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明細書 :放射線検出装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6583855号 (P6583855)
公開番号 特開2017-096798 (P2017-096798A)
登録日 令和元年9月13日(2019.9.13)
発行日 令和元年10月2日(2019.10.2)
公開日 平成29年6月1日(2017.6.1)
発明の名称または考案の名称 放射線検出装置
国際特許分類 G01T   1/36        (2006.01)
G01T   1/24        (2006.01)
H01L  27/144       (2006.01)
FI G01T 1/36 D
G01T 1/24
H01L 27/144 K
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2015-229690 (P2015-229690)
出願日 平成27年11月25日(2015.11.25)
審査請求日 平成30年11月6日(2018.11.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】青木 徹
【氏名】小池 昭史
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
審査官 【審査官】藤本 加代子
参考文献・文献 特表2010-510484(JP,A)
特開2008-082937(JP,A)
特開平07-012947(JP,A)
特開2011-117969(JP,A)
特表2012-517604(JP,A)
特開平07-072254(JP,A)
特開2011-085479(JP,A)
米国特許出願公開第2010/0187429(US,A1)
調査した分野 G01T 1/00-1/16
G01T 1/167-7/12
H01L 27/144

特許請求の範囲 【請求項1】
放射線が入射される側面、前記側面に繋がる第1の主面、及び前記側面に繋がり前記第1の主面に対向する第2の主面を有し、放射線を電荷に変換するCdTe結晶を含む平板状の変換部材と、
前記第1の主面上に2次元的に分離して複数配列された第1の電極部材と、
前記第2の主面上に配置された第2の電極部材と、
前記複数の第1の電極部材に接続され、前記変換部材の内部において複数の前記第1の電極部材のそれぞれと前記第2の電極部材の間に生じた電荷を、独立して読み出し信号として読み出す読み出し回路とを備え、
前記読み出し回路は、
前記複数の第1の電極部材毎に独立して設けられ、前記電荷が予め設定された閾値を超えた際に前記電荷に対応する電気信号を出力する複数の閾値設定回路と、
前記複数の閾値設定回路から出力された前記電気信号を前記複数の第1の電極部材毎に蓄積し、蓄積した前記電気信号を所定のタイミングで前記読み出し信号として出力する複数の信号出力回路とを有する、
放射線検出装置。
【請求項2】
前記複数の閾値設定回路は、前記側面に対して垂直な方向に配列された前記複数の第1の電極部材に対応する前記閾値が、前記垂直な方向に沿って次第に増加するように設定されている、
請求項1記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記複数の信号出力回路は、前記電気信号を蓄積する第1のコンデンサと、前記第1のコンデンサによって蓄積された前記電気信号が転送される第2のコンデンサと、前記第2のコンデンサに転送された前記電気信号を出力するアンプとを有する、
請求項1又は2記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記複数の閾値設定回路の前記閾値を可変に設定する制御回路をさらに備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を検出する放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エネルギー弁別機能を有する放射線検出器が開発されている。エネルギー弁別機能を有する放射線検出器は、医療及び工業の分野での活用が期待されており、従来の白黒のX線イメージング技術から、材質を識別可能とする新しいイメージング技術に発展させるために必須のデバイスである。
【0003】
例えば、従来の放射線検出器の一例として、放射線の照射により発光するシンチレータと、その発光を受光する受光部が2次元配列された光センサアレイとを有する放射線イメージセンサが知られている(下記特許文献1参照)。この放射線イメージセンサは、CsIとNaClからなる内部に多数の柱状部が形成されたシンチレータを有し、このシンチレータがその光伝搬方向を光センサアレイの受光面に垂直になるように配置された構成を有する。このような放射線イメージセンサでは、光センサアレイの行方向の信号強度プロファイルからエネルギーの異なる放射線の弁別を可能にする。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2013-24731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の放射線イメージセンサでは、シンチレータ内部を伝搬する光を光センサアレイで受光して検出する構成を採っているため、光センサアレイの受光面において光が広がってしまい、放射線のエネルギー弁別の分解能が低下する傾向にある。さらに、放射線を光に変換してから光センサアレイでその光の強度を検出するため、検出信号における放射線特有のコンプトン散乱に起因するノイズの影響が無視できない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、高分解能かつS/Nの高い放射線のエネルギー弁別を実現することが可能な放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一形態にかかる放射線検出装置は、放射線が入射される側面、側面に繋がる第1の主面、及び側面に繋がり第1の主面に対向する第2の主面を有し、放射線を電荷に変換するCdTe結晶を含む平板状の変換部材と、第1の主面上に2次元的に分離して複数配列された第1の電極部材と、第2の主面上に配置された第2の電極部材と、複数の第1の電極部材に接続され、変換部材の内部において複数の第1の電極部材のそれぞれと第2の電極部材の間に生じた電荷を、独立して読み出し信号として読み出す読み出し回路とを備え、読み出し回路は、複数の第1の電極部材毎に独立して設けられ、電荷が予め設定された閾値を超えた際に電荷に対応する電気信号を出力する複数の閾値設定回路と、第1のアンプから出力された電気信号を複数の第1の電極部材毎に蓄積し、蓄積した電気信号を所定のタイミングで読み出し信号として出力する複数の信号出力回路とを有する。
【0008】
上記形態の放射線検出装置によれば、放射線が変換部材の側面に入射されると、その放射線がそのエネルギーに応じた距離ほど変換部材の内部を透過しながら電荷に変換され、その電荷が変換部材の主面上に2次元的に配置された複数の第1の電極部材を介して読み出し回路によって独立して読み出されることによって、2次元的な分布を有する読み出し信号が出力される。このようにして出力された読み出し信号の変換部材の側面に垂直な方向の分布により、放射線のエネルギーを検出することができる。この際、変換部材で放射線から変換された電荷を直接読み出し信号として取り出すことによりエネルギー弁別の分解能を向上させることができる。さらに、読み出し回路に閾値設定回路を設けることにより、変換部材で発生した電荷が規定の閾値を超えた際に電気信号に蓄積され、その電気信号が読み出し信号として出力される。これにより、放射線のコンプトン散乱等に起因して生じる読み出し信号のノイズを低減することができる。その結果、高分解能かつS/Nの高い放射線のエネルギー弁別を実現することができる。
【0009】
ここで、複数の閾値設定回路は、側面に対して垂直な方向に配列された複数の第1の電極部材に対応する閾値が、垂直な方向に沿って次第に増加するように設定されている、こととしてもよい。この場合、放射線検出装置による散乱線の影響によるノイズが除去されやすくなり、エネルギー弁別の精度が一層向上する。
【0010】
また、複数の信号出力回路は、電気信号を蓄積する第1のコンデンサと、第1のコンデンサによって蓄積された電気信号が転送される第2のコンデンサと、第2のコンデンサに転送された電気信号を出力するアンプとを有する、こととしてもよい。この場合には、変換部材で発生した電荷を蓄積しつつその電荷を適切なタイミングで読み出し信号として出力することができる。
【0011】
また、複数の閾値設定回路の閾値を可変に設定する制御回路をさらに備える、こととしてもよい。この場合には、閾値を動的に変化させることでエネルギー弁別の精度をさらに一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高分解能かつS/Nの高い放射線のエネルギー弁別を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る放射線検出装置1の側面図である。
【図2】放射線検出装置1に含まれる変換部材の平面図である。
【図3】放射線検出装置1に含まれる読み出し回路の要部の回路図である。
【図4】図1の変換部材3に使用されるCdTeによって構成される基板に垂直に入射する放射線のエネルギーレスポンスを示すグラフである。
【図5】様々なエネルギーのX線を入射させた場合に放射線検出装置1から出力された画像信号の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る放射線検出装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。

