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明細書 :キラルアミンセンサー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-177907 (P2018-177907A)
公開日 平成30年11月15日(2018.11.15)
発明の名称または考案の名称 キラルアミンセンサー
国際特許分類 C08G  61/00        (2006.01)
G01N  31/22        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
C07D 273/01        (2006.01)
FI C08G 61/00
G01N 31/22 121F
G01N 31/22 122
G01N 21/78 C
G01N 21/78 A
C07D 273/01
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 32
出願番号 特願2017-077068 (P2017-077068)
出願日 平成29年4月7日(2017.4.7)
発明者または考案者 【氏名】前田 勝浩
【氏名】廣瀬 大祐
【氏名】水上 あずさ
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
【識別番号】100137729、【弁理士】、【氏名又は名称】赤井 厚子
【識別番号】100151301、【弁理士】、【氏名又は名称】戸崎 富哉
審査請求 未請求
テーマコード 2G042
2G054
4C056
4J032
Fターム 2G042AA03
2G042BA06
2G042BD13
2G042DA06
2G042DA08
2G042EA01
2G042FA11
2G042FB02
2G042FB07
2G042FC01
2G054CA30
2G054EA03
2G054GA04
2G054GB04
2G054GE06
4C056AA10
4C056AB10
4C056AC10
4C056AD01
4C056AE01
4C056AF06
4C056FA01
4C056FB01
4C056FC04
4J032CA01
4J032CA02
4J032CA03
4J032CA04
4J032CA14
4J032CB01
4J032CB03
4J032CE03
4J032CG03
要約 【課題】色調及び蛍光の変化によりキラルアミン化合物のキラリティーの迅速な識別が可能な新規比色検出型キラルセンサーの提供。
【解決手段】一方向巻きのらせん構造を有する特定構造のポリ(ジフェニルアセチレン)化合物、該化合物を含有する比色検出型キラルセンサー、及び該化合物を含有するキラルアミン検出用呈色試験紙。広範なキラルアミン化合物の塩の溶液を、前記キラルセンサー又は呈色試験紙と混合するだけで、その色調及び蛍光の変化から、キラルアミン化合物のキラリティーを迅速に識別することができる実用的なキラリティーセンシング手法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
一方向巻きのらせん構造を有する式(I):
【化1】
JP2018177907A_000015t.gif
[式中、
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、トリ置換シリル基、トリ置換シロキシ基又は置換されていてもよいアシルオキシ基を示し;
及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい環状基を示し;
nは、10以上の整数を示し;
m及びm’は、独立してそれぞれ、0又は1を示し;並びに
r及びr’は、独立してそれぞれ、0又は1を示す。]
で表されるポリ(ジフェニルアセチレン)化合物又はその塩、或いはその溶媒和物。
【請求項2】
、R’、R、R’、R、R’R及びR’が、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基であり、
及びR’が、共に水素原子、置換されていてもよいC1-4アルキル基又は置換されていてもよいC6-10アリール基であり、
m及びm’が、共に0であり、かつ
r及びr’が、共に1である、請求項1に記載のポリ(ジフェニルアセチレン)化合物又はその塩、或いはその溶媒和物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリ(ジフェニルアセチレン)化合物又はその塩、或いはその溶媒和物を含有する、比色検出型キラルセンサー。
【請求項4】
請求項3に記載のキラルセンサーと、光学活性キラルアミン化合物の塩を低極性有機溶媒中で混合し、該混合溶液の色調及び蛍光の変化を観察することにより、光学活性キラルアミン化合物のキラリティーを決定する工程を含むことを特徴とする、光学活性キラルアミン化合物のキラリティーの識別方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のポリ(ジフェニルアセチレン)化合物又はその塩、或いはその溶媒和物を含有するキラルアミン検出用呈色試験紙。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、キラルアミン化合物のキラリティーを色調及び蛍光の変化により識別可能ならせん状のポリ(ジフェニルアセチレン)化合物、それを含有する比色検出型キラルセンサー及びキラルアミン検出用呈色試験紙に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物には物理的、化学的性質、例えば沸点、融点、溶解度といった物性が全く同一であるが、生理活性に差がみられる光学異性体が多く存在する。医薬の技術分野では、生体内の特定の受容体との結合のし易さによる薬理活性の違いがよく研究されており、光学異性体の間で薬効、毒性の点で顕著な差が見られる場合が多いことが広く知られている。このような事情から、光学異性体の選択的な合成技術やラセミ体からの光学異性体の分離技術等と並び、光学異性体のセンシング技術(光学異性体のキラリティーを判定する技術)も注目されている。すなわち、光学異性体が存在する化合物が合成され又は提供された場合において、その化合物がいずれのキラリティーを有するのか、又はラセミ体であるのか、等を微量で判定できる、簡便かつ正確なキラリティーの識別方法の開発は極めて重要な課題となっている。
【0003】
分子の不斉を直接反映したスペクトルを与える円二色性(CD)スペクトルを利用したキラリティー識別、NMRシフト試薬、キラルHPLC等を利用したキラリティー識別等に関する多くの研究がこれまでに報告されているが、キラリティーの検出装置としては非常に高価であるため、簡便なセンシング手法であるとは言い切れない。最も簡便にキラリティーを識別する手法の一つとして、目に見える色の変化を利用したキラリティーセンシングの手法が挙げられる。
【0004】
かかる手法として、光学活性クラウンエーテル構造を有する蛍光性ホスト化合物(又はポリマー)によるホスト-ゲスト錯形成平衡反応の特徴を利用した、蛍光性キラルセンサーが報告されている(特許文献1、2)。これらは、ホスト化合物である光学活性クラウンエーテル構造とゲスト化合物(識別対象)であるキラル第一級アミンとの錯形成による分子認識に基づくキラリティーセンシングの手法であるが、蛍光測定のみを用いたセンシングは、極微量の不純物に由来する消光の影響を受けやすいため、単一の評価系では測定結果の精度(再現性)等に問題があるなどの課題が残されていた。
【0005】
本発明者らは、最近、キラルアミン化合物に対して高感度なキラリティー識別能を示す、比色検出型キラルセンサーを報告した(特許文献3)。該キラルセンサーは、キラルアミン化合物と共有結合により強固に結合するので、従来の分子認識を利用したキラルセンサーと比較して、測定条件に依存せず、微量の試料を用いても再現性よく、さらに吸収波長と蛍光強度の変化量の二つの評価系を用いることで、キラルアミン化合物のキラリティーをより正確に識別することができる。しかし、本手法は、キラルセンサーとの共有結合形成(化学反応)に時間を要すること、及び化学反応を利用するためキラルセンサーを再利用することができない等の問題点を有していた。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許第3950117号公報
【特許文献2】特許第4545370号公報
【特許文献3】特開2016-155781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景のもと、安価に感度良く様々な種類のキラル化合物のキラリティーを、特殊な装置を用いることなく、目視等により簡便に識別することができ、実用的なキラリティーセンシングの手法の開発がますます求められている。
【0008】
本発明の目的は、らせん状ポリ(ジフェニルアセチレン)化合物のフェニル基の末端にアザクラウンエーテル部位を導入して、キラルアミン化合物との非共有結合相互作用(分子認識)によりキラルアミン化合物のキラリティーを目に見える色の変化を利用して識別することであり、それにより簡便且つ実用的なキラリティーセンシングの手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる状況下、鋭意検討を重ねた結果、光学活性キラルアミン化合物の塩を、一方向巻きのらせん構造を有する下記式(I):
【0010】
【化1】
JP2018177907A_000002t.gif

【0011】
[式中、
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、トリ置換シリル基、トリ置換シロキシ基又は置換されていてもよいアシルオキシ基を示し;
及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい環状基を示し;
nは、10以上の整数を示し;
m及びm’は、独立してそれぞれ、0又は1を示し;並びに
r及びr’は、独立してそれぞれ、0又は1を示す。]
で表されるポリ(ジフェニルアセチレン)化合物(以下、「化合物(I)」と称することもある。)又はその塩、或いはその溶媒和物と低極性溶媒中で混合し、混合溶液の色調と蛍光の変化を観測することにより、光学活性キラルアミン化合物のキラリティーを迅速且つ感度良く識別することができる実用的なキラリティーセンシング手法として有用であることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]一方向巻きのらせん構造を有する式(I):
【0013】
【化2】
JP2018177907A_000003t.gif

