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明細書 :骨障害の存在の検出方法、骨障害治療剤及び骨障害治療剤のスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-216882 (P2017-216882A)
公開日 平成29年12月14日(2017.12.14)
発明の名称または考案の名称 骨障害の存在の検出方法、骨障害治療剤及び骨障害治療剤のスクリーニング方法
国際特許分類 C12Q   1/04        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12Q   1/48        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
A61K  31/713       (2006.01)
A61P  19/10        (2006.01)
A61P  19/08        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61K  31/45        (2006.01)
FI C12Q 1/04 ZNA
C12Q 1/02
C12Q 1/48 Z
C12Q 1/68 A
A61K 31/713
A61P 19/10
A61P 19/08
A61P 43/00 111
A61K 48/00
A61K 45/00
A61K 37/02
A61K 39/395 D
A61K 39/395 N
A61K 31/45
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 24
出願番号 特願2016-111385 (P2016-111385)
出願日 平成28年6月2日(2016.6.2)
発明者または考案者 【氏名】檜井 栄一
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4C084
4C085
4C086
Fターム 4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ26
4B063QQ27
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4B063QR62
4B063QR67
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4B063QS33
4B063QX01
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084NA14
4C084ZC411
4C084ZC412
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC22
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZC41
要約 【課題】骨障害が生じる機構の詳細を解析して、骨障害の検出方法、骨障害の治療剤及び骨障害治療剤のスクリーニング方法を提供すること。
【解決手段】Mek/Erk5/Smurf2/Smad/Sox9カスケードが骨格形成(軟骨形成)を制御するために重要な役割を有することを新規に見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
被験者由来生体試料中の以下のいずれか1以上を検出することを特徴とする骨障害の存在の検出方法。
(1)Smurf2のリン酸化
(2)Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性
(3)Smad1、Smad2及び/又はSmad3発現量
(4)Mek5のキナーゼ活性
(5)Erk5のキナーゼ活性

【請求項2】
前記生体試料は、間葉細胞である請求項1に記載の検出方法。

【請求項3】
前記Smurf2のリン酸化の検出は、コントロールと比較して低いことを指標とする請求項1又は2に記載の検出方法。

【請求項4】
前記Smurf2のリン酸化の検出は、Smurf2のN末端から249番目のセリンがリン酸化されているかどうかを検出することである請求項1又は2に記載の検出方法。

【請求項5】
前記骨障害は、骨形成不全症、タナトフォリック骨異形成症、骨粗鬆症、骨減少症、骨軟化症、骨骨髄腫、骨形成異常、パジェット病、骨硬化症、再生不良性骨障害、体液性高カルシウム血症骨髄腫、多発性骨髄腫、クルゾン症候群、オプシスモ異形成(成熟遅延骨異形成症)、濃化異骨症、又は、大理石骨病である請求項1~4のいずれか1に記載の検出方法。

【請求項6】
前記骨障害は、Mek/Erk5/Smurf2/Smad/Sox9カスケード不全によるものである請求項1~5のいずれか1に記載の検出方法。

【請求項7】
以下の(1)~(4)いずれか1を有効成分とする骨障害治療剤。
(1)Smurf2遺伝子又はSmurf2タンパク質
(2)抗Smad1抗体、抗Smad2抗体及び/又は抗Smad3抗体
(3)Smad1、Smad2及び/又はSmad3の発現を抑制するsiRNA又はshRNA
(4)Smad1、Smad2及び/又はSmad3の発現を抑制する化合物

【請求項8】
以下の(1)~(3)のいずれか1から選択される骨障害治療剤のスクリーニング方法。
(1)Smurf2のリン酸化を促進させる試験化合物を選択する
(2)Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性を促進させる試験化合物を選択する
(3)Smad1、Smad2及び/又はSmad3発現量を低下させる試験化合物を選択する
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、骨障害の存在の検出方法、骨障害治療剤及び骨障害治療剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(骨形成)
骨は、胚及び生後の骨格形成の間に、2つの異なるプロセスである膜内及び軟骨内骨化によって形成される{非特許文献1:Annual review of cell and evelopmental biology 25, 629-648 (2009)、非特許文献2:Cold Spring Harb Perspect Biol 5, a008334 (2013)}。頭蓋骨の扁平骨、鎖骨及び下顎骨は、骨を形成する骨芽細胞に直接分化する間葉系幹細胞を含む結合組織内骨化によって骨化される{非特許文献3:Molecular cell biology 13, 27-38 (2012)}。前肢(上腕骨、橈骨及び尺骨)、後肢(大腿骨、脛骨及び腓骨)、足及び手(中足骨、中手骨及び基節骨)における長骨等の他の骨は、軟骨内骨化により形成される{非特許文献4:Cell 90, 631 979-990 (1997)}。軟骨内骨化において、間葉系幹細胞は、軟骨のテンプレート(cartilaginous template)から軟骨細胞に分化する。軟骨細胞は、肥大軟骨細胞の領域において、痕跡器官の中心領域周辺で、休止し、増殖し、肥大化し、石灰化する段階を進行しながら、分化し、軟骨マトリックス石化(cartilage matrix mineralisation)を引き起こす。石化後、多くの肥大軟骨細胞は、新しい骨を産生するために、アポトーシスを経て、毛細血管、破骨細胞、骨髄細胞及び骨芽細胞の軟骨マトリックスへの侵入を引き起こす{非特許文献5:Nature 423, 332-336 (2003)、非特許文献6:Calcif Tissue Int 92, 307-323 (2013)}。
【0003】
(細胞外シグナル制御キナーゼ5)
細胞外シグナル制御キナーゼ5(Extracellular signal-regulated kinase 5;Erk5)は、Erk1/2、c-Jun アミノ末端キナーゼ及びp38を含む、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)ファミリーに属する。Erk5は、MAPK/Erkキナーゼ-5(Mek5)により特異的にリン酸化されて、活性化される。Erk1及びErk2は、アイソフォーム特異的な効果(Erk1及びErk2それぞれに固有の効果)の報告はされているが、高度の類似性を示し、また、機能的に同等であると考えられている{非特許文献7:Current Opinion in Cell Biology 9, 180-186 (1997)}。
Erk5は、2つのプロリンリッチ領域及び1つの核局在化シグナルをコードする、固有のC末端伸長により、他のErk酵素よりも大きな分子量(Erk1/2の約2倍)を有する{非特許文献8:EMBO Rep 7, 782-786 (2006)、非特許文献9:The Journal of biological chemistry 280, 2659-2667 (2005)}。マウスの遺伝学研究は、「軟骨細胞分化の連続的段階の制御による骨格発達において、Erk1/2経路が、本質的な役割を果していること」を示している{非特許文献10:Molecular and cellular biology 29, 5843-5857 (2009)、非特許文献11:Journal of bone and mineral research : the official journal of the American Society for Bone and Mineral Research 30, 765-774 (2015)、非特許文献12:Biochem Soc Trans 42, 1584-1589 (2014)}。さらに、Erk1/2 MAPK経路におけるシグナル分子における突然変異が、ヌーナン(Noonan)症候群、コステロ(Costello)症候群及びcardio-facio-cutaneous症候群を含む、多くのヒト骨格障害(骨形成障害)を引き起こすことを明らかにした{非特許文献13:Annu Rev Genomics Hum Genet 14, 355-369 (2013)、非特許文献14:Science 311, 1287-1290 (2006)、非特許文献15:Nature medicine 12, 283-285 (2006)}。
しかし、Erk5は、Erk1/2とは異なり、骨格形成における役割に関しては、知られていない。
【0004】
(先行特許文献)
本発明の先行特許文献として、以下を例示することができる。
特許文献1は、「個体の血液中のBMP-1イソ型のプロファイルを確定すること、および該プロファイルを種々の欠損および障害に関連したBMP-1イソ型の標準血液プロファイルと比較することを含む、個体の骨または軟組織における欠損または障害を診断する方法」を開示している。
特許文献2は、「骨または軟骨障害を診断し、および/または検出するための方法であって、試験試料中のポリペプチドの発現レベルが前記ポリペプチドに特異的に結合する抗体と試験試料を接触すること、および前期試験試料に対する前期抗体の結合を測定することによって測定される方法」を開示している。
特許文献3は、「女性の爪を検体とし、エストロゲン受容体発現遺伝子、LDL受容体関連タンパク5発現遺伝子、及びI型コラーゲン発現遺伝子の少なくとも1つの発現遺伝子における塩基置換を検出することを特徴とする、骨粗鬆症、骨形成不全症、又は骨密度形成不良症の発症リスクを診断する方法」を開示している。
しかしながら、特許文献1~3は、本発明の骨障害の存在の検出方法の各工程を開示又は示唆していない。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Annual review of cell and evelopmental biology 25, 629-648 (2009)
【非特許文献2】Cold Spring Harb Perspect Biol 5, a008334 (2013)
【非特許文献3】Molecular cell biology 13, 27-38 (2012)
【非特許文献4】Cell 90, 631 979-990 (1997)
【非特許文献5】Nature 423, 332-336 (2003)
【非特許文献6】Calcif Tissue Int 92, 307-323 (2013)
【非特許文献7】Current Opinion in Cell Biology 9, 180-186 (1997)
【非特許文献8】EMBO Rep 7, 782-786 (2006)
【非特許文献9】The Journal of biological chemistry 280, 2659-2667 (2005)
【非特許文献10】Molecular and cellular biology 29, 5843-5857 (2009)
【非特許文献11】Journal of bone and mineral research : the official journal of the American Society for Bone and Mineral Research 30, 765-774 (2015)
【非特許文献12】Biochem Soc Trans 42, 1584-1589 (2014)
【非特許文献13】Annu Rev Genomics Hum Genet 14, 355-369 (2013)
【非特許文献14】Science 311, 1287-1290 (2006)
【非特許文献15】Nature medicine 12, 283-285 (2006)
【0006】

