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明細書 :超格子構造体、およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-149615 (P2018-149615A)
公開日 平成30年9月27日(2018.9.27)
発明の名称または考案の名称 超格子構造体、およびその製造方法
国際特許分類 B82B   3/00        (2006.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
C12N  15/00        (2006.01)
G02B   5/20        (2006.01)
FI B82B 3/00
B82Y 40/00
B82Y 30/00
C12N 15/00 Z
G02B 5/20
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2017-046570 (P2017-046570)
出願日 平成29年3月10日(2017.3.10)
発明者または考案者 【氏名】鷲見 隼人
【氏名】田川 美穂
【氏名】宇治原 徹
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100087723、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 修
【識別番号】100165962、【弁理士】、【氏名又は名称】一色 昭則
【識別番号】100206357、【弁理士】、【氏名又は名称】角谷 智広
審査請求 未請求
テーマコード 2H148
Fターム 2H148AA07
2H148AA09
要約 【課題】乾燥状態でも超格子の対称性が維持されるようにすること。
【解決手段】まず、ナノ粒子10が溶液に混合、分散されたコロイド溶液に、核酸11を含む溶液を混合し、ナノ粒子10の表面に核酸11を修飾する。次に、溶液を所定の温度まで加熱し、必要に応じて一定時間保持する。その後、室温まで徐冷し、ナノ粒子10の超格子構造体を形成する。次に、溶液中に凝集して沈殿した超格子構造体を溶液から取り出し、乾燥させる。この乾燥において、ナノ粒子10の粒径が14nm以上であれば、または、乾燥前の溶液中の超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率が6%以上であれば、超格子構造体は、その対称性を維持したまま、乾燥する。
【選択図】図9
特許請求の範囲 【請求項1】
ナノ粒子が規則的に配列された超格子構造体の製造方法において、
前記ナノ粒子と、塩基配列の少なくとも一部に相補結合する相補結合部を有した核酸と、を溶液中に混合して、前記ナノ粒子の表面に核酸を修飾し、
所定温度まで加熱後に徐冷することで、前記ナノ粒子間を前記核酸の相補結合部により相補結合させて、前記ナノ粒子間を結合して超格子構造体を形成し、その超格子構造体における前記ナノ粒子の体積率が6%以上となるようにし、
前記溶液から前記超格子構造体を取り出して、超格子の対称性を維持したまま乾燥させる、
ことを特徴とする超格子構造体の製造方法。
【請求項2】
ナノ粒子が規則的に配列された超格子構造体の製造方法において、
粒径が14nm以上の前記ナノ粒子と、塩基配列の少なくとも一部に相補結合する相補結合部を有した核酸と、を溶液中に混合して、前記ナノ粒子の表面に核酸を修飾し、
所定温度まで加熱後に徐冷することで、前記ナノ粒子間を前記核酸の相補結合部により相補結合させて、前記ナノ粒子間を結合して超格子構造体を形成し、
前記溶液から前記超格子構造体を取り出して、超格子の対称性を維持したまま乾燥させる、
ことを特徴とする超格子構造体の製造方法。
【請求項3】
前記体積率は、前記ナノ粒子の粒径によって制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の超格子構造体の製造方法。
【請求項4】
乾燥後の前記超格子構造体における前記ナノ粒子の体積率は、溶液中の前記超格子構造体における前記ナノ粒子の体積率よりも高い、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の超格子構造体の製造方法。
【請求項5】
乾燥後の前記超格子構造体における前記ナノ粒子の体積率は、20%以上である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の超格子構造体の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥は、自然乾燥である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の超格子構造体の製造方法。
【請求項7】
乾燥後の前記超格子構造体における前記ナノ粒子の最隣接粒子表面間距離は、4nm以上7nm以下である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の超格子構造体の製造方法。
【請求項8】
ナノ粒子が規則的に配列された超格子構造体であって、
前記ナノ粒子は、塩基配列の少なくとも一部に相補結合する相補結合部を有した核酸で修飾され、
前記超格子構造体に占める前記ナノ粒子の体積率が20%以上である、
ことを特徴とする超格子構造体。
【請求項9】
ナノ粒子が規則的に配列された超格子構造体であって、
前記ナノ粒子は、塩基配列の少なくとも一部に相補結合する相補結合部を有した核酸で修飾され、
前記超格子構造体における前記ナノ粒子の最隣接粒子表面間距離は、4nm以上7nm以下である、
ことを特徴とする超格子構造体。
【請求項10】
前記ナノ粒子の粒径は、14nm以上であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の超格子構造体。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、核酸で修飾されたナノ粒子が規則的に配列された超格子構造体に関する。またその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子が規則的に配列された構造体(ナノ粒子の超格子)は、光学材料などの新規材料開発やナノテクノロジーにおいて重要である。近年、DNAにおける塩基配列の相補性を利用して、ナノ粒子の超格子構造体を得る研究がなされている(特許文献1、2、非特許文献1、2)。
【0003】
これら文献には、ナノ粒子を、相補結合する一本鎖の結合部を先端に有したDNAで修飾し、DNAの相補性を利用して、DNAが選択的に二重らせんを形成するようにして、ナノ粒子を自己組織化により超格子構造とすることが記載されている。ナノ粒子の構造化には、ナノ粒子間の相互作用が重要であり、それはナノ粒子の種類、粒径、形状、DNAの塩基配列(全体の長さや結合部の長さなど)を変えることで制御することができる。これにより、ナノ粒子同士をプログラマブルに結合でき、超格子構造もプログラマブルに制御することができる。
【0004】
このナノ粒子超格子構造体の作製方法は、他の作製方法に比べて非常に簡単であることが大きな利点である。具体的には、ナノ粒子をDNAで修飾して、100℃未満から室温領域でアニール(徐冷)するだけで作製することができる。この作製方法では、ナノ粒子が規則的に配列しているドメイン(単結晶ナノ粒子コロイド結晶)が、向きを変えて凝集した多結晶状態になると言われていたが、時間をかけてアニールを行うことで、数マイクロスケールの単結晶を作製することも可能となっている。
【0005】
非特許文献2によれば、単結晶ナノ粒子コロイド結晶は、外形が菱形十二面体であり、各面においてナノ粒子が規則的に配列している様子が確認されている。この菱形十二面体は、体心立方格子の結晶が平衡状態のときに取る形状であり、この平衡形はウルフ多面体と呼ばれている。
【0006】
DNAは溶液中では安定であるが、乾燥すると構造が変化する。DNAが修飾されたナノ粒子の超格子構造体においても、同様に溶液から取り出して乾燥すると、超格子構造が変化すると考えられてきた。電子顕微鏡による観察では、試料を乾燥させる必要があり、溶液中に存在する超格子構造体を直接観察することはできない。そこで、溶液中でDNAをレジンやシリカなどを用いて固定化し、超格子の対称性を維持したまま乾燥させる方法が開発されている。たとえば、前述の非特許文献2のウルフ多面体型の単結晶ナノ粒子コロイド結晶は、シリカでコーティングして電子顕微鏡観察を行った例である。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特表2010-505419号公報
【特許文献2】特開2015-450号公報
【0008】

