TOP > 国内特許検索 > 焼却飛灰固化体の製造方法、および水素ガス発生抑制方法 > 明細書

明細書 :焼却飛灰固化体の製造方法、および水素ガス発生抑制方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6587278号 (P6587278)
公開番号 特開2016-203044 (P2016-203044A)
登録日 令和元年9月20日(2019.9.20)
発行日 令和元年10月9日(2019.10.9)
公開日 平成28年12月8日(2016.12.8)
発明の名称または考案の名称 焼却飛灰固化体の製造方法、および水素ガス発生抑制方法
国際特許分類 B09B   3/00        (2006.01)
C04B  28/02        (2006.01)
C04B  18/08        (2006.01)
C04B  22/12        (2006.01)
FI B09B 3/00 301M
B09B 3/00 ZAB
C04B 28/02
C04B 18/08 Z
C04B 22/12
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2015-084000 (P2015-084000)
出願日 平成27年4月16日(2015.4.16)
審査請求日 平成30年2月28日(2018.2.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501273886
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立環境研究所
発明者または考案者 【氏名】市川 恒樹
【氏名】山田 一夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100141966、【弁理士】、【氏名又は名称】新井 範彦
【識別番号】100103539、【弁理士】、【氏名又は名称】衡田 直行
審査官 【審査官】齊藤 光子
参考文献・文献 特開2012-152715(JP,A)
特開平08-243525(JP,A)
特開昭63-084683(JP,A)
特開平09-276817(JP,A)
特開2002-018411(JP,A)
特開平06-102397(JP,A)
米国特許第05463171(US,A)
特開昭58-051970(JP,A)
調査した分野 B09B1/00-5/00
C04B18/00
特許請求の範囲 【請求項1】
下記(A)~(C)工程を経て得た含水混合物を成形して、焼却飛灰固化体を製造する、焼却飛灰固化体の製造方法。
(A)金属アルミニウムを含む焼却飛灰100質量部に対し、セメントを20~100質量部添加して、混合容器を回転させる方式、固定した混合容器内の混合羽根を回転させる方式、空気で粒子を噴き上げる流動床方式、または重力落下方式により混合して粉体混合物を調製する、粉体混合物調製工程
(B)前記粉体混合物100質量部に対し、塩化カルシウムの濃度が5~20重量%の塩化カルシウム水溶液を20~80質量部、一括して添加して含水物を調製する、含水物調製工程
(C)前記含水物を、混合容器を回転させるタンブラー方式により撹拌し混合して含水混合物を調製する、含水混合物調製工程
【請求項2】
下記(a)~(c)過程を含む、水素ガス発生抑制方法。
(a)金属アルミニウムを含む焼却飛灰100質量部に対し、セメントを20~100質量部添加して、混合容器を回転させる方式、固定した混合容器内の混合羽根を回転させる方式、空気で粒子を噴き上げる流動床方式、または重力落下方式により混合する、第1の混合過程
(b)前記混合して得られた粉体混合物100質量部に対し、塩化カルシウムの濃度が5~20重量%の塩化カルシウム水溶液を20~80質量部、一括して添加する、一括添加過程
(c)前記一括して添加して得られた含水物を、混合容器を回転させるタンブラー方式により撹拌して混合する、第2の混合過程
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属アルミニウムを含む焼却飛灰を、セメントで固化してなる焼却飛灰固化体を製造する方法と、焼却飛灰をセメントで固化する際の水素ガスの発生を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境省が発表した資料によれば、平成23年度に我が国で発生した一般廃棄物(ごみと屎尿)は4539万トンで、そのうちの3398万トンが焼却処分されている。そして、焼却灰の発生率は、一般廃棄物中の成分や焼却炉の方式にもよるが、一般に、焼却した量の10%(質量割合)とされている。この割合に従えば、1年間で約300万トンもの焼却灰が発生したことになる。
