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明細書 :シリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6256930号 (P6256930)
登録日 平成29年12月15日(2017.12.15)
発行日 平成30年1月10日(2018.1.10)
発明の名称または考案の名称 シリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法
国際特許分類 C01B  33/155       (2006.01)
FI C01B 33/155
請求項の数または発明の数 10
全頁数 21
出願番号 特願2016-506571 (P2016-506571)
出願日 平成27年3月6日(2015.3.6)
国際出願番号 PCT/JP2015/056655
国際公開番号 WO2015/133606
国際公開日 平成27年9月11日(2015.9.11)
優先権出願番号 2014043371
優先日 平成26年3月6日(2014.3.6)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年10月17日(2016.10.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】藤 正督
【氏名】今別府 寛
【氏名】白井 孝
【氏名】高井 千加
個別代理人の代理人 【識別番号】110001128、【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 特開2013-133250(JP,A)
特開2009-234854(JP,A)
国際公開第2012/121130(WO,A1)
特開2010-131592(JP,A)
特開2010-105840(JP,A)
特開2010-103860(JP,A)
特開2011-168437(JP,A)
特開2013-082599(JP,A)
特開2009-203115(JP,A)
特開2014-009261(JP,A)
調査した分野 C01B 33/00-33/193
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
分子量が1×10以上であって、水溶性を有する少なくとも1種類の高分子電解質と、水溶性を有する少なくとも1種類のアミン化合物と、水とを混合した混合物を用意し、前記混合物を有機溶媒中に分散させることによって、前記混合物からなるコア粒子を形成する第1工程と、
前記コア粒子の外表面に、シリコンアルコキシド化合物のゾルゲル反応によってシリカ殻を形成してシリカコーティング粒子を製造する第2工程と、
前記シリカコーティング粒子内部の前記コア粒子を水に溶解させて除去する第3工程とを行い、
前記高分子電解質として、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリアリルアミンハイドロクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリ(n-ビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレート)ジメチルサルフェートのいずれかを用い、
前記アミン化合物として、エチレンジアミン、3,3-ジアミノジロピルアミン、トリエチレンテトラアミン、3,3-ジアミノプロピルジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、ブチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、のいずれかを用いるシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法。
【請求項2】
分子量が1×10以上であって、水溶性を有する少なくとも1種類の高分子電解質と、水溶性を有する少なくとも1種類のアミン化合物と、水とを混合した混合物を用意し、前記混合物を有機溶媒中に分散させることによって、前記混合物からなるコア粒子を形成する第1工程と、
前記コア粒子の外表面に、シリコンアルコキシド化合物のゾルゲル反応によってシリカ殻を形成してシリカコーティング粒子を製造する第2工程と、
前記シリカコーティング粒子内部の前記コア粒子を水に溶解させて除去する第3工程とを行い、
前記高分子電解質として、ポリアクリル酸を用い、
前記アミン化合物として、エチレンジアミン、3,3-ジアミノジロピルアミン、トリエチレンテトラアミン、3,3-ジアミノプロピルジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、ブチルアミンのいずれかを用いるシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法。
【請求項3】
分子量が1×10以上であって、水溶性を有する少なくとも1種類の高分子電解質と、水溶性を有する少なくとも1種類のアミン化合物と、水とを混合した混合物を用意し、前記混合物を有機溶媒中に分散させることによって、前記混合物からなるコア粒子を形成する第1工程と、
前記コア粒子の外表面に、シリコンアルコキシド化合物のゾルゲル反応によってシリカ殻を形成してシリカコーティング粒子を製造する第2工程と、
前記シリカコーティング粒子内部の前記コア粒子を水に溶解させて除去する第3工程とを行い、
前記混合物として、さらに、アンモニアを混合したものを用いるシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法。
【請求項4】
前記高分子電解質として、ポリアクリル酸を用い、
前記アミン化合物として、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルエチレンジアミンのいずれかを用いる請求項3に記載のシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法。
【請求項5】
分子量が1×10以上であって、水溶性を有する少なくとも1種類の高分子電解質と、アンモニアと、水とを混合した混合物を用意し、前記混合物を有機溶媒中に分散させることによって、前記混合物からなるコア粒子を形成する第1工程と、