【非特許文献1】R. J. Macfarlane et al., "Nanoparticle Superlattice Engineering with DNA", Science 334 (2011) 204-208
【非特許文献2】E. Auyeung et al., "DNA-mediated nanoparticle crystallization into Wulff polyhedra", Nature 505 (2014) 73-77
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のDNAで修飾したナノ粒子を用いた超格子構造体の作製方法では、上述のように乾燥によって超格子構造が崩れてしまい、単独では溶液外で安定に存在させることができなかった。そのため、シリカなどでコーティングしてDNAを固定化し、その後に乾燥させる処理が必要であり、非常に手間のかかる方法であった。また、乾燥させずに溶液中に存在する状態では、光学材料や熱輸送材料などへの応用上問題がある。
【0010】
そこで本開示の目的は、超格子構造体を溶液から取り出しても超格子の対称性が維持されるように制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、ナノ粒子が規則的に配列された超格子構造体の製造方法において、ナノ粒子と、塩基配列の少なくとも一部に相補結合する相補結合部を有した核酸と、を溶液中に混合して、ナノ粒子の表面に核酸を修飾し、所定温度まで加熱後に徐冷することで、ナノ粒子間を核酸の相補結合部により相補結合させて、ナノ粒子間を結合して超格子構造体を形成し、その超格子構造体におけるナノ粒子の体積率が6%以上となるようにし、溶液から超格子構造体を取り出して、超格子の対称性を維持したまま乾燥させる、ことを特徴とする超格子構造体の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、溶液中の超格子構造体におけるナノ粒子の体積率の制御により、超格子構造体を溶液から取り出して乾燥しても超格子の対称性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態の超格子構造体を模式的に示した図。
【図2】ナノ粒子10の構成を示した図。
【図3】ナノ粒子10間の結合を示した図。
【図4】他のナノ粒子10間の結合を示した図。
【図5】連結用の核酸13の例を示した図。
【図6】DNA-AuNP A、DNA-AuNP Bを示した図。
【図7】体心立方格子の超格子構造体を示した図。
【図8】溶液中の凝集体のSAXS測定の結果を示したグラフ。
【図9】超格子構造体を撮影したSEM像。
【図10】乾燥状態の凝集体のSAXS測定の結果を示した図。
【図11】Auナノ粒子の各粒径における、超格子の対称性の維持の有無、Auナノ粒子間の表面間距離および体積率をまとめた表。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の実施形態は、ナノ粒子10が3次元的に規則的に配列された超格子構造体である(図1参照)。ナノ粒子10は、表面が核酸11で修飾されており(図2参照)、核酸11の相補性によりナノ粒子10同士が結合され、自己組織的に超格子構造が形成されたものである。第1の実施形態の超格子構造体は、溶液から取り出されて乾燥した状態においても、シリカ等によりコーティングして核酸11の構造を固定化することなく、独立して超格子の対称性が維持されている。第1の実施形態では、乾燥状態での超格子の対称性の維持を、ナノ粒子10の粒径、あるいは超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率によって制御している。以下、第1の実施形態の超格子構造体およびその製造方法について詳しく説明する。

