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明細書 :全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液、被覆活物質粒子、電極、全固体アルカリ金属二次電池及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6441224号 (P6441224)
登録日 平成30年11月30日(2018.11.30)
発行日 平成30年12月19日(2018.12.19)
発明の名称または考案の名称 全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液、被覆活物質粒子、電極、全固体アルカリ金属二次電池及びその製造方法
国際特許分類 H01M  10/0562      (2010.01)
H01M   4/62        (2006.01)
H01M   4/139       (2010.01)
H01M   4/13        (2010.01)
H01M   4/36        (2006.01)
H01M   4/525       (2010.01)
H01M   4/505       (2010.01)
H01M   4/485       (2010.01)
H01M   4/48        (2010.01)
H01M   4/58        (2010.01)
H01M   4/587       (2010.01)
H01M   4/40        (2006.01)
H01M   4/38        (2006.01)
H01M   4/131       (2010.01)
H01M   4/133       (2010.01)
H01M   4/134       (2010.01)
H01M   4/136       (2010.01)
H01M   4/1391      (2010.01)
H01M   4/1393      (2010.01)
H01M   4/1395      (2010.01)
H01M   4/1397      (2010.01)
H01M  10/052       (2010.01)
H01M  10/054       (2010.01)
FI H01M 10/0562
H01M 4/62 Z
H01M 4/139
H01M 4/13
H01M 4/36 C
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/485
H01M 4/48
H01M 4/58
H01M 4/587
H01M 4/40
H01M 4/38 Z
H01M 4/131
H01M 4/133
H01M 4/134
H01M 4/136
H01M 4/1391
H01M 4/1393
H01M 4/1395
H01M 4/1397
H01M 10/052
H01M 10/054
請求項の数または発明の数 21
全頁数 17
出願番号 特願2015-540506 (P2015-540506)
出願日 平成26年9月30日(2014.9.30)
国際出願番号 PCT/JP2014/076126
国際公開番号 WO2015/050131
国際公開日 平成27年4月9日(2015.4.9)
優先権出願番号 2013208247
優先日 平成25年10月3日(2013.10.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年5月11日(2017.5.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】林 晃敏
【氏名】辰巳砂 昌弘
【氏名】忠永 清治
個別代理人の代理人 【識別番号】100065248、【弁理士】、【氏名又は名称】野河 信太郎
【識別番号】100159385、【弁理士】、【氏名又は名称】甲斐 伸二
【識別番号】100163407、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 裕輔
【識別番号】100166936、【弁理士】、【氏名又は名称】稲本 潔
審査官 【審査官】瀧 恭子
参考文献・文献 特開2012-212652(JP,A)
特開2012-199003(JP,A)
特開2011-136899(JP,A)
国際公開第2012/160707(WO,A1)
特開2013-037950(JP,A)
調査した分野 H01M 4/00-4/62、10/05-10/0587
H01B 1/06、1/10、13/00
特許請求の範囲 【請求項1】
固体電解質製造用の原料としてのA2SとMxy(AはLi及びNaから選択され、MはP、Si、Ge、B、Al及びGaから選択され、xとyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える数である)に由来する成分と、非極性有機溶媒と、前記非極性有機溶媒より0.3以上高い極性値を有する極性有機溶媒とを含む全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液。
【請求項2】
前記非極性有機溶媒が0.5未満の極性値を有し、前記極性有機溶媒が0.5以上の極性値を有する請求項に記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液。
【請求項3】
前記非極性有機溶媒が炭素数5~10の炭化水素から選択され、前記極性有機溶媒が炭素数1~4の脂肪族アルコール、ホルムアミド、炭素数1~4のアルキル基置換ホルムアミド及びヒドラジン系化合物から選択される請求項1又は2に記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液。