【特許文献1】特表2009-544286
【特許文献2】特表2012-506551
【特許文献3】特開2010-246424
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
骨障害が生じる機構が十分に解明されておらず、それにより骨障害の検出方法、骨障害の治療剤の開発が困難であることが現状である。
よって、本発明では、骨障害が生じる機構の解明により、骨障害の検出方法、骨障害の治療剤及び骨障害治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究した結果、以下の知見を基にして
本発明を完成した。
(1)Erk5が、骨格形成(特に中足骨、中手骨及び基節骨を含む、骨区画(bone compartment))において重要な役割を有する。
(2)Erk5が、E3ユビキチンリガーゼであるSmad特異的E3ユビキチンリガーゼ2(Smad-specific E3 ubiquitin ligase 2;Smurf2)の249番目のスレオニン(Thr249)を直接リン酸化し、続いて、Smadタンパク質のプロテアソーム分解の加速により軟骨形成を制御する。
(3)Smadタンパク質が、間葉細胞における軟骨形成の主要な転写因子であるsex-determining region Y-type high-mobility group box protein 9(Sox9)の発現を転写的に活性化する。
(4)Sox9が、in vivo及びin vitroでErk5依存性の骨格形成及び軟骨形成の重要な媒介物質である。
(5)上記(1)~(4)により、Mek/Erk5/Smurf2/Smad/Sox9カスケードが骨格形成(軟骨形成)を制御するために重要な役割を有する(参照:図6)。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.被験者由来生体試料中の以下のいずれか1以上を検出することを特徴とする骨障害の存在の検出方法。
(1)Smurf2のリン酸化
(2)Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性
(3)Smad1、Smad2及び/又はSmad3発現量
(4)Mek5のキナーゼ活性
(5)Erk5のキナーゼ活性
2.前記生体試料は、間葉細胞である前項1に記載の検出方法。
3.前記Smurf2のリン酸化の検出は、コントロールと比較して低いことを指標とする前項1又は2に記載の検出方法。
4.前記Smurf2のリン酸化の検出は、Smurf2のN末端から249番目のセリンがリン酸化されているかどうかを検出することである前項1又は2に記載の検出方法。
5.前記骨障害は、骨形成不全症、タナトフォリック骨異形成症、骨粗鬆症、骨減少症、骨軟化症、骨骨髄腫、骨形成異常、パジェット病、骨硬化症、再生不良性骨障害、体液性高カルシウム血症骨髄腫、多発性骨髄腫、クルゾン症候群、オプシスモ異形成(成熟遅延骨異形成症)、濃化異骨症、又は、大理石骨病である前項1~4のいずれか1に記載の検出方法。
6.前記骨障害は、Mek/Erk5/Smurf2/Smad/Sox9カスケード不全によるものである前項1~5のいずれか1に記載の検出方法。
7.以下の(1)~(4)いずれか1を有効成分とする骨障害治療剤。
(1)Smurf2遺伝子又はSmurf2タンパク質
(2)抗Smad1抗体、抗Smad2抗体及び/又は抗Smad3抗体
(3)Smad1、Smad2及び/又はSmad3の発現を抑制するsiRNA又はshRNA
(4)Smad1、Smad2及び/又はSmad3の発現を抑制する化合物
8.以下の(1)~(3)のいずれか1から選択される骨障害治療剤のスクリーニング方法。
(1)Smurf2のリン酸化を促進させる試験化合物を選択する
(2)Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性を促進させる試験化合物を選択する
(3)Smad1、Smad2及び/又はSmad3発現量を低下させる試験化合物を選択する
【発明の効果】
【0010】
本発明では、新規な骨障害の存在の検出方法、骨障害治療剤及び骨障害治療剤のスクリーニング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】Erk5は、in vivo及びin vitroで、骨格形成及び軟骨形成のために重要であることを示す結果。(A)E18.5のErk5fl/fl及びPrx1-Cre;Erk5fl/fl胚の骨格の全体及び部分(a~h)並びに3週齢のErk5fl/fl及びPrx1-Cre;Erk5fl/flオスマウスの脚のμCT 3D画像(i、j)。胚は、アリザリンレッド及びアルシアンブルーで二重染色した。バー=10 mm(a、b)及びバー=1 mm(c~h)。(B)E18.5のErk5fl/fl及びPrx1-Cre;Erk5fl/fl胚の中足骨の組織学的分析及びin situハイブリダイゼーション分析。中足骨は、H&E(a、b)、サフラニンO(c、d)及びvon Kossa(e、f)で染色した。中足骨中のCol2a1(g、h)、Col10a1(i、j)及びMmp13(k、l)のmRNA発現。バー=150 μm。異なる親由来の3匹以上のマウスに由来した骨格標本及び組織学的分析の代表的な画像を示した。E12.5のErk5fl/fl及びPrx1-Cre;Erk5fl/fl胚の分離された間葉細胞の微量質量培養を行い、続いて(C)6日目にアルシアンブルー染色(a、b)、12日目にアリザリンレッド染色(c、d)(n = 5)、(D及びE)mRNA発現解析(n = 5)及び(F)タンパク質発現解析(n = 3)を行った。バー=500 μm。(G)Erk5fl/fl及びPrx1-Cre;Erk5fl/fl胚由来の初期間葉細胞は、レトロウイルスによりErk5(WT)又はErk5(DN)発現ベクターを導入し、その後、微量質量培養、続いて、6日目にアルシアンブルー染色(a~f)、12日目にアリザリンレッド染色(g~l)(n = 5)を行った。バー=500 μm。**P<0.01は、コントロール細胞中で得られた値と有意に異なることを意味する。統計的有意差は、two-tailed及びunpairedのStudent's t-test(D及びE)を使用して決定した。fl/fl及びPrx1-Cre;Erk5fl/fl胚由来の初期間葉細胞は、ルシフェラーゼ活性を決定するために、様々なルシフェラーゼベクターを一過的に導入した(n = 5)。Erk5fl/fl及びPrx1-Cre;Erk5fl/fl胚の分離された間葉細胞の微量質量培養を行い、(B)qPCRによるmRNA発現の決定(n = 5)及び(C及びD)イムノブロッティング及び免疫細胞化学によるタンパク質発現の決定(n = 3)を行った。バー=10 μm。(E)Erk5fl/fl及びPrx1-Cre;Erk5fl/fl胚の初期間葉細胞を、2時間及び4時間で50 μg/mLのシクロヘキシミドで処理し、その後、イムノブロッティングで分析した(n = 4)。(F)HEK293細胞は、Mek5D又はErk5(WT)発現ベクターの存在下又は非存在下において、HA-Ub及びFlag-Smadを導入し、その後、抗Flag抗体で免疫沈降し、続いて抗HA抗体でイムノブロッティングした(n = 4)。**P<0.01は、コントロール細胞中で得られた値と有意に異なることを意味する。統計的有意差は、two-tailed及びunpairedのStudent's t-test(A及びB)を使用して決定した。fl/fl及びPrx1-Cre;Erk5fl/fl胚由来の初期間葉細胞は、レトロウイルスによりSmurf2(WT)、Smurf2(T249A)又はSmurf2(T249E)ベクターを導入し、その後、微量質量培養、続いて、6日目にアルシアンブルー染色をおこなった(n = 5)。バー=500 μm。(G)初期間葉細胞は、一過的にBRE-lucベクター及びSmurf2(WT)、Smurf2(T249A)若しくはSmurf2(T249E)発現ベクターと共に共導入し、その後、ルシフェラーゼ活性を測定した(n = 5)。**P<0.01は、空ベクター導入細胞中で得られた値と有意に異なることを意味する。P<0.05は、Smurf2(WT)ベクター導入細胞中で得られた値と有意に異なることを意味する。統計的有意差は、Bonferroni post-hoc testを用いた一元配置分散分析(one way analysis of variance)を使用して決定した(G)。fl/fl及びPrx1-Cre;Erk5fl/fl胚由来の初期間葉細胞は、(C)において示した(E)BRE及び(F)SBEを含むSox9プロモーターを認識するための特異的プライマー(a~d)に加えて、抗Smad1、抗Smad2及び抗Smad3抗体を使用したChIPアッセイにより分析した。* P<0.05及び**P<0.01は、空ベクター導入細胞中で得られた値と有意に異なることを意味する(B及びD)。* P<0.05は、コントロール細胞中で得られた値と有意に異なることを意味する(E及びF)。統計的有意差は、two-tailed及びunpairedのStudent's t-test(B及びD~F)を使用して決定した。fl/fl、Prx1-Cre;Erk5fl/fl、Prx1-Cre;Erk5fl/fl;Sox9fl/+、Prx1-Cre;Sox9fl/+胚の骨格の全体及び部分(a~p)及び3週齢の突然変異体マウスの脚のμCT 3D画像(q~t)。胚は、アリザリンレッド及びアルシアンブルーで二重染色した。バー=10 mm(a~d)及びバー=1 mm(e~p)。異なる親由来の3匹以上のマウス由来の骨格標本の代表的画像を示した。E12.5のErk5fl/fl、Prx1-Cre;Erk5fl/fl、Prx1-Cre;Erk5fl/fl;Sox9fl/+、Prx1-Cre;Sox9fl/+胚の分離された間葉細胞の微量質量培養を行い、続いて、(B及びC)6日目にアルシアンブルー染色(a~d)、(B及びD)12日目にアリザリンレッド染色(e~h)を行った(n = 5)。バー=500 μm。**P<0.01は、コントロール細胞中で得られた値と有意に異なることを意味する。P<0.01は、Erk5欠失細胞中で得られた値と有意に異なることを意味する。統計的有意差は、Bonferroni post-hoc testを用いた一元配置分散分析(one way analysis ofvariance)を使用して決定した(C及びD)。【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の対象)
本発明の対象は、骨障害の存在の検出方法、骨障害治療剤及び骨障害治療剤のスクリーニング方法に関する。