【0014】
[式中、
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、トリ置換シリル基、トリ置換シロキシ基又は置換されていてもよいアシルオキシ基を示し;
及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい環状基を示し;
nは、10以上の整数を示し;
m及びm’は、独立してそれぞれ、0又は1を示し;並びに
r及びr’は、独立してそれぞれ、0又は1を示す。]
で表されるポリ(ジフェニルアセチレン)化合物又はその塩、或いはその溶媒和物。
[2]R、R’、R、R’、R、R’R及びR’が、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基であり、
及びR’が、共に水素原子、置換されていてもよいC1-4アルキル基又は置換されていてもよいC6-10アリール基であり、
m及びm’が、共に0であり、かつ
r及びr’が、共に1である、上記[1]に記載のポリ(ジフェニルアセチレン)化合物又はその塩、或いはその溶媒和物。
[3]上記[1]又は[2]に記載のポリ(ジフェニルアセチレン)化合物又はその塩、或いはその溶媒和物を含有する、比色検出型キラルセンサー。
[4]上記[3]に記載のキラルセンサーと、光学活性キラルアミン化合物の塩を低極性有機溶媒中で混合し、該混合溶液の色調及び蛍光の変化を観察することにより、光学活性キラルアミン化合物のキラリティーを決定する工程を含むことを特徴とする、光学活性キラルアミン化合物のキラリティーの識別方法。
[5]上記[1]又は[2]に記載のポリ(ジフェニルアセチレン)化合物又はその塩、或いはその溶媒和物を含有するキラルアミン検出用呈色試験紙。
【発明の効果】
【0015】
本発明の化合物(I)又はその塩、或いはその溶媒和物は、種々の第一級又は第二級のキラルアミン化合物の塩に対して高感度なキラリティー識別能を示す。具体的には、本発明の化合物(I)と識別対象である光学活性キラルアミン化合物の塩を、低極性溶媒中で混合するだけで瞬時に、化合物(I)のクラウンエーテル部位とキラルアミン化合物の塩との非共有結合相互作用(分子認識)により、溶液の色調及び蛍光強度に変化が現れる。当該溶液の色調及び蛍光特性は、光学異性体間で顕著に相違するので、目視での明確な色の差異を利用して容易にそのキラリティーを識別することができる。それ故、高価且つ特殊な測定機器が不要であるという利点を有する。そして、本発明によれば、検出感度が高いので、極微量の試料でもキラリティーの識別が可能であり、また、本発明は、非共有結合相互作用を利用するものであるため、センサー分子である化合物(I)を回収、再利用することが可能であるという利点も有する。さらに、本発明の化合物(I)を含有する(すなわち、吸着させた)試験紙を、識別対象である光学活性キラルアミン化合物の塩の溶液に浸すと、溶液中で混合した場合と同様に迅速な色調の変化を目視により明確且つ簡便に観測することができ、キラリティーの識別が可能である。それ故、本発明は、キラルアミン検出用呈色試験紙としての利用も可能な実用性の高いキラリティーセンシングの手法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】aは、化合物(I-1)をDMF中(濃度:1.0×10-3M)で測定したCDおよび吸収スペクトルであり、bは、化合物(I-1)を1,1,2,2-テトラクロロエタン中(濃度:1.0×10-3M)で測定したCDおよび吸収スペクトルであり、cは、化合物(I-1)と(S)-1-フェニルエチルアミンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(化合物(I-1)に対して0.3当量)を1,1,2,2-テトラクロロエタン中(化合物(I-1)の濃度:1.0×10-3M)で測定したCDおよび吸収スペクトルであり、dは、化合物(I-1)と(R)-1-フェニルエチルアミンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(化合物(I-1)に対して0.3当量)を1,1,2,2-テトラクロロエタン中(化合物(I-1)の濃度:1.0×10-3M)で測定したCDおよび吸収スペクトルである。
【図2】aは、化合物(I-1)の1,1,2,2-テトラクロロエタン溶液(濃度:1.0×10-3M)の色を示し、bは、化合物(I-1)と(S)-1-フェニルエチルアミンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(化合物(I-1)に対して0.3当量)の1,1,2,2-テトラクロロエタン混合溶液(化合物(I-1)の濃度:1.0×10-3M)の色を示し、cは、化合物(I-1)と(R)-1-フェニルエチルアミンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(化合物(I-1)に対して0.3当量)の1,1,2,2-テトラクロロエタン混合溶液(化合物(I-1)の濃度:1.0×10-3M)の色を示す。また、dは、化合物(I-1)と(S)-N-メチル-1-フェニルエチルアミンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(化合物(I-1)に対して3.0当量)の1,1,2,2-テトラクロロエタン混合溶液(化合物(I-1)の濃度:1.0×10-3M)の色を示し、eは、化合物(I-1)と(R)-N-メチル-1-フェニルエチルアミンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(化合物(I-1)に対して3.0当量)の1,1,2,2-テトラクロロエタン混合溶液(化合物(I-1)の濃度:1.0×10-3M)の色を示す。さらに、fは、化合物(I-1)と(S)-プロリンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(化合物(I-1)に対して0.3当量)の1,1,2,2-テトラクロロエタン混合溶液(化合物(I-1)の濃度:1.0×10-3M)の色を示し、gは、化合物(I-1)と(R)-プロリンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(化合物(I-1)に対して0.3当量)の1,1,2,2-テトラクロロエタン混合溶液(化合物(I-1)の濃度:1.0×10-3M)の色を示す。
【図3】左図のa は、化合物(I-1)の1,1,2,2-テトラクロロエタン溶液 (化合物(I-1)の濃度:1.0×10-4M) を測定した蛍光スペクトル(励起波長:435nm)であり、bは、化合物(I-1)と(S)-1-フェニルエチルアミンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(化合物(I-1)に対して3.0当量)を1,1,2,2-テトラクロロエタン中(化合物(I-1)の濃度:1.0×10-4M)で混合した溶液を測定した蛍光スペクトル(励起波長:435nm)であり、cは、化合物(I-1)と(R)-1-フェニルエチルアミンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(化合物(I-1)に対して3.0当量)を1,1,2,2-テトラクロロエタン中(化合物(I-1)の濃度:1.0×10-4M)で混合した溶液を測定した蛍光スペクトル(励起波長:435nm)である。右図は、前記a、b及びcの溶液の365nmの紫外光照射下における蛍光色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の詳細を説明する。

【0018】
(定義)

【0019】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。

【0020】
本明細書中、「アルキル(基)」としては、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1以上のアルキル基を意味し、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくは、C1-20アルキル基であり、中でも、C1-12アルキル基がより好ましく、C1-6アルキル基が特に好ましい。

【0021】
本明細書中、「C1-20アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~20のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、エイコシル等が挙げられる。

【0022】
本明細書中、「C1-12アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~12のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられる。

【0023】
本明細書中、「C1-6アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル等が挙げられる。中でも、C1-4アルキル基が好ましい。

【0024】
本明細書中、「シクロアルキル(基)」とは、環状アルキル基を意味し、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくは、C3-8シクロアルキル基である。

【0025】
本明細書中、「C3-8シクロアルキル(基)」とは、炭素原子数3~8の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。中でも、C3-6シクロアルキル基が好ましい。

【0026】
本明細書中の「C3-8シクロアルケニル(基)」は、炭素原子数3~8の環状アルケニル基を意味し、例えば、シクロプロペニル(例、2-シクロプロペン-1-イル)、シクロブテニル(例、2-シクロブテン-1-イル)、シクロペンテニル(例、2-シクロペンテン-1-イル、3-シクロペンテン-1-イル)、シクロヘキセニル(例、2-シクロヘキセン-1-イル、3-シクロヘキセン-1-イル)等が挙げられる。

【0027】
本明細書中、「アルコキシ(基)」とは、直鎖または分岐鎖のアルキル基が酸素原子と結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-6アルコキシ基である。

【0028】
本明細書中、「C1-6アルコキシ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。中でも、C1-4アルコキシ基が好ましい。

【0029】
本明細書中、「アルキルチオ(基)」とは、直鎖または分岐鎖のアルキル基が硫黄原子と結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-6アルキルチオ基である。

【0030】
本明細書中、「C1-6アルキルチオ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルキルチオ基を意味し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、ヘキシルチオ等が挙げられる。中でも、C1-4アルキルチオ基が好ましい。

【0031】
本明細書中、「アルキルスルホニル(基)」とは、直鎖または分岐鎖のアルキル基がスルホニル基に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-6アルキルスルホニル基である。

【0032】
本明細書中、「C1-6アルキルスルホニル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルキル基がスルホニル基に結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、1-エチルプロピルスルホニル、ヘキシルスルホニル、イソヘキシルスルホニル、1,1-ジメチルブチルスルホニル、2,2-ジメチルブチルスルホニル、3,3-ジメチルブチルスルホニル、2-エチルブチルスルホニル等が挙げられる。