【請求項4】
前記非極性有機溶媒がn-ヘキサンであり、前記極性有機溶媒がN-メチルホルムアミド又はエチレンジアミンである請求項に記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液。
【請求項5】
前記固体電解質が、Li2SとMxyとを50:50~90:10(モル比)の割合で含むLi2S-Mxyであり、前記Mxyが、P25である請求項1~のいずれか1つに記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液。
【請求項6】
前記固体電解質が、Na2SとMxyとを50:50~90:10(モル比)の割合で含むNa2S-Mxyであり、前記Mxyが、P25である請求項1~のいずれか1つに記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液。
【請求項7】
前記固体電解質を含む層が、固体電解質層、正極及び負極のいずれかである請求項1~のいずれか1つに記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液。
【請求項8】
前記非極性有機溶媒の含有量が、Li2S又はNa2SとMxyの合計100重量部に対して、100重量部以上800重量部以下である請求項1~のいずれか1つに記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液。
【請求項9】
前記極性有機溶媒の含有量が、Li2S又はNa2SとMxyの合計100重量部に対して、100重量部以上800重量部以下である請求項1~のいずれか1つに記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液の製造方法であって、
前記形成用溶液が、前記原料を非極性有機溶媒に加えて混合液を得、次いで、前記混合液に極性有機溶媒を加えることにより得られる全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液の製造方法
【請求項11】
前記形成用溶液の製造が、室温で行われる請求項10に記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液の製造方法
【請求項12】
正極及び負極と、正極と負極間に位置する固体電解質層とを備え、固体電解質層、正極及び負極のいずれかが、請求項1~のいずれか1つに記載の形成用溶液成分を含む全固体アルカリ金属二次電池。
【請求項13】
正極及び負極と、正極と負極間に位置する固体電解質層とを備えた全固体アルカリ金属二次電池の製造方法であり、固体電解質層、正極及び負極のいずれかが、請求項1~のいずれか1つに記載の形成用溶液を塗布及び乾燥することにより形成される全固体アルカリ金属二次電池の製造方法。
【請求項14】
全固体アルカリ金属二次電池の正極及び/又は負極用の被覆活物質粒子であり、前記被覆活物質粒子が、活物質粒子と、その外形に沿って表面を被覆する固体電解質を含む層とを備え、前記固体電解質が、A2S-Mxy(AはLi及びNaから選択され、MはP、Si、Ge、B、Al及びGaから選択され、xとyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える数である)を含む被覆活物質粒子。
【請求項15】
前記固体電解質を含む層、請求項1~9のいずれか1つに記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液成分を前記活物質粒子の表面に含む請求項14に記載の被覆活物質粒子。
【請求項16】
複数の活物質粒子の集合体と、個々の活物質粒子の外形に沿って表面を被覆し、かつ活物質粒子間を埋める固体電解質を含む層とを備えた全固体アルカリ金属二次電池用の電極であり、前記固体電解質が、A2S-Mxy(AはLi及びNaから選択され、MはP、Si、Ge、B、Al及びGaから選択され、xとyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える数である)を含み、前記電極が、正極及び/又は負極である電極。
【請求項17】
前記活物質粒子間を埋める固体電解質を含む層が、10~1000nmの厚さを有する請求項16に記載の電極。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の電極の製造方法であって、
前記電極が、請求項14又は15の被覆活物質粒子をプレスすることにより得られ電極の製造方法
【請求項19】
請求項に記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液から乾燥させて得られた固体電解質であって、固体電解質が、Li2SよりLi3PS4を多く含むX線回折パターンを示す全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質。
【請求項20】
請求項に記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液から乾燥させて得られた固体電解質であって、固体電解質が、立方晶系Na3PS4又は正方晶系Na3PS4を含むX線回折パターンを示す全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質。
【請求項21】
