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明細書 :有機塩、動的共有結合を有する化合物、イオン液体、並びに、可変抵抗器及び抵抗値の制御方法、バイオエタノール製造装置及びバイオエタノールの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-127421 (P2018-127421A)
公開日 平成30年8月16日(2018.8.16)
発明の名称または考案の名称 有機塩、動的共有結合を有する化合物、イオン液体、並びに、可変抵抗器及び抵抗値の制御方法、バイオエタノール製造装置及びバイオエタノールの製造方法
国際特許分類 C07F   9/54        (2006.01)
C07D 233/61        (2006.01)
B01D  61/44        (2006.01)
H01C  10/02        (2006.01)
C12P   7/06        (2006.01)
FI C07F 9/54 CSP
C07D 233/61 102
B01D 61/44 500
H01C 10/02
C12P 7/06
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2017-022527 (P2017-022527)
出願日 平成29年2月9日(2017.2.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 第7回イオン液体討論会、主催:イオン液体研究会、開催期間:2016年10月24日(月)~25日(火) 第7回イオン液体討論会実行委員会、第7回イオン液体討論会要旨集、第172~173頁、発行日2016年10月24日
発明者または考案者 【氏名】黒田 浩介
【氏名】高橋 憲司
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100139686、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 史朗
【識別番号】100192773、【弁理士】、【氏名又は名称】土屋 亮
審査請求 未請求
テーマコード 4B064
4D006
4H050
5E030
Fターム 4B064AC03
4B064CB30
4B064CC21
4B064CC22
4B064CC30
4B064CD09
4B064DA16
4D006GA17
4D006PA04
4D006PB20
4D006PB70
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB90
5E030BA30
5E030DA07
要約 【課題】外部刺激を加えるだけで特性を制御できる有機塩を提供する。
【解決手段】一般式(c1)で表されるカチオン部と、一般式(a1)で表されるアニオン部と、を有する有機塩。当該有機塩からなるイオン液体、並びに、これを利用した可変抵抗器及びバイオエタノール製造装置。式(c1)中、XC+は、カチオン基を表す。式(a1)中、YA-は、アニオン基を表す。RとRとは、互いに結合して動的共有結合を形成し得る官能基を表す。
[化1]
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【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(c1)で表されるカチオン部と、下記一般式(a1)で表されるアニオン部と、を有する有機塩。
【化1】
JP2018127421A_000016t.gif
[式中、XC+は、カチオン基を表す。YA-は、アニオン基を表す。RとRとは、互いに結合して動的共有結合を形成し得る官能基を表す。]
【請求項2】
水への溶解度は、0.5[g/100g-HO]超である、請求項1に記載の有機塩。
【請求項3】
イミダゾリウム塩である、請求項1又は2に記載の有機塩。
【請求項4】
ホスホニウム塩である、請求項1又は2に記載の有機塩。
【請求項5】
下記一般式(z1)で表される化合物。
【化2】
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[式中、XC+は、カチオン基を表す。YA-は、アニオン基を表す。RXYは、動的共有結合を有する基を表す。]
【請求項6】
前記一般式(z1)中のXC+は、イミダゾリウムカチオン基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記一般式(z1)中のXC+は、ホスホニウムカチオン基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の有機塩からなるイオン液体。
【請求項9】
請求項8に記載のイオン液体を電気抵抗体として用いた可変抵抗器。
【請求項10】
請求項8に記載のイオン液体を電気抵抗体として用いることにより抵抗値を制御する、抵抗値の制御方法。
【請求項11】
請求項8に記載のイオン液体を抽出媒体としたバイオエタノール製造装置。
【請求項12】
バイオマスからエタノールを製造するバイオエタノールの製造方法において、
バイオマスから得られ、不純物として無機塩を含むグルコース原料と、請求項8に記載のイオン液体と、の混合液に、窒素ガスを供給しつつ電気透析を行うことによって、前記混合液から無機塩を除去する工程(I)と、
前記工程(I)の後、無機塩が除去された混合液に、二酸化炭素ガスを供給しつつ電気透析を行うことにより、イオン液体とグルコースとを分離する工程(II)と、
前記工程(II)の後、分離したグルコースを発酵させて、バイオエタノールを得る工程(III)と、
を有する、バイオエタノールの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機塩、動的共有結合を有する化合物、イオン液体、並びに、可変抵抗器及び抵抗値の制御方法、バイオエタノール製造装置及びバイオエタノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反応溶媒又は電解質に利用できる媒体として、イオン液体が注目されている。
イオン液体は、融点が低く、室温付近でも液体状態で存在するイオン(カチオン、アニオン)のみから構成される有機塩である。かかる有機塩は、熱安定性、化学的安定性及びイオン伝導性が高く、不揮発性、不燃性等の特性を有し、様々な用途への利用が検討されている。
【0003】
かかる有機塩は、そのイオン構造のデザイン性が高く、僅かな構造の違いにより性質が大きく変わり得る。