【0033】
本明細書中、「アリールスルホニル(基)」とは、アリール基がスルホニル基に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C6-10アリールスルホニル基である。

【0034】
本明細書中、「C6-10アリールスルホニル基」とは、「C6-10アリール基」がスルホニル基に結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニル、1-ナフチルスルホニル、2-ナフチルスルホニル等が挙げられる。

【0035】
本明細書中、「アルキルスルホニルオキシ(基)」とは、アルキルスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-6アルキルスルホニルオキシ基である。

【0036】
本明細書中、「C1-6アルキルスルホニルオキシ(基)」とは、C1-6アルキルスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ、プロピルスルホニルオキシ、イソプロピルスルホニルオキシ、ブチルスルホニルオキシ等が挙げられる。

【0037】
本明細書中、「アリールスルホニルオキシ(基)」とは、アリールスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C6-10アリールスルホニルオキシ基である。

【0038】
本明細書中、「C6-10アリールスルホニルオキシ(基)」とは、C6-10アリールスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニルオキシ、1-ナフチルスルホニルオキシ、2-ナフチルスルホニルオキシ等が挙げられる。

【0039】
本明細書中、「アシル(基)」とは、アルカノイル又はアロイルを意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-7アルカノイル基又はC7-11アロイルである。

【0040】
本明細書中、「C1-7アルカノイル(基)」とは、炭素原子数1~7の直鎖又は分枝鎖状のホルミル又はアルキルカルボニルであり、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル等が挙げられる。

【0041】
本明細書中、「C7-11アロイル(基)」とは、炭素原子数7~11のアリールカルボニルであり、ベンゾイル等が挙げられる。

【0042】
本明細書中、「アシルオキシ(基)」とは、アルカノイル基又はアロイル基が酸素原子と結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-7アルカノイルオキシ基又はC7-11アロイルオキシ基である。

【0043】
本明細書中、「C1-7アルカノイルオキシ(基)」としては、例えば、ホルミルオキシ、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec-ブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、ペンチルカルボニルオキシ、イソペンチルカルボニルオキシ、ネオペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ等が挙げられる。

【0044】
本明細書中、「C7-11アロイルオキシ(基)」としては、例えば、ベンゾイルオキシ、1-ナフトイルオキシ、2-ナフトイルオキシ等が挙げられる。

【0045】
本明細書中、「C1-6アルコキシ-カルボニル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルコキシ基がカルボニルに結合した基を意味し、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、イソペンチルオキシカルボニル、ネオペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル等が挙げられる。中でも、C1-4アルコキシ-カルボニル基が好ましい。

【0046】
本明細書中、「置換されていてもよい環状基」の「環状基」としては、例えば、C3-8シクロアルキル基、C3-8シクロアルケニル基、アリール基、複素環基等が挙げられ、それぞれ置換可能な位置に1個以上の置換基を有していてもよい。

【0047】
本明細書中、「アリール(基)」とは、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭化水素基を意味し、具体的には、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリル、2-アンスリル等のC6-14アリール基を示す。中でもC6-10アリール基が好ましい。

【0048】
本明細書中、「C6-10アリール(基)」とは、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチルを示し、フェニルが特に好ましい。

【0049】
本明細書中の「複素環(基)」としては、芳香族複素環基および非芳香族複素環基が挙げられる。
本明細書中の「芳香族複素環基」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1乃至4個含有する4乃至7員(好ましくは5または6員)の単環式芳香族複素環基および縮合芳香族複素環基が挙げられる。該縮合芳香族複素環基としては、例えば、これら4乃至7員の単環式芳香族複素環基に対応する環と、1または2個の窒素原子を含む5または6員の単環式芳香族複素環(例、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリジン、ピリミジン等)、1個の硫黄原子を含む5員の芳香族複素環(例、チオフェン)およびベンゼン環から選ばれる1または2個が縮合した環から誘導される基等が挙げられる。

【0050】
芳香族複素環基の好適な例としては、
フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル等の5または6員の単環式芳香族複素環基;
キノリル、イソキノリル、キナゾリル、キノキサリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、インダゾリル、カルバゾリル、ピロロピラジニル、イミダゾピリジニル、チエノピリジニル、イミダゾピラジニル、ピラゾロピリジニル、ピラゾロチエニル、ピラゾロトリアジニル、ピリドピリジニル、チエノピリジル等の8乃至14員の縮合芳香族複素環基;
等が挙げられる。

【0051】
本明細書中の「非芳香族複素環基」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1乃至4個含有する、4乃至7員(好ましくは5または6員)の単環式非芳香族複素環基および縮合非芳香族複素環基、ならびに7乃至10員複素架橋環基が挙げられる。該縮合非芳香族複素環基としては、例えば、これら4乃至7員の単環式非芳香族複素環基に対応する環と、1または2個の窒素原子を含む5または6員の単環式芳香族複素環(例、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリジン、ピリミジン等)、1個の硫黄原子を含む5員の単環式芳香族複素環(例、チオフェン)およびベンゼン環から選ばれる1または2個の環が縮合した環から誘導される基、ならびに該基の部分飽和により得られる基等が挙げられる。

【0052】
非芳香族複素環基の好適な例としては、
アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、ヘキサメチレンイミニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリニル、チアゾリニル、イミダゾリニル、ジオキソリル、ジオキソラニル、ジヒドロオキサジアゾリル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、チオピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロフリル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、テトラヒドロピリミジニル、ジヒドロトリアゾリル、テトラヒドロトリアゾリル等の4乃至7員の単環式非芳香族複素環基;
ジヒドロインドリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロベンゾジオキセピニル、テトラヒドロベンゾフラニル、クロメニル、ジヒドロクロメニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ジヒドロフタラジニル等の9乃至14員の縮合非芳香族複素環基;
等が挙げられる。

【0053】
本明細書中、「7乃至10員複素架橋環基」の好適な例としては、キヌクリジニル、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニルが挙げられる。

【0054】
本明細書中、「含窒素複素環基」としては、「複素環基」のうち、環構成原子として少なくとも1個以上の窒素原子を含有するものが挙げられる。

【0055】
本明細書中、「アラルキル(基)」とは、アルキル基にアリール基が置換した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C7-14アラルキルである。

【0056】
本明細書中、「C7-14アラルキル(基)」とは、「C1-4アルキル基」に「C6-10アリール基」が置換した基を意味し、例えば、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、(ナフチル-1-イル)メチル、(ナフチル-2-イル)メチル、1-(ナフチル-1-イル)エチル、1-(ナフチル-2-イル)エチル、2-(ナフチル-1-イル)エチル、2-(ナフチル-2-イル)エチル、ビフェニリルメチル等が挙げられる。

【0057】
本明細書中、「トリ置換シリル(基)」とは、同一又は異なる3個の置換基(例、C1-6アルキル基、C6-10アリール基等)により置換されたシリル基を意味し、当該基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等のトリアルキルシリル基(好ましくは、トリC1-6アルキルシリル基)、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等が好ましい。

【0058】
本明細書中、「トリ置換シロキシ(基)」とは、トリ置換シリル基が酸素原子と結合した基を意味する。当該基としては、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基、tert-ブチルジメチルシロキシ基等のトリアルキルシロキシ基(好ましくは、トリC1-6アルキルシロキシ基)が好ましい。

【0059】
本明細書中、「保護されたアミノ基」とは、「保護基」で保護されたアミノ基を意味する。当該「保護基」としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Ed., Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts, Wiley-Interscience(2007)に記載のアミノ基の保護基を使用し得、例えば、C1-6アルキル基、C7-14アラルキル基、C6-10アリール基、C1-7アルカノイル基、C7-14アラルキル-カルボニル基、トリC1-6アルキルシリル基等の保護基が挙げられる。上記の保護基は、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基又はニトロ基により更に置換されていてもよい。当該アミノ基の保護基の具体例としては、メチル、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等が挙げられる。

