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明細書 :薬物の検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-136281 (P2018-136281A)
公開日 平成30年8月30日(2018.8.30)
発明の名称または考案の名称 薬物の検出方法
国際特許分類 G01N  33/483       (2006.01)
FI G01N 33/483 F
G01N 33/483 C
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2017-032781 (P2017-032781)
出願日 平成29年2月24日(2017.2.24)
新規性喪失の例外の表示 新規性喪失の例外適用申請有り
発明者または考案者 【氏名】▲高▼橋 史樹
【氏名】金 継業
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
Fターム 2G045AA37
2G045FB05
2G045FB13
要約 【課題】
本発明は、メタンフェタミンをはじめとした薬物と、他の物質とを明確に区別可能にする、新規な薬物検出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
試料に有機溶媒を添加する工程と、前記混合溶液から有機溶媒のみを抽出する工程と、前記抽出後の有機溶媒に分散剤を添加する工程と、前記有機溶媒と分散剤との混合溶液の分析を行う工程と、を備えることを特徴とする、薬物の検出方法。
本発明に係る薬物の検出方法によれば、検出対象と同様の電気化学発光活性を示す物質が含有した試料を用いて薬物の検出を行った場合でも、正確にメタンフェタミンのみを選択的に検出することが可能となる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
試料に有機溶媒を添加する工程と、
前記混合溶液から有機溶媒のみを抽出する工程と、
前記抽出後の有機溶媒に分散剤を添加する工程と、
前記有機溶媒と分散剤との混合溶液の分析を行う工程と、
を備えることを特徴とする、薬物の検出方法。
【請求項2】
前記有機溶媒の溶液は、ヘキサン、酢酸エチル、n-オクタノール、クロロホルムから選択される1または2以上の溶液であることを特徴とする請求項1記載の検出方法。
【請求項3】
前記分散剤の溶液は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、アセトン、アセトニトリルから選択される1または2以上の溶液であることを特徴とする請求項1または2記載の検出方法。
【請求項4】
前記試料と前記有機溶媒の混合溶液に機械的作用を印加する工程と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1-3のいずれか1項記載の検出方法。
【請求項5】
前記薬物がメタンフェタミンであることを特徴とする、請求項1-4のいずれか1項記載の検出方法。
【請求項6】
前記分析の方法が、電気化学発光の反応を利用した方法であることを特徴とする、請求項1-5のいずれか1項記載の検出方法。
【請求項7】
前記有機溶媒と前記分散剤の混合溶媒のpH値を調製する工程と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1-6のいずれか1項記載の検出方法。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の検出方法に関し、特に、検出対象となる薬物を他の物質と区別し、誤検出を防ぐことが可能な、薬物の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レクリエーション薬としての薬物乱用は、薬物依存につながる可能性があるとして、世界中で深刻な社会問題として認識されている。特にアンフェタミン系の薬物は覚醒及び食欲不振作用を誘発する強力な中枢神経系刺激剤であることが知られている(非特許文献1-3)。
【0003】
メタンフェタミン(以下、「MA」という。)は、日本における乱用薬物として最も一般的に使用されているもので、違法な所持、使用等により毎年1万人以上が逮捕されているため、薬物問題における我が国における最重要課題とされている(非特許文献4)。
【0004】
尿、血液、唾液などの生体試料を用いたMAの定量は、MAの接種による乱用を直接確認できるため有効な手段として普及している。MAの定量を行う方法としては、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーおよびキャピラリー電気泳動クロマトグラフィー等と組み合わせた質量分析法が高感度検出のために使用されている(非特許文献1、5)。
【0005】
電気化学発光(以下、「ECL」という。)は、電極反応によって生じた発光化学種が、後続化学反応によって励起状態となり、発光する現象である(非特許文献6、7)。この方法は、蛍光分光法のような励起光源は不要であるため高感度の分析が可能である上、装置が比較的小型であるため、各種現場におけるその場分析が可能である特長を有する。さらに、この方法は前述した尿や血液などの半透明な生体試料でも検出器の構成を工夫することで分析が行えるという特徴がある。このため、ECL法は、生物学的試料中の薬物検出の手段として、注目を集めている(非特許文献7-9)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Clarke's Analytical Forensic Toxicology; Pharmaceutical Press: London, UK, 2008.
【非特許文献2】Volkow, N. D., Methamphetamine; Research Report Series; National Institutes of Health: US, 2013.
【非特許文献3】Mikuma, T.; Iwata, Y. T.; Miyaguchi, H.; Kuwayama, K.; Tsujikawa, K.; Kanamori, T.; Inoue, H. Forensic Science International 2015, 249, 59-65.
【非特許文献4】White Paper on Police 2013: Tokyo, Japan, 2014.
【非特許文献5】Nariaki, T.; Kazuichi, H. In Handbook of Practical Analysis of Drugs and Poisons in Human Specimens -chromatographic methods -, Osamu, S.; Mikio, Y., Eds.; Jiho: Tokyo, Japan, 2002, pp 151-164.
【非特許文献6】Electrogenerated Chemiluminescence; Dekker: New York, US, 2004.
【非特許文献7】Miao, W. Chemical Reviews 2008, 108, 2506-2553.
【非特許文献8】Jin, J.; Muroga, M.; Takahashi, F.; Nakamura, T. Bioelectrochemistry 2010, 79, 147-151.
【非特許文献9】Takahashi, F.; Jin, J. Analytical and Bioanalytical Chemistry 2009, 393, 1669-1675.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のとおり、ECL法は、高い選択性で生体試料中のMAのスクリーニングを行うことを可能とするが、一部の物質においては、MAと同様のECL活性を呈することがあるため、当該物質が試料中に含まれていることにより、MAに対する偽陽性を示す可能性がある。これにより、生体試料中に前記性質を示すような検出妨害物質が含まれる場合には、MAの検出を行う際に悪影響があるという課題があった。
【0008】
また、生体試料中に含まれる検出対象となるMAを、液-液抽出により有機溶媒相に濃縮することで選択的にMAを抽出する技術を適用した場合にも、有機溶媒相中のMAはECL活性を示さず、そのままの状態では検出できないという課題があった。
【0009】
そこで、上記課題を解決するため、本発明者らは、鋭意研究を行い、有機溶媒中のMAを検出するためのECL用検出液を簡便な混合溶媒系で達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、MAと他の物質とを明確に区別可能にする、新規な薬物の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る第一の形態は、試料に有機溶媒を添加する工程と、前記混合溶液から有機溶媒のみを抽出する工程と、前記抽出後の有機溶媒に分散剤を添加する工程と、前記有機溶媒と分散剤との混合溶液の分析を行う工程と、を備えることを特徴とする、薬物の検出方法である。
【0011】
また、本発明に係る第二の形態は、前記有機溶媒の溶液は、ヘキサン、酢酸エチル、n-オクタノール、クロロホルムから選択される1または2以上の溶液であることを特徴とする請求項1記載の検出方法である。
【0012】
また、本発明に係る第三の形態は、前記分散剤の溶液は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、アセトン、アセトニトリルから選択される1または2以上の溶液であることを特徴とする請求項1または2記載の検出方法である。
【0013】
また、本発明に係る第四の形態は、前記試料と前記有機溶媒の混合溶液に機械的作用を印加する工程と、をさらに備えることを特徴とする、請求項1-3のいずれか1項記載の検出方法である。
【0014】
また、本発明に係る第五の形態は、前記薬物がメタンフェタミンであることを特徴とする、請求項1-4のいずれか1項記載の溶媒である。
【0015】
また、本発明に係る第六の形態は、前記分析の方法が、電気化学発光の反応を利用した方法であることを特徴とする、請求項1-5のいずれか1項記載の化合物の検出方法である。
【0016】
また、本発明に係る第七の形態は、前記有機溶媒と前記分散剤の混合溶媒のpH値を調製する工程と、をさらに備えることを特徴とする、請求項1-6のいずれか1項記載の検出方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る薬物の検出方法によれば、検出対象と同様のECL活性を示す物質が含有した試料を用いて薬物の検出を行った場合でも、正確にMAのみを選択的に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】混合溶媒の電気化学発光測定を行った結果の発光強度を示すグラフである。
【図2】電気化学発光測定において、pH値を変化させた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る薬物の検出方法の実施の形態について説明する。

