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明細書 :人工多能性幹細胞の作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6617231号 (P6617231)
登録日 令和元年11月22日(2019.11.22)
発行日 令和元年12月11日(2019.12.11)
発明の名称または考案の名称 人工多能性幹細胞の作製方法
国際特許分類 C12N  15/12        (2006.01)
C12N  15/85        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C12N 15/12 ZNA
C12N 15/85 Z
C12N 5/10
請求項の数または発明の数 13
全頁数 19
出願番号 特願2015-534283 (P2015-534283)
出願日 平成26年8月28日(2014.8.28)
国際出願番号 PCT/JP2014/072564
国際公開番号 WO2015/030111
国際公開日 平成27年3月5日(2015.3.5)
優先権出願番号 2013176647
優先日 平成25年8月28日(2013.8.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年7月10日(2017.7.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】手塚 建一
【氏名】玉置 也剛
【氏名】飯田 一規
【氏名】川口 知子
【氏名】青木 仁美
【氏名】▲国▼貞 隆弘
【氏名】柴田 敏之
【氏名】五島 直樹
個別代理人の代理人 【識別番号】110000110、【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
審査官 【審査官】木原 啓一郎
参考文献・文献 特表2011-529330(JP,A)
国際公開第2013/022022(WO,A1)
Nature,2011年 6月 9日,Vol. 474,p. 225-229, Supplementary Information
再生医療,2014年 1月27日,Vol. 13, Suppl.,p. 227,O-30-1
Scientific Reports,2014年12月 4日,Vol. 4,Article number 7283,URL,http://www.nature.com/srep/2014/141204/srep07283/full/srep07283.html
Oncogene,2011年,Vol. 30,p. 2718-2729
Cancer Research,2011年 9月,Vol. 71, No. 18 Supplement,Abstract number B15,URL,http://dx.doi.org/10.1158/1538-7445.FBCR11-B15
STEM CELLS AND DEVELOPMENT,2013年 2月 4日,Vol. 22, No. 12,p. 1763-1778
Genome Res.,2008年,Vol. 18,p. 1433-1445
BMC Biology,2007年10月26日,Vol. 5,Article number 47,URL,http://www.biomedcentral.com/1741-7007/5/47
調査した分野 C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
DLX4遺伝子又はその翻訳産物、OCTファミリー遺伝子又はその翻訳産物、SOXファミリー遺伝子又はその翻訳産物及びKLFファミリー遺伝子又はその翻訳産物を含む核初期化物質と細胞とを接触させる工程を含む、人工多能性幹細胞の作製方法。
【請求項2】
前記細胞は歯髄細胞である、請求項1に記載の作製方法。
【請求項3】
前記細胞は、歯根完成期前の歯髄細胞である、請求項2に記載の作製方法。
【請求項4】
前記OCTファミリー遺伝子はOCT3/4遺伝子である、請求項1~3のいずれかに記載の作製方法。
【請求項5】
前記SOXファミリー遺伝子はSOX2遺伝子である、請求項1~4のいずれかに記載の作製方法。
【請求項6】
前記KLFファミリー遺伝子は、KLF4遺伝子である、請求項1~5のいずれかに記載の作製方法。
【請求項7】
DLX4遺伝子又はその翻訳産物、OCTファミリー遺伝子又はその翻訳産物、SOXファミリー遺伝子又はその翻訳産物を含む核初期化物質と歯根完成期前の歯髄細胞とを接触させる工程を含む、人工多能性幹細胞の作製方法。
【請求項8】
前記OCTファミリー遺伝子はOCT3/4遺伝子である、及び/又は、前記SOXファミリー遺伝子はSOX2遺伝子である、請求項7に記載の作製方法。
【請求項9】
DLX4遺伝子又はその翻訳産物、OCTファミリー遺伝子又はその翻訳産物、SOXファミリー遺伝子又はその翻訳産物及びKLFファミリー遺伝子又はそのその翻訳産物を含む、人工多能性幹細胞を作製するための剤。
【請求項10】
DLX4遺伝子、OCTファミリー遺伝子、SOXファミリー遺伝子及びKLFファミリー遺伝子を保持する1又は2以上の組換えベクターを含むベクターセットを含む、人工多能性幹細胞を作製するための剤。
【請求項11】
DLX4遺伝子又はその翻訳産物、OCTファミリー遺伝子又はその翻訳産物及びSOXファミリー遺伝子又はその翻訳産物を含む、歯根完成期前の歯髄細胞から人工多能性幹細胞を作製するための剤。
【請求項12】
DLX4遺伝子、OCTファミリー遺伝子及びSOXファミリー遺伝子を保持する1又は2以上の組換えベクターを含むベクターセットを含む、歯根完成期前の歯髄細胞から人工多能性幹細胞を作製するための剤。
【請求項13】
前記1又は2以上の組換えベクターは、さらに、KLFファミリー遺伝子を保持する、請求項12に記載の剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年8月28日に出願された日本国特許出願である特願2013-176647の関連出願であり、この日本出願に基づく優先権を主張するものであり、この日本出願に記載された全ての内容を参照に組み込まれたものとするものである。
本明細書は、人工多能性幹細胞の作製に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、体細胞に、核初期化物質として4因子(OCT3/4遺伝子、SOX2遺伝子、KLF4遺伝子、及び、c-MYC遺伝子)を導入し、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製することが知られている。しかしながら、4因子のうち、例えば、c-MYC遺伝子は、腫瘍形成のリスクとなり得るため、利用しないことが望まれる。即ち、核初期化物質の組み合わせを検討することが求められている。
【0003】
特許文献1では、歯髄幹細胞に、核初期化物質として3因子(OCT3/4遺伝子、SOX2遺伝子、及び、KLF4遺伝子)を接触させ、iPS細胞を作製している。また、非特許文献1では、体細胞に、核初期化物質として4因子(OCT3/4遺伝子、SOX2遺伝子、KLF4遺伝子、及び、Glis1遺伝子)を導入し、iPS細胞を作製している。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2010/013359号
【0005】