【0015】
まず、図1~3を用いて、実施形態に係る放射線検出装置1の構成を説明する。図1は、放射線検出装置1の側面図、図2は、放射線検出装置1に含まれる変換部材の平面図、図3は、放射線検出装置1に含まれる読み出し回路の要部の回路図である。放射線検出装置1は、外部から入射する放射線のエネルギー分布を検出する装置である。検出対象の放射線としては、X線、γ線の他に、α線、β線等が挙げられるが、放射線を電気信号に変える際の吸収率が高いという点でX線、γ線が好適に検出対象とされる。

【0016】
図1及び図2に示すように、放射線検出装置1は、入射する放射線を電気信号(電荷)に変換する変換部材3と、変換部材3の両面に配置された電極5,7と、変換部材3から電気信号を読み出す読み出し回路9とを備える。

【0017】
変換部材3は、放射線を直接電気信号(電荷)に変換する直接変換型の半導体材料であるCdTe結晶により構成された矩形平板状の部材であり、検出対象の放射線が入射される側面3aと、その側面3aに繋がる主面3bと、側面3aに繋がり主面3bに対向する主面3cとを有する。このようなCdTe結晶を用いた変換部材3は、放射線を光に変換するシンチレータに比較して、光の拡散、散乱、減衰等に伴う放射線の検出感度の低下、エネルギー分解能の劣化を発生させないという特徴を有する。また、変換部材3は、X線、γ線等の吸収率が大きく、そのような放射線に対する検出感度が高く、室温でも動作可能である。変換部材3のサイズは、特定のサイズには限定されないが、例えば、主面3b,3cの大きさが20mm×20mm、側面3aに沿った主面3b,3cに垂直な方向の厚さが0.5~1.0mm程度に設定される。なお、以下の説明においては、変換部材3において、側面3aに垂直な主面3b,3cに沿った方向をX軸方向、側面3aに沿った変換部材3の厚み方向をZ軸方向、X軸方向とZ軸方向とに垂直な方向をY軸方向とする。

