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明細書 :能動マニピュレータ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-140463 (P2018-140463A)
公開日 平成30年9月13日(2018.9.13)
発明の名称または考案の名称 能動マニピュレータ装置
国際特許分類 B25J  19/00        (2006.01)
B25J  17/00        (2006.01)
FI B25J 19/00 A
B25J 17/00 A
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2017-036078 (P2017-036078)
出願日 平成29年2月28日(2017.2.28)
発明者または考案者 【氏名】井出 翔一郎
【氏名】西川 敦
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 3C707
Fターム 3C707CX01
3C707ES07
3C707HS02
3C707HS21
3C707HT25
3C707WA14
要約 【課題】繊維状アクチュエータを用いて大きな回動角度が得られる能動マニピュレータ装置を提供する。
【解決手段】円弧状の接触部22b、24bをそれぞれ備える第1の部材22および第2の部材24と、それぞれの接触部22b、24bの円弧の中心軸間に配置され、接触部22b、24bを対向して当接させながら、第1の部材22と第2の部材24を相互に回動可能に支持するキャリア26と、キャリア26に固定され、第1の部材22の軸と同芯に設けられたプーリ28と、プーリ28と連繋して設けられ、通電を制御することにより伸縮する繊維状アクチュエータ30a、30bとを備えることを特徴とする。
【選択図】図8
特許請求の範囲 【請求項1】
円弧状の接触部をそれぞれ備える第1の部材および第2の部材と、
前記それぞれの接触部の円弧の中心軸間に配置され、前記接触部を対向して当接させながら、前記第1の部材と第2の部材を相互に回動可能に支持するキャリアと、
前記キャリアに固定され、第1の部材の軸と同芯に設けられたプーリと、
前記プーリに連繋して設けられ、加熱・冷却により伸縮駆動される熱駆動型のアクチュエータとを備えることを特徴とする能動マニピュレータ装置。
【請求項2】
円弧状の接触部をそれぞれ備える第1の部材および第2の部材と、
前記それぞれの接触部の円弧の中心軸間に配置され、前記接触部を対向して当接させながら、前記第1の部材と第2の部材を相互に回動可能に支持するキャリアと、
前記キャリアに固定され、第1の部材の軸と同芯に設けられたプーリと、
前記プーリに連繋して設けられ、通電を制御することにより伸縮駆動される通電型のアクチュエータとを備えることを特徴とする能動マニピュレータ装置。
【請求項3】
前記熱駆動型のアクチュエータまたは通電型のアクチュエータとして、導電性の繊維状アクチュエータを備えることを特徴とする請求項1または2記載の能動マニピュレータ装置。
【請求項4】
前記接触部が、ギヤ部として形成されている請求項1~3のいずれか一項記載の能動マニピュレータ装置。
【請求項5】
前記第1の部材が円形ギヤであり、前記第2の部材が円形ギヤである請求項4記載の能動マニピュレータ装置。
【請求項6】
前記第1の部材が基板の一端側に円弧状のギヤ部を設けたものであり、前記第2の部材が基板の一端側に円弧状のギヤ部を設けたものである請求項4記載の能動マニピュレータ装置。
【請求項7】
前記プーリを介して、伸縮力が拮抗する配置に一対の熱駆動型のアクチュエータあるいは通電型のアクチュエータが設けられている請求項1~6のいずれか一項記載の能動マニピュレータ装置。
【請求項8】
前記第1の部材と前記第2の部材のそれぞれ単体を組み合わせた駆動ユニットであり、
一対の前記熱駆動型のアクチュエータまたは通電型のアクチュエータが、前記第1の部材の基板に取り付けられている請求項6記載の能動マニピュレータ装置。
【請求項9】
前記駆動ユニットが複数個連結された多関節型に形成され、
