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明細書 :磁気シールド導体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-137120 (P2018-137120A)
公開日 平成30年8月30日(2018.8.30)
発明の名称または考案の名称 磁気シールド導体の製造方法
国際特許分類 H01B  13/00        (2006.01)
B05D   1/02        (2006.01)
B05D   7/24        (2006.01)
B05D   7/14        (2006.01)
B05D   5/12        (2006.01)
FI H01B 13/00 501Z
B05D 1/02 Z
B05D 7/24 303D
B05D 7/14 Z
B05D 5/12 A
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2017-030584 (P2017-030584)
出願日 平成29年2月22日(2017.2.22)
発明者または考案者 【氏名】水野 勉
【氏名】卜 穎剛
【氏名】山本 達也
【氏名】金野 泰之
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4D075
Fターム 4D075AA01
4D075AA81
4D075AA87
4D075BB81Y
4D075CA24
4D075CA25
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA01
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB06
4D075DC19
4D075EA05
4D075EB39
4D075EC10
4D075EC21
要約 【課題】 導線の交流抵抗を効果的に低減させることができ、製造が容易な磁気シールド導体の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る磁気シールド導体の製造方法は、導体である導線10の外表面の全面に、バインダと磁性粉とを混合した磁性コンポジット材32をスプレー法により塗布する塗布工程と、導線10に付着した前記磁性コンポジット材を固化して磁性被覆層を形成する工程とを備える。導体としては導線の他に平板状の導体や、導線をコイル状に巻回した形態に成形した成形体を使用することができる。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
導体の外表面の全面に、バインダと磁性粉とを混合した磁性コンポジット材をスプレー法により塗布する塗布工程と、
前記導体の表面に付着した前記磁性コンポジット材を固化して磁性被覆層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする磁気シールド導体の製造方法。
【請求項2】
前記導体として、導線を用いることを特徴とする請求項1記載の磁気シールド導体の製造方法。
【請求項3】
前記導体として、平板状の導体を用いることを特徴とする請求項1記載の磁気シールド導体の製造方法。
【請求項4】
前記導体として、導線を所定形状に成形した成形体を用いることを特徴とする請求項1記載の磁気シールド導体の製造方法。
【請求項5】
前記成形体が、導線をコイル状に巻回した形態に成形されたものであることを特徴とする請求項4記載の磁気シールド導体の製造方法。
【請求項6】
前記成形体が、プリント基板に平面コイル状に形成された配線パターンであることを特徴とする請求項4記載の磁気シールド導体の製造方法。
【請求項7】
前記成形体が、プレーナトランスの一次側と二次側の配線の形態に形成された配線であることを特徴とする請求項4記載の磁気シールド導体の製造方法。
【請求項8】
前記塗布工程において、前記導体に通電しながら前記磁性コンポジット材をスプレー法により塗布することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項記載の磁気シールド導体の製造方法。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は磁気シールド線等の磁気シールド導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、パソコンなどの電子機器やモータなどの電気機器の高効率化が求められている。電子機器や電気機器に用いられている変圧器やコイルの損失は、銅損と鉄損に分類される。銅損は、巻線の抵抗によって生ずる損失である。巻線の抵抗は、直流抵抗と、表皮効果に起因する抵抗、近接効果に起因する抵抗の3要素に分類される。表皮効果は周波数が高くなると電流が導体の表面に偏る現象である。表皮効果に起因する交流抵抗を低減するために多数の細い線を撚ったリッツ線が用いられている。しかし、リッツ線では、素線数が少ない場合に近接した導体から発生する交流磁界が導体に作用した場合に、導体内に電界の偏りが生まれ、抵抗が増加する近接効果が表れる。
【0003】
近接効果に起因する交流抵抗を低減させるために磁性めっき線が用いられている(特許文献1)。磁性めっき線は銅線の外周にめっきにより磁性層(鉄薄膜)を形成したものである。また、磁性めっき線とは別に、磁性粉とバインダとの混合物(磁性コンポジット材)を導線の外表面に被覆した磁性被覆線が提案されている(特許文献2~4)。磁性コンポジット材により導線を被覆することにより、隣接する導線を流れる電流によって生じる磁界が導体内に侵入することを抑え、導体内で渦電流が発生することを抑制して交流抵抗を低減させる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平4-214896号公報