【0015】
(ナノ粒子10について)
ナノ粒子10は、粒径がナノオーダー(1~100nm)の粒子である。ナノ粒子10の材料は、その表面にDNAを修飾可能な任意の材料を用いることができる。金属、半導体、誘電体、磁性体、など各種材料を用いることができ、無機化合物、有機化合物や合金でもよい。また、異なる材料のナノ粒子10を混合して用いてもよい。金属単体であれば、Auの他、Pt、Pd、Li、Ag、Rh、Ru、V、Cu、Al、Co、Ni、Fe、Mgなどである。合金であれば、Ni-Mg合金などを用いることができる。また、Si、CdSe、CdSなどの半導体、SiO、TiOなどの誘電体を用いることもできる。ナノ粒子10の形状は任意でよく、球、楕円球、多面体などである。ナノ粒子10の粒径が小さいと多面体となる傾向にある。また、多面体の方が、ナノ粒子10表面に核酸11を保持しやすい傾向にある。

【0016】
乾燥状態での超格子の対称性の維持を、ナノ粒子10の粒径によって制御する場合、ナノ粒子10の粒径は、14nm以上とする。ここで、粒径は、たとえば、小角散乱法や動的光散乱法によって測定した平均値である。より具体的には、小角散乱法では、粒度分布が正規分布であると仮定したときの平均値、動的光散乱法では、粒度分布のピーク値を用いることができる。粒径を14nm以上とすることで、超格子構造体を溶液から取り出して乾燥しても、シリカ等によりコーティングして核酸11の構造を固定することなく、超格子の対称性を維持することができる。より望ましい粒径は16nm以上、さらに望ましくは19nm以上である。粒径の上限は特になく、溶液中において超格子構造体を形成可能な範囲であればよい。たとえば50nm以下である。より望ましくは30nm以下、さらに望ましくは25nm以下である。

【0017】
(核酸11について)
ナノ粒子10を修飾する核酸11は、核酸11の塩基配列の少なくとも一部に、相補結合(ハイブリダイゼーション)する相補結合部12を有した核酸11である。核酸11は、塩基配列によってコードされていて、対となる塩基配列を相補的に認識して接合し、二重らせん構造を形成する。たとえばDNAでは、A(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)の4種類の塩基でコードされ、AとT、GとCが対となって結合する。与えられた塩基配列は、相補的な配列に対してのみ、相補結合し、原子・分子レベルで高い塩基配列特異性を有する。相補結合部12は、塩基配列のうち、このような相補結合する部分であり、他の相補結合部12に対して、塩基配列が順次相補結合する配列を有した部分である。

【0018】
相補結合部12が他方の相補結合部12と相補結合するためには、その結合直前において、一般には一本鎖であることが必要である。たとえば、結合前から元々、相補結合部12が一本鎖である場合の他、相補結合する2つの相補結合部12の一方または両方が、短い二本鎖であり、結合直前に二本鎖が解けて短い一本鎖が剥がれ、2つの相補結合部12が一本鎖となり、これにより相補結合する場合もある。また、相補結合する2つの相補結合部12の一方または両方が、ループ状またはヘアピン状に一部結合していて、部分的に二本鎖となっているものが、結合直前に一本鎖に解けて、相補結合する場合もある。相補結合部12は二本鎖であってもよく、この場合、相補結合によって四本鎖となることもある。たとえば、GGGG・・・の塩基配列(グアニンのみの配列)の場合に、相補結合により四本鎖を形成し、グアニン四本鎖を形成する。