非特許文献1では、イオン構造が相互に類似する有機塩(カチオン、アニオン)と双性イオンとにおいて、イオン構造に含まれる炭素原子の個数が同じであっても、水との相溶性が異なり、有機塩の方が双性イオンに比べて水との相溶性が高いこと、が報告されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Effect of ion structures on phase behaviors of hydrophobic and polar ionic liquids after mixing with water;Y.Fukaya,T.Nakano,N.Nakamura and H.Ohno,PRiME2012,2012 The Electrochemical Society
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる有機塩について、従来、水との相溶性、導電率等の特性を制御するには、イオン構造中の炭素原子の個数や極性基の種類等を選択する必要がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、外部刺激を加えるだけで特性を制御できる有機塩を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、有機塩のイオン構造が可逆的に変化することによって、その有機塩を含有する液の特性を大きく変化させることができると着想した。そして、本発明者らは、検討により、外部刺激を加えるだけで、分子内又は分子間でカチオンとアニオンとが反応し、動的共有結合を形成して双性イオンを生成する、という新規な有機塩を創作し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0007】
(1)第1の態様に係る有機塩は、下記一般式(c1)で表されるカチオン部と、下記一般式(a1)で表されるアニオン部と、を有することを特徴とする。
【0008】
【化1】
JP2018127421A_000002t.gif
[式中、XC+は、カチオン基を表す。YA-は、アニオン基を表す。RとRとは、互いに結合して動的共有結合を形成し得る官能基を表す。]
【0009】
(2)第1の態様に係る有機塩は、水への溶解度が0.5[g/100g-HO]超であるものが好ましい。
(3)第1の態様に係る有機塩の好ましいものとして、イミダゾリウム塩が挙げられる。
(4)第1の態様に係る有機塩の好ましいものとして、ホスホニウム塩が挙げられる。
【0010】
(5)第2の態様に係る化合物は、下記一般式(z1)で表されることを特徴とする。
【0011】
【化2】
JP2018127421A_000003t.gif
[式中、XC+は、カチオン基を表す。YA-は、アニオン基を表す。RXYは、動的共有結合を有する基を表す。]
【0012】
(6)第2の態様に係る化合物において、前記一般式(z1)中のXC+は、イミダゾリウムカチオン基であるものが好ましい。
(7)第2の態様に係る化合物において、前記一般式(z1)中のXC+は、ホスホニウムカチオン基であるものが好ましい。
【0013】
(8)第3の態様に係るイオン液体は、前記有機塩からなることを特徴とする。
【0014】
(9)第4の態様に係る可変抵抗器は、前記イオン液体を電気抵抗体として用いたことを特徴とする。
【0015】
(10)第5の態様に係る抵抗値の制御方法は、前記イオン液体を電気抵抗体として用いることにより抵抗値を制御することを特徴とする。
【0016】
(11)第6の態様に係るバイオエタノール製造装置は、前記イオン液体を抽出媒体としたことを特徴とする。
【0017】
(12)第7の態様に係るバイオエタノールの製造方法は、バイオマスからエタノールを製造するバイオエタノールの製造方法において、バイオマスから得られ、不純物として無機塩を含むグルコース原料と、前記イオン液体と、の混合液に、窒素ガスを供給しつつ電気透析を行うことによって、前記混合液から無機塩を除去する工程(I)と、前記工程(I)の後、無機塩が除去された混合液に、二酸化炭素ガスを供給しつつ電気透析を行うことにより、イオン液体とグルコースとを分離する工程(II)と、前記工程(II)の後、分離したグルコースを発酵させて、バイオエタノールを得る工程(III)と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外部刺激を加えるだけで特性を制御できる有機塩を提供することができる。
加えて、本発明によれば、動的共有結合を有する化合物、前記有機塩からなるイオン液体、並びに、前記イオン液体を適用した可変抵抗器及び抵抗値の制御方法、前記イオン液体を適用したバイオエタノール製造装置及びバイオエタノールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】有機塩水溶液(1)についての化学平衡の反応式、及びH-NMR測定結果を示すスペクトルである。
【図2】濃度1質量%の有機塩水溶液(1)のpHに対する、化合物(z11)濃度の変化を示す図である。
【図3】濃度1質量%の有機塩水溶液(1)に、COガスとNガスとを交互にバブリングさせながら供給した際の、当該水溶液の導電率の変化を示す図である。
【図4】濃度20質量%の有機塩混合液(21)についての化学平衡の反応式、及びガラス瓶に収容された有機塩混合液(21)のpHに対する外観変化を示す写真である。
【図5】濃度20質量%の有機塩混合液(22)についての化学平衡の反応式、及びガラス瓶に収容された有機塩混合液(22)に、COガスとNガスとを交互にバブリングさせながら供給した際の外観変化を示す写真である。
【図6】有機塩混合液(23)についての化学平衡の反応式、並びに、有機塩混合液(23)にCOガス又はNガスをバブリングさせながら供給しつつ液温を変化させた際の外観変化の状態、及び存在比率(モル比)「有機塩(3)/化合物(z13)」を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(有機塩)
本実施形態の有機塩は、分子内に動的共有結合を有する双性イオンに、外部刺激によって可逆的に変化し得るものである。すなわち、この有機塩は、外部刺激が加えられることによって、分子内に動的共有結合を有する双性イオンに変化し、また、当該双性イオンに外部刺激が加えられることによって、元の有機塩に変化する。
ここでいう「外部刺激」とは、例えばpH変化、光照射、酸化剤もしくは還元剤又は触媒の添加、加熱、ガス供給、電気的刺激をいう。
「動的共有結合」とは、共有結合でありながら、結合の開裂と形成とが可逆的に起こる結合をいう。

