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明細書 :イオン性基を有する含硫黄ポリマー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6653098号 (P6653098)
公開番号 特開2016-053159 (P2016-053159A)
登録日 令和2年1月29日(2020.1.29)
発行日 令和2年2月26日(2020.2.26)
公開日 平成28年4月14日(2016.4.14)
発明の名称または考案の名称 イオン性基を有する含硫黄ポリマー
国際特許分類 C08G  75/14        (2006.01)
H01M   4/60        (2006.01)
H01M   4/62        (2006.01)
H01M   4/137       (2010.01)
H01M   4/40        (2006.01)
H01M   4/46        (2006.01)
FI C08G 75/14
H01M 4/60
H01M 4/62 Z
H01M 4/137
H01M 4/40
H01M 4/46
請求項の数または発明の数 12
全頁数 26
出願番号 特願2015-169330 (P2015-169330)
出願日 平成27年8月28日(2015.8.28)
優先権出願番号 2014177446
優先日 平成26年9月1日(2014.9.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年5月25日(2018.5.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】堤 宏守
【氏名】山吹 一大
【氏名】板岡 加成恵
【氏名】小橋 亜依
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
【識別番号】100198074、【弁理士】、【氏名又は名称】山村 昭裕
【識別番号】100172797、【弁理士】、【氏名又は名称】有馬 昌広
審査官 【審査官】佐藤 のぞみ
参考文献・文献 特公昭43-005820(JP,B1)
特表2010-507564(JP,A)
特表2010-516831(JP,A)
米国特許出願公開第2014/0199592(US,A1)
特開2007-042387(JP,A)
特開2010-061864(JP,A)
特開2012-229329(JP,A)
調査した分野 C08G 75/00-75/32
H01M 4/00-4/62
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の式
【化1】
JP0006653098B2_000025t.gif

[式中、Sは硫黄原子を表し、Rはイオン性基を表し、R’は水素原子又はC1~C4のアルキル基を表し、nは1~14のいずれかの整数を表す。Xは1以上の正の整数を表し、各単位中のXの数は異なっていても良い]で表される繰り返し単位を有する含硫黄ポリマー。
【請求項2】
Rで表されるイオン性基が、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、アンモニウム基又はそれらの塩である基であることを特徴とする、請求項1に記載の含硫黄ポリマー。
【請求項3】
Rが、スルホン酸ナトリウム塩基又はカルボン酸基であることを特徴とする、請求項2に記載の含硫黄ポリマー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の含硫黄ポリマーを含有する二次電池用正極材料。
【請求項5】
請求項4に記載の二次電池用正極材料からなる二次電池用正極。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載の含硫黄ポリマー及び酸性基又は塩基性基を有するポリマーを含むことを特徴とする請求項5に記載の二次電池用正極。
【請求項7】
含硫黄ポリマーにおけるRがカルボン酸基又はその塩である基であり、酸性基又は塩基性基を有するポリマーがポリアリルアミンであることを特徴とする請求項6に記載の二次電池用正極。
【請求項8】
請求項5~7のいずれかに記載の二次電池用正極を使用する二次電池。
【請求項9】
二次電池の負極が、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、及びナトリウムから選ばれるいずれか一つであること特徴とする、請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
式(I)
【化2】
JP0006653098B2_000026t.gif

[式中、Rはイオン性基を表し、R’は水素原子又はC1~C4のアルキル基を表し、nは1~14のいずれかの整数を表す。]で表されるモノアリル化合物と、
分子状硫黄(S)を反応させることを特徴とする含硫黄ポリマーの製造方法。
【請求項11】
Rが、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、アンモニウム基又はそれらの塩である基であることを特徴とする、請求項10に記載の含硫黄ポリマーの製造方法。
【請求項12】
Rが、スルホン酸ナトリウム塩基又はカルボン酸基であることを特徴とする、請求項11に記載の含硫黄ポリマーの製造方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、分子状硫黄(S)とイオン性基を有するアリル化合物とを反応させた新規ネットワークポリマーであるイオン性基を有する含硫黄ポリマーに関し、また、前記含硫黄ポリマーを含有する電池材料に関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄は、リチウム二次電池の正極活物質として通常使用されているLiCoOより理論電池容量が大きく、豊富に存在する資源であるため、電池の材料として着目されている。したがって、リチウムやナトリウムを負極とし、硫黄を正極活物質とする二次電池については、多くの報告がある。このうち、ナトリウム-硫黄電池は、実用化されているものの、硫黄正極の活性を高めるために、その作動温度が300℃と高温にする必要があることや、電池デバイスそのものが大きな装置であることから、通常の電池として用いることは困難である。一方、硫黄そのものの反応性を高める工夫として、硫黄粒子を微粉化し、さらにその周囲に炭素などの微細粉末を修飾する方法などが考案されているものの、電池反応の進行に伴い生成する金属硫化物の電解液への溶出、それに伴う電池容量の低下が大きな問題となっている。
【0003】
そこで金属硫化物の電解液への溶出を抑制された正極活物質として、含硫黄ポリマーを用いることが提案されている。例えば、ビニル化合物と分子状硫黄(S)とのラジカル重合(逆加硫)によって合成された含硫黄ポリマー(非特許文献1)や、エチレンスルフィド及びエポキシ化合物と分子状硫黄(S)のラジカル重合(逆加硫)により作製された硫黄含有高分子材料(特許文献1)が提案されている。さらに、ポリイソプレン中の内部二重結合と硫黄のラジカル反応により加硫したポリイソプレンポリマーや(特許文献2)、ヘキサクロロブタジエン等のハロゲン化不飽和炭化水素と硫黄との反応により調製したポリ硫化カーボン(特許文献3)が報告されている。
【0004】
また、本願の出願人は、分子状硫黄(S)とモノアリル化合物(1)とを混合して加熱することにより含硫黄ポリマーが得られることをすでに見いだしている(非特許文献2)。
【0005】
【化1】
JP0006653098B2_000002t.gif