【0060】
本明細書中、「置換されていてもよい」とは、1個以上の置換基を有していてもよいことを意味し、該「置換基」としては、(1)ハロゲン原子、(2)ニトロ基、(3)シアノ基、(4)ヒドロキシ基、(5)カルボキシ基、(6)スルファニル基、(7)C1-6アルキル基、(8)C3-8シクロアルキル基、(9)C1-6アルコキシ基、(10)C6-10アリール基、(11)C7-14アラルキル基、(12)C1-7アルカノイルオキシ基、(13)C7-11アロイルオキシ基、(14)C1-7アルカノイル基、(15)C7-11アロイル基、(16)アジド基、(17)C1-6アルキルチオ基、(18)C6-10アリールチオ基、(19)C1-6アルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基、(20)C1-6アルキルスルホニルオキシ基、(21)C6-10アリールスルホニルオキシ基、(22)トリC1-6アルキルシリル基、(23)保護されたアミノ基、(24)C1-6アルコキシ-カルボニル基、(25)芳香族複素環基等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、メチルチオ、アセチル、ホルミル、カルバモイル、アジド、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、フェニル、シクロヘキシル、ジメチルアミノ、アセチルアミノ、tert-ブトキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、メトキシカルボニル等が好ましく、ハロゲン原子が特に好ましい。また、複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。

【0061】
上記置換基は、さらに上記置換基で置換されていてもよい。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1乃至5個、より好ましくは1乃至3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。当該置換基はまたさらに、ヒドロキシ基、カルボキシ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-8シクロアルキル基、C6-10アリール基、C7-14アラルキル基、ハロゲン原子、C1-6アルコキシ-カルボニル基、保護されたアミノ基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基等で置換されていてもよい。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1乃至5個、より好ましくは1乃至3個である。複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。

【0062】
本明細書中、「一方向巻きのらせん構造」とは、右巻き又は左巻きのいずれかに片寄ったらせん構造であればよく、好ましくは完全に右巻き又は左巻きのらせん構造である。「一方向巻きのらせん構造」を有する化合物は、分子中に光学活性な官能基を有さなくても、片寄ったらせん構造のみに起因して光学活性を示す。

【0063】
本明細書中、「光学活性」とは、光の平面偏光を回転させる性質、すなわち、旋光能を有する状態を意味する。好ましくは、光学的に純粋な状態である。

【0064】
本明細書中、「キラル化合物」とは、中心性キラリティー、軸性キラリティー又は面性キラリティーを持つ化合物を意味し、例えば、中心性キラリティー(不斉中心、すなわち、不斉炭素原子)を持つ化合物が挙げられる。

【0065】
本明細書中、「光学活性キラルアミン化合物」とは、光の平面偏光を回転させる性質、すなわち、旋光能を有し、且つ第一級又は第二級アミノ基を有する低分子化合物であり、中心性キラリティー、軸性キラリティー又は面性キラリティーを持つ分子量が500以下の有機化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。好ましくは、光学的に純粋な不斉炭素原子を1つ有する化合物であり、例えば、光学的に純粋な両エナンチオマーが市販品として入手可能な1-フェニルエチルアミン、1-シクロヘキシルエチルアミン、1-(1-ナフチル)エチルアミン、1-(2-ナフチル)エチルアミン、sec-ブチルアミン、1-フェニル-2-(p-トリル)エチルアミン、1-(p-トリル)エチルアミン、1-(4-メトキシフェニル)エチルアミン、β-メチルフェネチルアミン、2-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノール、1-アミノ-2-インダノール、2-アミノ-1-フェニル-1、3-プロパンジオール、2-アミノ-1-プロパノール、ロイシノール、フェニルアラニノール、2-フェニルグリシノール、バリノール、ノルエフェドリン、メチオニノール、1-ベンジル-3-アミノピロリジン、2-(メトキシメチル)ピロリジン、1-メチル-2-(1-ピペリジノメチル)ピロリジン、1-(2-ピロリジノメチル)ピロリジン、アミノ酸(例、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、プロリン等)、アミノ酸誘導体等のキラルアミン化合物の光学活性体が挙げられる。中でも、(R)-1-フェニルエチルアミン又は(S)-1-フェニルエチルアミンが特に好ましい。該光学活性キラルアミン化合物としては、光学的に純粋な化合物を使用するのが好ましい。「光学活性キラルアミン化合物」は、液体でも固体でもよい。

【0066】
本明細書中、「(光学活性)キラルアミン化合物」の塩としては、特に限定されないが、例えば、テトラブチルホウ酸、テトラフェニルホウ酸、テトラキス(p-フルオロフェニル)ホウ酸、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ酸、テトラキス(パーフルオロフェニル)ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、ヘキサフルオロアンチモン酸等の疎水性の高い酸との塩等が好ましい。中でも、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸との塩が特に好ましい。

【0067】
本明細書中、「低極性溶媒」とは、水と混ざりにくい低極性の溶媒のことを意味し、例えば、ベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、クロロホルム、1,1,2,2-テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。中でも、クロロホルム又は1,1,2,2-テトラクロロエタンが好ましい。

【0068】
本明細書中、「ee」とは、鏡像体過剰率(enantiomeric excess)の略称であり、キラル化合物の光学純度を表す。「ee」は、多い方の鏡像体の物質量から少ない方の鏡像体の物質量を引き、全体の物質量で割った値に100を掛けて算出され、「%ee」で表される。

【0069】
本明細書中、「光学的に純粋な」とは、99%ee以上の光学純度を示す状態を表す。

【0070】
本明細書中、「鏡像異性体」とは、光学活性な低分子化合物中の全ての不斉炭素原子の立体配置が異なっている光学的対掌体を意味し、光学活性な低分子化合物と互いに右手と左手との関係にある1対の光学異性体を構成している。具体的には、例えば、光学活性なキラルアミン化合物が(R)-1-フェニルエチルアミンである場合の鏡像異性体は(S)-1-フェニルエチルアミンである。

【0071】
本明細書中、「ラセミ体」とは、キラルアミン化合物の2種類の鏡像異性体(エナンチオマー)が等量存在することにより旋光性を示さなくなった状態の化合物を意味する。

【0072】
本明細書中、「キラルセンサー」とは、光学活性キラルアミン化合物についてキラリティーを高感度に計測、判別することができる物質(化合物等)を意味する。本明細書中、「キラルセンサー」を利用した計測、判別を行うことを「キラルセンシング」という。

【0073】
本明細書中、「比色検出」とは、測定物質、または反応生成物を発色物質に変化させ、その発色の度合を適当な波長の可視光線を用いて吸光度により比色定量する方法である。本発明における「比色検出」には、目に見える色の変化を利用した検出方法、蛍光強度の変化を利用した蛍光検出方法、及び紫外・可視吸収スペクトルを利用した検出方法も包含される。

【0074】
本明細書中、化合物(I)の塩とは、例えば、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩、アミノ酸との塩等が挙げられる。

【0075】
無機酸との塩としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸等との塩が挙げられる。
有機酸との塩としては、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、フマル酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、アスコルビン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。
無機塩基との塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
有機塩基との塩として、例えば、メチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、グアニジン、ピリジン、ピコリン、コリン、シンコニン、メグルミン等との塩が挙げられる。
アミノ酸との塩として、例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。

【0076】
化合物(I)又はその塩の溶媒和物とは、化合物(I)又はその塩に、溶媒の分子が配位したものであり、水和物も包含される。例えば、化合物(I)またはその塩の水和物、エタノール和物、ジメチルスルホキシド和物等が挙げられる。

【0077】
以下、化合物(I)の各基について説明する。

【0078】
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、トリ置換シリル基、トリ置換シロキシ基又は置換されていてもよいアシルオキシ基を示す。

【0079】
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、好ましくは、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、トリアルキルシリル基又はトリアルキルシロキシ基であり、より好ましくは、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、トリC1-6アルキルシリル基又はトリC1-6アルキルシロキシ基であり、中でも、水素原子又はハロゲン原子が特に好ましい。

【0080】
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、好ましくは、RとR’、RとR’、RとR’及びRとR’が、それぞれ同一の基である。R、R’、R、R’、R、R’R及びR’の全てが同一の基であってもよい。

【0081】
及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい環状基を示す。

【0082】
及びR’は、好ましくは、共に、水素原子、置換されていてもよいC1-4アルキル基又は置換されていてもよいC6-10アリール基(例、フェニル基)である。

【0083】
及びR’は、より好ましくは、共に、水素原子;置換されていてもよいフェニル基、5員若しくは6員の芳香族複素環基及び8乃至14員の縮合芳香族複素環基からなる群より選択される基で置換されていてもよいC1-4アルキル基;又はフェニル基である。