焼却灰には、焼却炉の底などから排出される主灰と、煤塵として電気集塵機等で集められる飛灰がある。そして、前記焼却灰の発生率(10%)の内、飛灰の発生率は約3%と少ないが、主灰に比べ遥かに多くの重金属やダイオキシン等の有害物質を含むため、飛灰は、重金属のキレート処理等の安定化(不溶化)を行った上で廃棄する必要がある。
【0003】
そして、焼却飛灰のような飛散しやすい粉体の安定化および減容化方法の一つに、セメントを用いて固化する方法(セメント固化)がある。この方法は、焼却飛灰にセメントと水を加えて撹拌して混合するだけであるから簡便かつ安価である。しかし、焼却飛灰の中でも、特に、流動床炉から排出される焼却飛灰の多くは、金属アルミニウムを多量に含むため、セメントを用いて該焼却飛灰を固化すると、セメントの水和により生成した水酸化カルシウムと金属アルミニウムが反応して水素ガスが発生する。その結果、焼却飛灰固化体は水素ガスにより著しく膨張して崩壊し、安定化および減容化が不十分になる場合がある。また、室内等の閉鎖された空間では、水素ガスによる爆発事故が発生するおそれもある。
そこで、焼却飛灰をセメントで固化する際に、水素ガスの発生を抑制する手段が望まれている。
【0004】
前記手段として、特許文献1では焼却飛灰の固化体の製造方法が提案されている。具体的には、該方法は、焼却飛灰に水と温水のいずれかを加え、常温~98℃で5~120分間混練することにより、焼却飛灰中のアルミニウム等の両性物質の酸化と膨張性化合物の反応を行った後、セメント等のアルカリ剤を加えて混練し、水熱固化反応により固化体を製造する方法である。しかし、前記方法は、混練を2回に分けて行うほか、アルミニウム等の酸化工程や水熱固化が必要なため、その分手間がかかる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2000-308867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、金属アルミニウムを含む焼却飛灰を、セメントで固化してなる焼却飛灰固化体を製造する方法と、セメントで固化する際の水素ガスの発生を抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するため、金属アルミニウムを含む焼却飛灰のセメント固化の過程をつぶさに解析した結果、
(i)前記焼却飛灰、セメント、および水を撹拌して混合する際に、水素ガスは、機械的に摩耗または破損した焼却飛灰の粒子表面から主に発生する。
そして、水素ガスの発生を抑制するには、
(ii)前記焼却飛灰にセメントを加えた後、湿った程度の粉体混合物(以下「含水混合物」という。)になるように、撹拌して混合しながら徐々に水を加える。
(iii)前記含水混合物は転圧等して成形する。
ことが有効であることを見い出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記の構成を有する焼却飛灰固化体の製造方法、および水素ガス発生抑制方法である。
【0008】
[1]下記(A)~(C)工程を経て得た含水混合物を成形して、焼却飛灰固化体を製造する、焼却飛灰固化体の製造方法。
下記(A)~(C)工程を経て得た含水混合物を成形して、焼却飛灰固化体を製造する、焼却飛灰固化体の製造方法。
(A)金属アルミニウムを含む焼却飛灰100質量部に対し、セメントを20~100質量部添加して、混合容器を回転させる方式、固定した混合容器内の混合羽根を回転させる方式、空気で粒子を噴き上げる流動床方式、または重力落下方式により混合して粉体混合物を調製する、粉体混合物調製工程
(B)前記粉体混合物100質量部に対し、塩化カルシウムの濃度が5~20重量%の塩化カルシウム水溶液を20~80質量部、一括して添加して含水物を調製する、含水物調製工程
(C)前記含水物を、混合容器を回転させるタンブラー方式により撹拌し混合して含水混合物を調製する、含水混合物調製工程
]下記(a)~(c)過程を含む、水素ガス発生抑制方法。
(a)金属アルミニウムを含む焼却飛灰100質量部に対し、セメントを20~100質量部添加して、混合容器を回転させる方式、固定した混合容器内の混合羽根を回転させる方式、空気で粒子を噴き上げる流動床方式、または重力落下方式により混合する、第1の混合過程
(b)前記混合して得られた粉体混合物100質量部に対し、塩化カルシウムの濃度が5~20重量%の塩化カルシウム水溶液を20~80質量部、一括して添加する、一括添加過程
