を有する水蒸気分離器であって、
前記開口部は、前記担持体における開口率が50%以上で、かつ、等価水力直径が5mm以下で形成されて前記膜部におけるひび割れの発生を防ぐ大きさで複数形成されており、
前記第1流通路を流れる気体の流通方向と前記第2流通路を流れる気体の流通方向は、互いに向流をなしており、
水蒸気分離時には、前記第1流通路を流れる気体と前記第2流通路を流れる気体との間で、その相対湿度差に応じて一方の流通路を流れる気体中の水蒸気が、前記膜部の一方の表面で前記吸放湿剤により吸湿され、その後に前記膜部内を液相の水として移動して前記膜部の他方の表面に移動し、前記他方の表面で気化することで前記他方の流通路を流れる気体に移動する、水蒸気分離器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換を行う技術に関し、主に顕熱及び潜熱の双方の熱交換を行うための吸放湿性膜を備えたデバイス及びこの吸放湿性膜を備えたデバイスを備えた水蒸気分離器及び熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化や化石燃料の価格高騰、原子力発電所の事故に起因する停電等が問題になってきており、その対策として、エネルギーの高効率使用や省エネルギー活動等が進められている。
その一方で、民生分野(家庭、業務)の空調設備は導入件数ならびに使用頻度が増加しつつあり、エネルギー使用量は拡大しつつあるため、その削減に向けた空調機器・システムの効率改善は喫緊の課題である。
【0003】
例えば、エアコンによる室内除湿空調では、空気を露点以下に冷却除湿して水蒸気を分離した後に、低温となった空気を再度加熱して相対湿度調整を実施するなど効率の悪い調湿が行われている。
【0004】
エネルギーの高効率使用の一環として、居住空間の高気密化がなされている。そのため、住居、事務所、商業施設、体育館、イベント会場、工場、自動車などの室内空間を、高気密化を達成しつつ衛生的な空気環境に保つことが求められている。しかし、高気密化を行うことで、居住環境の換気が疎かになると空気質悪化に起因するシックハウス症候群が誘発されるおそれがある。このため、室内あるいは車内に人間が居る条件においては、24時間連続の換気が望ましい。
【0005】
しかしながら、換気を強化すると、空気質の悪化は防ぐことができるものの、換気を行うことによる室内空調負荷、とりわけ除湿や加湿などの潜熱負荷の増大を招いてしまう。従って、省エネルギーという目的に反して空調に要するエネルギーが大きくなるという弊害が生じている。
【0006】
上記弊害を解消するために、和紙などの水分透過性を有する薄膜を備えた熱交換用構造体を介して接する2つの流通路のうち一方の流通路に室内からの空気を流通させて排気し、他方の流通路には室外からの空気を流通させて室内に導入するという換気装置が全熱交換器として市販されている。
【0007】
この換気装置では、室内からの空気と室外からの空気との間で、上記構造体に備えられた和紙等を介して熱交換及び水分の移動が行われる。例えば冬期においては室内の空気は高温かつ高湿度となっており、外気は低温かつ低湿度となっている。換気装置で熱交換を行うことで、室内からの空気により室外からの空気が暖められ、更に、室内からの空気に含まれる水蒸気が和紙を通じて室外側の空気に移動し、水分の移動もなされる。従って、外気は室内からの空気により加温及び加湿されて室内へと導入される。
夏期においては、この逆に、室内からの低温低湿度空気と室外からの高温高湿度空気との間で熱交換及び水分移動が行われ、室外からの空気は相対的に低温低湿となったうえで室内へと導入される。
【0008】
しかしながら、このような従来技術で用いられる熱交換用構造体においては、水蒸気を透過する膜である和紙等は気密性を有するものではなく、二酸化炭素やアンモニアガスは和紙等を通過してしまう。その結果、この構造体を用いた熱交換器では、室外からのフレッシュな空気に、室内からの空気から移動した二酸化炭素やアンモニアガス等の汚染成分が混合してしまうという難点がある。熱交換器における混合問題、つまりコンタミの発生を防止するために、和紙等の厚さや枚数を増すことも可能ではあるが、この場合、顕熱交換性能と潜熱交換(水蒸気交換)性能が低下すると言う難点も生じる。
【0009】
また、熱交換を行うことは必須ではないが、一方の気体から他方の気体へと水分を移動させることが望まれることもある。
例えば、自動車からの酸素が希薄化されている排気ガスを再度エンジンに再供給することで、排気中のNOを減少させる技術が知られている。この技術においては、酸素濃度を低く保ったままで排気ガスの湿度を低くすることが強く望まれている。従って、排気ガスと外気との間で、排気ガスの水蒸気を外気に移動させ、かつ、外気に含まれる酸素は排気ガスに移動させないことが望ましい。
従って、一定以上の気密性を保ちながら水蒸気を選択的に透過させるための吸放湿性膜を備えたデバイスも望まれている。
【0010】
これらの問題点を解決するために、例えば下記特許文献1には、吸湿剤を板材などの表面に担持させて相対湿度の高い空気に接触させ水蒸気を吸着し、その後相対湿度の低い空気と吸湿剤を担持した板材を接触させることで加湿対象の空気へ水蒸気を移動させるデシカント換気システムが提案されている。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特許第4341924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1記載のデシカント換気システムでは、相対湿度の高い空気が流れる流通路側にて吸湿剤が水蒸気を吸湿した後、この吸湿剤を低相対湿度の空気が流れる流通路へ移動させるための駆動装置が必要となる。
また、駆動装置を設ける必要があることから、デシカント換気システムの装置構成が複雑化し、また、コストの上昇や装置構成の大型化等が生じてしまうという課題を有している。
【0013】
従って、水分の移動を可能としながら気体成分の移動を防ぐとともに気密性を向上した、吸放湿性膜を備えたデバイスが求められており、また、このデバイスを用いて熱交換を行うことが求められている。更に、これらのデバイスを用いて水蒸気の分離を行う水蒸気分離器や、顕熱交換及び/又は潜熱交換を行うことが可能である熱交換器が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態においては、担持体、前記担持体に形成された開口部、及び、前記開口部に形成され、水分を吸放出する吸放出剤を含む膜部を有する吸放湿性膜を備えたデバイスが提供される。
好ましくは、前記膜部は、気密性を有する。
また、前記吸放湿性膜を備えたデバイスは、好ましくは、気密性を有するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(a)は、実施例1に係る、担持体として板材を用いた吸放湿性膜を備えたデバイスの斜視図であり、図1(b)は、その断面図である。
【図2】図2(a)は、実施例2に係る、担持体としてメッシュ材を用いた吸放湿性膜を備えたデバイスの斜視図であり、図2(b)は、その一部拡大図である。
【図3】図3は、本発明の実施例3に係るシェルアンドチューブ型熱交換器の説明図である。
【図4】図4は、シェルアンドチューブ型熱交換器に用いられる、メッシュ状とされた吸放湿性膜を備えたデバイスの説明図であり、(a)は全体説明図、(b)は膜部の拡大図、(c)は水分の移動の説明図、(d)は開口部における吸放湿剤とバインダーとの状態の説明図である。
【図5】図5は、本発明の実施例4に係るプレートフィン型全熱交換器の説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施例4に係るプレートフィン型全熱交換器を通過する夏季の外気ならびに室内気の湿度・温度変化の概要図である。
【図7】図7(a)は、本発明の実施例5に係る吸放湿性膜を備えたデバイスの斜視図、図7(b)はその一部断面図、図7(c)は、デバイスを固定するリベットの断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施例6に係る熱交換器の断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施例9に係る熱交換器の一部透過斜視図である。
【図10】図10(a)は、本発明の実施例9に係る熱交換器を前面側から見た一部透過図、図10(b)はその前面側の平面図、図10(c)はその横断面図、図10(d)はその右側面図である。
【図11】図11は、吸放湿剤の一例における相対湿度に対する吸湿率を表すグラフである。
【図12】図12は、吸放湿剤の平均粒径と透湿度との相関を表すグラフである。
【図13】図13は、透湿剤シートの透湿度と通気度の比較試験結果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
本発明の一実施形態では、吸放湿性膜を備えたデバイスとして、担持体と、担持体に形成された複数の開口部と、この開口部に設けられた、水分を吸放湿する吸放湿剤を含む膜部とを備えた吸放湿性構造体を形成している。吸放湿性構造体自体は必ずしも完全な気密性を有するものとする必要はない。しかし、吸放湿性構造体を熱交換器に適用する場合等のように、吸放湿性構造体に対して実質的な気密性が必要とされる場合がある。また、吸放湿性構造体自体を完全に気密とする必要はないものの、ある程度以上の気密性が必要となる場合もある。
従って、吸放湿性構造体に対してどの程度の気密性が要求されるかに応じて、担持体と膜部とについて、実質的に気密なもの、または要求される気密性を満足する程度の気密性を有するものを選択することができる。

【0017】
なお、膜部に含まれる吸放湿剤は、高湿度下で水分を吸収し、かつ低湿度下で水分を放出することが可能なものであれば、用途に応じて任意のものを用いることができる。