【非特許文献1】Momoko Maekawaら, Nature, vol. 474, 225-229
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、新規の組み合わせの核初期化物質を利用することによる、誘導効率のよいiPS細胞の作製方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ある種のDPC(Dental Pulp Cell、歯髄細胞)に核初期化物質として3因子(OCT3/4遺伝子、SOX2遺伝子、及び、KLF4遺伝子)を接触させるとiPS細胞の誘導率が高くなることを見出した。さらに、本発明者らは、当該DPCにDLX4遺伝子が多く発現していることを見出した。そこで、本発明者らは、DLX4遺伝子を含む核初期化物質を利用して、iPS細胞を作製したところ、効率良くiPS細胞を得ることができた。即ち、本明細書の開示は、本発明者らが、DLX4遺伝子を含む核初期化物質を利用して、iPS細胞を作製し、誘導効率を評価したことに基づくものである。
【0008】
(1)少なくともDLX4遺伝子又はその翻訳産物を含む核初期化物質と細胞とを接触させる工程を含む、人工多能性幹細胞の作製方法。
(2)前記核初期化物質は、さらに、OCTファミリー遺伝子又はその翻訳産物と、SOXファミリー遺伝子又はその翻訳産物と、を含む、(1)に記載の作製方法。
(3)前記核初期化物質は、さらに、KLF4ファミリー遺伝子又はその翻訳産物を含む(1)又は(2)に記載の作製方法。
(4)前記細胞は、歯髄細胞である(1)から(3)のいずれかに記載の作製方法。
(5)前記歯髄細胞は、歯根完成期前の歯髄細胞である(4)に記載の作製方法。
(6)DLX4遺伝子、OCT3/4遺伝子及びSOX2遺伝子を保持する、1又は2以上の組換えベクターを含むベクターセット。
(7)(6)に記載のベクターセットを含む人工多能性幹細胞作製剤。
(8)(6)に記載のベクターセットにより作製されたiPS細胞。
(9)歯根完成期前の歯髄細胞を含む人工多能性幹細胞を作製するための剤。
(10)DLX4遺伝子を含む人工多能性幹細胞作製剤。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】各DPCにおける相対リプログラミング効率を示す。
【図2】各DPCにおけるDLX4遺伝子の相対発現量の結果を示す。
【図3】pMXs-GWレトロウイルスベクターのベクターマップを示す。
【図4】各遺伝子が導入されたDP31においてカウントされたES細胞様コロニーの数を示す。
【図5】各遺伝子が導入されたHDFにおいてカウントされたES細胞様コロニーの数を示す。
【図6】DP31及びDP31-siRNA—DLX4でのDLX4遺伝子の相対発現量を示す。
【図7】DP31及びDP31-siRNA—DLX4でのiPS細胞の相対誘導効率を示す。
【図8】各遺伝子が導入されたDP31におけるES細胞様コロニーの数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書は、DLX4遺伝子又はその翻訳産物を用いたiPS細胞の作製に関する。DLX4遺伝子の体細胞における発現が体細胞からのiPS細胞誘導に寄与することは、これまで知られていなかった。本明細書の開示によれば、誘導効率よくiPS細胞を作製することができる。また、DLX4遺伝子の発現が促進されている体細胞がiPS細胞の誘導に適している。こうした体細胞の利用により、さらに誘導効率よくiPS細胞を作製することができる。

【0011】
以下、本明細書の開示に関し、核初期化物質、DLX4遺伝子、組換えベクター、ベクターセット、細胞、DPC、iPS細胞作製剤、iPS細胞の作製方法等について順次詳細に説明する。

【0012】
(核初期化物質)
本明細書では、核初期化物質を開示する。核初期化物質は、体細胞の核を初期化して多能性を誘導する物質である。

【0013】
以下、本開示の代表的かつ非限定的な具体例について、適宜図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された人工多能性幹細胞の作製方法を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。

【0014】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本開示を実施する際に必須のものではなく、特に本開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。

【0015】
本明細書及び/又はクレームに記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。

【0016】
(DLX4遺伝子)
本明細書で開示する核初期化物質は、少なくともDLX4遺伝子を含む。DLX4遺伝子は、iPS細胞の誘導効率を効果的に高めることができる。より具体的には、SOX2遺伝子を含むSOXファミリーに属する遺伝子、OCT3/4遺伝子を含むOCTファミリーに属する遺伝子との組合せにより、iPS細胞の誘導効率を確実かつ飛躍的に高めることができる。さらに、DLX4遺伝子は、特にKLF4遺伝子などのKLFファミリーに属する遺伝子との相乗効果により、一層iPS細胞の誘導効率を高めることができる。

【0017】
DLX4遺伝子は、歯髄細胞、なかでも、歯根完成期前の歯髄細胞においてその発現が促進されている。このため、後述するように歯髄細胞、特には歯根完成期前の歯髄細胞を対象細胞とすることにより、一層効果的に、DLX4遺伝子によるiPS細胞の誘導効率を高めることができる。

【0018】
DLX4遺伝子としては、例えば、ヒト由来DLX4遺伝子を用いることができる。ヒト由来DLX4遺伝子としては、配列番号1で表される塩基配列を有するDNAを用いることができる。以下、マウス由来DLX4遺伝子としては、配列番号3で表される塩基配列を有するDNAを用いることができる。DLX4遺伝子の翻訳産物であるDLX4タンパク質(Distal-less homeobox 4、BP1と呼ばれる場合もある)は、ホメオドメインを有する転写因子であり、β-globin遺伝子の転写を抑制することが知られている(Mol. Cell. Biol. 22, 2505-2514, 2002)。なお、DLX遺伝子のファミリーとして、DLX1遺伝子~DLX7遺伝子が知られている。本明細書に開示する技術においては、DLX4遺伝子だけではなく、これらの遺伝子ファミリーを、DLX4遺伝子と同様の機能を有しうる限りにおいて単独であるいは組み合わせて利用し得る。

【0019】
また、核初期化物質は、さらに、OCTファミリーに属する遺伝子、SOXファミリーに属する遺伝子を含むことができる。さらに、KLFファミリーに属する遺伝子を含むこともできる。核初期化物質として、さらに他の遺伝子を含んでいてもよい。なお、以下では、核初期化物質である複数の遺伝子を単に各遺伝子と呼ぶことがある。なお、本明細書において遺伝子というとき、当該遺伝子の翻訳産物であるタンパク質をコードする核酸(好ましくはDNA)を意図している。細胞への導入の容易さを考慮すると、核初期化物質は、その翻訳産物であるタンパク質自体としてよりも、それをコードする遺伝子の形態で用いることが好ましい。

【0020】
(OCTファミリー遺伝子)
OCTファミリーとしては、OCT3/4遺伝子、OCT1A遺伝子及びOCT6遺伝子等が挙げられる。これらのOCTファミリーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。OCTファミリーの中では、iPS細胞への効率的な誘導という観点から、OCT3/4遺伝子が好適に使用される。OCT3/4の塩基配列は、公知(NCBI accession No.NM_002701(human)、NM_013633(Mouse))である。また、OCT1A遺伝子の塩基配列(NCBI accession No.NM_002697(human)、NM_198934(Mouse))、OCT6遺伝子の塩基配列(NCBI accession No.NM_002699(human)、NM_011141(Mouse))についても公知である。