【特許文献2】特開2005-32499号公報
【特許文献3】特開2006-73350号公報
【特許文献4】特開2014-71969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近接効果に起因する交流抵抗を低減する方法として、磁性めっきを利用する方法は、処理が煩雑であるという問題と、磁性層が導体であるため高周波領域で表皮効果が問題になる。また、導線の外表面に磁性粉とバインダとの複合材を塗布する方法は、磁性層中における磁性粉の分布がまばらになり、導線内を通過する磁束を抑制する作用が必ずしも十分ではないといった問題がある。
本発明は、導線の交流抵抗を効果的に低減させることができ、製造が容易な磁気シールド導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る磁気シールド導体の製造方法は、導体の外表面の全面に、バインダと磁性粉とを混合した磁性コンポジット材をスプレー法により塗布する塗布工程と、前記導体の表面に付着した前記磁性コンポジット材を固化して磁性被覆層を形成する工程とを備えることを特徴とする。
前記磁性コンポジット材を塗布して磁気シールド導体を形成する導体には、例として、導線を用いることができる。この導線には外表面が絶縁層により被覆された導線を使用することもできるし、絶縁層によって被覆されていない導線を使用することもできる。また、導線の断面径及び断面形状は限定されるものではなく、断面形状が円形、長方形等の導線を使用することができる。導線には、銅線の他に適宜導体材料からなる導線を使用することができる。なお、絶縁材によって被覆されていない導線(銅線)を使用する場合は、スプレー法による塗布の後、絶縁紙、絶縁材料を用いて絶縁をとる必要がある。
【0007】
また、導体にはいわゆる断面形状が円形や長方形の線材として提供されるものの他に、平板状の導体を使用することができる。平板状の導体は、コイル状に巻回することにより大電流を通電することができるコイルとして利用することができる。このような平板状の導体であっても本発明方法によれば容易に磁気シールド導体として提供することができる。
また、本発明方法によれば、導線あるいは平板状の導体をたとえばコイル状に巻回したコイル(成形体)を処理対象として磁気シールド導体を製造することもできる。
導体からなる成形体としてはコイル状に形成したものの他に、プリント基板に平面コイル状に形成された配線パターンや、プレーナトランスの一次側と二次側の配線の形態にあらかじめ形成した配線を対象とすることができる。コイル状等の所定形状に成形した成形体を処理対象とする場合であっても、本発明方法によれば導体の外表面が磁性被覆層により被覆された磁気シールド導体(磁気シールド成形体)を容易に得ることができる。
【0008】
また、前記塗布工程において、導体に通電しながら磁性コンポジット材をスプレー法により塗布することにより、導体の周囲に生じる磁界の作用により、磁性粉が導体の外面にならって被覆されるという利点がある。とくに磁性粉としてフレーク状(扁平状)のものを使用する場合は、導体に通電して磁界を磁性粉に作用させることで、磁性粉の向きが導線の外面と磁性粉の平面とが平行にならうようになり、磁性粉によって導体の外面が隙間なく埋められて磁性被覆層により近接効果を抑制する作用がより効果的に作用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る磁気シールド導体の製造方法によれば、スプレー法を利用して導線の外周面に磁性コンポジット材を被覆することにより、磁性層によって被覆された磁気シールド線を容易に製造することができ、近接効果による交流抵抗を効果的に低減することができ、磁性シールド導体を容易に得ることができ、磁性シールド導体を備える電子機器、電気機器を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】銅導線(a)、磁気シールド線(b)、(c)、(d)の断面図である。
【図2】磁気シールド線の製造方法を示す説明図である。
【図3】磁気シールド線の径方向と長手方向の顕微鏡像である。
【図4】磁性コンポジット材の複素透磁率-周波数特性を示すグラフである。
【図5】抵抗-周波数特性の測定に使用したコイルの断面図である。
【図6】コイルの抵抗-周波数特性を測定した結果を示すグラフである。
【図7】周波数f= 20 kHzのときのコイルの抵抗-電流特性を示すグラフである。
【図8】周波数f= 20 kHz、I= 8 A の電流を流したときのコイルの発熱特性を示すグラフである。
【図9】コイルの解析モデルを示す図である。
【図10】コイルの抵抗-周波数特性解析の結果を示すグラフである。
【図11】コイル状に巻回した導線を対象として磁気シールド線を形成する例を示す説明図である。
【図12】プリント基板に磁性被覆層を形成する方法を示す説明図である。
【図13】プレーナトランスの組み立て斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(磁気シールド線)
図1は、本発明に係る磁気シールド導体の例として、導体に銅線を使用した磁気シールド線の断面形状を示す。図1(a)は比較例として示した銅線(Copper wire:COW)であり、図1(b)、(c)、(d)が磁気シールド線(Magnetocoated Wire:MCW)である。
COWは銅からなる芯線5の外表面が絶縁層(ポリイミド)6によって被覆された、一般に提供されている銅線である。図1(a)に示す導線10の芯線径は1.45mm、絶縁層6の厚さは18.5μmである。
図1(b)、(c)、(d)に示す磁気シールド線20は、本発明方法により、導線10の外表面を磁性被覆層12によって被覆した例を示す。芯線5の表面が絶縁層6によって被覆され、絶縁層6の表面が磁性被覆層12によって被覆されている。

