TOP > 国内特許検索 > 転倒予防システム、転倒予防方法、プログラム > 明細書

明細書 :転倒予防システム、転倒予防方法、プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-221502 (P2017-221502A)
公開日 平成29年12月21日(2017.12.21)
発明の名称または考案の名称 転倒予防システム、転倒予防方法、プログラム
国際特許分類 A61B   5/11        (2006.01)
FI A61B 5/10 310A
A61B 5/10 310G
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2016-120070 (P2016-120070)
出願日 平成28年6月16日(2016.6.16)
発明者または考案者 【氏名】村田 嘉利
【氏名】阿部 一希
【氏名】吉田 尚平
【氏名】佐藤 永欣
【氏名】鈴木 彰真
出願人 【識別番号】507234427
【氏名又は名称】公立大学法人岩手県立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100108833、【弁理士】、【氏名又は名称】早川 裕司
【識別番号】100162156、【弁理士】、【氏名又は名称】村雨 圭介
審査請求 未請求
テーマコード 4C038
Fターム 4C038VA04
4C038VA12
4C038VB14
4C038VB31
4C038VC20
要約 【課題】対象者が歩行中に転倒するのを容易に予防することの可能な転倒予防システム、転倒予防方法、プログラムを提供する。
【解決手段】対象者の足に装着された検出装置であって、加速度及び角速度の少なくとも一方を検出する検出装置が検出した加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報を取得する取得手段31と、取得した情報に基づいて、対象者が転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを判別する判別手段32と、対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別した場合に、所定の情報を提供する提供手段33と、を備える。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
対象者の足に装着された検出装置であって、加速度及び角速度の少なくとも一方を検出する検出装置が検出した加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報を取得する取得手段と、
取得した情報に基づいて、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを判別する判別手段と、
前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別した場合に、所定の情報を提供する提供手段と、
を備える転倒予防システム。
【請求項2】
前記判別手段は、取得した情報に基づいてもとめられた前記足の底屈状態における角速度が所定の条件を満たす場合に、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別する、請求項1に記載の転倒予防システム。
【請求項3】
前記判別手段は、取得した情報に基づいてもとめられた前記足の背屈角度が所定の条件を満たす場合に、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別する、請求項1又は2に記載の転倒予防システム。
【請求項4】
前記判別手段は、取得した情報に基づいてもとめられた前記対象者の歩行率が所定の条件を満たす場合に、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別する、請求項1~3の何れかに記載の転倒予防システム。
【請求項5】
前記提供手段は、前記所定の情報を、前記検出装置と無線通信可能な端末装置で提供する、請求項1~4の何れかに記載の転倒予防システム。
【請求項6】
対象者が歩行中に転倒するのをコンピュータを用いて予防する転倒予防方法であって、
前記コンピュータは、
前記対象者の足に装着された検出装置であって、加速度及び角速度の少なくとも一方を検出する検出装置が検出した加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報を取得するステップと、
取得した情報に基づいて、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを判別するステップと、
前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別した場合に、前記所定の情報を提供するステップと、
の各ステップを実行する、転倒予防方法。
【請求項7】
対象者が歩行中に転倒するのをコンピュータを用いて予防するためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記対象者の足に装着された検出装置であって、加速度及び角速度の少なくとも一方を検出する検出装置が検出した加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報を取得する機能、
取得した情報に基づいて、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを判別する機能、及び
前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別した場合に、前記所定の情報を提供する機能、
を実現させるためのプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、転倒予防システム、転倒予防方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば高齢者や下肢不自由者等が歩行中に転倒する事故が増加している。そこで、対象者が歩行中に転倒するのを予防する転倒予防システムが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
かかる技術では、歩行中の対象者の足圧及び映像で構成された歩行データに基づいて当該対象者の転倒の危険度が解析され、解析結果が指導者に提供されるようになっている。指導者は、この解析結果に基づいて、対象者に対して歩行のアドバイスを行うことが可能である。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2003-216743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、床に敷かれた圧力センサの上を対象者が歩行した場合に当該圧力センサによって計測された足圧に基づいて、当該対象者の転倒の危険度を解析するようになっているので、対象者の転倒を予防するための大掛かりな構成が必要であった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、対象者が歩行中に転倒するのを容易に予防することの可能な転倒予防システム、転倒予防方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、対象者の足に装着された検出装置であって、加速度及び角速度の少なくとも一方を検出する検出装置が検出した加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報を取得する取得手段と、取得した情報に基づいて、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを判別する判別手段と、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別した場合に、所定の情報を提供する提供手段と、を備える転倒予防システムを提供する(発明1)。