【0021】
(SOX2ファミリー)
SOXファミリーとしては、SOX1遺伝子、SOX2遺伝子、SOX3遺伝子、SOX7遺伝子、SOX15遺伝子、SOX17遺伝子及びSOX18遺伝子が挙げられる。これらのSOXファミリーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。SOXファミリーの中では、iPS細胞への効率的な誘導という観点から、SOX2遺伝子が好適に使用される。SOX2遺伝子の塩基配列は、公知(NCBI accession No. NM_003106(human)、NM_011443(Mouse))である。また、SOX1遺伝子の塩基配列(NCBI accession No. NM_005986(human)、NM_009233(Mouse))、SOX3遺伝子の塩基配列(NCBI accession No. NM_005634(human)、NM_009237(Mouse))、SOX7遺伝子の塩基配列(NCBI accession No. NM_031439(human)、NM_011446(Mouse))、SOX15遺伝子の塩基配列(NCBI accession No. NM_006942(human)、NM_009235(Mouse))、SOX17遺伝子の塩基配列(NCBI accession No. NM_022454(human)、NM_011441(Mouse))、SOX18遺伝子の塩基配列(NCBI accession No. NM_018419(human)、NM_009236(Mouse))についても公知である。

【0022】
(KLFファミリー)
核初期化物質としては、さらに、KLFファミリーに属する遺伝子を含むこともできる。KLFファミリーとしては、KLF1遺伝子、KLF2遺伝子、KLF4遺伝子及びKLF5遺伝子等が挙げられる。これらのKLFファミリーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。KLFファミリーの中では、iPS細胞への効率的な誘導という観点から、KLF4遺伝子が好適に使用される。KLF4遺伝子の塩基配列は公知(NCBI accession No. NM_004235(human)、NM_010637(Mouse))である。また、KLF1遺伝子の塩基配列(NCBI accession No. NM_006563(human)、NM_010635(Mouse))、KLF2遺伝子の塩基配列(NCBI accessionNo. NM_016270(human)、NM_008452(Mouse))、及びKLF5遺伝子の塩基配列(NCBIaccession No. NM_001730(human)、NM_009769(Mouse))についても公知である。

【0023】
核初期化物質としては、DLX4遺伝子のほか、OCT3/4遺伝子などのOCTファミリー遺伝子及びSOX2遺伝子などのSOXファミリー遺伝子を組み合わせて用いることが好ましい。より好ましくは、さらに、KLF4遺伝子などのKLFファミリー遺伝子を組み合わせる。こうした組合せであると、iPS細胞をヒト等の治療用途に用いるのに適している。一方、iPS細胞を治療用途に用いることを念頭に置かない場合(例えば、創薬スクリーニング等の研究ツールとして用いる場合など)は、DLX4遺伝子のほか、OCT3/4遺伝子などのOCTファミリー遺伝子及びSOX2遺伝子などのSOXファミリー遺伝子、KLF4遺伝子などのKLFファミリー遺伝子に加えてLin28などのLINファミリー遺伝子を用いることが好ましい。さらに、Nanog遺伝子を加えた6因子とすることも好ましい。

【0024】
Nanog遺伝子のマウス及びヒトcDNA配列情報は、WO2007/069666に記載のNCBI accession No.を参照することにより取得することができ(Nanog遺伝子は当該公報中では「ECAT4」との名称で記載されている。なお、Lin28遺伝子のマウス及びヒトcDNA配列情報は、それぞれNCBI accession No. NM_145833及びNM_024674を参照することにより取得できる。)、当業者は容易にこれらのcDNAを単離することができる。

【0025】
上記した各遺伝子には、これらの相同遺伝子が含まれる。ここで、相同遺伝子とは、遺伝子がコードするタンパク質と同一の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子を意味している。こうした遺伝子は、通常、上記各遺伝子の塩基配列に対して、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは91%以上、さらにまた好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上、さらにまた好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらにまた好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性の塩基配列からなるDNAを有している。

【0026】
相同遺伝子がコードするタンパク質は、上記遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは91%以上、さらにまた好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上、さらにまた好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらにまた好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるペプチド鎖を有している。また、各遺伝子は、細胞に対して、異種の遺伝子であってもよいし、同種の遺伝子であってもよい。当業者であれば、必要な動物種の上記遺伝子をデータベースを検索することにより取得することができる。

【0027】
本明細書において塩基配列又はアミノ酸配列の同一性又は類似性とは、当該技術分野で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2種以上のタンパク質あるいは2種以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で“同一性 ”とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列不変性の程度を意味する。また、類似性とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きの部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の相関性の程度を意味する。より具体的には、配列の同一性と保存性(配列中の特定アミノ酸又は配列における物理化学特性を維持する置換)によって決定される。なお、類似性は、後述するBLASTの配列相同性検索結果においてSimilarity と称される。同一性及び類似性を決定する方法は、対比する配列間で最も長くアラインメントするように設計される方法であることが好ましい。同一性及び類似性を決定するための方法は、公衆に利用可能なプログラムとして提供されている。例えば、AltschulらによるBLAST (Basic Local Alignment Search Tool) プログラム(たとえば、Altschul SF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990), Altschyl SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acids Res. 25: p3389-3402 (1997))を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合の条件は、特に限定するものではないが、デフォルト値を用いるのが好ましい。

【0028】
ストリンジェントな条件とは、たとえば、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、塩基配列の同一性が高い核酸、すなわち、所定の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、より一層好ましくは98%以上、さらに一層好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA又はその一部の相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム塩濃度が15~750mM、好ましくは50~750mM、より好ましくは300~750mM、温度が25~70℃、好ましくは50~70℃、より好ましくは55~65℃、ホルムアミド濃度が0~50%、好ましくは20~50%、より好ましくは35~45%での条件をいう。さらに、ストリンジェントな条件では、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄条件が、通常はナトリウム塩濃度が15~600mM、好ましくは50~600mM、より好ましくは300~600mM、温度が50~70℃、好ましくは55~70℃、より好ましくは60~65℃である。なお、以上のことから、さらなる他の一態様として、所定の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、より一層好ましくは98%以上、さらに一層好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を有する。