【0020】
本発明に係る薬物の検出方法は、尿等の試料と有機溶媒とを混合し、検出対象の薬物を有機溶媒に濃縮させた後、分散剤を添加し、これを電気化学発光法で分析することにより、検出対象である薬物を高い選択性で検出することを可能にする方法である。

【0021】
本発明に係る薬物の検出方法において、分析に用いる試料の種類は特に限定するものでないが、尿、血液、汗等の液体の生体試料であることが望ましい。また、試料の前処理を行うことにより液体試料として取り扱うことが可能であれば、皮膚、毛髪等の固体の生体試料または錠剤等の試料についても適用することが可能である。

【0022】
本発明に係る薬物の検出方法において、使用する有機溶媒の種類は特に制限されず、疎水性の溶媒であれば、公知の溶媒から任意に適用可能である。本発明で適用可能な有機溶媒の例としては、ヘキサン、酢酸エチル、n-オクタノール、クロロホルムが挙げられ、特に酢酸エチルが好適である。ここで、疎水性とは、水に不溶または難溶な性質をいい、化学的には極性が低いことをいう。

【0023】
本発明に係る薬物の検出方法において、使用する分散剤の種類は特に制限なく、両親媒性を有する溶媒であれば、適用することが可能である。両親媒性の分散剤の例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、アセトン、アセトニトリルが挙げられる。

