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明細書 :走査型プローブ顕微鏡及びその制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-054385 (P2018-054385A)
公開日 平成30年4月5日(2018.4.5)
発明の名称または考案の名称 走査型プローブ顕微鏡及びその制御方法
国際特許分類 G01Q  10/04        (2010.01)
G01Q  60/44        (2010.01)
FI G01Q 10/04
G01Q 60/44
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-188803 (P2016-188803)
出願日 平成28年9月27日(2016.9.27)
発明者または考案者 【氏名】▲高▼橋 康史
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100109210、【弁理士】、【氏名又は名称】新居 広守
審査請求 未請求
要約 【課題】連続撮影モードにおいて、従来よりも短い測定時間で画像化を繰り返すことが可能な走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【解決手段】走査型プローブ顕微鏡10は、プローブ11と、XYスキャナ12と、Zスキャナ13と、XYスキャナ12及びZスキャナ13を制御することによって試料22の表面における立体形状を画像化する制御部19とを備える。制御部19は、画像化を繰り返す連続撮影モードにおいて、過去の画像化で得られた画像に基づいて、次の画像化のためのプローブ11の走査及びプローブ11のZ軸方向の駆動の少なくとも一方に関する走査条件を決定し、決定した走査条件に従ってXYスキャナ12及びZスキャナ13を制御することで次の画像化を行うことを繰り返す。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
プローブと、
試料に対して相対的に前記プローブを2次元的に走査するXYスキャナと、
前記XYスキャナによる走査面と直交するZ軸方向に前記プローブを駆動するZスキャナと、
前記XYスキャナ及び前記Zスキャナを制御することによって前記試料の表面における立体形状を画像化する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記画像化を繰り返す連続撮影モードにおいて、過去の画像化で得られた画像に基づいて、次の画像化のための前記プローブの走査及び前記プローブのZ軸方向の駆動の少なくとも一方に関する走査条件を決定し、決定した走査条件に従って前記XYスキャナ及び前記Zスキャナを制御することで次の画像化を行うことを繰り返す
走査型プローブ顕微鏡。
【請求項2】
前記制御部は、過去の画像化で得られた画像において前記試料が存在する領域である試料領域を特定し、特定した試料領域に基づいて、次の画像化において前記プローブが走査すべき領域である測定領域を決定し、決定した測定領域にだけ前記プローブが走査するように、前記XYスキャナを制御する
請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項3】
前記制御部は、過去の画像化で得られた画像の試料領域に対して所定幅だけ広げた領域を、前記測定領域として決定する
請求項2記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項4】
前記制御部は、過去の少なくとも2回の画像化で得られた少なくとも2枚の画像を用いて、前記測定領域を決定する
請求項2記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項5】
前記制御部は、前記2枚の画像のうちの古い画像の試料領域に対して第1幅だけ広げた領域に前記2枚の画像のうちの新しい画像の試料領域が収まるか否かを判断し、収まらない場合に、前記古い画像の試料領域に対して前記第1幅よりも大きな第2幅だけ広げた領域を前記測定領域として決定する
請求項4記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項6】
前記制御部は、過去の画像化で得られた画像において前記試料が存在する領域である試料領域を特定し、特定した試料領域に基づいて、次の画像化において前記プローブのZ軸方向の駆動における振幅であるホッピング量を決定し、決定したホッピング量で前記プローブがZ軸方向に駆動されるように、前記Zスキャナを制御する
請求項1~5のいずれか1項に記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項7】
前記制御部は、前記画像における前記試料領域と前記試料領域以外の領域との境界を含む領域において、前記境界を含まない領域よりも、前記ホッピング量が大きくなるように、前記ホッピング量を決定する
請求項6記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項8】
走査型プローブ顕微鏡における制御方法であって、
前記走査型プローブ顕微鏡は、
プローブと、
試料に対して相対的に前記プローブを2次元的に走査するXYスキャナと、
前記XYスキャナによる走査面と直交するZ軸方向に前記プローブを駆動するZスキャナとを備え、
前記制御方法は、
前記XYスキャナ及び前記Zスキャナを制御することによって前記試料の表面における立体形状を画像化する制御ステップを含み、
前記制御ステップでは、