【0013】
(骨障害の存在の検出方法)
本発明の「骨障害の存在の検出方法」は、被験者由来生体試料中の以下のいずれか1以上を検出することができれば特に限定されない。
(1)Smurf2のリン酸化
(2)Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性
(3)Smad1、Smad2及び/又はSmad3発現量
(4)Mek5のキナーゼ活性
(5)Erk5のキナーゼ活性

【0014】
(骨障害)
本発明において、「骨障害」とは、Mek/Erk5/Smurf2/Smad/Sox9カスケード不全による骨格形成に障害がある疾患を意味する。
例えば、骨形成不全症、タナトフォリック骨異形成症、骨粗鬆症、骨減少症、骨軟化症、骨骨髄腫、骨形成異常、パジェット病、骨硬化症、再生不良性骨障害、体液性高カルシウム血症骨髄腫、多発性骨髄腫、クルゾン症候群、オプシスモ異形成(成熟遅延骨異形成症)、濃化異骨症、大理石骨病等を挙げられる。
特に、骨形成不全症とは、骨の脆弱性、骨折の治癒過程で骨変形を起す症状を有し、主に骨形成不全症1型、骨形成不全症2型、骨形成不全症3型及び骨形成不全症4型に分類される。

【0015】
(Mek/Erk5/Smurf2/Smad/Sox9カスケード不全)
本発明において、「Mek/Erk5/Smurf2/Smad/Sox9カスケード不全」とは、下記の実施例の新たな知見「Mek/Erk5/Smurf2/Smad/Sox9カスケードが骨格形成(軟骨形成)を制御するために重要な役割を有する(参照:図6)」により、該カスケードの各工程において、なんらかの理由により正常な工程を進まない(又は、正常な工程より遅い、強度が弱い・強い)ことを意味する。
Mek/Erk5/Smurf2/Smad/Sox9カスケード不全の場合には、以下のいずれか1以上が正常に機能しておらず、上記記載した骨障害が発症すると考えられる。
(1)Smurf2のリン酸化
(2)Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性
(3)Smad1、Smad2及び/又はSmad3発現量
(4)Mek5のキナーゼ活性
(5)Erk5のキナーゼ活性

【0016】
(Smurf2のリン酸化及びその測定方法)
本発明において、「Smurf2のリン酸化の検出」とは、コントロールと比較して低いことを指標とする。より詳しくは、Smurf2のN末端から249番目のセリンがリン酸化されていない(又は、コントロールと比較して低い)ことを指標とする。
Smurf2のリン酸化の測定方法は、自体公知の方法(市販の測定キット)を利用することができる。例えば、タンパク質のリン酸化状態の違いを分離検出するリン酸親和性電気泳動法(Phos-tag SDS-PAGE)、ELISA法、ウエスタンブロット法等を例示することができる。

【0017】
(Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性及びその測定方法)
本発明において、「Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性の検出」とは、コントロールと比較して低いことを指標とする。
Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性の測定方法は、自体公知の方法(市販の測定キット)を利用することができる。例えば、サンドイッチELISA法、蛍光法等を例示することができる。

【0018】
(Smad1、Smad2及び/又はSmad3発現量及びそれらの測定方法)
本発明において、「Smad1、Smad2及び/又はSmad3発現量」とは、コントロールと比較して高いことを指標とする。Smad1、Smad2及び/又はSmad3発現量は、遺伝子発現量(特に、mRNA発現量)及びタンパク質発現量のいずれを検出しても良いが、好ましくはタンパク質発現量を検出する。
遺伝子発現量(特に、mRNA発現量)の測定方法は、自体公知の方法を利用することができる。例えば、被験者由来生体試料に存在するSmadsの遺伝子を直接検出する方法、それら遺伝子の相補配列からなる遺伝子を生成させて間接的に検出する方法等が挙げられる。
タンパク質発現量の測定方法は、自体公知の方法を利用することができる。例えば、被験者由来生体試料に存在するSmadsのタンパク質を抗体(特に、蛍光標識した抗体)で検出する方法等が挙げられる。

【0019】
(Mek5のキナーゼ活性及びその測定方法)
本発明において、「Mek5のキナーゼ活性の検出」とは、コントロールと比較して低いことを指標とする。
Mek5のキナーゼ活性の測定方法は、自体公知の方法(市販の測定キット)を利用することができる。例えば、SDS-PAGE、ELISA法、ウエスタンブロット法等を例示することができる。

【0020】
(Erk5のキナーゼ活性及びその測定方法)
本発明において、「Erk5のキナーゼ活性の検出」とは、コントロールと比較して低いことを指標とする。
Erk5のキナーゼ活性の測定方法は、自体公知の方法(市販の測定キット)を利用することができる。例えば、SDS-PAGE、ELISA法、ウエスタンブロット法等を例示することができる。

【0021】
(被験者由来生体試料)
本発明において、被験者とは、哺乳類全般(ヒト、ネコ、イヌ、ウマを含む)を含み、さらに、健常者、骨障害の患者、該障害の疑いがある人、該障害が将来発生する人も含む。
生体試料は、Smurf2、Smad1、Smad2、Smad3、Mek5、Erk5の遺伝子及び/又はタンパク質が含まれていれば特に限定されないが、間葉細胞、幹細胞、生検試料、iPS細胞、初代培養細胞、血液、血液成分(血清、血漿、血球など)、唾液、尿、髄液、涙液、汗、毛髪、組織由来の成分を含む。
なお、間葉細胞とは、間葉系に属する細胞(骨細胞、心筋細胞、軟骨細胞、腱細胞、脂肪細胞など)へ分化しうる能力を有し、かつ自己複製能力を有する細胞として定義される。加えて、間葉細胞の取得方法は、自体公知の方法を利用することができ、被験者の骨髄、脂肪組織、胎盤組織、臍帯組織、歯髄等の組織から取得できる。

【0022】
(指標)
本発明の「指標」とは、骨障害の患者と骨障害の患者ではない人(健常者)を区別するための被験者由来生体試料のSmurf2のリン酸化、Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性、Smads発現量(Smad1、Smad2及び/又はSmad3発現量)、Mek5のキナーゼ活性、Erk5のキナーゼ活性の値を意味する。
例えば、被験者由来生体試料において、予め設定した「Smurf2のリン酸化の値」以下の場合には、骨障害が今後発症する、現在発症している又は進行している(可能性があること)を判定できる。
例えば、被験者由来生体試料において、予め設定した「Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性の値」以下の場合には、骨障害が今後発症する、現在発症している又は進行している(可能性があること)を判定できる。
例えば、被験者由来生体試料において、予め設定した「Smad1、Smad2及び/又はSmad3発現量」以上の場合には、骨障害が今後発症する、現在発症している又は進行している(可能性があること)を判定できる。
例えば、被験者由来生体試料において、予め設定した「Mek5のキナーゼ活性の値」以下の場合には、骨障害が今後発症する、現在発症している又は進行している(可能性があること)を判定できる。
例えば、被験者由来生体試料において、予め設定した「Erk5のキナーゼ活性の値」以下の場合には、骨障害が今後発症する、現在発症している又は進行している(可能性があること)を判定できる。