【0018】
以下の実施形態では、吸湿性及び放湿性を有する吸放湿剤として特開2009-74098号に記載される収着剤あるいは吸放湿性重合体を用いているが、吸放湿剤はこれに限られるものではない。例えば、全熱交換器等の、膜部の一方側の面から他方側の面への膜部を通じた水分移動が必要となる用途においては、吸放湿剤は、
1)高湿度の気体に接する側の膜部表面で吸放湿剤により水蒸気を水分として吸収し、かつ、
2)低湿度の気体に接する側の膜部表面で吸放湿剤から水分を水蒸気として放散する、
ことができるものであればよい。通常は、吸放湿剤の微粒子を接着性の液状バインダーに混合し、この混合物を担体に担持して乾燥させることで、水蒸気透過性膜を形成する。

【0019】
高湿度下で水分を吸収し、かつ低湿度下で水分を放出する物質には種々の名称が付されており、例えば、特開2013-107070では「吸脱湿剤」、特開2001-11320号では「吸放湿性重合体」、「多孔質吸放湿性重合体」、「有機高分子系収着剤」、特開2000-17101号では「多孔質吸放湿性重合体」と称されている。
これらの物質は、その名称にかかわらず、高湿度下で水分を吸収し、かつ低湿度下で水分を放出するものであれば水蒸気選択透過性膜の形成に用いることができる。本明細書では、これらの物質を「吸放湿剤」として記載する。

【0020】
例えば特開2009-74098号公報に記載された収着剤は、吸放湿剤として好適な性能を有する。この収着剤の相対湿度に対する吸湿率(%重量)を表すグラフを図11に示す。
図11に示されるように、特開2009-74098号公報に記載された収着剤は、相対湿度の高い空気中で水蒸気を吸湿する。この際に吸湿熱が発生する。また、相対湿度の低い空気中で、水分を水蒸気として放出し、この際に周囲の熱を奪う。なお、この動作は、温度には依存せずに相対湿度のみに依存する。但し、空気の温度変化に伴って相対湿度も変化するので、見かけ上は、この動作は温度の影響を受けることになる。
図示されるように、特開2009-74098号公報に記載された収着剤は、他の吸湿剤、即ちシリカゲルA、シリカゲルB及びアクティブカーボンに比較して、相対湿度が高いときにおける吸湿率が非常に高い。
そして、相対湿度が低くなると、吸湿率も低くなるので、それまでに吸湿されていた水分が放出される。また、図11に示されるように、相対湿度が高いときにおける吸湿率と、相対湿度が低いときにおける吸湿率との差が大きい。従って、高湿度の気体からは多量に水分を吸湿し、かつ、低湿度の気体へと水分を多量に放出すると共に吸湿された水分子は収着剤の内部を移動できるので、水蒸気選択透過性膜に適している。

【0021】
また、この収着剤は、透湿度が高い一方で、通気度が低く、水蒸気選択透過性膜として優れた性質を有する。
図12に、収着剤における透湿度及び通気度を基準として、市販されている透湿防水性シートにおける透湿度通気度とを測定した結果を表形式で表した説明図を示す。
この図に示されるように、収着剤を塗布したシート(エマルション0.1[μm])における透湿度を1として、A社製透湿防水シートの透湿度は0.5、B社製透湿防水性シートの透湿度は0.8である。従って、A社製透湿防水性シート、B社製透湿防水性シートは、共に、収着剤を塗布したシートよりも水蒸気が移動しにくいことが示される。通気度に関しては、収着剤を塗布したシートにおける通気度を1として、A社製透湿防水シートの通気度は6、B社製透湿防水性シートの通気度は15である。
従って、A社製透湿防水性シート、B社製透湿防水性シートは、共に、収着剤を塗布したシートよりも通気性が高く、従って、A社製透湿防水性シート、B社製透湿防水性シートは、共に、収着剤を塗布したシートよりも、水蒸気選択透過や熱交換を行う気体同士の間で不快成分等を含んだ空気が互いに混入しやすくなっていることが示される。以上のことから、水蒸気分離や熱交換は、適宜水蒸気分離膜や熱交換膜を選択することが可能であるが、特に、特開2009-74098号公報に記載された収着剤が好適であることが示される。

【0022】
本発明の実施形態に係る吸放湿性膜を備えたデバイスを介して気体同士を接触させることで、これらの気体の間で水蒸気を移動させることができる。この際、このデバイスを介して熱交換を行うこともできる。特に、この吸放湿性膜を備えたデバイスは、顕熱及び潜熱を交換する全熱交換器、例えば室内からの空気と室外からの空気との間で熱交換及び水分移動を行う全熱交換器に適している。
なお、本発明は、空気同士に限られず、気体同士での水蒸気移動や熱交換に一般的に使用することが可能である。室内からの空気と室外からの空気とをこの吸放湿性構造体を介して形成された第1の流通路と第2の流通路にそれぞれ流通させることで、室内からの空気と室外からの空気との間で、水蒸気選択透過性膜を通じて水分移動がなされる。また、吸放湿性構造体を介して室内からの空気と室外からの空気との間で熱移動が行われる。従って、室外からの空気を、その温度及び湿度を室内からの空気に適合するよう調整したうえで室内に導入することが可能となる。

【0023】
特に、室内からの空気は、人間の呼吸に起因して二酸化炭素の濃度が高く、また、人間及び室内の物質から発生するアンモニアや臭気成分等、人体にとって有害な成分や不快成分が含まれる場合もある。しかし、上記のように吸放湿性構造体は気密性を有するので、室内からの空気に含まれるこのような望ましくない気体成分が室外からの空気に移動することが防がれる。従って、室外からの新鮮な空気を、その温度及び湿度を室内の空気に近くなるよう調整し、かつ室内からの空気に含まれる望ましくない気体成分を室内からの新鮮な空気に混入させることなく室内へと導入することが可能となる。

【0024】
このように、熱(顕熱)交換と水蒸気(潜熱)交換を行うことで室内空調負荷の増大を防いでエネルギー損失を抑制しながら換気を行うことができる。
また、このような吸放湿性構造体においては、気密性を維持することが重要となる場合がある。この場合、担持体自体は気密性を有する必要があることに加えて、担持体上に形成された膜部を気密なものとし、その気密性を維持する必要がある。

【0025】
なお、吸放湿性構造体の膜部を貫通するクラックが生じた場合、あるいは吸放湿性構造体の担持体が完全には気密なものではない場合、吸放湿性構造体は完全に気密にはならない。しかし、用途によっては、吸放湿性構造体に完全な気密性が必要ではない場合もある。
例えば、全熱交換器に吸放湿性構造体を用いる場合、吸放湿性構造体自体の気密性が完全ではないと空気の漏洩が生じてしまう。しかし、その漏洩量が許容量以下であれば、吸放湿性構造体が完全に気密でない吸放湿性構造体であっても全熱交換器に用いることができる。この場合の許容量は任意に定めることができる。室内からの臭気成分を含む空気と室内に導入される新鮮な外気との間で全熱交換を行う場合は、室内に導入される外気に臭気が生じない漏洩量を、空気の漏洩量の許容値とすることができる。

【0026】
膜部自体の気密性を確保するために、水蒸気を透過する膜部を構成する材料、好ましくは水蒸気選択透過性材料にバインダーを混合することもできる。例えば水蒸気を透過する材料だけで担持体の開口部に膜部を形成した場合、膜部が多孔性であり、又は、膜部自体が気密であっても、形成される膜部が脆くクラックが発生しやすい等の理由で気密性が不十分になるおそれが生じる場合もある。この場合、水蒸気を透過する材料とバインダーとの混合物を担持体の開口部に配置して乾燥させることで膜部を形成して充分な気密性を得ることもできる。

【0027】
また、水蒸気を透過する材料として粒状の吸放湿剤を用いて膜部を形成する場合、粒状の吸放湿剤に接着剤としてバインダーを混合し、この混合物を開口部に配置した後に乾燥等を行うことで気密性を有する膜部を形成することもできる。
この場合、バインダーに対しては、吸放湿剤同士を、形成される膜部にクラック等が生じない程度に強く結合することが求められる。更に、吸放湿剤を通じた水分の移動を許容するものであることが求められる。バインダーが水分を透過せず、かつ、吸放湿剤をバインダーが完全に被覆した場合には、吸放湿剤を通じた水分移動が不可能になるからである。
吸放湿剤内では水分は液相で移動することから、バインダーは、液相の水に対して透過性を有するものであることが好ましい。

【0028】
更に、水蒸気を透過する材料を開口部のみに配置して膜部を形成するものとしても良いが、開口部だけでなく担持体上をも膜状に覆うように配置する構成としても良い。吸放湿性構造体の担持体部分においては主に顕熱交換が行われるので、この顕熱交換を許容されるのであれば、水蒸気を透過する材料を担持体部分に配置しても良いからである。
この場合、担持体上に形成された膜を通じて、開口部に形成された膜部にまで水分が移動することで、水分が吸放湿性構造体の一方側から他方側に移動することが可能となる。更に、担持体上に形成された水蒸気を透過する材料による膜が、担持体の開口部に形成された膜部を強固に固定することも可能である。特に、担持体表面に吸放湿剤をバインダーで接着する構成とした場合には、開口部の吸放湿剤をより堅固に固定することも可能である。

【0029】
一方、膜自体が気密性を有しても、膜にひび割れやクラック等が発生して気密性が維持できなくなるおそれもある。このようなひび割れが発生すると、吸放湿性構造体により分離されている気体同士がひび割れを通過して混合してしまう。例えば、室内からの空気と室外からの空気を、水蒸気選択透過性構造体を介して全熱交換する場合、水蒸気選択透過性膜に生じたクラックを通じて、室内からの空気に含まれる二酸化炭素や不快物質等を含む気体成分が室外からの新鮮な空気に混入してしまう。また、ある程度の空気の漏洩が許容される用途においても、漏洩の原因となるクラック等の発生をできるだけ抑えることが望ましい。