【0029】
核初期化物質の他の一態様として、DLX4遺伝子の翻訳産物、OCT3/4遺伝子などのOCTファミリーに属する遺伝子の翻訳産物及びSOX2遺伝子などのSOXファミリーに属する遺伝子の翻訳産物が挙げられる。さらに、KLF4遺伝子などのKLFファミリーに属する遺伝子の翻訳産物が挙げられる。ここで、遺伝子の翻訳産物とはタンパク質を意図している。

【0030】
例えば、DLX4タンパク質としては、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するヒト由来DLX4タンパク質を用いることができる。また、マウス由来DLX4タンパク質としては、配列番号4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質を用いることができる。

【0031】
核初期化物質としては、上記した各遺伝子の翻訳産物と機能的同等である他のタンパク質であってもよい。通常、機能的同等のタンパク質は、特定タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは91%以上、さらにまた好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上、さらにまた好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらにまた好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸からなるペプチド鎖を有している。

【0032】
機能的同等のタンパク質には、野生型の分化多能性誘導能よりも優れた能力を発揮するものも含まれる。このようなより優れた能力を発揮するタンパク質は、野生型のタンパク質のアミノ酸配列中に欠失、置換若しくは付加などの改変を、当該技術分野で公知の手法により導入することで調製することが可能である。改変は、例えば、特定のアミノ酸残基の置換は、市販のキット(例えば、MutanTM-G(TaKaRa社)、MutanTM-K(TaKaRa社))等を使用し、Gapped duplex法やKunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法により、分化多能性因子の遺伝子に適当な塩基置換を導入して行うことができる。

【0033】
また、核初期化物質は、遺伝子のみを使用してもよいし、遺伝子の翻訳産物のみを使用してもよいが、遺伝子と遺伝子の翻訳産物とを適宜組み合わせたものであってもよい。

【0034】
核初期化物質としてタンパク質自体を用いる場合には、単離したcDNAを適当な発現ベクターに挿入して宿主細胞に導入し、該細胞を培養して得られる培養物から組み換えタンパク質を回収することにより調製することができる。

【0035】
(iPS細胞の誘導効率改善物質)
本明細書においては、上記した核初期化物質に加えて、公知の誘導効率改善物質を用いてもよい。iPS細胞の誘導効率改善物質としては、例えば、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤[例えば、バルプロ酸(VPA)(Nat. Biotechnol., 26(7): 795-797 (2008))、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、MC 1293、M344等の低分子阻害剤、HDACに対するsiRNAおよびshRNA(例、HDAC1 siRNA Smartpool(登録商標)(Millipore)、HuSH 29mer shRNA Constructs against HDAC1(OriGene)等)等の核酸性発現阻害剤など]、G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤[例えば、BIX-01294(Cell Stem Cell, 2: 525-528 (2008))等の低分子阻害剤、G9aに対するsiRNAおよびshRNA(例、G9a siRNA(human)(Santa Cruz Biotechnology)等)等の核酸性発現阻害剤など]等が挙げられるが、それらに限定されない。核酸性の発現阻害剤はsiRNAもしくはshRNAをコードするDNAを含む発現ベクターの形態であってもよい。

【0036】
iPS細胞の誘導効率改善物質の細胞への接触は、該物質が(a)タンパク性因子である場合、(b)該タンパク性因子をコードする核酸である場合、あるいは(c)低分子化合物である場合に応じて、核初期化物質についてそれぞれ上記したと同様の方法により、実施することができる。

【0037】
(組換えベクター)
核初期化物質である各遺伝子及び誘導効率改善物質を細胞に供給するためには、組換えベクターが利用される。各遺伝子は、宿主となる細胞で機能し得るプロモーターを含む適当なベクターに導入される。ベクターとしては、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、EBウイルスベクター、パピローマウイルスベクター、フォーミーウイルスベクターなどのウイルスベクター、動物細胞発現プラスミド(例、pA1-11,pXT1,pRc/CMV,pRc/RSV,pcDNAI/Neo)などが用いられ得る。用いるベクターの種類は、得られるiPS細胞の用途に応じて適宜選択することができる。なお、各遺伝子は、1のベクターに全て導入されてもよいし、2以上のベクターに別々に導入されてもよい。

【0038】
ベクターにおいて使用されるプロモーターとしては、例えばSRα プロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス) LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなどが用いられる。なかでも、MoMuLV LTR、CMVプロモーター、SRα プロモーターなどが好ましい。ベクターは、プロモーターの他に、所望によりエンハンサー、ポリA付加シグナル、選択マーカー遺伝子、SV40複製起点などを含有していてもよい。選択マーカー遺伝子としては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。

【0039】
ベクターにおいて使用されるターミネーターは、転写終結配列としてのポリA化シグナルである。特に限定されないが、ポリA化シグナル配列として、ヒトBGHポリA、SV40ポリA、ヒトβアクチンポリA、ウサギβグロブリンポリA及び免疫グロブリンκポリAが例示される。

【0040】
(ベクターセット)
上述したように、各遺伝子は、1又は2以上のベクターに導入される。本明細書は、各遺伝子が導入された1又は2以上の組換えベクターを含むベクターセットも開示する。即ち、ベクターセットは、1の組換えベクターでもよいし、2以上の組換えベクターの混合物であってもよい。また、2以上の組換えベクターを含むベクターセットの場合において、ベクターセット内に各遺伝子が全て含まれるのであれば、各組換えベクターの数の比率は問わない。しかし、各遺伝子が同量含まれるような、組換えベクターの数の比率とすることが好ましい。

【0041】
(細胞)
本明細書においてiPS細胞作製のための出発材料として用いることのできる体細胞は、哺乳動物(例えば、マウスまたはヒト)由来の生殖細胞以外のいかなる細胞であってもよい。例えば、角質化する上皮細胞(例、角質化表皮細胞)、粘膜上皮細胞(例、舌表層の上皮細胞)、外分泌腺上皮細胞(例、乳腺細胞)、ホルモン分泌細胞(例、副腎髄質細胞)、代謝・貯蔵用の細胞(例、肝細胞)、境界面を構成する内腔上皮細胞(例、I型肺胞細胞)、内鎖管の内腔上皮細胞(例、血管内皮細胞)、運搬能をもつ繊毛のある細胞(例、気道上皮細胞)、細胞外マトリックス分泌用細胞(例、線維芽細胞)、収縮性細胞(例、平滑筋細胞)、血液と免疫系の細胞(例、Tリンパ球)、感覚に関する細胞(例、桿細胞)、自律神経系ニューロン(例、コリン作動性ニューロン)、感覚器と末梢ニューロンの支持細胞(例、随伴細胞)、中枢神経系の神経細胞とグリア細胞(例、星状グリア細胞)、色素細胞(例、網膜色素上皮細胞)、およびそれらの前駆細胞(組織前駆細胞)等が挙げられる。細胞の分化の程度に特に制限はなく、未分化な前駆細胞(体性幹細胞も含む)であっても、最終分化した成熟細胞であっても、同様に本発明における体細胞の起源として使用することができる。ここで未分化な前駆細胞としては、たとえば神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)が挙げられる。なお、細胞としては、好ましくは、DLX4遺伝子の発現量の多い細胞が利用される。DLX4遺伝子の発現量が多い細胞の例として、DPCが挙げられる。特に歯根完成期前のDPCが挙げられる。