隣接する一方の駆動ユニットの基板と他方の駆動ユニットの基板とが、基板の向きを一致させた直列形または基板の向きを交差させた交差形として連結されている請求項8記載の能動マニピュレータ装置。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は繊維状アクチュエータを駆動源として使用する能動マニピュレータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、合成繊維をコイル状にツイストしたSCP(super-coiled polymer)アクチュエータ(繊維状アクチュエータ)や形状記憶合金を用いたSMA(shape memory alloy)アクチュエータに代表される収縮型高トルクアクチュエータが開発されている。SCPアクチュエータは合成繊維をコイル状にツイストしたもので、コイル(繊維)を加熱することにより収縮し、冷やすと元の長さに復帰する特性を有する。このようなアクチュエータは高い出力重量比と応答性を有しており、合成繊維であるため低コストで作製することができ、低コストロボットに用いられるアクチュエータとして応用されつつある(非特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Michael C. Yip and G¨unter Niemeyer, “High-PerformanceRobotic Muscles from Conductive Nylon Sewing Thread”, Proceedings of IEEE International Conference on Robotics and Automation, (2015), pp.2313-2318.
【非特許文献2】Yonas Tadesse, Lianjun Wu and Lokesh K. Saharan,“Musculoskeletal System for Bio-inspired Robotic Systems”,FOCUS ON DYNAMIC SYSTEMS & CONTROL,(2016), pp.11-16.
【非特許文献3】Lokesh Saharan and Yonas Tadesse, “Robotic Hand with Locking Mechanism Using TCP Muscles for Applications in Prosthetic Hand and Humanoids”, Proceedings of SPIE, Vol. 9797(2016), p.97970V.
【非特許文献4】Lianjun Wu, Monica Jung de Andrade, Tarang Brahme, Yonas Tadesse and Ray H. Baughman, “A reconfigurable robot with tensegrity structure using nylon artificial muscles”, Proceedings of SPIE, Vol. 9799(2016), p.97993K.
【0004】
上述したSCPアクチュエータは、加熱すると長さ方向に収縮し、冷却すると長さ方向に伸長して元の状態に復帰する、いわゆる熱駆動型のアクチュエータである。熱駆動型のアクチュエータとしては、導電性ナイロン繊維をツイストしてコイル状に形成したものが知られている。導電性の繊維状アクチュエータの両端間に電圧を印加すると、ジュール熱により繊維状アクチュエータが加熱されて収縮し、電圧印加を解除すると繊維状アクチュエータは元の状態に復帰する。このように、導電性の繊維状アクチュエータは、両端間に印加する電圧をON-OFF制御することにより、長さ方向に伸縮するアクチュエータとして使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱駆動型として作用する繊維状アクチュエータの収縮率は10~20%程度であり、プーリやピンを用いた回転関節機構では関節を十分に駆動させることができない。
また、繊維状アクチュエータを加熱して得られるアクチュエータ単体の発生力は1N程度であるため、ロボットの関節機構に実装するような場合には、大きな発生力を得るためにアクチュエータを集積する必要がある。しかしながら、繊維状アクチュエータを集積するとアクチュエータの収縮率が単体で使用した場合よりもさらに低下するため、長いアクチュエータを使用しなければならない。
本発明は、加熱・冷却を制御することにより伸縮駆動される熱駆動型の繊維状アクチュエータを利用して大きな回動角度を得ることを可能とし、ロボット装置等の種々の用途に好適に利用することができる能動マニピュレータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る能動マニピュレータ装置は、円弧状の接触部をそれぞれ備える第1の部材および第2の部材と、前記それぞれの接触部の円弧の中心軸間に配置され、前記接触部を対向して当接させながら、前記第1の部材と第2の部材を相互に回動可能に支持するキャリアと、前記キャリアに固定され、第1の部材の軸と同芯に設けられたプーリと、前記プーリに連繋して設けられ、加熱・冷却により伸縮駆動される熱駆動型のアクチュエータとを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る能動マニピュレータ装置としては、加熱・冷却により伸縮駆動される熱駆動型のアクチュエータと同様に、通電により伸縮駆動される通電型のアクチュエータを使用することができる。