【0018】
上記の変換部材3の主面3b上には、複数の電極(電極部材)7が2次元的に分離して配列されている。詳細には、複数の電極7は、それぞれが略矩状の平板電極をなし、X軸方向及びY軸方向に沿って所定のピッチで等間隔に2次元的に配列されて主面3b上に形成されている。例えば、主面3bの大きさが20mm×20mmの場合、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの方向に、0.1mmのピッチで200個の電極7が配列される。すなわち、合計で200×200個の電極7が形成されている。さらに、変換部材の主面3c上には、平板電極である電極(電極部材)5が主面3cのほぼ全面を覆うように形成されている。

【0019】
電極5,7の材料は、特定の材料には限定されないが、例えば、電極5,7の材料として、Pt及びInの組み合わせ、Pt及びAlの組み合わせ等が用いられ、電極5,7が主面3c,3b上に、Pt及びInの組み合わせの場合はショットキー電極、Pt及びAlの組み合わせの場合はオーミック電極として形成される。この場合、Pt製の電極に負電圧、In(又はAl)製の電極に正電圧を印加することにより、漏れ電流が少ないため高電圧を印加することが可能となり、変換部材3で生成された電荷を電極7から効率よく取り出すことができる。また、電極5,7が、両方の材料をPtとして、オーミック電極として形成されてもよい。

【0020】
このように2次元的に配列された複数の電極7を有する変換部材3においては、変換部材3の内部で生成された電荷を、その電荷のX軸方向及びY軸方向に沿って2次元的に分割された位置毎に、その位置の近傍の電極7を介して、独立した電気信号として外部に取り出すことが可能にされる。

【0021】
上記構成の変換部材3の主面3b上には、読み出し回路9が設けられている。すなわち、読み出し回路9は、複数の電極7に対応した個数のセル回路9aが内蔵され、それぞれのセル回路9aは、金属製の接続部材である電極パッド11を介して対応する電極7に電気的に接続されている。この読み出し回路9は、変換部材3の内部において複数の電極7のそれぞれと電極5との間で生じた電荷を、独立した読み出し信号として読み出すためのLSI等の集積回路である。図3に示すように、セル回路9aは、複数の電極7毎に独立して設けられた回路ユニットであり、閾値設定回路13と信号出力回路15とを含んで構成される。

【0022】
閾値設定回路13は、対応する電極7と電極5との間に挟まれた領域に発生した電荷が予め設定された閾値を超えた際にその電荷の量に応じた電圧信号(電気信号)を出力する。この閾値設定回路13は、差動アンプ17を有しており、差動アンプ17の一方の入力端子が対応する電極7に接続され、差動アンプ17の他方の入力端子が閾値調整用の抵抗素子19を介してグラウンドに接続されている。このような差動アンプ17は、一方の入力端子に対応する電極7と電極5との間に挟まれた領域に発生した電荷の量に対応する電圧信号が入力されるとともに、他方の入力端子に抵抗素子19の抵抗値に対応する電圧信号が入力され、それらの電圧信号の差を増幅する。このような動作により、差動アンプ17は、対応する電極7の領域に発生した電荷の量が抵抗素子19の抵抗値によって予め設定された閾値を超えた際に、その電荷の量に対応する電圧信号を出力する一方、対応する電極7の領域に発生した電荷の量が抵抗素子19の抵抗値によって予め設定された閾値以下である際には、電圧値が0の(有意な値を持たない)電圧信号を出力する。

【0023】
信号出力回路15は、閾値設定回路13の後段に設けられ、閾値設定回路13の差動アンプ17から出力された電圧信号を対応する電極7毎に蓄積し、蓄積した電圧信号を所定のタイミングで読み出し信号として出力する。この信号出力回路15は、信号蓄積用のコンデンサ21、信号読み出し用のコンデンサ23、アンプ25、スイッチ27a,27b,27c,27dを含んで構成されている。コンデンサ21の一端には所定電圧が印加され、その他端には差動アンプ17の出力が接続されるとともにスイッチ27aを介してグラウンドに接続されている。また、コンデンサ23の一端には所定電圧が印加され、その他端にはスイッチ27cを介してコンデンサ21の他端が接続されるとともにスイッチ27bを介してグラウンドに接続されている。さらに、コンデンサ23の他端はスイッチ27d及びアンプ25を介してセル回路9aの出力に接続されている。