【0042】
本明細書で利用される細胞は、当該細胞に核初期化物質を接触させることによりiPS細胞を誘導することができるいかなる動物種(哺乳動物を含む)由来のものであってもよい。具体的にはヒトおよびマウス由来等のものが挙げられるが、好ましくはヒト由来の細胞である。細胞は任意の動物種から採取することができるが、得られるiPS細胞がヒトの再生医療用途に使用される場合には、拒絶反応が起こらないという観点から、本人またはHLAの型が同一である他人から細胞を採取することが特に好ましい。また、ヒトに投与(移植)しない場合でも、例えば、患者の薬剤感受性や副作用の有無を評価するためのスクリーニング用の細胞のソースとしてiPS細胞を使用する場合には、患者本人または薬剤感受性や副作用と相関する遺伝子多型が同一である他人から細胞を採取する必要がある。

【0043】
(DPC(Dental Pulp Cell、歯髄細胞))
DPCとは、歯の中核にみられる血管と神経に富んだ結合組織の細胞群である。本発明において、DPCとは、このような生体内での解剖学的な位置で特定される細胞群を意味する。

【0044】
以下では、主にヒト由来のDPCの入手方法について説明する。

【0045】
DPCは、当業界で既知の方法によって採取することができる。特に、歯の治療に伴う抜歯により得られた歯、又は抜歯の際に歯と共に歯肉から分離されたものに由来することが好ましい。多くの場合、抜歯は歯における異常/問題が原因で行われるため、抜歯に伴い入手可能な歯髄細胞自体は、細胞の有する特性をそのまま保持している。このため、このような歯髄細胞を使用することが有利である。

【0046】
DPCとしては、若年者(個体差があるが、およそ16歳以下)のDPCを利用することが好ましい。智歯は、12~16歳で矯正目的にて抜歯することがあり、このような細胞の入手方法を採用することによって、従来、廃棄物として処理されていた歯髄細胞を有効に利用することができる。また、細胞の入手を目的としての「追加の処置」を伴うことなく所望の細胞を得ることができる。

【0047】
なお、回収された歯関連細胞に、例えば結合組織やデブリスなどが含まれている場合には、適当な酵素、例えばディスパーゼ、トリプシンなどや、ナイロンメッシュなどを用いて除去することができる。

【0048】
DPCの成長段階は、歯冠完成期、歯根形成期及び歯根完成期が含まれる。本明細書においては、歯根完成期前のDPCを利用することが好ましい。歯冠とは、口腔内で実際に歯肉から萌出している部分であり、最表面がエナメル質、その内側が象牙質となっている。歯根とは、歯肉に埋まっている部分であり、最表面がセメント質、その内側が象牙質となっている。歯冠完成期は、エナメル質、象牙質等の硬組織が形成されている段階であり、歯根形成期は、セメント質が形成されている段階、即ち、歯根が形成されている段階であり、歯根完成期は、歯根が完成されている段階である。これらの成長段階は、例えば、X線写真を撮影することによって区別することができる。

【0049】
また、好ましいDPCは、DLX4遺伝子の発現量からも区別することができる。例えば、同種の皮膚線維芽細胞と同条件で培養したときのDPCによるDLX4遺伝子の発現量が皮膚線維芽細胞の同発現量に対して200倍以上であることが好ましく、より好ましくは300倍以上であり、さらに好ましくは500倍以上であり、より一層好ましくは800倍以上であり、一層好ましくは1000倍以上である。また同種のES細胞と同条件で培養したときのDPCによるDLX4遺伝子の発現量がES細胞の同発現量に対し50%以上200%以下であることも好ましい。なお、こうした培養条件は、後述する実施例における培養条件を採用することができる。

【0050】
上述したように、DPCは、比較的、例えば、DLX4遺伝子の発現量が多いことを特徴とする。特に、歯根完成期前(即ち歯冠完成期又は歯根形成期)のDPCは、歯根完成期のDPCよりもDLX4遺伝子の発現量が多く、各遺伝子を導入する細胞として好ましく利用される。歯根完成期前のDPCは、若年者(およそ16歳以下)から採取可能である。DPC由来(即ち内在性)のDLX4遺伝子を利用すると、外来性のDLX4遺伝子のみを利用する場合に比べて、iPS細胞の誘導効率を高めることができる。

【0051】
抜歯もしくは自然脱落した歯から、上述の方法により調製した歯髄細胞は、直ぐに核初期化物質と接触させてiPS細胞を誘導してもよいし、あるいは常法により凍結保存し、用時融解して培養した後に核初期化物質と接触させて、iPS細胞を誘導することもできる。従って、例えば、自身の乳歯や比較的若い時期に抜歯した永久歯もしくは智歯から調製した歯髄細胞を長期間凍結保存しておき、後年細胞・臓器移植が必要となった際に、該歯髄細胞からiPS細胞を誘導し、そこから分化誘導して得られた細胞、組織、臓器等を自家移植するということも可能である。

【0052】
歯髄細胞は、矯正手術により抜歯した歯・智歯、また虫歯、歯周病、智歯周囲炎等により抜いた歯・智歯などから調製することができるため、多数の人の歯髄細胞を容易に収集することができる。

【0053】
(iPS細胞作製剤)
本明細書では、上記のベクターセットを含むiPS細胞作製剤、歯根完成期前の歯髄細胞を含むiPS細胞を作製するための剤、及び、DLX4遺伝子を含むiPS細胞作製剤も開示する。また、これらのiPS細胞作製剤を組み合わせて、iPS細胞作製剤としてもよい。