【0007】
熱駆動型のアクチュエータは、加熱・冷却作用にともなって伸縮するように構成(たとえば繊維をコイル状にツイストする)されたものであり機能部分(可動部分:伸縮部分)の加熱・冷却を制御することにより伸縮作用を制御することができる。機能部分を加熱・冷却する方法は、ヒータ等により加熱するといった適宜方法を利用することができるが、通電を利用して加熱・冷却する方法が有効であり、とくに導電性を付与した繊維状のアクチュエータは、その両端に電極を接続して通電をON-OFF制御することにより、ジュール熱の発生を制御することができ、容易に加熱・冷却作用をすることができるという利点がある。
また、通電を制御することにより伸縮駆動される通電型のアクチュエータとしては、加熱・冷却により伸縮駆動されるアクチュエータが有効であり、導電性を付与した繊維状のアクチュエータが好適に利用できる。
【0008】
なお、前記接触部は、ギヤ部として形成することにより第1の部材と第2の部材とが確実に係合し、安定した回動動作が可能になる。
また、前記第1の部材が円形ギヤ、前記第2の部材が円形ギヤとして構成することもできるし、前記第1の部材が基板の一端側に円弧状のギヤ部を設けたもの、前記第2の部材が基板の一端側に円弧状のギヤ部を設けたものとして構成することもできる。
また、前記熱駆動型または通電型のアクチュエータを設ける場合には、前記プーリを介して、伸縮力が拮抗する配置に一対の熱駆動型のアクチュエータあるいは通電型のアクチュエータを設けることにより、部材の回動動作が安定し回動動作の精度を向上させることができる。
【0009】
また、前記第1の部材と前記第2の部材のそれぞれの単体を組み合わせ、前記一対の熱駆動型または通電型のアクチュエータが前記第1の部材の基板に取り付けられた構成を備える駆動ユニットとして構成された能動マニピュレータ装置は、ロボット装置等を構成する際の基本ユニットとして好適に利用することができる。
また、前記駆動ユニットが複数個連結された多関節型に形成され、隣接する一方の駆動ユニットの基板と他方の駆動ユニットの基板とが、基板の向きを一致させた直列形または基板の向きを交差させた交差形として連結された能動マニピュレータ装置は、多関節型の能動マニピュレータ装置として好適に利用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る能動マニピュレータ装置は、収縮率が小さい繊維状アクチュエータを使用して大きな回動角度が得られる関節機構(屈曲機構)として提供することができ、ロボット等に小型で容易に使用することができる装置として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】能動マニピュレータ装置の基本構成とその作用を示す図である。
【図2】プーリの半径および、ギヤの半径比と、目標関節角度を達成するための繊維状アクチュエータの収縮量との関係を示すグラフである。
【図3】試作した能動マニピュレータ装置の外観写真である。
【図4】実験装置の外観写真である。
【図5】実験装置のブロック図である。
【図6】各試行ごとの定常状態時の回転角度θと関節角度qの値を示すグラフである。
【図7】3試行目における回転角度θと関節角度qの挙動を示すグラフである。
【図8】駆動ユニットの構成と作用を示す斜視図である。
【図9】駆動ユニットを2個連結した能動マニピュレータ装置の斜視図である。
【図10】駆動ユニットを3個連結した能動マニピュレータ装置の斜視図である。
【図11】駆動ユニットを用いて構成した歩行ロボットの斜視図である。
【図12】駆動ユニットを用いて構成した把持型のロボットの斜視図である。
【図13】駆動ユニットを用いて構成した内視鏡ロボットの斜視図である。
【図14】内視鏡ロボットの使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(能動マニピュレータ装置の構成例)
本発明に係る能動マニピュレータ装置においては、収縮率が小さな繊維状アクチュエータを利用して大きな回動角度を得ることを可能にするため、関節部分(屈曲部分)の機構として、転動関節機構を採用する。
図1は能動マニピュレータ装置の基本となる構成を示す。この能動マニピュレータ装置では、太陽ギヤ10と遊星ギヤ12とがキャリア14を介して中心軸間で相互に連繋して支持され、太陽ギヤ10と遊星ギヤ12とが歯合しながら、太陽ギヤ10の周囲を遊星ギヤ12が自在に転動する構成となっている。
この例では、太陽ギヤ10が本発明の第1の部材に相当し、遊星ギヤ12が第2の部材に相当する。