【0023】
Cut off(カットオフ)値の設定方法としては、骨障害を有さない人(健常者)由来の生体試料中のSmurf2のリン酸化の値の平均値、Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性の値の平均値、Smadsの発現量の値の平均値、Mek5のキナーゼ活性の値の平均値、Erk5のキナーゼ活性の値の平均値から算出する。通常、予め決定したcut off値の標準偏差の90%以上(又は90%以下)、好ましくは80%以上(又は80%以下)、より好ましくは70%以上(又は70%以下)、さらに好ましくは60%以上(又は60%以下)、最も好ましくは50%以上(又は50%以下)の場合には、骨障害を有すると判定できる。
また、別のcut off値の設定方法としては、骨障害歴のない被験者において、被験者由来生体試料の各数値に基づき、市販の統計解析ソフトを使用してROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を作成し、最適な感度及び特異度を求める。例えば、一次スクリーニング等の目的では感度が高い方を優先し、精査目的では特異度が高くなるようなカットオフ値を設定することが可能である。

【0024】
(骨障害治療剤)
本発明の「骨障害治療剤」は、下記の実施例の新たな知見「Mek/Erk5/Smurf2/Smad/Sox9カスケードが骨格形成(軟骨形成)を制御するために重要な役割を有する(参照:図6)」を基にした新規な機構(メカニズム)を利用した薬剤である。本発明の骨障害治療剤(特に、Mek/Erk5/Smurf2/Smad/Sox9カスケードによる骨格形成に障害の治療剤)は、有効成分として、少なくとも以下のいずれか1を含む。
(1)Smurf2遺伝子又はSmurf2タンパク質(配列番号1:http://www.uniprot.org/uniprot/Q9HAU4)
(2)抗Smad1抗体、抗Smad2抗体及び/又は抗Smad3抗体
(3)Smad1、Smad2及び/又はSmad3の発現を抑制するsiRNA又はshRNA
(4)Smad1、Smad2及び/又はSmad3の発現を抑制する化合物

【0025】
(Smurf2タンパク質)
加えて、本発明のSmurf2タンパク質は、以下の態様も含む。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列の保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、又はアセチル化誘導体
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と90%(又は、92%、94%、96%、98%、99%)以上の相同性を有し、かつSmurf2タンパク質と実質的同質のユビキチンE3リガーゼ活性作用を持つアミノ酸配列
(3)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、100~10個、50~30個、40~20個、10~5個、5~1個のアミノ酸が置換、欠損、挿入及び/又は付加しており、かつSmurf2タンパク質と実質的同質のユビキチンE3リガーゼ活性作用を持つアミノ酸配列

【0026】
(Smurf2遺伝子)
本発明のSmurf2遺伝子は、以下の態様も含む。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1~20(又は、1~15、1~10、1~7、1~5、1~3)個のアミノ酸が置換、欠損、挿入及び/又は付加しており、かつ配列番号1に記載のアミノ酸配列と実質的同質のユビキチンE3リガーゼ活性作用を有するポリペプチドをコードする遺伝子
(3)配列番号1に記載のアミノ酸配列と90%(又は、92%、94%、96%、98%、99%)以上の相同性を有し、かつ配列番号1に記載のアミノ酸配列と実質的同質のユビキチンE3リガーゼ活性作用を有するポリペプチドをコードする遺伝子

【0027】
(抗Smads抗体)
本発明の抗Smad1抗体、抗Smad2抗体及び/又は抗Smad3抗体は、市販の抗体(例:abcam社製品、Santa Cruz Biotechnology社製品等)を利用することができるが、天然由来の抗体、自体公知の方法等により作製しても良い。特に、アゴニスト抗体が好ましい。

【0028】
(Smadsの発現を抑制するsiRNA又はshRNA)
Smad1、Smad2及び/又はSmad3の発現を抑制するsiRNAは、Smad1、Smad2及び/又はSmad3の発現をRNA干渉の手法により低下又は消失させる作用を有する。siRNAは標的遺伝子のmRNAを分解してその発現を抑制する短鎖二重鎖RNAである。
siRNAは、Smad1、Smad2及び/又はSmad3遺伝子の部分配列からなるRNA(センス鎖)と該RNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNA(アンチセンス鎖)とを、該遺伝子のmRNAの配列に基づいて設計し、化学合成法により合成し、得られた両RNAをアニーリングさせることで製造することができる。siRNAを構成するセンスRNA及びアンチセンスRNAは、各々15個から35個のヌクレオチドからなることが好ましい。また、各々3'末端に、オーバーハング配列と呼ばれるヌクレオチドを結合させることが好ましい。オーバーハング配列はRNAをヌクレアーゼから保護する作用を有する。
Smad1、Smad2及び/又はSmad3の発現を抑制するshRNAは、ヘアピン構造を有する短鎖二重鎖RNAであり、siRNAと同様、RNA干渉により遺伝子の発現を抑制する。
shRNAは、センスRNAとアンチセンスRNAとが例えばオリゴヌクレオチド等により連結され、センスRNA由来部分とアンチセンスRNA由来部分が二重鎖を形成するため、ヘアピン様構造を有する。shRNAは、センスRNAとアンチセンスRNAに加え、これら2つのRNAを連結し且つループ構造を形成するようなオリゴヌクレオチドを含むRNAを、smadsのmRNAの塩基配列に基づいて設計して製造できる。好ましくは、センスRNAの3'末端とループ構造を形成するオリゴヌクレオチドの5'末端とが結合し、更にループ構造を形成するオリゴヌクレオチドの3'末端とアンチセンスRNAの5'末端とが結合したオリゴヌクレオチドである。ループ構造を形成するオリゴヌクレオチドとは、センスRNAとアンチセンスRNAの間に存在して両RNAを連結でき、それ自体がループ構造を形成するものを意味する。ヘアピン構造を有する二重鎖は、センスRNA由来部分とアンチセンスRNA由来部分とをアニーリングすることにより形成できる。

【0029】
(Smad1、Smad2及び/又はSmad3の発現を抑制する化合物)
本発明の「Smad1、Smad2及び/又はSmad3の発現を抑制する化合物」は、Smad1、Smad2及び/又はSmad3の発現(DNA→mRNA→タンパク質)を抑制することができれば特に限定されないが、例えば、タンパク合成阻害剤(特に、シクロヘキシミド)等を例示することができる。

【0030】
本発明の骨障害治療剤の投与量または摂取量については、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されるものではなく、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無等)、および担当医師の判断等に応じて適宜選択される。本発明の骨障害治療剤は、1日1~数回に分けて投与または摂取することができ、数日または数週間に1回の割合で間欠的に投与または摂取してもよい。

【0031】
(本発明の骨障害治療剤のスクリーニング方法)
本発明の骨障害治療剤のスクリーニング方法は、以下の3つを対象とする。
(A)Smurf2のリン酸化(特に、Smurf2のN末端から249番目のセリンがリン酸化)を促進させる試験化合物を選択する。
(B)Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性を促進させる試験化合物を選択する。
(C)Smad1、Smad2及び/又はSmad3発現量を低下させる試験化合物を選択する。

【0032】
本発明の骨障害治療剤(A)のスクリーニング方法は、少なくも以下の工程を有する。
(1)試験化合物を、Erk5及びSmurf2を含む系に添加する工程
(2)Smurf2のリン酸化量を測定する工程
「系」とは、in vivo、in vitroのいずれの場合でも良いが、間葉細胞又は該細胞由来抽出物が好ましい。
さらに、リン酸化量は、コントロール(試験化合物を添加しない系)と比較して高ければ、試験化合物は骨障害治療剤の有効成分と判定できる。

【0033】
本発明の骨障害治療剤(B)のスクリーニング方法は、少なくも以下の工程を有する。
(1)試験化合物を、Smurf2並びにSmad1、Smad2及び/又はSmad3を含む系に添加する工程
(2)Smurf2のユビキチンE3リガーゼ活性量を測定する工程
ユビキチンE3リガーゼ活性量は、コントロール(試験化合物を添加しない系)と比較して高ければ、試験化合物は骨障害治療剤の有効成分と判定できる。

【0034】
本発明の骨障害治療剤(C)のスクリーニング方法は、少なくも以下の工程を有する。
(1)試験化合物を、Smad1、Smad2及び/又はSmad3を含む系に添加する工程
(2)Smad1、Smad2及び/又はSmad3の発現量を測定する工程
発現量(遺伝子量及び/又はタンパク質量)は、コントロール(試験化合物を添加しない系)と比較して低ければ、試験化合物は骨障害治療剤の有効成分と判定できる。