前記コア粒子の外表面に、シリコンアルコキシド化合物のゾルゲル反応によってシリカ殻を形成してシリカコーティング粒子を製造する第2工程と、
前記シリカコーティング粒子内部の前記コア粒子を水に溶解させて除去する第3工程とを行い、
前記高分子電解質として、ポリアリルアミンハイドロクロライド、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリ(n-ビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレート)ジメチルサルフェート)のいずれかを用いるシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法。
【請求項6】
前記有機溶媒として、エタノール、メタノール、プロパノール、ジエチレングリコールの少なくとも1つを用いる請求項1ないし5のいずれか1つに記載のシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法。
【請求項7】
前記シリコンアルコキシド化合物として、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリブトキシシランの少なくとも1つを用いる請求項1ないし6のいずれか1つに記載のシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程において、前記シリコンアルコキシド化合物の反応開始から前記シリカ殻の形成までに要する反応時間が6時間以内である請求項1ないし7のいずれか1つに記載のシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法。
【請求項9】
前記第3工程後に得られるナノ中空粒子が球形であって、平均粒径10~300nmである請求項1ないし8のいずれか1つに記載のシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法。
【請求項10】
前記第3工程後に得られるナノ中空粒子のシリカ殻の厚さが3~30nmであり、前記シリカ殻の平均細孔径が2.5nm以下である請求項1ないし9のいずれか1つに記載のシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロカプセルと称される中空体が注目されている。例えば、医薬や化粧品の分野では、中空体内部に有効成分を内包した徐放性医薬や徐放性化粧品のほか、外環境との接触により分解あるいは劣化してしまう物質の保護、ドラッグデリバリーシステムのための担体等に、中空体(マイクロカプセル)を活用する研究が盛んに行われている。また、製紙分野では、内部に染料を内包した中空体(マイクロカプセル)が感圧紙に使われている。この他にも軽量充填材としての利用等、中空体は数多くの適用分野が見込まれ、多方面に亘る応用が期待されていることから、その製造に関して種々の検討がなされている。そして、近年においては、ナノテクノロジー技術の一環として、数百nm以下の粒子径を有する粒子についての応用研究が盛んに行われており、中空粒子についてもナノメートルサイズのものが嘱望されている。
【0003】
ここで、中空粒子、特にシリカ質の中空粒子に関する技術として、例えば、特許文献1において、メトキシシリケートやエトキシシリケートなどの有機ケイ素化合物と発泡剤を混合噴霧した後に加水分解することにより中空シリカ粉末が得られることが記載されている。また、特許文献2においては、オルトケイ酸テトラエチルに、アルコール、水及び酸触媒を加えて部分加水分解を行わせた後、フタル酸ジブチルを添加し、この溶液を界面活性剤を含んだアンモニア水溶液中で混合撹拌、乳化し、重縮合反応させることにより球状で中空の多孔質シリカ粒子を製造する方法が提案されている。更に、特許文献3においては、テトラアルコキシシランと水とで起こす加水分解と縮重合反応により合成されるミクロンサイズの球状シリカであって、当該シリカ粒子を構成する殻が、外側が緻密で内側ほど粗な濃度傾斜構造をもったミクロンサイズの中空の球状シリカ粒子が提案されている。また、特許文献4においては、特定条件下でケイ酸アルカリ金属からシリカ以外の支持体上に活性シリカを沈殿させた後、該支持体を除去することによって、緻密シリカシェルからなる中空シリカ粒子を製造する方法も提案されている。
【0004】
さらに、非特許文献1には、ポリアクリル酸とアンモニア水を混合させたポリアクリル酸塩をエタノールに滴下し凝集させた凝集体をコアとして用いる方法が記載されている。このコアはエタノールなどのアルコールには不溶ではあるが、水には溶解する性質を持つ。この方法では、このコアにシリコンアルコキシドのゾルゲル反応を利用してシリカコーティングを施し、その後水を加えてコアを溶解除去することにより中空粒子を製造する。
【0005】
これらのうち、特許文献1~3に記載の技術においては、気体-液体あるいは液体-液体(水相-油相)の界面でシリカを析出させる、所謂、界面反応を利用したものであり、得られる中空粒子は球状で、粒子径はミクロンオーダー以上のものとなり、サブミクロンからナノオーダーの中空粒子を得ることはできない。また、特許文献4に記載の技術においては、20nm以上の中空粒子が製造できるとの記述はあるものの本発明者らの実験においては、ナノオーダーになると凝集が激しくなり、結果的にはミクロンオーダーの凝集粒子となってしまうことがわかっている。
【0006】
一方、非特許文献1においては、100nm以上の中空粒子が製造できると記載されており、ポリアクリル酸塩の量やシリコンアルコキシドの量を変えることにより粒子径やシリカ殻の厚みを容易に制御することが可能である。ところが、非特許文献1における、ポリアクリル酸塩をコアとして用いたシリカコーティングは、シリコンアルコキシドの加水分解、および続く縮合反応の進行が遅いため、コアにシリカがコーティングする時間が長くなり、その結果、中空粒子の生成に要する反応時間が長時間となるという問題があった。なお、本発明者らの実験によると、非特許文献1に記載の方法での中空粒子の生成に要する反応時間は14時間であった(後述する比較例1参照)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平6-91194号公報
【特許文献2】特許第2590428号公報
【特許文献3】特開平11-29318号公報
【特許文献4】特許第3419787号公報
【0008】