【0019】
相補結合部12以外の核酸11の部分は、一本鎖、二本鎖、四本鎖など、任意の本数であってもよい。核酸11の塩基配列の少なくとも一部に、元々、相補結合部12が形成されているか、または、結合直前に相補結合部12が形成されればよい。核酸11の先端部に相補結合部12が元々形成されているか、または結合直前に形成されることが望ましい。もちろん、核酸11の全体にわたって一本鎖であってもよい。また、核酸11は直鎖状のものだけでなく、分岐していたり、三角形状、四角形状など部分的に環状となっているもの、四面体など立体形状となっているものでもよい。

【0020】
核酸11の塩基配列は、公知の方法によってプログラミングすることができる。たとえば、ハミング距離に基づく設計方法、最小自由エネルギーに基づく設計方法、de novo デザインなどを用いることができる。

【0021】
核酸11は、DNAだけでなく、RNA、PNA、LNA、BNA、GNA、TNAなどを用いることができる。相補結合はDNA同士など同種の核酸11間での相補結合に限られず、異種の核酸11間での相補結合であってもよい。たとえばDNAの相補結合部12とPNAの相補結合部12との相補結合であってもよい。

【0022】
(核酸11で修飾されたナノ粒子10について)
核酸11で修飾されたナノ粒子10とは、核酸11とナノ粒子10とが結合されていることを意味する。修飾の方法は、各種公知の方法を用いることができる。たとえば、核酸11の末端とナノ粒子10の構成原子とが化学結合していてもよい。この場合、核酸11の末端をナノ粒子10の構成原子と化合する置換基に置換した上で、この置換基とナノ粒子10の構成原子とを結合させてもよい。たとえば、ナノ粒子10としてAuを用いる場合、Auナノ粒子10のコロイド溶液に、核酸11分子の末端にチオール基などの反応基を付けた核酸11を混合することで、Auナノ粒子10表面を核酸11で修飾することができる。また、物理的に、ナノ粒子10の表面に核酸11が吸着されて接続された状態であってもよい。

【0023】
ナノ粒子10は、1種類の核酸11で修飾されていてもよいが、複数の種類の核酸11で修飾されていてもよい。この場合、複数種の核酸11のうち、少なくとも1種類の核酸11が相補結合部12を有していればよく、他の核酸11は相補結合部12を有していなくともよい。複数種類の核酸11で修飾することにより、超格子構造の種類の選択などの制御を行うことができる。

【0024】
ナノ粒子10に修飾させる核酸11の本数は、たとえば次のようにして制御することができる。1つは、相補結合部12を有した核酸11と、相補結合部12を有していない核酸11とを混合して用い、その混合比を変化させることによって制御する方法である。他の1つは、末端にナノ粒子10に対する反応基を有した核酸11と、有していない核酸11とを混合して用い、その混合比を変化させることによって制御する方法である。他の1つは、ナノ粒子10に吸着する材料(繊維など)と核酸11との混合比を変化させることによって制御する方法である。

【0025】
(ナノ粒子10間の結合について)
ナノ粒子10間は、そのナノ粒子10を修飾している核酸11のそれぞれの相補結合部12が相補結合することにより結合されている(図3参照)。ナノ粒子10間の結合は、一方のナノ粒子10を修飾する核酸11の相補結合部12と、他方のナノ粒子10を修飾する核酸11の相補結合部12とが、直接結合されている場合だけでなく、他の核酸11を介して間接的に結合されている場合も含む。つまり、一方のナノ粒子10を修飾する核酸11の相補結合部12と相補結合する相補結合部12と、他方の相補結合部12と相補結合する相補結合部12とを有した連結用の核酸13を設けることで、一方のナノ粒子10と他方のナノ粒子10とを連結用の核酸13を介して結合させてもよい(図4参照)。この連結用の核酸13の長さや形状などによって、ナノ粒子10の3次元的な配列を制御することが可能である。

【0026】
(超格子構造の種類)
超格子構造は、ナノ粒子10が3次元的に規則的に配列された構造であれば任意の構造でよい。その構造の種類は、ナノ粒子10に修飾される核酸11の種類や構造などによって制御することができる。

