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明細書 :触媒金属ナノ粒子含有複合体及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6473101号 (P6473101)
公開番号 特開2016-215200 (P2016-215200A)
登録日 平成31年2月1日(2019.2.1)
発行日 平成31年2月20日(2019.2.20)
公開日 平成28年12月22日(2016.12.22)
発明の名称または考案の名称 触媒金属ナノ粒子含有複合体及びその利用
国際特許分類 B01J  31/28        (2006.01)
C07C  25/18        (2006.01)
C07C  17/26        (2006.01)
C07C  45/68        (2006.01)
C07C  49/784       (2006.01)
C07C  43/205       (2006.01)
C07C  41/30        (2006.01)
C07C 211/48        (2006.01)
C07C 209/68        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 31/28 Z
C07C 25/18
C07C 17/26
C07C 45/68
C07C 49/784
C07C 43/205 D
C07C 41/30
C07C 211/48
C07C 209/68
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 9
全頁数 22
出願番号 特願2016-114920 (P2016-114920)
分割の表示 特願2015-508795 (P2015-508795)の分割、【原出願日】平成26年3月28日(2014.3.28)
出願日 平成28年6月9日(2016.6.9)
審査請求日 平成29年1月25日(2017.1.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
【識別番号】000136561
【氏名又は名称】株式会社フルヤ金属
発明者または考案者 【氏名】有澤 光弘
【氏名】周東 智
【氏名】星谷 尚亨
【氏名】新井 聡史
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】安齋 美佐子
参考文献・文献 国際公開第2011/010610(WO,A1)
特開2016-028795(JP,A)
特開2006-205105(JP,A)
特表2009-541963(JP,A)
特公昭42-005023(JP,B1)
特表2009-509776(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C07B 61/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
炭素数2~6の範囲のアルキレン基単位及びフェニレン基単位の重合体からなる連続相(但し、前記アルキレン基単位は前記フェニレン基単位の少なくとも1及び4位に結合する)に金属ナノ粒子が分散した複合体であって、
前記重合体は、前記アルキレン基単位の間に硫酸基架橋を有し、かつ前記硫酸基架橋の含有量は、アルキレン基単位とのモル比で、0.0001~0.1の範囲であり、
記金属ナノ粒子の少なくとも一部は粒子径が、20nm以下であり、かつ
前記金属ナノ粒子を構成する金属は、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金及び金から成る群から選ばれる少なくとも1種の金属である前記複合体。
【請求項2】
アルキレン基単位は、炭素数2~4の範囲である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記アルキレン基単位は前記フェニレン基単位の1、2及び4位又は1、2、4及び5位に結合する、請求項1または2に記載の複合体。
【請求項4】
前記重合体からなる連続相の質量と前記金属ナノ粒子の質量の比は、100:0.1~10の範囲である請求項1~3のいずれかに記載の複合体。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子がPdナノ粒子であり、その少なくとも一部は粒子径が、2~10nmの範囲である請求項1~のいずれかに記載の複合体。
【請求項6】
前記金属ナノ粒子がNiナノ粒子であり、その少なくとも一部は粒子径が、5~20nmの範囲である請求項1~のいずれかに記載の複合体。
【請求項7】
基板及び前記基板の少なくとも一部の表面に設けた請求項1~のいずれかに記載の複合体を含む複合構造体。
【請求項8】
前記基板は、金属、ガラス、セラミックス又は樹脂である、請求項に記載の複合構造体。
【請求項9】
表面に硫黄(S)を結合又は吸着させた基板表面上で、金属化合物の存在下で、2以上のアルキル基を有するベンゼン化合物(2つのアルキル基は1及び4位にある)を脱水素縮合させて、請求項1~のいずれかに記載の複合体を形成することを含む、
但し、前記金属化合物を構成する金属は、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金及び金から成る群から選ばれる少なくとも1種の金属である、
請求項に記載の複合構造体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒金属ナノ粒子含有複合体及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
パラジウム触媒が炭素-炭素(へテロ元素)結合形成反応で重要であることから、ここ10年の間に、パラジウムナノパーティクル(PdNp)触媒とそれを用いる反応が報告されるようになった(例えば、非特許文献1)。PdNp触媒は、バルクな触媒に比べ、Npは表面積が広く、より高活性であることから、より温和な環境調和的条件で反応が進行する特徴を有している。例えば、ホスフィンリガンドや含窒素複素環カルベン(NHC)を始めとするリガンド存在下0価/2価パラジウム触媒を用いて進行していた伝統的な反応が、PdNpを用いると、リガンドフリーで進行することが可能になることが最近判明しつつある。そのため、コスト面だけでなく、後処理の面や生成物精製面で利点が多く、特に医薬品や機能性分子の合成では今までよりもその重要性が増すものと考えられる。
【0003】
上記金属Npの製造方法は、高分子やイオン性液体を利用するものである(非特許文献1)。
【0004】
本発明者は硫黄修飾金に担持したPd触媒SAPd(Sulfur-modifed Au-supported Pd)の開発に成功している。SAPdを用いると、Pdクロスカップリング(炭素-炭素結合形成反応の鈴木-宮浦カップリング、炭素-窒素結合形成反応のBuchwald-Hartwig反応)がリガンドフリーで繰り返し(数百回~千回)行える上に、反応溶液中のPd漏洩量は1桁~2桁ppbレベルである(非特許文献2、3、特許文献1)。このSAPdはリガンドフリーBuchwald-Hartwig反応を可能にする最初の例でもある。
【0005】
[特許文献1]WO2011/010610及びUS2012/0115714
【0006】
[非特許文献1]A. Balanta, C. Godard and C. Claver, Chem. Soc. Rev. 2011, 40, 4973.
[非特許文献2]J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 7270-7272
[非特許文献3]Adv. Synth. Catal. 2011, 353, 743-748
特許文献1及び非特許文献1~3の全記載は、ここに特に開示として援用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のSAPdは、表面が硫黄元素で修飾されてなる金若しくは金合金構造体とこの構造体に担持された触媒金属化合物とを有し、光電子分光法の解析によって、触媒金属化合物に由来のピークのほか、硫黄としては硫黄1s軌道のピークが、ピークトップ位置で2470eV±2eVの範囲に見出せる触媒前駆体として記載されている(請求項1)。但し、触媒金属化合物は、例えば、Pdの塩又は錯体である(請求項6)。
【0008】
非特許文献2及び特許文献1に記載のSAPdは、Pdクロスカップリング反応において優れた触媒性能を発揮する触媒前駆体であった。この触媒前駆体はPdを溶媒中に放出して、クロスカップリング反応に供するものであり、反応終了後に溶媒の温度を常温付近に戻すと、放出したPdは触媒前駆体に収容され、再利用可能である。しかし、再利用できる回数は、触媒前駆体の種類にもよるが、10~30回程度である。
