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明細書 :関節インピーダンス推定システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-093991 (P2018-093991A)
公開日 平成30年6月21日(2018.6.21)
発明の名称または考案の名称 関節インピーダンス推定システム
国際特許分類 A61B   5/11        (2006.01)
FI A61B 5/10 310G
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2016-239865 (P2016-239865)
出願日 平成28年12月9日(2016.12.9)
発明者または考案者 【氏名】望山 洋
【氏名】鈴木 健嗣
【氏名】ハサン モダル
【氏名】矢木 啓介
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000925、【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C038
Fターム 4C038VA04
4C038VB14
4C038VC20
要約 【課題】簡素かつ軽量な装置構成で、関節の動的な剛性の変化を推定する関節インピーダンス推定システムを提供する。
【解決手段】瞬発力を発生させる瞬発力発生装置を、推定対象とする関節の近傍に固定する。関節にはゴニオメータを貼付する。制御記録部は、瞬発力発生装置を駆動したタイミングとゴニオメータの出力信号をデジタルデータに変換して、センサ情報テーブルに記録する。関節インピーダンス演算装置の機械インピーダンス推定演算処理部は、センサ情報テーブルに記録されているデータと、瞬発力発生装置の力信号情報に基づき、関節の機械インピーダンスを推定演算する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
機械インピーダンスの推定対象とする関節の近傍に固定され、瞬発力を発生する瞬発力発生装置と、
前記関節に貼付されて前記関節の角度に応じた信号を出力する角度センサと、
前記瞬発力発生装置に瞬発力を発生させる制御を行うと共に、前記角度センサの信号をデジタルデータに変換してセンサ情報テーブルに記録する制御記録部と、
前記センサ情報テーブルに記録されたデータに基づいて、前記関節の機械インピーダンスを推定演算する機械インピーダンス推定演算処理部と
を具備する、関節インピーダンス推定システム。
【請求項2】
前記機械インピーダンス推定演算処理部は、前記関節の機械インピーダンスを推定演算する際に、前記センサ情報テーブルに記録されたデータと、予め計測しておいた前記瞬発力発生装置の力信号情報を利用する、請求項1に記載の関節インピーダンス推定システム。
【請求項3】
前記制御記録部は、前記関節の状態を検出するセンサの信号に呼応して、前記瞬発力発生装置の駆動タイミングを制御する、請求項2に記載の関節インピーダンス推定システム。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の関節の硬さを推定する、関節インピーダンス推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
世界中でロボット開発競争が過熱している。自動運転技術、ドローン、テロ対策ロボットなど、多方面に亘りロボットの社会実装が展開され、ロボット革命が既にスタートしているといっても過言ではない。わが国でも、日本政府が2014年に設置した「ロボット革命実現会議」での議論に基づき、2015年1月にロボット新戦略が打ち出され、世界をリードするために、次を見据えた非連続な次世代ロボット要素技術の研究開発が求められている。
そのような背景の下で、人と物理的環境を共有する場で使用されるロボットや、人に装着して力学的に動作を支援するロボット等において、対人親和性を高めることを目的として、柔軟性を有するロボットの研究~ソフトロボティクス~が世界中で盛んに行われている。
【0003】
人の動作を物理的に制動・支援したり、機械的な柔らかさを有しながら精度の良い作業を行ったりするためには、単に柔軟であるだけでは不十分で、剛性も兼ね備えた上でそれらを適切に切り替える必要が生ずる。例えば、人の力の伝達構造をみると、筋肉・腱・骨格からなる。そして、筋肉はその活性度に応じて変化する粘弾性要素を備えている。筋肉により発揮された張力が、腱を介して骨格に伝えられる。逆に外力を受けた場合は、弾性体である腱の働きにより衝撃が直接骨格に伝わりにくくなっている。つまり、人は外力や衝撃に対して柔軟な構造を持ち、歩行動作など日常的な動作場面では、その柔軟性を適切に変化させることで自然な動作を実現している。
【0004】
上述のように、人の関節は状況に応じてその剛性(または柔軟性)が動的に変化する。つまり、ソフトロボティクスにおける人工関節は、単に人の関節の動作を模倣するだけでは不十分で、状況に応じて関節の剛性を動的に変化させる必要がある。人工関節の実現には、人の関節が様々な動作においてその剛性が動的に変化する有り様を忠実に模倣できる必要がある。
【0005】
非特許文献1には、人の関節のインピーダンスを推定する装置の技術内容が開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Anindo Roy ; Hermano I. Krebs ; Shawnna L. Patterson ; Timothy N. Judkins ; Ira Khanna ; Larry W. Forrester ; Richard M. Macko ; Neville Hogan : "Measurement of Human Ankle Stiffness Using the Anklebot" , IEEE 10th International Conferrence on Rehabilitation Robotics pp.356-363
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に開示される「Anklebot」は、大型の機械である。「Anklebot」の大きさでは、足に装着したまま歩行し、関節の動的な剛性の変化を推定することが困難である。
【0008】
本発明はかかる課題を解決し、簡素かつ軽量な装置構成で、関節の動的な剛性の変化を推定する関節インピーダンス推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の関節インピーダンス推定システムは、機械インピーダンスの推定対象とする関節の近傍に固定され、瞬発力を発生する瞬発力発生装置と、関節に貼付されて関節の角度に応じた信号を出力する角度センサと、瞬発力発生装置に瞬発力を発生させる制御を行うと共に、角度センサの信号をデジタルデータに変換してセンサ情報テーブルに記録する制御記録部と、センサ情報テーブルに記録されたデータに基づいて、関節の機械インピーダンスを推定演算する機械インピーダンス推定演算処理部とを具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、簡素かつ軽量な装置構成で、関節の動的な剛性の変化を推定する関節インピーダンス推定システムを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の例である、関節インピーダンス推定装置の外観図である。
【図2】本発明の実施形態の例である、関節インピーダンス推定システムの全体構成を示す概略図である。
【図3】関節インピーダンス推定装置の、ハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】関節インピーダンス推定装置の、ソフトウェア機能を示すブロック図である。
【図5】瞬発力発生装置の外観図である。
【図6】瞬発力発生装置の動作を説明する概略図である。
【図7】関節インピーダンス演算装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図8】関節インピーダンス演算装置のソフトウェア機能を示すブロック図である。
【図9】接触検出センサと、歩行動作との関係を示す、タイムチャートを含む説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[関節インピーダンス推定装置101の外観]
図1は、本発明の実施形態の例である、関節インピーダンス推定装置101の外観斜視図である。
被験者の足102の甲には、瞬発力発生装置103が括り付けられている。
被験者の足102の足首には、屈曲角度に応じたアナログ電圧信号を出力する角度センサであるゴニオメータ104が貼り付けられている。
瞬発力発生装置103には内部にモータが組み込まれている。
瞬発力発生装置103のモータとゴニオメータ104は、マイコンよりなる制御記録部105に接続されている。また、図1には隠れて見えないが、被験者の足の裏には、つま先と踵にそれぞれ接触検出センサ205、206(図2参照)が貼付されている。
すなわち、関節インピーダンス推定装置101は、瞬発力発生装置103と、ゴニオメータ104を含むセンサと、制御記録部105よりなる。