【0030】
このようなクラックの主な発生原因としては、膜部の強度や膜部に係る応力が挙げられる。特に、膜部の面積が大きくなると、膜部に係る応力も大きくなり、膜を貫通するクラックやひび割れが生じやすくなる。
従って、本実施形態では、担持体に形成される開口部を、クラックやひび割れが生じない大きさとし、開口部の面積を比較的小さくしている。例えば、等価水力直径を5mm以下、好ましくは等価水力直径を2mmとすることで、クラックやひび割れが生じないか、あるいは膜の表面にクラックやひび割れが生じたとしても、膜を貫通するクラックやひび割れが生じないようにし、気密性を保つようにしている。なお、完全な気密性が必要ではない場合には、等価水力直径を例えば7mm以下、10mm以下として、開口部の面積をより大きくすることもできる。

【0031】
また、開口部の形状も、応力の集中によるクラックやひび割れの発生を防ぐ形状とすることが望ましいが、上記のように開口部の面積を小さくすることで、クラックやひび割れの発生を防ぐことができるのであれば、開口部を六角形や四角形としても良い。好ましくは、六角形や四角形の角の部分を丸めることで、角の部分における応力の集中を防ぐことができる。また、開口部を円形とすることで、応力の集中を避けるようにしてもよい。

【0032】
以下の実施例では、特段の記載がない限りは、担持体として板材やチューブ材を用い、多数の開口部を設けると共に、各開口部の水力等価直径を2mm以下とした。各開口部には、水蒸気を吸湿する吸放湿剤と接着性を有するバインダー、好ましくはセルロースなどの微細繊維を混合した混合物を塗布し、その後乾燥させることで、水蒸気選択透過性膜を形成した。なお、吸放湿剤としては、例えば日本エクスラン工業株式会社による特開2009-74098号公報に記載される収着剤を用いることができる。

【0033】
その結果、開口部には吸放湿剤が接着性を有するバインダーを介して膜状に固定された状態となる。この状態であれば、乾燥後に膜部に微細なひび割れが生じても、そのひび割れは小さく、膜部の全体を貫通することが無いので、気密性が維持される。なお、上述のように、開口部を大きくすると、クラック等が発生しやすくなるが、これら発生したクラック等による空気の漏洩量が許容量以下となる範囲内であれば、開口部をより大きくすることも可能である。

【0034】
一方、吸放湿性構造体の開口部に形成された膜部に形成されて空気面に露出する吸放湿剤の膜は相対湿度の高い空気中から水蒸気を吸湿し、水分子の状態で結合水として吸放湿剤中に取り込む。この際、水は気相から液相へと相転移するので凝縮熱が発生する。吸放湿剤中に液相となって取り込まれた水分子は吸放湿剤の中を移動し、相対湿度の低い空気側に接する吸放湿剤の露出面から、空気中へと水蒸気として放散される。この際、水は液相から気相へと相転移するので、周囲から気化熱を奪う。

【0035】
このように、一方の流通路を流通する、相対湿度の高い空気内の気相の水蒸気は、吸着剤内を液相の水として移動し、更に、他方の流通路を流通する相対湿度の低い空気内に気相の水蒸気として移動する。また、膜自体は比較的薄いので、膜の一方側で水が気相から液相に相転移する際に発生した凝縮熱は、膜の反対側における液相から気相への相転移時に必要となる気化熱の熱源として消費される。従って、発生した凝縮熱を気化熱に活用することができ、熱エネルギーが無駄になることもない。

【0036】
この様に、相対湿度の高い空気に含まれる水蒸気は、見かけ上は、相対湿度の低い空気側に直接移動するようにみえる。また、水蒸気選択透過性膜を介して流れる流体の間で温度差がある場合は、水蒸気選択透過性膜及び担持体を通じて高温側から低温側へと熱が移動可能である。

【0037】
従って、熱及び水蒸気は、吸放湿性構造体を介して移動するが、炭酸ガスやアンモニアガス等の気体成分は、吸放湿性構造体を殆ど通過しないので、室内からの空気に含まれるこれらの汚染成分によって室外からの新鮮な空気が汚染されてコンタミが発生することを防ぐことができる。

【0038】
また、このような特性を有する水蒸気選択透過性膜を形成する板材、チューブ材、メッシュ材などは、その開口部に形成される水蒸気選択透過性膜を補強できる程度の強度があればよく、強度や形状の設計自由度が高い。従って、これら板材等として適切な材料を選択して、シェルアンドチューブ型やプレートフィン型等の全熱交換器を容易に製造することができる。
なお、水蒸気の移動を促進する意味で、開口部の総面積(開口率)は大きいことが望ましいものの、その開口部に形成される水蒸気選択透過性膜の強度や貫通孔発生を防ぐために、形状、サイズが制限される。従って、開口部は一定の形状やサイズである必要は無い。担持体の開口部の寸法、形状が均一ではないものとすることが好ましい場合もある。
また、水蒸気選択透過性膜の透湿度は、吸放湿剤の平均粒径によって定まる。

【0039】
吸放湿剤の平均粒径を変化させたときの透湿度の相対変化を表すグラフを図13に示す。なお、この図において縦軸は透湿度、横軸は平均粒径(単位:0.01[μm])を表す。また、この図で透湿度の値「1」は、17[g/m2hr]に相当する。粒径による通気度は差圧5[kPa]まで、ほぼ無視可能であった。図13では、差圧5[kPa]における透湿度と平均粒径との相関を表している。
この図に示されるように、平均粒径が小さいと吸放湿剤同士の距離が小さくなるので透湿度も小さくなる。平均粒径がある程度大きくなると透湿度は急激に上昇して平均粒径が約0.2[μm]で透湿度は最大値約2.75となる。
吸放湿剤の平均粒径が0.15~0.3[μm]で透湿度は2.5以上となり、平均粒径が0.1~0.45[μm]で透湿度は2以上になることから、吸放湿剤の平均粒径は、好ましくは0.1~0.45[μm]、より好ましくは0.15~0.3[μm]である。

【0040】
[実施例1]
図1(a)に、本発明の実施例1に係る吸放湿性構造体10の斜視図を示し、また、その断面図を図1(b)に示す。
これらの図に示されるように、吸放湿性構造体10は、担持体として板材11を用いており、板材11の開口部12に水蒸気選択透過性を有する吸放湿剤として高分子吸放湿剤14を含んだ膜部13が形成されている。この膜部13が水蒸気選択透過性膜となる。板材11の材質はアルミあるいは銅、プラスチックなどが用いられ、その厚みは1mm以下で0.2~0.3mmが好ましい。高分子吸着剤としては、例えば特開2009-74098号に記載される吸放湿性重合体を用いることができる。

【0041】
また、バインダーとして、接着性樹脂を用いた。なお、この実施例1では板材11を平面状としたが、板材11をチューブ状あるいは曲面状とすることも可能である。また、この吸放湿性構造体において開口率は50%、特に70%以上とすることが好ましく、この実施例1では開口部12の形状、サイズをそれぞれ異なるものとして、開口率を70%、等価水力直径は5mm以下とした。

【0042】
図1(a)、(b)に示すように、本発明の実施例1に係る吸放湿性構造体10においては、担持体である板材11の開口部12及びその周囲の板材表面に膜部13が形成されている。この実施例では、吸放湿性構造体10の上面側に高温・高湿度の空気を接触させ、吸放湿性構造体10の下面側に低温・低湿度の空気を接触させた。その結果、高温・高湿度の空気における熱と水蒸気は、吸放湿性構造体10の下面側の低温・低湿度の空気へとそれぞれ伝達されることが確認できた。その際の水蒸気透過率は、開口部を含む板材の有効面積に対して、20g/m・hであった。

【0043】
顕熱交換について説明すると、熱は、板材11と開口部12に形成された膜部13とを通じて伝導により移動する。従って、吸放湿性構造体10を通じた平均熱伝導率は、板材11の熱伝導率と板厚及び膜部13の熱伝導率及び膜厚に影響される。膜部13は、使用する高分子吸放湿剤14及びこの高分子吸放湿剤14と共に膜部を形成するバインダーとの混合により形成された水蒸気選択性透過膜である。図1は、膜部13の乾燥後の状態を示しており、バインダーは、高分子吸放湿剤14間に介在してこれらを接着している。従って、高分子吸放湿剤14とバインダーの熱伝導率により、膜部13における熱伝導率が定まる。板材11に関しては、必要な強度及び膜部13との接着性等の条件を満たした上で熱伝導率の高い材料を選択することで、平均熱伝導率の向上をはかることができる。

【0044】
なお、この実施例では、高分子吸放湿剤14と接着性バインダーとの混合物を板材表面及び開口部12内に配した後に、この混合物を乾燥させることにより担持体である板材11の開口部に膜部を形成した。しかし、この混合物を開口部12内にのみ配置して乾燥することにより膜部13を形成することもできる。更に、この混合物に植物性繊維及びガラス繊維の少なくとも一方を含ませても良い。