【0006】
(Rは、水素原子又は水酸基を表す。)
【0007】
上記の特許文献1~3及び非特許文献1及び2に記載された含硫黄ポリマーは、いずれもイオン性基を含んでいない。また、非特許文献2に関して、イオン性基を含むアリル化合物と分子状硫黄(S)とから、ネットワーク構造が形成された、イオン性基を含む含硫黄ポリマーが得られることも示されていない。
【0008】
また、上記の特許文献1~3及び非特許文献1及び2に記載された含硫黄ポリマーは、それぞれ正極活物質として使用できることは示されているが、具体的な電池に使用した場合の機能性、特に、充放電容量及びサイクル寿命特性(室温で1C充電と1C放電を繰り返したときの容量値の推移)が満足できるものではなく、改良することが求められている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】WO2013/023216号公報
【特許文献2】特開2012-150933号公報
【特許文献3】特開2003-123758号公報
【0010】

【非特許文献1】Nature Chemistry,Vol.5,p.518-524(2013).
【非特許文献2】第63回高分子学会年次大会要旨
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、充放電容量及びサイクル寿命特性に優れた電池を製造するための正極活物質として利用可能な含硫黄ポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は鋭意検討の結果、イオン性基を有する含硫黄ポリマーを二次電池の正極活物質として使用することにより、充放電容量及びサイクル寿命特性に優れた電池を製造するための正極活物質として利用可能であることを見いだし、また、上記含硫黄ポリマーと共に酸性基又は塩基性基を有するポリマーを添加した二次電池用正極材料は、充放電容量及びサイクル寿命特性に優れることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は
(1)以下の式
【0014】
【化2】
JP0006653098B2_000003t.gif

【0015】
[式中、Sは硫黄原子を表し、Rはイオン性基を表し、R’は水素原子又はC1~C4のアルキル基を表し、nは1~14のいずれかの整数を表す。Xは1以上の正の整数を表し、各単位中のXの数は異なっていても良い]で表される繰り返し単位を有する含硫黄ポリマー、
(2)Rで表されるイオン性基が、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、アンモニウム基又はそれらの塩である基であることを特徴とする、上記(1)に記載の含硫黄ポリマー、
(3)Rが、スルホン酸ナトリウム塩基又はカルボン酸基であることを特徴とする、上記(2)に記載の含硫黄ポリマー、
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の含硫黄ポリマーを含有する二次電池用正極材料、(5)上記(4)に記載の二次電池用正極材料からなる二次電池用正極、
(6)上記(1)~(3)のいずれかに記載の含硫黄ポリマー及び酸性基又は塩基性基を有するポリマーを含むことを特徴とする上記(5)に記載の二次電池用正極、
(7)含硫黄ポリマーにおけるRがカルボン酸基又はその塩である基であり、酸性基又は塩基性基を有するポリマーがポリアリルアミンであることを特徴とする上記(6)に記載の二次電池用正極、
(8)上記(5)~(7)のいずれかに記載の二次電池用正極を使用する二次電池、
(9)二次電池の負極が、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、及びナトリウムから選ばれるいずれか一つであること特徴とする、上記(8)に記載の二次電池、
(10)式(I)
【化3】
JP0006653098B2_000004t.gif

[式中、Rはイオン性基を表し、R’は水素原子又はC1~C4のアルキル基を表し、nは1~14のいずれかの整数を表す。]で表されるモノアリル化合物と、
分子状硫黄(S)を反応させることを特徴とする含硫黄ポリマーの製造方法、
(11)Rが、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、アンモニウム基又はそれらの塩である基であることを特徴とする、上記(10)に記載の含硫黄ポリマーの製造方法、
(12)Rが、スルホン酸ナトリウム塩基又はカルボン酸基であることを特徴とする、上記(11)に記載の含硫黄ポリマーの製造方法、
に関する。