【0024】
このような構成の信号出力回路15は、外部の制御回路(図示せず)によりスイッチ27a,27b,27c,27dのオン/オフが制御されることにより、次のように動作する。すなわち、スイッチ27a,27bをオンさせてコンデンサ21,23に蓄積されている電荷をリセットした後にスイッチ27a,27b,27c,27dをオフさせることにより、差動アンプ17から出力された電圧信号に応じた電荷をコンデンサ21に蓄積する。次に、スイッチ27cをオンすることにより、コンデンサ21に蓄積した電圧信号に応じた電荷をコンデンサ23に転送する。その後、スイッチ27cをオフしスイッチ27dをオンすることにより、コンデンサ23に転送した電荷に応じた電圧信号を、アンプ25を経由して増幅して出力する。その結果、信号出力回路15は、所定の繰り返しタイミングで、対応する電極7の領域に発生した電荷の量に対応する電圧信号を読み出し信号として出力することができる。

【0025】
上述した構成の読み出し回路9は、複数のセル回路9aから出力される読み出し信号を順次出力することにより、複数の画素信号により構成される1枚の画像の画像信号として出力する。この画像信号の出力制御方式は、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等により用いられる従来の方式が用いられる。

【0026】
ここで、読み出し回路9に内蔵される各セル回路9aの閾値設定回路13に設定される閾値は、複数のセル回路9a間で異なる値に設定されることが好適である。具体的には、対応する電極7の変換部材3の側面3aからのX軸方向の距離が増加するに従って閾値が次第に増加するように設定されることが好適である。例えば、電極7がX軸方向に0.1mmのピッチで配列されている場合には、側面3aからの距離が等しい各列の電極7に対応するセル回路9aの閾値が、吸収する放射線のエネルギー換算で以下の値に相当する電圧値になるように設定される。
10列目(側面3aからの距離0.1cm)に対応する閾値:100keV
50列目(側面3aからの距離0.5cm)に対応する閾値:200keV
100列目(側面3aからの距離1.0cm)に対応する閾値:300keV
200列目(側面3aからの距離2.0cm)に対応する閾値:600keV

【0027】
このようにセル回路9aの閾値が設定される理由は、次の通りである。図4は、変換部材3に使用されるCdTeによって構成される基板に垂直に入射する放射線のエネルギーレスポンスを示すグラフである。このグラフにおいては、入射する放射線のエネルギーに対する感度(吸収率)を、様々な厚みに設定された基板に関して示している。この特性から分かるように、前述した閾値は、このようなエネルギーレスポンスに対応して、側面3aから入射された放射線の各電極7が配置された位置における吸収率が60%となるエネルギーに対応するように設定されていることが分かる。例えば、10列目の電極7の側面3aからの距離は0.1cmであり、そのような距離における吸収率が60%となる放射線のエネルギーは約100keVとなっており、50列目に対応する側面3aからの距離は0.5cmであり、そのような距離における吸収率が60%となる放射線のエネルギーは約200keVとなっている。このような設定により、例えば、側面3aからの距離が0.5cmである50列目の電極7においては、吸収率が60%以上となる約200keVの放射線のエネルギーを、セル回路9aが読み出し信号として取り込まないようにすることができる。

【0028】
以上説明した放射線検出装置1によれば、放射線が変換部材3の側面3aにX軸方向に入射されると、その放射線がそのエネルギーに応じた距離ほど変換部材3の内部をX軸方向に透過しながら電荷に変換され、その電荷が変換部材3の主面3b上に2次元的に配置された複数の電極7を介して読み出し回路9によって独立して読み出されることによって、2次元的な分布を有する読み出し信号が出力される。このようにして出力された読み出し信号の変換部材3の側面3aに垂直なX軸方向の分布により、放射線のエネルギーを検出することができる。具体的には、放射線のエネルギーに応じて変換部材3の内部において電荷変換される位置がX軸方向に変化し、その結果、低エネルギーの放射線は側面3aに近い領域で光電変換され、高エネルギーの放射線は側面3aの近い領域のみでなくX軸方向に進んだ領域でも光電変換される。従って、読み出し信号から得られた2次元の画像信号のX軸方向における分布を定量的に評価することにより、入射する放射線のエネルギーを推定することができる。この際、直接変換型の変換部材3で放射線から変換された電荷を直接読み出し信号として取り出すことによりエネルギー弁別の分解能を向上させることができ、被測定物に照射したX線等の放射線を測定することにより被測定物の材料識別を可能にする。さらに、電極7がY軸方向にも配列され、それに対応してセル回路9aも設けられているので、入射する放射線のエネルギーのY軸方向に沿った分布も出力することができ、ラインセンサーとして機能させることができる。