【0045】
一方、潜熱交換については、吸放湿性構造体10の上面側の高温・高湿の空気内に含まれる気相の水蒸気は、開口部12内の膜部13内部の高分子吸放湿剤14に吸湿され、凝縮熱を放出して液相となる。その後、液相となった水分子は、膜部13内を水分濃度に従って膜部13の下面側へと移動し、膜部13下面側の低温・低湿の空気に晒される。その後、液相の水は、周囲から気化熱を奪って気化し、気相の水蒸気となって低温・低湿の空気内に移動する。

【0046】
この際、水蒸気の移動先となる空気は低温であるが、膜部13には、吸放湿性構造体10の上面側の高温空気から熱伝導により熱が供給され、かつ、膜部13の上面側で発生した凝縮熱も熱伝導により膜部13の下面側へと移動する。従って、これらが気化熱の供給源となって液相の水分子が気化熱を奪って気化することが可能となる。

【0047】
また、この吸放湿性構造体においては膜部13にクラックやひび割れの発生は認められなかった。熱交換を連続して5時間行っても、吸放湿性構造体10の上面側及び下面側の空気やその他空気に含まれる気体成分が、膜部13を通じて互いに混入するという現象は認められなかった。

【0048】
更に、アンモニア等の水溶性の気体成分についても、膜部13を通じての混入は認められなかった。これは、膜部13においては水分子が高分子吸放湿剤に吸放湿され、一方でアンモニアは高分子吸放湿剤に吸放湿されないため、膜部13を透過しないからである。従って、この吸放湿性構造体においては、気体成分が水溶性であっても、水分と共に気体成分が混入することが防がれている。

【0049】
更にまた、上記吸放湿性構造体10と同様の構造で、開口率を50%とし、等価水力直径をそれぞれ3.5mm、2mmとした吸放湿性構造体を製造して上述のように熱交換を行った結果、いずれの吸放湿性構造体においても顕熱交換及び潜熱交換が行われ、かつクラックやひび割れの発生もなく、気体の混合も生じないことが確認された。

【0050】
一方、等価水力直径を5mmとしたうえで、開口率を60%、70%、とした吸放湿性構造体を製造して上述のように熱交換を行った結果、いずれの吸放湿性構造体においても顕熱交換及び潜熱交換が行われ、かつクラックやひび割れの発生もなく、気体の混合も生じないことが確認された。
好ましくは等価水力直径を5mm以下、より好ましくは2mm以下とすることで、クラックやひび割れの発生による気体の混入を防ぎ、かつ、全熱交換を行うことが可能であることが確認された。

【0051】
膜部の大きさは、膜部におけるクラックやひび割れの発生を防ぐ大きさであれば良い。クラックやひび割れの発生しやすさは、担持体の強度及びフレキシビリティに依存するので、担持体の材質によって膜部の大きさあるいは等価水力直径を調整することも可能である。
なお、潜熱交換を充分に行うことができるように開口率を50%以上、特に70%以上とすることが好ましい。しかし、潜熱交換が必要充分に行われるのであれば、開口率を50%以下とすることも可能である。

【0052】
更に、担持体11及び膜部13の厚みは、膜部13及び担持体に必要な強度が得られる程度に厚く、かつ、顕熱交換及び潜熱交換が十分になされる程度に薄いものであることが好ましい。この実施例では担持体の厚みを0.5~1mmとしたが、高分子吸放湿剤を高密度に担持する目的で、膜部の厚みを1mm以上とした吸放湿性構造体においても、膜部13に必要な強度を得ることができ、かつ、充分な熱交換を行うことができた。好ましくは、膜部13を固定及び支持してクラック等の発生を防ぐために、担持体の材質は、膜部の剛性よりも高い材質で形成することが好ましい。

【0053】
以上のように、実施例1では、担持体として板材11を用いた平面型の吸放湿性構造体10を用いて全熱交換が行われることが確認できた。なお、板材は、熱交換が可能となるに充分な伝熱性及び膜部13を担持するに必要な強度を有する任意の材質を用いることができる。

【0054】
[実施例2]
図2(a)に、本発明の実施例2に係る吸放湿性構造体20の斜視図を示し、また、その一部拡大図を図2(b)に示す。

【0055】
これらの図に示されるように、吸放湿性構造体20は、担持体としてメッシュ材21を用いており、メッシュ材21の開口部22に水蒸気選択性を有する高分子吸放湿剤24を含んだ膜部23が形成されている。メッシュ材21の材質は、アルミ、銅、ステンレス、鉄などの汎用材が使用可能である。メッシュ材の厚みは1mm以下が好ましい。高分子吸着剤としては、特開2009-74098号に記載される吸放湿性重合体を用いた。また、バインダーとしては、従来から一般的に高分子吸放湿剤との混合担持に用いられている接着性バインダーを用いた。
また、この吸放湿性構造体における開口率は85%であり、等価水力直径は約3mmである。

【0056】
図2(a)、(b)に示すように、本発明の実施例2に係る吸放湿性構造体20においては、担持体であるメッシュ材21の開口部22に膜部23が形成されている。この実施例2では、実施例1と同様に、吸放湿性構造体20の上面側に高温・高湿度の空気を接触させ、吸放湿性構造体20の下面側に低温・低湿度の空気を接触させた。その結果、高温・高湿度の空気における熱と水蒸気は、吸放湿性構造体20の下面側の低温・低湿度の空気へとそれぞれ伝達されることが確認できた。

【0057】
顕熱交換について説明すると、熱は、メッシュ材21と開口部22に形成された膜部23とを通じて伝導により移動する。従って、吸放湿性構造体20を通じた熱伝導率は、メッシュ材21の熱伝導率と膜部23の熱伝導率及び膜厚に影響される。ただし、この実施例2におけるメッシュ材21自体の面積は、実施例1における板材11の面積よりも小さい。従って、原則的には、吸放湿性構造体20における熱伝導率は、実施例1に比較して、膜部23における熱伝導率の影響が大きくなる。

【0058】
膜部23に関しては、使用する高分子吸放湿剤24及びこの高分子吸放湿剤24と共に膜部を形成するために適したバインダー(膜部23は、バインダーと高分子吸放湿剤との混合により形成されている)のそれぞれの熱伝導率により、膜部23における熱伝導率が定まる。メッシュ材21に関しては、必要な強度及び膜部23との接着性等の条件を満たした上で熱伝導率の高い材料を選択することで、熱伝導率の向上をはかることができる。

【0059】
一方、潜熱交換については、吸放湿性構造体20の上面側の高相対湿度の空気内に含まれる気相の水蒸気は、開口部22内の膜部23内部の高分子吸放湿剤24に吸湿され、凝縮熱を放出して液相となる。その後、液相となった水分子は、膜部23内を水分濃度に従って膜部23の下面側へと移動し、膜部23下面側の低相対湿度の空気に晒される。その後、液相の水は、周囲から気化熱を奪って気化し、気相の水蒸気となって低相対湿度の空気内に移動する。

【0060】
この際、膜部23には、吸放湿性構造体20の上面側で発生した凝縮熱が熱伝導により膜部23の下面側へと移動する。従って、これが気化熱の供給源となって液相の水分子が気化熱を奪って気化することが可能となる。

【0061】
また、この吸放湿性構造体においては、膜部23にクラックやひび割れの発生は認められなかった。熱交換を5時間程度行っても、吸放湿性構造体20の上面側及び下面側の空気やその他空気に含まれる気体成分が、膜部23を通じて互いに混入するという現象は認められなかった。

【0062】
更に、アンモニア等の水溶性の気体成分についても、膜部23を通じての混入は認められなかった。これは、膜部23においては水分子が高分子吸放湿剤に吸放湿され、一方でアンモニアは高分子吸放湿剤に吸放湿されないため、膜部23を透過しないからである。従って、この吸放湿性構造体においては、気体成分が水溶性であっても、水分と共に気体成分が混入することが防がれている。

【0063】
更にまた、上記吸放湿性構造体20と同様の構造で、開口率を85%とし、等価水力直径をそれぞれ2mm、1mmとした吸放湿性構造体を製造して上述のように熱交換を行った結果、いずれの吸放湿性構造体においても顕熱交換及び潜熱交換が行われ、かつクラックやひび割れの発生もなく、気体の混合も生じないことが確認された。

【0064】
一方、等価水力直径を3mmとしたうえで、開口率を70%、80%、とした吸放湿性構造体を製造して上述のように熱交換を行った結果、いずれの吸放湿性構造体においても顕熱交換及び潜熱交換が行われ、かつクラックやひび割れの発生もなく、気体の混合も生じないことが確認された。

【0065】
従って、好ましくは等価水力直径を3mm以下、より好ましくは2mm以下とすることで、クラックやひび割れの発生による気体の混入を防ぎ、かつ、全熱交換を行うことが可能であることが判明した。

【0066】
膜部の大きさは、膜部におけるクラックやひび割れの発生を防ぐ大きさであれば良い。クラックやひび割れの発生しやすさは、担持体の強度及びフレキシビリティに依存するので、担持体の材質によって膜部の大きさあるいは等価水力直径を調整することも可能である。

【0067】
なお、潜熱交換を充分に行うことができるように開口率を50%以上、特に70%以上とすることが好ましい。しかし、潜熱交換が必要充分に行われるのであれば、開口率を50%以下とすることも可能である。