(c)前記一括して添加して得られた含水物を、混合容器を回転させるタンブラー方式により撹拌して混合する、第2の混合過程
【発明の効果】
【0009】
本発明の焼却灰固化体の製造方法、および水素ガス発生抑制方法によれば、金属アルミニウムを含む焼却飛灰をセメントで固化する際に、水素ガスの発生が著しく抑制されるため、高い強度の焼却飛灰固化体を安価に製造できるほか、水素ガスの爆発を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】水を用いたセメント固化における、水素ガスの発生量の経時変化を示す図である。
【図2】焼却飛灰固化体の脱型時の状態を示す図であって、AおよびCは、それぞれ飛灰-1および飛灰-3を用いて、本発明の製造方法(実施例)により製造した焼却飛灰固化体の状態を示し、Bは、飛灰-1を用いて、従来の製造方法(比較例)により製造した焼却飛灰固化体の状態を示す。
【図3】塩化カルシウム水溶液を用いたセメント固化における、水素ガスの発生量の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、焼却灰固化体の製造方法と、水素ガス発生抑制方法に分けて詳細に説明する。

【0012】
1.焼却灰固化体の製造方法
該製造方法は、前記のとおり、(A)粉体混合物調製工程、(B)含水物調製工程、および(C)含水混合物調製工程を含む。以下、各工程に分けて説明する。

【0013】
(A)粉体混合物調製工程
該工程は、金属アルミニウムを含む焼却飛灰の粒子の表面を摩耗または破損しないように、該焼却飛灰とセメントを混合して粉体混合物を調製する工程である。
大気中の粉体粒子の間には多量の空気が含まれる。したがって、焼却飛灰とポルトランドセメントのような粉体同士を混合する際には、空気が潤滑剤として働くため、粉体粒子の摩耗や破損を避けることができる。このような粉体の混合方式として、例えば、混合容器を回転させる方式、固定した混合容器内の混合羽根を回転させる方式、空気で粒子を噴き上げる流動床方式、重力落下方式など様々な方式等が挙げられるが、これらの中でも、重力落下方式が好ましい。もっとも、混合時の粒子間に十分な空気が含まれ、焼却飛灰の粒子が摩耗または破損しない混合方式であれば、前記方式に限定されない。
前記セメントは、特に制限されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、エコセメント、シリカセメント、およびフライアッシュセメントからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
また、前記セメントの添加量は、焼却飛灰100質量部に対し、好ましくは20~100質量部である。セメントの添加量が該範囲内であれば、焼却飛灰固化体の強度は充分であり、また原料コストも低い。なお、セメントの添加量は、より好ましくは30~80質量部、さらに好ましくは40~70質量部である。
次に、水素ガスが発生するメカニズムを説明する。
金属アルミニウムの表面は、一般に、酸化アルミニウムの被膜により保護されているが、焼却飛灰にセメントと水を添加すると、セメントの水和により生成する水酸化カルシウムの水溶液に、酸化アルミニウムの被膜が溶解する。そして、被膜が溶解した結果、金属アルミニウムと水が直接接触して、下記に示す反応が起こり水素ガスは徐々に発生する。
2Al+3HO → Al + 3H
しかし、焼却飛灰の粒子が摩耗または破損すると、酸化アルミニウムの被膜はより強く破壊されるため、前記反応が激しくなり水素ガスの発生は顕著になることから、前記粉体混合物調製工程は、水素ガスの発生の抑制に極めて有効である。

【0014】
(B)含水物調製工程
該工程は、前記粉体混合物に、水または塩化カルシウム水溶液を一括して添加して含水物を調製する工程である。
非水溶性の粉体混合物に、水を加えて含水物を調製する場合、一般には、該粉混合物を撹拌しながら水を徐々に加える。これは、撹拌せずに多量の水を加えると、粉体混合物に不均等に水が吸収されて、いわゆる“だま”が生じるから、この“だま”の発生を防止するためである。
しかし、本発明で用いる焼却飛灰は、後掲の表1に示すように、多量の塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化カルシウム等の水溶性塩類を含むため、焼却飛灰とセメントの粉体混合物を撹拌しないで、該粉体混合物に水または塩化カルシウム水溶液を一括して添加しても“だま”は生じず、焼却飛灰のセメント固化に支障はない。