【発明の効果】
【0016】
本発明の含硫黄ポリマーは、電池の電解質への親和性が高く、二次電池の正極材料として使用するとき、電気化学的な反応が効率的に進行し、充放電容量が大きくなる。また、正極材に多孔質の導電材を用いることによりサイクル寿命特性が向上する。さらに、上記含硫黄ポリマーと共に酸性基又は塩基性基を有するポリマーを添加した二次電池用正極材料は、充放電容量及びサイクル寿命特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】イオン性基を有する含硫黄ポリマーを試験極に用いたサイクリックボルタモグラム(CV)を示す図である。
【図2】Li-Sコインセルの放電容量とサイクル特性の関係を示す図である。
【図3】S-undecene(0.5)を活物質とする電極、S-undecene-COOH(1.0)を活物質とする電極、S-undecene-COOH(1.0)-PAA電極を用いて作製したコイン型セルの1サイクル目の充放電曲線を示す図である。
【図4】S-undecene(0.5)を活物質とする電極、S-undecene-COOH(1.0)を活物質とする電極、S-undecene-COOH(1.0)-PAA電極の容量維持率を示す図である。
【図5】S-undecene(0.5)を活物質とする電極、S-undecene-COOH(1.0)を活物質とする電極、S-undecene-COOH(1.0)-PAA電極のクーロン効率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(イオン性基を有するアリル化合物)
本発明におけるイオン性基を有するアリル化合物は、以下の式(I)で表される。

【0019】
式(I)

【0020】
【化4】
JP0006653098B2_000005t.gif

【0021】
(式中、Rはイオン性基を表し、R’は水素原子又はC1~C4のアルキル基を表し、nは1~14の整数を表す。)

【0022】
本発明における、Rで表されるイオン性基とは、酸又は塩基の存在によりイオン化される基を意味し、電解質と親和性を有する基であれば特に制限は無く、塩を形成しているものも含まれる。イオン性基としては、スルホン酸基(-SOH)、スルホンアミド基(-SONH)、硫酸基(-OSOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))、リン酸基(-OPO(OH))、カルボン酸基(-COOH)、アンモニウム基(-NH)又はそれらの塩である基等が好ましく、スルホン酸及びカルボン酸又はそれらの塩である基が特に好ましい。塩としては、例えば、ナトリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、塩酸塩等が挙げられる。

【0023】
本発明における、R’で表されるC1~C4のアルキル基とは、炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味し、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基が挙げられる。

【0024】
本発明の式(I)で表される化合物は、具体的には以下に示される化合物である。

【0025】
【化5】
JP0006653098B2_000006t.gif

【0026】
【化6】
JP0006653098B2_000007t.gif

【0027】
【化7】
JP0006653098B2_000008t.gif

【0028】
【化8】
JP0006653098B2_000009t.gif

【0029】
【化9】
JP0006653098B2_000010t.gif

【0030】
【化10】
JP0006653098B2_000011t.gif

【0031】
【化11】
JP0006653098B2_000012t.gif

【0032】
上記化合物の中でも、アリルスルホン酸(allyl-SOH)及び11-ドデセン-1-カルボン酸(undecene-COOH)、又はそれらの塩が好ましい。また、上記塩の中でも、ナトリウム塩が好ましい。

【0033】
本発明のイオン性基を有するアリル化合物は、市販品を用いてもよいし、通常の有機合成手法を用いて当該アリル化合物に誘導することもできる。

【0034】
式(I)で表される化合物のRがスルホン酸基である場合、すなわち、スルホン酸化合物(4)である場合、ハロゲン化合物(2)をアルカリの存在下に硫化水素と反応させることによって、チオール化合物(3)へと誘導し、さらにチオール化合物(3)を過酸化水素等の酸化剤によって酸化し、スルホン酸化合物(4)を得ることができる。

【0035】
【化12】
JP0006653098B2_000013t.gif

【0036】
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選択されるハロゲン原子を表し、R’及びnは前記と同じ定義である。)

【0037】
式(I)で表される化合物のRがスルホンアミド基である場合、すなわち、スルホンアミド化合物(6)である場合、前記スルホン酸化合物(4)の塩を塩化チオニル、オキシ塩化リン、五塩化リン、三塩化リン及び塩化スルフリル等の塩素化剤と反応させることによってスルホン酸クロリド化合物(5)へと誘導し、次にアンモニアと反応させることによって、スルホンアミド化合物(6)を得ることができる。

【0038】
【化13】
JP0006653098B2_000014t.gif

【0039】
(式中、R’及びnは前記と同じ定義である。)

【0040】
式(I)で表される化合物のRが硫酸基である場合、すなわち硫酸エステル化合物(8)である場合、アルコール化合物(7)と硫酸を反応させることによって、硫酸エステル化合物(8)を得ることができる。

