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明細書 :野菜自動収穫機

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-042545 (P2018-042545A)
公開日 平成30年3月22日(2018.3.22)
発明の名称または考案の名称 野菜自動収穫機
国際特許分類 A01D  45/28        (2006.01)
FI A01D 45/28
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2017-010341 (P2017-010341)
出願日 平成29年1月24日(2017.1.24)
新規性喪失の例外の表示 申請有り
優先権出願番号 2016173543
2016174343
優先日 平成28年9月6日(2016.9.6)
平成28年9月7日(2016.9.7)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】千田 有一
【氏名】山口 達也
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 2B075
Fターム 2B075AA10
2B075GA01
2B075GA05
要約 【課題】 根切り刃を土中における目標経路に合わせて移動させることにより、土中で根切り刃をスムーズに移動させることができ、ばらつきを抑えた根切りを可能にする野菜自動収穫機を提供する。
【解決手段】 本発明に係る野菜自動収穫機は、収穫機本体の進行方向の前部に、前記機体の進行方向に傾動駆動される傾動フレームと、該傾動フレームに昇降可能に支持され、下端部に根切り刃が取り付けられた昇降フレームとを備える野菜自動収穫機であって、前記傾動フレームの傾動角度を制御する角度制御機構と、前記昇降フレームの昇降位置を制御する高さ制御機構とにより、前記根切り刃の刃先が、上位置から下位置へ向けて円弧状に移動する経路1と、経路1の終点から次の経路1の始点へ鉛直上方に移動する経路2とを一周期の経路として周期移動することを特徴とする。
【選択図】 図5
特許請求の範囲 【請求項1】
収穫機本体の進行方向の前部に、前記機体の進行方向に傾動駆動される傾動フレームと、該傾動フレームに昇降可能に支持され、下端部に根切り刃が取り付けられた昇降フレームとを備える野菜自動収穫機であって、
前記傾動フレームの傾動角度を制御する角度制御機構と、前記昇降フレームの昇降位置を制御する高さ制御機構とにより、
前記根切り刃の刃先が、上位置から下位置へ向けて円弧状に移動する経路1と、経路1の終点から次の経路1の始点へ鉛直上方に移動する経路2とを一周期の経路として周期移動することを特徴とする野菜自動収穫機。
【請求項2】
前記機体の移動方向をxW軸方向、xW軸に鉛直方向をyW軸方向としたときの、前記根切り刃の刃先の座標(xW、yW)と、前記角度制御機構により制御する傾動フレームのアーム角度θ(t)と、前記高さ制御機構により制御するアーム長r(t)との関係を表す次式
【数1】
JP2018042545A_000017t.gif
に基づき、
前記経路1については、刃先の座標(xW、yW)として、
xW (t) = Xa0 - Ra cosθW (t)
yW (t) = Ya0 - Ra sinθW (t)
(ただし、θW
【数2】
JP2018042545A_000018t.gif
Xa0は経路1の円弧中心のx座標の初期値、Ya0は円弧中心のy座標の初期値、Raは円弧半径、xc(t)= Vc・t:Vcは機体の移動速度)
を代入して、経路1における制御目標値rref(t)、θref(t)を求め、
前記経路2については、刃先の座標(xW、yW)として、
xW (t) = Xa0
【数3】
JP2018042545A_000019t.gif
(ただし、Aは経路1の円弧深さ)
を代入して、経路2における制御目標値rref(t)、θref(t)を求め、
パラメータXa0、Ya0、Ra、Vc、Aを適宜設定して前記経路1と経路2について導出した制御目標値にしたがって、前記角度制御機構と高さ制御機構を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載の野菜自動収穫機。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は野菜自動収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ホウレンソウなどの軟弱野菜の収穫は手作業が主流であり収穫作業の機械化が期待されている。これに対して自動収穫装置がいくつか開発されているが広く普及するには至っていない(非特許文献1-3、特許文献1)。その原因の一つとして従来の収穫方法において収穫物の把持を伴う点が上げられる。軟弱野菜は非常に傷つきやすく、把持により葉を傷め商品価値を損なってしまう。現在、この問題を解決する収穫装置は存在しない。そこで我々の グループでは根を切るための根切り刃の位置と姿勢の制御が可能な機構を用いた把持を伴わないホウレンソウ収穫装置の開発を行っている(特許文献2、非特許文献4-7)。
この収穫装置では、地表面から一定の深さの土中に根切り刃を進行させ根切りを行う。そして根切り刃の後方に取り付けたコンベアにより、根切り直後の対象の重心下部を押し、コンベア側に倒すことで回収を行う。これにより把持を伴わない収穫が可能となる。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平11-308912号公報
【特許文献2】特開2014-166175号公報
【0004】