【0021】
かかる本実施形態の有機塩は、下記一般式(c1)で表されるカチオン部と、下記一般式(a1)で表されるアニオン部と、を有する。

【0022】
【化3】
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[式中、XC+は、カチオン基を表す。YA-は、アニオン基を表す。RとRとは、互いに結合して動的共有結合を形成し得る官能基を表す。]

【0023】
前記式(c1)中、XC+は、カチオン基を表す。
ここでいう「カチオン基」とは、正の電荷を帯びた原子又は原子団を含む有機基をいう。前記の正の電荷を帯びた原子又は原子団には、水素原子以外の原子、又は炭化水素基などの置換基が結合していてもよい。

【0024】
前記XC+におけるカチオン基としては、例えばイミダゾリウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオンが挙げられる。これらの中でも、前記XC+におけるカチオン基としては、イミダゾリウムカチオン、ホスホニウムカチオンが好ましい。
尚、上記例示のカチオンは、正の電荷を帯びた原子に、水素原子以外の原子、又は炭化水素基などの置換基が結合しているものを包含する。

【0025】
前記XC+のカチオン基において、正の電荷を帯びた原子又は原子団に結合していてもよい置換基は、カチオンの種類や要求特性等によって適宜決定され、例えば親水性付与の点から、当該置換基1つの炭素数は、1~12が好ましく、1~8がより好ましく、1~5がさらに好ましい。
当該置換基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基(以上、いずれの基もヘテロ原子を有していてもよい)、アルコキシ基、アシル基が挙げられる。これらの中でも、当該置換基としては、アルキル基が好ましい。

【0026】
前記式(a1)中、YA-は、アニオン基を表す。
ここでいう「アニオン基」とは、負の電荷を帯びた原子又は原子団を含む有機基をいう。前記の負の電荷を帯びた原子又は原子団には、水素原子以外の原子、又は炭化水素基などの置換基が結合していてもよい。

【0027】
前記YA-におけるアニオン基としては、有機酸又は無機酸に由来するアニオンが挙げられる。ここでの有機酸としては、例えば安息香酸、マロン酸、ジスルホン酸が挙げられる。ここでの無機酸としては、例えば硫酸、リン酸が挙げられる。

【0028】
前記の式(c1)及び式(a1)中、RとRとは、互いに結合して動的共有結合を形成し得る官能基を表す。
とRとが互いに結合して形成する動的共有結合としては、例えば-N=CH-、-(OR)CH-O-HC(OR)-、-S-S-、-N-O-が挙げられる。
及びRは、それぞれ、炭化水素基(好ましくは炭素数1~5の炭化水素基)又は水素原子を表す。

【0029】
及びRの各々の好適な具体例を以下に示す。式中の「*」は、カチオン基又はアニオン基に結合する結合手であることを意味する。式中の「・」はラジカルを表す。

【0030】
【化4】
JP2018127421A_000005t.gif
[式中、Rは、炭化水素基又は水素原子を表す。RQ1~RQ5は、それぞれ、2価の連結基又は単結合を表す。]

【0031】
前記式(ca-1)中、Rは、炭化水素基又は水素原子を表す。
における炭化水素基としては、炭素数1~10の炭化水素基が好ましく、炭素数1~5の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~5のアルキル基がさらに好ましい。

【0032】
前記式(ca-1)~(ca-5)中、RQ1~RQ5は、それぞれ、2価の連結基又は単結合を表す。
Q1~RQ5における2価の連結基は、酸素原子を含む連結基、炭化水素基又はこれらの組合せを表し、炭化水素基が好ましく、炭素数1~10のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~5のアルキレン基がさらに好ましい。

【0033】
例えば、RとRとが互いに結合し、動的共有結合として-N=CH-を形成する場合、R及びRとしては、末端に-NHを有する基と、末端に-HC(=O)を有する基と、の組合せが挙げられる。

【0034】
例えば、RとRとが互いに結合し、動的共有結合として-(OR)CH-O-HC(OR)-を形成する場合、R及びRとしては、末端に-HC(=O)を有する基と、末端に-HC(=O)を有する基と、の組合せが挙げられる。