【0054】
(iPS細胞の作製方法)
本明細書は、iPS細胞の作製方法も提供する。当該作製方法は、核初期化物質と細胞とを接触させる工程を含む。

【0055】
(核初期化物質と細胞とを接触させる工程)
核初期化物質と細胞とを接触させる工程では、核初期化物質を細胞に接触させることにより、核初期化物質が細胞に導入された状態にすることができる。その結果、iPS細胞を誘導することができる。当該工程において、核初期化物質が遺伝子の場合には、各遺伝子をベクターに組み込み、当該ベクターを直接あるいはウイルスを介して細胞に導入することができる。一方において、核初期化物質がタンパク質の場合には、公知のタンパク質導入法により、当該タンパク質を細胞に導入することができる。核初期化物質を細胞に接触させる方法について、以下で詳細に説明する。

【0056】
(細胞へのベクターの接触)
核初期化物質である遺伝子を含むベクターは、ベクターの種類に応じて、自体公知の手法により細胞と接触させることで細胞に導入することができる。例えば、ウイルスベクターの場合、当該核酸を含むプラスミドを適当なパッケージング細胞(例、Plat-E細胞)や相補細胞株(例、293細胞)に導入して、培養上清中に産生されるウイルスベクターを回収し、各ウイルスベクターに応じた適切な方法により、ベクターを細胞に感染させる。一方、プラスミドベクターの場合には、リポフェクション法、リポソーム法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム共沈殿法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、遺伝子銃法などを用いて該ベクターを細胞に導入することができる。

【0057】
(核初期化物質であるタンパク質の細胞への接触)
核初期化物質の細胞への接触は、当該物質がタンパク質である場合、自体公知の細胞へのタンパク質導入方法を用いて実施することができる。そのような方法としては、例えば、タンパク質導入試薬を用いる方法、タンパク質導入ドメイン(PTD)融合タンパク質を用いる方法、マイクロインジェクション法などが挙げられる。タンパク質導入試薬としては、カチオン性脂質をベースとしたBioPOTER Protein Delivery Reagent(GeneTherapy Systmes)、Pro-JectT M Protein Transfection Reagent(PIERCE)及びProVectin(IMGENEX)、脂質をベースとしたProfect-1(Targeting Systems)、膜透過性ペプチドをベースとしたPenetrain Peptide(Q biogene)及びChariot Kit(Active Motif)等が市販されている。導入はこれらの試薬に添付のプロトコルに従って行うことができるが、一般的な手順は以下の通りである。核初期化物質を適当な溶媒(例えば、PBS、HEPES等の緩衝液)に希釈し、導入試薬を加えて室温で5-15分程度インキュベートして複合体を形成させ、これを無血清培地に交換した細胞に添加して37℃で1ないし数時間インキュベートする。その後培地を除去して血清含有培地に交換する。

【0058】
なお、PTDとしては、ショウジョウバエ由来のAntP、HIV由来のTAT、HSV由来のVP22等のタンパク質の細胞通過ドメインを用いたものが開発されている。

【0059】
なお、細胞は、その培養に適した自体公知の培地(例えば、特表平11-506610号公報、特表2000-515023号公報参照。例えばMesenchymal stem cells basal medium(Lonza社)、MesenPRO RS Medium(GIBCO)等が市販されている)で前培養することができる。また、例えば約5~20%の胎仔ウシ血清を含む最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地またはF12培地等で前培養することも可能である。

【0060】
また、核初期化物質(及びiPS細胞の誘導効率改善物質)との接触に際し、例えば、カチオニックリポソームなど導入試薬を用いる場合には、導入効率の低下を防ぐため、無血清培地に交換しておくことが好ましい場合がある。核初期化物質(及びiPS細胞の誘導効率改善物質)を接触させた後、細胞を、例えばES細胞の培養に適した条件化で培養することができる。ヒト細胞の場合、通常の培地に分化抑制因子として塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を添加して培養を行うことが好ましい。一方、マウス細胞の場合には、bFGFの代わりにLeukemia Inhibitory Factor(LIF)を添加することが望ましい。また通常、細胞は、フィーダー細胞として、放射線や抗生物質で処理して細胞分裂を停止させたマウス胎仔由来の線維芽細胞(MEF)の共存下で培養される。MEFとしては、通常STO細胞等がよく使われるが、iPS細胞の誘導には、SNL細胞(McMahon, A. P. & Bradley, A. Cell 62, 1073-1085(1990))等がよく使われている。

【0061】
iPS細胞の候補コロニーの選択は、薬剤耐性とレポーター活性を指標とする方法と目視による形態観察による方法とが挙げられる。前者としては、例えば、分化多能性細胞において特異的に高発現する遺伝子(例えば、OCT3/4遺伝子)の遺伝子座に、薬剤耐性遺伝子及び/又はレポーター遺伝子をターゲッティングした組換え細胞を用い、薬剤耐性及び/又はレポーター活性陽性のコロニーを選択するというものである。一方、目視による形態観察で候補コロニーを選択する方法としては、例えばTakahashi et al., Cell, 131, 861-872 (2007)に記載の方法が挙げられる。レポーター細胞を用いる方法は簡便で効率的ではあるが、iPS細胞がヒトの治療用途を目的として作製される場合、安全性の観点から目視によるコロニー選択が望ましい。核初期化物質としてDLX4遺伝子、OCT3/4遺伝子及びSOX2遺伝子の3因子を用いた場合、誘導クローン数は減少するものの、生じるコロニーのほとんどがES細胞と比較して遜色のない高品質のiPS細胞であることから、レポーター細胞を用いなくとも効率よくiPS細胞を誘導することが可能である。特に、本発明は3因子の導入によるiPS細胞の誘導効率を格段に改善させる作用効果を奏することから、目視による形態観察で十分効率よくiPS細胞の候補コロニーを選択することができる。

【0062】
選択されたコロニーの細胞がiPS細胞であることの確認は、自体公知の種々の試験方法、例えばES細胞特異的遺伝子の発現解析などにより行うことができる。さらに正確を期す場合は、選択された細胞をマウスに移植してテラトーマ形成を確認すればよい。