【0009】
本発明は、非特許文献2及び特許文献1に記載のSAPdと同様に、Pd等の触媒金属のナノパーティクルを固定化した触媒又は触媒前駆体であって、非特許文献2及び特許文献1に記載のSAPdに比べて、クロスカップリング反応の活性は同等であり、触媒金属のナノパーティクルの反応溶媒中への溶出量が抑制され、触媒金属のナノパーティクルの反応生成物への混入量をより低減でき、かつ触媒又は触媒前駆体の繰り返し使用回数を向上できる材料を提供することも第一の目的とする。
【0010】
さらに本発明は、Pd以外の触媒金属を用いた、Pdの場合と同様のクロスカップリング反応活性を有する触媒又は触媒前駆体を提供することを目的とする。
【0011】
ところで、前記非特許文献2及び特許文献1においては、金又は金合金を担体として用いている。本発明は、金又は金合金を担体として用いることなしに、Pd及びPd以外の触媒金属を用いて同様のクロスカップリング反応活性を有する触媒又は触媒前駆体を提供することを目的とする。
【0012】
加えて、前記非特許文献2及び特許文献1においては、触媒の調製においてピラニア溶液を用いた金又は金合金の担体を行っている。しかし、ピラニア溶液は非常に腐食性の高い溶液であり、また、ピラニア溶液は使用の度に過酸化水素と濃硫酸とから調製することが必要であり、大量生産には不向きであった。そのためピラニア溶液を用いることなしに触媒の調製が可能であることが望まれていた。そこで本発明は、ピラニア溶液を用いることなしに、Pd及びPd以外の触媒金属を用いて同様のクロスカップリング反応活性を有する触媒又は触媒前駆体を提供することを目的とする。
【0013】
さらに本発明は、これらのカップリング反応活性を有する触媒又は触媒前駆体を用いたカップリング生成物の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下のとおりである。
[1]
炭素数2~6の範囲のアルキレン基単位及びフェニレン基単位の重合体からなる連続相(但し、前記アルキレン基単位は前記フェニレン基単位の少なくとも1及び4位に結合する)に触媒金属ナノ粒子が分散した複合体であって、前記触媒金属ナノ粒子の少なくとも一部は粒子径が、20nm以下である前記複合体。
[2]
前記重合体は、硫酸基架橋を有する、[1]に記載の複合体。
[3]
前記硫酸基架橋は、前記アルキレン基単位の間に存在する、[2]に記載の複合体。
[4]
前記硫酸基架橋の含有量は、アルキレン基単位とのモル比で、0.0001~0.1の範囲である[2]又は[3]に記載の複合体。
[5]
アルキレン基単位は、炭素数2~4の範囲である、[1]~[4]のいずれかに記載の複合体。
[6]
前記アルキレン基単位は前記フェニレン基単位の1、2及び4位又は1、2、4及び5位に結合する、[1]~[5]のいずれかに記載の複合体。
[7]
前記重合体からなる連続相の質量と前記触媒金属ナノ粒子の質量の比は、100:0.1~10の範囲である[1]~[6]のいずれかに記載の複合体。
[8]
前記触媒金属ナノ粒子を構成する触媒金属は、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金及び金から成る群から選ばれる少なくとも1種の金属である[1]~[7]のいずれかに記載の複合体。
[9]
前記触媒金属ナノ粒子がPdナノ粒子であり、その少なくとも一部は粒子径が、2~10nmの範囲である[1]~[7]のいずれかに記載の複合体。
[10]
前記触媒金属ナノ粒子がNiナノ粒子であり、その少なくとも一部は粒子径が、5~20nmの範囲である[1]~[7]のいずれかに記載の複合体。
[11]
基板及び前記基板の少なくとも一部の表面に設けた[1]~[10]のいずれかに記載の複合体を含む複合構造体。
[12]
前記基板は、金属、ガラス、セラミックス又は樹脂である、[11]に記載の複合構造体。
[13]
[1]~[10]のいずれかに記載の複合体又は[11]若しくは[12]に記載の複合構造体を含むカップリング反応用触媒又は触媒前駆体。
[14]
前記カップリング反応は、少なくとも原料の一部又は添加剤としてハロゲン化炭化水素を用いる[13]に記載の触媒又は触媒前駆体。
[15]
前記カップリング反応は、炭素-炭素結合形成反応又は炭素-窒素結合形成反応である[13]又は[14]に記載の触媒又は触媒前駆体。
[16]
基板表面上で、触媒金属化合物の存在下で、2以上のアルキル基を有するベンゼン化合物(2つのアルキル基は1及び4位にある)を脱水素縮合させて、[1]~[10]に記載の複合体を形成することを含む、[11]に記載の複合構造体の製造方法。
[17]
前記基板は、表面に硫黄(S)を結合又は吸着させた基板または表面に硫黄(S)を結合又は吸着させていない基板である[16]に記載の製造方法。
[18]
[1]~[10]のいずれかに記載の複合体又は[11]若しくは[12]に記載の複合構造体を用いて、複数の有機化合物をカップリング反応させてカップリング生成物を得ることを含むカップリング生成物の製造方法。
[19]
前記カップリング反応は、少なくとも原料の一部又は添加剤としてハロゲン化炭化水素を用いる[18]に記載の製造方法。
[20]
前記カップリング反応は、炭素-炭素結合形成反応又は炭素-窒素結合形成反応である[18]又は[19]に製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来のSAPdに比べて、クロスカップリング反応の活性は同等であり、触媒金属のナノパーティクルの反応溶媒中への溶出量が抑制され、触媒金属のナノパーティクルの反応生成物への混入量をより低減でき、かつ触媒又は触媒前駆体の繰り返し使用回数を向上できる材料を提供することができる。さらに本発明によれば、Pd以外の触媒金属を用いた、Pdの場合と同様のクロスカップリング反応活性を有する触媒又は触媒前駆体を提供することができる。加えて本発明によれば、金又は金合金を担体として用いることなしに、Pd及びPd以外の触媒金属を用いて同様のクロスカップリング反応活性を有する触媒又は触媒前駆体を提供することができる。さらに、本発明によれば、ピラニア溶液を用いることなしに、Pd及びPd以外の触媒金属を用いて同様のクロスカップリング反応活性を有する触媒又は触媒前駆体を提供することができる。さらに本発明によれば、前記本発明の複合体又は複合構造体を用いて、複数の有機化合物をカップリング反応させてカップリング生成物を得ることを含むカップリング生成物の製造方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1で得た本発明の基板付き複合体(PdNSXP)の断面TEM像を示す。
【図2】実施例1で得た本発明の基板付き複合体の断面TEM像を示す。
【図3】実施例1で得た本発明の基板付き複合体の断面SEM-EELS像を示す。
【図4】実施例1で得た本発明の基板付き複合体、実施例2-1及び2-2で反応に10回繰り返し使用した後の複合体のX線吸収微細構造(XAFS Pd-K)のスペクトルを示す。
【図5】実施例1で得た本発明の基板付き複合体、実施例2-2で反応に使用した後の複合体のX線吸収微細構造(Pd-K edge extended XAFS )のスペクトルを示す。
【図6】実施例1で得た本発明の基板付き複合体のX線吸収微細構造(XAFS Pd-K)のスペクトルを示す。
【図7】参照用として硫黄を含有する種々の化合物のX線吸収微細構造(XAFS Pd-K)のスペクトルを示す。
【図8】実施例1で得た本発明の基板付き複合体のX線吸収微細構造(XAFS C-K)のスペクトルを示す。参照用としてAuPd、PalyleneN、PalyleneCのスペクトルも併記する。
【図9】実施例2-3における反応収率の経時変化を示す。
【図10】実施例4において調製した本発明の基板付き複合体(NiNSXP)の断面TEM像を示す。
【図11】実施例9において調製した本発明の基板付き複合体(RuNSXP)の断面TEM像を示す。
【図12】実施例12において調製した本発明の基板付き複合体(AuNSXP)の断面TEM像を示す。
【図13】実施例13において調製した本発明の基板付き複合体(PtNSXP)の断面TEM像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<複合体>
本発明の複合体は、炭素数2~6の範囲の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基単位及びフェニレン基単位の重合体からなる連続相(但し、前記アルキレン基単位は前記フェニレン基単位の少なくとも1及び4位に結合する)に触媒金属ナノ粒子が分散した複合体である。さらに、前記触媒金属ナノ粒子の少なくとも一部は粒子径が、20nm以下である。