【非特許文献1】Yong Wan and Shu-Hong Yu、 J. Phys. Chem. C 2008、 112、 3641-3647
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、かかる従来技術の不具合を解決すべくなされたものであって、ナノメートルサイズのシリカ殻を有する中空粒子、すなわち、シリカ殻からなるナノ中空粒子を短時間で得る製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、コアに用いる高分子電解質と、アンモニアまたはアミンとを選択することにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の方法が提供される。
【0011】
本発明の第1の特徴は、分子量が1×10以上であって、水溶性を有する少なくとも1種類の高分子電解質と、水溶性を有する少なくとも1種類のアミン化合物と、水とを混合した混合物を用意し、混合物を有機溶媒中に分散させることによって、混合物からなるコア粒子を形成する第1工程と、
コア粒子の外表面に、シリコンアルコキシド化合物のゾルゲル反応によってシリカ殻を形成してシリカコーティング粒子を製造する第2工程と、
シリカコーティング粒子内部のコア粒子を水に溶解させて除去する第3工程とを行うことである。
【0012】
これによれば、後述する実施例からわかるように、非特許文献1に記載の技術と比較して、シリカ殻からなるナノ中空粒子を短時間で得ることができる。さらに、非特許文献1に記載の技術と比較して、シリカ殻からなるナノ中空粒子を高い製造効率で得ることができる。
【0013】
第1の特徴においては、例えば、高分子電解質として、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリアリルアミンハイドロクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリ(n-ビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレート)ジメチルサルフェートのいずれかを用い、
アミン化合物として、エチレンジアミン、3,3-ジアミノジロピルアミン、トリエチレンテトラアミン、3,3-ジアミノプロピルジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、ブチルアミン、NNNNテトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、のいずれかを用いることができる。
【0014】
または、例えば、高分子電解質として、ポリアクリル酸を用い、
アミン化合物として、エチレンジアミン、3,3-ジアミノジロピルアミン、トリエチレンテトラアミン、3,3-ジアミノプロピルジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、ブチルアミンのいずれかを用いることができる。
【0015】
第1の特徴においては、混合物として、さらに、アンモニアを混合したものを用いることができる。
【0016】
第1の特徴においては、高分子電解質として、ポリアクリル酸を用い、
アミン化合物として、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルエチレンジアミンのいずれかを用いることができる。
【0017】
本発明の第2の特徴は、分子量が1×10以上であって、水溶性を有する少なくとも1種類の高分子電解質と、アンモニアと、水とを混合した混合物を用意し、混合物を有機溶媒中に分散させることによって、混合物からなるコア粒子を形成する第1工程と、
コア粒子の外表面に、シリコンアルコキシド化合物のゾルゲル反応によってシリカ殻を形成してシリカコーティング粒子を製造する第2工程と、
シリカコーティング粒子内部のコア粒子を水に溶解させて除去する第3工程とを行うことである。
【0018】
これによれば、後述する実施例からわかるように、非特許文献1に記載の技術と比較して、シリカ殻からなるナノ中空粒子を短時間で得ることができる。さらに、非特許文献1に記載の技術と比較して、シリカ殻からなるナノ中空粒子を高い製造効率で得ることができる。
【0019】
第2の特徴においては、高分子電解質として、例えば、ポリアリルアミンハイドロクロライド、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリ(n-ビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレート)ジメチルサルフェート)のいずれかを用いることができる。
【0020】
第1、第2の特徴においては、有機溶媒として、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ジエチレングリコールの少なくとも1つを用いることができる。
【0021】
第1、第2の特徴においては、シリコンアルコキシド化合物として、例えば、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリブトキシシランの少なくとも1つを用いることができる。
【0022】
第1、第2の特徴によれば、第2工程におけるシリコンアルコキシド化合物の反応開始からシリカ殻の形成までに要する反応時間を6時間以内とすることができる。
【0023】
また、第1、第2の特徴によれば、球形であって、平均粒径10~300nmであるナノ中空粒子が得られる。
【0024】
また、第1、第2の特徴によれば、シリカ殻の厚さが3~30nmであり、シリカ殻の平均細孔径が2.5nm以下であるナノ中空粒子が得られる。
【0025】
また、第1、第2の特徴では、第1工程において、所定量の水が予め添加された有機溶媒を用いることが好ましい。これによれば、有機溶媒中に添加される水の量とシリカ殻の細孔径の大きさとの関係に基づいて、有機溶媒に添加する水の量を所望の細孔径を得るための量に設定することで、所望の細孔径を有するナノ中空粒子を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の第2の製造方法を示すフローチャートである。
【図3A】実施例1で製造したナノ中空粒子の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3B】図3AのIIIB領域中の1つのナノ中空粒子を模式的に示した拡大図である。
【図4A】実施例2で製造したナノ中空粒子の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4B】図4AのIVB領域中の1つのナノ中空粒子を模式的に示した拡大図である。
【図5A】実施例4で製造したナノ中空粒子の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5B】図5AのVB領域中の1つのナノ中空粒子を模式的に示した拡大図である。
【図6A】実施例18で製造したナノ中空粒子の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6B】図6AのVIB領域中の1つのナノ中空粒子を模式的に示した拡大図である。
【図7A】実施例21で製造したナノ中空粒子の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図7B】図7AのVIIB領域中の1つのナノ中空粒子を模式的に示した拡大図である。
【図8A】実施例24で製造したナノ中空粒子の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図8B】図8AのVIIIB領域中の1つのナノ中空粒子を模式的に示した拡大図である。
【図9A】実施例27で製造したナノ中空粒子の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図9B】図9AのIXB領域中の1つのナノ中空粒子を模式的に示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0028】
図1、2に示すように、本発明のシリカ殻からなるナノ中空粒子の第1、第2の製造方法は、どちらも、コア粒子を形成する第1工程と、シリカコーティング粒子を製造する第2工程と、コア粒子を水に溶解させて除去する第3工程とを順に行うことで、シリカ殻からなるナノ中空粒子を得るものである。