【0035】
加えて、上記のスクリーニング方法において、以下の測定方法を使用することができるが、特に限定されない。
1)RT-PCR法
2)免疫ブロット法
3)SAGE
4)抗体を使用した免疫沈降法
5)プルダウン法
6)ELISA
7)ウエスタンブロット
8)ハイブリダイゼーション
9)フローサイトメトリー
10)比重遠心法
11)細胞の染色標本
12)組織の染色標本

【0036】
(試験化合物)
本発明で用いる「試験化合物」としては任意の物質を使用することができる。試験化合物の種類は特に限定されず、公知の治療剤、個々の低分子合成化合物(特にsiRNA)、天然物抽出物中に存在する化合物、合成ペプチドでもよい。
あるいは、試験化合物は、化合物ライブラリー、ファージディスプレーライブラリーもしくはコンビナトリアルライブラリーでもよい。試験化合物は、好ましくは低分子化合物であり、低分子化合物の化合物ライブラリーが好ましい。化合物ライブラリーの構築は当業者に公知であり、また市販の化合物ライブラリーを使用することもできる。

【0037】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。すべての実施例は、日本薬理学会のガイドラインを満たし、金沢大学動物実験委員会(the Committee for Ethical Use of Experimental Animals at Kanazawa University)により承認済である。
【実施例1】
【0038】
(方法と材料)
各実施例で使用した方法と材料を以下で説明する。
【実施例1】
【0039】
(マウス)
Erk5fl/fl及びSox9fl/flマウスは、Prx1-Cre又はCol2a1-Creのいずれかと交雑した。これらの突然変異体マウスは、C57BL/6Jと5世代以上、戻し交配した。マウスは、自由摂餌及び自由摂水、12時間の明期/暗期サイクル、23±1℃及び湿度55%の飼育環境で飼育した。遺伝子型判定は、尾のゲノムDNAを用いたPCRにより行った。サンプルサイズを予測するための統計学的手法は、使用しなかった。実験は、無作為化しなかった。本実施例では、実験中の給餌及び治療成績評価をブラインドしていない。
【実施例1】
【0040】
(骨格標本、組織学的分析及びIn situハイブリダイゼーション分析)
胚は、腸を抜き、皮膚を取り除き、その後95%エタノールで一晩固定した。その後、胚をアルシアンブルー溶液に一晩浸漬し、さらに2%KOH溶液に移し、続いてアリザリンレッド溶液で一晩染色した。最後に、骨は、1%のKOH/20%グリセロールで洗浄し、その後、50%エタノール/50%グリセロールに保存した。脚のμCT 3D画像については、VivaCT 40 mCTシステム(Scanco Medical社)を用いて、文献The Journal of experimental medicine 208, 841-851 (2011)に記載の通りに取得した。
マウス脛骨、大腿骨及び脚は、10%ホルマリン中性緩衝液で固定し、パラフィン包埋し、その後、5 μmの厚さで切片化した。切片は、ヘマトキシリン-エオジン(H&E)、サフラニンO及びvon Kossaで染色した。
In situハイブリダイゼーションは、文献British journal of pharmacology 146, 732-743 (2005)に記載の通りに行った。要約すると、低温槽中で中足骨を切断して、10 μmの厚さの凍結切片を得た。スライドガラス上にマウントした切片は、4%パラホルムアルデヒドに固定し、0.2 M塩酸と10 μg/mlプロテイナーゼKで連続的に処理した。切片は、0.25%無水酢酸含有0.1 Mトリエタノールアミン中でアセチル化した。切片は、プレハイブリダイゼーション後、65℃、16時間ジゴキシゲニン標識cRNAプローブでハイブリダイゼーションした。切片は、その後洗浄し、4 μg/ml RNase A処理した。さらに、切片は、16時間、anti-digoxigenin-ALP Fab fragmentsでインキュベートした。洗浄後、切片は、ニトロブルーテトラゾリウム塩化物/5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸塩で異なる期間処理した。cRNAプローブを生成するためのプラスミドベクターは、大阪大学の西村博士及びコロンビア大学のDucy博士により提供して頂いた。
【実施例1】
【0041】
(レトロウイルスベクターの作製及び感染)
Smurf2突然変異体コンストラクト(pMX-Smurf2(T249A)及びpMX-Smurf2(T249E))を作製するために、PrimeSTAR(日本登録商標)Max Mutagenesis Basal Kit(タカラバイオ株式会社)と特異的プライマー{Smurf2 T249AのForward primer:TTACATGCTCCTCCAGACCTACCAGAA(配列番号2)、Reverse primer:TGGAGGAGCATGTAAATGTGTTCTGCT(配列番号3)}を使用した部位特異的変異を行った。pMX-Erk5(WT)及びpMX-Erk5(DN)ベクターは、それぞれ、スクリプス研究所のJiing-Dwan Lee博士により提供されたpcDNA3-Erk5(WT)及びpcDNA3-Erk5AEFベクターからpMXベクターへサブクローニングすることにより作製した。これらのベクターは、その後、炭酸カルシウム法を用いて、PLAT-E細胞へ遺伝子導入した。遺伝子導入の48時間後、ウイルス上清を回収した。細胞は、その後8時間、4 μg/mlポリブレン存在下で該ウイルス上清に感染させた。
【実施例1】
【0042】
(微量質量培養系)
E12.5からの肢芽の間葉細胞は、0.1%コラゲナーゼで処理し、1.5時間、37℃で0.1%のディスパーゼ、続いて1.5 x 107細胞/mlで10%FBS含有DMEM/F12培地中に懸濁した。液滴は、4ウェルプレートの各ウェルの内に設置した。細胞は、1.5時間、37℃で接着させ、骨格形成培地(10%FBS及び50 μg/mlアスコルビン酸含有DMEM/F1 2培地)を添加した。培地は、2日ごとに交換し、アルシアンブルー染色及びアリザリンレッド染色は、6日目及び12日目にそれぞれ行なった。
【実施例1】
【0043】
(リアルタイム定量PCR)
全RNAを細胞から抽出し、続いて逆転写酵素及びオリゴdTプライマーを使用して、cDNAを合成した。その後、cDNAサンプルは、テンプレートとして、MX3005P qPCRシステム(アジレント・テクノロジー株式会社)と各遺伝子に特異的なプライマーを用いたリアルタイムPCR分析に使用した(参照:下記表1)。調べられた遺伝子の発現レベルは、各サンプルについて、内部標準としてActb発現を用いて標準化した。
【実施例1】
【0044】
【表1】
JP2017216882A_000002t.gif
【実施例1】
【0045】
(イムノブロッティング分析)
細胞は、1%ノニデットP-40含有溶解緩衝液で可溶化した。サンプルは、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、続いてポリフッ化ビニリデン膜(PVDF)に転写し、そしてイムノブロッティングを行った。使用した主要な抗体は、抗-Runx2、抗-Erk5、抗-Smad1、抗-Smad2、抗-Smad3、抗-phospho-Smad1/5/8、及び抗-phospho-Smad2/3(Cell Signaling Technologies社)、抗-β-アクチン、抗-Smad5、抗-Smad8、及び抗-Smurf2(Santa Cruz Biotechnology社)、抗-Sox9(EMD Millipore社)、及び抗-Osx(Abcam社)である。
【実施例1】
【0046】
(ルシフェラーゼアッセイ)
プラスミドBRE-luc(#45126)及びSBE4-luc(#16495)は、Addgeneから入手し、プラスミドRunx2-luc及び6xOSE2-lucは、コロンビア大学のDucy博士から提供して頂いた。プラスミド4x48-lucは、テキサス大学のCrombrugghe博士から提供された。ルシフェラーゼアッセイについては、細胞は、文献Journal of bone and mineral research : the official journal of the American Society for Bone and Mineral Research 27, 938-949 (2012)に記載のリポフェクション法を使用して、レポーターベクターと共に遺伝子導入され、続いて、ルミノメーター(アトー株式会社)中で、特異的基質を使用して、luc活性を測定した。遺伝子導入効率は、LacZ活性を決定することで標準化した。
【実施例1】
【0047】
(クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ)