【0041】
【化14】
JP0006653098B2_000015t.gif

【0042】
(式中、R’及びnは前記と同じ定義である。)

【0043】
式(I)で表される化合物のRがホスホン酸基である場合、すなわちホスホン酸エステル化合物(9)である場合、ハロゲン化合物(2)を亜リン酸と反応させることによって、ホスホン酸エステル化合物(9)を得ることができる。

【0044】
【化15】
JP0006653098B2_000016t.gif

【0045】
(式中、X、R’及びnは前記と同じ定義である。)

【0046】
式(I)で表される化合物のRがリン酸基である場合、すなわちリン酸エステル化合物(10)である場合、アルコール化合物(7)をリン酸と脱水縮合反応することによって、リン酸エステル化合物(10)を得ることができる。

【0047】
【化16】
JP0006653098B2_000017t.gif

【0048】
(式中、R’及びnは前記と同じ定義である。)

【0049】
式(I)で表される化合物のRがカルボン酸基である場合、すなわち、カルボン酸化合物(12)である場合、アルコール化合物(11)を過酸化水素等の酸化剤によって酸化することによって、カルボン酸化合物(12)を得ることができる。

【0050】
【化17】
JP0006653098B2_000018t.gif

【0051】
(式中、R’及びnは前記と同じ定義である。)

【0052】
式(I)で表される化合物のRがアミノ基である場合、すなわち、アミン化合物(13)である場合、例えば、ハロゲン化合物(2)とフタルイミドカリウム塩とを反応させ、アルカリ性水溶液で加水分解させる反応(ガブリエル合成)によって、アミン化合物(13)を得ることができる。

【0053】
【化18】
JP0006653098B2_000019t.gif

【0054】
(式中、X、R’及びnは前記と同じ定義である。)

【0055】
なお、上記の合成法における出発物である、ハロゲン化合物(2)並びにアルコール化合物(7)及び(11)は、市販品を用いることができる。また、通常の有機合成手法により誘導してもよい。

【0056】
アルコール化合物(7)及び(11)のnが2以上のとき、市販のアリルアルコール、β-メタリルアルコールの増炭反応、すなわち、アリルアルコール、β-メタリルアルコールを酸化しアルデヒドへと誘導し、次にWittig反応によってオレフィンにし、さらにヒドロホウ素化反応を行うことによって、nが2以上のアルコール化合物(7)及び(11)を得ることができる。また、ハロゲン化合物(2)は、アルコール化合物(7)及び(11)のアッペル反応によりOH基をハロゲン原子に置換することによって、合成することができる。

【0057】
上記の化合物から塩を得る場合、例えば、当該化合物を溶解した有機溶媒中に、塩酸、硫酸などの酸、又は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム塩、水酸化マグネシウム塩、水酸化カリウム塩、水酸化カルシウム等の塩基を添加して中和反応させ、目的物を有機溶媒に不溶の目的物の塩として析出させ単離する方法等がある。

【0058】
(分子状硫黄(S))
本発明における分子状硫黄(S)は、最安定な同素体である環状構造をした硫黄(S)に加えて、同素体(S、S12、S18、S20等)を含んでいてもよい。なお、Sとは、硫黄の8量体を意味する。
前記同素体はそれぞれ融点を有する。硫黄の最安定な同素体であるSは、3つの結晶形(α硫黄、β硫黄及びγ硫黄)をもち、その融点はそれぞれ112.8℃、119.6℃及び106.8℃である。そのため、少なくとも硫黄の融解には120℃以上の温度で加熱することが必要である。また、硫黄は安定構造のα硫黄から温度の上昇とともにβ硫黄、λ硫黄、μ硫黄へと転移していき、159.4℃以上で環状硫黄のラジカル開裂が進み、2価のラジカルができる。

【0059】
(含硫黄ポリマー)
本発明における含硫黄ポリマーは、前記のイオン性基を有するアリル化合物と分子状硫黄(S)のラジカル反応により合成され、以下の式
【化19】
JP0006653098B2_000020t.gif

(式中、R、R’及びnは前記と同じ定義であり、Sは硫黄原子を示し、Xは1以上の正の整数を表し、各単位中のXの数は異なっていても良い)で表わされる繰り返し単位を有するネットワーク構造が形成されるものであれば特に制限されないが、例えば以下の方法で合成することができる。

【0060】
【化20】
JP0006653098B2_000021t.gif

【0061】
(式中、S,R、R’、n及びXは前記と同じ定義である。波線は他の単位との結合位置を表す)

【0062】
まず、式(I)で表されるイオン性基を有するアリル化合物を、加熱又は非加熱条件によって、反応溶媒に溶解させる。上記のアリル化合物を溶解させるときの温度は、当該アリル化合物が溶解する温度であれば特に制限されない。次に、上記のアリル化合物が溶解した後に、分子状硫黄(S)を加えさらに加熱・撹拌する。分子状硫黄(S)を加えた後の加熱・撹拌は、分子状硫黄(S)がラジカルを発生する温度である159.4℃以上であれば何℃でも構わないが、好ましくは160℃~195℃である。