【0029】
図1に示すように、第1の製造方法の第1工程では、分子量が1×10以上であって、水溶性を有する高分子電解質と、水溶性を有するアミン化合物と、水とを混合した混合物を用意する。この水は、高分子電解質とアミン化合物の溶媒として用いられるものである。混合物として、例えば、アミン化合物の水溶液に高分子電解質を混合したものや、高分子電解質の水溶液とアミン化合物の水溶液を混合したものを用いてもよい。また、この混合物として、さらに、アンモニアを混合したものを用いてもよい。すなわち、水溶性を有する高分子電解質と、水溶性を有するアミン化合物と、アンモニアと、水とを混合した混合物を用いてもよい。また、この混合物を分散させるための有機溶媒を用意する。

【0030】
そして、上記混合物を有機溶媒中に分散させることによって、混合物からなるコア粒子を形成する。例えば、上記混合物を撹拌しながら有機溶媒中に滴下して、有機溶媒中に混合物が粒子状に分散したエマルジョンを製造することにより、コア粒子を形成する。このコア粒子は、高分子電解質とアミン化合物の水和ゲルで構成される。また、1つのコア粒子は、高分子電解質とアミン化合物の水和ゲルの微粒子凝集体で構成される。なお、有機溶媒中に混合物が粒子状に分散したエマルジョンを製造できれば、上記混合物を撹拌しながら有機溶媒中に滴下する操作に限らず、他の操作を行ってもよい。