【0018】
本発明の複合体は、重合体からなる連続相と、この連続相に触媒金属ナノ粒子が分散した複合体である。
重合体は、炭素数2~6の範囲の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基単位及びフェニレン基単位の重合体からなる連続相である。アルキレン基単位は、直鎖の場合、エチレン単位、n-プロピレン単位、n-ブチレン単位、n-ペンチレン単位、n-ヘキシレン単位であることができる。直鎖アルキレン基単位は、好ましくは、エチレン単位またはn-ブチレン単位である。アルキレン基単位は、分岐鎖の場合、各末端が3つのフェニレン基単位のそれぞれと結合したiso-プロピレン単位、各末端が3つのフェニレン基単位のそれぞれと結合した2-エチルブチレン単位であることができる。直鎖アルキレン基単位と分岐鎖アルキレン基単位とは、1つの重合体において併存することができる。例えば、エチレン単位と各末端が3つのフェニレン基単位のそれぞれと結合したiso-プロピレン単位は、1つの重合体において併存することができ、n-ブチレン単位と各末端が3つのフェニレン基単位のそれぞれと結合した2-エチルブチレン単位1つの重合体において併存することができる。

【0019】
アルキレン基単位(例えば、エチレン単位)とフェニレン基単位は、交互に存在することが好ましい。

【0020】
さらに、アルキレン基単位はフェニレン基単位の少なくとも1及び4位に結合するものであり、好ましくは、アルキレン基単位はフェニレン基単位の1及び4位に結合するものである。但し、アルキレン基単位はフェニレン基単位の1、2及び4位又は1、2、4及び5位に結合する場合も、本発明の複合体は包含し得る。

【0021】
上記重合体は、少なくともジアルキル置換ベンゼンを重合させることで得られる重合体である。ジアルキル置換ベンゼンの場合、異なるジアルキル置換ベンゼン分子のアルキル基同士が、脱水素縮合して、アルキレン基を形成して重合体となる。ジアルキル置換ベンゼンが例えば、ジメチルベンゼン、即ちキシレンの場合には、2つのキシレン分子が有する2つのメチレン同士が脱水素縮合してエチレン基を形成して重合体となる。あるいは、3つのキシレン分子が有する3つのメチレン同士が脱水素縮合して各末端が3つのフェニレン基単位のそれぞれと結合したiso-プロピレン単位を形成して重合体となる。重合体の形成は、触媒金属ナノ粒子の分散と並行して行われるので、この点の詳細については詳述する。

【0022】
本発明の複合体の連続相を構成する重合体においては、アルキレン基単位はフェニレン基単位の少なくとも1及び4位に結合するものである。この構成を有することで、本発明の複合体を触媒又は触媒前駆体として用いた場合に、より好ましい特性を有する。詳細については後述する。

【0023】
本発明の複合体の連続相を構成する重合体は、硫酸基架橋を有することができ、硫酸基架橋は、アルキレン基単位の間に存在することができる。硫酸基架橋の含有量は、アルキレン基単位とのモル比で、0.0001~0.5の範囲であることができる。好ましくは0.001~0.3の範囲である。

【0024】
硫酸基架橋を有する本発明の複合体の連続相を構成する重合体の模式図を以下に示す。但し、本発明における上記重合体は、下記模式図の繰り返し単位を有するものではなく、下記模式図は、直鎖アルキレン基単位、分岐鎖アルキレン基単位及び硫酸基架橋の存在を模式的に示すことを目的とするものであり、1つの重合体において、エチレン単位と各末端が3つのフェニレン基単位のそれぞれと結合したiso-プロピレン単位と硫酸基架橋が、1つの重合体において併存することを例示的に示すものである。

【0025】
【化1】
JP0006473101B2_000002t.gif

【0026】
本発明の複合体の連続相中に分散される触媒金属ナノ粒子を構成する触媒金属は、有機合成に用いられる反応、好ましくは新たな結合を形成する反応、より好ましくは炭素-炭素結合若しくは炭素‐窒素結合若しくは炭素-酸素結合を新たに形成する、反応に対して触媒活性を有しているものであれば良い。そのような触媒金属としては、遷移金属を挙げることができ、具体的には、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金及び金から成る群から選ばれる少なくとも1種の金属であることができる。カップリング反応における触媒という観点からは、触媒金属は、例えば、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金又は金などが好ましく、ニッケル、ルテニウム、パラジウム、白金及び金であることがより好ましい。

【0027】
触媒金属ナノ粒子の少なくとも一部は、粒子径が、2~20nmの範囲であることができる。触媒金属ナノ粒子の粒子径は、カップリング反応における触媒活性に影響を与え、比較的細かいことが好ましい。従って、この点を考慮すると触媒金属ナノ粒子の少なくとも一部は、粒子径が、2~18nmの範囲、より好ましくは2~16nmの範囲、さらに好ましくは2~15nmの範囲である。尚、触媒金属ナノ粒子の種類によって、粒子径の範囲は異なることができ、例えば、Pdナノ粒子の場合、その少なくとも一部は粒子径が、2~10nmの範囲、好ましくは2~8nmの範囲であることができる。また、触媒金属ナノ粒子がNiナノ粒子の場合、その少なくとも一部は粒子径が、5~20nmの範囲、好ましくは10~18nmの範囲であることができる。触媒金属ナノ粒子がRuナノ粒子の場合、その少なくとも一部は粒子径が、5~20nmの範囲、好ましくは10~18nmの範囲であることができる。触媒金属ナノ粒子がPtナノ粒子の場合、その少なくとも一部は粒子径が、5~20nmの範囲、好ましくは10~18nmの範囲であることができる。触媒金属ナノ粒子がAuナノ粒子の場合、その少なくとも一部は粒子径が、5~20nmの範囲、好ましくは10~18nmの範囲であることができる。

【0028】
重合体からなる連続相の質量と触媒金属ナノ粒子の質量の比は、特に制限はないが、触媒活性等を考慮すると、例えば、100:0.1~10の範囲であり、好ましくは例えば、100:0.5~5の範囲であることができる。但し、これらの範囲に限定される意図ではない。