【0068】
更に、担持体20及び膜部23の厚みは、膜部23及び担持体に必要な強度が得られる程度に厚く、かつ、顕熱交換及び潜熱交換が十分になされる程度に薄いものであることが好ましい。この実施例では担持体及び膜部の厚みを1mmとしたが、膜部の厚みを1mm以下とした吸放湿性構造体においても、膜部23に必要な強度を得ることができ、かつ、充分な熱交換を行うことができた。以上のように、実施例2では、担持体としてメッシュ材21を用いた吸放湿性構造体20を用いて全熱交換が行われることが確認できた。なお、メッシュ材は、熱交換が可能となるに充分な伝熱性及び膜部23を担持するに必要な強度を有する任意の材質を用いることができる。

【0069】
実施例1、2のいずれにおいても、高分子吸放湿剤とバインダーとを混合し、この混合物を開口部に塗布した後に乾燥させることで膜部を形成した。この手法に限らず、開口部に塗布するに適した粘度が得られ、かつ、乾燥後に形成される膜部に必要な強度及びクラックやひび割れが発生しにくくなるように、高分子吸放湿剤に対して、セルロース繊維(例えば微細セルロース繊維や植物性繊維)及びガラス繊維等から1つ以上を適宜選択して混合することで、膜部を形成することができる。

【0070】
膜部の厚みは、担持体の厚みとほぼ同程度であり、実施例1では板材の厚み、実施例2ではメッシュ材の厚みと同程度とした。しかし、膜部の強度を保てるのであれば、膜部の厚みを適宜調整して担持体の厚みよりも厚くしても良く、また、薄くしても良い。

【0071】
バインダーとしては、高分子吸放湿剤を含んだ気密性を有する膜を形成することができるものであれば、接着性樹脂等を用いることができる。ただし、バインダーは、乾燥後に高分子吸放湿剤の空気との接触面において、空気中の水蒸気の高分子吸放湿剤への接触を阻害しない特性を有することが要求される。また、実施例1、2では、高分子吸放湿剤とバインダー等を混合した混合物を開口部に塗布したが、混合物の粘度に応じて、塗布に代えて浸漬等を行うこともできる。

【0072】
開口部に担持されている高分子吸放湿剤は、バインダーと微細セルロース繊維により母材(板材、チューブ材、メッシュ材など)に堅固に固定されるので、乾燥工程で膜部にひび割れが生じにくい。また、膜部の表面にひび割れが発生しても、そのひび割れはごく浅く、膜部を貫通することはなかった。従って、一方側の空気から他方側への空気の流通を許さないことから、高分子吸放湿剤を空気タイトな状態で担持することが可能となっている。その結果、相対湿度の高い空気側から高分子吸放湿剤に吸湿された水蒸気は、液相として高分子吸放湿剤の内部を通過し、相対湿度の低い空気側にて、気相の水蒸気として空気中へ放散される現象が可能となる。

【0073】
次に、上述の吸放湿性構造体を用いた熱交換器を説明する。熱交換器は、この吸放湿性構造体を介して接する気体同士で全熱交換を行う構成であれば特に限定はない。以下の実施例では、シェルアンドチューブ型熱交換器において上述の吸放湿性構造体を採用して全熱交換を行った。

【0074】
[実施例3]
図3に示す実施例では、室外の空気を室内へ供給する給気ダクトと室内の空気を室外へ排出する排気ダクトとを独立的に形成し、給気ダクトと排気ダクトとをシェルアンドチューブ型の全熱交換器のシェル側(チューブ外側)とチューブ側(チューブ内側)に対してそれぞれ接続した。なお、この構成とは逆に、給気ダクトと排気ダクトとをシェルアンドチューブ型の全熱交換器のチューブ側とシェル側とに対してそれぞれ接続する構成とすることも可能である。

【0075】
また、顕熱交換効率及び潜熱交換効率を向上するために、シェル側における空気の流通方向とチューブ側を流れる空気の流通方向とは、これらの向きが逆向きになる、いわゆる対向流式となるようにした。
原理的には、並向流式とすることも可能であるが、顕熱交換効率及び潜熱交換効率を向上する上では対向流式とすることが好ましい。

【0076】
この様な流路構成のシェルアンドチューブ型熱交換器における熱交換チューブを、図4に示すように実施例1における板状の吸放湿性構造体をチューブ状に形成することで製造した。シェル側には、給気ダクトを通じて室外からの空気が流通され、チューブ側には、排気ダクトを通じて室内からの空気が流通される。室外からの空気と室内からの空気との間では、チューブの担持体及び高分子吸放湿剤膜を通じて相対温度差に応じて顕熱交換がなされ、チューブ表面に担持されている高分子吸放湿剤膜を介して相対湿度差に応じて潜熱交換がなされて水分が移動する。

【0077】
実施例1に示されるように、チューブ表面に担持されている高分子吸放湿剤膜は膜厚さが1mm以下の薄膜であるから、温度差に起因する熱移動は容易に発生する。一方、空気及び空気に混入している気体、例えばアンモニアや二酸化炭素、臭気成分等に関しては、担持体及び膜部は気密性を有するので、チューブ側とシェル側との間で移動できない。

【0078】
しかしながら、水蒸気は高相対湿度側の空気から高分子吸放湿剤に取り込まれ、高分子吸放湿剤中を水の形態で移動する。この熱交換器において、湿度の高い側の空気から相対的に湿度の低い側の空気へと水分が移動し、空気中へ水蒸気として放出されることが確かめられた。

【0079】
その結果、シェルアンドチューブ型の全熱交換器内で、温度差、相対湿度差に起因して、シェル側の空気とチューブ側の空気との間で、熱および水蒸気の移動が達成されている。

【0080】
本発明の実施例3に係るシェルアンドチューブ型の全熱交換器50を図3に示す。
この図に示されるように、全熱交換器50は、左側ヘッダカバー53L、シェル54及び右側ヘッダカバー53Rを有し、左側ヘッダカバー53Lは左側ヘッダ57Lを介してシェルに対して気密に設けられている。また、右側ヘッダカバー53Rは、右側ヘッダ57Rを介してシェルに対して気密に設けられている。
左側ヘッダ57L及び右側ヘッダ57Rには、空気漏えいの無いタイトな状態でチューブ51が複数本固定されている。また、シェル内には、空気流路を調整するための整流板52が設けられている。

【0081】
この実施例では、チューブ51は、実施例2に示される、担持体としてメッシュ材を用いた吸放湿性構造体10をチューブ状としたものを用いた。
シェル54には、流入口55a及び排出口55bが設けられている。流入口55aには、室外(図中にBで示す)からの空気を取り入れるためのダクト41が、流出口55bには、熱交換を終えた空気を室内(図中にAで示す)に導入するためのダクト42が、それぞれ接続されている。

【0082】
また、左側ヘッダカバー53Lには流入口56aが、右側ヘッダカバー53Rには排出口56bが設けられている。流入口56aには、室内からの空気を取り入れるためのダクト31が、排出口56bには、熱交換を終えた空気を室外に排気するためのダクト32が、それぞれ接続されている。
なお、各ダクトに通気ファン及び空気フィルター等(図示せず)を設けることもできる。

【0083】
この全熱交換器50において、室内からの空気は、ダクト31から流入口56aを通じて、全熱交換器50の左側ヘッダカバー53Lとヘッダ左側57Lとにより形成される空間に流入する。その後、室内からの空気は、各チューブ51の内部を流通してシェル54内を流通する室外からの空気と熱交換を行った後に、右側ヘッダ57Rと右側ヘッダカバー53Rとにより形成される空間に排出される。その後、室内からの空気は、排出口56bから排出ダクト32を通じて室外へと排出される。

【0084】
一方、室外からの空気は、ダクト41から流入口55aを通じて、シェル54とその両端に気密に設けられた右側ヘッダ57R、左側ヘッダ57Lとの間に形成される空間に流入する。その後、室外からの空気は、シェル54のこの空間内で、各チューブ51内を流れる室内からの空気と熱交換を行った後に、排出口55bからダクト42を通じて室内へと導入される。
このように、シェル54内では、チューブ内を流れる室内からの空気と、チューブ外を流れる室外からの空気との間で熱交換が行われる。

【0085】
この実施例3では、各チューブ51は、チューブ状とされた吸放湿性構造体から形成されている。また、そのメッシュ面に担持されている、高分子吸放湿剤とバインダー等により形成される膜部を介して、チューブの内外を流通する空気の間で水蒸気の移動が行われる。従って、潜熱交換が行われて、湿度の高い側の空気から湿度の低い側の空気に移動する。また、メッシュ面及び膜部を含むチューブ全体を通じて顕熱交換もなされる。従って、室内からの空気と、室外からの空気との間で連続して全熱交換が行われるので、調湿、調温された外気を室内に供給することが可能である。

【0086】
次に、図4を用いて、実施例3に示した本発明によるシェルアンドチューブ型全熱交換器の詳細構成について説明する。
図4(a)は、図3に示されるシェルアンドチューブ型熱交換器で用いられる、メッシュ材を担持体とするチューブ51及びその開口部に形成された膜部51aを示す図であり、図4(b)はその拡大図である。図4(b)に示されるように、各チューブ51の開口部51bには、高分子吸放湿剤51c同士がバインダー51dにより接着されて担持されている。これにより、メッシュ材51eの開口部51b内に膜部51aが形成される。