【0024】
本発明において、検出対象となる薬物としては、アンフェタミン系の薬物、特にメタンフェタミンが好適である。生体試料中のメタンフェタミンはアルカリ性の条件にすることにより、水に不溶となる性質を有するため、有機溶媒へ効果的に抽出される。そのため、本発明に係る溶媒を用いて、分離(抽出)を行うことにより、有機溶媒に抽出及び濃縮される。これにより、ビタミンC等の生体由来の成分によるECL検出の際の妨害を抑えることができる特長を有する。また、本発明に係る検出方法は、薬物以外の物質、例えば医薬品、農薬等についても適用可能である。

【0025】
本発明においては、生体試料と有機溶媒の混合溶液に機械的作用を印加しても良い。機械的作用の印加によって、生体試料中の検出対象を効率よく有機溶媒に濃縮することが可能となる。機械的作用を印加する方法は、特に制限するものではないが、水平型及び垂直型振とう器による振とう過程、並びに遠心分離器による遠心分離過程が好適に適用可能である。

【0026】
本発明においては、有機溶媒と分散剤の混合溶液のpH調整を行っても良い。pH調整方法は特に制限なく、公知の方法から任意に選択可能である。pH調整方法の例としては、リン酸または水酸化ナトリウム水溶液を添加する方法が挙げられる。本発明に好適な値は、分析方法により異なり、例えば、電気化学発光法を用いた場合には、pH値は7以上の中性からアルカリ性が望ましい。

【0027】
本発明において、有機溶媒と分散剤との混合溶液を分析する方法については、特に制限はなく、公知の方法から任意に選択することが可能である。分析方法の例としては、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーおよび質量分析と組み合わせたキャピラリー電気泳動クロマトグラフィー、電気化学発光法等が挙げられ、特に電気化学発光法を用いた方法が好適である。
【実施例1】
【0028】
以下に本発明に係る薬物の検出方法の実施例として、水/酢酸エチル/メタノール混合溶媒を用いて、電気化学測定によりMAの検出を行った例について説明する。
【実施例1】
【0029】
MA塩酸塩(大日本住友製薬社製)を添加した尿5.0 mLを試験管に分取し、0.1 moldm-3の水酸化ナトリウム水溶液0.5 mLを添加してアルカリ性とした。
【実施例1】
【0030】
この溶液に1.0mLの酢酸エチルを添加し、10分間振とう機で攪拌した。その後、2000 x gの遠心分離機を用いて、10分間遠心及び分離を行い、尿と酢酸エチルとを相分離させることで、尿資料中のMAを、酢酸エチルに抽出させた。
【実施例1】
【0031】
抽出後の酢酸エチルを0.10 mL分取し、リン酸緩衝溶液(PBS)でpHを調整した1.0 mmoldm-3のRu(bpy)32+水溶液0.50 mL、メタノール0.30 mL、を添加し、混合溶媒を調製した。
【実施例1】
【0032】
前記混合溶媒を用いて、電気化学発光法によるMAの検出を行った。電気化学発光測定は、微小電解ガラスセル中で行い、グラッシーカーボン作用電極、銀/塩化銀参照電極及び白金対極を用いた一般的な3電極方式によって行った。この電気化学発光測定は、電気化学アナライザによって制御した。また、電極表面からの微弱発光であるECLは、作用電極に向き合う形で光電子倍増管を設置することで検出した。また、全てのECL測定は暗室で行われた。
【実施例1】
【0033】
図1(実施例1)に、電気化学発光測定の結果を示す。図から、明瞭なシグナルが検出されていることが認められる。これは、本実施例に係る方法により、MAの検出が正しく行われたことを示している。

【0034】
生体試料から、液-液抽出により有機溶媒相にMAを濃縮した場合、ECL活性を示さず、電気化学発光法による検出ができない。この点を検証するため、濃縮後の酢酸エチルに対して、分散剤を用いず、直接電気化学発光測定を行った。測定に使用した機器、測定方法は、実施例1と同様である。

【0035】
図1(比較例1)に、電気化学発光測定の結果を示す。図からは、シグナルは確認されなかった。このことは、電気化学発光法によるMAの検出には、分散剤を添加した、本発明に係る混合溶媒が有効であることを示している。
【実施例2】
【0036】
電気化学発光法によるMAの検出における、pHの影響を検証するため、リン酸緩衝溶液を用いて、混合溶媒のpH値を変化させた場合のECL発光強度を測定した。測定に使用した機器、測定方法は実施例1と同様である。
【実施例2】
【0037】
図2(実施例2)に、それぞれのpH値において、本発明に係る混合溶媒を用いた電気化学発光測定を行った結果のグラフを示す。図から、pH7以上の中性-アルカリ性において、大きな電気化学発光強度を達成していることが認められる。また、pH7の中性条件下で、特に大きな発光強度が得られており、これは、本発明に係る検出方法では、よりマイルドな条件でMAの検出を行うことが可能であることが示されている。

図面
【図1】
0
【図2】
1