【0012】
図1(b)の磁気シールド線20は、平均粒径D50 = 11μmのFe-Si-Al粉を磁性粉として用いたもので、磁性被覆層12の厚さは15μmである。
図1(c)の磁気シールド線20は平均粒径D50 = 53μmのFe-Si-Al粉を磁性粉としたもので、磁性被覆層12の厚さは23μmである。
図1(d)の磁気シールド線20は、平均粒径D50 = 2.6μmのアモルファスFe-Si-Cr粉を磁性粉として用いたもので、磁性被覆層12の厚さは24μmである。

【0013】
磁性被覆層12は磁性粉とバインダとを混合して調製した磁性コンポジット材を導線10の外表面にスプレー法により塗布して形成したもので、バインダ(有機材料)の母材中に磁性粉が混入して形成されている。バインダは絶縁材であり、バインダ中に導体の磁性粉が混入することにより、磁性被覆層12全体は抵抗体となっている。

【0014】
(磁気シールド線の製造方法)
図2に磁気シールド線20の製造方法を示す。
磁気シールド線20は、磁性粉とバインダとからなる磁性コンポジット材が封入されているスプレー缶30を使用し、図2に示すように、スプレー缶30から導線10に向けて磁性コンポジット材32を吹き付け(塗布工程)、導線10の外面に付着した磁性コンポジット材32を固化することにより磁性被覆層12によって被覆された磁気シールド線を得ることができる。

【0015】
導線10の外表面上に一様な厚さに磁性被覆層12を形成するため、実施例では導線10からスプレーを200mm程度離間させ、導線10の軸方向に40 mm/sの速度でスプレー缶30を移動させて磁性コンポジット材をスプレー法により塗布した。スプレー操作は、導線10の上面側からスプレーした後、導線10の下面側に同様にスプレー法により塗布して、導線10の外面全体に磁性被覆層12を形成した。塗布後、室温で3時間経過させ磁性被覆層を固化させた。

【0016】
表1に上記磁気シールド線20の製作に使用した磁性粉を示す。図1(b)、(c)の磁気シールド線に使用した磁性粉は80wt%Fe-12wt%Si-8wt%Al、図1(d)の磁気シールド線に使用した磁性粉は88.3wt%Fe-6.7wt%Si-2.5wt%Cr-2.5wt%B(アモルファス)である。
なお、図1(b)、(c)に示す磁気シールド線に使用した磁性粉はフレーク状(扁平状)のもの、図1(d)の磁気シールド線に使用した磁性粉は球形のものである。
また、磁性コンポジット材に使用したバインダはシリコーンワニスである。磁性粉とバインダの混合比は50g : 100 gである。
【表1】
JP2018137120A_000003t.gif

【0017】
図3(a)、(b)、(c)に、図1(b)、(c)、(d)に示す磁気シールド線の顕微鏡像を示す。それぞれのサンプルについて、導線を径方向に切断したときの断面と、長手方向に切断したときの断面を示す。この測定では、磁性被覆層を観察しやすくするため、磁性被覆層の外面にエポキシ層を設けて観察した。芯線5の表面に絶縁層6が設けられ、絶縁層6の表面に磁性被覆層12が形成されている。
図3から、磁性被覆層12の内部に磁性粉がまばらに存在していることがわかる。また、フレーク状(扁平状)の磁性粉は、導線10の表面に平面方向がならうようにして磁性被覆層12に混入している(図3(a)、(b))。