【0029】
本発明は、本発明の複合体及び前記複合体を表面の少なくとも一部に有する基板を含む複合構造体を包含する。本発明の複合体における連続相は、適当な基板上に形成することが、構造を維持し、かつハンドリングの容易さという観点から好ましい。基板としては、例えば、金属、ガラス、セラミックス又は樹脂を挙げることができる。基板は、例えば、板状、メッシュ状、円筒状、コイル状若しくは粒子状の形状又はこれらの組み合わせ形状を有することができる。

【0030】
<複合体の製造方法>
本発明の複合体の製造方法を複合構造体の製造を例に、以下に説明する。
以下に、複合体の連続相を構成する重合体が硫酸基架橋を有する場合と、硫酸基架橋を有しない場合とに分けて説明する。

【0031】
<重合体が硫酸基架橋を有する>
工程(1)
表面に硫黄(S)を結合又は吸着させた基板を形成する。
この形成には、ピランハ溶液(ピラニア溶液と言うこともある)を用いる代わりに、過硫酸塩及び硫酸の水溶液を用いることができる。過硫酸塩としては過硫酸ナトリウム(Na228)を用いることが、高い活性を有する触媒又は触媒前駆体を調製できるという観点から好ましい。過硫酸ナトリウム及び硫酸の水溶液における過硫酸ナトリウム濃度及び硫酸濃度は、基板表面への所望の硫黄(S)の結合又は吸着量、さらには、重合体への硫酸基架橋の導入量等を考慮して適宜決定することができる。基板は、過硫酸塩及び硫酸の水溶液に例えば、1~30分間浸し、その後、必要により洗浄及び乾燥させることで、硫黄(S)が結合又は吸着した基板を得ることができる。但し、この処理では、過硫酸塩及び硫酸の水溶液と表面が反応しにくい材料からなる基板を用いる。例えば、金属やガラスである。

【0032】
工程(2)
表面に硫黄(S)を結合又は吸着させた基板の前記表面上で、触媒金属化合物の存在下で、2以上のアルキル基を有するベンゼン化合物を脱水素縮合させて、複合体を形成する。2以上のアルキル基を有するベンゼン化合物は、アルキル基は、炭素数1~3であり、かつ2つのアルキル基を有する場合には、1及び4位にアルキル基を有する。3つまたは4つのアルキル基を有するベンゼン化合物であることもでき、その場合には、1、2及び4位又は1、2、4及び5位にアルキル基を有する。2以上のアルキル基は、同一であることが好ましいが、異なることもできる。代表的な2以上のアルキル基を有するベンゼン化合物は、パラキシレン(パラジメチルベンゼン)及びパラジエチルベンゼンである。また、異なる種類のベンゼン化合物を併用することもできる。触媒金属は、前述したものであり、その化合物としては、例えば、触媒金属の塩や錯体であることができる。触媒金属化合物としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの無機塩、又は、酢酸塩、乳酸塩などの有機酸塩などの金属の塩、並びに、ホスフィン錯体、アセチルアセトナート錯体、dba(dibenzylidenacetone)などの金属錯体などが挙げられる。有機金属錯体としては、必ずしも金属-炭素の結合を有するものに限定されるものではなく、配位子部分に有機物質を含有している錯体であってもよく、好ましい有機金属錯体としては、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(Pd(PPh34)、ジベンジリデンアセトンパラジウム(Pd(dba)2)などが挙げられる。但し、これらに限定される意図ではない。

【0033】
触媒金属化合物が例えば、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)であり、ベンゼン化合物がp-キシレンの場合を例に説明する。酢酸パラジウムのp-キシレン溶液中で、上記基板を加熱下に浸漬する。加熱は、ベンゼン化合物の沸点を考慮して適宜決定でき、p-キシレン(沸点138℃)の場合には、沸点以下の例えば、80~138℃で行うことができる。加熱中は、溶液を攪拌することが触媒金属化合物の分散を容易にするという観点から好ましい。加熱時間は、例えば、1~24時間とすることができる。この加熱工程において、硫黄(S)を結合又は吸着させた基板の表面上でp-キシレンの重合体が生成し、かつ重合体中に酢酸パラジウムに由来するパラジウムナノパーティクルが分散状態で生成する。次いで、得られた基板を所望により、p-キシレン(好ましくは上記で使用したベンゼン化合物と同じベンゼン化合物)で洗浄し、乾燥する。

【0034】
次いで、得られた基板をさらに、p-キシレン(好ましくは上記で使用したベンゼン化合物と同じベンゼン化合物)からなる溶液中、前記加熱温度より高温で加熱することが好ましい。加熱温度は、上記と同様に、ベンゼン化合物の沸点を考慮して適宜決定でき、p-キシレン(沸点138℃)の場合には、沸点以下の例えば、100~138℃で行うことができる。加熱時間は、例えば、1~24時間とすることができる。前段の加熱において、重合体中に分散状態パラジウムナノパーティクルが形成するが、未反応の触媒金属化合物が残存することがある。そこで、この加熱処理は、未反応の触媒金属化合物の除去またはナノパーティクルへの変換促進に寄与する。加熱した後、必要により、p-キシレン(好ましくは上記で使用したベンゼン化合物と同じベンゼン化合物)で洗浄し乾燥することができる。

【0035】
このようにして層状の重合体中に自己組織的に触媒金属(例えば、パラジウム)のナノパーティクルが分散した複合体が基板表面に形成される。

【0036】
<重合体が硫酸基架橋を有しない場合>
硫酸基架橋を有しない重合体を製造する場合には、上記工程(2)を、工程(1)を経ることなく準備した基板について実施することができる。基板の表面は、特に前処理することなしに、上記工程(2)に供することができ、あるいは、所望により上記工程(2)に供する前に、常法により清浄化することもできる。この方法では、工程(1)を経ないので、基板には、工程(2)における加熱処理に耐え得る材料からなる基板を用いることで実施できる。

【0037】
基板の表面に形成される本発明の複合体は、例えば、10~1000nmの厚みであることができ、実用上は、20~200nmの範囲の厚みを有することができる。複合体の厚みは、上記工程(2)における処理条件を選択することで適宜変動することができる。さらに、複合体の重合体に含まれる触媒金属ナノパーティクルの量も、上記工程(2)における処理条件、例えば、触媒金属の加熱処理への添加量等を選択することで適宜変動することができる。

【0038】
<触媒又は触媒前駆体>
本発明は、前記本発明の複合体又は複合構造体を含むカップリング反応用触媒又は触媒前駆体を包含する。カップリング反応は、例えば、少なくとも原料の一部又は添加剤としてハロゲン化炭化水素を用いる反応であることができる。さらにカップリング反応は、炭素-炭素結合形成反応又は炭素-窒素結合形成反応であることができる。

【0039】
<触媒前駆体を用いる反応>
本発明の触媒前駆体は、それ自体で触媒活性を示さず、例えば、所望の反応溶液に浸漬されることによって、複合体(触媒前駆体)を構成する重合体に担持されている触媒金属ナノパーティクルが徐放され、当該徐放された触媒金属ナノパーティクルが触媒活性種となる。例えば、本発明に係る触媒前駆体の使用方法は、溶液中に、原料として又は原料の一部として、ハロゲン化炭化水素化合物を存在させ、溶液中に本発明に係る触媒前駆体を浸漬することによって、触媒前駆体から触媒活性種であるナノパーティクルを放出させる方法である。ここで、ハロゲン化炭化水素化合物については、後述する各反応の説明において例示する。