固体電解質が、前駆体としてのNa2S及びP25より正方晶系Na3PS4を多く含むX線回折パターンを示す請求項20に記載の全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液、被覆活物質粒子、電極、全固体アルカリ金属二次電池及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、全固体アルカリ金属二次電池を構成する固体電解質層、正極及び負極のいずれかを塗布法により形成可能にするための形成用溶液、被覆活物質粒子、電極、全固体アルカリ金属二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、高電圧、高容量を有するため、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ノートパソコン、電気自動車等の電源として多用されている。一般に流通しているリチウム二次電池は、電解質として、電解塩を非水系溶媒に溶解した液状電解質を使用している。非水系溶媒には、可燃性の溶媒が多く含まれているため、安全性の確保が望まれている。
安全性を確保するために、非水系溶媒を使用せずに、電解質を固体材料から形成する、いわゆる固体電解質を使用した全固体リチウム二次電池が提案されている。この全固体リチウム二次電池は、正極及び負極と、正極と負極間に位置する固体電解質層とを備えた構成を有している。固体電解質層は、固体電解質から構成されている。また、正極及び負極は、正極活物質及び負極活物質を含み、更に、導電性を改善するために固体電解質が通常含まれている。
【0003】
固体電解質層、正極及び負極は、原料をプレスすることにより一体化させて形成する方法が知られている。しかしながら、この方法では、原料同士の密着性が低いため、十分な導電性を得ることが困難であった。
そこで、パルスレーザー堆積技術を用いて正極活物質を固体電解質で被覆する方法が提案されている(Electrochemical and Solid-State Letters,13(6)A73-A75(2010):非特許文献1、Journal of Power Sources 196(2011)6735-6741:非特許文献2)。この方法では、正極活物質と固体電解質との密着性が高く、そのため導電性を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Electrochemical and Solid-State Letters,13(6)A73-A75(2010)
【非特許文献2】Journal of Power Sources 196(2011)6735-6741
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パルスレーザー堆積技術のような気相法は、使用される装置が大掛かりになると共に成膜コストが高いだけでなく、連続して製造することが困難であるため、簡便な方法で固体電解質を含む層を形成することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者等は、簡便に固体電解質を含む層を形成する方法を検討した結果、非極性有機溶媒と極性有機溶媒とを用いて得られる固体電解質の原料に由来する成分を含む溶液を使用する塗布法であれば、単純な製造装置で、連続的に、安価に固体電解質を含む層を形成できることを見いだし本発明に到った。
【0007】
かくして本発明によれば、固体電解質製造用の原料としてのA2SとMxy(AはLi及びNaから選択され、MはP、Si、Ge、B、Al及びGaから選択され、xとyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える数である)に由来する成分と、非極性有機溶媒と、前記非極性有機溶媒より0.3以上高い極性値を有する極性有機溶媒とを含むことを特徴とする全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液が提供される。
また、本発明によれば、正極及び負極と、正極と負極間に位置する固体電解質層とを備え、固体電解質層、正極及び負極のいずれかが、上記形成用溶液の塗布及び乾燥により形成されてなることを特徴とする全固体アルカリ金属二次電池が提供される。
更に、本発明によれば、正極及び負極と、正極と負極間に位置する固体電解質層とを備えた全固体アルカリ金属二次電池の製造方法であり、固体電解質層、正極及び負極のいずれかが、上記形成用溶液を塗布及び乾燥することにより形成されることを特徴とする全固体アルカリ金属二次電池の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、全固体アルカリ金属二次電池の正極及び/又は負極用の被覆活物質粒子であり、前記被覆活物質粒子が、活物質粒子と、その外形に沿って表面を被覆する固体電解質を含む層とを備え、前記固体電解質が、A2SとMxy(AはLi及びNaから選択され、MはP、Si、Ge、B、Al及びGaから選択され、xとyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える数である)を含む被覆活物質粒子が提供される。
更に、本発明によれば、複数の活物質粒子の集合体と、個々の活物質粒子の外形に沿って表面を被覆し、かつ活物質粒子間を埋める固体電解質を含む層とを備えた全固体アルカリ金属二次電池用の電極であり、前記固体電解質が、A2SとMxy(AはLi及びNaから選択され、MはP、Si、Ge、B、Al及びGaから選択され、xとyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える数である)を含み、前記電極が、正極及び/又は負極である電極が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固体電解質を含む層を簡便に形成可能な全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液を提供できる。
また、以下の構成:
(1)形成用溶液が、原料を非極性有機溶媒に加えて混合液を得、次いで、混合液に極性有機溶媒を加えることにより得られた溶液である