【0087】
なお、図4では膜部51aの一部のみを示したが、実際にはチューブ51の円筒形側面の全面にわたって膜部51aが形成されている。
図4(c)に矢線で示されるように、膜部51aの一方側の空気における気相の水蒸気HO(V)は膜部51aに接触する。その後、高分子吸放湿材51cに吸湿された水蒸気は、液相の水HO(L)となって膜部51a内を移動し、更に、矢線で示されるように、再度気相の水蒸気HO(V)となって膜部51aの他方側の空気に移動する。
この膜部51aの膜の厚さを1mm以下としているので、高い熱交換性が得られた。また、見掛け上で、高い水蒸気透過性が確保されている。更に、実施例1と同様に、アンモニアや二酸化炭素、気体の不快物質等の混入は認められなかった。これは、図4(d)に示されるように、高分子吸放湿剤51cを接着剤としてのバインダー51dと共にメッシュの開口部51bに緊密に充填担持させているからである。なお、説明のために、図4(d)では高分子吸放湿剤51cを拡大して示している。

【0088】
従って、気相の水蒸気は高湿度側で吸湿性を有する高分子吸放湿剤などの吸湿性樹脂に吸湿され、樹脂内に液相の水として取り込まれる。取り込まれた水は樹脂内を低湿度側へ移動し、低湿度側の空気中へ気相の水蒸気となって蒸散する。

【0089】
このような水蒸気の移動メカニズムを有する薄膜であることから、見掛け上は水蒸気のみが通過し、他の気体は通過できない膜となるため、従来の和紙を用いた膜に比してコンタミの発生は大幅に抑制された上、良好な熱交換性を有する。

【0090】
[実施例4]
実施例4においては、図5に示される、実施例1に示した吸放湿性構造体10を断面Lの字形と逆Lの字型に成形して交互に連結して段をなす形状となるよう成形したシート状の吸放湿性構造体80、端板61、側板62、63、64により形成されるプレートフィン型熱交換器6によって、室内からの空気と室外からの空気との間で熱交換及び水分移動を行った。また、側板62、63、64には、間隙部71、72、73及び74が設けられている。
なお、吸放湿性構造体80は、実施例1に示した吸放湿性構造体10をコの字型に曲げて成形し、図5に示されるようにこれらコの字型の吸放湿性構造体10を側面部の連結板81を介して接着することで形成することも可能である。

【0091】
室外からの空気は、間隙部71を通じて矢線で示されるように吸放湿性構造体80の奇数段に導入されて段内を流通し、間隙部72を通じて室内へと導入される。図中においては、奇数段の例として、9段目がS9として示されている。
一方、室内からの空気は、間隙部73を通じて矢線で示されるように吸放湿性構造体80の偶数段に導入されて段内を流通し、間隙部74を通じて室外へと排気される。図中においては、偶数段の例として、2段目がS2として示されている。このように、図5のプレートフィン型熱交換器6の奇数段と偶数段とは吸放湿性構造体80により分離されて対向流型の流路が形成されている。その結果、奇数段内と偶数段内を流通する空気との間で、実施例1、2で説明したように吸放湿性構造体80を通じて全熱交換が行われる。

【0092】
図6に、本発明によるシェルアンドチューブ型全熱交換器における、室内からの空気と室外からの空気との間における熱交換を説明するための湿り空気線図を示す。
例えば夏季運転の場合、図6の湿り空気線図に示すように、全熱交換器内を通過する両空気は、外気(A点)と室内気(B点)でのA点が示す(高温度、高湿度)とB点が示す(低温度、低湿度)によって囲まれる矩形内部を移動して、夫々の出口状態(通過外気の出口C点、通過室内空気の出口D点)に到達する。基本的に通過する外気と室内気の流量は同一であるから、A点とC点のエンタルピー差と、B点とD点のエンタルピー差は等しく、それらの値に対するA点とB点のエンタルピー差の比率が全熱交換率となる。

【0093】
[実施例5]
図7(a)は、実施例5に係る吸放湿性膜を備えたデバイスである、平板状の吸放湿性構造体90の斜視図を示し、その一部の断面図を図7(b)に示す。また、この吸放湿性構造体90の固定部材であるリベットの断面図を図7(c)に示す。
図7(a)に示されるように、吸放湿性構造体90は、薄板状の吸放湿部91を、それぞれ開口部94が複数形成されたプレート状の第1担持体92と第2担持体93で挟んで固定している。固定手段は特に限定されないが、この実施例では、固定部材としてのリベット部95でこれら薄板状の吸放湿部91、第1担持体92及び第2担持体93を図7(b)に示されるように固定している。

【0094】
図7(c)に示されるように、このリベット部95は、吸放湿部91、第1担持体92及び第2担持体93を貫通する貫通部96、この貫通部96に結合するとともに第1担持体92から突出する第1ヘッド部97、及びこの貫通部に結合するとともに第2担持体93から突出する第2ヘッド部98により構成される。第1ヘッド部97、第2ヘッド部98はそれぞれ貫通部96よりも大径となっており、吸放湿部91等は、これらのヘッド部97、98により挟まれて固定される。

【0095】
第1担持体92と第2担持体93との各開口部94は、吸放湿部91を挟んだ状態で、2つの開口部94同士が少なくとも一部が重なって開口部を形成するよう配置されている。
従って、開口部94における吸放湿部91の露出部分を通じて水分の移動や全熱交換を行うことが可能である。このようにして吸放湿性構造体90の開口部に露出した吸放湿部91が、吸放湿性構造体90の開口部に形成された、吸放湿剤を含む膜部となる。なお、第1担持体の開口部94と第2担持体開口部94とが一致しない場合、吸放湿部91は一方の担持体では露出されるが、他方の担持体で覆われて露出しない状態となる。この部分においては、吸放出部の露出された側で水分を吸湿しても、吸放出部の他方側は露出されていないので、吸湿された水分の放出が困難となる。従って、この実施例では、吸放湿部91を挟んだ状態で、第1担持体及び第2担持体の2つの開口部94同士が重なり、この部分において吸放湿部が第1担持体、第2担持体どちらにおいても露出するように、それぞれの担持体の開口部を形成した。

【0096】
吸放湿部91は、紙又はガラス繊維等により形成されるシート状の担持部材に高分子吸放湿剤を担持させて形成される。この例では、高分子吸放湿剤と液状のバインダーとの混合物に紙を浸して乾燥することで、高分子吸放湿剤及びバインダーを紙に担持させることで、吸放湿部91を形成した。なお、この例では担持部材として厚さ0.05[mm]程度の紙を用いたが、担持部材の材質は、高分子吸放湿剤を担持させることができ、かつ、透水性を有するものであれば特に限定はない。また、高分子吸放湿剤及びバインダーは、実施例1と同じ材質のものを用いた。
このように形成された吸放湿部が十分な強度を有するものであれば、そのまま吸放湿性構造体として使用することができる。この実施例では、担持部材として紙を用いており、そのまま吸放湿性構造体として用いるには強度が不足するおそれがある。したがって、吸放湿性構造体の強度を増すために、吸放湿部91を、開口部を有する第1担持体92と開口部を有する第2担持体93で挟んで固定した。これら第1担持体92、第2担持体93は、それぞれが吸放湿部の補強部材となる。

【0097】
実施例5においては、これら第1、第2担持体は、いずれも厚さ0.1[mm]で、開口部94が複数形成されたアルミニウムにより形成した。アルミニウムに代えて銅やプラスチック等を用いることも可能である。また、可撓性を有する素材を用いることで、吸放湿性構造体90の変形を可能としてもよい。
従って、紙にバインダー及び吸放湿剤を担持させて形成された吸放湿部91は、第1担持体92及び第2担持体93に挟まれることで強度が向上する。なおかつ、これら補強部材に形成された開口部94において吸放湿部91が露出する。従って、実施例1における膜部13と同様に、開口部94で露出した吸放湿部91を通じて全熱交換を行うことができる。

【0098】
なお、吸放湿性構造体90における薄板状の吸放湿部91、第1担持体92及び第2担持体93の固定手段として、この実施例ではリベット部95を用いたが、固定手段は特にリベットに限定されるものではなく、リベット以外の固定手段、例えば接着剤等を用いることも可能である。また、上述のように、吸放湿部91の厚さは0.05[mm]、第1担持体92、第2担持体93はそれぞれ0.1[mm]なので、吸放湿性構造体90の厚さは0.25[mm]である。
吸放湿性構造体90の一部断面図である図7(b)に示されるように、リベット部95は吸放湿性構造体90の表面から突出する。リベット部95の突出する高さは所望により任意に変更でき、特に限定はないが、例えば1[mm]~5[mm]程度とすることができる。この例ではリベット部95は吸放湿性構造体表面から3[mm]突出するものとした。

【0099】
この吸放湿性構造体90においても、実施例1と同様に、開口率は50%、特に70%以上とすることが好ましい。開口部94の形状、サイズ等のその他の条件も、実施例1における形状やサイズと同様とできるが、この実施例では、図7(a)に示されるように、第1担持体92と第2担持体93との開口部を一致させる必要があることから、開口部はいずれも同じ形状で、略円形とした。これにより、各補強部材の製造が容易で、かつ、開口部を一致させることも簡単になる。
なお、開口部94はすべて同じ形状としても良いが、少なくとも一部が異なるものとしても良い。この実施例では、開口率を70%、等価水力直径は5mm以下とした。また、この吸放湿性構造体90においても、実施例1の吸放湿性構造体10と同様に全熱交換を行うことが確かめられた。