【0063】
反応溶媒としては、前記アリル化合物及び分子状硫黄(S)が溶解する溶媒であれば特に制限は無く、例えば、メタノール、エタノール、ジエチレングリコール等のアルコール類;アセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、エチルアセテート、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールが挙げられる。好ましくは、ジエチレングリコールである。

【0064】
上記方法で合成された含硫黄ポリマーは、必要に応じて、反応生成物を、メタノール、クロロホルム、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶媒で洗浄して、未反応物等の不純物を除くことができる。

【0065】
上記の方法で製造された含硫黄ポリマーは、H及び13CNMR測定、IR測定、並びに質量分析(MS)等の各種分光学的手法によりその構造を確認することができる。

【0066】
本発明の含硫黄ポリマーは、メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、エチルアセテート、ジメチルスルホキシド、水等の溶媒に可溶である。

【0067】
本発明の含硫黄ポリマーの数平均分子量(Mn)は、500~10,000、好ましくは1,000~5,000、もっとも好ましくは1,000~2,000である。なお、数平均分子量は、GPC(gel permeation chromatography)法により測定できる。

【0068】
本発明の含硫黄ポリマーにおける、硫黄(S)と式(I)で表されるアリル化合物とのモル比は、好ましくは1:0.01~1:100であり、より好ましくは、1:0.05~1:20であり、さらに好ましくは1:0.5~1:10である。

【0069】
(二次電池用正極材料)
本発明の含硫黄ポリマーは、二次電池用正極材料として使用することができる。また、二次電池用正極材料は、前記の含硫黄ポリマーを含むものであれば特に制限は無いが、導電助剤やバインダー、及び溶媒を含んでいることが好ましい。さらに、本発明の二次電池用正極は、上記二次電池用正極材料を、集電体に塗布することによって製作できる。
そしてまた、上記二次電池用正極は、酸性基又は塩基性基を有するポリマーを含んでいてもよい。かかる酸性基又は塩基性基を有するポリマーを含む二次電池用正極は、上記二次電池用正極材料に酸性基又は塩基性基を有するポリマーを混合し、集電体に塗布することによって製作してもよいが、本発明の含硫黄ポリマー、導電助剤、バインダー、及び溶媒を混合した二次電池用正極材料を集電体に塗布することによって製作した正極に、酸性基又は塩基性基を有するポリマーを塗布して製作してもよい。

【0070】
正極の製作方法としては、具体的には、本発明の含硫黄ポリマーを溶媒に分散させ、撹拌した後、導電助剤と溶媒を加え、攪拌・脱泡し、前記含硫黄ポリマーと導電助剤の混合物へバインダーと溶媒を加え、さらに攪拌・脱泡をすることでスラリーを調製する。前記スラリーを集電体上に塗布し、減圧乾燥することで正極を作製できる。また、上記酸性基又は塩基性基を有するポリマーを塗布する方法としては、酸性基又は塩基性基を有するポリマーを溶媒に溶解して溶液を調製し、かかる溶液を上記で作製した正極上にピペット等で滴下して添加する方法を挙げることができる。

【0071】
正極の作製に用いる溶媒としては、本発明の含硫黄ポリマー、導電助剤、バインダーが溶解する溶媒であれば特に制限は無く、例えば、メタノール、エタノール、ジエチレングリコール等のアルコール類;アセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、エチルアセテート、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコール、N-メチルピロリドン(NMP)が挙げられる。好ましくは、N-メチルピロリドン(NMP)である。酸性基又は塩基性基を有するポリマーを溶解する溶媒としては、上記で例示した溶媒と同様の溶媒を挙げることができる。

【0072】
導電助剤としては、例えば、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon
Fiber:VGCF)、炭素粉末、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、黒鉛、アルミニウムやチタンなどの正極電位において安定な金属の微粉末等が挙げられる。導電助剤は、多孔質カーボンであることが好ましく、ケッチェンブラック(KB)がより好ましい。

【0073】
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride:PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタクリル樹脂(PMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、変性ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。好ましくは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。

【0074】
含硫黄ポリマー、導電助剤(KB)及びバインダー(PVDF)の配合する重量比としては、含硫黄ポリマー:導電助剤(KB):バインダー(PVDF)の重量比=1~20:1:1が好ましく、含硫黄ポリマー:導電助剤(KB):バインダー(PVDF)の重量比=5~10:1:1がより好ましい。

【0075】
集電体としては、リチウムイオン二次電池用正極に一般に用いられるものを使用すれば良い。例えば、集電体としては、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウムメッシュ、パンチングアルミニウムシート、アルミニウムエキスパンドシート、ステンレススチール箔、ステンレススチールメッシュ、パンチングステンレススチールシート、ステンレススチールエキスパンドシート、発泡ニッケル、ニッケル不織布、銅箔、銅メッシュ、パンチング銅シート、銅エキスパンドシート、チタン箔、チタンメッシュ、カーボン不織布、カーボン織布等が挙げられる。好ましくはステンレス箔である。