前記画像化を繰り返す連続撮影モードにおいて、過去の画像化で得られた画像に基づいて、次の画像化のための前記プローブの走査及び前記プローブのZ軸方向の駆動の少なくとも一方に関する走査条件を決定し、決定した走査条件に従って前記XYスキャナ及び前記Zスキャナを制御することで次の画像化を行うことを繰り返す
走査型プローブ顕微鏡の制御方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡及び走査型プローブ顕微鏡の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡は、鋭い探針(プローブ)を使用し、探針を試料に近接させた際に両者の相互作用で生じる物理情報や化学的性質を信号として取得し、その信号を制御しながら探針で試料表面を走査することで、試料表面の立体形状を画像化する装置である。
【0003】
近年、走査型プローブ顕微鏡の中でも、生細胞等を含む生物試料の観察を可能にした走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(Scanning Ion-Conductance Microscope, SICM、以下、「SICM」ともいう)が着目されている。SICMは、ナノピペットと呼ばれるガラス細管を探針として利用し、電解質液が満たされたナノピペット内の電極と試料を浸した電解質液中の電極との間に生じるイオン電流の変化を利用して試料表面の立体形状を画像化するもので、柔らかい生物試料の液中観察が可能である。特に、ナノピペットを上下に大きく振りながら走査を行うホッピンングモードによって、神経細胞等の複雑な形状の試料について、非常に鮮明な画像化が可能になっている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Yasufumi Takahashi et al.、「Topographic imaging of convoluted surface of live cells by scanning ion conductance microscopy in a standing approach mode」、Physical Chemistry Chemical Physics、第12巻(第34号)、2010年9月14日、p10012-10017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献1の技術では、鮮明な画像化が可能になるものの、測定時間が長いという問題がある。特に、動きのある生細胞の画像化を繰り返す連続撮影モードでは、1枚の画像を得るのに要する時間を短縮することが期待されている。
【0006】
そこで、本発明は、連続撮影モードにおいて、従来よりも短い測定時間で画像化を繰り返すことが可能な走査型プローブ顕微鏡及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る走査型プローブ顕微鏡は、プローブと、試料に対して相対的にプローブを2次元的に走査するXYスキャナと、XYスキャナによる走査面と直交するZ軸方向にプローブを駆動するZスキャナと、XYスキャナ及びZスキャナを制御することによって試料の表面における立体形状を画像化する制御部とを備え、制御部は、画像化を繰り返す連続撮影モードにおいて、過去の画像化で得られた画像に基づいて、次の画像化のためのプローブの走査及びプローブのZ軸方向の駆動の少なくとも一方に関する走査条件を決定し、決定した走査条件に従ってXYスキャナ及びZスキャナを制御することで次の画像化を行うことを繰り返す。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る走査型プローブ顕微鏡の制御方法は、XYスキャナ及びZスキャナを制御することによって試料の表面における立体形状を画像化する制御ステップを含み、制御ステップでは、画像化を繰り返す連続撮影モードにおいて、過去の画像化で得られた画像に基づいて、次の画像化のためのプローブの走査及びプローブのZ軸方向の駆動の少なくとも一方に関する走査条件を決定し、決定した走査条件に従ってXYスキャナ及びZスキャナを制御することで次の画像化を行うことを繰り返す。
【0009】
このような走査型プローブ顕微鏡及び制御方法により、走査型プローブ顕微鏡による連続撮影モードにおいて、過去の画像化で得られた画像に基づいて次の画像化におけるプローブの走査条件が決定されるので、具体的な試料に依存した好適な走査条件で画像化を繰り返すことが可能となり、過去の画像を再利用しない従来の技術に比べ、測定時間が短縮される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、連続撮影モードにおいて、従来よりも短い測定時間で画像化を繰り返すことが可能な走査型プローブ顕微鏡及びその制御方法が提供される。
【0011】
よって、生細胞等の動きある試料の連続撮影における測定時間が短縮化され、バイオサイエンスの発展が期待される今日において、本発明の実用的価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る走査型プローブ顕微鏡の構成を示すブロック図
【図2】実施の形態に係る走査型プローブ顕微鏡の連続撮影モードにおける基本動作を示すフローチャート
【図3】実施の形態に係る走査型プローブ顕微鏡による連続撮影モードにおける測定領域の設定例を示す図
【図4】実施の形態に係る走査型プローブ顕微鏡による連続撮影モードにおけるホッピング量の設定例を示す図
【図5】実施の形態に係る走査型プローブ顕微鏡のプローブの具体的な走査軌跡を示す図
【図6】実施の形態に係る走査型プローブ顕微鏡による連続撮影モードで得られた動画の一例を示す図
【図7】実施の形態の変形例に係る走査型プローブ顕微鏡の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。