【0031】
第2工程では、コア粒子の外表面に、シリコンアルコキシド化合物のゾルゲル反応によってシリカ殻を形成する。例えば、第1工程でコア粒子が形成された有機溶媒中に、シリコンアルコキシド化合物を加える。これにより、シリコンアルコキシド化合物のゾルゲル反応、すなわち、加水分解および縮重合反応によって、コア粒子の外表面にシリカ殻を形成する。

【0032】
第3工程では、シリカコーティング粒子内部のコア粒子を水に溶解させて除去する。例えば、第2工程後のシリカ殻を形成した有機溶媒中に水を添加したり、有機溶媒から分離したシリカコーティング粒子に対して水を添加したりすることにより、コア粒子を除去する。

【0033】
一方、図2に示すように、第2の製造方法の第1工程では、分子量が1×10以上であって、水溶性を有する高分子電解質と、アンモニアと、水とを混合した混合物を用意する。この水は、高分子電解質とアンモニアの溶媒として用いられるものである。この混合物として、例えば、アンモニア水に高分子電解質を混合したものや、高分子電解質の水溶液とアンモニア水を混合したものを用いてもよい。混合物を用意した後の工程は、第1の製造方法と同じである。

【0034】
第1、第2の製造方法で用いる高分子電解質は、電解質の性質を有する高分子であり、換言すると、高分子鎖中に解離基をもち、水中で解離して高分子イオンとなるものである。第1、第2の製造方法で用いる高分子電解質は、アミンとの混合物またはアンモニアとの混合物が有機溶媒(例えば、アルコール)には不溶であるが、水に溶解する性質(水溶性)を有する少なくとも1種の高分子電解質であればよい。

【0035】
第1の製造方法で用いる高分子電解質は、分子量が1×10以上のものであればよいが、第2の製造方法で用いる高分子電解質は、分子量が1×10以上のものであることが必要である。分子量が1×10以上のものを用いることにより、分子量が1×10よりも低いものを用いる場合と比較して、シリコンアルコキシド化合物の加水分解およびこれに続く縮合反応の進行を早めることができ、結果として、中空粒子生成に要する反応時間を短縮できるからである。

【0036】
第1の製造方法で用いる高分子電解質としては、例えば、ポリアクリル酸(PAA、分子量5×10)、ポリアリルアミンハイドロクロライド(PAAH、分子量17×10)、ポリメタクリル酸ナトリウム(PMANa、分子量7×10)、ポリ(n-ビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレート)ジメチルサルフェート)(PQ-11、分子量8×10)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDADMAC、分子量12×10~20×10)、などが挙げられる。