【0076】
酸性基又は塩基性基を有するポリマーとしては、かかる酸性基又は塩基性基が本発明の含硫黄ポリマー中のイオン性基と静電的相互作用による架橋構造を形成するポリマーであれば特に制限されない。また、上記の酸性基又は塩基性基を有するポリマーは、本発明の含硫黄ポリマー中のイオン性基と静電的相互作用による架橋構造を形成することによって、電解液中へのポリスルフィドイオン(硫黄成分)の溶出を抑えることができる。

【0077】
上述したように、酸性基又は塩基性基を有するポリマーと本発明の含硫黄ポリマー中のイオン性基とが静電的相互作用による架橋構造を形成するために、本発明の含硫黄ポリマー中のイオン性基が、スルホン酸基(-SOH)、スルホンアミド基(-SONH)、硫酸基(-OSOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))、リン酸基(-OPO(OH))、カルボン酸基(-COOH)又はそれらの塩である基であるとき、塩基性基を有するポリマーを使用し、本発明の含硫黄ポリマー中のイオン性基が、アンモニウム基(-NH)又はその塩である基であるとき、酸性基を有するポリマーを使用する。

【0078】
上記ポリマーの酸性基としては、スルホン酸基(-SOH)、スルホンアミド基(-SONH)、硫酸基(-OSOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))、リン酸基(-OPO(OH))、カルボン酸基(-COOH)又はそれらの塩である基等を挙げることができ、塩基性基としては、アンモニウム基(-NH)、アミノ基[-NHR,-NR(R及びRは、同一でも異なっていてもよく、メチル基、エチル基等のC1~C6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す)]、イミノ基(=NH)又はそれらの塩である基等を挙げることができる。

【0079】
酸性基を有するポリマーとしては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、 ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等を挙げることができる。
塩基性基を有するポリマーとしては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリスチレン第4級アンモニウム、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリリジン等を挙げることができる。

【0080】
また、本発明の含硫黄ポリマーと上記酸性基又は塩基性基を有するポリマーとの好適な組合せとしては、11-ドデセン-1-カルボン酸(undecene-COOH)を修飾剤に用いた含硫黄ポリマーとポリアリルアミンとの組合せである。

【0081】
本発明の含硫黄ポリマーを使用した二次電池用では、負極は、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、及びナトリウムから選ばれるいずれか一つが好ましく、リチウムがより好ましい。

【0082】
本発明の含硫黄ポリマーを使用した二次電池用では、電解質は、1,2-ジメトキシエタン、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3-メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチロラクトン、ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、1,3-ジオキソラン、メチルポローメート、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メトキシ-オキサゾリデン-2-オン、スルホラン、テトラヒドロフラン、水などを含むことができる。特に、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3-メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシ-オキサゾリデン-2-オン、ブチロラクトン、1,3-ジオキソラン、1,2-ジメトキシエタンなどが好ましく、1,3-ジオキソラン、1,2-ジメトキシエタンがより好ましい。このような溶媒などは1種または混合して使用することができる。