【0014】
図1は、本実施の形態に係る走査型プローブ顕微鏡10の構成を示すブロック図である。走査型プローブ顕微鏡10は、本実施の形態では、容器20に入れられた電解質液21に浸された生細胞等の試料22を観察するSICMであり、プローブ11、XYスキャナ12、Zスキャナ13、スキャナコントローラ14、電流アンプ15、ピペット電極16、対照電極17、電圧源18、及び、制御部19で構成される。

【0015】
プローブ11は、ナノピペットと呼ばれるガラス細管である。

【0016】
XYスキャナ12は、試料22に対して相対的にプローブ11を2次元的に(XY面で)走査するデバイスであり、例えば、圧電素子である。

【0017】
Zスキャナ13は、XYスキャナ12による走査面(XY面)と直交するZ軸方向にプローブ11を駆動するデバイスであり、例えば、圧電素子である。

【0018】
ピペット電極16は、電解質液21が満たされたプローブ11内に設けられる電極である。

【0019】
対照電極17は、試料22が浸された容器20内の電解質液21中に設けられる電極である。

【0020】
電圧源18は、ピペット電極16と対照電極17との間にイオン電流を発生させるためにそれらの電極間に印加する直流電圧を供給する電源である。

【0021】
電流アンプ15は、ピペット電極16と対照電極17との間に流れるイオン電流を増幅するとともにそのイオン電流を測定する回路である。

【0022】
スキャナコントローラ14は、XYスキャナ12を制御することで、試料22に対して相対的にプローブ11を2次元的に走査させるとともに、電流アンプ15で測定されたイオン電流が一定(コンダクタンスが一定)となるようにZスキャナ13をフィードバック制御することで、Z軸方向にプローブ11を、試料22に対して近接し、かつ、非接触状態を維持するように、駆動させる駆動装置である。

【0023】
制御部19は、画像化を繰り返す連続撮影モードにおいて、過去の画像化で得られた画像に基づいて、次の画像化のためのプローブ11の走査及びプローブ11のZ軸方向の駆動の少なくとも一方に関する走査条件を決定し、決定した走査条件に従ってスキャナコントローラ14を介してXYスキャナ12及びZスキャナ13を制御することで次の画像化を行うことを繰り返す装置であり、例えば、スキャナコントローラ14と接続されたコンピュータ装置である。そのコンピュータ装置は、ディスプレイ、キーボード等の入力デバイス、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース、ハードディスク等を備え、CPUがハードディスク等に格納されたプログラムをRAMにロードして実行することで、制御部19としての機能を発揮する。なお、制御部19は、連続撮影モードだけでなく、1回の画像化だけを行う撮影モードも有する。

【0024】
図2は、図1に示された走査型プローブ顕微鏡10の連続撮影モードにおける基本動作(制御ステップ)を示すフローチャートである。

【0025】
連続撮影モードにおいて、制御部19は、まず、1回目の撮影として、試料22を含む予め設定された2次元領域(例えば、128画素×128画素)全体をプローブ11で走査して画像化する(S10)。