ChIP実験は、ChIP assay kit(EMD Millipore社)より提供されているプロトコールに従って行った。細胞は、架橋結合させるためにホルムアルデヒドで処理され、続いて溶解緩衝液中で超音波処理した。免疫沈降は、抗-Smad1、抗-Smad2又は抗-Smad3抗体を用いて行い、続いて特異的プライマー{Sox9 promoter BRE (a-b)のForward primer:CCAGCTCCGCTTTGACGAGC(配列番号32)、Reverse primer:CACTTTTCGATGCTGTCTCCGTGG(配列番号33)、Sox9 promoter SBE (c-d)のForward primer:ACCACGGAGACAGCATCGAAAAGT(配列番号34)、Reverse primer:TTCACACGGAGACCGTTCCAAAACTG(配列番号35)}を用いたPCRを行った。
【実施例1】
【0048】
(免疫沈降アッセイ)
プラスミドFlag-Smad1(#14044)、Flag-Smad2(#14042)、Flag-Smad3(#14052)、Flag-Smad4(#14039)、Smad5(#11744)、Flag-Smad6(#14961)、Smad7-HA(#11733)、Myc-Smad8(#11745)、Flag-Smurf1(#11752)、Flag-Smurf2(#11746)及びHA-Erk5(#31817)は、Addgeneから入手した。HEK293細胞は、リン酸カルシウムトランスフェクション法を使用して、発現ベクターと共に一過的に遺伝子導入し、さらに、細胞は、1%ノニデットP-40含有溶解緩衝液中で可溶化し、続いて、抗体と共に1時間、4℃でインキュベートし、その後、プロテインGセファロースと共に免疫沈降した。免疫沈降物は、溶解緩衝液で3回洗浄し、SDSサンプル緩衝液中でボイルした。サンプルは、SDS-PAGEにより分離され、続いて、PVDF膜に転写され、その後、文献Biochim Biophys Acta 1832, 732 1117-1128 (2013)に記載の通りにイムノブロッティングした。
【実施例1】
【0049】
(リコンビナントタンパク質の調製)
ヒトSmurf2(WT)、Smurf2(T249A)及びSmurf2(T249E)cDNAは、N末端GSTタグを有するpCold IIベクター(タカラバイオ株式会社)に挿入した。GST-Smurf2ベクターは、24時間、15℃で50 μMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドと共に培養された大腸菌株BL21中で発現させた。大腸菌細胞は、遠心分離し、そして上清を取り除いた。大腸菌沈殿は、凍結/融解処理を3回行い、その後、1 mg/mlリゾチーム含有溶解緩衝液(50 mM Tris-HCl、500 mM NaCl、10%グリセロール、1%TritonX-100、4℃においてpH 8.0)で30分インキュベートし、続いて超音波処理した。上清画分のGST-Smurf2は、Glutathione Sepharose 4 Fast Flow(GE healthcare社)充填カラムにより精製した。GST-Smurf2タンパク質は、緩衝液(100 mM Tris-HCl、20 mMグルタチオン、4℃においてpH 8.0)で溶出した。溶出タンパク質は、繰り返し交換した透析緩衝液(10 mM Tris-HCl、pH 7.5)で、4℃で24時間透析した。
【実施例1】
【0050】
(In vitroキナーゼアッセイ)
リコンビナント完全長Erk5 active(Sigma-Aldrich社)又はリコンビナントErk5 inactive(Carna Biosciences社)(0.3 μM)は、30℃で30分、30 mLキナーゼ緩衝液(2.5 mM MOPS、pH 7.2、2.5 mM MgCl2、1.25 mMグリセロール2-リン酸、0.25 mM DTT、0.05%BSA)中でGST-Smurf2又はGST-Smurf2(T249A)(1 μM)及び0.5 mM ATPと共にインキュベートした。反応は、SDSサンプルバッファーの添加により停止させた。リン酸化されたタンパク質は、Phos-tag PAGEで分析した。Smurf2のPhos-tagイムノブロッティングのために、0.05 mM Phos-tag及び0.1 mM MnCl2は、製造元のプロトコールに従って、従来のSDSポリアクリルアミドゲルに添加した。
【実施例1】
【0051】
(In vitroユビキチン化アッセイ)
リコンビナントGSTタグ標識ヒトSmad1、Smad2及びSmad3タンパク質は、Sigma-Aldrich社から購入した。In vitroユビキチン化アッセイは、E2-Ubiquitin Conjugation Kit(Abcam社)を用いて、製造元の推奨するプロトコールに従って行った。GST-Smad1、GST-Smad2又はGST-Smad3(1 μM)は、1時間、37℃で1 x Ubiqutinylation緩衝液(0.1 μM E1、0.5 μM UbcH5c(E2)及び5 mM Mg-ATP、1 mM DTT、2.5 μMビオチン化ユビキチン)中でGST-Smurf2(0.1 μM)及びGST-Erk5(0.05 μM)と共にインキュベートした。反応は、2x Non-reducing gel loading bufferの添加により停止させた。ユビキチン化タンパク質は、SDS-PAGE及びhorseradish peroxidase conjugated Streptavidin detection systemにより分析した。
【実施例1】
【0052】
(免疫細胞化学分析)
免疫細胞化学分析のために、細胞は、ポリ‐L‐リジンでコートされたチェンバースライド上に設置した。培養細胞は、PBS溶解4%PFAで固定し、続いて洗浄し、その後、0.1% Triton X-100含有PBS中で、正常ヤギ血清で処理した。細胞は、その後、正常ヤギ血清及び0.3% Triton X-100含有PBSに希釈した一次抗体でインキュベートした。最後に、細胞は、対応する二次抗体と反応させ、チェンバースライドは、FluorSaveTM(EMD Millipore社)を使用してマウントした。
【実施例1】
【0053】
(データ解析)
全ての結果は、平均値±平均値の標準誤差として示し、統計の有意性は、two-tailed Student's t-test、unpaired Student's t-test又はBonferroni post-hoc testによる一元配置分散分析(one-way analysis of variance)を用いて決定した。
【実施例2】
【0054】
(間葉系‐特異的Erk5ノックアウトマウスが示した長骨及び頭蓋骨の異常発達の確認)
Erk5ノックアウトは、複数の発生異常により、マウスにおいて胚性致死であることが明らかとなっている{非特許文献:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United 615 States of America 99, 9248-9253 (2002);BMC Dev Biol 3, 11 (2003)}。
本実施例では、骨格発達におけるErk5のin vivoの生理学的役割を確認した。
【実施例2】
【0055】
Prx1-Cre導入遺伝子を用いて間葉系‐特異的Erk5ノックアウトマウスを作製した{参照:Genesis (New York, N.Y. : 2000) 33, 77-80 (2002)}。Prx1-Cre;Erk5fl/flマウスは、予測されたメンデルの法則の頻度でリカバーできた(データ省略)。アルシアンブルー及びアリザリンレッドによる交尾後18.5日(E18.5)の胚からの骨格標本の染色は、前肢(上腕骨、橈骨及び尺骨)及び後肢(大腿骨、脛骨及び腓骨)中の長骨がPrx1-Cre;Erk5fl/fl胚(図1A a~d)において太くなり、また、より大きな空隙は、小泉門(体腔壁及び頭頂間骨の間の空隙)中で確認できた(図1Ae~f)。さらに、特に、中足骨、中手骨及び基節骨の石化障害は、Prx1-Cre;Erk5fl/flE18.5の胚で観察でき(図1A g~h)、また、中足骨を含む脚の骨の奇形は、3週齢の突然変異体マウスでも観察できた(図1A i~j)。より太い長骨(図なし)及び中足骨の石化障害(図なし)は、共に、E16.5のPrx1-Cre; Erk5fl/fl胚中で観察できた。
【実施例2】
【0056】
最も注目される表現型が、E18.5のPrx1-Cre;Erk5fl/fl胚の中足骨において観察されたことを考慮し、さらに、これらの胚の組織学的調査を行った。Prx1-Cre;Erk5fl/fl胚の中足骨中のほとんど全ての軟骨細胞は、非肥大軟骨細胞のマーカーであるコラーゲンタイプII α1(Col2a1)を発現し、一方、コントロール胚中の中足骨の中間部分は、Col2a1を欠如した(図1B g~h)。さらに、肥大軟骨細胞マーカーであるコラーゲンタイプX α1(Col10a1)の発現は、コントロールマウス中と比較して、Prx1-Cre;Erk5fl/fl胚中で著しく低下した(図1B i~j)。
これらの中足骨中の軟骨分化における異常は、さらに、H&E染色及びサフラニンO染色によって確認された(図1B a~d)。von Kossa染色により決定した通りに、軟骨肥大、石化及びカルシウム沈着の遅延と一致して、マトリックスメタロプロテアーゼ-13(Mmp13)発現は、Prx1-Cre;Erk5fl/fl胚中で低下した(図1B e、f、k、l)。組織学的分析により、E18.5のPrx1-Cre; Erk5fl/fl胚における長骨(大腿骨と脛骨)の増加幅が明らかになった(図なし)。
【実施例2】
【0057】