もっとも、焼却飛灰によっては、酸化アルミニウムの被膜の強弱により、被膜に破損がなくても、水の添加によって水素ガスが発生する場合がある。この場合は、水の代わりに塩化カルシウム水溶液を添加することにより、水素ガスの発生を防止できる。
塩化カルシウム水溶液が水素ガスの発生を抑制するメカニズムとして、以下の事由が考えられる。すなわち、焼却飛灰には多量の水酸化カルシウムが含まれているため、焼却飛灰に水を加えると水酸化カルシウムの一部が水に溶解して、水溶液はアルカリ性になる。純水に飽和量の水酸化カルシウムが溶解した水溶液のpHは12.6だが、焼却飛灰には多量の塩化カルシウムも含まれ、塩化カルシウムが水酸化カルシウムより優先して水に溶解する。そして、水溶液中の塩化カルシウム濃度が増大するに従い、水酸化カルシウムの溶解度が低下するから水溶液のpHも低下する。そのため、塩化カルシウム水溶液を添加すると、水素ガスの発生を防止できると考える。
水素ガスの発生の抑制に有効な塩化カルシウム水溶液中の塩化カルシウムの濃度は、焼却飛灰の性質にも依存するが、好ましくは5~20重量%である。該濃度が該範囲内であれば、水素ガスの発生を抑制できる。なお、該濃度は、より好ましくは6~18質量%、さらに好ましくは7~15質量%、特に好ましくは8~12質量%である。
また、水または塩化カルシウム水溶液の添加量は、焼却飛灰とセメントの粉体混合物100質量部に対し、好ましくは20~80質量部である。該添加量が該範囲内であれば、含水混合物の撹拌は容易であり、焼却飛灰固化体の強度も充分高い。なお、水または塩化カルシウム水溶液の添加量は、より好ましくは30~70質量部、さらに好ましくは40~60質量部である。

【0015】
(C)含水混合物調製工程
該工程は、前記含水物中の焼却飛灰の粒子の表面を、摩耗または破損しないように、前記含水物を撹拌し混合して含水混合物を調製する工程である。
焼却飛灰とセメントの粉体混合物に、水あるいは塩化カルシウム水溶液を一括して添加した後、数分間静置して水を粉体混合物に行き渡らせて含水物とし、該含水物を静かに撹拌して混合し、流動性のある含水混合物を得る。
前記混合方式は、焼却飛灰の粒子を撹拌して混合する際に、粒子の表面が摩耗または破損しない方式であれば、特に制限されない。例えば、混合容器を回転させるタンブラー方式などが好適である。
そして最後に、前記含水混合物を型枠に打設するか、押出成形機やプレス成形機等を用いて圧縮成形するか、またはターンテーブル等を用いて造粒等して成形し、焼却飛灰固化体を製造する。なお、本発明において、焼却飛灰固化体の成形方法は、前記の方法に限定されず、一般のコンクリートやモルタルの成形方法を用いることができる。

【0016】
2.水素ガス発生抑制方法。
該方法は、前記のとおり、(a)第1の混合過程、(b)一括添加過程、および(c)第2の混合過程を含む。以下、各過程に分けて簡潔に説明する。

【0017】
(a)第1の混合過程
金属アルミニウムを含む焼却飛灰の粒子の表面を摩耗または破損しないように、該焼却飛灰とセメントを混合する過程である。
(b)一括添加過程
前記混合して得られた粉体混合物に、水または塩化カルシウム水溶液を一括して添加する過程である。
(c)第2の混合過程
前記一括して添加して得られた含水物中の焼却飛灰の粒子の表面を、摩耗または破損しないように、前記含水物を撹拌して混合する過程である。
そして、(a)第1の混合過程は、前記(A)粉体混合物調製工程で説明した内容と共通し、(b)一括添加過程は、前記(B)含水物調製工程で説明した内容と共通し、(c)第2の混合過程は、前記(C)含水混合物調製工程で説明した内容と共通する。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.使用材料
使用した材料は、普通ポルトランドセメント、および異なる流動床焼却炉から採取した3種類の焼却飛灰である。なお、表1に、3種類の焼却飛灰中の金属アルミニウムと各種水溶性化合物の含有量を示す。
【実施例】
【0019】
【表1】
JP0006587278B2_000002t.gif
【実施例】
【0020】
2.焼却飛灰に水を添加したときの水素ガスの発生量
200mLの三角フラスコに、表1に示す焼却飛灰40gを入れて、表2に示す量の水を添加した後、気体捕集袋付きの栓で密栓して、気体捕集袋の体積の増加量を測定した。表2に、焼却飛灰に添加した水の量と、pHおよび水素ガス発生量の関係を示す。なお、水素ガスの発生は、水を添加した後2日以内に始まり8日以内に終結した。
【実施例】
【0021】
【表2】