【0018】
なお、図3に示すような線材を対象として線材の外表面に磁性被覆層を形成する場合で、磁性粉としてフレーク状のものを使用する場合には、線材の長手方向に電流を流しながらスプレー法により塗布すると、さらに確実に、線材の外表面にならって磁性粉を付着させることができる。これは線材に電流を流すと線材のまわりに同芯状に磁界が生成されるから、線材に磁性コンポジット材を塗布したときに、磁性粉が磁界の向きに合わせて同芯状になろうとするからである。

【0019】
(磁性コンポジット材の複素透磁率)
磁気シールド線の磁性被覆層の複素透磁率を測定するため、磁気シールド線の磁性被覆層と充填率が等しい磁性コンポジット材を用いてトロイダルコアを形成し、複素透磁率を測定した。
図4に磁性コンポジット材の複素透磁率-周波数特性を示す。測定にはインピーダンスアナライザ(Agilent、4294A)を用いた。トロイダルコアは、磁性粉とエポキシを混合して磁性コンポジット材を作製し、鋳型に磁性コンポジット材を流し込んで焼成して製作した。
磁性被覆層の磁性粉の充填率は、図3に示した断面写真に基づいて計算した。磁性粉の体積充填率は、図1(b)のサンプル:Fe-Si-Al (D50 = 11μm)では22vol%、図1(c)のサンプル:Fe-Si-Al (D50 = 53μm)では24vol%、図1(d)のサンプル:Fe-Si-Cr(Amorphous metal)では12vol%となった。

【0020】
図4より周波数2.5 MHzにおいて、3種のサンプル、Fe-Si-Al (D50 = 11μm)、Fe-Si-Al (D50 = 53μm)、Fe-Si-Cr(Amorphous metal)について、μ´は、それぞれ10.2、3.1、1.6となり、μ´´はそれぞれ0.24、0.052、0.045となった。
図4に示す測定結果は、スプレー法により形成した磁性被覆層は、特性がかなり大きく異なるものになったことを示す。

【0021】
(コイルの抵抗-周波数特性)
上述した方法によって製作した磁気シールド線を用いてコイルを製作し、コイルの抵抗-周波数特性について測定した。
図5に測定に使用したコイルの構造図を示す。コイルの内径60mm、巻き数N=9である。
図1(a)に示す導線(COW)、図1(b)に示す磁気シールド線MCW(Fe-Si-Al (D50 = 11μm))、図1(c)に示すMCW(Fe-Si-Al (D50 = 53μm))、図1(d)に示すMCW(Fe-Si-Cr(Amorphous metal))を用いたコイルの自己共振周波f0は、それぞれ、27.4 MHz、28.5 MHz、27.9 MHz、29.5 MHzとなった。
f0の1/10以下の周波数範囲では、共振による抵抗の増加は十分小さい。したがって、N= 9のコイルでは2.5 MHz以下の周波数範囲におけるコイルのインピーダンス特性を測定した。

【0022】
コイルのインピーダンス特性はインピーダンスアナライザ(Agilent、4294A)を用いて測定した。このときの測定電流は1.1mA以下であった。
図6にコイルの抵抗-周波数特性を示す。
周波数2.5 MHzにおける、COW、MCW(Fe-Si-Al (D50 = 11μm))、MCW(Fe-Si-Al (D50 = 53μm))、MCW(Fe-Si-Cr(Amorphous metal))を用いたコイルの抵抗値は、それぞれ668 mΩ、460 mΩ、447 mΩ、485 mΩとなった。
導線(COW)を使用したときの抵抗値と比較して、MCW(Fe-Si-Al (D50 = 11μm))、MCW(Fe-Si-Al (D50 = 53 μm))、MCW(Fe-Si-Cr(Amorphous metal))を使用したときの抵抗値は、それぞれ31%、33%、27%低減した。これは、磁性被覆層を設けたことにより、近接効果に起因する抵抗が抑制されたことを示す。