in vivoでの骨格発達におけるErk5の生理学的役割をさらに調べるために、Col2a1-Cre導入遺伝子を使用した軟骨特異的Erk5ノックアウトマウスを作出した。Col2a1-Cre;Erk5fl/flマウスは、予測されたメンデルの法則の頻度でリカバーできた(データ省略)。骨格標本及び組織学的分析は、E18.5でCol2a1-Cre;Erk5fl/fl胚が、Prx1-Cre;Erk5fl/fl胚において示された、小泉門における空隙中と、中足骨、中手骨及び基節骨の石化の異常を示さなかった。しかし、それらは、前肢及び後肢におけるより太い長骨に関して、Prx1-Cre;Erk5fl/fl胚の表現型を再現した(図なし)。
【実施例2】
【0058】
以上により、2つの異なるCreドライバーマウス(Prx1-Cre;Erk5fl/flマウス及びCol2a1-Cre;Erk5fl/flマウス)により作出されたErk5欠失マウスの表現型変化の中で、より太い長骨は、両方のドライバーマウスによるErk5欠失に伴う共通の表現型であり、一方、小泉門におけるより大きな空隙と、中足骨、中手骨及び基節骨の石化障害の両方に関する表現型変化は、間葉細胞におけるErk5欠失に関連した特異的表現型であった。
【実施例3】
【0059】
(ERK5欠失による、in vitroでの分化の加速と軟骨細胞の成熟阻害の確認)
本実施例では、間葉細胞におけるErk5欠失に関連した骨格異常が、軟骨形成における異常に由来したものかについて明らかにするために、in vitroでの軟骨形成に対するErk5不活性化の影響を確認した。
【実施例3】
【0060】
Erk5fl/fl及びPrx1-Cre;Erk5fl/flマウスから調製された肢芽細胞の微量質量培養を、分化のために6日間、成熟のために12日間行い、続いて、アルシアンブルー及びアリザリンレッド染色を行った。アルシアンブルー陽性領域の著しい増加は、6日目にErk5欠失細胞の中で観察され、一方、該領域中のアリザリンレッド強度は、12日目のErk5欠失細胞中で著しく減少した(図1C)。これらは、Erk5欠失による軟骨細胞における分化の増加と成熟の低下を示している。Erk5欠失細胞では、Col2a1、Aggrecan及びSox9のmRNA発現における著しい増加が観察されたが(図1D)、一方、Col10a1及びMmp13発現は、著しく減少した(図1E)。さらに、Sox9タンパク質発現は、Runx2及びOsterixの発現に変化がないにもかかわらず、Erk5欠失細胞中で著しく増加した(図1F)。
【実施例3】
【0061】
次に、Mek5/Erk5経路が、in vitroで、軟骨形成を制御するかどうかを確認した。
アルシアンブルー及びアリザリンレッド染色は、コントロール及びErk5欠失細胞中で、Erk5(WT)のレトロウイルスの導入により著しく阻害された(図1G a~d、g~j)。対照的に、Mek5用2つのリン酸化部位を欠き、標的遺伝子をリン酸化できない、Erk5のドミナントネガティブ型である、Erk5(DN)のレトロウイルス導入は、Erk5欠失細胞において観察されたように、コントロール細胞中で、アルシアンブルー陽性領域を著しく増加させ、該領域におけるアリザンレッド強度を著しく低減した(図1G a、e、g、k)。一方、Erk5(DN)がErk5欠失細胞中に導入された場合には、軟骨細胞の分化及び成熟における更なる変化は観察されなかった(図1Gb、f、h、l)。さらに、Mek5の実質的な活性型であるMek5Dのレトロウイルス導入では、コントロール細胞の分化及び成熟を阻害したが、Erk5欠失細胞の分化及び成熟は、阻害しなかった(図なし)。
以上により、これらの結果は、Mek5/Erk5経路が、軟骨細胞の分化及び成熟を制御し、Sox9発現を調整することを示している。
【実施例4】
【0062】
(Mek5/Erk5経路によるSmadのユビキチン依存的分解の制御の確認)
本実施例では、Erk5欠失細胞中の軟骨形成の制御(変更)及びSox9の上方制御の原因となる物質の同定を行った。
【実施例4】
【0063】
Erk5欠失細胞中のいくつかのレポーターのルシフェラーゼ活性をモニターした。試験したレポーターの中で、BRE-luc(Smad1/5/8依存)及びSBE4-luc(Smad2/3依存)のルシフェラーゼ活性は、それらのコントロール活性と比較して、Erk5欠失細胞中で著しく増加した(図2A)。Erk5欠失細胞中でのSox9発現の上方制御に一致して(図1F)、Sox9プロモーター活性(Sox9-luc)及びSox9依存性転写活性(4x48-luc)は、Erk5欠失細胞中で著しく増加したが、一方、Runx2プロモーター活性(Runx2-luc)又はRunx2依存性転写活性(6xOSE2-luc)のいずれについても、著しい変化はみられなかった(図2A)。
【実施例4】
【0064】
次に、Erk5欠失細胞中のSmad1/5/8-及びSmad2/3-依存性の転写活性の誘導の基礎となる機構を解明することを試みた。Smad発現は、mRNAレベルでのErk5欠失及びコントロール細胞間で、同等であった(図2B)。一方、Smad5とSmad8ではなくSmad1、Smad2及びSmad3のタンパク質発現が、Erk5欠失細胞中で著しく上方制御した(図2C)。さらに、Smad1/5/8及びSmad2/3のリン酸化は、ルシフェラーゼアッセイの結果に一致して(図2A)、Erk5欠失細胞中で上方制御した(図2C)。この確認と一致して、Smad1、Smad2及びSmad3発現が、Sox9発現上方制御と共に、Erk5欠失細胞の核において著しく増強されることを観察した(図2D)。
これらの結果は、Erk5が、mRNAレベルではなくタンパク質レベルで、特定のSmadの発現を選択的に制御することを示している。
【実施例4】
【0065】
次に、Erk5が選択的にSmad分解を制御するかについて解明することを試みた。Erk5欠失細胞は、タンパク合成阻害剤であるシクロヘキシミド(CHX)で処理し、Smad1、Smad2及びSmad3発現を評価した。コントロール細胞では、Smad1、Smad2及びSmad3タンパク質発現は、CHX処理の2時間後に急速に減少したが、一方、これらのタンパク質の発現レベルは、Erk5欠失細胞中では維持された(図2E)。
【実施例4】
【0066】
次に、Mek5/Erk5経路が、ユビキチン化を促進する作用を通じて、Smad1、Smad2及びSmad3ターンオーバーを増強するかどうかについて確認した。HAタグ標識ユビキチン及びFlagタグ標識Smad1、Smad2又はSmad3は、HEK293細胞のMek5D及びErk5(WT)の存在下又は非存在下において共導入した。Mek5D及びErk5(WT)非存在下では、調べた全てのSmadについて、観察できなかった。対照的に、Mek5D及びErk5存在下で、高分子量のユビキチン共役型Smad産物が、Smad1、Smad2及びSmad3について観察できた(図2F)。
以上により、これらの結果は、Mek5/Erk5経路が、Smad1/5/8-及びSmad2/3-依存性転写活性を制御するために、ユビキチン化及びプロテアソーム媒介分解について、Smad1、Smad2及びSmad3を優先的に標的とすることを示している。
【実施例5】
【0067】
(Erk5による、Smadユビキチン化を活性化するSmurf2の249番目のスレオニン(Thr249)の直接的リン酸化及び軟骨細胞分化の抑制の確認)
本実施例では、Mek5/Erk5シグナルが、Smadのユビキチン化及びプロテアソーム媒介性分解を促進する機構を調べた。
【実施例5】
【0068】
Erk5が、直接Smadsと相互作用できるかについて確認した。Erk5は、Smad8以外のSmadsと直接相互作用しなかったが(図3A)、Erk5は、HEK293(図3A)及び初期間葉細胞(図3B)において、Smadのユビキチン依存性分解の原因であるユビキチンE3リガーゼであるSmurf2と相互作用したが、Smurf1とは相互作用しなかった。
このことは、Erk5が、in vivoで、物理的にSmurf2と相互作用することを示した。
【実施例5】
【0069】
最適なErk5基質モチーフを用いたコンピューターアラインメントにより、異なる種間に保存された4つの候補セリン/スレオニン部位の中で、マウスSmurf2のThr249において、潜在的な1つのErk5リン酸化部位を取得した(図3C)。
さらに、Erk1/2は、Smurf2をThr249でリン酸化するようにはみえなかった(図なし)。Smad分解及び軟骨細胞分化における潜在的リン酸化部位の役割を解明するために、リン酸化を妨げるために、スレオニンがアラニンに置換されたSmurf2の部位特異的突然変異コンストラクト、Smurf2(T249A)を作出した。in vitroのキナーゼアッセイにより、細菌により発現されたリコンビナントSmurf2(WT)は、Erk5(active)によりリン酸化されるが、Erk5(inactive)によりリン酸化されないこと、一方、Erk5によるSmurf2リン酸化は、Smurf2(T249A)により完全に停止したことを確認した(図3D)。これらの結果は、Erk5が、直接、Smurf2のThr249をリン酸化することを示している。
【実施例5】
【0070】