【0083】
本発明の含硫黄ポリマーは、電池材料に利用する場合、有機溶媒への優れた溶解性により、硫黄材料と導電助剤やバインダー等を均一かつ自由な配合比で混錬できるため、二次電池を含む電池の電極材料の調製・加工が容易となる。さらに、本発明の含硫黄ポリマーを熱プレスすることで硬化反応を行なえる。また、本発明の含硫黄ポリマーは、電気化学的評価において反応サイクルを多く重ねてもポリスルフィドイオン(硫黄成分)の溶出を抑えることができる。また、本発明の含硫黄ポリマーを多孔質カーボンと共に正極材料として用いると、含硫黄ポリマーが多孔質カーボンの内部にまで染み込み、電気化学的な反応を繰り返した後の硫黄成分の電解液への溶出が抑制され、充放電サイクルを経過したことによる電池の劣化が起こりにくい。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例において本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術範囲は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0085】
実施例1.硫黄(S)に対して0.5当量のアリルスルホン酸ナトリウムを修飾剤に用いたポリマー(S-allyl-SONa(0.5))の合成
アリルスルホン酸ナトリウム(AS)0.28g(硫黄(S)に対して0.5当量)とジエチレングリコール1mlを試験管に入れ、150℃で加熱した。ジエチレングリコールにアリルスルホン酸ナトリウムを溶解させた後、硫黄(S)1.00gを加え、185℃まで温度を上げ、開放雰囲気下で5時間攪拌した。冷却した後、生成したポリマーを含む固体にメタノール30mlを加え、固体をかきとり洗浄し、濾別、24時間減圧乾燥を行うことで、S-allyl-SONa(0.5)0.84gを得た。なお、アリルスルホン酸ナトリウムが未反応のまま残っていないことを確認した。
【実施例】
【0086】
実施例2.硫黄(S)に対して0.3当量のアリルスルホン酸ナトリウムを修飾剤に用いたポリマー(S-allyl-SONa(0.3))の合成
アリルスルホン酸ナトリウム(AS)0.17g(硫黄(S)に対して0.3当量)を使用する以外は実施例1と同様にして、S-allyl-SONa(0.3)0.83gを得た。なお、アリルスルホン酸ナトリウムが未反応のまま残っていないことを確認した。
【実施例】
【0087】
実施例3.硫黄(S)に対して1.0当量のアリルスルホン酸ナトリウムを修飾剤に用いたポリマー(S-allyl-SONa(1.0))の合成
アリルスルホン酸ナトリウム(AS)0.56g(硫黄(S)に対して1.0当量)を使用する以外は実施例1と同様にして、S-allyl-SONa(1.0)0.55gを得た。なお、アリルスルホン酸ナトリウムが未反応のまま残っていないことを確認した。
【実施例】
【0088】
実施例4.硫黄(S)1.0gに対して1.0当量の11-ドデセン-1-カルボン酸を修飾剤に用いたポリマー(S-undecene-COOH(1.0))の合成
11-ドデセン-1-カルボン酸0.718g(undecene-COOH)(硫黄(S)に対して1.0当量)を使用する以外は実施例1と同様にして、S-undecene-COOH(1.0)1.718gを得た。なお、11-ドデセン-1-カルボン酸が未反応のまま残っていないことを確認した。
【実施例】
【0089】
比較例1.硫黄(S)に対して0.5当量の1-ウンデセンを修飾剤に用いた有機硫黄材料(S-undecene(0.5))の合成
1-ウンデセン0.30gと硫黄1.00gを試験管に入れ、開放雰囲気下175℃で3時間攪拌した。冷却した後、生成したポリマーを含む固体にヘキサン30mlを加え、固体をかきとり洗浄し、濾別、60℃で3時間減圧乾燥を行うことで、S-undecene(0.5)0.77gを得た。
【実施例】
【0090】
実施例5.電極の調製
(S-allyl-SONa(0.5)を活物質とする電極の調製)
実施例1で製造したS-allyl-SONa(0.5)0.0288gをN-メチルピロリドン(NMP)0.11gに分散させ、自転公転撹拌機で攪拌5分間を2回繰り返した。その後、活物質:導電助剤(KB):バインダー(PVDF)の重量比=8:1:1になるように、KB0.0035g、NMP0.33gを加え、自転公転撹拌機で攪拌5分間・脱泡3分間を2回繰り返し、S-allyl-SONa(0.5)とKBの混合物へPVDF0.00525gとNMP0.12gを加え、自転公転撹拌機で攪拌10分間・脱泡5分間を2回繰り返すことでスラリーを調製した。調製したスラリーをステンレス(St)箔上に塗布60℃で24時間減圧乾燥することで、S-allyl-SONa(0.5)電極を作製した。
【実施例】
【0091】
(S-undecene(0.5)を活物質とする電極の調製)
比較例1で製造したS-undecene(0.5)を使用する以外は、上記のS-allyl-SONa(0.5)を活物質とするCV用・充放電用ペレットの調製と同様の実験操作を行い、S-undecene(0.5)電極を作製した。
【実施例】
【0092】
(Sを活物質とする電極の調製)
0.0801gとケッチェンブラック(KB)0.0101gを混合し、自転公転撹拌機で攪拌を5分間行った。その後、活物質:導電助剤(KB):バインダー(PVDF)の重量比=8:1:1になるように、SとKBの混合物へポリフッ化ビニリデン(PVDF)0.0106g、NMP0.3196gを加え、自転公転撹拌機で攪拌5分間・脱泡3分間行い、その後、NMPを0.37g加え、自転公転撹拌機で攪拌10分間・脱泡5分間を2回繰り返すことでスラリーを調製した。調製したスラリーをSt箔上に塗布し、60℃で24時間減圧乾燥することで、S電極を作製した。
【実施例】
【0093】
(S-undecene-COOH(1.0)を活物質とする電極の調製)