【0100】
この実施例では、第1担持体92及び第2担持体93として、開口部94を有するプレートを用いたが、その他の形状を有する部材で吸放湿部91を挟むことも可能である。例えば補強部材の形状を金網やメッシュ状としても良い。この場合、実施例2で図2(a)に示したようなメッシュ材を第1担持体92、第2担持体93として用いることができる。また、メッシュ材を用いた吸放湿性構造体の開口率は、メッシュ材を用いた実施例2に示した開口率と同様とすることができる。

【0101】
また、実施例5では、第1担持体92と第2担持体93とによって吸放湿部91を挟む構成としたが、第1担持体92と吸放湿部91との充分な接着性や強度が得られるのであれば、第2担持体93は用いずに、第1担持体92に吸放湿部91を接合あるいは接着により固定するという簡易な構成で吸放湿性構造体90を形成してもよい。第2担持体93を用いない構成とすることで、吸放湿性構造体90の製造コストを抑えることができ、経済的にも有利となる。この場合も、固定部材としてのリベット部95で第1担持体92に吸放湿部91を固定することができる。

【0102】
[実施例6]
実施例6では、実施例5で形成した吸放湿性構造体90を複数枚重ねて配置することで、リベット部95をスペーサとして吸放湿性構造体90間に複数の間隙を形成した。この間隙部を介して2種類の気体を流通させることで、吸放湿性構造体90を介して接触する気体間で全熱交換を行うことができる。このように形成された熱交換器100の断面図を図8に示す。
この実施例では、気密性を有する筐体103内に、そのリベット部95同士が重なることがないように吸放湿性構造体90を複数枚配置した。そして、吸放湿性構造体90間に形成された第1間隙部101、第2間隙部102にそれぞれ自動車からの排気ガスと外気とを向流式に流通させて熱交換を行った。なお、図7の例では一般的な丸頭リベットを用いたが、吸放湿性構造体を重ねたときの安定性を向上するために平頭リベットを採用してもよい。また、実施例5と同様に、吸放湿部91の厚さは0.05[mm]、第1担持体92、第2担持体93はそれぞれ0.1[mm]とし、吸放湿性構造体90の厚さは0.25[mm]とした。

【0103】
吸放湿性構造体90からリベット部95が突出する高さは所望により任意に変更でき、特に限定はないが、例えば1[mm]~5[mm]程度とすることができる。実施例5と同様に、リベットは吸放湿性構造体表面から3[mm]突出するものとした。
図8の例では、吸放湿性構造体90から3[mm]突出するリベット部分が一致しないように吸放湿性構造体90を重ねており、吸放湿性構造体90同士の間隔は3[mm]になる。この場合、好適には、それぞれリベット部をずらして配置されている二種類の吸放湿性構造体を用意する。これら二種類の吸放湿構造体90を交互に重ねることで、図8のように、リベット同士がずれた状態で、吸放湿構造体90を配置することができる。
また、吸放湿性構造体90の一方辺と、これに対向する他方の辺と、においてリベットの配置位置をずらすようにしてもよい。このように構成された吸放湿構造体90の上に、同様に構成された吸放湿性構造体90を180度回転させて配置する。これにより、下方の吸放湿性構造体90の一方の辺及び他方の辺には、上方の吸放湿性構造体90の他方側の辺及び一方の辺がそれぞれ重なり、図8に示されるようにリベット同士が重ならない配置が可能となる。

【0104】
図7(a)、(b)に示されるリベット部95は、その第1ヘッド部97、第2ヘッド部98を半球状とした。しかし、リベット部を一致させて吸放湿性構造体90を重ねる場合は、好適には、平頭リベットを用いる。この場合、第1ヘッド部97、第2ヘッド部98の頭部が平面となるので、吸放湿性構造体90同士を重ねた場合の安定性が向上する。この場合、吸放湿性構造体90同士の間隔は6[mm]になる。勿論、間隙の大きさは、用途に応じて適宜選択することができる。

【0105】
このように、実施例6における熱交換器100は比較的サイズが小さいので、小型化が要求される用途に適しており、特に自動車の熱交換器に適している。そこで、自動車の排気ガスと外気との間で、実施例6に係る熱交換器100により、吸放湿性構造体90を水蒸気分離膜として用いて水分交換を行った。
自動車の排気ガスは、高湿であり二酸化炭素及び窒素がリッチである。現在、二酸化炭素及び窒素含有率が高く酸素含有率が低い排気ガスを再度エンジンに供給することで、排気ガス中のNOを低減する技術が知られている。この技術においては、排気ガス中の水分量をある程度除去することが望ましいことから、この実施例では、図8に示される熱交換器100の第1間隙部101に排気ガスを流通させ、第2間隙部102に外気を流通させた。これにより、排気ガス中の水分を外気に移動させて、排気ガスの湿度を低くした。

【0106】
なお、一般に排気ガスの温度は200℃以上で、場合によっては1000℃に達することから、排気ガスを予め吸放湿性構造体100の使用可能温度、ここでは100℃程度にまで冷却したうえで吸放湿性構造体に流通させた。その結果、排気ガスの絶対湿度は、吸放湿性構造体100に流入する時点では200g/m以上であったものが、吸放湿性構造体から流出する時点では100g/m以下となっており、排気ガスから外気へと水分が移動していることが確かめられた。

【0107】
[実施例7]
吸放湿部91、第1担持体92及び第2担持体93をフレキシブルに形成することで、吸放湿性構造体90をフレキシブルなものとすることもできる。特に、実施例5、6では、紙の厚さは0.05[mm]、アルミニウム製の補強部材は厚さ0.1[mm]であるので、フレキシブル性を有し、また、折り曲げることも可能である。
従って、図7(a)に示した吸放湿性構造体90を、図4に示される円筒形の構造とすることもできる。この場合、円筒形の吸放湿性構造体90の曲率のとり得る範囲は、吸放湿性構造体90のフレキシビリティに依存する。吸放湿部91、第1担持体92及び第2担持体93のフレキシビリティが小さく、結果として吸放湿性構造体90のフレキシビリティが小さい場合には、円筒形の直径を大きくする、つまり吸放湿性構造体を比較的大きくする必要がある。

【0108】
一方、吸放湿部91、第1担持体91及び第2担持体92のフレキシビリティが大きく、結果として吸放湿性構造体90のフレキシビリティが大きい場合には、円筒形状の直径を小さくすることができる。従って、この場合には、吸放湿性構造体90のフレキシビリティが小さい場合に比較して、吸放湿性構造体90を相対的に小型化することが可能となる。
また、実施例5では、第1担持体92と第2担持体93とにより吸放湿部91を挟む構成としたが、第1担持体92と吸放湿部91との充分な接着性や強度が得られるのであれば、第2担持体93は用いずに、第1担持体92に吸放湿部91を接合あるいは接着するという簡易な構成で吸放湿性構造体90を形成してもよい。第2担持体93を用いない構成とすることで、吸放湿性構造体90の製造コストを抑えることができ、経済的にも有利となる。

【0109】
特に、吸放湿性構造体90を円筒形とする場合には、第1担持体92を円筒状に形成したうえで、その円筒内部に図7(a)に示される吸放湿部91を円筒状に形成して配置することもできる。この場合、円筒の露出している外面側は、他の物体等との接触により吸放湿部91が破損することがないように、第1担持体で保護される。一方で円筒の内面側は、他の物体と接触するおそれが小さいので、第2担持体93の配置を省略することも可能である。
また、第1担持体92を円筒状に形成する一方で、吸放湿部91は平板状に形成し、この吸放湿部91を丸めたうえで第1担持体92内に配置することも可能である。この場合、吸放湿部91をフレキシブルなものとすることで、丸められた吸放湿部91が平板状に戻ろうとする復元力が得られる。この復元力により、吸放湿部91は第1担持体92に密着し、両者の間の摩擦によって吸放湿部91を補強部材92に固定することも可能である。

【0110】
[実施例8]
実施例8では、実施例5の図7(a)、図7(b)に示した平板状の吸放湿性構造体90を用いて、実施例4の図5に示される熱交換器6における吸放湿性構造体80と同様の形状を有する吸放湿性構造体を形成した。
この実施例8では、一枚の平板状の吸放湿性構造体90を繰り返し折り曲げることで、図5に示される多段形状の吸放湿性構造体80と同様の吸放湿性構造体を製造した。これにより、吸放湿性構造体80を容易に製造することができた。なお、吸放湿性構造体の特性、例えば開口率等は、実施例4と同様とした。また、折り曲げ部分には開口部94を形成せず、これにより、折り曲げ部分で開口部に露出した吸放湿部91が割れて気密性が損なわれることを避けるようにした。

【0111】
なお、実施例5に示した吸放湿性構造体90をL字型に曲げて成形し、これらL字型の吸放湿性構造体10をL字型と逆L字型に重ねることで、図5に示される多段形状の吸放湿性構造体80と同様の吸放湿性構造体を製造することもできる。
このようにして製造した吸放湿性構造体を図5に示される熱交換器6における吸放湿性構造体80として用いたところ、実施例4と同様に全熱交換を行うことができた。