【0084】
及びR’は、特に好ましくは、共に、水素原子;フェニル基で置換されていてもよいメチル基;又はフェニル基である。

【0085】
及びR’が、水素原子以外の基である場合、結合するキラル炭素原子の立体配置は、特に限定されないが、R配置、S配置又はそれらの等量混合物(ラセミ体)のいずれでもよいが、原料の入手が容易且つ安価なL-アミノ酸由来のS配置のものが好ましい。
化合物(I)は、一方向巻きのらせんキラリティーを有することにより、色調の変化による光学活性キラルアミンのキラリティーの識別が可能であるのに対し、化合物(I)にらせんのキラリティーが誘起されていない場合には、溶液中においては光学活性キラルアミンのキラリティーを識別することはできなかった。このことから、比色検出型キラルセンサーの性能には、化合物(I)の一方向巻きのらせんキラリティーが、R及びR’が結合するキラル炭素原子の立体配置よりも大きく影響を及ぼすことが確認された。

【0086】
nは、10以上の整数であり、好ましくは、30以上10000以下の整数である。

【0087】
m及びm’は、独立してそれぞれ、0又は1を示す。

【0088】
m及びm’は、好ましくは、共に0又は1であり、より好ましくは、共に0である。

【0089】
r及びr’は、独立してそれぞれ、0又は1を示す。

【0090】
r及びr’は、好ましくは、共に0又は1であり、より好ましくは、共に1である。

【0091】
化合物(I)としては、以下の化合物が好適である。
[化合物(IA)]
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、トリアルキルシリル基又はトリアルキルシロキシ基であり、且つRとR’、RとR’、RとR’及びRとR’が、それぞれ同一の基であり;
及びR’が、共に、水素原子、置換されていてもよいC1-4アルキル基又は置換されていてもよいC6-10アリール基(例、フェニル基)であり、
nが、10以上の整数であり、
m及びm’が、共に0であり、並びに
r及びr’が、共に1である、
化合物(I)。

【0092】
より好適な化合物(I)は、以下の化合物である。
[化合物(IB)]
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、トリC1-6アルキルシリル基又はトリC1-6アルキルシロキシ基であり、且つRとR’、RとR’、RとR’及びRとR’が、それぞれ同一の基であり;
及びR’が、共に、水素原子;置換されていてもよいフェニル基、5員若しくは6員の芳香族複素環基及び8乃至14員の縮合芳香族複素環基からなる群より選択される基で置換されていてもよいC1-4アルキル基;又はフェニル基であり、
nが、30以上10000以下の整数であり、
m及びm’が、共に0であり、並びに
r及びr’が、共に1である、
化合物(I)。

【0093】
更に好適な化合物(I)は、以下の化合物である。
[化合物(IC)]
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ水素原子又はハロゲン原子であり、且つRとR’、RとR’、RとR’及びRとR’が、それぞれ同一の基であり;
及びR’が、共に、水素原子;フェニル基で置換されていてもよいメチル基;又はフェニル基であり、
nが、30以上10000以下の整数であり、
m及びm’が、共に0であり、並びに
r及びr’が、共に1である、
化合物(I)。

【0094】
特に好適な化合物(I)は、具体的には、下記式(I-1):

【0095】
【化3】
JP2018177907A_000004t.gif

【0096】
で表される化合物(化合物(I-1))である。

【0097】
化合物(I)の数平均重合度(1分子中に含まれるジフェニルエチレン単位の平均数)は、10以上、好ましくは30以上であり、特に上限はないが、10000以下であることが取り扱いの容易さの点で望ましい。

【0098】
また、化合物(I)は、同位元素(例えば、H、H(D)、14C、35S等)で標識されていてもよい。

【0099】
(本発明のキラルアミンセンサー)
本発明の比色検出型キラルセンサーは、化合物(I)、すなわち、そのポリマー主鎖に一方向巻きのらせん構造を有する下記式(I):

【0100】
【化4】
JP2018177907A_000005t.gif

【0101】
[式中、
、R’、R、R’、R、R’R及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、トリ置換シリル基、トリ置換シロキシ基又は置換されていてもよいアシルオキシ基を示し;
及びR’は、独立してそれぞれ、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい環状基を示し;
nは、10以上の整数を示し;
m及びm’は、独立してそれぞれ、0又は1を示し;並びに
r及びr’は、独立してそれぞれ、0又は1を示す。]
で表されるポリ(ジフェニルアセチレン)化合物又はその塩、或いはその溶媒和物を含有する、比色検出型キラルセンサーである。

【0102】
本発明の比色検出型キラルセンサーは、低極性溶媒に溶解させて、当該溶液をそのままキラルセンサーとして使用することができる。また、当該溶液に紙(濾紙等)を含浸させることにより、化合物(I)を吸着させ、乾燥することにより、キラルアミン検出用試験紙を作製して、それをキラルセンサーとして使用することもできる。

【0103】
(化合物(I)の合成)
化合物(I)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下のような反応を経て合成することができる。

【0104】
原料化合物は、特に述べない限り、市販品として容易に入手できるか、あるいは、自体公知の方法(例、国際公開第2014/125667号、国際公開第2014/126028号、特開2016-155781号公報、Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Ed., Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts, Wiley-Interscience(2007)等)またはこれらに準ずる方法に従って製造することができる。

【0105】
なお、以下の反応式中の各工程で得られた化合物は、反応液のままか粗生成物として次の反応に用いることもできる。あるいは、該化合物は常法に従って反応混合物から単離することもでき、再結晶、蒸留、クロマトグラフィーなどの通常の分離手段により容易に精製することができる。

【0106】
化合物(I)は、例えば、以下の工程により製造することができる。

【0107】
【化5】
JP2018177907A_000006t.gif

【0108】
[式中、Pは、保護基(例、tert-ブトキシカルボニル等)を示し、他の記号は、前記と同義である。]

【0109】
工程1
当該工程は、化合物1と化合物2を、塩基存在下、脱水縮合させることにより、化合物3へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、窒素雰囲気下、トリホスゲンを用いて行われる。

【0110】
化合物2の使用量は、化合物1(1モル)に対して、通常0.1~1モル、好ましくは、0.2~0.5モルである。

【0111】
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、2,6-ルチジン等の有機塩基が挙げられ、中でも、2,6-ルチジンが好ましい。
該塩基の使用量は、化合物1(1モル)に対して、通常1~10モル、好ましくは、4~6モルである。

【0112】
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類等あるいはそれらの混合物が挙げられ、中でも、テトラヒドロフラン等が好ましい。

【0113】
反応温度は、通常0℃~60℃、好ましくは10℃~30℃である。
反応時間は、通常0.5~30時間である。

【0114】
工程2
当該工程は、化合物3のアミノ保護基(P)を脱保護することにより、化合物4へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。

【0115】
脱保護条件、反応溶媒、反応時間等は、保護基(P)の種類により異なるが、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Ed., Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts, Wiley-Interscience(2007)に記載の方法またはこれらに準ずる方法に従って行うことができる。

【0116】
【化6】
JP2018177907A_000007t.gif

【0117】
[式中の記号は、前記と同義である。]

【0118】
工程3
当該工程は、特開2016-155781号公報に記載の方法により調製された一方向巻きのらせんキラリティーを有する化合物(II)と工程2で得られた化合物4(及び化合物4’)を、縮合剤存在下、脱水縮合させることにより、化合物(I)へと変換する工程である。
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、必要に応じて縮合添加剤存在下で用いて行われる。

【0119】
縮合添加剤としては、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-1H-1,2,3-トリアゾール-5-カルボン酸エチルエステル(HOCt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)等が挙げられる。
縮合添加剤の使用量は、化合物(II)1モルに対して、好ましくは0.05~1.5モルである。

【0120】
縮合剤としては、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N-エチル-N’-3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびその塩酸塩(EDC・HCl)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBop)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロ-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O-ベンゾトリアゾール-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロボレート(HBTU)等が挙げられるが、水系溶媒中でも使用可能なDMT-MMが特に好適である。
縮合剤の使用量は、化合物(II)1モルに対して、1~10モル使用することができ、好ましくは3~5モルである。
溶媒としては、例えば、水;ジメチルスルホキシド(DMSO);トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類等あるいはそれらの混合物が挙げられ、中でも、水とDMSOの混合溶媒等が好ましい。

【0121】
化合物4と化合物4’は、同一でも異なっていてもよいが、好ましくは、同一のものである。
化合物4(及び化合物4’)の使用量は、化合物(II)1モルに対して、2~10モル使用することができ、好ましくは3~5モルである。
反応温度は、通常0~50℃、好ましくは室温であり、反応時間は、通常0.5~30時間である。

【0122】
化合物4及び化合物4’として、光学活性体(例えば、化合物4(S)及び化合物4’(S))を使用する場合には、ポリジフェニルアセチレン誘導体の主鎖に一方向巻きのらせんキラリティーを誘起する工程は、下記反応式3に示されるように、化合物(Ia)に変換後に行うこともできる。