【非特許文献1】吉田智一,他,ホウレンソウ収穫技術の開発(第1報),農機誌,62,3(2000)149
【非特許文献2】小林由喜,他,簡易型ホウレンソウ収穫機の開発(第1報),農業機械学会誌,Vol.60、No.2(1998),pp.103-110
【非特許文献3】西澤准一,ホウレンソウなど軟弱野菜の加工向け専 用収穫機の開発と普及への取り組み,農林水産技術 研究ジャーナル,Vol.35,No.11(2012),pp.37-41
【非特許文献4】丸山寛智,他,生食用ホウレンソウ自動収穫機の開発,第12回システムインテグレーション部門講演会,pp,2100-2103(2011)
【非特許文献5】平野幸助,他,生食用ホウレンソウ自動収穫機の開発—回収・搬送装置の設計と検証—,ロボメッ ク・メカトロニクス講演会2012,Paper NO.1A1-G04(CD-ROM)
【非特許文献6】丸山寛智,他,ホウレンソウ自動収穫機における根切り刃動作の考察と位置制御,第13回SICEシステムインテグレーション部門大会,(2012)
【非特許文献7】平野幸助,他,軟弱野菜自動収穫機における根切り刃の2自由度制御機構の設計と制御,第56回自動制御連合講演会,(2013)
【非特許文献8】千田有一,受動的ハンドリングに基づくホウレンソウ自動収穫機の開発、精密工学会誌,Vol.81,No.9(2015)
【非特許文献9】藤澤彰宏.他,ホウレンソウ自動収穫機における土中での根切り刃運動による土の挙動解析,日本機械学会論文誌,Vol.81,No.832(2015)
【非特許文献10】畠山貴充,他,軟弱野菜自動収穫装置における土中での根切り刃の位置制御,SICE2016
【非特許文献11】Akihiro Fujisawa,et.al.,Motion Analysis of the Root-Cutting Blade for an Automatic Spinach Harvester,MOVIC2014,(2014)
【非特許文献12】栗栖正充,他,移動マニピュレータの軌道計画と動的制御,日本機械学会論文集,(1996),pp.242-248
【非特許文献13】大隈久,移動マニピュレータの制御,日本ロボット学会誌,Vol.13(1995),pp.904-907
【非特許文献14】Akihiro Fujisawa,et. al.,Optimzed trajectory planning a root-cutting blade for an automatic spinach harvester,Dynamics and Desing Confer- ence 2015.(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したホウレンソウの収穫装置では、収穫動作を行うために各機構に対し試行錯誤的に求められた制御目標値を用いている。ゆえに刃の移動する経路を厳密に指定しておらず、経路の検証を十分に行えていない。
一方、望ましい経路を指定し、経路に基づいた各機構の制御目標値を実機に適用することで経路のパラメータを具体的に評価できる。そこで本出願では、収穫に有利な条件の経路を設定し、現在の経路との比較を行い、的確な収穫動作を行うことを可能にする野菜の自動収穫機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る野菜自動収穫機は、収穫機本体の進行方向の前部に、前記機体の進行方向に傾動駆動される傾動フレームと、該傾動フレームに昇降可能に支持され、下端部に根切り刃が取り付けられた昇降フレームとを備える野菜自動収穫機であって、前記傾動フレームの傾動角度を制御する角度制御機構と、前記昇降フレームの昇降位置を制御する高さ制御機構とにより、前記根切り刃の刃先が、上位置から下位置へ向けて円弧状に移動する経路1と、経路1の終点から次の経路1の始点へ鉛直上方に移動する経路2とを一周期の経路として周期移動することを特徴とする。
また、 前記機体の移動方向をxW軸方向、xW軸に鉛直方向をyW軸方向としたときの、前記根切り刃の刃先の座標(xW、yW)と、前記角度制御機構により制御する傾動フレームのアーム角度θ(t)と、前記高さ制御機構により制御するアーム長r(t)との関係を表す次式
【数1】
JP2018042545A_000003t.gif
に基づき、
前記経路1については、刃先の座標(xW、yW)として、