【0035】
例えば、RとRとが互いに結合し、動的共有結合として-S-S-を形成する場合、R及びRとしては、末端に-S・(ラジカル)を有する基と、末端に-S・(ラジカル)を有する基と、の組合せが挙げられる。

【0036】
例えば、RとRとが互いに結合し、動的共有結合として-N-O-を形成する場合、R及びRとしては、末端に-N・(ラジカル)を有する基と、末端に-O・(ラジカル)を有する基と、の組合せが挙げられる。

【0037】
本実施形態の有機塩は、水への溶解度が0.5[g/100g-HO]超であるものが好ましい。このような有機塩であれば、外部刺激によって、分子内に動的共有結合を有する双性イオンとの可逆的な変化を起こしやすくなり、特性の制御性が向上する。加えて、水溶液の調製が容易となる。
本実施形態の有機塩は、水への溶解度が0.5[g/100g-HO]超であるものが好ましく、1[g/100g-HO]以上であるものがより好ましく、1[g/100g-HO]超であるものがさらに好ましい。

【0038】
また、本実施形態の有機塩は、有機溶媒、又は、有機溶媒と水との混合溶媒と混合した反応系においても、分子内に動的共有結合を有する双性イオンに、外部刺激によって可逆的に変化し得る。ここで用いるのに好適な有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチルメチルケトン、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、キシレン、トルエン、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、ピリジンが挙げられる。
本実施形態の有機塩は、例えば上記例示の有機溶媒への溶解度が0.5[g/100g-有機溶媒]以上であるものが好ましい。

【0039】
本実施形態の有機塩の好ましいものとしては、イミダゾリウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩が挙げられる。
これらの中でも、導電率の制御性の点から、イミダゾリウム塩が好ましい。
また、これらの中でも、系全体の親水性と疎水性との制御性の点から、ホスホニウム塩が好ましい。

【0040】
本実施形態の有機塩の具体例を以下に示す。

【0041】
【化5】
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【0042】
本実施形態の有機塩は、例えば、一般式(c1)で表されるカチオン部を含む化合物と、一般式(a1)で表されるアニオン部を含む化合物と、を混合することにより製造することができる。

【0043】
(化合物)
本実施形態の化合物は、下記一般式(z1)で表される。
この一般式(z1)で表される化合物(化合物(z1))は、上述した有機塩が外部刺激によって分子内に動的共有結合を形成してなる双性イオンである。

【0044】
【化6】
JP2018127421A_000007t.gif
[式中、XC+は、カチオン基を表す。YA-は、アニオン基を表す。RXYは、動的共有結合を有する基を表す。]

【0045】
前記式(z1)中、XC+は、上記式(c1)中のXと同様である。XC+におけるカチオン基としては、イミダゾリウムカチオン、又はホスホニウムカチオンが好ましい。
前記式(z1)中、YA-は、上記式(a1)中のYA-と同様である。
XYにおける動的共有結合としては、例えば--N=CH-、-(OR)CH-O-HC(OR)-、-S-S-、-N-O-が挙げられる。
及びRは、それぞれ、炭化水素基(好ましくは炭素数1~5の炭化水素基)又は水素原子を表す。
XYにおける、動的共有結合を有する基は、前記の動的共有結合と、上記式(c1)中のRの残基と、上記式(a1)中のRの残基と、により形成される基である。

【0046】
本実施形態の一般式(z1)で表される化合物の具体例を以下に示す。

【0047】
【化7】
JP2018127421A_000008t.gif

【0048】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る、有機塩と水との混合液においては、下記一般式(RR1)で表される化学平衡が成り立つ。

【0049】
【化8】
JP2018127421A_000009t.gif
[式中、XC+は、カチオン基を表す。YA-は、アニオン基を表す。RとRとは、互いに結合して動的共有結合を形成し得る官能基を表す。RXYは、動的共有結合を有する基を表す。]

【0050】
前記式(RR1)中、XC+、R、R及びYA-は、上記の式(c1)中のXC+及びR、並びに、式(a1)中のR及びYA-とそれぞれ同様である。
XYは、動的共有結合を有する基を表し、上記の一般式(z1)中のRXYと同様である。

【0051】
前記一般式(RR1)における右方向への反応は、有機塩(IL)に、外部刺激が加えられることによって、分子内に動的共有結合が形成されて双性イオン(z1)が生成するものである。
この場合の外部刺激としては、例えば、酸化剤もしくは還元剤又は触媒の添加、加熱、光照射、電気的刺激、pH変化、ガス供給(ガスバブリング等)が挙げられる。

【0052】
前記一般式(RR1)における左方向への反応は、双性イオン(z1)に、外部刺激が加えられることによって、分子内の動的共有結合が開裂して有機塩(IL)が生成するものである。
この場合の外部刺激としては、例えば、酸化剤もしくは還元剤又は触媒の添加、加熱、光照射、電気的刺激、pH変化、ガス供給(ガスバブリング等)が挙げられる。