【0029】
また、放射線検出装置1は、吸収長(減弱長)が長く高いエネルギーのX線の検出に向いている。例えば、20mm×20mmのサイズのCdTe製の変換部材3を備える構成であれば、実効エネルギー400~500keV(管電圧1000kV)程度の高エネルギーのX線を対象にしてもエネルギー弁別が可能とされる。

【0030】
さらに、読み出し回路9の各セル回路9aに閾値設定回路13を内蔵している。これにより、放射線のコンプトン散乱等に起因して生じる読み出し信号のノイズを低減することができる。すなわち、コンプトン散乱によりエネルギーが相対的に低い放射線がノイズとして生じてしまうが、そのようなノイズを読み出し信号に混入することを防止できる。例えば、10列目の電極7の側面3aからの距離は0.1cmにおける吸収率が60%となる放射線のエネルギーは約100keVとなっており、50列目に対応する側面3aからの距離は0.5cmにおける吸収率が60%となる放射線のエネルギーは約200keVとなっている。ここで、10列目の電極に対応する位置に到達した約100keVのエネルギーを有する放射線は、コンプトン散乱により約100keVよりもエネルギーの低い放射線を生じる。このエネルギーの低い放射線がX方向に放射されて、例えば、側面3aからの距離が0.5cmである50列目の電極7に対応する位置に到達しても、50列目の電極7おいては吸収率が60%以上となる約200eV以下のような放射線のエネルギーを、セル回路9aが読み出し信号として取り込まないようにしているため、コンプトン散乱による放射線をノイズとして読み出すことを避けることができる。その結果、高分解能かつS/Nの高い放射線のエネルギー弁別を実現することができる。

【0031】
ここで、本実施形態の閾値設定回路13は、X軸方向に配列された複数の電極7に対応する閾値が、X軸方向に沿って次第に増加するように設定されている。これにより、放射線検出装置1による散乱線の影響によるノイズがX軸方向の位置に応じて除去されやすくなり、エネルギー弁別の精度が一層向上する。

【0032】
また、読み出し回路9の各セル回路9aには信号出力回路15を内蔵している。これにより、変換部材3で発生した電荷を蓄積しつつその電荷を適切なタイミングで読み出し信号として出力することができる。

【0033】
図5には、様々なエネルギーのX線を1点で入射させた場合に放射線検出装置1から出力された画像信号の例を示している。図5(a)は、X線管の加速電圧50kVでX線を入射させた場合の出力例、図5(b)は、X線管の加速電圧100kVでX線を入射させた場合の出力例、図5(c)は、X線管の加速電圧150kVでX線を入射させた場合の出力例である。これらの出力例に示すように、入射するX線のエネルギーが高くなるにつれて、光電変換された高輝度領域がX軸方向に伸びていることが分かる。

【0034】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。上記実施形態においては下記の構成に変更されてもよい。

【0035】
例えば、放射線検出装置1は、読み出し回路9が、複数のセル回路9a内の閾値設定回路13における閾値を可変に設定する制御回路として動作してもよい。すなわち、上述した実施形態では、閾値設定回路13における閾値が、側面3aから入射された放射線の各電極7が配置された位置における吸収率が60%となるエネルギーに対応するように設定されていた。読み出し回路9は、外部から設定された吸収率のパラメータに応じて、各閾値設定回路13における閾値を、各電極7が配置された位置における放射線の吸収率が設定された吸収率となるエネルギーに対応するように、可変に設定するように動作してもよい。より具体的には、外部から吸収率が80%、60%、40%、20%と設定された場合には、読み出し回路9は、図4に示したようなエネルギーレスポンスのデータを基にその吸収率に対応する放射線のエネルギー値を特定し、そのエネルギー値を基に各列の電極7に対応するセル回路9aの閾値を設定する。

【0036】
このような変形例によれば、同じ放射線の検出において、閾値を動的に変化させることで散乱線の発生がどのように起こっているかの傾向を取得することができる。その結果、エネルギー弁別の精度をより一層向上させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1…放射線検出装置、3…変換部材、3a…側面、3b,3c…主面、5,7…電極(電極部材)、9…読み出し回路、13…閾値設定回路、15…信号出力回路、21,23…コンデンサ、25…アンプ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4