xW (t) = Xa0 - Ra cosθW (t)
yW (t) = Ya0 - Ra sinθW (t)
(ただし、θWは
【数2】
JP2018042545A_000004t.gif
Xa0は経路1の円弧中心のx座標の初期値、Ya0は円弧中心のy座標の初期値、Raは円弧半径、xc(t)= Vc・t:Vcは機体の移動速度)
を代入して、経路1における制御目標値rref(t)、θref(t)を求め、
前記経路2については、刃先の座標(xW、yW)として、
xW (t) = Xa0
【数3】
JP2018042545A_000005t.gif
(ただし、Aは経路1の円弧深さ)
を代入して、経路2における制御目標値rref(t)、θref(t)を求め、
パラメータXa0、Ya0、Ra、Vc、Aを適宜設定して前記経路1と経路2について導出した制御目標値にしたがって、前記角度制御機構と高さ制御機構を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る野菜自動収穫機によれば、根切り長さのばらつきをなくし、野菜を確実に収穫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】野菜自動収穫機の外観写真である。
【図2】高さ制御機構の構成を示す説明図である。
【図3】角度制御機構の構成を示す説明図である。
【図4】角度制御機構の動作を示す説明図である。
【図5】野菜自動収穫機の収穫動作を示す説明図である。
【図6】根切り刃の角度を固定して並進移動する例を示す図である。
【図7】根切り刃を円弧状の経路として移動させる例を示す図である。
【図8】刃先経路を描く座標系を示す図である。
【図9】表1の値を用いて得られた経路のグラフである。
【図10】経路に対して刃の向きを接線方向に向けた状態を示す図である。
【図11】刃の向きを接線方向と異なる向きとした状態を示す図である。
【図12】円弧経路と刃を上方に移動させる経路とを備える提案経路を示す図である。
【図13】経路1のモデル図である。
【図14】y座標の初期値が負である場合のモデル図である。
【図15】クローラが移動するときのモデル図である。
【図16】経路2のモデル図である。
【図17】提案経路のx軸方向の目標軌道を示すグラフである。
【図18】提案経路のy軸方向の目標軌道を示すグラフである。
【図19】高さ制御機構の目標値を示すグラフである。
【図20】角度制御機構の目標値を示すグラフである。
【図21】刃先の経路を示すグラフである。
【図22】従来経路の非接線方向の変動量を示すグラフである。
【図23】提案経路の非接線方向の変動量を示すグラフである。
【図24】従来経路での、根切り刃が土中を進行する場合の土の挙動のシミュレーション結果を示す図である。
【図25】提案経路での、根切り刃が土中を進行する場合の土の挙動のシミュレーション結果を示す図である。
【図26】高さ制御機構の目標値と実験値を示すグラフである。
【図27】角度制御機構の目標値と実験値を示すグラフである。
【図28】x座標とy座標における実機の軌道と目標軌道とを示すグラフである。
【図29】xy平面における実機と目標軌道との経路を示すグラフである。
【図30】従来経路と提案経路についてのホウレンソウの根の長さのヒストグラムである。
【図31】刃を土に侵入させていない場合における従来経路と提案経路でのモータトルクを示すグラフである。
【図32】刃を土に侵入させた場合における従来経路と提案経路でのモータトルクを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(収穫機の概要)
本発明に係る収穫機を図1に示す。収穫機は根切りを行う根切り刃10、根切り刃10の高さ方向の位置制御を行う高さ制御機構12、根切り刃10の姿勢制御を行う角度制御機構16、ホウ レンソウの回収、搬送を行う搬送機構18、収穫機の移動を行うクローラ20、さらに地表面位置を検出するレーザーセンサ22などによって構成されている。
(高さ制御機構)
高さ制御機構12を図2に示す。高さ制御機構はモータ12a、送りねじ12b、アーム12c、リニアポテンショメータ12dによって構成されている。アーム12cの先端には根切り刃10が取り付けられており、モータの回転運動を送りねじにより直動運動に変換しアーム12cの位置を調節することで図2に示すように根切り刃10を上下させる。