【0037】
一方、第2の製造方法で用いる高分子電解質としては、上記列挙した高分子電解質(ただし、PAAを除く)が挙げられる。

【0038】
なお、高分子電解質の水に対する溶解度は、10g/L以上であることが好ましく、100g/L以上であることがより好ましい。

【0039】
第1の製造方法で用いるアミン化合物は、アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物である。したがって、このアミン化合物にはアンモニアは含まれない。アミン化合物は、水に溶解する性質(水溶性)を有する少なくとも1種類のアミンであればよい。アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、3,3-ジアミノジロピルアミン、トリエチレンテトラアミン、1,6-ヘキサンジアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ブチルアミン、NNNNテトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、3,3-ジアミノプロピルジアミン等を用いることができる。

【0040】
第1の製造方法において、高分子電解質とアミン化合物の混合比(重量比)は0.09:1.0~0.09:6.15が好ましい。また、第2の製造方法において、高分子電解質に対するアンモニアの混合比(重量比)は0.09:0.9~0.09:6.5が好ましい。

【0041】
第1、第2の製造方法で用いる有機溶媒としては、シリコンアルコキシド化合物と水に対して溶解性があり、さらにシリコンアルコキシド化合物の加水分解を促進可能なものであればよく、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ジエチレングリコールなどが好ましい。コアとなる凝集体を有機溶媒中に生成させ、さらにシリコンアルコキシドを加えてコア表面にシリカをコーティングする際の有機溶媒の温度は5℃~70℃が好ましい。なお、シリカ殻からなるナノ中空粒子の平均粒径は、1つのコア粒子を構成する前記微粒子凝集体の外径により決まるが、当該微粒子凝集体の外径は、コアとなる微粒子凝集体を有機溶媒中に生成させる際の撹拌操作により制御することができる。コアとなる微粒子凝集体の外径は4~300nmである。

【0042】
第1、第2の製造方法で用いるシリコンアルコキシド化合物は、その加水分解によりシリカを析出させることができるものであればよい。シリコンアルコキシド化合物としては、例えば、テトラエトキシシラン(以下、TEOSと記す)、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリブトキシシラン等を用いることができる。

【0043】
第1の製造方法では、コア表面にシリカをコーティングした後、コアである高分子電解質とアミン化合物と水の混合物が水に溶解してシリカ殻のみ残る。同様に、第2の製造方法では、コア表面にシリカをコーティングした後、コアである高分子電解質とアンモニアと水との混合物が水に溶解してシリカ殻のみ残る。本発明により得られるシリカ殻からなるナノ中空粒子は、球状の形態である。「球状」とは、完全な球状に限らず、楕円体形状や断面形状が歪な円形状も含めた形状をいう。

