【0060】 また、核初期化物質(及びiPS細胞の誘導効率改善物質)との接触に際し、例えば、カチオニックリポソームなど導入試薬を用いる場合には、導入効率の低下を防ぐため、無血清培地に交換しておくことが好ましい場合がある。核初期化物質(及びiPS細胞の誘導効率改善物質)を接触させた後、細胞を、例えばES細胞の培養に適した条件化で培養することができる。ヒト細胞の場合、通常の培地に分化抑制因子として塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を添加して培養を行うことが好ましい。一方、マウス細胞の場合には、bFGFの代わりにLeukemia Inhibitory Factor(LIF)を添加することが望ましい。また通常、細胞は、フィーダー細胞として、放射線や抗生物質で処理して細胞分裂を停止させたマウス胎仔由来の線維芽細胞(MEF)の共存下で培養される。MEFとしては、通常STO細胞等がよく使われるが、iPS細胞の誘導には、SNL細胞(McMahon, A. P. & Bradley, A. Cell 62, 1073-1085(1990))等がよく使われている。
【0061】 iPS細胞の候補コロニーの選択は、薬剤耐性とレポーター活性を指標とする方法と目視による形態観察による方法とが挙げられる。前者としては、例えば、分化多能性細胞において特異的に高発現する遺伝子(例えば、OCT3/4遺伝子)の遺伝子座に、薬剤耐性遺伝子及び/又はレポーター遺伝子をターゲッティングした組換え細胞を用い、薬剤耐性及び/又はレポーター活性陽性のコロニーを選択するというものである。一方、目視による形態観察で候補コロニーを選択する方法としては、例えばTakahashi et al., Cell, 131, 861-872 (2007)に記載の方法が挙げられる。レポーター細胞を用いる方法は簡便で効率的ではあるが、iPS細胞がヒトの治療用途を目的として作製される場合、安全性の観点から目視によるコロニー選択が望ましい。核初期化物質としてDLX4遺伝子、OCT3/4遺伝子及びSOX2遺伝子の3因子を用いた場合、誘導クローン数は減少するものの、生じるコロニーのほとんどがES細胞と比較して遜色のない高品質のiPS細胞であることから、レポーター細胞を用いなくとも効率よくiPS細胞を誘導することが可能である。特に、本発明は3因子の導入によるiPS細胞の誘導効率を格段に改善させる作用効果を奏することから、目視による形態観察で十分効率よくiPS細胞の候補コロニーを選択することができる。