【0010】
(角度制御機構)
角度制御機構16を図3に示す。角度制御機構16はモータ16a、ラック・ピニオン16b、エンコーダ16cによって構成されている。並列に設置した2台のモータ16、16により駆動され、モータの回転運動をラック・ピニオン16bにより直動運動に変換し、高さ制御機構部12と連結されたラックが移動する。これにより高さ制御機構部12を回転軸14を中心として角度を調節することができ、図4のように動作させることが可能となる。

【0011】
(収穫動作)
図5に収穫動作の概念図を示す。地表面下において任意位置での根切りを行うため、レーザーセンサにより地表面までの距離を測定し、高さ制御機構12によりアーム長を調整することで根切り刃10の位置を制御する。また、刃の地表面露出を防ぐために刃の角度を下向きにした状態でクローラを進行させ、鉛直下方向に力を向ける必要がある(非特許文献8-10)。その際、根切り刃の角度と位置を固定した図6の並進経路を与えた場合、根切り刃の前方に土を押しやってしまい収穫が困難になる場合がある。これに対し図7のような円弧経路を与えた 場合、前方に土を押しやりにくく収穫に有利であることが実験により確認されている。

【0012】
A:刃先経路
(従来経路)
刃先経路を描く座標系を図8に示す座標系(xW、yW)とする。収穫装置において刃先の座標はクローラ移動距離 xc(t)=Vc t、アーム角度 θ(t)、そしてアーム長 r(t)によって決定され、θ(t)、r(t)の値がそれぞれ角度制御機構、高さ制御機構によって操作される。
r(t)、θ(t)、xc(t)から刃先座標(xW、yW)は以下の式で表せる。
xW(t) = r(t)・sinθ(t) + xc(t) (1)
yW(t) = r(t)・cosθ(t) (2)
従来用いていた経路を「従来経路」と表す。
角度制御機構における制御目標値のθ(t)と、高さ制御機構における制御目標値r(t)は以下の式に基づき入力する。
θ(t) = α sin 2πf t + θ0 (3)
r(t) = lc (Const。) (4)
ただし、α[deg]、f[Hz]は正弦波入力の振幅と周波数、θ0[deg]は正弦波入力の入力中心、t[s]は時間である。収穫においてr(t)は地表面位置によって変化するが、ここでは簡単化するため lc [mm] の一定値とする。式(1)、(2)と表1に示す値を用いて得られた経路を図9に示す。従来経路における制御目標値は試行錯誤的に得られた値であり、根切り刃の通過体積やそれに伴う土の挙動などの評価は十分ではない。そこで本明細書では収穫に有利となる経路を改めて導出する。
【表1】
JP2018042545A_000006t.gif

【0013】
(望ましい経路)
藤澤らの解析結果によれば、根切り刃が進行する際に前方に押しのける土の量が少ないほどよりスムーズに収穫が行えることが判明している(非特許文献11)。例えば、図10のように経路に対し刃の向きを接線方向に向けて進行させた場合と、図11のように刃の向きが進行方向と異なる場合では、図10のように円弧経路に対して刃の向きを接線方向に向けることで押しのける土の量が少なくなる。本明細書では従来の円弧経路を基本的な形状とし、刃先の位置を従来の円弧経路に追従させつつ、刃の進行方向については刃先の向きを円弧経路の接線方向に常に向ける刃先経路を望ましい経路とする。そのため図12に示す経路を提案経路とする。すなわち、前述した円弧経路である「経路1」に加え、根切り刃位置を上方に移動させる「経路2」の2つの経路によって一周期分の経路を生成する。経路2は、根切り刃を初期位置に復帰させるための経路である。生成された経路を本明細書では「提案経路」と称する。

【0014】
B:提案経路の生成
(収穫装置における座標指定)
図8に示す座標系(xW、yW)において目標とする経路を根切り刃が描くためには、適切な制御目標値を各機構に対し与え、経路に対応した刃先の座標と姿勢を指定する必要がある。この座標系において角度機構回転軸は常にxW軸上を移動し、クローラはxW軸の正方向にのみ一定速度で移動する。そのためクローラ移動距離を任意に指定することは出来ず、座標は時間に依存して変化する。また、根切り刃の姿勢はアームの角度を変化させることで与えており、その変化に伴い、刃先の座標も変化するため座標と姿勢を独立して指定することは出来ない。これらの制約によって根切り刃に対して任意の座標と姿勢を与えることが困難であり、制約を考慮した経路設定が必要である。本明細書では制約を考慮した幾何学考察により図式的に経路を設定する。次にその概要を述べる。