【0013】
太陽ギヤ10の中心には同芯状にプーリ16が軸支され、プーリ16の軸16aとキャリア14とは連結されている。すなわち、プーリ16が回動すると、キャリア14はプーリ16とともに軸16aを支点として回動する。
プーリ16には繊維状アクチュエータ18が掛け渡され、繊維状アクチュエータ18が伸縮することにより、プーリ16が軸16aを中心として回動し、キャリア14を介してプーリ16とともに遊星ギヤ14が回動する(太陽ギヤ10の周上を遊星ギヤ12が転動する)。

【0014】
遊星ギヤ12にはアーム19が連結され、遊星ギヤ12が太陽ギヤ10上を転動することにより、遊星ギヤ12とともにアーム19が回動する。
図1では、繊維状アクチュエータ18が収縮することにより、太陽ギヤ10の周上を遊星ギヤ12が(右方向に)回動し、アーム19が上位置から右方位置に回動する作用を示す。

【0015】
なお、繊維状アクチュエータは、加熱することで長さ方向に収縮し、冷却すると長さ方向に伸長して元の状態に復帰する特性を備えるものであり、導電性ナイロン繊維をツイストしてコイル状に形成したものが知られている。
導電性の繊維状アクチュエータの両端間に電圧を印加すると、ジュール熱により繊維状アクチュエータが加熱されて収縮し、電圧印加を解除すると繊維状アクチュエータは元の長さに復帰する。このように、導電性の繊維状アクチュエータは、両端間に印加する電圧をON-OFF制御することにより、長さ方向に伸縮するアクチュエータとして使用することができる。実験では、繊維状アクチュエータとして導電性ナイロン繊維を使用したが、繊維状アクチュエータの素材および形態が限定されるものではない。

【0016】
(関節角度の設定)
図1に示す能動マニピュレータ装置の関節角度は、遊星ギヤ12が太陽ギヤ10上を転動したときにおける太陽ギヤ10の中心線と遊星ギヤ12の中心線とのなす角q[rad]である。プーリ16およびキャリア14の回転角度をθ[rad]とすると、関節角度qとプーリ16およびキャリア14の回転角度θとの幾何学的関係は以下の式で表される。
q = (1 + rsg/rpg)θ (1)
ここで、rsg[m]およびrpg[m]はそれぞれ太陽ギヤ10と遊星ギヤ12の各基準ピッチ円半径を表す。
(1)式より、関節角度qはプーリ16およびキャリア14の回転角度θの(1+rsg/rpg)倍となる。したがって、半径比rsg/rpgを変化させることで角度の増幅率を変化させることができる。

【0017】
繊維状アクチュエータ18の収縮量とプーリ16およびキャリア14の回転量との関係は繊維状アクチュエータ18の収縮量をlc[m]、プーリ16の半径をrp[m]とすると、
lc = rp θ (2)
である。式(1)および式(2)より、繊維状アクチュエータの収縮量と関節角度qとの関係は
lc = rp/(1 + rsg/rpg)・qd
となる。
ここで、目標関節角度をq = qd とすれば、目標関節角度を達成するために必要な繊維状アクチュエータ18の最小収縮量lcmin [m]は、
lcmin = rp/(1 + rsg/rpg)・qd (3)

【0018】
式(3)より、目標関節角度を達成するために必要な繊維状アクチュエータの最小長さは太陽ギヤ10および遊星ギヤ12の半径比とプーリ16の半径により変化することがわかる。
図2にさまざまなプーリ16の半径における各ギヤの半径比と目標関節角度を達成するために必要な繊維状アクチュエータ18の収縮量との関係を目標関節角度qd = π/2 radとした場合にて示す。
図2は、各歯車の半径比が増大するにつれて繊維状アクチュエータ18の最小収縮量が減少していくことを示す。また、プーリ16の半径が小さいほど繊維状アクチュエータ18の収縮量も小さくなる。

【0019】
(実験方法)
以上の関係を踏まえて能動マニピュレータ装置を設計し、実験により検証した。
表1に能動マニピュレータ装置の設計例のパラメータ値を示す。本設計例では、各ギヤの半径比を2として設計した。図3に試作した能動マニピュレータ装置を示す。
【表1】
JP2018140463A_000003t.gif
表1に示す各ギヤおよびプーリ16の半径の値より、目標関節角度をπ/2 radとしたときの目標角度達成に必要な繊維状アクチュエータの最小収縮量は約4.7×10-3 m となる。したがって、5.0×10-3 m 以下という非常に小さな収縮量でπ/2 radの関節角度を達成することが可能である。

【0020】
図4に実験装置の外観、図5に信号の流れを示す。本実験では繊維状アクチュエータとして導電性ナイロン繊維(AGposs:登録商標 100/3、ミツフジ株式会社)を使用し、非特許文献1に示されている方法に基づいてコイル状に繊維状アクチュエータを作製した。
この繊維状アクチュエータに電圧を印加することで、ジュール熱により繊維状アクチュエータが加熱され、収縮動作を行う。
能動マニピュレータ装置に繊維状アクチュエータを実装し、制御用PC(MDV-ASG8310B、Linux(登録商標)、3.5 GHz)からの指令電圧をDA変換器(PCI-3346A,株式会社インタフェース)および直流電源装置(AD-8735D,株式会社エー・アンド・デイ)を介して繊維状アクチュエータに印加する。

【0021】
能動マニピュレータ装置の関節角度は、まず太陽ギヤ10の中心軸に取り付けたポテンショメータ(CP-2FBJ、株式会社緑測器)でプーリ16およびキャリア14の回転角度θを計測し、AD変換器(PEX-321416、株式会社インタフェース)を介してサンプリング周期1 ms で制御用PC に保存する。そして式(1)に基づいて関節角度qを計算する。