【0053】
すなわち、前記一般式(RR1)で表される反応は、可逆的なものである。
一般式(RR1)で表される化学平衡の反応系では、反応系内における有機塩(IL)の存在比率が高くなると、混合液の導電率が高くなる。加えて、系全体の親水性が高まり、水への溶解性も高くなる。
一方、反応系内における双性イオン(z1)の存在比率が高くなると、混合液の導電率が低くなる。加えて、系全体の疎水性が高まり、水への溶解性も低くなり、混合液の分離が生じやすくなる。
このように、前記一般式(RR1)で表される反応系においては、外部刺激を加えるだけで、特性を制御できる。

【0054】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る、有機塩と水との混合液においては、下記一般式(RR2)で表される化学平衡が成り立つ。

【0055】
【化9】
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[式中、X1C+及びX2C+は、それぞれカチオン基を表す。Y1A-及びY2A-は、それぞれアニオン基を表す。]

【0056】
前記式(RR2)中、X1C+及びX2C+は、それぞれカチオン基を表し、上記式(c1)中のXC+についての説明と同様である。
前記式(RR2)中、Y1A-及びY2A-は、それぞれアニオン基を表し、上記式(a1)中のYA-についての説明と同様である。

【0057】
前記一般式(RR2)における右方向への反応は、双性イオン群(z2)に、外部刺激が加えられて、ラジカル(X1C+-S・)(X2C+-S・)(・S-Y1A-)(・S-Y2A-)が生じ、カチオン基とアニオン基とが組み変わり、分子内に新たな動的共有結合(-S-S-)が形成されることで、双性イオン群(z3)が生成するものである。
この場合の外部刺激としては、例えば、光照射、酸化剤もしくは還元剤又は触媒の添加、加熱、電気的刺激、pH変化、ガス供給(ガスバブリング等)が挙げられる。

【0058】
前記一般式(RR2)における左方向への反応は、双性イオン群(z3)に、外部刺激が加えられて、ラジカル(X1C+-S・)(X2C+-S・)(・S-Y2A-)(・S-Y1A-)が生じ、カチオン基とアニオン基とが組み変わり、分子内に新たな動的共有結合(-S-S-)が形成されることで、双性イオン群(z2)が生成するものである。
この場合の外部刺激としては、例えば、光照射、酸化剤もしくは還元剤又は触媒の添加、加熱、電気的刺激、pH変化、ガス供給(ガスバブリング等)が挙げられる。

【0059】
すなわち、前記一般式(RR2)で表される反応は、可逆的なものである。
一般式(RR2)で表される化学平衡の反応系では、外部刺激により、反応系内の双性イオン群(z2)と双性イオン群(z3)との存在比率を変化させることで、特性を制御できる。

【0060】
(イオン液体)
上述した実施形態の有機塩は、イオン液体として好適に利用できる。
かかる実施形態の有機塩は、室温(例えば0~30℃)付近でも液体状態で存在するものであり、熱安定性、化学的安定性及びイオン伝導性が高く、不揮発性、不燃性等の特性を有している。
かかる実施形態の有機塩からなるイオン液体は、例えば、イオン液体を電気抵抗体として用いた可変抵抗器、イオン液体を抽出媒体としたバイオエタノール製造装置に好適に利用できる。

【0061】
(可変抵抗器、抵抗値の制御方法)
本実施形態の可変抵抗器は、上述した実施形態の有機塩からなるイオン液体を、電気抵抗体として用いたものであり、特には液体抵抗器として有用である。
従来の液体抵抗器においては、炭酸ナトリウム水溶液等を電気抵抗体とし、電極間の距離を変化させることにより、抵抗値を無段階に調整できる。
これに対し、本実施形態の可変抵抗器においては、上述した実施形態の有機塩(イオン液体)が電気抵抗体として用いられている。このため、当該有機塩に外部刺激を加えることで、当該イオン液体と、分子内に動的共有結合を有する双性イオンと、に可逆的に変化し、これに連動して導電率が変化する。本実施形態の可変抵抗器では、電気抵抗体それ自体の導電率が変化するため、従来のように、電極間の距離を変化させずとも抵抗値を変えられる。かかる本実施形態の可変抵抗器によれば、小型化が可能である。
加えて、外部刺激として、例えばCOガスの供給を採用すれば、当該イオン液体を含む系内へ供給するCOガスの分圧により、イオン液体と双性イオンとの存在比率を変えられて、導電率を調整することができる。すなわち、当該イオン液体を電気抵抗体として用いることにより抵抗値を制御することができる。

【0062】
(バイオエタノール製造装置)
本実施形態のバイオエタノール製造装置は、上述した実施形態の有機塩からなるイオン液体を、抽出媒体としている。
上記一般式(RR1)で表される化学平衡の反応系に電圧を印加した際、有機塩(IL)の存在比率が高い場合には、電位差に伴って移動するイオン(カチオン、アニオン)量が相対的に増加する。一方、双性イオン(z1)の存在比率が高い場合には、電位差に伴って移動するイオン(カチオン、アニオン)量が相対的に減少する。
例えば、一般式(RR1)で表される化学平衡の反応系に、電気透析法を組み合わせることで、特定成分の分離が可能となる。