【0026】
次に、制御部19は、過去の画像化(ここでは、ステップS10での画像化)で得られた画像に基づいて、次の画像化のためのプローブ11の走査及びプローブ11のZ軸方向の駆動の少なくとも一方に関する走査条件を決定する(S11)。具体的には、制御部19は、(1)測定領域の絞り込み、及び、(2)ホッピング量の最適化を行う。

【0027】
より詳しくは、(1)測定領域の絞り込みでは、制御部19は、過去の画像化(ここでは、ステップS10での画像化)で得られた画像において試料22が存在する領域である試料領域を特定し、特定した試料領域に基づいて、次の画像化においてプローブ11が走査すべき領域である測定領域を決定する。このとき、制御部19は、図3の測定領域の設定例に示されるように、過去の画像化(ここでは、ステップS10での画像化)で得られた画像の試料領域30(図3の(a)参照)に対して所定幅(例えば、輪郭から外側に5画素分の大きさ)だけ広げた領域を、測定領域31(図3の(b)の破線で囲まれた領域)として決定する。なお、図3では、神経細胞を試料とする試料領域30(図3の(a))と測定領域31(図3の(b))の例が示されている。

【0028】
ここで、試料領域30の具体的な特定方法としては、例えば、得られた画像に対して、画素値の空間分布において微分演算を施すことで試料の輪郭(エッジ)を検出したり、画素値ごとの度数分布(ヒストグラム)から特定した背景色(電解質液21の領域)を画像から除外することで試料領域30を特定したりする。

【0029】
また、(2)ホッピング量の最適化では、制御部19は、過去の画像化(ここでは、ステップS10での画像化)で得られた画像において試料22が存在する領域である試料領域を特定し、特定した試料領域に基づいて、次の画像化においてプローブ11のZ軸方向の駆動における振幅であるホッピング量を決定する。このとき、制御部19は、図4のホッピング量11aの設定例に示されるように、画像における試料領域33と試料領域33以外の領域(非試料領域34a及び34b)との境界を含む領域において、境界を含まない領域よりも、ホッピング量11aが大きくなるように、ホッピング量11aを決定する。なお、境界を含む領域とは、境界と、境界から所定画素(例えば、3画素)だけ離れた範囲とからなる領域である。

【0030】
次に、図2に戻り、制御部19は、2回目の撮影として、ステップS11で決定された走査条件に従って、測定領域に対してプローブ11を走査して画像化する(S12)。より詳しくは、制御部19は、ステップS11で絞り込まれた測定領域にだけプローブ11が走査するように、スキャナコントローラ14を介してXYスキャナ12を制御する。また、制御部19は、ステップS11で最適化されたホッピング量に従って、試料領域と試料領域以外の領域との境界を含む領域において、境界を含まない領域よりも、ホッピング量が大きくなるようにプローブ11がZ軸方向に駆動されるように、スキャナコントローラ14を介してZスキャナ13を制御する。

【0031】
次に、制御部19は、連続撮影モードとして予め設定された回数の撮影が終了したか否かを判断し(S13)、その結果、撮影が終了したと判断した場合には(S13でYes)、連続撮影モードを終了し、撮影が終了していないと判断した場合には(S13でNo)、再びステップS11及びS12を繰り返す。

【0032】
ステップS11及びS12の繰り返しにおいては、ステップS11では、過去の画像化(ここでは、直前のステップS12での画像化)で得られた画像に基づいて、次の画像化のためのプローブ11の走査及びプローブ11のZ軸方向の駆動の少なくとも一方に関する走査条件を決定する(S11)。具体的には、制御部19は、前回での処理と同様にして、(1)測定領域の絞り込み、及び、(2)ホッピング量の最適化を行う。そして、ステップS12では、制御部19は、3回目の撮影として、直前のステップS11で決定された走査条件に従って、測定領域に対してプローブ11を走査して画像化する(S12)。より詳しくは、制御部19は、直前のステップS11で絞り込まれた測定領域にだけプローブ11が走査するように、スキャナコントローラ14を介してXYスキャナ12を制御する。また、制御部19は、直前のステップS11で最適化されたホッピング量に従って、試料領域と試料領域以外の領域との境界を含む領域において、境界を含まない領域よりも、ホッピング量が大きくなるようにプローブ11がZ軸方向に駆動されるように、スキャナコントローラ14を介してZスキャナ13を制御する。