【0008】
ここで、加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報とは、例えば、加速度及び角速度の少なくとも一方の値であってもよいし、加速度及び角速度の少なくとも一方の値を所定の計算式に代入することによって得られた値であってもよいし、加速度及び角速度の少なくとも一方の度合いを表す情報であってもよい。
【0009】
かかる発明(発明1)によれば、対象者の足に装着された検出装置が検出した加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報に基づいて、対象者が転倒可能性のある歩行状態にあるか否かが判別され、対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別された場合に所定の情報が提供されるので、例えば、所定の情報が提供されたときに指導者が対象者に対して歩行のアドバイス等を行うことによって、対象者が歩行中に転倒するのを予防することができる。この場合、例えば対象者の歩行経路上に圧力センサを設ける等の大掛かりな構成を不要にすることができるので、対象者の歩行中の転倒を容易に予防することができる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記判別手段は、取得した情報に基づいてもとめられた前記足の底屈状態における角速度が所定の条件を満たす場合に、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別するのが好ましい(発明2)。
【0011】
ここで、所定の条件とは、例えば、足の底屈状態における角速度が所定の閾値以下であることであってもよいし、対象者の足の底屈状態における角速度と所定の角速度(例えば健常者の足の底屈状態における角速度)との差が所定値以上であることであってもよいし、対象者の足の底屈状態における角速度を所定の計算式に代入することによって得られた値が所定の範囲内にあることであってもよい。
【0012】
例えば、地面を蹴り出すときの対象者の足の力が弱くなるほど、対象者の足が接地している状態から底屈状態に移るときの対象者の足の角速度が小さくなるとともに、対象者が歩行中に転倒する可能性が高くなると考えられる。かかる発明(発明2)によれば、対象者が転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを、対象者の足の底屈状態における角速度を用いて容易に判別することが可能になる。
【0013】
上記発明(発明1~2)においては、前記判別手段は、取得した情報に基づいてもとめられた前記足の背屈角度が所定の条件を満たす場合に、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別するのが好ましい(発明3)。
【0014】
ここで、所定の条件とは、例えば、足の背屈角度の絶対値が所定の閾値以下であることであってもよいし、対象者の足の背屈角度と所定の背屈角度(例えば健常者の足の背屈角度)との差が所定値以上であることであってもよいし、対象者の足の背屈角度を所定の計算式に代入することによって得られた値が所定の範囲内にあることであってもよい。
【0015】
例えば、足の背屈角度の絶対値が小さいほど、歩行中の対象者の爪先の最高到達点が低くなるとともに、対象者が歩行中に転倒する可能性が高くなると考えられる。かかる発明(発明3)によれば、対象者が転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを、対象者の足の背屈角度を用いて容易に判別することが可能になる。
【0016】
上記発明(発明1~3)においては、前記判別手段は、取得した情報に基づいてもとめられた前記対象者の歩行率が所定の条件を満たす場合に、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別するのが好ましい(発明4)。
【0017】
ここで、歩行率とは、例えば、単位時間(例えば1分間)における歩数であってもよい。また、所定の条件とは、例えば、対象者の歩行率が所定の閾値以下であることであってもよいし、対象者の歩行率と所定の歩行率(例えば健常者の歩行率)との差が所定値以上であることであってもよいし、対象者の歩行率を所定の計算式に代入することによって得られた値が所定の範囲内にあることであってもよい。
【0018】
例えば、対象者の歩行率が小さいほど、対象者が歩行中に転倒する可能性が高くなると考えられる。かかる発明(発明4)によれば、対象者が転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを、対象者の歩行率を用いて容易に判別することが可能になる。
【0019】
上記発明(発明1~4)においては、前記提供手段は、前記所定の情報を、前記検出装置と無線通信可能な端末装置で提供するのが好ましい(発明5)。
【0020】
かかる発明(発明5)によれば、例えば、端末装置を所持しているユーザは、対象者が歩行中に転倒する虞があることを、所定の情報が端末装置で提供されることによって容易に認識することができる。
【0021】
第二に本発明は、対象者が歩行中に転倒するのをコンピュータを用いて予防する転倒予防方法であって、前記コンピュータは、前記対象者の足に装着された検出装置であって、加速度及び角速度の少なくとも一方を検出する検出装置が検出した加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報を取得するステップと、取得した情報に基づいて、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを判別するステップと、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別した場合に、前記所定の情報を提供するステップと、の各ステップを実行する、転倒予防方法を提供する(発明6)。
【0022】
第三に本発明は、対象者が歩行中に転倒するのをコンピュータを用いて予防するためのプログラムであって、前記コンピュータに、前記対象者の足に装着された検出装置であって、加速度及び角速度の少なくとも一方を検出する検出装置が検出した加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報を取得する機能、取得した情報に基づいて、前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを判別する機能、及び前記対象者が転倒可能性のある歩行状態にあると判別した場合に、前記所定の情報を提供する機能、を実現させるためのプログラムを提供する(発明7)。
【発明の効果】
【0023】
本発明の転倒予防システム、転倒予防方法、プログラムによれば、対象者が歩行中に転倒するのを容易に予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る転倒予防システムの基本構成を概略的に示す図である。
【図2】端末装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る転倒予防システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。
【図4】歩行データの構成例を示す図である。
【図5】(a)は歩行中の健常者の足の角速度及び角度の一例を示す図であり、(b)は歩行中の下肢不自由者の足の角速度及び角度の一例を示す図である。
【図6】(a)は踵が接地している状態から爪先で地面を蹴り出したときの足の角速度の一例を示す図であり、(b)は歩行中に爪先が最も高い位置に到達するときの足の角度の一例を示す図である。
【図7】一実施形態に係る転倒予防システムの主要な処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。ただし、この実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。