【0063】
かかるバイオエタノール製造装置を適用したバイオエタノールを製造する方法として、例えば以下に示すバイオエタノールの製造方法が挙げられる。

【0064】
(バイオエタノールの製造方法)
本実施形態は、バイオマスからエタノールを製造するバイオエタノールの製造方法である。かかる本実施形態のバイオエタノールの製造方法は、下記の工程(I)と工程(II)と工程(III)とを有する。

【0065】
[工程(I)]
工程(I)では、バイオマスから得られ、不純物として無機塩を含むグルコース原料と、上述した実施形態の有機塩からなるイオン液体と、の混合液に、窒素ガス(Nガス)を供給しつつ電気透析を行うことによって、前記混合液から無機塩を除去する。

【0066】
前記グルコース原料は、例えばセルロースの加水分解により得られる。
前記グルコース原料と、上述した実施形態の有機塩からなるイオン液体と、を混合して混合液を調製し、当該混合液にNガスを供給する。Nガスの供給により、混合液は、イオン液体を構成するカチオンとアニオンとが反応して、動的共有結合を有する双性イオン(z1)の存在比率が高まる。この後、電気透析を行う。双性イオン(z1)の存在比率が高められた混合液に電圧を印加した際、電位差に伴って特に無機塩が移動し、膜を透過する。これにより、前記混合液から選択的に無機塩が除去される。

【0067】
[工程(II)]
工程(II)では、前記工程(I)の後、無機塩が除去された混合液に、二酸化炭素ガス(COガス)を供給しつつ電気透析を行うことにより、イオン液体とグルコースとを分離する。

【0068】
前記工程(I)の後、無機塩が除去された混合液にCOガスを供給する。COガスの供給により、混合液は、双性イオン(z1)内の動的共有結合が開裂してカチオンとアニオンとに解離し、有機塩(IL)の存在比率が高まる。この後、電気透析を行う。有機塩(IL)の存在比率が高められた混合液に電圧を印加した際、電位差に伴って特に有機塩(IL)塩のイオン(カチオン、アニオン)が移動し、膜を透過する。これにより、イオン液体とグルコースとを分離する。回収したイオン液体は、再利用が可能である。

【0069】
[工程(III)]
工程(III)では、前記工程(II)の後、分離したグルコースを発酵させて、バイオエタノールを得る。

【0070】
グルコースの発酵は、公知の発酵技術を用いて行うことができる。例えば、グルコースにエタノール発酵菌等を加えて発酵する。
エタノール発酵菌としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエ等のサッカロミセス属の酵母;シゾサッカロミセス・ポンベ、シゾサッカロミセス・ジャポニカス、シゾサッカロミセス・オクトスポラス等のシゾサッカロミセス属の酵母;KO11株等の大腸菌が挙げられる。
グルコースの発酵温度及び発酵時間は、使用するエタノール発酵菌等の種類に応じて適宜設定される。