【0013】
[関節インピーダンス推定システムの全体構成]
図2は、関節インピーダンス推定装置101を含む、関節インピーダンス推定システム201の全体構成を示す概略図である。
マイコンである制御記録部105は、瞬発力発生装置103のモータ202a、202bを制御して、錘203が取り付けられた板バネ204を駆動することで、瞬発力(Impulse: インパルス)を発生させる。そして、瞬発力発生装置103から瞬発力が発生した時点から数秒程度の時間間隔における、ゴニオメータ104の出力信号をデジタルデータに変換して、接触検出センサ205、206の出力信号と共に内部の不揮発性ストレージ304(図3参照)に記録する。つまり、制御記録部105は瞬発力発生装置103に対する駆動制御と、ゴニオメータ104や接触検出センサ205、206等から得られる情報の記録を同時に行う。

【0014】
制御記録部105の不揮発性ストレージ304に記録された、瞬発力発生時点の時間情報と、ゴニオメータ104のデータと、接触検出センサ205、206のデータは、関節インピーダンス演算装置207に供給される。パソコン等よりなる関節インピーダンス演算装置207は、予め記録しておいた瞬発力発生装置103の振動データと、関節インピーダンス推定装置101が生成した瞬発力発生時点の時間情報と、ゴニオメータ104のデータと、接触検出センサ205、206のデータを用いて、関節の機械インピーダンスを推定する演算処理を行う。そして、関節の慣性、関節の減衰係数、関節の弾性係数を算出する。

【0015】
[関節インピーダンス推定装置101のハードウェア構成]
図3は、関節インピーダンス推定装置101の、ハードウェア構成を示すブロック図である。
マイコンである制御記録部105は、CPU301、ROM302、RAM303、不揮発性ストレージ304、現在日時情報を出力するリアルタイムクロック(以下「RTC」)305がバス306に接続されている。バス306にはこの他に、アナログ電圧信号をデジタルデータに変換するA/D変換器307と、接触検出センサ205、206や、必要になる場合は種々の他のデジタルセンサが接続されている。
A/D変換器307には、ゴニオメータ104や、必要になる場合は種々の他のアナログセンサ308がマルチプレクサ309を介して接続されている。
また、バス306には瞬発力発生装置103のモータ202a、202bを駆動するためのドライバ310が接続されている。