【0040】
本発明の触媒前駆体、例えば、メッシュ形状の触媒前駆体を用いる有機反応としては、メッシュ上に担持されている触媒金属ナノパーティクルが活性を示す反応であればよく、特定の反応に限定されるものではない。前述で例示した新しい結合を形成する反応に限定されるものではなく、水素還元反応、不斉合成反応、置換反応などの各種の反応を包含するものである。

【0041】
<カップリング生成物の製造方法>
本発明は、前記本発明の複合体又は複合構造体を用いて、複数の有機化合物をカップリング反応させてカップリング生成物を得ることを含むカップリング生成物の製造方法を包含する。前記カップリング反応は、触媒前駆体から触媒活性種である触媒金属ナノパーティクルの放出を促進させ、カップリング反応に効率的に供するという観点からは、少なくとも原料の一部又は添加剤としてハロゲン化炭化水素を用いることが好ましい。前記カップリング反応は、例えば、炭素-炭素結合形成反応又は炭素-窒素結合形成反応であることができる。カップリング反応の具体例は後述する。

【0042】
(鈴木-宮浦カップリング)
本発明は、前述した本発明の触媒前駆体を用いて、当該金属触媒前駆体を反応原料である有機化合物に接触させて、炭素と炭素、又は炭素とヘテロ原子との間に新たな結合を生じさせる反応による有機化合物の製造方法を提供するものである。本発明の金属触媒前駆体を用いた有機化合物の製造方法としては、好ましくは、アリールハライド又はアルケニルハライドと、アリールボロン誘導体又はビニルボロン誘導体との縮合反応によって、ジアリール誘導体、アルケニルアリール誘導体又は1,3-ジエン類の製造方法が挙げられる。例えば、ハロゲン化ベンゼンとフェニルボロン酸とを縮合させてビフェニル誘導体を製造する方法が挙げられる。

【0043】
本発明のこの製造方法におけるアリールハライド又はアルケニルハライドのハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子などが挙げられる。アリールハライドのアリール基としては、炭素環式芳香族基や複素環式芳香族基が挙げられる。炭素環式芳香族基としては、炭素数6~36、好ましくは炭素数6~18、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基が挙げられる。このような炭素環式芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントリル基などが挙げられる。また、複素環式芳香族基としは、1個~4個、好ましくは1~3個又は1~2個の窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子からなる異種原子を含有する3~8員、好ましくは5~8員の環を有する単環式、多環式、又は縮合環式の複素環基が挙げられる。このような複素環基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、インドール基、ベンゾイミダゾリル基などが挙げられる。これらのアリール基はさらに置換基を有していても良く、このような置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はなく、例えば、前記したハロゲン原子、ニトロ基、置換又は非置換の炭素数1~20好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシ基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。また、アルケニルハライドのアルケニル基としては、置換又は非置換のビニル基であり、当該ビニル基の置換基としては、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルケニル基、置換又は非置換の炭素数6~20好ましくは6~10のアリール基、置換又は非置換の炭素数7~20、好ましくは7~12のアラルキル基などが挙げられる。これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0044】
また、この製造方法における、ボロン誘導体としては、オルトホウ酸のモノ、ジ若しくはトリエステル又はこれらの誘導体が挙げられるが、必ずしもオルトホウ酸又はこの誘導体に限定されるものではない。アリールボロン誘導体のアリール基としては、置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基、ピリジン基、フリル基などの芳香環が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限なく、例えば、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシ基などが挙げられる。ビニルボロン誘導体のビニル基としては、置換又は非置換ビニル基が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0045】
本発明のこの製造方法は、アセトニトリル、エタノールなどの極性溶媒中で行うのが好ましい。反応温度としては、室温から溶媒の沸点温度までの範囲で選択できる。

【0046】
本発明の触媒前駆体は固相であるから、反応終了後、固相の触媒前駆体を除き、濃縮、抽出などの通常の処理方法により目的の生成物を分離し、各種精製手段により目的物を精製、単離することが出来る。

【0047】
(溝呂木-Heck反応)
本発明の金属触媒前駆体を用いた有機化合物の製造方法としては、アルケン類と、炭素-炭素二重結合を持つハライド又は炭素-炭素二重結合を持つスルホネートとの縮合反応によるアリールアルケン類又は1,3-ジエンの製造方法が挙げられる。

【0048】
この製造方法における、アルケン類としては、少なくとも1個の水素原子を有するエチレン誘導体が挙げられる。好ましくはエチレンの少なくとも1個の水素原子がケト基、置換又は非置換のアルコキシカルボニル基、及び/又は、置換又は非置換のアリール基が置換したエチレン誘導体が挙げられる。当該アリール基としては前記した炭素環式芳香族基、複素環式芳香族基が挙げられる。これらの置換基としては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はなく、例えば、前記した置換基などが挙げられる。より好ましいアルケン類としては、置換又は非置換の3-ケトアルケン類、置換又は非置換のスチレン誘導体、置換又は非置換の(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。当該アクリル酸エステル類のエステル残基としては、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はない。好ましいアルケン類の例としては、例えば、アクリル酸メチルなどのアクリル酸エステル類、3-ケトブテンなどの3-ケトアルケン類、スチレンなどのスチレン誘導体が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。

【0049】
この製造方法における、炭素-炭素二重結合を持つハライドのハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子などが挙げられる。炭素-炭素二重結合を持つスルホネートとしては、スルホン酸又はその誘導体が挙げられ、例えばスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩などの各種の金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。炭素-炭素二重結合を持つ基としては、脂肪族の炭素-炭素二重結合、芳香族の炭素-炭素二重結合を持つ基であればよく、例えば、置換又は非置換のビニル基、置換又は非置換のアリール基が挙げられ、アリール基としては前記した炭素環式芳香族や複素環式芳香族基などが挙げられる。また、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0050】
この製造方法は、アセトニトリル、エタノールなどの極性溶媒中で行うのが好ましい。反応温度としては、室温から溶媒の沸点温度までの範囲で選択できる。

【0051】
本発明の触媒前駆体は固相であるから、反応終了後、固相の触媒前駆体を除き、濃縮、抽出などの通常の処理方法により目的の生成物を分離し、各種精製手段により目的物を精製、単離することが出来る。

【0052】
(Stilleカップリング)
本発明の金属触媒前駆体を用いた有機化合物の製造方法としては、炭素‐炭素二重結合を持つスズ化合物と、アリールハライド又はアルケニルハライドとの縮合反応によるビアリール類、アリールアルケン類または、1,3-ジエンの製造方法が挙げられる。

【0053】
この製造方法における、スズ化合物の有する置換基としては、アリール基が挙げられ、例えば置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基、ピリジン基、フリル基などの芳香環が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限なく、例えば、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシ基などが挙げられる。また、ビニル基を有するスズ化合物でもよく、そのビニル基としては、置換又は非置換ビニル基が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0054】
この製造方法は、アセトニトリル、エタノールなどの極性溶媒中で行うのが好ましい。反応温度としては、室温から溶媒の沸点温度までの範囲で選択できる。