【0022】
実験では、繊維状アクチュエータ単体では発生力が弱く、試作した能動マニピュレータ装置を駆動できなかったため、プーリの片側に2本の長さの等しい繊維状アクチュエータを集積し、ねじれないよう並列に配置して実験を行った。並列に配置した理由は、繊維状アクチュエータをねじるようにして集積させると、コイル同士の摩擦により収縮率に影響が出る場合があるためである。

【0023】
2本の繊維状アクチュエータの末端同士を接続し、繊維状アクチュエータの末端に電極を接続し、電極間に電圧を印加することで2本同時に電圧が印加され、ジュール熱により加熱され収縮する。2本集積した繊維状アクチュエータの収縮率は10%であった。
実験では、2本の繊維状アクチュエータの駆動による関節角度の目標駆動範囲をπ/2 rad と設定した。目標駆動範囲を達成するために必要な繊維状アクチュエータの収縮長さは式(3)から4.7×10-3 m となり、目標駆動範囲を達成するために必要な繊維状アクチュエータの最小長さは、繊維状アクチュエータの収縮率から4.7×10-2 m となる。したがって、4.7×10-2 m の長さの繊維状アクチュエータを実装して実験した。

【0024】
実験において、能動マニピュレータ装置のキャリアと遊星ギヤに接続されたアームが太陽ギヤの中心線と平行となる状態を初期状態(θ= q = 0) とした。初期状態から関節角度qが定常状態となるまで繊維状アクチュエータに電圧を印加し、定常状態となった後、電圧の印加を止め、十分に時間が経過した後に手動で初期状態までアームを移動させた。印加する電圧は3 V とした。

【0025】
(実験結果)
上述した方法により15回の動作検証を繰り返し行った。図6に各試行ごとの定常状態時の回転角度θと関節角度qの値を示す。図7に3試行目における回転角度θと関節角度qの挙動を示す。ただし、各図において角度の単位は[deg]で表記している。
図6より、15回の試行における関節角度qの平均値は85.5degとなり、4.7×10-2 m という短い繊維状アクチュエータで大きな関節角度を達成することができた。なお、図6では、第1、5、14試行目において、目標関節角度90degを上回る値を達成しているが、第6、10、12試行目では80degを下回る関節角度となり、定常状態時の関節角度に最大30deg程度の差が生じた。

【0026】
また、図7に見られるように、すべての試行において電圧印加開始時より約2秒後から角度が増加しており、定常状態になるまでに2回に分けて関節角度が増加していることが確認できた。
試作した能動マニピュレータ装置は慣性モーメントの関係から関節を駆動させるために大きなトルクが必要となる。繊維状アクチュエータはコイル(繊維)の温度上昇にともなって発生力が増加していく。電圧印加開始時から約2秒間は発生力が十分に上昇していないためにプーリを回転させるだけのトルクが得られていなかったためと考えられる。

【0027】
また、定常状態時の関節角度にばらつきがあった理由としては、各試行における初期状態の繊維状アクチュエータの状態(長さ,コイルの剛性)がわずかに異なっており、電圧印加による繊維状アクチュエータの温度上昇率がわずかに変動したことでトルクが変化し、角加速度に大きな差が生じ、関節の回転速度のばらつきが定常状態時の関節角度に反映されたことと、角度の増幅作用により回転速度のばらつきによる影響が増幅され、関節角度の差が生じたと考えられる。

【0028】
これらの問題を解消する方法としては、慣性モーメントが大きくなりすぎないように調整した軽量フライホイールを組み込むことによりトルク変動による回転速度のばらつきを安定化させる方法が考えられる。
また、プーリの両側に一対の繊維状アクチュエータを発生力が拮抗するように配置し、繊維状アクチュエータのバネおよびダンパ要素を利用してトルクを調整する方法も有効であると考えられる。ヒトの関節は2つもしくは2つ以上の筋が拮抗するように配置されており、拮抗した各筋が、ある拮抗比および活性度の下で同時に収縮することで拮抗比と関節角度の平衡点が線形関係にあり、かつ活性度が平衡点における剛性と線形関係にあることが指摘されている。したがって、拮抗配置した繊維状アクチュエータを上記のように同時に収縮させる制御方法を取り入れることでより安定した動作を行うことが可能である。