(2)非極性有機溶媒が0.5未満の極性値を有し、極性有機溶媒が0.5以上の極性値を有する
(3)非極性有機溶媒が炭素数5~10の炭化水素から選択され、極性有機溶媒が炭素数1~4の脂肪族アルコール、ホルムアミド、炭素数1~4のアルキル基置換ホルムアミド及びヒドラジン系化合物から選択される
(4)非極性有機溶媒がn-ヘキサンであり、極性有機溶媒がN-メチルホルムアミド又はエチレンジアミンである
(5)固体電解質が、Li2S又はNa2SとMxyとを50:50~90:10(モル比)の割合で含むLi2S又はNa2S-Mxyであり、Mxyが、P25である
のいずれかを有する場合、固体電解質を含む層をより簡便に形成可能な全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液を提供できる。
更に、本発明によれば、固体電解質を含む層で表面のほぼすべてが被覆された被覆活物質粒子、及びこの被覆活物質粒子から構成された電極を提供できる。得られた電極は、高い導電率を示す固体電解質を含む層と活物質との密着性により、向上した導電性を有する。
また、活物質間を埋める固体電解質を含む層が、10~1000nmの厚さを有する場合、より向上した導電性を有する電極を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1のNMF溶液のラマンスペクトルである。
【図2】実施例1の固体電解質のラマンスペクトルである。
【図3】実施例1の固体電解質のX線回折パターンである。
【図4】比較例1のNMF溶液のラマンスペクトルである。
【図5】比較例1の固体電解質のラマンスペクトルである。
【図6】比較例1の固体電解質のX線回折パターンである。
【図7】実施例2の固体電解質のラマンスペクトルである。
【図8】実施例2の固体電解質のX線回折パターンである。
【図9】実施例3の固体電解質のX線回折パターンである。
【図10】実施例4の固体電解質のX線回折パターンである。
【図11】実施例5の処理粒子のSEM写真及びEXDマッピングイメージである。
【図12】実施例6の正極の破断面のSEM写真及びEXDマッピングイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(全固体アルカリ金属二次電池用の固体電解質を含む層の形成用溶液)
本発明の形成用溶液は、全固体アルカリ金属二次電池を構成する固体電解質を含む層であれば、いずれの層の形成にも使用できる。例えば、正極活物質と固体電解質を含む正極、負極活物質と固体電解質を含む負極、固体電解質を含む固体電解質層が挙げられる。アルカリ金属とは、Li又はNaを意味する。
形成用溶液は、固体電解質製造用の原料としてのA2S(Li2S又はNa2S)とMxyに由来する成分と、非極性有機溶媒と、極性有機溶媒とを含む。
(1)固体電解質の原料
原料には、少なくともLi2S又はNa2SとMxyとが含まれる。
(i)Mxy
硫化物であるMxy中、MはP、Si、Ge、B、Al及びGaから選択され、xとyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える数である。Mとして使用可能な6種の元素は、種々の価数をとり得、その価数に応じてxとyを設定できる。例えばPは3価及び5価、Siは4価、Geは2価及び4価、Bは3価、Alは3価、Gaは3価をとり得る。具体的なMxyとしては、P25、SiS2、GeS2、B23、Al23、Ga23等が挙げられる。この内、P25が特に好ましい。これら具体的なMxyは、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。例えば、2種併用する場合は、A2S-Mx1y1-Mx2y2(x1、x2、y1及びy2はx及びyと同じ)で表され、例えば、A2S-P25-GeS2が挙げられる。

【0011】
(ii)Li2S又はNa2SとMxyの配合割合
上記2成分の混合割合は、固体電解質として使用可能でありさえすれば、特に限定されない。
Li2S又はNa2SとMxyとの比は、50:50~90:10(モル比)の割合であることが好ましい。Li2S又はNa2Sの比が50より小さい場合や90より大きい場合、イオン伝導度が低くなることがある。比は、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10をとり得る。好ましい比は60:40~80:20であり、より好ましい比は70:30~80:20である。

【0012】
(iii)他の成分
固体電解質は、Li2S又はNa2SとMxy以外に、全固体アルカリ金属二次電池に使用されている他の成分を含んでいてもよい。例えば、LiI、Li3PO4、NaI、Na3PO4等の電解質、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Ti、Fe、Zn及びBi等の金属酸化物、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン等の結着材が挙げられる。

【0013】
(2)非極性有機溶媒及び極性有機溶媒
極性有機溶媒は、非極性有機溶媒より0.3以上高い極性値ETNを有する。極性値の高さが0.3未満の場合、固体電解質として使用し得る十分なイオン伝導度を与えうる形成用溶液を得ることが困難となる。好ましい極性値の高さは0.45以上であり、より好ましい極性値の高さは0.6以上である。
ここで、極性値は、ピリジニウム-N-フェノキシドベタイン誘導体の吸収スペクトルの極大波長が溶媒の性質により著しく変化する現象を利用して定められたパラメータであるETNを使用する。水及びテトラメチルシランが、それぞれ1.000及び0.000として基準溶媒として規定され、水が最高の極性値を持つ溶媒であり、数値が大きいほど溶媒の極性値が大きいことを意味している。また、本明細書において、各溶媒の具体的な極性値ETNは、化学便覧(改訂5版)基礎編I(日本化学会編、丸善株式会社出版)の第770~775頁に記載された数値を参照している。