【0044】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
(実施例1~4、比較例1)
実施例1~4では、高分子電解質としてのPAAと下記の表1に示す各アミン化合物水溶液とを混合した混合物を、有機溶媒としての脱水したエタノールに撹拌しながら滴下混合して、エタノール中にコア粒子を生成させた。続いて、コア粒子が生成したエタノール中に、TEOSを2時間毎に添加して、室温(20℃)で所定時間反応させ、シリカコーティング粒子を製造した。その後、エタノールと反応残留物を除去した後、水を加えてコア粒子を溶解除去し、残留物を洗浄除去してシリカ殻からなる中空粒子を得た。なお、中空粒子は、中空粒子が水に分散した中空粒子水分散体として得られた。
【実施例】
【0046】
また、比較例1では、混合物として、PAAと濃度が25%であるアンモニア水溶液との混合物を用いて、コア粒子を生成させた。その他は、実施例1~4と同じ手順で、中空粒子を製造した。
【実施例】
【0047】
中空粒子が生成するために必要な反応時間は、次のように評価した。コア粒子/エタノール分散液にTEOSを2時間毎に添加し、所定時間経過後に当該分散液から遠心分離により固液分離し、エタノール、蒸留水を用いて洗浄、コア粒子の除去をした。コア粒子を除去した粒子をエタノールに分散させ、その分散液をマイクログリッドに滴下し、デシケーターにて乾燥させて電子顕微鏡用試料を作製し、観察を行い、中空構造を確認できた時間を、中空粒子を生成するために必要な反応時間とした。
【実施例】
【0048】
表1に、実施例1~4および比較例1の合成条件、反応時間を示す。なお、実施例4のみ、TEOSを24分毎に添加した。また、実施例1~4における表1中の蒸留水の欄は、アミン化合物水溶液の溶媒、すなわち、高分子電解質とアミン化合物と水の混合物中の水の量を示している。比較例1における表1中の蒸留水の欄は、アンモニア水の溶媒の量を示している。
【実施例】
【0049】
【表1】
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【実施例】
【0050】
比較例1では、中空粒子は確認できたが、反応時間が14時間と多く要した。これに対して、実施例1~4では、ナノ中空粒子の合成時間を4~6時間に短縮することができた。図3A、4A、5BA、それぞれ、実施例1、2、4で合成したナノ中空粒子の顕微鏡写真を載せる。また、図3B、4B、5Bに、それぞれ、図3A、4A、5A中の領域IIIB、領域IVB、領域VBの拡大図を示す。これらの拡大図では、各領域中の1つのナノ中空粒子を模式的に示している。図3A、4A、5Aに示す顕微鏡写真より、得られたナノ中空粒子の形状が球状であることを確認できる。
【実施例】
【0051】
(実施例5~15、比較例2、3)
実施例5~15、比較例2、3では、表2に示す各高分子電解質と、表2に示す各アミン化合物等と、蒸留水との混合物を用いて、実施例1~4と同様の方法を行った。そして、中空粒子の生成の有無を電子顕微鏡により確認した。その結果を表2に示す。
【実施例】
【0052】
【表2】
JP0006256930B2_000003t.gif
【実施例】
【0053】
表2中の略語は以下のように対応する。ポリアクリル酸:PAA、ポリメタクリル酸ナトリウム:PMANa、ポリアリルアミンハイドロクロライド:PAAH、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド:PDADMAC、ポリ(n-ビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレート)ジメチルサルフェート:PQ-11である。なお、他の表においても同様である。
【実施例】
【0054】
表2に示すように、実施例5~15では、中空粒子生成の反応時間はいずれも6時間以内であった。一方、比較例2、3では、長時間(14時間)の生成でも中空粒子は確認できなかった。
【実施例】
【0055】
本発明の第1、第2の製造方法では、高分子電解質とアミン化合物等と水との混合物をエタノール中に分散させてコアを形成する。その際、エタノール中に溶解する水分の量を制御することにより生成したシリカナノ中空粒子の殻に存在する細孔の大きさを制御することができる。
【実施例】
【0056】
すなわち、本発明の第1、第2の製造方法では、上記した第1工程において、所定量の水が予め添加された有機溶媒を用いることで、所望の細孔径を有するシリカナノ中空粒子が得られる。なお、ここでいう水は、混合物中の水とは別に、有機溶媒中に添加されるものである。下記の通り、有機溶媒中に添加される水の量とシリカ殻の細孔径の大きさとの間に所定の関係がある。そこで、この関係に基づいて、所望の細孔径を有するシリカナノ中空粒子が得られるように、有機溶媒に添加する水の量を設定すればよい。
【実施例】
【0057】
表3、4、5、6に、実施例16~24の合成条件、合成したシリカナノ中空粒子のシリカ殻の細孔径を示す。実施例16~24では、脱水したエタノールに所定量の蒸留水を添加し、このエタノールに各混合物を滴下混合した。その他は、実施例1~4と同じ手順で、中空粒子を製造した。シリカ殻の細孔径は乾燥状態のシリカナノ中空粒子をガス吸着法により求めた。