【0023】
(コイル抵抗の電流依存性)
磁気シールド線は、磁性被覆層が磁気飽和してしまうと交流磁界が誘導されなくなり、交流抵抗を低減することができない。そのため、電気機器における定格電流密度である3 A/mm2付近の電流を流し、磁気飽和の検討を行った。
図7に周波数f= 20 kHzのときのコイルの抵抗-電流特性を示す。測定には周波数特性分析器(NF、FRA5097)を用いた。また、電流を流した際のコイルの最大表面温度を、サーモショット(FLUKE、Ti200)を用いて測定した。

【0024】
I= 2AにおけるMCW(Fe-Si-Al (D50 = 11μm))、MCW(Fe-Si-Al (D50 = 53 μm))、MCW(Fe-Si-Cr(Amorphous metal))の抵抗値は、COW(導線)と比べ、ぞれぞれ4%、10%、5%低減した。
また、I= 8 AにおけるMCW(Fe-Si-Al (D50 = 11μm))、MCW(Fe-Si-Al (D50 = 53 μm))、MCW(Fe-Si-Cr(Amorphous metal))の抵抗値はCOWと比べ、ぞれぞれ3%、10%、4.1%低減した。
I= 2 Aにおける抵抗の低減率と比べて、I= 8 Aにおける抵抗の低減率はわずかに減少したが、I= 8 Aにおいても磁気シールド線を使用することによって抵抗値が低減した。この実験結果から、磁気飽和は生じていないと考えられる。

【0025】
(コイルの発熱特性)
図8にf= 20 kHz、I= 8 A の電流を流した際のコイルの発熱特性を示す。
COW、MCW(Fe-Si-Al (D50 = 11μm))、MCW(Fe-Si-Al (D50 = 53 μm))、MCW(Fe-Si-Cr(Amorphous metal)は、それぞれ、19°C、16°C、14°C、17°Cで温度上昇が熱飽和した。COWと比較してMCWが温度上昇が低減されている理由は、交流抵抗の増加が抑制されていることに起因すると考えられる。

【0026】
(コイルの磁界解析)
図4に示した複素透磁率の測定値と、磁性被覆層の複素透磁率の妥当性を評価するために解析を行った。解析は有限要素法(FEM)を用いた磁界解析により行った。図9に解析モデルを示す。コイルの巻数は9回巻きとした。
表2にコイルの解析条件を示す。磁性被覆層の抵抗率を無限大とし、図4に示した複素透磁率の測定値を用いた。解析モデルは、図5の9回巻コイルと同形状のものを作成した。コイルの中心軸をz軸、径方向をr軸とした。
【表2】
JP2018137120A_000004t.gif

【0027】
図10にコイルの抵抗-周波数特性解析の結果を示す。測定値と計算値の誤差は最大で10%であった。磁性被覆層が一様な透磁率、厚さで銅線を被覆していると仮定したことが誤差の要因であると考えられる。

【0028】
(磁気シールド導体の製造例)
図1(b)、(c)、(d)に示した磁気シールド線、図5に示した磁気シールド線を用いたコイルは、いずれも断面形状が円形の磁気シールド線の例である。本発明に係る磁気シールド導体の製造方法は、スプレー法を利用して導線等の導体の外表面に磁性被覆層を形成することを特徴とするものであり、対象とする導体の断面形状や断面寸法、導体に用いる導体材料が限定されるものではない。

【0029】
また、いわゆる長尺な線材状に形成した導線の他に、薄い平板状に形成した導体、たとえば可撓性のある薄い銅板を用いて磁気シールド導体を形成することもできる。薄い銅板を導体材とする場合も、前述した磁性粉とバインダとからなる磁性コンポジット材を銅板の表面にスプレー法により塗布することにより、導体の表面が磁性被覆層により被覆された磁気シールド導体を得ることができる。
外表面が磁性被覆層によって被覆された平板状の磁気シールド導体をコイル状に巻回することにより、大電流を流すことができ、導体間の近接効果を抑制したコイル(磁気シールド導体)が得られる。
平板状の導体を処理対象として磁気シールド導体を製造する場合、スプレー法は広幅の対象物であっても簡単に磁性被覆層を形成することができるという利点がある。