形成用溶液は、原料を非極性有機溶媒に加えて混合液を得、次いで、混合液に極性有機溶媒を加えることにより得ることが好ましい。この手順で得られた形成用溶液は、それから得られた固体電解質に十分なイオン伝導度を与え得る。この理由は推測であるが、非極性有機溶媒に予め原料を溶解又は分散しておくことで、原料と極性有機溶媒との接触機会を増やすことができ、その結果、Li2S又はNa2SとMxyとを均一に反応させることができるためであると発明者等は考えている。

【0014】
(i)非極性有機溶媒
非極性有機溶媒は、Li2S又はNa2SとMxyとを溶解又は分散できる溶媒であれば特に限定されない。非極性有機溶媒は、0.5未満の極性値を有する溶媒であることが好ましく、0.3以下の極性値を有する溶媒であることがより好ましい。また、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基等の置換基を備えている溶媒は、極性値が高くなる傾向を有するため、これら置換基を備えない溶媒が好ましい。
非極性有機溶媒の具体例としては、n-ペンタン(0.009)、n-ヘキサン(0.009)、ヘプタン、n-オクタン(0.012)、ノナン、デカン等の炭素数5~10の飽和鎖状炭化水素、四塩化炭素(0.052)、クロロホルム(0.259)、ジクロロエタン(0.327)等の炭素数1~10のハロゲン置換飽和鎖状炭化水素、シクロヘキサン(0.006)、シクロヘプタン、シクロオクタン等の炭素数5~10の飽和環状炭化水素、ベンゼン(0.111)、トルエン(0.099)、キシレン等の炭素数6~10の芳香族炭化水素、クロロベンゼン(0.188)、ブロモベンゼン(0.182)等の炭素数6~10のハロゲン置換芳香族炭化水素等が挙げられる(カッコ内は極性値)。これらの内、取扱い性が良好な炭素数5~10の飽和炭化水素が好ましく、飽和鎖状炭化水素がより好ましい。
非極性有機溶媒の含有量は、Li2S又はNa2SとMxyの合計100重量部に対して、100~800重量部とすることができる。100重量部未満の場合、原料を十分溶解又は分散できないため、原料と極性有機溶媒との接触が不十分となり、固体電解質として使用し得る十分なイオン伝導度を与えうる形成用溶液を得ることが困難となることがある。加えて、溶液の粘度が高くなるため、塗布法により固体電解質を含む層を形成し難くなることがある。800重量部より多い場合、固体電解質を含む層の形成時に、非極性有機溶媒を除去するために要する時間が長くなり、製造コストがかかることがある。含有量(重量部)は、100、200、300、400、500、600、700、800をとり得る。より好ましい含有量は、300~500重量部である。

【0015】
(ii)極性有機溶媒
極性有機溶媒は、Li2S又はNa2SとMxyとを溶解又は分散できる溶媒であれば特に限定されない。極性有機溶媒は、0.3以上の極性値を有する溶媒を使用でき、0.5以上の極性値を有する溶媒であることが好ましく、0.6以上の極性値を有する溶媒であることがより好ましい。極性有機溶媒は、Li2S又はNa2SとMxyとを反応させてLi2S又はNa2S-Mxyを得るための触媒としての機能を有しているが、その機能を発現させるために、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基等の置換基を備えている溶媒であることが好ましい。また、このような置換基を有する溶媒は、極性値が高くなる傾向を有する。
極性有機溶媒としては、例えば、炭素数1~4の脂肪族アルコール、エチレンジアミン(0.349)ホルムアミド(0.799)、炭素数1~4のアルキル基置換ホルムアミド、ヒドラジン系化合物から選択できる。脂肪族アルコールとしては、メタノール(0.762)、エタノール(0.654)、プロパノール(0.617:n体)、ブタノール(0.602:n体)等が挙げられる。アルキル基置換ホルムアミドとしては、N-メチルホルムアミド(0.722)等が挙げられる。
上記有機溶媒の内、溶解度の観点から、N-メチルホルムアミド及びエチレンジアミンが特に好ましい。
極性有機溶媒の含有量は、Li2S又はNa2SとMxyの合計100重量部に対して、100~800重量部とすることができる。100重量部未満の場合、Li2S又はNa2SとMxyとを十分反応させることができないことがある。加えて、溶液の粘度が高くなるため、塗布法により固体電解質を含む層を形成し難くなることがある。800重量部より多い場合、固体電解質を含む層の形成時に、極性有機溶媒を除去するために要する時間が長くなり、製造コストがかかることがある。含有量(重量部)は、100、200、300、400、500、600、700、800をとり得る。より好ましい含有量は、300~500重量部である。

【0016】
(3)形成用溶液の製造法
形成用溶液は、固体電解質層を含む層を得ることができさえすれば特に限定されない。例えば、製造法としては、原料を非極性有機溶媒に加えて混合液を得、次いで、混合液に極性有機溶媒を加えることにより得る方法が挙げられる。この順序で溶媒を使用することで、より均一にLi2S又はNa2S-Mxyが分散した形成用溶液を得ることができる。加えて、一旦、Li2S又はNa2S-Mxyを合成・焼成により得る必要がなく、直接、原料からLi2S又はNa2S-Mxyを得ることができるため、製造コストを抑制できる。
形成用溶液の製造は、不活性雰囲気下で、室温(約25℃)で行うことができる。また、極性有機溶媒を加えるとLi2S又はNa2SとMxyとの反応により発熱することがあるため、氷冷することで、温度を一定に保つことが好ましい。