【0027】
一例として、体心立方格子の場合、相補結合部12の塩基配列を反転しても他方の相補結合部12とならないような2種類の核酸11を用い、それぞれの核酸11で修飾された2種類のナノ粒子10を用いることで作製可能である。たとえば、相補結合部12がTACGのDNAで装飾されたナノ粒子10と、相補結合部12がCGTAのDNAで装飾されたナノ粒子10を用いる。また、面心立方格子や六方最密充填構造は、相補結合部12の塩基配列を反転すると他方の相補結合部12となるような同一の1種類の核酸11を用いることで作製可能である。たとえば、相補結合部12がGCGCのDNAである。

【0028】
ナノ粒子10間を結合する連結用の核酸13として、四面体構造のものを用いれば、ダイヤモンド構造とすることも可能である。ここで四面体構造の連結用の核酸13は、二本鎖の核酸11Aが四面体の辺を構成し、四面体の頂点から一本鎖の核酸11Bが延び、核酸11Bの末端に相補結合部12を有した構成である(図5参照)。また四面体の辺は二本鎖DNAを束ねた構造であってもよく、頂点から延びる核酸11Bは複数本であってもよい。他にNaCl型の構造なども作製可能である。また、超格子構造体の形状は、それらの超格子構造に応じたウルフ多面体の形状を取る。たとえば、体心立方格子では菱形十二面体である。超格子構造体の粒径は、たとえば100nm~5μmである。

【0029】
(超格子構造体の乾燥状態について)
第1の実施形態の超格子構造体は、乾燥した状態である。乾燥状態とは、超格子構造体を顕微鏡により観察したときに、超格子構造体の外観上液体の付着が見られない程度に乾燥させた状態であればよい。あるいは、超格子構造体を室温で十分な時間自然乾燥させた状態であればよい。あるいは、超格子構造体を電子顕微鏡などの真空環境の装置に入れたときに、超格子構造体が崩れない程度の乾燥であればよい。第1の実施形態の超格子構造体では、そのような乾燥した状態であっても、超格子の対称性が維持されている。また、第1の実施形態の超格子構造体は、溶液中の超格子構造体を取り出して乾燥させたものであるため、超格子構造体中には溶液の残渣を含む場合がある。

【0030】
従来の核酸11で修飾されたナノ粒子10を用いた超格子構造体では、溶液中では安定に超格子の対称性を維持することができるが、溶液中から超格子構造体を取り出して乾燥させると、核酸11の構造変化によって超格子構造が崩れて維持することはできなかった。そのため、核酸11をシリカ等によりコーティングして固定化することで、乾燥しても超格子の対称性を維持できるようにしていた。一方、第1の実施形態の超格子構造体は、このようなシリカ等によるコーティングなしに、乾燥しても超格子の対称性を維持することができる。

【0031】
(ナノ粒子10間の表面間距離)
超格子構造体において、隣接するナノ粒子10の表面間距離(一方のナノ粒子10表面から、最隣接の他方のナノ粒子10表面までの最短距離、図3中の長さL、以下最隣接粒子表面間距離と呼ぶ)は、ナノ粒子10の粒径、核酸11全体の長さ、相補結合部12の長さなどによって制御することができる。また、乾燥状態の超格子構造体の表面間距離は、溶液中での超格子構造体の表面間距離に比べて短くなっている。つまり、乾燥によって超格子の対称性を維持したまま収縮している。乾燥後の超格子構造体におけるナノ粒子10間の最隣接粒子表面間距離は、たとえば4nm以上7nm以下となる。

【0032】
なお、このように第1の実施形態の超格子構造体は、溶液中においてナノ粒子10間を核酸11で結合し、その後溶液から取り出して乾燥しており、乾燥しても超格子の対称性を維持して収縮しており、ナノ粒子10間の結合も強固で安定している。そのため、乾燥状態の超格子構造体中における核酸11は何らかの構造変化をしていると考えられ、ナノ粒子10間は単純な核酸11での結合ではないと考えられるが、詳細は不明である。

【0033】
(超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率)
乾燥状態での超格子の対称性の維持を、乾燥前の溶液中の超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率で制御する場合、体積率は6%以上とする。体積率を6%以上とすることで、超格子構造体を溶液から取り出して乾燥しても、シリカ等によりコーティングして核酸11の構造を固定することなく、超格子の対称性を維持することができる。溶液中の超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率は、超格子構造の種類やナノ粒子10の表面間距離によって制御することができる。特に、ナノ粒子10の粒径によって制御するのが簡便である。より望ましいナノ粒子10の体積率は9%以上、さらに望ましくは13%以上である。ナノ粒子10の体積率の上限は特になく、溶液中において超格子構造体を形成可能な範囲であればよい。