【0015】
(座標設定方法の概要)
収穫装置はクローラによって移動する台車の上にアーム機構が取り付けられた移動アームである。移動アームによる経路計画はこれまでに研究されており、冗長性を有したアームを用いて行われるのが一般的である(非特許文献12、13)。
しかし我々の収穫装置は冗長性を有しておらず、座標と姿勢を指定するとアーム長などの値は一意に決まる。また、クローラは一定速度で直進するのみであり、後退することはないので、その移動変位xc(t)は単調に増加する制約をもつ。この制約が拘束条件となるため、経路計画に考慮する必要が有る。そこで本明細書では収穫装置の特性を利用し、幾何学考察により経路設定を行う。設定においてクローラ移動変位 xc(t)が観測可能であることから、提案経路と対応した座標と姿勢を幾何学的な関係を用いてxc(t)の関数として設定する。これによりクローラの位置を考慮した刃先座標を得ることでθ(t)、r(t)の値を導出することが出来る。

【0016】
(経路1の刃先座標式導出)
経路1の幾何モデルを図13に示す。α、β、γはそれ ぞれ円弧経路の回転中心、角度機構の回転軸、根切り刃先端である。このとき根切り刃はアームに対して直角に取り付けられており、刃先はyW軸と一致しているとする。経路1において刃先の向きが円弧に対し接線方向となる条件はこの三点が同一直線上に配置されることであるため、その条件を満たす設計パラメータの条件を導く。ここで、経路1における設計パラメータは円弧中心のy座標 Ya0、刃先の初期y座標YW0、円弧深さAの三つである。まず、YW0について述べる。角度機構の回転軸であるβは常にxW軸上を動くことから、刃先を地表面に向けるためには刃先のy座標を負に設定しなければならない。そこでYW0の値は負に設定する必要がある。次に、Ya0について述べる。Ya0を負または正と取ることは原理的には可能であるが、α、β、γの三点を同一直線上に取るという拘束条件から、Ya0は正としなければならない。これを示すため、図14に示すYa0が負であった場合のモデルを考える。この場合βがxW軸の正方向に進むとγはxW軸負方向に進まなければα、β、γの三点が同一直線上にあるという条件を満たすことが出来ず、刃先が望ましい経路を描くことが出来ない。したがってYa0の値は 正でなければならないことが分かる。また、AはYW0の値から経路を描く幅であるため、YW0を基準として 負値で表すものとすると、円弧経路を描くための必要条件は次のようにまとめられる。
Ya0 > 0 (5)
YW0 < 0 (6)
A < 0 (7)
α、β、γを同一直線上に配置するという条件と上記の条件を満たす設計パラメータにより円弧半径Ra、円弧中心のx座標Xa0、回転軸のx座標Xc0の三つのパラメータが一意に決定され、以下の式で表すことが出来る。
【数4】
JP2018042545A_000007t.gif
これらのパラメータが経路1における初期座標である。
クローラが移動したときのモデルを図15に示す。XW、YWは刃先の座標であり、θW(t)はアーム角度である。クローラ移動変位xc(t)はクローラ移動速度Vcおよび時間tより
xc(t) = Vc・t (11)
と表せる。さらに、xc(t)、Xa0、Xc0、Ya0よりアーム角度θW(t)は
【数5】
JP2018042545A_000008t.gif
となる。そして円弧中心と刃先の距離が常にRaであることから、θW(t)とXa0、Ya0を用いて刃先の座標を次式で表すことが出来る。
xW (t) = Xa0 - Ra cosθW (t) (13)
yW (t) = Ya0 - Ra sinθW (t) (14)
刃先はこの二つの式に従い経路を描く。

【0017】
(経路2の刃先座標式導出)
経路2の幾何学モデルを図16に示す。経路2は経路1の終点から次の経路1の始点へと移動する区間である。そのため、経路2において刃先のyW座標は位置YW0 + A から位置 YW0に移動する必要がある。このとき、YW0 + AからYW0に移動する速度には自由度がある。そこでXc0を設計パラメータとし、YW0 + Aから YW0への移動の間にクローラが距離Xc0だけ移動すると仮定し、刃先のy座標を以下の式で表す。
【数6】
JP2018042545A_000009t.gif
これによりクローラのXc0到達に合わせ刃先がYW0に到達する。一方、アームを鉛直に引き上げることを想定すれば、刃先のx座標は経路2において変化せず、その刃先のx座標は
xW (t) = Xa0 (16)
と表せる。以上より経路2において刃先は式(16)、(15)に従い移動するものと設定する。