【0030】
(エッジワイズコイルへの適用例)
図11は、あらかじめコイル状に巻回した導体を対象として磁気シールド導体を作成する例を示す。図11に示すコイルはエッジワイズコイル25であり、このエッジワイズコイル25にスプレー缶30から磁性粉とバインダとからなる磁性コンポジット材32をスプレー法により塗布することで、磁性被覆層により外面が被覆された磁気シールド導体が得られる。
この磁気シールド導体は、あらかじめコイル状に成形した成形体を処理対象として得たものであり、本発明方法によれば、コイル状等の適宜形状にあらかじめ成形した成形体を処理対象として磁気シールド導体を作成することができる。スプレー法を利用して導体の外表面に磁性被覆層を形成する方法は、対象となる導体があらかじめ所定形状に成形された成形体であっても、容易に磁性被覆層を形成することができるという利点がある。

【0031】
(プリント基板への適用例)
図12はプリント基板40に平面コイル状に形成されている配線パターン42(図12(a))の表面に本発明方法を利用して磁性被覆層を形成する例を示す。図12(b)に示すように、プリント基板40に形成されている導体である配線パターン42に向けて磁性粉とバインダとからなる磁性コンポジット材32をスプレー法により塗布することにより、配線パターン42の表面に簡単に磁性被覆層44を形成することができる。図12(c)は隣接する配線パターン42の中間に磁性被覆層44を設けた例、図12(d)は配線パターン42の全面を被覆するようにスプレー法により磁性被覆層44を設けた例である。

【0032】
図12(c)、(d)に示すように磁性被覆層44を設けることにより、隣接するあるいは他の配線パターン42から生じる磁界作用に起因する近接効果を抑制することができる。また、図12(c)、(d)に示すように、近接効果をより抑制するために、基板を挟んで配線パターン42を設けた面とは反対側の面に磁性被覆層46を設けることができる。基板の裏面に磁性被覆層46を形成することによる付帯効果として、インダクタンスの増加、抵抗の減少によりコイルのQ値を向上させることができる。
なお、図12は配線パターンを平面コイル状に形成した例であるが、コイル状以外の配線パターンを形成したプリント基板であっても、スプレー法により容易にそれらの配線パターンを磁性被覆層によって被覆することができ、他の配線パターンの磁界作用に起因する近接効果を抑制することができる。

【0033】
(プレーナトランスへの適用例)
図13は、プレーナトランスの組み立て斜視図を示す。プレーナトランスは一次側の配線50と二次側の配線52の中間にボビン55を配置し、第1のコア56aと第2のコア56bとにより、一次側と二次側の配線50、52を両側から挟んで組み立てられる。一次側の配線50と二次側の配線52は層間に絶縁シート57を介して複数層に積層して組み込まれる。
図示例のプレーナトランスは、一次側の配線50と二次側の配線52が磁性被覆層54によって外面が被覆されていることを特徴とする。これらの一次側と二次側の配線50、52の表面を磁性被覆層54により被覆する方法は、前述した各例と同様に、磁性粉とバインダとからなる磁性コンポジット材をスプレー法によって形成する方法であり、スプレー法によることで、磁性被覆層54によって被覆された一次側の配線を簡単に作成することができる。
プレーナトランスに限らず、トランスの配線に用いられる導線(導体)を磁気シールド導体とすることにより、交流抵抗を抑えて高効率のトランスとして提供することができる。

【0034】
なお、上述した各例では、磁性コンポジット材を封入したスプレー缶を使用して磁性被覆層を形成した。スプレー缶は、磁性被覆層を形成する操作として手軽に利用することができるという利点がある。ただし、磁性コンポジット材をスプレー法により塗布する方法はスプレー缶を使用する方法に限られるものではなく、スプレーガン等を用いた種々のスプレー装置を利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
5 芯線
6 絶縁層
10 導線
12 磁性被覆層
20 磁気シールド線
25 エッジワイズコイル
30 スプレー缶
32 磁性コンポジット材
40 プリント基板
42 配線パターン
44、46 磁性被覆層
50 一次側の配線
52 二次側の配線
54 磁性被覆層
55 ボビン
56a 第1のコア
56b 第2のコア
57 絶縁シート


図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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