【0029】
(能動マニピュレータ装置の基本構成)
本発明に係る能動マニピュレータ装置は、繊維状アクチュエータが連繋するプーリとキャリアを介して第2の部材(遊星ギヤ)を転動させる構成としたことを特徴とする。
図1に示した構成例は第1の部材と第2の部材を円形ギヤとした例であるが、第1の部材と第2の部材の形態が円形ギヤに限定されるものではない。第1の部材に対し第2の部材を転動させる作用を満足させる構成としては、たとえば第1の部材と第2の部材が当接する接触部をギヤ部として設けず、単なる円弧状面として設ける方法も可能である。ただし、当接した状態での滑り等を考慮すると、接触部をギヤ部として設ける方法は確実な転動操作を可能にする点で有効である。

【0030】
また、第1の部材と第2の部材に設ける接触部(当接部)については、円形ギヤのように部材の全周にわたって接触部(当接部)を設ける必要はない。関節機構(屈曲機構)として能動マニピュレータ装置を適用する場合は、回転角度を全周にわたって確保する必要がないからである。すなわち、第1の部材および第2の部材の形態としては、後述する駆動ユニットの構成例と同様に、基板の一端に部分的に接触部(ギヤ部)を設けて、相互に当接(接触)する接触部上で第2の部材が転動するように構成することができる。このような構成も、本発明に係る能動マニピュレータ装置の基本的な構成である。

【0031】
(駆動ユニット)
図8は、図1に示した能動マニピュレータ装置と同様な機能を備えるとともに、ロボット等を構築する際に小型で使いやすい構成とした駆動ユニット20の例を示す。
この駆動ユニット20は、基板22aの一端にギヤ部22bを設けた第1の部材22と、基板24aの一端にギヤ部22bと歯合するギヤ部24bを設けた第2の部材24と、第1の部材22と第2の部材24とを連繋するキャリア26とを備える。キャリア26は、第1の部材22のギヤ部22bと第2の部材24のギヤ部24bとが歯合した状態で、第1の部材22に対して第2の部材24が遊星ギヤのように転動するように連繋している。

【0032】
第1の部材22と第2の部材24とは略同形に形成され、第1の部材22のギヤ部22bは基板22aの端部の円弧状の領域に歯を設け、第2の部材24のギヤ部24bも基板24aの端部の円弧状の領域に歯を設けている。この実施形態では、ギヤ部22bとギヤ部24bは同一径としているが、ギヤ部22bとギヤ部24bとが同一径に限定されるものではない。ギヤ部22bとギヤ部24bの径を適宜設定することにより、マニピュレータの回動角度を適宜設定することができる。
キャリア26の軸支位置をギヤ部22bとギヤ部24bの中心位置に設定することも前述した能動マニピュレータ装置の例と同様である。

【0033】
キャリア26には第1の部材22のギヤ部22bの中心に芯位置を一致させて、キャリア26と一体にプーリ28を連結する。プーリ28には2つの繊維状アクチュエータ30a、30bによる伸縮作用が拮抗する配置に設ける。すなわち、一方の繊維状アクチュエータ30aの基端を第1の部材22の基板22aの端部に固定し、他方の繊維状アクチュエータ30bの基端を基板22aの端部に固定する。こうして、繊維状アクチュエータ30a、30bをプーリ28に掛け渡した状態で、繊維状アクチュエータ30a、30bが基板22の側面に並列にして配置される。このように繊維状アクチュエータ30a、30bを配置することにより、繊維状アクチュエータ30a、30bが第1の部材22にコンパクトに装着される。

【0034】
キャリア26はプーリ28と基板22a、ギヤ部22b、ギヤ部24b等を挟む配置で、第1の部材22と第2の部材24の両側面に設ける。こうして第1の部材22と第2の部材24による転動動作(回動動作)が安定してなされる。

【0035】
図8(b)は、繊維状アクチュエータ30bの両端間に電圧を印加して第2の部材24の先端側を下方に回転させた状態を示す。繊維状アクチュエータ30bに電圧を印加したことにより繊維状アクチュエータ30bが収縮し、プーリ28が回転し、プーリ28とともにキャリア26が回転して第2の部材24が回転している。他方の繊維状アクチュエータ30aには電圧を印加せず、繊維状アクチュエータ30bの収縮力によって繊維状アクチュエータ30aが伸びている。
繊維状アクチュエータ30bに印加していた電圧を解除すると、繊維状アクチュエータ30bは元の長さに復帰し、伸びていた他方の繊維状アクチュエータ30aも元の長さに復帰し、第2の部材24も図8(a)の状態に復帰する。
なお、繊維状アクチュエータ30aに電圧を印加すると、第2の部材24は上向きに回転する。