【0063】
核初期化物質と細胞とを接触させる工程を経て、作製されたiPS細胞は、種々の目的で使用することができる。例えば、ES細胞で報告されている分化誘導法を利用して、iPS細胞から種々の細胞(例、心筋細胞、網膜細胞、血液細胞、神経細胞、血管内皮細胞、インスリン分泌細胞等)・組織・臓器への分化を誘導することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0065】
(各種DPC株におけるiPS細胞の誘導効率の評価)
種々のDPCの誘導効率を判断するために、OCT3/4遺伝子、SOX2遺伝子、KLF4遺伝子及びc-MYC遺伝子の4種類を,9種類のDPC株(DP1,DP31,DP75,DP87,DP94,DP133,DP165,DP166,DP193)のそれぞれに導入し、iPS細胞を作製した。iPS細胞の作製は以下のようにして行った。
【実施例1】
【0066】
14~60歳のヒトの抜歯した歯から歯髄細胞を調製した(DP1,DP31,DP75,DP87,DP94,DP133,DP165,DP166,DP193)。具体的には、矯正または智歯周囲炎の患者から抜歯した智歯より歯髄組織を摘出し、眼科クーパーにて約1~2mm大の組織片に刻んだ後、Collagenase type I(1mg/ml)で37℃、0.5~1時間処理をした。これをMesenchymal stem cells basal medium(Lonza社製)中で、培養することにより歯髄細胞のセルラインを樹立した。
【実施例1】
【0067】
これらの細胞(8×105個)に対して、Cell, 131, 861-872 (2007) に記載の方法に従い、レンチウイルスを用いて、マウスエコトロピックウイルスレセプターSlc7a1遺伝子を発現させた。
【実施例1】
【0068】
これらの細胞に対して、Cell, 131, 861-872 (2007) に記載の方法に従い、ヒト由来の4因子 (Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc) を、ポリブレン(ヘキサジメチリンブロマイド)4μg/mlの存在下、レトロウイルスで導入した。ウイルス感染から6日後に細胞を回収し、フィーダー細胞上への蒔き直しを行った(5 x 104個または 5 x 105個/100 mmディッシュ)。フィーダー細胞にはマイトマイシンCで処理して、細胞分裂を止めたSNL細胞(McMahon, A. P. & Bradley, A. Cell 62, 1073-1085 (1990))を用いた。翌日から霊長類ES細胞培養用培地(ReproCELL) に4 ng/mlのリコンビナントヒトbFGF(WAKO)を加えた培地で培養を行った。
【実施例1】
【0069】
ウイルス感染から21日後、感染した5×104個のDPCから得られたES細胞様コロニーを形態的に判断してその数を数えた。評価を3回行い、ES細胞様コロニーの平均値を各DPC株から計算し、DP31から得られた平均値で規格化した。なお、DP31の相対誘導効率を1.0とした。結果を図1に示す。
【実施例1】
【0070】
図1に示すように、DP1,31,87,94は、歯冠完成期又は歯根形成期の(即ち歯根完成期前の)DPCであり、DP75,133,165,166,193は、歯根完成期後のDPCである。歯根完成期前の各DPCは、総じて、歯根完成期後のDPCよりも誘導効率が高いことが分かった。
【実施例2】
【0071】
(DPCにおける遺伝子発現量の評価)
実施例1で評価した各DPCのほか、コントロールとして36歳の成人皮膚由来線維芽細胞(HDF)及びヒトES細胞(khES)に関し、遺伝子発現の評価を行った。なお、khESは、京都大学再生医科学研究所より入手した。Real-time PCRによって、各DPC、HDF及びヒトES細胞(khES)から得られた各遺伝子の発現量を評価した。具体的には、RNeasy Plus Mini Kit (Qiagen)を用いて各DPC、HDF及びヒトES細胞(khES)のTotal RNAを採取した。Rever Tra Ace-α(Toyobo) を用いて、Total RNA (500 ng)からcDNA合成を行った。PCR反応は、SYBR Premix Ex Taq (Takara)と、各遺伝子用に設計されたプライマーDLX4 (S)(配列番号5)、DLX4 (AS)(配列番号6)(Takara) を用いて、Thermal Cycler Dice Real Time System (Takara)で行った。発現量の解析もThermal Cycler Dice Real Time Systemを用いて行った。その結果、歯根完成前後において複数の遺伝子の増減があったが、なかでも、DLX4遺伝子についての結果を図2に示す。図2では、DP31から得られたDLX4遺伝子の発現量で規格化して示す。なお、DP31での相対発現量を1.0とした。
【実施例2】
【0072】
DLX4 (S): TAA ACC AGC GTT TCC AGC AC(配列番号5)
DLX4 (AS): CTT ATA CTT GGA GCG TTT GTT CTG A(配列番号6)
【実施例2】
【0073】
図2に示すように、歯根完成期前の各DPCは、歯根完成期後の各DPCに比較してDLX4遺伝子の相対発現量が高いことがわかった。例えば、歯根完成期後のDPC平均に対して約11倍~約37倍の発現量を示した。また、HDFでは、DP31と対比するとDLX4遺伝子の発現はほとんど見られなかった。歯根完成期前のDPCは、HDFに比較して約340倍~約1100倍の発現量を示していることがわかった。
【実施例2】
【0074】
さらに、歯根完成期前の各DPCは、khESと対比すると、DLX4遺伝子の相対発現量がほぼ同等(約60%~約190%)であることが分かった。
【実施例2】
【0075】
以上のことから、歯根完成期前のDPCは、DLX4遺伝子の発現が顕著に促進されていることがわかった。
【実施例3】
【0076】
本実施例では、歯根完成期前のDPCについて発現の促進が観察されたDLX4遺伝子について、iPS細胞の誘導効率への寄与を評価した。
【実施例3】
【0077】
本実施例では、実施例1で用いたDPCであるDP31を用いた。また、コントロールとして、36歳の成人皮膚由来線維芽細胞(HDF)を用いた。
【実施例3】
【0078】
(ベクターの作製)
Gateway(登録商標) LR反応を用いて、ヒト由来のDLX4遺伝子(配列番号1)を図3に示すpMXs-GWレトロウイルスベクターのORF領域に導入して組み換えpMXs-GWレトロウイルスベクター(以下、DLX4ベクターという。)を作製した。
【実施例3】
【0079】
DLX4ベクター、別途入手したOCT3/4遺伝子を保持するpMXsベクター、SOX2遺伝子を保持するpMXsベクター、及びKLF4遺伝子を保持するpMXsベクターを適宜組み合わせて、Fugene6(Roche製)を用いて、Plat-E細胞(ecotropic retrovirus packaging cells)にトランスフェクトした。