【0071】
かかる本実施形態のバイオエタノールの製造方法によれば、上述した実施形態の有機塩からなるイオン液体を、抽出媒体として採用しているため、不純物である無機塩の除去、及び、イオン液体とグルコースとの分離を容易に行うことができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
<有機塩の製造>
(実施例1)
1-メチルイミダゾール(10.9g)と、3-ブロモプロピルアミン(30.6g)と、を80mLのテトラヒドロフランに溶解し、90℃で5時間撹拌した。テトラヒドロフランを留去した後、メタノール/酢酸エチルを用いて再結晶を行い、精製した。次に、イオン交換樹脂(製品名Amberlite IRN 78A)を用いることでBrイオンをOHイオンに交換し、この後、フタルアルデヒド酸を加えて混合することにより、下記化学式(IL-1)で表される有機塩(1)を得た。過剰に添加したフタルアルデヒド酸は、酸化アルミニウムによって除去した。
【実施例】
【0074】
【化10】
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【実施例】
【0075】
(実施例2)
実施例1における1-メチルイミダゾールをトリヘプチルホスフィンに変更し、また、「メタノール/酢酸エチルを用いた再結晶」を「ヘキサンを用いた洗浄」に変更した以外は、実施例1と同様の操作によって、下記化学式(IL-2)で表される有機塩(2)を得た。
【実施例】
【0076】
【化11】
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【実施例】
【0077】
(実施例3)
実施例1における1-メチルイミダゾールをトリヘキシルホスフィンに変更し、また、「メタノール/酢酸エチルを用いた再結晶」を「ヘキサンを用いた洗浄」に変更した以外は、実施例1と同様の操作によって、下記化学式(IL-3)で表される有機塩(3)を得た。
【実施例】
【0078】
【化12】
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【実施例】
【0079】
<可逆変化(1)>
実施例1の有機塩(1)を用いて以下に示す評価を行った。
【実施例】
【0080】
[pHに対する構造変化]
水に有機塩(1)を溶解して、濃度1質量%の有機塩水溶液(1)を調製した。この有機塩水溶液(1)を25℃に調整し、ここに水酸化ナトリウム又は酢酸を添加して、当該水溶液のpHを4から12まで変化させた。かかるpH範囲にある有機塩水溶液(1)を、H-NMR測定した。
【実施例】
【0081】
図1は、有機塩水溶液(1)についての化学平衡の反応式、及びH-NMR測定結果を示すスペクトルである。
図1において、水酸化ナトリウム添加により、有機塩水溶液(1)のpHが6.47からpH10.52へ変化するのに伴い、スペクトルに変化が認められた。有機塩(1)のアニオン部におけるホルミル基の水素原子(丸印)に由来する約9.7ppmのピークが小さくなり、化合物(z11)におけるイミンを構成する炭素原子に結合した水素原子(丸印)に由来する約8.2ppmのピークが大きくなっている。すなわち、pHが高くなるのに伴い、有機塩(1)が減少し、化合物(z11)が増加している。
【実施例】
【0082】
図2は、濃度1質量%の有機塩水溶液(1)のpHに対する、化合物(z11)濃度の変化を示す図である。
横軸は、25℃での有機塩水溶液(1)のpHを示している。縦軸は、化合物(z11)濃度(モル%)を示している。ここでの濃度は、有機塩(1)と化合物(z11)との合計に占める化合物(z11)の割合を意味する。
図2より、pHが高くなるに伴い、化合物(z11)濃度が高まり、また、pHが低くなるに伴い、有機塩(1)濃度が高まること、すなわち、可逆的な変化が起きていることが確認できる。
【実施例】
【0083】
[導電率の測定]
濃度1質量%の有機塩水溶液(1)に、COガスとNガスとを交互にバブリングさせながら供給しつつ、当該水溶液の導電率を測定(温度条件25℃)した。
【実施例】
【0084】
図3は、濃度1質量%の有機塩水溶液(1)に、COガスとNガスとを交互にバブリングさせながら供給した際の、当該水溶液の導電率の変化を示す図である。
横軸は、COガス又はNガスの供給時間(h)を示している。縦軸は、当該水溶液の導電率(mS/cm)を示している。
COガスを供給する(当該水溶液のpHが低下する)ことにより、当該水溶液の導電率は0.71mS/cmから4.70mS/cmまで高くなること;これに続けて、Nガスを供給する(当該水溶液の低下したpHが戻る)ことにより、当該水溶液の導電率は4.70mS/cmから0.79mS/cmまで低くなることが確認された。
続けて、COガスとNガスとを交互にバブリングさせながら供給する操作を2回(合計3回)繰り返したところ、1回目の供給操作と同様の導電率変化を示した。すなわち、可逆的な変化が起きていることが確認できる。
【実施例】
【0085】
<可逆変化(2)>
実施例2の有機塩(2)を用いて以下に示す評価を行った。
【実施例】
【0086】
[水との相溶性の評価-1]
水と有機塩(2)とを混合して、濃度20質量%の有機塩混合液(21)を調製した。
前記有機塩混合液(21)を25℃に調整(初期pHは7.7)し、ここに酢酸を添加し、次いで水酸化ナトリウムを順に添加した。
【実施例】
【0087】
図4は、有機塩(2)についての化学平衡の反応式、及びガラス瓶に収容された有機塩混合液(21)のpHに対する外観変化を示す写真である。
初期pH7.7の有機塩混合液(21)は、無色透明な上相と着色した下相との2相に分離していた。これに続けて酢酸が添加されたpH3.6の有機塩混合液(21)は、無色透明な1相であった。さらに続けて水酸化ナトリウムが添加されたpH7.2の有機塩混合液(21)は、無色透明な上相と着色した下相との2相に分離していた。
【実施例】
【0088】
酢酸及び水酸化ナトリウムを添加した際のそれぞれの混合液を、13C-NMR測定して、混合液中の有機塩(2)と化合物(z12)との存在比率を測定した。この測定結果を表1に示した。