【実施例】
【0058】
【表3】
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【実施例】
【0059】
【表4】
JP0006256930B2_000005t.gif
【実施例】
【0060】
【表5】
JP0006256930B2_000006t.gif
【実施例】
【0061】
【表6】
JP0006256930B2_000007t.gif
【実施例】
【0062】
表6中のPAANaは、ポリアクリル酸ナトリウムである。
【実施例】
【0063】
実施例16~27を高分子電解質ごとに比べると、脱水エタノールに添加した蒸留水量の多い実施例18、実施例21、実施例24、および実施例27が他の実施例と比べてシリカ殻の細孔径は小さくなった。したがって、脱水エタノールに添加した蒸留水の量が多いほど、細孔径が小さくなるという関係がある。また、平均細孔径は、いずれの実施例も2.5nm以下であった。
【実施例】
【0064】
また、実施例16~27のシリカ殻からなる中空粒子は、平均粒子径はいずれも10~300nmであり、殻厚は3~30nmであった。平均粒子径および殻厚の測定は、透過型電子顕微鏡(TEM:JEOL JEM 2000 FX/日本電子(株))により、100,000倍の場合の1視野内の複数粒子を観察して行った。
【実施例】
【0065】
なお、図6A、7A、8A、9Aに、実施例18、実施例21、実施例24および実施例27で合成したナノ中空粒子の電子顕微鏡写真(SEM)を示す。また、図6B、7B、8B、9Bに、それぞれ、図6A、7A、8A、9A中の領域VIB、領域VIIB、領域VIIIB、領域IXBの拡大図を示す。これらの拡大図では、各領域中の1つのナノ中空粒子を模式的に示している。これらの図より、いずれのナノ中空粒子も形状が球状であることを確認できる。
【実施例】
【0066】
以上の説明の通り、実施例1~4、5~9と比較例1とを比較してわかるように、高分子電解質と、アミン化合物と、水との混合物をコアとすることにより、分子量が1×10よりも小さな高分子電解質とアンモニアと水の混合物をコアとする場合に比べて、シリカ殻の形成時間を短くすることができた。これは、高分子電解質にアミンを加えて架橋することにより、コアである高分子電解質の分子鎖の運動性が小さくなり、シリカ粒子がコーティングされやすくなったからであると推察する。
【実施例】
【0067】
また、実施例10~15と比較例1とを比較してわかるように、分子量が1×10よりも大きな高分子電解質とアンモニアと水の混合物をコアとすることにより、分子量が1×10よりも小さな高分子電解質とアンモニアと水の混合物をコアとする場合に比べて、シリカ殻の形成時間を短くすることができた。分子量が小さな高分子電解質を用いた場合の方が、シリカ殻の形成時間が長い理由は、分子量が小さいと分子運動性が高く、またコア(ハイドロゲル)が弱いため、分子レベルでもサブミクロンあるいはミクロンレベルでも表面が安定せず、シリカの析出効率が低下するからであると推察する。
【実施例】
【0068】
表7に、実施例1、2、10、12および比較例1の製造効率の算出結果を示す。この製造効率は、得られた中空粒子の質量からSi元素の質量に換算した換算値(中空粒子換算質量)と、投入したTEOSの質量からSi元素の質量に換算した換算値(TEOS換算質量)とを用いて、次式より算出した。
【実施例】
【0069】
製造効率(%)=(中空粒子換算質量)/(TEOS換算質量)×100
なお、この算出においては、実施例1、2、10、12では反応時間6時間後のデータを用い、比較例1では反応時間14時間後のデータを用いた。
【実施例】
【0070】
【表7】
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【実施例】
【0071】
表7より、実施例1、2、10、12の方が、比較例1よりも製造効率が高いことがわかる。このことから、本発明の第1、第2の製造方法は、非特許文献1のように、分子量が1×10よりも小さな高分子電解質とアンモニアと水の混合物をコアとする場合と比較して製造効率が高い点で、優れていると言える。
【実施例】
【0072】
さらに、実施例1、2の方が、実施例10、12よりも製造効率が高いことがわかる。このことから、本発明の第1の製造方法は、本発明の第2の製造方法と比較して製造効率が高い点で、より優れていると言える。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、シリカ殻からなるナノ中空粒子の製造に利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3A】
2
【図3B】
3
【図4A】
4
【図4B】
5
【図5A】
6
【図5B】
7
【図6A】
8
【図6B】
9
【図7A】
10
【図7B】
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【図8A】
12
【図8B】
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【図9A】
14
【図9B】
15