【0016】
[関節インピーダンス推定装置101のソフトウェア機能]
図4は、関節インピーダンス推定装置101の、ソフトウェア機能を示すブロック図である。
ゴニオメータ104や他のアナログセンサ308からマルチプレクサ309を介してA/D変換器307を通じて得られるデータと、接触検出センサ205、206を含むデジタルセンサから得られるデータは、入出力制御部401に供給される。
一方、シーケンス制御部402は接触検出センサ205、206を含むデジタルセンサから得られるデータを受けて、モータ202a、202bを駆動するタイミングパルスを生成し、ドライバ310へ出力する。
アナログセンサ308及びデジタルセンサから得られるデータと、シーケンス制御部402が出力するタイミングパルスは、センサ情報テーブル403に記録される。センサ情報テーブル403には、必要に応じてRTC305が出力する現在日時情報も同時に記録される。

【0017】
[瞬発力発生装置103の外観]
図5は、瞬発力発生装置103の外観図である。発明者等が試作した瞬発力発生装置103は、板バネ204の両端をフレーム501に固定したモータ202a、202bの軸に固定している。
下方向に屈曲した板バネ204の中心部分には錘203が取り付けられている。

【0018】
[瞬発力発生装置103の動作]
図6Aは、瞬発力発生装置103の、板バネ204が下方向に屈曲した初期状態を示す概略図である。
図6Bは、瞬発力発生装置103が、板バネ204が下方向に屈曲した初期状態(図6A)から板バネ204を上方向に屈曲駆動した状態を示す概略図である。
図6Aの状態からそれぞれのモータ202a、202bを駆動して、板バネ204を上方向に屈曲駆動させると、図6Bに示す様に板バネ204が湾曲する。
図6Cは、瞬発力発生装置103が、板バネ204を屈曲駆動した状態(図6B)から板バネ204が上方向に屈曲した状態を示す概略図である。

【0019】
図6Bの状態から板バネ204の屈曲駆動が進行すると、板バネ204に飛び移り座屈(snap through buckling)に起因する変形が生じ、瞬時に図6Cの状態に至る。その際、板バネ204の飛び移り座屈に起因する瞬発力が生じる。
図6Dは、瞬発力発生装置103の、板バネ204が上方向に屈曲した状態(図6C)から板バネ204を下方向に屈曲駆動した状態を示す概略図である。
図6Cの状態からそれぞれのモータ202a、202bを駆動して、板バネ204を下方向に屈曲駆動させると、図6Dに示す様に板バネ204が湾曲する。
この後、図6Dから再度飛び移り座屈が生じて図6Aの状態に至る。

【0020】
図5に示した、発明者等が試作した瞬発力発生装置103は、図6にて説明したように飛び移り座屈に基づくインパルス状の瞬発力を発生する。この瞬発力は、電気回路におけるインパルス信号に類似する。つまり、この瞬発力発生装置103は、所定の負荷に対する過渡特性を測定するための、極めて良好な物理力を発生する。この瞬発力発生装置103は、非特許文献1に示される従来技術と比べて大幅な小型化が可能である。電気回路では過渡特性の測定に際し、電圧や電流を計測するが、関節の機械インピーダンスの推定では、ゴニオメータ104を用いて関節の角度を測定し、角度の時間変化から機械インピーダンスを推定演算する。

【0021】
なお、瞬発力発生装置103が発生する瞬発力には、板バネ204の大きさやバネ係数、そして錘203の質量等に起因する、固有振動が含まれる。したがって、後述する関節インピーダンス演算装置207では、関節インピーダンスの推定演算の際、瞬発力発生装置103の固有振動の影響を考慮する必要がある。
また、瞬発力発生装置103自体も、固有振動が生じ難くするよう、設計を工夫する必要がある。具体的には例えば、板バネ204を含む瞬発力発生装置103自体を小型化して、固有振動周波数を高くさせる。また、板バネ204に固有振動が減衰し易い合成樹脂の材料を用いる、等が考えられる。