【0018】
C:目標値導出
図13に示す幾何学モデルより逆問題を解くことで、 制御目標値r(t)とθ(t)と刃先座標(xW、yW)の関係は次式で表せる。
【数7】
JP2018042545A_000010t.gif
この二つの式に式(13)、式(14)、式(16)、式(15)として導出した刃先座標を代入し制御目標値を得る。

【0019】
D:シミュレーションによる経路の比較
(経路設定)
表2のようにパラメータを設定し、提案経路のシミュレーションを行った。表2のパラメータは後述する実機実験において機構の追従性が良かったものを用いた。提案経路におけるx軸方向目標軌道とy軸方向目標軌道を図17、図18に示す。また、経路より求められた高さ制御機構目標値rrefと角度制御機構目標値θrefの値を図19と図20に示す。さらにrrefとθrefの値から式(13)~(16)を用いて得られた刃先の経路を図21に示す。これより刃先の経路は目標の円弧経路を描いていることが確認できる。図9の従来経路と比べ提案経路はy座標方向の変化が大きく、またθrefが初期値から0[deg]となるまでのx方向の移動距離は127[mm]程長く、移動速度は 30%ほど遅くなっている。一周期の時間は従来経路が2.85[s]であるのに対し、提案経路は4.07[s]であり、提案経路における一周期の時間が1.22[s]長い。
【表2】
JP2018042545A_000011t.gif

【0020】
(非接線方向への移動量の評価)
円弧経路部における根切り刃の非接線方向に対する移動方向への移動量の評価を行う。アーム長の一階微分、アーム角度、クローラ速度を式(19)(非特許文献14)に用いることで非接線方向への速度Vby(t)を表すことが出来る。従来経路と提案経路における変動量を表したものが図22と図23である。
従来経路においてはほとんどの区間で非接線方向に対する移動方向への変動をともなっている。それに対し目標経路における円弧経路部ではVby(t)が常に0であり、接線方向に刃が向いていることが確認できる。

【0021】
(投影体積の評価)
角度が初期値から0[deg]となるまでの根切り刃が通過する体積の比較を行った。各経路により移動する 距離が異なるため単位長さ当たりの投影体積を表3に示す。その結果、提案経路は従来経路より若干小さく、有利であることが確認できた。これより、提案経路による性能は従来経路と同等以上となることが期待できる。
【表3】
JP2018042545A_000012t.gif

【0022】
(DEM解析の結果)
DEMによって各経路における、根切り刃が土中を進 行した場合の土の挙動のシミュレーションを行った。各経路の解析結果を図24、図25に示す。土の境界に着目すると補助線s-tの鉛直軸の傾きは従来経路、提案経路それぞれφc = 16.51[deg]、φp = 17.24[deg] であり、提案経路の方が若干不利であるものの、その差はほとんど見られなかった。土の傾きは前方へ押しやる土の量を評価する指標であるため、各経路において押しやる土の量にはほとんど差がないと考えられる。

【0023】
E:実機実験による評価
(実機実験におけるパラメータ補正)
刃先経路は地面に対し座標系(xW 、yW)を設定し描いている。この時、座標系のxW軸は地表面と平行であり、また角度制御機構回転軸はxW軸上を移動するものと仮定している。しかし、実際の収穫装置は実験中にピッチ角が揺動するため、地表面に対する角度が変化し、回転軸はxW 軸上から逸脱し、yW方向にも変動する。したがって、実機実験においては地表面に対する角度とyW方向の変動に対し補正を行わなければ地面に対し、設定した経路を描くことはできない。そこで 収穫装置が地表面と平行を保ち変動したと仮定し、角度制御機構回転軸のyW方向の変動に対してのみ補正を行ったが、本明細書ではその補正方法の詳細は省略する。