【0017】
(全固体アルカリ金属二次電池)
全固体アルカリ金属二次電池は、正極及び負極と、正極と負極間に位置する固体電解質層とを備えている。
正極及び/又は負極を活物質から構成する場合、活物質は、被覆活物質粒子でもよい。ここでの被覆活物質粒子は、活物質粒子(粒子状の活物質)と、その外形に沿って表面を被覆する固体電解質を含む層とを備えた粒子である。固体電解質は、A2SとMxy(AはLi及びNaから選択され、MはP、Si、Ge、B、Al及びGaから選択され、xとyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える数である)を含んでいる。
正極及び/又は負極は、複数の活物質粒子の集合体と、個々の活物質粒子の外形に沿って表面を被覆し、かつ活物質粒子間を埋める固体電解質を含む層とを備えていてもよい。固体電解質は、A2SとMxy(AはLi及びNaから選択され、MはP、Si、Ge、B、Al及びGaから選択され、xとyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える数である)を含んでいる。活物質間を埋める固体電解質を含む層は、10~1000nmの厚さを有することが好ましい。この厚さは、固体状の活物質と固体電解質とを単純に混合及びプレスする従来の方法では実現困難である。この厚さの固体電解質を含む層は、例えば、上記被覆活物質粒子をプレスすることにより得ることができる。
本発明では、固体電解質層、正極及び負極のいずれかを、上記形成用溶液の塗布及び乾燥により形成できる。
(1)負極
負極は、特に限定されず、全固体アルカリ金属二次電池に通常使用される負極をいずれも使用できる。
上記形成用溶液を使用して負極を形成する場合、負極活物質は、形成用溶液に溶解していても粒子状で分散していてもよい。この負極活物質としては、Li、In、Sn等の金属、それらの合金、グラファイト、SnO等の種々の遷移金属酸化物等が挙げられる。
更に、形成用溶液は、必要に応じて、結着剤、導電剤等を含んでいてもよい。
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン等が挙げられる。
導電剤としては、天然黒鉛、人工黒鉛、アセチレンブラック、気相成長カーボンファィバ(VGCF)等が挙げられる。
上記形成用溶液を使用しない場合は、負極として、箔状のLi金属層又はLi合金層(例えば、Li-In合金、Li-Sn合金、Li-Si合金、Li-Al合金等)を使用できる。

【0018】
また、上記Li金属層又はLi合金層以外に、粒状の負極活物質をプレスすることにより得られた負極を使用してもよい。このプレスにより得られる負極は、必要に応じて、結着剤、導電剤、固体電解質等を含んでいてもよい。この固体電解質には、上記形成用溶液を乾燥させることにより得られた固体電解質を使用してもよい。
負極は、SUS(ステンレススチール)、アルミニウム又は銅等の集電体を備えていてもよい。

【0019】
(2)正極
正極は、特に限定されず、全固体アルカリ金属二次電池に通常使用される正極をいずれも使用できる。
上記形成用溶液を使用して正極を形成する場合、正極活物質は、形成用溶液に溶解していても粒子状で分散していてもよい。この正極活物質としては、例えば、リチウムを介して電極反応を生じるタイプの電池の場合は、Li4Ti512、LiCoO2、LiMnO2、LiVO2、LiCrO2、LiNiO2、Li2NiMn38、LiNi1/3Co1/3Mn1/32、S、Li2S等が挙げられる。また、ナトリウムを介して電極反応を生じるタイプの電池の場合は、Na4Ti512、NaCoO2、NaMnO2、NaVO2、NaCrO2、NaNiO2、Na2NiMn38、NaNi1/3Co1/3Mn1/32、S、Na2S等が挙げられる。この内、粒子状の正極活物質はLiNbO3、NaNbO3、Al、NiS等の材料で被覆されていてもよい。
更に、形成用溶液は、必要に応じて、結着剤、導電剤等を含んでいてもよい。
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン等が挙げられる。
導電剤としては、天然黒鉛、人工黒鉛、アセチレンブラック、気相成長カーボンファィバ(VGCF)等が挙げられる。

【0020】
上記形成用溶液を使用しない場合は、正極は、例えば、正極活物質及び、任意に結着剤、導電剤、固体電解質等を混合し、得られた混合物をプレスすることで、ペレット状として得ることができる。この固体電解質には、上記形成用溶液を乾燥させることにより得られた固体電解質を使用してもよい。
また、正極活物質として金属又はその合金からなる金属シート(箔)を使用する場合、それをそのまま使用可能である。
正極は、SUS、アルミニウム又は銅等の集電体の上に形成されていてもよい。

【0021】
(3)固体電解質層
上記形成用溶液を固体電解質層の形成に使用できる。
固体電解質層は、固体電解質をプレスすることにより得てもよい。
固体電解質層には、上記形成用溶液から得られた固体電解質以外に、ガラスセラミック状の固体電解質も使用できる。ガラスセラミック状の固体電解質は、固体電解質の原料の混合物をメカニカルミリングに付すことによりガラス状の固体電解質を得、次いでこれを熱処理に付すことで得ることができる。この熱処理は、ガラス状の固体電解質のガラス転移点以上の温度で行うことができる。ガラス転移点は、通常、180~240℃の範囲にあり、熱処理温度の上限は、特に限定されないが、通常、ガラス転移点の+100℃である。
熱処理時間は、ガラス状からガラスセラミックス状に変換し得る時間であり、熱処理温度が高いと短く、低いと長くなる。熱処理時間は、通常、0.1~10時間の範囲である。

【0022】
(4)固体電解質を含む層の形成条件