【0022】
[関節インピーダンス演算装置207のハードウェア構成]
図7は、関節インピーダンス演算装置207のハードウェア構成を示すブロック図である。
周知のパソコンよりなる関節インピーダンス演算装置207は、CPU701、ROM702、RAM703、表示部704、操作部705、不揮発性ストレージ706とシリアルインターフェース707がバス708に接続されている。
不揮発性ストレージ706には、パソコンを関節インピーダンス演算装置207として稼働させるためのプログラムが格納されている。
関節インピーダンス推定装置101が推定して記録したデータは、シリアルインターフェース707を通じて不揮発性ストレージ304に記憶される。なお、シリアルインターフェース707の代わりにネットワークインターフェースを用いてもよい。

【0023】
[関節インピーダンス演算装置207のソフトウェア機能]
図8は、関節インピーダンス演算装置207のソフトウェア機能を示すブロック図である。
関節インピーダンス推定装置101が推定して記録したデータは、不揮発性ストレージ706に設けたセンサ情報テーブル403に記憶されている。この他に、瞬発力発生装置103の固有振動特性を6軸センサ等で測定したデータである瞬発力発生装置の力信号情報801が、不揮発性ストレージ706に記憶されている。
入出力制御部802は機械インピーダンス推定演算処理部803を含む。機械インピーダンス推定演算処理部803は、センサ情報テーブル403と瞬発力発生装置の力信号情報801を読み込んで、関節の機械インピーダンスを推定演算し、関節の慣性、関節の減衰係数、関節の弾性係数を算出する。関節の慣性、関節の減衰係数、関節の弾性係数は、表示部に表示される。
なお、機械インピーダンス推定演算処理部803は、市販の表計算ソフトウェア等を用いてもよい。

【0024】
センサ情報テーブル403に記録されている、ゴニオメータ104の角度データには、計測ノイズ成分が混入している可能性がある。その場合は、機械インピーダンス推定演算処理部803は、センサ情報テーブル403のデータから関節の機械インピーダンスを推定演算する前段階として、センサ情報テーブル403のデータからノイズ成分を除去する(減算する)処理を行う必要がある。

【0025】
[機械インピーダンスの推定演算]
これより、機械インピーダンス推定演算処理部803が遂行する関節の機械インピーダンスの推定演算について説明する。
ヒトやロボットの関節を連続時間の運動方程式で記述すると次式のようになる。

【0026】
【数1】
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【0027】
上記の式(1)において、Jは慣性を表す係数であり、 Dは減衰係数、 Kは弾性係数である。 またτは関節軸に加わるトルクであり、 θは関節軸の角度である。 式(1)で表される関節のインピーダンス(J,D,K)を推定するため、系への入出力にあたるトルクと角度を各種センサによって取得する。
センサから得られる信号はA/D変換を介することで離散時間データとして扱われる。そこで離散時間領域で関節の運動を表す数理モデルとして次式で表される2次の線形モデルを利用する。

【0028】
【数2】
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【0029】
上記の式(2)で求めるべきパラメータは各係数a,a,bであり、 各センサから得られる入出力情報をもとに最小二乗法ベースのオフライン、あるいはオンラインアルゴリズムに従って導出する。
ここで得られるパラメータは離散時間運動方程式の係数となる。式(2)について、 シフト演算子qを用いて次のように書き換える。

【0030】
【数3】
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【0031】
上記の式(3)において、シフト演算子とサンプリング周期Tを用いて次のように定義されるデルタ演算子の導入を考える。

【0032】
【数4】
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【0033】
デルタ演算子はサンプリング周期Tを0としたときに連続時間の微分演算子と等価な働きをする演算子である。線形システムの場合には、周波数応答を考慮すると、サンプリング周期Tをシステムバンド幅の25倍以上とすることでデルタ演算子で表された離散時間運動方程式を連続時間運動方程式として近似的に得ることができる。
式(3)を式(4)の定義に基づいて代数的にデルタ演算子表現に変換すると次のようになる。

【0034】
【数5】
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【0035】
十分に小さなサンプリング周期を仮定して連続時間の運動方程式との対応を考えると、関節の機械インピーダンスは次のように求められる。

【0036】
【数6】
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【0037】
機械インピーダンス推定演算処理部803は、上記の式(6)(7)(8)を用いて、慣性係数J、 減衰係数D、 弾性係数Kを求める。

【0038】
[シーケンス制御部402]
関節の剛性(または柔軟性)は、関節が何らかの運動を行っている状態において、その運動のタイミング毎に変化する。
例えば、歩行という動作では、(1)足の裏が地面に接触する直前、(2)踵が地面に接触した瞬間、(3)つま先が地面に接触して足の裏全体が地面に接触した瞬間、(4)つま先が地面に接触して踵が地面から離れた瞬間、(5)つま先が地面から離れた瞬間、という状態が発生する。足首の剛性は、この5パターンの各々において異なる挙動を示す。