【0123】
【化7】
JP2018177907A_000008t.gif

【0124】
[式中の記号は、前記と同義である。]

【0125】
工程3’
当該工程は、前記工程3と同様の方法により行うことができる。

【0126】
工程4
当該工程は、化合物(Ia)を、溶媒中で加温することにより、一方向巻きのらせんキラリティーを誘起する工程である。

【0127】
溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、クロロベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン等が挙げられ、中でもDMFが好ましい。

【0128】
反応温度は、通常室温~200℃、好ましくは80~130℃、より好ましくは100℃~120℃である。
反応時間は、通常0.5~30時間である。

【0129】
化合物(I)に一方向巻きのらせんキラリティーが誘起されたか否かは、CD及び紫外・可視吸収スペクトルを測定することにより確認することができる。

【0130】
化合物(I)にどの程度の光学純度で一方向巻きのらせんキラリティーが誘起されたかどうかは、CDスペクトルのピーク強度(Δε)を測定することにより確認することができる。すなわち、ピーク強度が大きいほど、らせんの巻き方向が一方向に片寄っていることを示す。

【0131】
(化合物(I)を含有する本発明の比色検出型キラルセンサーによる光学活性キラルアミン化合物のキラリティーの識別方法)

【0132】
化合物(I)は、低極性溶媒中で、被験(識別)対象である光学活性キラルアミン化合物の塩と混合するだけで、被験対象が持つ絶対立体配置に応じて、瞬時に溶液の色調、及び/又は蛍光強度の変化が観測される。そして、その色調、及び/又は蛍光強度の変化を目視で観測することにより、識別対象の絶対立体配置を感度良く識別することが可能である。

【0133】
キラリティーの識別が可能な光学活性キラルアミン化合物としては、特に限定されないが、前記したとおり、第一級アミン類(例、1-フェニルエチルアミン、1-シクロヘキシルエチルアミン、1-(1-ナフチル)エチルアミン、1-(2-ナフチル)エチルアミン、sec-ブチルアミン、1-フェニル-2-(p-トリル)エチルアミン、1-(p-トリル)エチルアミン、1-(4-メトキシフェニル)エチルアミン、β-メチルフェネチルアミン、1-ベンジル-3-アミノピロリジン等)、アミノアルコール類(例、2-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノール、1-アミノ-2-インダノール、2-アミノ-1-フェニル-1、3-プロパンジオール、2-アミノ-1-プロパノール、ロイシノール、フェニルアラニノール、2-フェニルグリシノール、バリノール、ノルエフェドリン、メチオニノール等)、第二級アミン類(例、N-メチル-1-フェニルエチルアミン、2-(メトキシメチル)ピロリジン、1-メチル-2-(1-ピペリジノメチル)ピロリジン、1-(2-ピロリジノメチル)ピロリジン等)、アミノ酸(例、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、プロリン等)、アミノ酸誘導体(例、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、プロリン等のアミノ酸のカルボキシ基を保護した化合物(例、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、プロリン等のアミノ酸のtert-ブチルエステル等)等の光学活性体が挙げられ、中でも、第一級アミン類としては、(R)-1-フェニルエチルアミン又は(S)-1-フェニルエチルアミンが好ましく、第二級アミン類としては、(R)-N-メチル-1-フェニルエチルアミン又は(S)-N-メチル-1-フェニルエチルアミンが好ましく、アミノ酸としては、(R)-プロリン又は(S)-プロリンが好ましい。

【0134】
光学活性キラルアミン化合物の塩としては、前記したとおり、疎水性の高い有機酸との塩(例、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ酸、テトラキス(パーフルオロフェニル)ホウ酸等)が好適に使用される。

【0135】
本発明のキラリティー識別方法は、極微量の化合物(I)(比色検出型キラルセンサー)があれば感度良く行うことができる。具体的には、化合物(I)を低極性溶媒(例、1,1,2,2-テトラクロロエタン)に溶解させた溶液(化合物(I)濃度:1.0×10-4M)を作製し、識別対象の光学活性キラルアミン化合物の塩を混合するだけで、瞬時に非共有結合相互作用による色調及び蛍光発光の変化がみられることから、識別対象の光学活性キラルアミン化合物のキラリティーを、高価且つ特殊な測定機器を使用することなく、色の差異として目視により識別することができるという利点を有する。

【0136】
また、本発明の比色検出型キラルセンサーは、非共有結合相互作用によりキラリティーを識別することが可能であるので、識別に使用後に、例えば、メタノールを溶媒として用いて半透膜処理することにより、識別対象の化合物と化合物(I)をそれぞれ分離、回収することができ、再利用することもできるという利点も有する。

【0137】
(化合物(I)を含有するキラルアミン検出用呈色試験紙)

【0138】
本発明の化合物(I)は、溶媒(例、低極性溶媒)に溶解させて、当該溶液に紙(濾紙等)を含浸させることにより、化合物(I)を吸着させ、乾燥することにより、キラルアミン検出用試験紙を作製することができる。

【0139】
本発明のキラルアミン検出用呈色試験紙を用いるキラリティー識別方法によれば、識別対象の光学活性キラルアミン化合物の塩を含む低極性溶媒(例、1,1,2,2-テトラクロロエタン)の溶液に、化合物(I)を含有する(吸着させた)試験紙を浸すだけで、瞬時に感度良く色調の変化が現れ、目視により識別することができる。また、試験紙上で形成された化合物(I)とキラルアミン化合物の会合体は、低極性溶媒に対する溶解性が極端に低下することから、低極性溶媒中に一切溶出することなく、試験紙上において明確な目視での識別が可能である。