【0034】
第1の実施形態の超格子構造体は乾燥状態であるため、ナノ粒子10の表面間距離は乾燥前の溶液中の状態よりも短くなっており、収縮している。そのため、乾燥状態の超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率は、乾燥前の溶液中の超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率よりも高くなっており、6%より大きくなっていて、乾燥前に比べて2~5倍程度に体積率が増加している。

【0035】
ナノ粒子10の表面間距離の制御によって、乾燥後の超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率は、20%以上、あるいは30%以上とすることができる。このような体積率の大きな超格子構造体(言い替えればナノ粒子10の密度が高い超格子構造体)は、核酸11で修飾されたナノ粒子10を用いる方法では作製できないと考えられてきたものである。その理由は、超格子構造を形成する条件として、ナノ粒子10の粒径に対してある程度核酸11の長さの範囲が限定されてしまい、ナノ粒子10に対して短すぎる核酸11や、長すぎる核酸11を用いると超格子構造を形成できないためである。そのため、従来の超格子構造体では、超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率は数%~十数%程度であった。しかし、第1の実施形態によれば、上記のようにナノ粒子10の体積率30%という非常に高い体積率の超格子構造体を実現することができる。

【0036】
(第1の実施形態の超格子構造体の応用例)
超格子構造におけるナノ粒子10の体積率の制御は、超格子構造体を光学材料へ応用する際に重要である。超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率が増加すると、任意の波長域において屈折率と吸光度が増加すると言われており、ナノ粒子10の体積率によって屈折率の制御が可能となるためである。第1の実施形態の超格子構造体は、超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率を容易に制御することができ、特に体積率を非常に大きくして屈折率を大きくすることができるので、光学材料への応用に好適である。

【0037】
また、ナノ粒子10の超格子構造体は、その周期的なナノ粒子10の配列によってフォノン伝導に大きく影響を与え、一般的なバルクや薄膜とは異なる熱輸送現象が生じると報告されている。第1の実施形態の超格子構造体では、その超格子構造を制御でき、核酸11が固定化されずに乾燥した状態であるため、主としてナノ粒子10と核酸11で構成された理想的な構成であり、水分をほとんど含まないため熱輸送材料に好適である。

【0038】
(超格子構造体の製造方法)
次に、第1の実施形態の超格子構造体の製造方法について説明する。

【0039】
まず、ナノ粒子10が溶液に混合、分散されたコロイド溶液に、核酸11を含む溶液を混合し、ナノ粒子10の表面に核酸11を修飾する。ここで溶液は、ナノ粒子10や核酸11を混合可能な任意の溶液でよく、pH7.5~8.0を保つことができる溶液であれば任意の溶液でよい。たとえば、リン酸バッファ、TAEバッファ、TBEバッファなどを用いることができる。核酸11の安定化のため、Mgイオンなどを添加してもよい。核酸11の修飾方法は従来知られている任意の方法でよい。溶液中のナノ粒子10や核酸11の濃度は、ナノ粒子10が核酸11によって結合されて超格子構造を形成可能な範囲であれば任意であるが、ナノ粒子10の濃度はたとえば0.1×10-6~10×10-6mol/L、核酸11の濃度は1×10-6~100×10-6mol/Lである。

【0040】
次に、溶液を所定の温度まで加熱し、必要に応じて一定時間保持する。これにより、核酸11の二重らせん構造をほどき、相補結合部12によって相補結合可能な状態とする。何度まで加熱するかは、ナノ粒子10を修飾している核酸11の構造などに依存するが、たとえば50~80℃である。その後、室温まで徐冷し、ナノ粒子10を装飾する核酸11の相補結合部12を相補結合させ、ナノ粒子10間を結合する。ここで、降温速度を十分に遅くすることで、ナノ粒子10が3次元的に規則的に配列されるようにし、ナノ粒子10の超格子構造体を形成する。降温速度は、たとえば0.01~0.001℃/minである。

【0041】
次に、溶液中に凝集して沈殿した超格子構造体を溶液から取り出し、乾燥させる。乾燥方法は任意の方法でよく、自然乾燥が簡便であるが、フリーズドライ(凍結乾燥)や温風乾燥、真空乾燥などであってもよい。