JP0006587278B2_000003t.gif
【実施例】
【0022】
酸化アルミニウムの保護膜の耐アルカリ性は、水溶液のpHが増大するほど低下する。そのため、焼却飛灰に添加する水量が多いほど、水溶液中の塩化カルシウムは希釈されて塩化カルシウムの濃度は低くなり、その分、水酸化カルシウムの濃度は高くなるため、水素ガスの発生量は増大する。酸化アルミニウムの保護膜の耐アルカリ性は焼却飛灰の生成環境により異なるため、水素ガスの発生量は、同じ水の添加量でも焼却飛灰ごとに異なるものの、表2に示すように、pHが11.56以下では、いずれの焼却飛灰も水素ガスは発生しないという点で共通する。
【実施例】
【0023】
3.セメント固化時の水素ガスの発生量
本発明の焼却灰固化体の製造方法における水素ガスの発生量と、焼却飛灰とセメントの粉体混合物を撹拌しながら加水する従来のセメント固化方法における水素ガスの発生量とを比較するために、以下に示す実施例と比較例の試験を行った。
(1)実施例
飛灰-1を40gと、普通ポルトランドセメント20gを、200mLの三角フラスコに入れ、三角フラスコを回転および振とうして粉体混合物を調製した。次に、該粉体混合物に蒸留水27gを加えて3分静置して含水物を調製した。さらに、薬匙を用いて該含水物を静かに撹拌して混合し含水混合物を調製した後、気体捕集袋付きの栓で三角フラスコを密栓し、その後の含水混合物や焼却飛灰固化体からの水素ガスの発生量を測定した。
なお、前記普通ポルトランドセメントの添加量は、質量部で表記すると、焼却飛灰100質量部に対し50質量部である。また、前記水の添加量は、質量部で表記すると、焼却飛灰とセメントの粉体混合物100質量部に対し45質量部である。
(2)比較例
飛灰-1を50gと、普通ポルトランドセメント25gを金属容器に入れて、ハンドミキサーで撹拌しながら蒸留水33.75gを少しずつ加えて泥状混合物を得た。次に、該泥状混合物から87gの泥状混合物をはかり取り、200mL三角フラスコに入れ、該三角フラスコを気体捕集袋付きの栓で密栓して、その後の水素ガス測定量を測定した。
図1に、前記実施例と比較例の、焼却飛灰1kg当たりの水素ガスの発生量(リットル)を示す。図1から明らかなように、実施例では水素ガスは全く発生しないが、比較例では水素ガスが速やかに発生した。
【実施例】
【0024】
4.焼却飛灰固化体の製造とその状態
前記調製した含水混合物と泥状混合物を、内径27mm、深さ90mmのプラスチック試験管に流し込み、室温で2週間静置した後、焼却飛灰固化体を試験管から抜き出した。図2のAおよびBに、該焼却飛灰固化体の状態を示す。
実施例の焼却飛灰固化体は、水素ガスが発生しなかったため、試験管の形状を完全に保持しているが、比較例の焼却飛灰固化体は、水素ガスを固化体の内部に閉じ込めているため、脆弱な発泡体になり、試験管から該焼却飛灰固化体を抜き出す際に破損した。
また、飛灰-1に代えて、飛灰-2および飛灰-3を用いた以外は、前記実施例および比較例と同じ固化試験を行った。その結果、飛灰-1を用いた場合と同様に、飛灰-2を用いた実施例の焼却飛灰固化体は、水素ガスが発生しなかったため、試験管の形状を完全に保持したが、比較例の焼却飛灰固化体は、飛灰-2および飛灰-3のいずれの場合も、水素ガスを固化体の内部に閉じ込めているため、脆弱な発泡体になった。
【実施例】
【0025】
また、飛灰-3を用いた実施例の焼却飛灰固化体は、水素ガスが発生してその膨張作用により、ひび割れが発生した(図3のC)。この理由は、飛灰-3に含まれる金属アルミニウムの保護被膜の耐アルカリ性が、飛灰-1や飛灰-2よりも低いためであると考える。
そこで、水の代わりに、図3に示す濃度の塩化カルシウム水溶液を用いて、前記実施例と同様の試験を行った。その結果を図3に示す。なお、塩化カルシウムは1級試薬を用いた。
図3に示すように、焼却飛灰1kg当たりの水素ガスの発生量(リットル)は、塩化カルシウムの濃度が増加するとともに減少し、該濃度が6.9重量%ではゼロになった。これは塩化カルシウムの濃度の増加とともに、保護被膜で覆われたアルミニウム粒子の周りの水溶液のpHが低下したためと考える。
【実施例】
【0026】
以上の結果から、焼却飛灰およびセメントを撹拌して混合する際や、これにさらに水を加えて撹拌して混合する際に、焼却飛灰粒子の摩耗または破損を防止し、さらに、水に代えて塩化カルシウム水溶液を用いれば、含水混合物や焼却飛灰固化体からの水素ガスの発生を抑制できることが明らかになった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2