【0140】
以上のように、本発明の比色検出型キラルセンサー又はキラルアミン検出用呈色試験紙を使用する光学活性キラルアミン化合物のキラリティーの識別方法は、識別対象である光学活性キラルアミン化合物の塩と化合物(I)とを低極性溶媒中で混合するだけ、あるいは、キラルアミン検出用呈色試験紙を光学活性キラルアミン化合物の塩の溶液に含浸させるだけの簡便な操作で、識別対象のキラルアミン化合物の絶対立体配置を感度良く決定することができるという利点を有している。また、本発明のキラリティーの識別方法は、非共有結合相互作用(分子認識)を利用しているので、目視による迅速な識別、及び識別後のキラルセンサーの回収、再利用が可能であり、高価且つ特殊な測定装置を必要としない、実用的なキラリティーセンシング手法である。
【実施例】
【0141】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0142】
H NMRスペクトルは、JEOL ECA500を用い、重クロロホルム、重ジメチルスルホキシド及び重水を溶媒として測定した。H-NMRについてのデータは、化学シフト(δppm)、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、quint=クインテット、m=マルチプレット、dd=ダブルダブレット、dt=ダブルトリプレット、dq=ダブルカルテット、brs=ブロードシングレット)、カップリング定数(Hz)、積分及び割当てとして報告する。
平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(日本分光製高速液体クロマトグラフィーポンプ PU-2080、日本分光製紫外可視検出器 UV-970、日本分光製カラムオーブン CO-1560、Shodex製カラム KF-805L)によりポリスチレン換算で算出した。
円二色性(CD)測定は日本分光製円二色性分散計 J-725、紫外可視吸収測定は日本分光製紫外可視分光光度計 V-570、蛍光測定は、日本分光製分光蛍光光度計 FP-6300を用いて行った。
以下の実施例中の「室温」は通常約10℃乃至約25℃を示す。混合溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。%は、特に断らない限り重量%を示す。
また、原料化合物であるN-tert-ブトキシカルボニル-L-アラニン(東京化成工業株式会社製)及び1-アザ-18-クラウン-6-エーテル(東京化成工業株式会社製)は、市販品をそのまま使用した。また、ポリ{ビス[(4-カルボキシ)フェニル)]アセチレン}(化合物(II-1))は、国際公開第2014/125667号、国際公開第2014/126028号及び特開2016-155781号公報に記載の方法により合成し、その前駆体であるポリ{ビス[(4-ヘプチルカルボニル)フェニル)]アセチレン}のゲル浸透クロマトグラフィーによる測定結果が、数平均分子量:Mn=1.25×10、分散度:Mw/Mn=1.85(ポリスチレン換算)であるものを使用した。
【実施例】
【0143】
実施例1
一方向巻きらせんキラリティーを有するポリ(4,4’-(エチン-1,2-ジイル)ビス(N-((S)-1-(1,4,7,10,13-ペンタオキサ-16-アザシクロオクタデカン-16-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)ベンズアミド))(化合物(I-1))の合成
【実施例】
【0144】
(1)tert-ブチル (S)-(1-(1,4,7,10,13-ペンタオキサ-16-アザシクロオクタデカン-16-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(3a)の合成
【実施例】
【0145】
【化8】
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【実施例】
【0146】
窒素雰囲気下、N-tert-ブトキシカルボニル-L-アラニン(1a)(431mg,2.28mmol)のTHF(24mL)溶液に、トリホスゲン(205mg,0.69mmol)、2,6-ルチジン(1.4mL)を加え、さらに、1-アザ-18-クラウン-6-エーテル(2a)(120mg,0.46mmol)のTHF(12mL)溶液を加えて、室温で2時間撹拌した。反応混合液に、水(40mL)、1N塩酸(60mL)を加え、ジクロロメタンにより抽出後、有機層を1N水酸化ナトリウム水溶液及び水により順次洗浄した。有機層を合わせて、溶媒を減圧留去し、真空乾燥を行うことにより、標題化合物(3a)(209.2mg,98%)を、茶色油状物として得た。
H NMR(500MHz,CDCl,室温):δ5.39(d,J=8.0Hz,1H,NH),4.66(dq,J=7.0,7.0Hz,1H,CHCH),3.78-3.52(br,24H,クラウンエーテル),1.43(s,9H,3CH),1.31(d,J=6.5Hz,3H,CHCH);
HRMS(DART+) calcd for C2039([M+H])435.2706,found:435.2711
【実施例】
【0147】
(2)(S)-2-アミノ-1-(1,4,7,10,13-ペンタオキサ-16-アザシクロオクタデカン-16-イル)プロパン-1-オン(4a)の合成
【実施例】
【0148】
【化9】
JP2018177907A_000010t.gif
【実施例】
【0149】
窒素雰囲気下、tert-ブチル (S)-(1-(1,4,7,10,13-ペンタオキサ-16-アザシクロオクタデカン-16-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(3a)(200mg,0.46mmol)のジクロロメタン(44mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(22mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、残渣にジクロロメタン(44mL)を加え、1N水酸化ナトリウム水溶液及び水により順次洗浄した。溶媒を減圧留去後、真空乾燥を行うことにより、標題化合物(4a)(93.7mg,61%)を茶色油状物として得た。
H NMR(400MHz,CDCl,室温):δ3.86(q,J=6.5Hz,1H,CHCH),3.79-3.57(br,24H,クラウンエーテル),1.25(d,J=6.5Hz,3H,CHCH);
HRMS(DART+)calcd for C1531([M+H])335.2182,found:335.2174
【実施例】
【0150】
(3)ポリ(4,4’-(エチン-1,2-ジイル)ビス(N-((S)-1-(1,4,7,10,13-ペンタオキサ-16-アザシクロオクタデカン-16-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)ベンズアミド))(化合物(Ia-1))の合成
【実施例】
【0151】
【化10】
JP2018177907A_000011t.gif
【実施例】
【0152】
ポリ{ビス[(4-カルボキシ)フェニル)]アセチレン}(化合物(II-1))(10mg,37.6μmoL)のジメチルスルホキシド/水(5:1,v/v)(4mL)溶液に、(S)-2-アミノ-1-(1,4,7,10,13-ペンタオキサ-16-アザシクロオクタデカン-16-イル)プロパン-1-オン(4a)(37.7mg,113μmol)及び4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(31.3mg,150μmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了確認後、反応液にクロロホルムを加え、水洗後、凍結乾燥操作により溶媒を留去した。得られた固体をクロロホルムに溶解させ、ヘキサンを加えて再沈殿をすることにより、標題化合物(Ia-1)(30.0mg,89%)を黄色固体として得た。
H NMR(400MHz,CDCl,室温):δ7.82-6.12(br,10H,NH,Ar-H),4.96-4.94(br,2H,CHCH),3.93-3.52(br,48H,クラウンエーテル),1.39-1.24(br,6H,CHCH
【実施例】
【0153】
(4)一方向巻きらせんキラリティーを有するポリ(4,4’-(エチン-1,2-ジイル)ビス(N-((S)-1-(1,4,7,10,13-ペンタオキサ-16-アザシクロオクタデカン-16-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)ベンズアミド))(化合物(I-1))の合成
【実施例】
【0154】
【化11】
JP2018177907A_000012t.gif
【実施例】
【0155】
上記(4)で得られた化合物(Ia-1)(897μg,1.0μmol)のDMF(1mL)溶液を、120°Cで2時間加熱した。乾燥窒素を吹き付ることにより予備乾燥をした後、さらに真空乾燥を行うことにより標題化合物(I-1)を黄色固体として定量的に得た。
化合物(I-1)のDMF及び1,1,2,2-テトラクロロエタン中のCDおよび吸収スペクトルを図1のa、bに示した。図1の結果から、化合物(I-1)が、一方向巻きらせんキラリティーを有していることを確認することができた。
【実施例】
【0156】
実施例2
(S)-1-フェニルエチルアミンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩((S)-PEA-BArF)の合成
【実施例】
【0157】
【化12】
JP2018177907A_000013t.gif
【実施例】
【0158】
(S)-1-フェニルエチルアミン(PEA)を0.5M塩酸(300μL)に加え、室温で30分間撹拌した。続いて反応液に、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボロン酸ナトリウム(NaBArF)(88.6mg,0.10mmol)及びメタノール(700μL)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液にジクロロメタンを加え、水で3回洗浄後、溶媒を減圧留去し、真空乾燥を行うことにより標題化合物((S)-PEA-BArF)(92.5mg、収率94%)を白色固体として得た。
H NMR(500MHz,DMSO-d,室温):δ7.73(s,4H,Ar-H),7.60(s,8H,Ar-H),7.42-7.35(m,4H,Ar-H),7.30-7.28(m,1H,Ar-H),4.24(q,J=7.0Hz,1H,CHCH),1.38(d,J=7.0Hz,3H,CHCH);
【実施例】
【0159】
実施例3
(R)-1-フェニルエチルアミンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩((R)-PEA-BArF)の合成
【実施例】
【0160】
アミンとして(R)-1-フェニルエチルアミン(PEA)を用いた以外は、実施例2と同様の方法により、標題化合物((R)-PEA-BArF)を得た。
【実施例】
【0161】
実施例4
(S)-N-メチル-1-フェニルエチルアミンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩((S)-NMPEA-BArF)の合成