【0039】
関節インピーダンス推定装置101の制御記録部105は、このような関節の動作を把握し、適切なタイミングで瞬発力発生装置103を稼働させて、ゴニオメータ104等のセンサのデータを記録しなければならない。
歩行という動作において、踵と爪先に設けられる接触検出センサ205、206は、関節の動作を把握し、また場合によっては計測動作を禁止するタイミングを得るために必須である。

【0040】
図9は、接触検出センサ205、206と、歩行動作との関係を示す、タイムチャートを含む説明図である。
時点t1において、踵の接触検出センサ206は、踵が地面に接触したことを検出する。
時点t2において、つま先の接触検出センサ205は、つま先が地面に接触したことを検出する。
時点t3において、踵の接触検出センサ206は、踵が地面から離れたことを検出する。
時点t4において、つま先の接触検出センサ205は、つま先が地面から離れたことを検出する。
時点t2からt3の間は、足裏全体が地面に接触している。つまり、足先の運動が地面によって規制される。このため、この時点で瞬発力発生装置103を稼働させても、足首に角度変化は殆ど生じない。この時点t2からt3の間は、関節インピーダンス推定を行うことが実質的に不可能な時間である。

【0041】
上述の実施形態では、足首の関節インピーダンスを推定演算する際の、関節インピーダンス推定装置101と関節インピーダンス演算装置207を説明した。勿論、関節インピーダンスは、足首に限られない。膝、腰、肩、肘、手首等、関節インピーダンスを測定する対象となる関節は他にもある。これら足首以外の関節では、接触検出センサ205、206とは異なる、別のセンサを用意する必要がある。例えば、関節の位置や方向を検出するためのジャイロセンサ、筋肉の隆起を検出するための赤外線反射センサ等(特開2014-50590号公報等)である。ジャイロセンサは加速度センサでもあるので、瞬発力発生装置103が発する瞬発力も捕捉できる。これらのセンサは、アナログセンサ308であればゴニオメータ104と同様にマイコンである制御記録部105のマルチプレクサ309に接続され、デジタルセンサであれば制御記録部105のバス306に接続される。

【0042】
また、関節インピーダンス推定装置101の制御記録部105には、絶対時間情報を出力するRTC305が含まれている。制御記録部105単体で関節インピーダンスの推定演算に必要な情報が得られるのであれば、絶対時間情報は不要である。しかし、他の装置からセンサ等の情報を取得したり、あるいはカメラが撮影する動画像データから所定の画像処理を経て関節の動きを検出する等の場合は、センサ情報テーブル403に絶対時間情報を含めることで、これら他の情報との同期を得るのが容易になる。

【0043】
本実施形態においては、関節インピーダンス推定システム201を開示した。
瞬発力を発生させる瞬発力発生装置103を、推定対象とする関節の近傍に固定する。関節にはゴニオメータ104を貼付する。制御記録部105は、瞬発力発生装置103を駆動したタイミングとゴニオメータ104の出力信号をデジタルデータに変換して、センサ情報テーブル403に記録する。
関節インピーダンス演算装置207の機械インピーダンス推定演算処理部803は、センサ情報テーブル403に記録されているデータから、瞬発力発生装置の力信号情報801を考慮に入れた上で、関節の機械インピーダンスを推定演算する。
このように、関節インピーダンス推定システム201は簡素なハードウェアを用いて、運動中の関節の機械インピーダンスを算出することができる。
特に、瞬発力発生装置103には飛び移り座屈を応用した機構を採用することで、必要最小限の機械部品で、容易に、関節の機械インピーダンスを推定演算するに必要なインパルス状の瞬発力を発生させることができる。

【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0045】
101…関節インピーダンス推定装置、102…足、103…瞬発力発生装置、104…ゴニオメータ、105…制御記録部、201…関節インピーダンス推定システム、202a、202b…モータ、203…錘、204…板バネ、205、206…接触検出センサ、207…関節インピーダンス演算装置、301…CPU、302…ROM、303…RAM、304…不揮発性ストレージ、305…RTC、306…バス、307…A/D変換器、308…アナログセンサ、309…マルチプレクサ、310…ドライバ、401…入出力制御部、402…シーケンス制御部、403…センサ情報テーブル、501…フレーム、701…CPU、702…ROM、703…RAM、704…表示部、705…操作部、706…不揮発性ストレージ、707…シリアルインターフェース、708…バス、801…瞬発力発生装置の力信号情報、802…入出力制御部、803…機械インピーダンス推定演算処理部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8