実施例4で製造したS-undecene-COOH(1.0)0.1754mgをN-メチルピロリドン(NMP)に分散させ、自転公転撹拌機で攪拌5分間を2回繰り返した。その後、活物質:導電助剤(KB):バインダー(PVDF)の重量比=8:1:1になるように、KB0.0220g、NMPを加え、自転公転撹拌機で攪拌5分間・脱泡3分間を2回繰り返し、S-undecene-COOH(1.0)とKBの混合物へPVDF0.0.0220gとNMPを加え、自転公転撹拌機で攪拌10分間・脱泡5分間を2回繰り返すことでスラリーを調製した。調製したスラリーをステンレス(St)箔上に塗布60℃で24時間減圧乾燥することで、S-undecene-COOH(1.0)電極を作製した。
【実施例】
【0094】
(S-undecene-COOH(1.0)を活物質とする電極にポリアリルアミンを添加した電極(「S-undecene-COOH(1.0)-PAA電極」とも称す)の調製)
上記S-undecene-COOH(1.0)を活物質とする電極上に、ポリアリルアミン水溶液(平均分子量8000,15wt%)を、少量加えて電極表面に薄く伸ばした。その後、60°Cで12時間減圧乾燥させることで、S-undecene-COOH(1.0)-PAA電極を作製した。
【実施例】
【0095】
(サイクリックボルタンメトリー(CV)測定)
CV測定を実施例5で作製した各電極を使用し、ビーカーセルで行った。作用極には作製した各電極、参照極には5mm×3mmのNiメッシュにリチウム箔を圧着させたもの、対極には20mm×20mmのNiメッシュにリチウム箔を圧着させたものを使用し、三極式セルで測定を行った。電解質には、1,3-ジオキソラン(DOX):1,2-ジメトキシエタン(DME)=1:1(v/v)で混合した溶媒へ、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA)を1Mとなるように溶解させたものを用いた。測定には、電気化学測定システム[北斗電工株式会社 HZ-5000もしくはHZ-7000]を使用し、電位走査範囲1.5V~3.0V、走査速度5mV/sとして測定を行なった。
CV測定の結果を図1に示す。図1に示した通り、S-undecene(0.5)及びS電極材料では酸化-還元による電流応答が小さいのに対して、S-allyl-SONa(0.5)では酸化-還元ピークがはっきり大きく観察された。以上より、本発明のイオン性基を有する有機硫黄ポリマーは、反応効率が高いこと分かった。
【実施例】
【0096】
(定電流充放電試験)
正極には実施例5で作製した各電極、負極にはリチウム箔、電解質にはCV測定と同様のものを用い、コイン型セルを組み立て、測定を行った。
【実施例】
【0097】
有機硫黄を用いたリチウム(Li)-硫黄(S)系コインセルの放電容量とサイクル特性の結果を図2に示す。図2に示した通り、40サイクルの範囲において、S-allyl-SONa(0.5)の電極は、S-undecene(0.5)及びSの電極よりも高い充放電容量を維持することがわかった。
【実施例】
【0098】
S-undecene(0.5)を活物質とする電極、S-undecene-COOH(1.0)を活物質とする電極、S-undecene-COOH(1.0)-PAA電極を用いて作製したコイン型セルの1サイクル目の充放電曲線を図3に示す。電流密度0.05Cで充放電試験を行ったところ、S-undecene-COOH(1.0)-PAA電極は、放電において2.3-2.1Vにゆるやかなカーブ、2.1V付近に電位プラトーを観測した。S-undecene-COOH(1.0)を活物質とする電極においても2.3-2.1Vにゆるやかなカーブ、2.1V付近に電位プラトーを観測していることから、電極表面にPAAを添加した場合においても、過電圧が生じることなく、電荷移動反応が行われたことがわかった。
また、上記の3つの電極を用いて作製したコイン型セルに関して、それぞれの10サイクル充放電を繰り返したときの容量維持率を図4に示す。また、10サイクル目の容量維持率を表1に示す。
【実施例】
【0099】
【表1】
JP0006653098B2_000022t.gif
【実施例】
【0100】
表1に示すように、PAAを添加したS-undecene-COOH(1.0)を活物質とする電極は、PAAが添加されていないS-undecene-COOH(1.0)電極と比較して、容量維持率が高いことがわかった。これは、電極表面でS-undecene-COOHのカルボキシル基とポリアリルアミンのアンモニウム基が架橋構造を形成することによって、硫黄とリチウムの還元生成物であるリチウムポリスルフィドの電極からの溶出を抑制したことによるものと考えられる。
さらに、上記の3つの電極を用いて作製したコイン型セルに関して、それぞれのクーロン効率を図5に示す。クーロン効率は、以下の式から求められる。また、10サイクル目のクーロン効率を表2に示す。
【実施例】
【0101】
【数1】
JP0006653098B2_000023t.gif
【実施例】
【0102】
【表2】
JP0006653098B2_000024t.gif
【実施例】
【0103】
表2に示すように、S-undecene-COOH(1.0)を活物質とする、PAAを添加した電極は、クーロン効率が高いことがわかった。これは、電解液へのS-undecene-COOH(1.0)-PAA電極中のS-undecene-COOH(1.0)自体の溶解、且つ、硫黄とリチウムが反応して生成するリチウムポリスルフィドの負極側への拡散を抑制することができ、正極側で充電・放電反応が進行したことによるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の含硫黄ポリマーは、極性溶媒への親和性に優れ、電池材料、特に二次電池の正極材料として利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4