【0042】
この乾燥において、ナノ粒子10の粒径が14nm以上であれば、または、乾燥前の溶液中の超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率が6%以上であれば、超格子構造体は、その超格子の対称性を維持したまま、乾燥する。また、乾燥によってナノ粒子10の表面間距離は小さくなり、超格子構造体はその超格子の対称性を維持したまま収縮し、超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率は増加する。

【0043】
以上によって、乾燥状態であっても、核酸11をシリカ等によるコーティングによって固定化することなく、超格子の対称性が維持されたナノ粒子10の超格子構造体を製造することができる。乾燥しても超格子の対称性が維持できる理由は、溶液中の超格子構造体におけるナノ粒子10の体積率が大きく、核酸の体積率は小さいため、乾燥による核酸11の構造変化の影響を受けにくいためではないかと考えられる。

【0044】
以下、本開示の具体的な実施例について説明するが、本開示は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
まず、Auナノ粒子を混合、分散したコロイド溶液を用意し、DNAの末端にチオール基を付けた一本鎖のDNA(DNA♯1)を含むリン酸緩衝液を混合した。これにより、Auナノ粒子10の表面にDNA♯1を修飾したナノ粒子(DNA-AuNP A)を作製した。同様にして、これとは別の種類の一本鎖のDNA(DNA♯2)を装飾したAuナノ粒子(DNA-AuNP B)を作製した(図6参照)。これら2種類のDNA♯1、2は、末端に相補結合する相補結合部を有している。ただし、DNA♯1の相補結合部同士、およびDNA♯2の相補結合部同士は相補結合しないように塩基配列が設計されている。また、DNA♯1の相補結合部と相補結合する相補結合部を有した一本鎖のDNA(DNA♯3)と、DNA♯2の相補結合部と相補結合する相補結合部を有した一本鎖のDNA(DNA♯4)を用意した。DNA♯3、4は、互いに相補結合する相補結合部をさらに有している。なお、Auナノ粒子は、粒径が8.3nm、14.4nm、16.3nm、19.3nmのものをそれぞれ用いた。
【実施例1】
【0046】
次に、作製した2種類のDNA-AuNP AとDNA-AuNP B、およびDNA♯3、4を、ナトリウムイオン濃度500×10-3mol/Lのリン酸緩衝液に投入して混合した。
【実施例1】
【0047】
次に、溶液を室温から65℃まで加熱後、65℃から25℃まで0.01℃/minで徐冷した。このアニール後のリン酸緩衝液中には、Auナノ粒子の凝集体が沈殿していた。
【実施例1】
【0048】
凝集体をリン酸緩衝液とともにキャピラリー管に入れ、SAXS(X線小角散乱)測定を行った。そして、その測定結果から超格子の構造因子を計算した。図8は、その結果を示したグラフである。図8の4つの曲線は、上から順に粒径が8.3nm、14.4nm、16.3nm、19.3nmの場合をそれぞれ示している。算出した超格子の構造因子から、粒径が8.3nm、14.4nm、16.3nm、19.3nmの全ての場合において、凝集体は、DNA-AuNP AとDNA-AuNP Bが体心立方格子の構造に規則的に配列された超格子構造体であることがわかった。これは、DNA-AuNP AとDNA-AuNP Bとが、DNA♯3、4を介して相補結合により結合し、DNA-AuNP A同士、およびDNA-AuNP B同士は結合しないことにより、自己組織的にDNA-AuNP AとDNA-AuNP Bが体心立方格子の構造に配列し、超格子構造体を形成したものとわかる(図7参照)。
【実施例1】
【0049】
次に、リン酸緩衝液中に沈殿した凝集体を回収し、自然乾燥させた。乾燥した凝集体について、走査型電子顕微鏡による観察を行った。図9は、撮影した凝集体のSEM像である。図9において、(a)はAuナノ粒子の粒径8.3nm、(b)は粒径14.4nm、(c)は粒径16.3nm、(d)は粒径19.3nmである。Auナノ粒子の粒径が14.4nm、16.3nm、19.3nmの場合においては、乾燥した凝集体は、その表面においてDNA-AuNP AとDNA-AuNP Bが規則的に配列していることがわかり、超格子構造体である可能性が非常に高いことがわかった。また超格子構造体の全体としての形状は、菱形十二面体であることがわかった。菱形十二面体は体心立方格子のウルフ多面体であるから、乾燥した超格子構造体は体心立方格子である可能性が非常に高いことがわかった。つまり、乾燥前と乾燥後で超格子の対称性を維持できていることがわかった。ただし、粒径が14.4nmの場合は、乾燥した凝集体のうちウルフ多面体であるものは少なく、超格子の対称性を維持できる割合が小さいことがわかった。