【0036】
こうして駆動ユニット20は、繊維状アクチュエータ30a、30bに印加する電圧を制御することにより、第2の部材24を上方向あるいは下方向に回転させる能動マニピュレータ装置として作用する。この駆動ユニット20は、プーリ28を介して一対の繊維状アクチュエータ30a、30bの発生力が拮抗する配置に設けたことで、駆動ユニット20の回動動作を安定させることができる。
なお、第1の部材22と第2の部材24の動作は相対的なものであり、第1の部材22を固定側、第2の部材24を可動側として、上述したように、第1の部材22に対し第2の部材24を回転動作させるように使用することもできるし、第2の部材24を固定側とし第1の部材22を可動側として、第1の部材22を回動させるように使用することもできる。

【0037】
(構成例1)
図9は、上述した駆動ユニット20を2個連結して組み立てた能動マニピュレータ装置の例を示す。
この能動マニピュレータ装置は、駆動ユニット20の第2の部材24の基板24aと駆動ユニット21の第1の部材22の基板22aとを基板の向きが90度交差する配置として連結したものである。このように2つの駆動ユニット20、21を連結することにより、この能動マニピュレータ装置は、駆動ユニット20による回転動作と駆動ユニット21による回転動作を組み合わせた移動動作を行うことができる。

【0038】
図9(b)は、駆動ユニット20に装着した繊維状アクチュエータ30bに電圧を印加するとともに、駆動ユニット21に装着した繊維状アクチュエータ30aに電圧を印加することによって、駆動ユニット20の第2の部材24と駆動ユニット21の第2の部材24を回転動作させた状態を示す。
このように駆動ユニット20と駆動ユニット21に装着した繊維状アクチュエータ30a、30bに印加する電圧を制御することにより、駆動ユニット21の第2の部材24は、一方の駆動ユニット20による回転と他方の駆動ユニット21の回転を組み合わせた動作をなすことになる。

【0039】
図9に示す実施形態では、駆動ユニット20と駆動ユニット21とを連結するときの基板の向きを90度(直交配置)としているが、駆動ユニット20、21を連結するときの連結角度は適宜設定することができる。
なお、図9では駆動ユニット20、21の繊維状アクチュエータ30a、30bに電圧を印加する構成を省略している。駆動ユニット20、21のそれぞれの繊維状アクチュエータ30a、30bには、それぞれの繊維状アクチュエータ30a、30bに個別に電圧を印加する電気回路が接続される。

【0040】
(構成例2)
図10は前述した駆動ユニットを3個連結して組み立てた能動マニピュレータ装置の例である。この能動マニピュレータ装置では、3個の駆動ユニット20、21、23を直列に、すなわち駆動ユニット20の第2の部材の基板24aと駆動ユニット21の第1の部材の基板22aの端面を突き合わせて連結し、駆動ユニット21の第2の部材の基板24aと駆動ユニット23の第1の部材の基板22aの端面とを突き合わせて連結している。
このように3個の駆動ユニット20、21、23を直列に連結したことにより、いずれの駆動ユニット20、21、23とも同一の回転面上で回動する。

【0041】
各々の駆動ユニット20、21、23を回転駆動するため、各々の駆動ユニット20、21、23に装着した繊維状アクチュエータ30a、30bにそれぞれ電圧を印加する制御部を接続することは前述した各実施形態と同様である。
本実施形態の能動マニピュレータ装置は、駆動ユニットを3個連結したことにより、1個あるいは2個の駆動ユニットからなる能動マニピュレータ装置と比較して、より大きな回動角度と回動範囲を得ることができる。
なお、駆動ユニット20、21、23を連結する際に、本例のようにすべて直列に連結せず、構成例1のように、基板の向きが交差するように連結する方法を組み合わせることももちろん可能である。

【0042】
(構成例3)
図11は駆動ユニットを利用して歩行ロボットとして作用する能動マニピュレータ装置の例である。
この歩行ロボットは、平面形状がI形の躯体部40の4つのコーナー部のそれぞれに、二つの駆動ユニット20、21を連結した複合駆動ユニット42a、42b、42c、42dを取り付けて構成されている。複合駆動ユニット42a、42b、42c、42dは、図9に示した二つの駆動ユニット20、21を連結した例とは異なり、駆動ユニット20、21を直列に連結し、駆動ユニット20と駆動ユニット21とが共通の回転面内(回動面内)で回動(屈曲)する。