【0026】
(1)転倒予防システムの基本構成
図1は、本発明の一実施形態に係る転倒予防システムの基本構成を概略的に示す図である。図1に示すように、この転倒予防システムには、対象者Aの足(下肢のうち踝以下の部分)の甲に装着された検出装置10が検出した加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報を取得する端末装置20が設けられており、端末装置20は、取得した情報に基づいて、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを判別し、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別した場合に所定の情報を提供するようになっている。

【0027】
検出装置10は、対象者Aの足に装着可能なウェアラブルデバイスであり、例えばBluetooth(登録商標)等の無線通信方式を用いて端末装置20と無線通信を行うように構成されている。なお、ここでは、Bluetooth(登録商標)を用いて無線通信を行う場合を一例として説明しているが、通信方式は、この場合に限られない。例えば、無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))、ZigBee(登録商標)、UWB、光無線通信(例えば赤外線)等の無線通信方式が用いられてもよいし、USB等の有線通信方式が用いられてもよい。

【0028】
検出装置10には、加速度センサ及び角速度センサの少なくとも一方が設けられており、検出装置10は、対象者Aの足の加速度及び角速度の少なくとも一方を検出するようになっている。検出装置10は、加速度センサが設けられている場合に、例えば対象者Aの足の幅方向(図中X方向)、対象者Aの足の進行方向(図中Y方向)及び対象者Aの足の上下方向(図中Z方向)の加速度を連続的又は断続的(例えば、所定間隔(例えば50(ms))毎)に検出し、検出した加速度に関する情報を端末装置20に送信する。また、検出装置10は、角速度センサが設けられている場合に、少なくとも対象者Aの足の幅方向(図中X方向)を軸とした回転方向の角速度を連続的又は断続的(例えば、所定間隔(例えば50ms)毎)に検出し、検出した角速度に関する情報を端末装置20に送信する。

【0029】
加速度センサは、1軸加速度センサであってもよいし、2軸以上の複数軸加速度センサであってもよい。また、角速度センサは、1軸角速度センサであってもよいし、2軸以上の複数軸角速度センサであってもよい。なお、本実施形態では、3軸加速度センサ及び3軸角速度センサの各々が検出装置10に設けられている場合を一例として説明する。この場合、検出装置10は、3軸加速度及び3軸角速度を検出することが可能である。

【0030】
端末装置20は、例えば、携帯端末、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ、双方向の通信機能を備えたテレビジョン受像機(いわゆる多機能型のスマートテレビも含む。)等のように、個々のユーザによって操作される端末装置であってよい。