【0112】
[実施例9]
実施例9では、例えば図1や図7に示されるような吸放湿構造体がセットされる熱交換器の筐体を予め作成し、作成された筐体に吸放湿構造体をセットすることで、熱交換器を得た。
従って、この実施形態では、予め作成された筐体に対して吸放湿構造体をセットするだけで容易かつ安価に水蒸気交換器を製造することができる。
図9に、本発明の実施例9に係る熱交換器の筐体110内に吸放湿構造体113を配置した状態での一部透過斜視図を示す。この図において、説明のために、筐体110の壁面は透明にし、その内部を透過して見ることができるようにしている。

【0113】
筐体110には、熱交換器の整流板となるバッフルプレート111A、111B、111Cが設けられている。また、筐体110には、前面吸気口112FSと前面右排気口112FDとが設けられている。図面では見えない位置にあるが、筐体背面には背面左吸気口と背面右排気口とが設けられている。
複数の吸放湿構造体113は、筐体110に設けられた支持部121A、Bにより、図示されるように筐体10内に支持される。これら支持部121A、Bは、図10(a)~(d)を参照して後述する。

【0114】
製造時においては、筐体110を、その一部が開放された状態で形成し、吸放湿性構造体113をこの筐体110に挿入する。その後に、筐体110の開放された部分を壁面により気密に塞ぐことで、熱交換器を完成する。
詳細には、筐体110は、その左壁面を形成せず、従って、左側面が開放面とされた状態で形成される。吸放湿性構造体113は、それぞれ、図9のSで示されるように、左側面から挿入され、支持部121A、Bにより支持される。これら支持された複数の吸放湿性構造体113同士の間には間隙部が形成される。図9において、1段目の間隙部がXで示され、8段目の間隙がYで示されている。その後に、別途形成された左壁面を、筐体110の左側面に気密に接着する。
バッフルプレート111Aは、筐体110の前面を、前面吸気口112FSが設けられた左領域と、前面排気口112FDが設けられた右領域とに分割する。バッフルプレート111Bは、この左領域において、吸放湿性構造体113の奇数段の間隙部を塞ぐように配置されている。また、バッフルプレート11Cは、右領域において、吸放湿性構造体113の偶数段の間隙部を塞ぐように配置されている。
図示されていないが、筐体110の背面側には、バッフルプレート111A、B及びCが筐体の中心に関して点対称に配置されている。従って、筐体110の背面側でも左領域及び右領域が形成され、これらの領域はバッフルプレート111Aにより分離される。
この筐体110に吸放湿性構造体113が複数配置された状態で、2つの気体の間で熱交換を行うことができる。この実施例では、室内からの空気と室外からの空気との間で全熱交換を行った。

【0115】
熱交換時において、室内からの空気は、図9においてIinで示されるように前面左吸気口112FSを通じて筐体110内に流入される。流入した空気は、筐体110前面側の左領域に入るが、バッフルプレート111Aにより区切られた右領域には流入しない。
また、バッフルプレート111Bによって左領域の奇数段の間隙が塞がれていることから、室内からの空気は空隙部の偶数段に流入する。一方、筐体110の背面側においては、バッフルプレート111A、B及びCが上記のように点対称に配置されていることから、筐体110の背面側の左領域の間隙部の偶数段はバッフルプレートで塞がれている。しかし、筐体110の背面側の右領域の間隙部の偶数段はバッフルプレートで塞がれてはいない。
従って、流入した室内の空気は、偶数段の間隙部を通じて筐体110の背面の右側領域へと流れ、図中Ioutで示されるように図示しない背面排気口を通じて筐体110の外部へと排出される。

【0116】
一方、室外からの空気は、筐体110の背面側から図中Oinで示されるように背面左吸気口(図示せず)を通じて筐体110内に流入される。流入した空気は、筐体110背面側の左領域に入るが、バッフルプレートにより区切られた右領域には流入しない。
また、上述のように点対称に配置されたバッフルプレートによって背面側左領域の偶数段の間隙が塞がれていることから、室外からの空気は背面側左領域において、空隙部の偶数段に流入する。一方、筐体110の前面側においては、筐体110の前面側の左領域の間隙部の奇数段はバッフルプレートで塞がれている。しかし、筐体110の前面側の右領域の間隙部の奇数段はバッフルプレートで塞がれてはいない。
従って、室外からの空気は、間隙部の奇数段を通じて筐体110の前面の左側領域へと流れ、図中Ooutで示されるように前面排気口112FDを通じて筐体110の外部へと排出される。

【0117】
このように筐体110と吸放湿性構造体113から形成される熱交換器の前面側からみた一部透過図を図10(a)に、その平面図を図10(b)に、その横断面図を図10(b)に、また、その正面図を図10(d)に示す。
図10(a)では、説明のために、筐体110の前面側の壁面は透明なものとしている。図10(a)に示されるように、吸放湿構造体113同士の間に形成される間隙部は、バッフルプレート111Bにより左領域の奇数段が塞がれ、バッフルプレート111Cにより右側領域の偶数段が塞がれる。また、図10(b)に示されるように、室内からの空気が前面吸気口112FSを通じて筐体110内に流入し、一方、室外からの空気は前面排気口112FDを通じて筐体110の外部に排出される。

【0118】
図10(b)に示されるように、筐体110の左右側面には支持部121Aが、前面側には支持部121Bが設けられている。また、図示されていないが、筐体110の背面側にも支持部121Bが設けられており、これら支持部121A、Bにより吸放湿性構造体113が支持される。
これら支持部121A、Bは、図10(c)に示されるようにスライドレール形状をしており、こららスライドレール形状の各支持部に形成されたコの字型の空隙部に吸放湿性構造体113がスライド式に挿入されて支持される。なお、図10(c)は、左側壁が接着された状態を示しており、左側壁にも支持部121Aが設けられた例を示している。しかし、気密性及び強度が確保できるのであれば、左側壁には支持部121Aを設けないようにして、前面側及び背面側に設けられた支持部121Bと、右側壁に設けられた支持部121Aとにより、3方向で吸放湿性構造体113を支持するものとしてもよい。

【0119】
なお、筐体110は、この実施例のように、その左壁面がない状態で形成し、吸放湿性構造体113を挿入した後に、左側面を形成することが好ましい。この際、筐体110の形成手法には特に制限はなく、周知の手法で形成して良い。好ましくは、筐体110を3次元プリンタで形成する。これにより、支持部121A、B及びバッフルプレート111A~C等を備えた複雑な形状を有する筐体110を、樹脂等により容易に形成することができる。

【0120】
以上説明したように、本発明による吸放湿性構造体は、例えば板材、チューブ材、メッシュ材等を担持体として、その開口部に強固に高分子吸放湿剤を含む膜部を担持させ、かつ気密なものとすることが可能となる。その結果、この吸放湿性構造体に気体が接すると、見掛け上、水蒸気のみがこの吸放湿性構造体を通じて移動する。また、膜部及び担持体は、気密性が確保できる限りにおいて、薄くすることが好ましい。熱交換を行う上では、膜厚は薄い方が有利だからである。

【0121】
また、吸放湿性構造体は気密性を有するので、その他の気体成分が吸放湿性構造体を通じて移動することを防ぐことができるという特性を発揮する。従って、例えば室内からの空気と室外からの空気との間でこの吸放湿性構造体を用いて熱交換を行うことで、室内の空気に含まれるアンモニアや二酸化炭素、あるいは臭気成分等の望ましくない気体成分が新鮮な空気に混入することを防ぎ、かつ、水蒸気と顕熱を高効率に交換可能である。更に、吸放湿性構造体の担持体として、薄肉で熱伝導性の良い材料を用いることで高い熱交換特性が期待できる。

【0122】
更に、実施例3、4では、外気を室内へ導入すると共に室内気を室外へ排出する際の室内気の保有する顕熱(温熱または冷熱のための空調負荷)ならびに潜熱(加湿または除湿のための空調負荷)を高効率に導入外気へ転嫁するシェルアンドチューブ型、プレートフィン型の全熱交換器が提供される。これらの熱交換器において、吸湿剤が行う吸湿と再生の行程を同時かつ同一部分(吸湿剤膜の表裏)で発生させることが可能となり、流路切り替えのための駆動装置や複雑な配管構成を省略することが可能となる。

【0123】
なお、上述の実施例においては、吸放湿性構造体を通じて全熱交換を行っている。しかしながら、熱交換を行うことは必須ではない。例えば、相対湿度の異なる気体の間に吸放湿性構造体を介在させることで、双方の気体間に温度差がない場合であっても、吸放湿性構造体を通じて、一方の気体から他方の気体へと水分の移動を行うことができる。この際、上述の各実施例と同様に、気密性を保持するか、あるいは、許容される程度の気密性を確保したうえで、水分の移動を行うことが可能である。従って、いずれの実施例においても、吸放湿性構造体を用いて水蒸気分離や水蒸気の移動を行うことができる。

【0124】
例えば、室内と外気とに温度差がない場合であっても、各実施例に記載された吸放湿性構造体を用いることで、水分の移動を行うことができる。一例として、不快成分等を含みかつ湿度の高い室内の空気と湿度の低い新鮮な外気との間で、室内空気から水分を移動させたうえで新鮮な外気を室内にとりこむ場合が挙げられる。
また、いずれの実施例においても、開口率等は一例を示すものであり、用途に応じて開口率等の値を変更してよい。例えば、開口率は50%以上とすることが好ましいが、吸放湿性構造体に高い強度が求められる場合には、開口率を50%以下としてもよい。
図面
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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