【0055】
本発明の触媒前駆体は固相であるから、反応終了後、固相の触媒前駆体を除き、濃縮、抽出などの通常の処理方法により目的の生成物を分離し、各種精製手段により目的物を精製、単離することが出来る。

【0056】
(園頭カップリング)
本発明の金属触媒前駆体を用いた有機化合物の製造方法としては、アルキン類と炭素-炭素二重結合を持つハライドとの縮合反応によるアリールアルキン類又はアルキニルアルキンを提供する製造方法が挙げられる。

【0057】
この製造方法における、アルキン類の置換基としては、置換又は非置換のフェルニル基、ナフチル基、ピリジル基、フリル基などの芳香族基が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はなく、例えば、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシ基などが挙げられる。また、アルキン類の置換基としては、置換又は非置換ビニル基が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0058】
この製造方法における、炭素-炭素二重結合を持つハライドのハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などが挙げられる。炭素-炭素二重結合を持つスルホネートのスルノネートとしてはスルホン酸又はその誘導体が挙げられ、例えばスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩などの各種の金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。炭素-炭素二重結合を持つ基としては、脂肪族の炭素-炭素二重結合、芳香族の炭素-炭素二重結合を持つ基であればよく、例えば、置換又は非置換のビニル基置換又は非置換のアリール基が挙げられ、アリール基としては前記した炭素環式芳香族や複素環式芳香族基などが挙げられる。また、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0059】
この製造方法は、アセトニトリル、エタノールなどの極性溶媒中で行うのが好ましい。反応温度としては、室温から溶媒の沸点温度までの範囲で選択できる。

【0060】
本発明の触媒前駆体は固相であるから、反応終了後、固相の触媒前駆体を除き、濃縮、抽出などの通常の処理方法により目的の生成物を分離し、各種精製手段により目的物を精製、単離することが出来る。

【0061】
(Buchwald‐Hartwigカップリング)
本発明の金属触媒前駆体を用いた有機化合物の製造方法としては、炭素-ヘテロ原子結合形成反応を利用する製造方法が挙げられ、好ましくは炭素-酸素又は炭素‐硫黄、より好ましくは炭素-窒素の結合形成反応を利用した、例えば1つ以上のアルキル基又はアリール基をもつアミン類と炭素-炭素二重結合を持つハライドとの縮合反応による置換アミン類の製造方法が挙げられる。

【0062】
この製造方法における、アミン類の置換基としては、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、或いは、置換又は非置換のフェルニル基、ナフチル基、ピリジル基、フリル基などの芳香族基が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はなく、例えば、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシ基などが挙げられる。

【0063】
この製造方法における、炭素-炭素二重結合を持つハライドのハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などが挙げられる。炭素-炭素二重結合を持つスルホネートのスルノネートとしては、スルホン酸又はその誘導体が挙げられ、例えばスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩などの各種の金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。炭素-炭素二重結合を持つ基としては、脂肪族の炭素-炭素二重結合、芳香族の炭素-炭素二重結合を持つ基であればよく、例えば、置換又は非置換のビニル基、置換又は非置換のアリール基が挙げられ、アリール基としては前記した炭素環式芳香族や複素環式芳香族基などが挙げられる。また、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0064】
この製造方法は、アセトニトリル、エタノールなどの極性溶媒中で行うのが好ましい。反応温度としては、室温から溶媒の沸点温度までの範囲で選択できる。