【実施例1】
【0050】
一方、Auナノ粒子の粒径が8.3nmの場合、乾燥した凝集体は、丸みを帯びた外形であり、その表面にDNA-AuNP AとDNA-AuNP Bの規則的な配列は見られず、超格子構造が崩れていることがわかった。つまり、乾燥前と乾燥後で超格子の対称性を維持できないことがわかった。
【実施例1】
【0051】
次に、乾燥した超格子構造体について、SAXS測定を行った。図10はその測定結果を示した図(2次元像)である。図10において、(a)はAuナノ粒子の粒径8.3nm、(b)は粒径14.4nm、(c)は粒径16.3nm、(d)は粒径19.3nmである。測定結果の回折ピークの位置から、粒径が14.4nm、16.3nm、19.3nmの場合においては、乾燥した凝集体は、体心立方格子の超格子構造であることがわかった。一方、粒径が8.3nmの場合においては、超格子構造であることを示す回折ピークが見られず、超格子構造ではないことがわかった。
【実施例1】
【0052】
また、乾燥前の溶液中の超格子構造体におけるAuナノ粒子間の距離(最隣接粒子表面間距離)を、SAXS測定から算出した。乾燥前の溶液中での表面間距離は、粒径8.3nmでは、17.9nm、粒径14.4nmでは17.1nm、粒径16.3nmでは15.2nm、粒径19.3nmでは14.3nmであった。この結果、Auナノ粒子の粒径が増加すると、表面間距離は減少すると考えられる。また、溶液中での超格子構造体におけるナノ粒子の体積率は、粒径8.3nmでは2.2%、粒径14.4nmでは6.6%、粒径16.3nmでは9.5%、粒径19.3nmでは13.0%であった。
【実施例1】
【0053】
また、乾燥後の超格子構造体におけるAuナノ粒子間の表面間距離(最隣接粒子表面間距離)を、SAXS測定の結果から算出した。乾燥後の表面間距離は、粒径8.3nmでは5.7nm、粒径14.4nmでは6.5nm、粒径16.3nmでは5.0nm、粒径19.3nmでは6.4nmであった。この結果、溶液中から超格子構造体を取り出して乾燥させると、超格子構造体は、その超格子の対称性を維持したまま収縮することがわかった。このように乾燥しても超格子の対称性を維持できる理由は、超格子構造体におけるAuナノ粒子の体積率が大きいため、乾燥によるDNAの構造変化の影響を受けにくくなったためであると考えられる。
【実施例1】
【0054】
また、この収縮によって、乾燥状態の超格子構造体におけるAuナノ粒子の体積率は、粒径14.4nmでは22.1%、粒径16.3nmでは30.5%、粒径19.3nmでは28.8%であった。このように、超格子構造体におけるAuナノ粒子の体積率を20%以上、さらには30%以上とできることがわかった。このような高い体積率は、溶液中の超格子構造体、あるいはシリカ等によりコーティングした超格子構造体では実現が困難なものであった。
【実施例1】
【0055】
各粒径において、乾燥後の超格子の対称性の有無、乾燥前後のナノ粒子の表面間距離および体積率をまとめたのが図11の表である。表中、乾燥後も超格子の対称性が維持されているものを○、されていないものを×で示している。
【実施例1】
【0056】
以上のように、Auナノ粒子の粒径、あるいは溶液中の超格子構造体におけるナノ粒子の体積率を制御することで、乾燥しても超格子の対称性を維持できることがわかった。また、ナノ粒子の密度が高い超格子構造体を実現できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示の超格子構造体は、波長フィルタ、プラズモンレンズ、コロイドフォトニック結晶、メタマテリアル、分子準結晶など各種の光学材料として利用することができる。特に、ナノ粒子の表面プラズモン共鳴を利用した波長フィルタやプラズモンレンズの実現には、ナノ粒子の材質、大きさ、形、間隔、配置などの精密制御によって透過波長を制御することが重要であるが、本開示の超格子構造体によればそれらの制御が容易となる。また、クーロンブロッケード現象などを利用したデバイス作製技術への応用も期待できる。さらに、レーザー照射によりナノ粒子間を融合させ、デザインされたナノ構造を作製し、ナノ構造によりフォノン制御(熱制御)できるデバイスの作製にも応用できる。
【符号の説明】
【0058】
10:ナノ粒子
11:核酸
12:相補結合部
13:連結用の核酸
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10