【0024】
(実験条件)
実験はクローラ速度を一速(約60[mm/s])に設定し、三列並んだホウレンソウの列を約5[m]収穫した。経路のパラメータは、従来経路では地表面から40[mm]下の位置が最下点となる状態で行った。収穫動作の項で述べたアーム長の調整を行っているため、アーム長のみパラメータがシミュレーションと異なり、収穫装置の上下の変動に伴い変化する。提案経路では、設定パラメータはシミュレーションに用いたもの同じであり、上述した補正を加えた上で従来経路と同じく地表面から40[mm]下の位置を最下点としている。ここで、各経路を用いた場合の予想される根の長さの平均および標準偏差を表4に示す。また同じ実験日、圃場にて実験を行い、出来る限り経路以外の条件を揃えて実験を行った。
【表4】
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【0025】
(目標値追従性)
提案経路において生成した目標値に各機構が追従しているか検証した。各機構の目標値と実験値を図26、図27に示す。また、目標値と実験値との差をとり、その平均値、標準偏差を表5にまとめた。図26において、角度制御機構は常に0.35[s]の遅れを伴っている。目標値と実験値との差の平均がほぼ 0[deg]であり、偏差が1.2[deg]ほどであることから、角度は目標値から±1.2[deg]ほどの差を伴って追従していることが確認できる。一方、高さ制御機構においては目標値への追従 遅れは見られなった。平均がほぼ 0[mm]であり偏差が約1.3[mm]ほどであることから刃の位置は目標値から約1.3[mm]の差を伴っている。
【表5】
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【0026】
角度と位置の目標値からの差が経路に及ぼす影響について述べる。角度と位置のデータから刃先の座標を求め、提案経路との比較を行った。図28にx座標とy座標における実機の軌道と目標軌道との比較を示し、図29にxy平面における経路との比較を示す。またx座標、y座標において目標軌道との差をとり、その平均値、標準偏差を表6にまとめた。x座標においては実験値は目標値から 11.3[mm]程の偏差を伴っている。角度の偏差から求められるx座標の偏差の値11.3[mm]と等しいことから、角度の偏差による影響が大きいと考えられる。y座標においては平均値が1.3[mm]であることから、実験値は目標値より1.3[mm]深くなる傾向がある。得られた実験値より、式(13)~(16)を用いて刃先経路を計算しその結果を図29に示す。経路は大きく外れることなく、おおよそ目標とする経路を描けていることが確認できた。
【表6】
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【0027】
(収穫性能の評価)
提案経路においてホウレンソウの回収は従来経路と比較しホウレンソウの滞留といった回収に不利な状況などは見られず、従来通り成功裏に回収を行えた。

【0028】
(根切り位置の比較)
ホウレンソウの根の長さのヒストグラムを図30に示し、ホウレンソウの総数、根の長さの平均値と標準偏差を表7に示す。根の長さの標準偏差において経路の違いによる特徴が見られた。従来経路において想定した値と実験結果とは10[mm]以上差があったが、提案経路では想定した値との差は2[mm]程であり、また従来経路より提案経路がより偏差が小さいことが分かる。この結果の原因として根切り刃の移動速度の影響が考えられる。すなわち、根切り刃の移動速度は提案経路では従来経路より30%程遅くなっており、ゆっくり動かすことによって土中の根の位置が変動しにくくなっているのではないかと考えられる。
【表7】
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【0029】
(モータトルクの比較)
従来経路と提案経路の収穫実験において根切り刃が前方から受ける抵抗を評価するために角度制御機構モー タへの指令トルクを評価した。刃を土に侵入させていない場合のモータへの指令トルクを図31に、刃を土に侵入させた場合のモータへの指令トルクを図32に示す。図31、32に示したモータトルクにおいて土に刃を侵入させていない場合と侵入させた場合のRMS値を比較すると、従来経路では148.1[Nm]、135.8[Nm]であり、提案経路では37.5[Nm]、30.4[Nm]であった。どちらの経路においても刃の侵入の有無ではほとんど値に差はなく、土に刃を入れた場合でも土からの抵抗力をあまり受けていないことが分かる。土を押しのける 量が少ないほど受ける抵抗力が小さいと考えられ、ど ちらの経路においても押しのける量が小さいことがシ ミュレーションにより確認されているので、この実験結果は妥当であるといえる。
また、この結果からモータトルクはほぼ機構の駆動に要されていることが分かるが、その大きさに着目すると、駆動力に大きな違いが認められる。すなわち、従来経路に対して、提案経路は50%以上小さいトルクで駆動していることが確認できる。提案経路は従来経路より角度制御機構の駆動力を低減しつつ、収穫性能としてはほぼ同等、もしくはそれ以上であることから、従来経路よりも有利な経路であると確認できた。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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