【0065】
本発明の触媒前駆体は固相であるから、反応終了後、固相の触媒前駆体を除き、濃縮、抽出などの通常の処理方法により目的の生成物を分離し、各種精製手段により目的物を精製、単離することが出来る。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定される意図ではない。
【実施例】
【0067】
実施例1
<p-キシレンを用いた実施例(Pd)>
「金基板にパラジウム錯体を吸着させてなる自己組織的多層状パラジウムナノパーティクル」の作製方法
濃硫酸(4.7g),Na228(4.0g)、水(4g)及び氷(13g)から調製されたピランハ溶液に、メッシュ状金基板(12×14 mm,100 mesh)を5分間浸し、水とエタノールで洗浄し、減圧下で乾燥させ、硫黄(S)が結合又は吸着した金基板を得た。得られた硫黄(S)が結合又は吸着した金基板を酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)(5.3mg)のp-キシレン溶液(3.0mL)中で、100℃で12時間攪拌し、得られた基板をp-キシレンからなる洗浄液で洗浄し、6mmHgの減圧下室温で乾燥させた。そして、得られたこの基板をp-キシレンからなる溶液中、135℃で12時間、加熱した後、p-キシレンからなる溶液で充分に洗浄した。その後、6mmHgの減圧下室温で10分間、真空乾燥し、本発明の基板付き複合体(PdNSXP(anoparticle ulfated ylene olyer))を得た。
【実施例】
【0068】
上記で得た本発明の基板付き複合体の断面TEM像を図1及び2に示す。さらに、断面SEM-EELS像を図3に示す。これらの結果から、長径が3~8nmの範囲のパラジウムナノパーティクル(PdN)が炭素性の層中に分散していること、硫黄がパラジウムナノパーティクルに付随して存在することが分かる。
【実施例】
【0069】
図4には、上記で得た本発明の基板付き複合体(図中PdNSXPと表示する)のX線吸収微細構造(XAFS Pd-K)のスペクトルを示す。図4には、参照用としてPdホイル、PdO、PdSO4、PdS及びPd(PPh34の結果も併記する。上記複合体中のPdは、スペクトルの形状がPdホイルと近似しており、金属Pdであることを示唆する。
【実施例】
【0070】
さらに図5に、上記で得た本発明の基板付き複合体(図中PdNSXP beforeと表示する)のX線吸収微細構造(Pd-K edge extended XAFS )のスペクトルを示す。図5には、参照用としてPdホイルのスペクトルも示す。この結果から、上記複合体中のPdは、スペクトルの形状がPdホイルと近似しており、金属Pdであること、さらには粒子径が3nmであることを示す。
【実施例】
【0071】
図6には、上記で得た本発明の基板付き複合体(図中PdNSXPと表示する)のX線吸収微細構造(XAFS Pd-K)のスペクトルを示す。図7には参照用として硫黄を含有する種々の化合物のX線吸収微細構造(XAFS Pd-K)の結果を示す。
【実施例】
【0072】
図8には、上記で得た本発明の基板付き複合体(PdNSXP)のX線吸収微細構造(XAFS C-K)の結果を示す。参照用としてAuPd、PalyleneN、PalyleneCの結果も併記する。これらの結果から、本発明の複合体は、PalyleneNに類似する構造を有する重合体を含むこと、及び複合体中の硫黄は、硫酸基として存在することが分かる。
【実施例】
【0073】
実施例2-1
<触媒前駆体を用いた鈴木-宮浦カップリング>
ヨードベンゼン(102mg)、4-クロロフェニルボロン酸(117mg)、炭酸カリウム(138mg)のエタノール溶液(3ml)に実施例1で調製したメッシュ状の本発明の基板付き複合体(PdNSXP=触媒前駆体)(12×14mm)を加えて、12時間80℃で加熱した。その後反応溶液を室温まで冷まし、触媒前駆体をエタノールで洗浄して反応溶液から除去した。その反応溶液から溶媒を減圧下で留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン)で精製することにより、目的の4-クロロビフェニルを定量的に得た。また、除去した触媒前駆体を同様に反応させることにより、2回目の使用においても定量的に目的の4-クロロビフェニルを得た。さらに、この繰り返しは100回以上可能であった。
【実施例】
【0074】
図4には、上記反応に10回使用した後の触媒前駆体のX線吸収微細構造(XAFS Pd-K)のスペクトルを示す。この図7中のPdNSXP SM afterとして表示する。反応前の触媒前駆体のXAFS Pd-Kのスペクトルも図7に併記する。図7の結果から、上記反応に10回使用した後の触媒前駆体中のPdは、反応前の触媒前駆体のPdとスペクトルの形状に変化はなく、Pdナノパーティクルが含まれていることを示唆する。
【実施例】
【0075】
実施例2-2
<触媒前駆体を用いたBuchwald-Hartwig反応>
JP0006473101B2_000003t.gif プロムベンゼン(0.32mmol)、モルホリン(1.2当量)、tert-ブトキシカリウム(1.4当量)のキシレン溶液(1.0mL)に実施例1で調製した触媒前駆体を入れ、130℃で7時間加熱した。その後、反応溶液を室温まで冷まし、触媒前駆体をエタノールで洗浄して反応溶液から除去した。その反応溶液から溶媒を減圧下で留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製することにより、目的の4-フェニル‐モルホリンを得た。また、除去した触媒前駆体を同様に反応させることにより、2回目以降10回目の使用においても目的の4-フェニル-モルホリンを得た。10回の平均収率は92%であった。反応10回後のPd担持量は68±18μgであった。
【実施例】
【0076】
各回の反応液をICP-MSに供して溶液中に溶けだしたPd量を測定した。結果を表1に示す。
【実施例】
【0077】
【表1】
JP0006473101B2_000004t.gif
【実施例】
【0078】
図4には、上記Buchwald-Hartwig反応に10回使用した後の触媒前駆体のX線吸収微細構造(XAFS Pd-K)のスペクトルをPdNSXP BH afterとして表示する。反応前の触媒前駆体のXAFS Pd-Kのスペクトルも図4に併記する。図4の結果から、上記反応に10回使用した後の触媒前駆体中のPdは、反応前の触媒前駆体のPdとスペクトルの形状に変化はなく、Pdナノパーティクルが含まれていることを示唆する。
【実施例】
【0079】
実施例2-3
<触媒前駆体を用いたBuchwald-Hartwig反応>
実施例2-2と同様の条件で、但し、実施例1で調製した触媒前駆体を反応用原料混合液に入れ、130℃で(条件A)30分後に触媒前駆体を取り出して、その後130℃で加熱して反応収率を測定した。(条件B)触媒前駆体の取り出しを2時間後に行った以外条件Aと同様に実施した。(条件C)触媒前駆体の取り出しを行うことなく、条件Aと同様の条件で実施した。反応収率を経時変化を図9に示す。図9の結果及び下記表2の結果から、所定量のPdナノパーティクルが反応溶液に溶出するには、一定以上の時間が必要であることが分かる。この系では30分では、反応に必要量のPdナノパーティクルが反応溶液に溶出していないこと、2時間であれば、反応に必要量のPdナノパーティクルが反応溶液に溶出していることが分かる。
【実施例】
【0080】
さらに、反応開始後30分、2時間及び7時間における反応溶液中に溶けだしたPd量(ng)を表2に示す。
【実施例】
【0081】
【表2】
JP0006473101B2_000005t.gif
【実施例】
【0082】
実施例3
<Niを用いた実施例>
実施例1で得られた硫黄(S)が結合又は吸着した金基板をNi(acac)2(5.9~11.8mg)、トリオクチルフォスフィン(200~70μL)のジエチルベンゼン(2~3mL)溶液に入れ、190~200℃で12時間撹拌した。その後、得られた基板をp-キシレンで洗浄し、減圧下で乾燥させ、p-キシレン(3mL)に入れ、135℃で12時間加熱した。その後、p-キシレンで洗浄し、続いて減圧下で乾燥させることにより本発明の基板付き複合体(NiNSXP)を得た。上記で得た本発明の基板付き複合体の断面TEM像を図10に示す。この結果から、直径が約15nmのNiナノパーティクル(NiN)が炭素性の層中に分散していることが分かる。特にNiナノパーティクルの直径のバラツキが非常に小さいことが特徴的である。
【実施例】
【0083】
実施例4
<基板表面にNiが存在する触媒前駆体を用いた鈴木-宮浦カップリング>
4-ブロモアセトフェノン(49.8mg)、フェニルボロン酸(45.7mg)、炭酸カリウム(69mg)の1,4-ジオキサン(1mL)に実施例3で調製した本発明の基板付き複合体(NiNSXP=触媒前駆体)を加えて、12時間100℃で加熱した。その後反応溶液を室温まで冷まし、触媒前駆体をエタノールで洗浄して反応溶液から除去した。その反応溶液から溶媒を減圧下で留去後、NMRで反応混合物の一部を分析することにより、目的の4-アセチルビフェニルを33%で得た。また、除去した触媒前駆体を同様に反応させることにより、13~33%の収率で10回の再利用が可能であった。