【0033】
このように、連続撮影モードでは、過去(ここでは、直前)の画像化で得られた画像に基づいて次の画像化における(1)測定領域の絞り込み、及び、(2)ホッピング量の最適化を含む走査条件が決定され、決定された走査条件で次の画像化が行われる。

【0034】
これにより、過去の画像において試料22が存在した領域である試料領域に基づいて、次の画像化においてプローブ11が走査すべき領域である測定領域を決定し、決定した測定領域にだけ選択的にプローブ11が走査されるので、固定的な2次元領域全体を走査する従来に比べ、測定時間が短縮される。特に、神経細胞等の画像化では、プローブ11が走査可能な2次元領域全体に対して必要となる測定領域が非常に限られている(一部の領域だけが測定領域となる)ので、測定時間が大幅に短縮される。

【0035】
また、大きなホッピング量が必要となる試料領域と試料領域以外の領域との境界においてだけホッピング量が大きくなり、試料22の場所に依存することなく固定的なホッピング量でプローブ11を駆動する従来に比べ、測定時間が短縮される。

【0036】
なお、上記図2に示されたフローチャートの説明では、次の走査条件の決定において(S11)、(1)測定領域の絞り込み、及び、(2)ホッピング量の最適化の両方が行われたが、必ずしも両方を行う必要はなく、事前の設定に応じて、(1)測定領域の絞り込み、及び、(2)ホッピング量のいずれかだけが行われてもよい。

【0037】
また、プローブ11が測定領域だけに選択的に走査する際の具体的な走査方法としては、図5に示される軌跡(実線及び破線)の通りである。測定領域が図5の(a)に示されるような単純な形状である場合には、図5の(a)に示される実線のように、プローブ11が測定領域31だけについて、X軸方向への走査をY軸方向にずらしながら繰り返す。また、測定領域が図5の(b)に示されるような複雑な形状である場合には、図5の(b)に示される実線(測定のための走査)及び破線(測定しない移動だけの走査)ように、測定領域31を包含する最小限の領域について、X軸方向への走査(測定のための走査と測定しない移動だけの走査を含む)をY軸方向にずらしながら繰り返す。

【0038】
図6は、本実施の形態に係る走査型プローブ顕微鏡10による連続撮影モードで得られた動画の一例を示す図である。ここでは、海馬を試料22とし、測定領域の絞り込みによる連続撮影モードで得られた動画における開始時点での画像(図6の(a))と、終了時点での画像(図6の(b))とが示されている。いずれの画像も15μm×15μmの領域画像であり、4分/画像の画像化レートで、細胞上の動きが鮮明に可視化された。このことから、測定領域の絞り込みによる連続撮影モードにより、測定領域の絞り込みを行わない従来の連続撮影モードに比べ、測定時間について、2~4倍の高速化が可能になったといえる。

【0039】
なお、上記図2に示されたフローチャートの説明では、過去の1枚の画像だけを用いて次の画像化における走査条件が決定されたが、過去の少なくとも2枚の画像を用いて次の画像化における走査条件を決定してもよい。

【0040】
図7は、過去の少なくとも2枚の画像を用いて次の画像化における走査条件を決定する、上記実施の形態の変形例に係る走査型プローブ顕微鏡の動作を示すフローチャートである。図2のステップS11における測定領域の絞り込み(測定領域の決定)の変形例に相当する。ここでは、連続撮影モードにおいて、過去の2枚の画像を用いて次の画像化における走査条件を決定する処理の流れが示されている。