固体電解質を含む層は、上記形成用溶液を塗布し、得られた塗膜を乾燥することにより得ることができる。塗布法としては、特に限定されず、例えば、刷毛塗り、滴下法、スピンコート法、スプレー法等が挙げられる。乾燥は、有機溶媒を除去できさえすれば、その条件は特に限定されない。通常、非極性有機溶媒及び極性有機溶媒の高い方の沸点以上で行うことができる。また、減圧下で乾燥させれば、乾燥温度を下げることができる。

【0023】
(5)全固体二次電池の製造方法
全固体二次電池は、例えば、
(i)正極、固体電解質層及び負極をペレット状に成形し、積層する方法、
(ii)基材上に塗布法で形成された正極、固体電解質層及び負極を基材から転写することで積層する方法、
(iii)正極、固体電解質層及び負極を順に塗布法により積層する方法
等により製造できる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
実施例1
Li2S(出光興産社製純度99.9%)及びP25(アルドリッチ社製純度99%)を80:20のモル比で乳鉢にて混合した。得られた混合物0.3gにn-ヘキサン1.5mlを投入した。投入後、室温下、撹拌することで、Li2S及びP25の混合物のn-ヘキサン溶液を得ることができた。この溶液を氷冷しつつ、N-メチルホルムアミド(NMF)1.5mlを投入し、投入後、1時間撹拌し、次いで、室温下、5時間撹拌することで、固体電解質を含む層の形成用溶液を得た。得られた形成用溶液は、黄色い液体であった。
【実施例】
【0025】
形成用溶液から上澄み液であるn-ヘキサンを除去した。除去後のNMF溶液を2つに分け、一方を真空下、150℃で、他方を真空下、180℃で、それぞれ3時間乾燥させることで、黄色の固体電解質を析出させた。
n-ヘキサン除去後のNMF溶液のラマンスペクトルを図1に示す。図1には、NMFのラマンスペクトルと、P25を15重量%含むNMF溶液のラマンスペクトルを合わせて示す。
180℃で乾燥させた固体電解質のラマンスペクトルを図2に示す。
150℃で乾燥させた固体電解質及び180℃で乾燥させた固体電解質のX線回折パターンを図3示す。図3には、Li3PS4(75Li2S-25P25)及びLi2SのX線回折パターンを合わせて示す。
【実施例】
【0026】
図1から、n-ヘキサン除去後のNMF溶液には、PS43-に由来するピークが存在しており、NMFの投入によりLi2SとP25とが反応して、Li3PS4が生成していることが分かる。このことは、図2の乾燥後の固体電解質のラマンスペクトルにおいてもPS43-に由来するピークが存在していることからも確認できる。更に、図3から、得られた固体電解質が、Li2Sのピークが見られるものの、Li3PS4を多く含むことが分かる。
次に、固体電解質のイオン伝導度を測定したところ、2.4×10-6Scm-1(25℃)を示した。
【実施例】
【0027】
比較例1
Li2S及びP25を80:20のモル比となるように0.14gと0.16g秤量した。Li2SをNMF1.5mlに投入し、室温で30分間撹拌することにより高粘度の白濁の懸濁液を得た。得られた懸濁液を氷冷しつつP25を投入し、6時間撹拌することにより茶色の溶液を得た。この撹拌時には、発熱と白煙が生じた。溶液を2つに分け、一方を真空下、150℃で、他方を真空下、180℃で、それぞれ3時間乾燥させることで、固体電解質を析出させた。
NMF溶液のラマンスペクトルを図4に示す。図4には、NMFのラマンスペクトルと、P25を15重量%含むNMF溶液のラマンスペクトルを合わせて示す。
180℃で乾燥させた固体電解質のラマンスペクトルを図5に示す。
150℃で乾燥させた固体電解質及び180℃で乾燥させた固体電解質のX線回折パターンを図6に示す。図6には、図3と同様、Li3PS4(75Li2S-25P25)及びLi2SのX線回折パターンを合わせて示す。
【実施例】
【0028】
図4~6から、図1~3と同様の傾向が読み取れる(但し、図4ではP25の残存が確認されている)。しかしながら、固体電解質のイオン伝導度を測定したところ、実施例1より低い1.9×10-6Scm-1(25℃)を示した。これは、懸濁液の粘度が高くなったため、懸濁液とP25との混合が均一とならずに、Li2SとP25との反応が均一に進行しなかったためであると考えられる。
比較例2
Li2S及びP25を乳鉢で混合し、得られた混合物にNMFを投入すること以外は、比較例1と同様にして溶液を得ようとしたが、発熱及び白煙が多く発生したため、実験を中止した。
【実施例】
【0029】
実施例2
Li2S(出光興産社製純度99.9%)及びP25(アルドリッチ社製純度99%)を70:30のモル比で乳鉢にて混合した。得られた混合物0.3gにn-ヘキサン1.5mlを投入した。投入後、室温下、撹拌することで、Li2S及びP25の混合物のn-ヘキサン溶液を得ることができた。この溶液を氷冷しつつ、エチレンジアミン(EDA)1.5mlを投入し、投入後、30分間撹拌し、次いで、室温下、5時間撹拌することで、固体電解質を含む層の形成用溶液を得た。得られた形成用溶液は、黄色い液体であった。
形成用溶液から上澄み液であるn-ヘキサンを除去した。除去後のEDA溶液を2つに分け、一方を真空下、200℃で、他方を真空下、270℃で、それぞれ3時間乾燥させることで、黄色の固体電解質を析出させた。
200℃で乾燥させた固体電解質のラマンスペクトルを図7に示す。図7には、Li3PS4(75Li2S-25P25)のラマンスペクトルを合わせて示す。
200℃で乾燥させた固体電解質及び270℃で乾燥させた固体電解質のX線回折パターンを図8に示す。図8には、EDA溶液を真空下150℃で3時間乾燥させた物質のX線回折パターン(▲)とLi3PS4のX線回折パターン(△)を合わせて示す。X線回折パターン▲は、固体電解質になる前の前駆体のX線回折パターンに対応する。
【実施例】