【実施例】
【0089】
【表1】
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【実施例】
【0090】
表1において、無色透明な相に存在する有機塩(2)の割合は、有機塩混合液(21)のpHが7.7である場合に約34モル%であり、pHが3.6である場合に約81モル%と高くなり、pHが7.2である場合に約18モル%と低く変化していた。
この結果から、pH変化によって、混合液中の有機塩(2)と化合物(z12)との存在比率を制御できることが確認できる。
すなわち、実施例2の有機塩(2)によれば、外部刺激によって、1相及び2相の系を可逆的に調製できるため、特性の制御が可能である。
【実施例】
【0091】
[水との相溶性の評価-2]
水と有機塩(2)とを混合して、濃度20質量%の有機塩混合液(22)を調製した。
前記有機塩混合液(22)を30℃に調整(初期pHは8.3)し、ここにCOガスをバブリングさせながら供給し、次いでNガスをバブリングさせながら供給し、次いで、さらにCOガスをバブリングさせながら供給した。
【実施例】
【0092】
図5は、有機塩(2)についての化学平衡の反応式、及びガラス瓶に収容された有機塩混合液(22)に、COガスとNガスとを交互にバブリングさせながら供給した際の外観変化を示す写真である。
初期pH8.3の有機塩混合液(22)は、無色透明な上相と着色した下相との2相に分離していた。これに続けて、COガスをバブリングさせながら供給した有機塩混合液(22)は、pHが7.3となり、無色透明な1相であった。さらに続けて、Nガスをバブリングさせながら供給した有機塩混合液(22)は、pHが7.7となり、無色透明な上相と着色した下相との2相に分離した。次いで、さらにCOガスをバブリングさせながら供給した有機塩混合液(22)は、pHが7.1となり、無色透明な1相であった。
【実施例】
【0093】
COガス又はNガスを供給した際のそれぞれの混合液を、13C-NMR測定して、混合液中の有機塩(2)と化合物(z12)との存在比率を測定した。この測定結果を表2に示した。
【実施例】
【0094】
【表2】
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【実施例】
【0095】
表2において、無色透明な相に存在する有機塩(2)の割合は、有機塩混合液(21)が初期の場合(pH8.3)に24モル%であり、COガスを供給した場合(pH7.3)に62モル%と高くなり、次いでNガスを供給した場合(pH7.7)に約43モル%と低くなり、次いで、さらにCOガスを供給した場合(pH7.1)に62モル%と高くなるように、連続的に変化していた。
この結果から、COガス及びNガスの供給によって、混合液中の有機塩(2)と化合物(z12)との存在比率を制御できることが確認できる。
すなわち、実施例2の有機塩(2)においては、外部刺激としてCOガス及びNガスの供給によっても、1相及び2相の系を可逆的に調製できるため、特性の制御が可能である。
【実施例】
【0096】
<可逆変化(3)>
実施例3の有機塩(3)を用いて以下に示す評価を行った。
【実施例】
【0097】
[水との相溶性の評価-3]
水と有機塩(3)とを混合して、濃度0.5質量%の有機塩混合液(23)を調製した。
前記有機塩混合液(23)を22℃に調整し、ここにCOガスをバブリングさせながら供給しつつ、90℃まで徐々に加温した。
また、これとは別途、前記有機塩混合液(23)を22℃に調整し、ここにNガスをバブリングさせながら供給しつつ、90℃まで徐々に加温した。
【実施例】
【0098】
図6は、有機塩混合液(23)についての化学平衡の反応式、並びに、有機塩混合液(23)にCOガス又はNガスをバブリングさせながら供給しつつ液温を変化させた際の外観変化の状態、及び存在比率(モル比)「有機塩(3)/化合物(z13)」を示す図である。
各ガスを供給した有機塩混合液(23)の初期状態は、いずれも、無色透明な1相であった。
COガスを供給した有機塩混合液(23)は、液温に関係なく常に、無色透明な1相であった。
ガスを供給した有機塩混合液(23)は、42℃付近で1相から2相(無色透明な上相と着色した下相と)に外観が変化し、その後90℃付近で再び、無色透明な1相となった。すなわち、下限臨界溶液温度(LCST)が認められ、有機塩混合液(23)は可逆的な相分離挙動を示した。
前記のように、COガスを供給した場合と、Nガスを供給した場合と、で挙動が相違していた。
【実施例】
【0099】
COガスを供給した際の混合液を、13C-NMR測定して、混合液における無色透明な1相中の有機塩(3)と化合物(z13)との存在比率を測定した。
また、Nガスを供給した際の混合液を、13C-NMR測定して、無色透明な上相と着色した下相とに分離した2相のうち、無色透明な相中の有機塩(3)と化合物(z13)との存在比率(モル比)を測定した。
この測定結果を「有機塩(3)/化合物(z13)」として図6中に示した。
【実施例】
【0100】
図6において、有機塩混合液(23)にCOガスを供給した場合の存在比率(モル比)と、有機塩混合液(23)にNガスを供給した場合の存在比率(モル比)と、は大きく相違していた。特定の温度範囲で、Nガスを供給することにより、化合物(z13)の存在割合が高められ、系全体の疎水性が高くなっている。
すなわち、実施例3の有機塩(3)においては、外部刺激としてCOガス及びNガスの供給並びに加熱によって、系全体の親水性と疎水性とのバランスを制御できる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る有機塩は、イオン液体として好適なものである。
かかる有機塩からなるイオン液体は、当該イオン液体を電気抵抗体として用いた可変抵抗器、スイッチ、キャパシタ、当該イオン液体を抽出媒体としたバイオエタノール製造装置等の用途に利用が可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5