【0041】
この変形例では、まず、制御部19は、過去の2枚の画像のうちの古い画像の試料領域に対して予め定めた第1幅(例えば、輪郭から外側に5画素分の大きさ)だけ広げることで、暫定的な測定領域を決定する(S20)。

【0042】
次に、制御部19は、いま決定した暫定的な測定領域に、過去の2枚の画像のうちの新しい画像の試料領域が収まるか否かを判断する(S21)。

【0043】
その結果、制御部19は、収まると判断した場合には(S21でYes)、暫定的な測定領域を最終的な測定領域と決定し、一方、収まらないと判断した場合には(S21でNo)、過去の2枚の画像のうちの古い画像の試料領域に対して第1幅よりも大きな第2幅(例えば、輪郭から外側に10画素分の大きさ、あるいは、新しい画像の試料領域をカバーできる大きさ)だけ広げた領域を、最終的な測定領域として決定する(S22)。

【0044】
これにより、過去の2枚の画像のうちの古いほうの画像における試料領域を基準とし、新しいほうの画像を次の画像化における測定領域の確認用として用いることで、より確実に試料22の動きが予測され、適切な測定領域が決定され得る。

【0045】
以上のように、本実施の形態に係る走査型プローブ顕微鏡10は、プローブ11と、試料22に対して相対的にプローブ11を2次元的に走査するXYスキャナ12と、XYスキャナ12による走査面と直交するZ軸方向にプローブ11を駆動するZスキャナ13と、XYスキャナ12及びZスキャナ13を制御することによって試料22の表面における立体形状を画像化する制御部19とを備える。制御部19は、画像化を繰り返す連続撮影モードにおいて、過去の画像化で得られた画像に基づいて、次の画像化のためのプローブ11の走査及びプローブ11のZ軸方向の駆動の少なくとも一方に関する走査条件を決定し、決定した走査条件に従ってXYスキャナ12及びZスキャナ13を制御することで次の画像化を行うことを繰り返す。

【0046】
これにより、走査型プローブ顕微鏡による連続撮影モードにおいて、過去の画像化で得られた画像に基づいて次の画像化におけるプローブ11の走査条件が決定されるので、具体的な試料22に依存した好適な走査条件で画像化を繰り返すことが可能となり、過去の画像を再利用しない従来の技術に比べ、測定時間が短縮される。

【0047】
また、制御部19は、過去の画像化で得られた画像において試料22が存在する領域である試料領域を特定し、特定した試料領域に基づいて、次の画像化においてプローブ11が走査すべき領域である測定領域を決定し、決定した測定領域にだけプローブ11が走査するように、XYスキャナ12を制御する。

【0048】
これにより、過去の画像において試料22が存在した領域である試料領域に基づいて、次の画像化においてプローブ11が走査すべき領域である測定領域を決定し、決定した測定領域にだけ選択的にプローブ11が走査されるので、固定的な2次元領域全体を走査する従来に比べ、測定時間が短縮される。

【0049】
また、制御部19は、過去の画像化で得られた画像の試料領域に対して所定幅だけ広げた領域を、測定領域として決定する。

【0050】
これにより、過去の画像における試料領域よりも広い領域が次の画像化における測定領域となるので、生細胞等の動きのある試料22であっても、試料22の全体が観察され得る。

【0051】
また、制御部19は、過去の少なくとも2回の画像化で得られた少なくとも2枚の画像を用いて、測定領域を決定する。

【0052】
これにより、過去の少なくとも2枚の画像を用いて次の画像化における測定領域が決定されるので、生細胞等の動きのある試料22であっても、試料22の動きを予測したうえで測定領域を決定することが可能となり、より確実に試料22の全体が観察され得る。

【0053】
また、制御部19は、2枚の画像のうちの古い画像の試料領域に対して第1幅だけ広げた領域に2枚の画像のうちの新しい画像の試料領域が収まるか否かを判断し、収まらない場合に、古い画像の試料領域に対して第1幅よりも大きな第2幅だけ広げた領域を測定領域として決定する。