【0043】
複合駆動ユニット42a、42b、42c、42dは繊維状アクチュエータ30a、30bへ印加する電圧を制御することにより、躯体部40の前後方向に屈曲する。したがって、各々の複合駆動ユニット42a、42b、42c、42dに装着した繊維状アクチュエータ30a、30bに印加する電圧を制御し、複合駆動ユニット42a、42b、42c、42dが歩行動作をなす脚部と同様に前後に屈曲動作させることにより歩行動作を行わせることができる。

【0044】
(構成例4)
図12は駆動ユニットを利用して把持型(クランプ)のロボットとして作用する能動マニピュレータ装置の例である。
この把持型のロボットは多角形状の支持部材50の端面に、5個の複合駆動ユニット52a、52b、52c、52d、52eを取り付けたものである。複合駆動ユニット52a~52eは、それぞれ3個の駆動ユニット20、21、23を連結したものである。図10に示す複合駆動ユニットでは駆動ユニット20、21、23を直列に連結しているが、本実施形態の複合駆動ユニット52a~52eでは、連結位置にある第1の部材と第2の部材を交差させる連結方法を組み込んでいる。
この能動マニピュレータ装置は、駆動ユニット20、21、23に装着した繊維状アクチュエータに印加する電圧を制御することにより、複合駆動ユニット52a、52b、52c、52d、52eを指のように開閉して物体を把持する(クランプする)操作を行うことができる。

【0045】
(構成例5)
図14は駆動ユニットを複数個利用して内視鏡ロボットとして利用する能動マニピュレータ装置の例である。
この能動マニピュレータ装置は、正三角形の枠体状に形成された一対の支持枠60a、60bを、平面方向から見て三角形の辺と頂点とが交差する配置(平面視が星形になる)で上下に離間させて配置し、支持枠60a、60bの一辺上にそれぞれ二つの駆動ユニットの支持位置(軸支)を配置して、支持枠60a、60b間に駆動ユニットを設置したものである。駆動ユニットは各辺上に2個ずつ、全体で6個設けられる。
それぞれの駆動ユニット20a、20b、20c、20d、20e、20fは、支持枠60a、60bとの連結位置が球面軸受62によって連結され、駆動ユニット20a~20fは任意の方向に傾動可能である。

【0046】
この能動マニピュレータ装置は、繊維状アクチュエータに印加する電圧を制御して繊維状アクチュエータを伸縮させることにより、駆動ユニット20a~20fが屈曲し、支持枠60a、60bを揺動させる。したがって、たとえば、下台の支持枠60bを固定支持し、駆動ユニット20a~20fを選択して屈曲させると、上台の水平支持されていた支持枠60aを水平位置から傾斜させ、傾斜方向に倒れるように動作させることができる。

【0047】
図14は、上述した能動マニピュレータ装置を内視鏡ロボット70として使用する例を示す。内視鏡80の先端部をたとえば腹腔内に差し込み、内視鏡80の操作ロッドを内視鏡ロボット70の支持枠70a、70bで支持した状態で駆動ユニット20を駆動させることにより、内視鏡80の向きを適宜変えることができる。内視鏡ロボット70の操作は手術の補助者により、内視鏡ロボット70に接続する制御部82を制御することによってなされる。内視鏡を用いる手術では内視鏡の位置を正確に保持するといった必要があり、内視鏡ロボット70を使用することにより確実で安全な手術を行うことができる。
繊維状アクチュエータを駆動源とする内視鏡ロボットは、従来のようなモータや空圧あるいは流体圧を用いて操作する内視鏡ロボットと比較して、装置構成が簡素化され、装置の軽量化、小型化を図ることができるという利点がある。
【符号の説明】
【0048】
10 太陽ギヤ
12 遊星ギヤ
14 キャリア
16 プーリ
16a 軸
18 繊維状アクチュエータ
19 アーム
20、21、23 駆動ユニット
20a、20b、20c、20d、20e、20f 駆動ユニット
22 第1の部材
22a 基板
22b ギヤ部
24 第2の部材
24a 基板
24b ギヤ部
26 キャリア
28 プーリ
30a、30b 繊維状アクチュエータ
40 躯体部
42a、42b、42c、42d 複合駆動ユニット
50 支持部材
52a、52b、52c、52d、52e 複合駆動ユニット
60a、60b 支持枠
62 球面軸受
70 内視鏡ロボット
70a、70b 支持枠
80 内視鏡
82 制御部
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
12
【図14】
13