【0030】
図7から、200℃で乾燥させた固体電解質は、Li3PS4に由来するピークが存在していることが分かる。更に、図8から、200℃で乾燥させた固体電解質は、前駆体とLi3PS4とが混在していることが分かる。270℃で乾燥させた固体電解質は、Li3PS4とLi2Sのピークが見られるものの、Li3PS4を多く含むことが分かる。
次に、270℃で乾燥させた固体電解質のイオン伝導度を測定したところ、8.9×10-6Scm-1(25℃)を示した。
【実施例】
【0031】
実施例3
Na2S(ナガオ社製、純度99.1%)及びP25(アルドリッチ社製純度99%)を75:25のモル比で乳鉢にて混合した。得られた混合物0.3gにn-ヘキサン1.5mlを投入した。投入後、室温下、撹拌することで、Na2S及びP25の混合物のn-ヘキサン溶液を得ることができた。この溶液を氷冷しつつ、NMF1.5mlを投入し、投入後、2時間撹拌し、次いで、室温下、4時間撹拌することで、固体電解質を含む層の形成用溶液を得た。得られた形成用溶液は、黄色い液体であった。
形成用溶液から上澄み液であるn-ヘキサンを除去した。除去後のNMF溶液を、真空下、260℃で、それぞれ3時間乾燥させることで、黄色の固体電解質を析出させた。
乾燥させた固体電解質のX線回折パターンを図9示す。図9から、乾燥させた固体電解質には、立方晶系(Cubic)Na3PS4(◇)が多く存在していることが分かる。また、正方晶系(Tetragonal)Na3PS4(■)やNa3POS3(▼)が若干存在していることも分かる。
次に、固体電解質のイオン伝導度を測定したところ、1.6×10-6Scm-1(25℃)を示した。
【実施例】
【0032】
実施例4
Na2S(ナガオ社製、純度99.1%)及びP25(アルドリッチ社製純度99%)を75:25のモル比で乳鉢にて混合した。得られた混合物0.3gにn-ヘキサン1.5mlを投入した。投入後、室温下、撹拌することで、Na2S及びP25の混合物のn-ヘキサン溶液を得ることができた。この溶液を氷冷しつつ、EDA1.5mlを投入し、投入後、30分間撹拌し、次いで、室温下、5時間撹拌することで、固体電解質を含む層の形成用溶液を得た。得られた形成用溶液は、黄色い液体であった。
形成用溶液から上澄み液であるn-ヘキサンを除去した。除去後のEDA溶液を2つに分け、一方を真空下、180℃で、他方を真空下、270℃で、それぞれ3時間乾燥させることで、黄色の固体電解質を析出させた。
180℃で乾燥させた固体電解質及び270℃で乾燥させた固体電解質のX線回折パターンを図10に示す。図10には、正方晶系Na3PS4(■)のX線回折パターンを合わせて示す。X線回折パターン□は、固体電解質になる前の前駆体のX線回折パターンに対応する。
図10から、270℃で乾燥させた固体電解質は、180℃で乾燥させた固体電解質より、前駆体が少なく、正方晶系Na3PS4が多く存在していることが分かる。
次に、固体電解質のイオン伝導度を測定したところ、3.1×10-6Scm-1(25℃)を示した。
【実施例】
【0033】
実施例5
実施例1と同様にして固体電解質を含む層の形成用溶液を得た。得られた溶液に、LiNbOで被覆されたLiCoO粒子(戸田工業社製、平均粒子径:約10μm)を、溶液の固形分と粒子との重量比が7.5:92.5となるように混合した。得られた混合液を、真空下、180℃で、3時間乾燥させてNMF除去することで、処理粒子を取り出した。得られた粒子のSEM写真及びCo、O、Nb、S及びPについてのEDXマッピングイメージを図11(a)~(g)に示す。なお、図11(a)は溶液処理前の粒子の写真、図11(b)は処理粒子の写真、図11(c)はCoの存在を示すイメージ、図11(d)はOの存在を示すイメージ、図11(e)はNbの存在を示すイメージ、図11(f)はSの存在を示すイメージ、図11(g)はPの存在を示すイメージである。図11(c)及び(d)はLiCoOのCo及びOに対応し、図11(e)はLiNbOのNbに対応し、図11(f)及び(g)はLi2S-P25のS及びPに対応する。
図11(a)~(g)から、LiCoO粒子は、Li2S-P25からなる層により、その表面がほぼ被覆されていることが分かる。
なお、LiNbOで被覆されたLiCoO粒子は、LiNbOの前駆体を含む溶液をLiCoO上へスプレー塗布した後、350℃で熱処理することで得た。
【実施例】
【0034】
実施例6
実施例5で得られたLi2S-P25により被覆された粒子10mgをペレット成形機を用いて、370MPaの圧力でプレスすることで、ペレット状の正極(厚さ約1mm)を得た。得られた正極を破断した。破断面のSEM写真とCo及びSについてのEDXマッピングイメージを図12(a-1)~(c-3)に示す。なお、図12(c-1)は、図12(b-1)の拡大写真である。図12(a-2)、(b-2)、(c-2)は、図12(a-1)、(b-1)、(c-1)のCoの存在を示すイメージ、図12(a-3)、(b-3)、(c-3)は、図12(a-1)、(b-1)、(c-1)のSの存在を示すイメージである。
図12(a-1)~(a-3)、図12(b-1)~(b-3)、図12(c-1)~(c-3)を見ると、粒子表面がLi2S-P25からなる層でほぼ被覆されていることが分かる。特に、図12(a-1)の矢印部に粒子間にLi2S-P25からなる層が存在していることが示され、図12(b-1)及び(c-1)の矢印部に粒子間におけるLi2S-P25からなる層の断面が観察されている。
図12(a-1)、(b-1)及び(c-1)から、Li2S-P25からなる層が粒子間に存在することが分かる。特に、図12(c-1)からLi2S-P25からなる層が500nm程度の厚さを有していることが分かる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11