【実施例】
【0162】
アミンとして(S)-N-メチル-1-フェニルエチルアミン(NMPEA)を用いた以外は、実施例2と同様の方法により、標題化合物((S)-NMPEA-BArF)を得た。
H NMR(500MHz,CDCl,室温):δ7.70(s,8H,Ar-H),7.55(s,4H,Ar-H),7.52-7.48(m,3H,Ar-H),7.23-7.21(m,2H,Ar-H),4.13(q,J=7.0Hz,1H,CHCH),2.47(s,3H,NCH),1.65(d,J=7.0Hz,3H,CHCH);
【実施例】
【0163】
実施例5
(R)-N-メチル-1-フェニルエチルアミンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩((R)-NMPEA-BArF)の合成
【実施例】
【0164】
アミンとして(R)-N-メチル-1-フェニルエチルアミン(NMPEA)を用いた以外は、実施例2と同様の方法により、標題化合物((R)-NMPEA-BArF)を得た。
【実施例】
【0165】
実施例6
(S)-プロリンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩((S)-Pro-BArF)の合成
【実施例】
【0166】
【化13】
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【実施例】
【0167】
テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボロン酸ナトリウム(NaBArF)(88.6mg,0.10mmol)のジエチルエーテル溶液(2.2mL)に1.0M塩化水素ジエチルエーテル溶液(200μL)に加え、0℃で1時間撹拌した。続いて反応液に(S)-プロリン(Pro)(57.6mg,0.50mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶液を濾過後、溶媒を減圧留去し、真空乾燥を行うことにより標題化合物((S)-Pro-BArF)(98.3mg、収率100%)を白色固体として得た。
H NMR(400MHz,CDCl,室温):δ7.71(s,8H,Ar-H),7.57(s,4H,Ar-H),4.17(dd,J=6.0,8.4Hz,1H,CH),3.47-3.33(m,1H,CH),3.28-3.13(m,1H,CH),2.43-2.31(m,1H,CH),2.30-2.18(m,1H,CH),2.09-1.93(m,2H,CH
【実施例】
【0168】
実施例7
(R)-プロリンのテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩((R)-Pro-BArF)の合成
【実施例】
【0169】
アミンとして(R)-プロリン(Pro)を用いた以外は、実施例6と同様の方法により、標題化合物((R)-Pro-BArF)を得た。
【実施例】
【0170】
実験例1
本発明の比色検出型キラルアミンセンサー(化合物(I-1))を用いた色調変化による光学活性キラルアミンのキラリティーの識別
【実施例】
【0171】
実施例1で得られた化合物(I-1)と実施例2で得られた(S)-PEA-BArF(化合物(I-1)に対して0.3当量分)及び実施例3で得られた(R)-PEA-BArF(化合物(I-1)に対して0.3当量分)をそれぞれ、1,1,2,2-テトラクロロエタン中(化合物(I-1)の濃度:1.0×10-3M)で混合し、CDおよび吸収スペクトルを測定した(図1のc及びd)。
図1に示されるように、(S)-PEA-BArFと化合物(I-1)との分子認識により得られた吸収スペクトルでは、(R)-PEA-BArFとの分子認識により得られた吸収スペクトルと比較してより大きな短波長シフトが観測された。
また、図2のb,cに示されるように、化合物(I-1)と、(S)-PEA-BArF(化合物(I-1)に対して0.3当量分)及び(R)-PEA-BArF(化合物(I-1)に対して0.3当量分)をそれぞれ、1,1,2,2-テトラクロロエタン中で混合した際に、(S)-PEA-BArFと混合した溶液が黄色、(R)-PEA-BArFと混合した溶液が橙色に変色した。このことから第一級アミン塩である(S)-PEA-BArFと(R)-PEA-BArFのキラリティーを溶液の色の違いとして目視により識別可能であることが分かった。
一方、加熱による一方向巻きらせんキラリティー誘導を行っていない化合物(Ia-1)を用いて、同様に(S)-PEA-BArFと(R)-PEA-BArFのセンシングを行ったところ、目視で確認できるほどの明確な差は確認できなかった。
このことから、一方向巻きらせんキラリティーが化合物(I-1)のキラル識別には必須であることが確認された。
【実施例】
【0172】
また、L-アラニルリンカー構造を有さないポリマー(すなわち、ポリ{ビス[(4-カルボキシ)フェニル)]アセチレン}(化合物(II-1))の2つのカルボキシ基にアザクラウンエーテル部位が直結したポリマー)を用いて同様の検討を行った場合にも、目視で確認できるほどの明確な色調の差は確認できなかったことから、明確な色調の差異に基づくキラリティーの識別には、アミド基を介したリンカー構造は必須であることが確認された。
【実施例】
【0173】
第二級アミン塩である(S)-NMPEA-BArF及び(R)-NMPEA-BArFと化合物(I-1)との分子認識に関しては、化合物(I-1)に対して、それぞれ1.0当量分を加えた段階で会合体が生成した。会合体は良好な溶解性を示さなかったため、写真での結果のみを図2のd及びeに示した。図2のd及びeによれば、(S)-NMPEA-BArFとの混合により析出した固体の色は黄色を示し、(R)-NMPEA-BArFとの混合により析出した固体の色は橙色を示した。
以上の結果から、第二級アミン塩のセンシングにおいても、第一級アミン塩の場合と同様に、色調の違いとして目視によりキラリティーの識別が可能であることが分かった。
【実施例】
【0174】
脂肪族アミノ酸由来の(S)-Pro-BArF及び(R)-Pro-BArFと化合物(I-1)との分子認識に関しては、化合物(I-1)に対して、それぞれ0.3当量分を加えた段階で微量の会合体が生成した。会合体は良好な溶解性を示さなかったため、写真での結果のみを図2のf及びgに示した。図2のf及びgによれば、(S)-Pro-BArFとの混合により生じた懸濁液の色は橙色を示し、(R)-Pro-BArFとの混合により生じた懸濁液の色は赤色を示した。
以上の結果から、脂肪族アミノ酸のセンシングにおいても同様に、色調の違いとして目視によりキラリティーの識別が可能であることが分かった。
【実施例】
【0175】
実験例2
本発明の比色検出型キラルアミンセンサー(化合物(I-1))を用いた蛍光強度変化による光学活性キラルアミンのキラリティーの識別
【実施例】
【0176】
実施例1で得られた化合物(I-1)と実施例2で得られた(S)-PEA-BArF(化合物(I-1)に対して0.3当量分)及び実施例3で得られた(R)-PEA-BArF(化合物(I-1)に対して0.3当量分)をそれぞれ、1,1,2,2-テトラクロロエタン中(化合物(I-1)の濃度:1.0×10-4M)で混合し、室温で蛍光スペクトル(励起波長:435nm)を測定した(図3のb、c)。
図3に示されるように、(S)-PEA-BArFと化合物(I-1)との分子認識により得られた蛍光スペクトルでは、(R)-PEA-BArFとの分子認識により得られた蛍光スペクトルと比較して、蛍光強度の増加幅が大きいことが観測された。
また、365nmの紫外光照射下における化合物(I-1)と(S)-PEA-BArFとの混合溶液、及び化合物(I-1)と(R)-PEA-BArFとの混合溶液(溶媒:1,2,2-テトラクロロエタン)の色を図3に示した。図3の右図によれば、化合物(I-1)の濃度が希薄な条件(1.0×10-4M)においても、(S)-PEA-BArFと(R)-PEA-BArFのキラリティーを溶液の蛍光強度の違いとして目視により十分に識別可能であることが確認された。
【実施例】
【0177】
実験例3
本発明の化合物(I-1)を含有するキラルアミン検出用呈色試験紙の作製とそれを用いた光学活性キラルアミンのキラリティーの識別
【実施例】
【0178】
実施例1で得られた化合物(I-1)、並びに実施例2で得られた(S)-PEA-BArF及び実施例3で得られた(R)-PEA-BArFはそれぞれ1,1,2,2-テトラクロロエタンに対して良好な溶解性を示したが、化合物(I-1)に対して過剰量の光学活性キラルアミン化合物の塩を分子認識させることで形成される化合物(I-1)との会合体は、1,1,2,2-テトラクロロエタンに対して溶解性を示さなかった。そこで、濾紙を短冊状(約0.5×2.0cm)に切ったものを、化合物(I-1)のクロロホルム溶液(化合物(I-1)の濃度:約1.0×10-3M)に浸し、温風による乾燥操作を行う作業を3回繰り返すことで、キラルアミン検出用呈色試験紙を作製した。
【実施例】
【0179】
得られたキラルアミン検出用呈色試験紙を、室温条件下で、それぞれ第一級アミン塩である(S)-PEA-BArF及び(R)-PEA-BArFの1,1,2,2-テトラクロロエタン溶液(約0.1mL、アミン塩濃度:7.0×10-3M)に浸したのち、1,1,2,2-テトラクロロエタンにより過剰のアミン塩を洗浄した後の試験紙の様子を図4に示した。
図4に示されるように、試験紙を(S)-PEA-BArFの溶液に浸したものは黄色を示し、(R)-PEA-BArFの溶液に浸したものは橙色に変色した。
化合物(I-1)は、試験紙上で瞬時に(S)-PEA-BArF及び(R)-PEA-BArFと会合体を形成することにより溶解性が極端に低下するので、1,1,2,2-テトラクロロエタン中に一切溶出することなく、(S)-PEA-BArF及び(R)-PEA-BArFのキラリティーを色の違いとして目視により明確に識別可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明の化合物(I)又はその塩、或いはその溶媒和物は、種々の第一級又は第二級のキラルアミン化合物の塩に対して高感度なキラリティー識別能を示す。具体的には、本発明の化合物(I)と識別対象である光学活性キラルアミン化合物の塩を、低極性溶媒中で混合するだけで瞬時に、溶液の色調及び蛍光発光に変化が現れる。当該溶液の色調及び蛍光特性は、光学異性体間で顕著に相違するので、目視での明確な色の差異を利用して容易にそのキラリティーを識別することができる。それ故、本発明は、高価且つ特殊な測定機器が不要であるという利点を有する。そして、本発明によれば、検出感度が高いので、極微量の試料でもキラリティーの識別が可能であり、また、その識別は非共有結合相互作用を利用するものであるため、センサー分子である化合物(I)を回収、再利用することが可能であるという利点も有する。さらに、本発明の化合物(I)を含有する(すなわち、吸着させた)試験紙を、識別対象である光学活性キラルアミン化合物の塩の溶液に浸すと、溶液中で混合した場合と同様の迅速な色調の変化がみられ、目視により明確且つ簡便にキラリティーの識別が可能であることから、本発明は、キラルアミン検出用呈色試験紙としての利用も可能な実用性の高いキラリティーセンシングの手法を提供することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2