Smad分解におけるThr249でのSmurf2リン酸化の役割を確認するために、リコンビナントSmurf2(WT)、リコンビナントSmurf2(T249A)及び、Erk5(active)及びSmadと同様のリン酸化された状態を模倣するためにスレオニンをグルタミン酸に置換したリコンビナントSmurf2(T249E)を用いてin vitroでのユビキチン化アッセイを行った。
Smurf2(WT)とユビキチン、E1及びUbcH5cとのインキュベートは、Erk5非存在下で弱いユビキチン化シグナルを示したが、Erk5存在化ではSmadタンパク質ユビキチン化を引き起こした。Smurf2(T249A)との反応は、Erk5の存在に関係なく、Smad1、Smad2及びSmad3の存在下において、わずかなユビキチン化シグナルを作り出したが、一方、Smadが、Erk5非存在下でSmurf2(T249E)とインキュベートした場合に、強い(重大な)ユビキチン化が観察された。すなわち、Erk5の添加は、ユビキチン化を増加させなかった(図3E)。
【実施例5】
【0071】
最後に、Smurf2のThr249のリン酸化が、Erk5依存性軟骨形成の制御に必要かについて確認した。Smurf2(WT)及びSmurf2(T249E)のレトロウイルスの感染は、コントロール及びErk5欠失細胞における軟骨細胞分化を減少させたが(図3F a、b、d、e、f、h)、一方、Smurf2(T249A)は、コントロール細胞の分化を増加させたが、Erk5欠失細胞の分化を増加させなかった(図3F a、c、e、g)。これらの結果に従って、BRE-luc活性は、Smurf2(T249A)遺伝子導入による活性の上方制御とは対照的に、Smurf2(WT)を遺伝子導入した細胞において減少し、Smurf2(T249E)遺伝子導入により更に減少した(図3G)。
以上により、これらの結果は、Mek5/Erk5経路が、Thr249の直接のリン酸化を介してSmurf2のユビキチンE3リガーゼ活性を増強することによるSmad1、Smad2及びSmad3安定性を調節することにより軟骨形成を制御することを示している。
【実施例6】
【0072】
(SmadはSox9発現を直接活性化することの確認)
本実施例では、Erk5欠失がSox9 mRNA発現を誘導し、Erk5がSmurf2によるSmadのプロテアソーム分解を活性化するという結果から、Smadsは間葉細胞における転写レベルで、Sox9発現を活性化できるかについて確認した。
【実施例6】
【0073】
Smad1/Smad4、Smad2/Smad4及びSmad3/Smad4の誘導は、タンパク質レベル(図4A)及びmRNAレベル(図4B)で、Sox9発現を著しく上方制御した。マウスSox9及びヒトSox9の5'‐隣接領域を計算的に分析し、マウスSox9とヒトSox9の間で高度に保存されている5'‐隣接領域において、少なくとも1つの推定の骨形態形成タンパク質応答エレメント(bone morphogenic protein responsive element;BRE)及び1つの推定のSmad‐結合エレメント(Smad-binding element;SBE)を同定した(図4C)。初期の間葉細胞を使用して行なったレポーターアッセイにより、Smad1/Smad4、Smad2/Smad4及びSmad3/Smad4の導入が、Sox9プロモーター活性を著しく活性化することを明らかにした(図4D)。さらに、クロマチン免疫沈降分析により、BREを包含するSox9プロモーター領域へのSmad1の動員は、コントロール細胞における場合と比較して、Erk5欠失細胞中で著しく増強され、Smad2及びSmad3動員は著しい変化がなかったことを確認した(図4E)。対照的に、SBEを包含するSox9プロモーター領域へのSmad2及びSmad3の動員は、Smad1の動員とは異なり、Erk5欠失細胞中で著しく増強された(図4F)。
以上、これらの結果は、Smadが、間葉細胞における転写レベルで、Sox9発現を直接活性化することを示し、Erk5欠失細胞中でSox9発現の優先的な上方制御についての根拠になるものである。
【実施例7】
【0074】
(Erk5はSox9を介して骨格形成及び軟骨形成を制御することの確認)
上記実施例の結果は、Erk5欠失が、in vivo及びin vitroで、Sox9発現の活性化を介して骨格形成及び軟骨形成に影響することを示している。本実施例では、in vivoで遺伝学的に確証するために、間葉細胞中のSox9の1つの対立遺伝子を欠失(Sox9fl/+)しているErk5-/-胚を作出した。Prx1-Cre;Erk5fl/fl;Sox9fl/+胚及びマウスは、E18.5での中足骨及び基節骨の石化障害(図5A m~p)及び3週齢での脚における骨格形成奇形(図5A q~t)の正常化を示した。さらに、Sox9のヘテロ欠失は、Prx1-Cre;Erk5fl/fl胚において識別されたより大きな小泉門をレスキューし(図5A i~l)、一方、前肢と後肢における長骨の幅は、Prx1-Cre;Erk5fl/fl及びPrx1-Cre;Erk5fl/fl;Sox9fl/+胚の間で同等であったことから(図5A e~h)、これらの硬骨中のMek5/Erk5経路におけるSox9依存性機構の存在を示している。
さらに、Erk5欠失細胞において、アルシアンブルー陽性領域により定義された分化(図5B a~d及び5C)、及び該領域におけるアリザリンレッド強度により定義された成熟(図5B e~h及び5D)の異常は、in vitroで間葉細胞におけるSox9のヘテロ欠失により著しくレスキューした。
以上により、これらの結果は、Erk5が、間葉細胞におけるSox9の発現及び機能を阻害する能力を通じて、骨格形成及び軟骨形成を制御するという遺伝学的証拠を示した。
【実施例8】
【0075】
(Mek5/Erk5/Smurf2/Smadカスケードの癌細胞での役割の確認)
ヒトグリオーマ(脳腫瘍)細胞にSmurf2の各変異体(Smurf2 T249AとSmurf2 T249E)を導入後、ヌードマウスに移植し、がん(脳腫瘍)の発症・進展を確認している。Smurf2 T249A又はSmurf2 T249Eの変異体が、がん(脳腫瘍)の発症・進展を抑制すれば、Mek5/Erk5/Smurf2/Smadカスケードは癌細胞の増殖に重要な役割を果していると言える。
よって、Mek5/Erk5/Smurf2/Smadカスケードの各工程の活性程度を検出することにより、癌の検出を行うことができる。
【実施例8】
【0076】
(総論)
本実施例により、以下の知見を得た。
(1)Erk5は、骨格発達に生理学的役割を有する。
(2)Mek5/Erk5経路が、軟骨細胞の分化及び成熟を制御し、Sox9発現を調整すること。
(3)Mek5/Erk5経路が、Smad1/5/8-及びSmad2/3-依存性転写活性を制御するために、ユビキチン化及びプロテアソーム媒介分解について、Smad1、Smad2及びSmad3を優先的に標的とすること。
(4)Mek5/Erk5経路が、Thr249の直接のリン酸化を介してSmurf2のユビキチンE3リガーゼ活性を増強することによるSmad1、Smad2及びSmad3安定性を調節することにより軟骨形成を制御すること。
(5)Smadが、間葉細胞における転写レベルで、Sox9発現を直接活性化すること。
(6)Erk5が、間葉細胞におけるSox9の発現及び機能を阻害する能力を通じて、骨格形成及び軟骨形成を制御すること。
(7)間葉細胞におけるErk5欠失は、in vivo及びin vitroでの異常な骨格形成及び軟骨形成を示したが、Sox9のヘテロ欠失により異常な形成をレスキューできた。
【実施例8】
【0077】
これらにより、図6の示すような間葉細胞におけるMek/Erk5/Smurf2/Smad/Sox9カスケードが軟骨形成を制御すると考えられる。より詳しくは、(1)Mek/Erk5シグナルが直接Smurf2のリン酸化を行い、(2)リン酸化Smurf2がSmads (Smad1, Smad2及びSmad3)のプロテアソーム分解を促進し、続いて軟骨分化を阻害すること、(3)Smads (Smad1/Smad4, Smad2/Smad4及びSmad3/Smad4)は転写レベルでのSox9発現を調整する。
より詳しくは、Smurf2の249番目のスレオニン(Thr249)はユビキチンE3リガーゼ活性に必須であり、さらに、Smurf2は軟骨形成を制御する重要なタンパク質である。
加えて、Smads (Smad1/Smad4, Smad2/Smad4及びSmad3/Smad4)は間葉細胞でのSox9発現を転写レベルで活性化させる。これにより、Erk5依存性アップレギュレーションしたSmadは、Sox9に結合することによりプロモーターにSox9結合部位を含むCol2a1及びAggrecanを含む軟骨特異的遺伝子の発現を誘導している、及び/又は直接Sox9転写を誘導していると考えられる。
以上の知見により、Mek/Erk5/Smurf2/Smad/Sox9カスケード不全の場合には、骨障害が発症すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、新規な骨障害の存在の検出方法、骨障害治療剤及び骨障害治療剤のスクリーニング方法を提供することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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