【実施例】
【0084】
実施例5
<金に代わってガラスを用いた実施例>
「ガラス基板にパラジウム錯体を吸着させてなる金属触媒前駆体」の作製方法
濃硫酸(4.7g),Na228(4.0g)、水(4g)及び氷(13g)から調製されたピランハ溶液に、ガラス板(10×11mm)を5分間浸し、水とエタノールで洗浄し、減圧下で乾燥させ、硫黄(S)が結合又は吸着したガラス基板を得た。得られた硫黄(S)が結合又は吸着したガラス基板を酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)(5.3mg)のp-キシレン溶液(3.0mL)中で、100℃で12時間攪拌し、パラジウム(Pd)を結合又は吸着させた。その後、得られた基板をp-キシレンからなる洗浄液で洗浄し、6mmHgの減圧下室温で乾燥させ、硫黄(S)が結合又は吸着したガラス板にPdが結合又は吸着した粗金属触媒を得た。そして、得られた粗金属触媒をp-キシレンからなる溶液中、135℃で12時間、加熱した後、p-キシレンからなる溶液で充分に洗浄した。その後、6mmHgの減圧下室温で10分間、真空乾燥し、本発明の基板付き複合体(PdNSXP)を得た。
【実施例】
【0085】
実施例6
<ガラス板を使用した触媒前駆体を用いる鈴木-宮浦カップリング>
実施例5で調製した本発明のガラス基板付き複合体(自己組織的多層状パラジウムナノパーティクル)(10×11mm)をブロモベンゼン(77.1mg)、4-クロロフェニルボロン酸(117mg)、炭酸カリウム(138mg)のエタノール溶液(3mL)に投入し、12時間、80℃で加熱した。その後反応溶液を室温まで冷まし、反応溶液の一部を採取して、HPLCを用いて収率を算出したところ、目的の4-クロロビフェニルが89%の収率で生成していた。また、除去したガラスを用いたPdNSXPを同様に反応させることにより、80%以上の収率で10回の再利用が可能であった。
【実施例】
【0086】
実施例7
<ピラニア処理をしない実施例(Pd)>
「金基板にパラジウム錯体を吸着させてなる自己組織的多層状パラジウムナノパーティクル」の作製方法
金基板(12×14 mm,100 mesh)を酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)(5.3mg)のp-キシレン溶液(3.0mL)中で、100℃で12時間攪拌し、パラジウム(Pd)を結合又は吸着させた。その後、得られた基板をp-キシレンからなる洗浄液で洗浄し、6mmHgの減圧下室温で乾燥させた。そして、得られたものをp-キシレンからなる溶液中、135℃で12時間、加熱した後、p-キシレンからなる溶液で充分に洗浄した。その後、6mmHgの減圧下室温で10分間、真空乾燥し、本発明の本発明の基板付き複合体(PdNSXP)を得た。
【実施例】
【0087】
実施例8
<ピラニア処理をしていない触媒前駆体を用いた鈴木-宮浦カップリング>
ヨードベンゼン(102mg)、4-クロロフェニルボロン酸(117mg)、炭酸カリウム(138mg)のエタノール溶液(3ml)に実施例7で調製した本発明の基板付き複合体(PdNSXP=触媒前駆体)(12×14mm)を加えて、12時間80℃で加熱した。その後反応溶液を室温まで冷まし、触媒前駆体をエタノールで洗浄して反応溶液から除去した。その反応溶液から溶媒を減圧下で留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン)で精製することにより、目的の4-クロロビフェニルを90%の収率で得た。また、除去したメッシュ状の触媒前駆体を同様に反応させることにより、2回目及び3回目の使用における収率は87%及び81%であった。
【実施例】
【0088】
実施例9
<Ruを用いた実施例>
濃硫酸(4.71g),Na2S2O8(4.01g),氷(16.9g)から調製されたピランハ溶液にメッシュ状金基板(12×14mm,100mesh)を5分間浸漬し、水とエタノールで洗浄し、減圧乾燥させ、硫黄(S)が結合又は吸着した金基板を得た。得られた硫黄(S)が結合又は吸着した金基板を酢酸ルテニウム([Ru3O(OAc)6(H2O)3]OAc)(6.7mg)のp-キシレンの溶液(3mL)中で、135℃で12時間撹拌し、得られたこの基板をp-キシレンからなる溶液で十分に洗浄した。その後30分の間減圧乾燥し、本発明の基板付き複合体(RuNSXP)を得た。
上記で得た本発明の基板付き複合体の断面TEM像を図11に示す。これらの結果から、長径が3~5nm範囲のルテニウムナノパーティクル(RuN)が炭素性の層中に分散していること、硫黄がルテニウムナノパーティクルに付随して存在することがわかる。
【実施例】
【0089】
実施例10
<触媒前駆体を用いた鈴木-宮浦カップリング>
4-ヨードアニソール(82.0mg)、フェニルボロン酸(61.1mg)、水酸化ナトリウム(29.2mg)の1,2-ジメトキシエタン(1mL)溶液に実施例9で調製したメッシュ状の本発明の基板付き複合体(RuNSXP=触媒前駆体)(12×14mm)を加えて、8時間105℃で加熱した。その後反応溶液を室温まで冷まし、触媒前駆体を反応溶液から除去した。その反応溶液に水(1mL)を加え、24時間120℃で加熱した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン)で精製することにより、目的の4-メトキシビフェニル57mg(収率87.9%)を得た。
【実施例】
【0090】
実施例11
<繰り返し反応試験>
4-ヨードアニソールの1,2-ジメトキシエタン(1mL)溶液に実施例10で取り出した触媒前駆体を加えて3時間60℃で加熱した。その後反応溶液を室温まで冷まし、触媒前駆体を反応溶液から除去した。その反応溶液にフェニルボロン酸(61.1mg)、水酸化ナトリウム(29.2mg)の水溶液を加え、24時間120℃で加熱した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン)で精製することにより、目的の4-メトキシビフェニル44.5mg(収率68.8%)を得た。
【実施例】
【0091】
実施例12
<Auを用いた実施例>
濃硫酸(4.71g),Na2S2O8(4.01g),氷(16.9g)から調製されたピランハ溶液にメッシュ状金基板(12×14mm,100mesh)を5分間浸漬し、水とエタノールで洗浄し、減圧乾燥させ、硫黄(S)が結合又は吸着した金基板を得た。得られた硫黄(S)が結合又は吸着した金基板を酢酸金(Au(OAc)3)(8.8mg)のクロロホルムとp-キシレンの混合溶液(3mL、クロロホルム:p-キシレン(容量比)=1:2)中で、100℃で12時間撹拌し、得られたこの基板をp-キシレンからなる溶液で十分に洗浄した。その後30分の間減圧乾燥し、本発明の基板付き複合体(AuNSXP)を得た。上記で得た本発明の基板付き複合体の断面TEM像を図12に示す。これらの結果から、長径が3~5nm範囲の金ナノパーティクル(AuN)が炭素性の層中に分散していること、硫黄が金ナノパーティクルに付随して存在することがわかる。
【実施例】
【0092】
実施例13
<Ptを用いた実施例>
濃硫酸(4.71g),Na2S2O8(4.01g),氷(16.9g)から調製されたピランハ溶液にメッシュ状金基板(12×14mm,100mesh)を5分間浸漬し、水とエタノールで洗浄し、減圧乾燥させ、硫黄(S)が結合又は吸着した金基板を得た。得られた硫黄(S)が結合又は吸着した金基板を酢酸白金(Pt(OAc)2)(6.2mg)のp-キシレン溶液(3mL)中で、135℃で12時間撹拌し、得られたこの基板をp-キシレンからなる溶液で十分に洗浄した。その後30分の間減圧乾燥し、本発明の基板付き複合体(PtNSXP)を得た。上記で得た本発明の基板付き複合体の断面TEM像を図13に示す。これらの結果から、長径が2~5nm範囲の白金ナノパーティクル(PtN)が炭素性の層中に分散していること、硫黄が白金ナノパーティクルに付随して存在することがわかる。
【実施例】
【0093】
実施例14
<触媒前駆体を用いた合成反応>
アニリン(47.6mg)、ジイソプロピルアミン(102.2mg)のキシレン(1mL)溶液に実施例14で調製したメッシュ状の本発明の基板付き複合体(PtNSXP=触媒前駆体)(12×14mm)を加えて、12時間135℃で加熱した。その後反応溶液を室温まで冷まし、触媒前駆体を反応溶液から除去した。その反応溶液には薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーにより目的物であるN-イソプロピルアニリンの単一の生成物が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、カップリング反応用触媒又は触媒前駆体に関連する分野に有用である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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