【実施例3】
【0080】
これにより、遺伝子を感染可能に保持する以下に示す5種類のPlat-E細胞を調製した。
(1)OCT3/4遺伝子及びSOX2遺伝子(OS)がトランスフェクトされたPlat-E細胞1
(2)OCT3/4遺伝子、SOX2遺伝子及びDLX4遺伝子(OSD)がトランスフェクトされたPlat-E細胞2
(3)OCT3/4遺伝子、SOX2遺伝子及びKLF4遺伝子(OSK)がトランスフェクトされたPlat-E細胞3
(4)OCT3/4遺伝子、SOX2遺伝子、KLF4遺伝子及びDLX4遺伝子(OSKD)がトランスフェクトされたPlat-E細胞4
(5)OCT3/4遺伝子、SOX2遺伝子、KLF4遺伝子及びc-MYC遺伝子がトランスフェクトされたPlat-E細胞5(OSKM)
【実施例3】
【0081】
次いで、BD FACSAriaセルソーター(Beckton Dickinson製)による蛍光活性化細胞分析に従い、EGFP(enhanced green fluorescent protein)をエンコードするpMXsベクターを用いて、各種Plat-E細胞について遺伝子導入効率をモニターした。
【実施例3】
【0082】
その後、実施例1と同様にして上記した各種のPlat-E細胞からウイルス上清を回収してDP31及びHDFに感染させ、各培地に出現したES細胞様(iPS細胞)コロニーを形態的に判断してその個数を計測した。図4に、DP31においてカウントされたES細胞様コロニーの数を示す。
【実施例3】
【0083】
図4に示すように、OSDでは、OSでの場合に比べて50倍程度のES細胞様コロニーが出現し、OSKDでは、OSKでの場合に比べて4.3倍程度のES細胞様コロニーが出現していた。これらのことから、核初期化物質としてDLX4遺伝子を加えることによって、iPS細胞の誘導効率が飛躍的に高くなることが分かった。すなわち、DLX4遺伝子は、KLF4遺伝子とほぼ同等の誘導作用を有していることがわかった。また、OSKDでは、OSDでの場合に比べて、5.4倍程度のES細胞様コロニーが出現していた。このことから、核初期化物質がDLX4遺伝子を含む場合に、さらKLF4を加えることによって、相乗的にiPS細胞の誘導効率が向上することがわかった。
【実施例3】
【0084】
また、図5にHDFにおいてカウントされたES細胞様コロニー数を示す。HDFでは、OSKの場合に比較してOSKDの場合のES細胞様コロニー数が相乗的に増大していた。DLX4遺伝子とKLF4遺伝子との相乗作用は、DP31よりもHDFにおいてより大きかった。また、OSKDでのコロニー数は、OSKMでのコロニー数と有意差はなかった。すなわち、DLX4遺伝子は、c-MYC遺伝子と同等のiPS細胞誘導効率の向上効果を有していることがわかった。
【実施例4】
【0085】
本実施例では、DLX4遺伝子のノックダウンDPCを調製して、DLX4遺伝子のiPS細胞誘導効果を確認した。
【実施例4】
【0086】
(DLX4ノックダウンDP31株の樹立)
DLX4遺伝子の異なる2個の領域をターゲットとする2個のsiRNA配列を設計した(配列番号7、配列番号8)。当該2個のsiRNA配列を、2種類のRNAポリメラーゼIIIプロモーター(ヒトU6及びヒトH1)を同時に用いて、2種類のsiRNAを発現し得るpSINsi-DKIレトロウイルスベクター(タカラ製)に導入した。Retrovirus Packaging Kit Eco(タカラ製)を用いて、このsiRNA—DLX4発現レトロウイルスベクターをG3T-hi細胞(タカラ製)にトランスフェクトした。siRNA—DLX4発現レトロウイルスベクターの感染後、DP31/Slc細胞をネオマイシン処理し、安定したsiRNA—DLX4発現DP31を得た。
【実施例4】
【0087】
siRNA-1 : GAA ACC TGG TAA AGT AAC A(配列番号7)
siRNA-2 : CGA ATT GGA GCT TGA GCT T(配列番号8)
【実施例4】
【0088】
(DLX4遺伝子発現量の評価)
実施例3と同様にして、DP31及びsiRNA—DLX4発現DP31(DP31-siRNA—DLX4)についてDLX4遺伝子の遺伝子発現量の評価を行った。これら2種の細胞から得られた発現量をDP31から得られた発現量で規格化した。なお、DP31の相対発現量を1.0とした。図6に、DP31及びDP31-siRNA—DLX4でのDLX4遺伝子の相対発現量を示す。
【実施例4】
【0089】
(iPS細胞の誘導効率の評価)
実施例1と同様にして、OCT3/4遺伝子、SOX2遺伝子及びKLF4遺伝子を、DP31、DP31-siRNA—DLX4にそれぞれ導入して、実施例1と同様の操作を行った。なお、コロニーのカウントは、実施例1とは異なり、30日後に行った。また、図7には、DP31及びDP31-siRNA—DLX4でのiPS細胞の相対誘導効率を示す。
【実施例4】
【0090】
図6に示すように、DP31-siRNA—DLX4では、DXL4遺伝子の発現量が顕著に減少していることが分かった。また、図7に示すように、DP31-siRNA—DLX4では、iPS細胞の誘導効率が顕著に減少していることがわかった。以上のことから、DLX4遺伝子がiPS細胞の誘導に大きく寄与していることがわかった。
【実施例5】
【0091】
実施例3に準じて、OCT3/4遺伝子、SOX2遺伝子及びKLEF4遺伝子の組合せ(OSK)と、OCT3/4遺伝子、SOX2遺伝子及びNANOG遺伝子(Addgene社)の組合せ(OSN)で、これらの遺伝子をDP31に導入して、実施例3と同様、ES様細胞コロニーを計数した。結果を図8に示す。
【実施例5】
【0092】
図8に示すように、OSKでは、OSNの場合に比べて多くのES細胞様コロニーが出現していた。このことから、OSKはOSNに対してiPS細胞の誘導効率が高いことが分かった。すなわち、KLF4遺伝子は、DP31において誘導効率の向上に極めて効果的であった。このようにKLF4遺伝子は、NANOG遺伝子に比較してiPS誘導効率に寄与が大きいことが支持された。DP31では、DLX4遺伝子が本来的に発現されていることから、OSKにおける高い誘導効率は、KLF4遺伝子とDLX4遺伝子との相乗効果を示しているといえる。さらに、実施例3におけるOSKとOSKDの結果(DP31及びHDF)を考慮すると、DLX4遺伝子は、KLF4遺伝子と相乗作用によりさらに一層iPS細胞誘導率を向上させることができる点において極めて有用性が高いことがわかった。
【配列表フリ-テキスト】
【0093】
配列番号5,6:プライマー
配列番号7,8:siRNA
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
6
【図8】
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