【0054】
これにより、過去の2枚の画像のうちの古いほうの画像における試料領域を基準とし、新しいほうの画像を次の画像化における測定領域の確認用として用いることで、より確実に試料22の動きが予測され、適切な測定領域が決定され得る。

【0055】
また、制御部19は、過去の画像化で得られた画像において試料22が存在する領域である試料領域を特定し、特定した試料領域に基づいて、次の画像化においてプローブ11のZ軸方向の駆動における振幅であるホッピング量を決定し、決定したホッピング量でプローブ11がZ軸方向に駆動されるように、Zスキャナ13を制御する。

【0056】
これにより、過去の画像において試料22が存在した領域である試料領域に基づいて、次の画像化におけるホッピング量を決定し、決定したホッピング量でプローブ11がZ軸方向に駆動されるので、固定的なホッピング量でプローブ11を駆動する従来に比べ、測定時間が短縮される。

【0057】
また、制御部19は、画像における試料領域と試料領域以外の領域との境界を含む領域において、境界を含まない領域よりも、ホッピング量が大きくなるように、ホッピング量を決定する。

【0058】
これにより、大きなホッピング量が必要となる試料領域と試料領域以外の領域との境界においてだけホッピング量を大きくすることが可能となり、試料22の場所に依存することなく固定的なホッピング量でプローブ11を駆動する従来に比べ、測定時間が短縮される。

【0059】
また、本実施の形態に係る走査型プローブ顕微鏡10における制御方法は、XYスキャナ12及びZスキャナ13を制御することによって試料22の表面における立体形状を画像化する制御ステップを含む。制御ステップでは、画像化を繰り返す連続撮影モードにおいて、過去の画像化で得られた画像に基づいて、次の画像化のためのプローブ11の走査及びプローブ11のZ軸方向の駆動の少なくとも一方に関する走査条件を決定し(S11)、決定した走査条件に従ってXYスキャナ12及びZスキャナ13を制御することで次の画像化を行う(S12)ことを繰り返す(S11~S13)。

【0060】
これにより、連続撮影モードにおいて、過去の画像化で得られた画像に基づいて次の画像化におけるプローブ11の走査条件が決定されるので、具体的な試料22に依存した好適な走査条件で画像化を繰り返すことが可能となり、過去の画像を再利用しない従来の技術に比べ、測定時間が短縮される。

【0061】
以上、本発明の走査型プローブ顕微鏡について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本発明の範囲内に含まれる。

【0062】
例えば、上記実施の形態では、SICMを例として本発明が説明されたが、本発明は、このタイプの走査型プローブ顕微鏡への適用に限られず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope; AFM))、走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope; STM)等の他のタイプの走査型プローブ顕微鏡にも適用してもよい。

【0063】
また、上記実施の形態では、直前の1枚の画像、又は、直前の2枚の画像を用いて次の画像化における走査条件を決定する例が説明されたが、走査条件の決定に用いる過去の画像は、直前の1枚又は2枚に限られず、直前の画像よりも古い画像であってもよいし、3枚以上の画像であってもよい。さらに、過去の複数の画像を用いる場合には、直前に近い画像ほど大きな重みをつけることで、次の画像化における走査条件を決定してもよい。

【0064】
また、本発明は、走査型プローブ顕微鏡及びその制御方法として実現できるだけでなく、図2のフローチャートに示されたような制御方法に含まれるステップをもつプログラムとして実現したり、そのようなプログラムが格納されたCD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡として、例えば、動きのある生物試料を連続撮影モードで高速に観察するSICMとして、利用できる。
【符号の説明】
【0066】
10 走査型プローブ顕微鏡
11 プローブ
11a ホッピング量
12 XYスキャナ
13 Zスキャナ
14 スキャナコントローラ
15 電流アンプ
16 ピペット電極
17 対照電極
18 電圧源
19 制御部
20 容器
21 電解質液
22 試料
30、33 試料領域
31 測定領域
34a、34b 非試料領域
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6