【0031】
(2)端末装置の構成
図2を参照して端末装置20について説明する。図2は、端末装置20の内部構成を示すブロック図である。図2に示すように、端末装置20は、CPU(Central Processing Unit)21と、ROM(Read Only Memory)22と、RAM(Random Access Memory)23と、HDD(Hard Disk Drive)24と、表示処理部25と、表示部26と、入力部27と、通信インタフェース部28とを備えており、各部間の制御信号又はデータ信号を伝送するためのバス29が設けられている。

【0032】
CPU21は、電源が端末装置20に投入されると、ROM22又はHDD24に記憶された各種のプログラムをRAM23にロードして実行する。本実施形態では、CPU21は、ROM22又はHDD24に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、後述する取得手段31、判別手段32及び提供手段33(図3に示す)の各々の機能を実現する。

【0033】
HDD24は不揮発性記憶装置であり、例えばCPU21が実行するプログラムやCPU21が参照するデータ等を記憶する。また、HDD24には、後述する歩行データ(図4に示す)が記憶されてもよい。

【0034】
表示処理部25は、CPU21から与えられる表示用データを、表示部26に表示する。表示部26は、例えば、マトリクス状に画素単位で配置された薄膜トランジスタを含むLCD(Liquid Cristal Display)モニタであり、表示用データに基づいて薄膜トランジスタを駆動することで、表示されるデータを表示画面に表示する。

【0035】
端末装置20が釦入力方式の通信端末である場合には、入力部27は、ユーザの操作入力を受け入れるための方向指示釦及び決定釦等の複数の指示入力釦を含む釦群と、テンキー等の複数の指示入力釦を含む釦群とを備え、各釦の押下(操作)入力を認識してCPU21へ出力するためのインタフェース回路を含む。

【0036】
端末装置20がタッチパネル入力方式の通信端末である場合には、入力部27は、主として表示画面に指先又はペンで触れることによるタッチパネル方式の入力を受け付ける。タッチパネル入力方式は、静電容量方式等の公知の方式でよい。

【0037】
通信インタフェース部28は、上述した無線通信方式を用いて検出装置10と通信を行うためのインタフェース回路を含む。

【0038】
(3)転倒予防システムにおける各機能の概要
本実施形態の転倒予防システムで実現される機能について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態の転倒予防システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。図3の機能ブロック図では、取得手段31、判別手段32及び提供手段33が本発明の主要な構成に対応している。

【0039】
取得手段31は、対象者Aの足に装着された検出装置10であって、加速度及び角速度の少なくとも一方を検出する検出装置10が検出した加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報を取得する機能を備える。ここで、加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報とは、例えば、加速度及び角速度の少なくとも一方の値であってもよいし、加速度及び角速度の少なくとも一方の値を所定の計算式に代入することによって得られた値であってもよいし、加速度及び角速度の少なくとも一方の度合いを表す情報であってもよい。

【0040】
取得手段31の機能は、例えば以下のように実現される。端末装置20のCPU21は、検出装置10から送信された情報を通信インタフェース部28を介して受信(取得)するごとに、受信した情報を例えば図4に示す歩行データに記憶する。歩行データは、端末装置20が検出装置10から最初に電波を受信したときを起点とした経過時間と、対象者Aの足の幅方向(図中X方向)を軸とした回転方向の角速度と、当該角速度に基づいて算出された回転方向の角度と、対象者Aの足の幅方向(図中X方向)、対象者Aの足の進行方向(図中Y方向)及び対象者Aの足の上下方向(図中Z方向)の加速度の合成加速度と、が受信順に記述されているデータである。歩行データは、例えばHDD24に記憶されている。なお、対象者Aの足の回転方向の角度θ(rad)は、角度の初期値を0rad(rad)、サンプル数をn+1、n個目のサンプルの回転方向の角速度をG(rad/s)、n個のサンプルの間隔をt(ms)とすると、以下の式(1)によって得られる。
【数1】
JP2017221502A_000003t.gif

【0041】
このようにして、端末装置20のCPU21は、検出装置10が検出した加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報を取得することができる。

【0042】
ここで、歩行中の対象者Aの足の角速度及び角度の一例を図5に示す。図5(a)は歩行中の健常者の足の角速度及び角度の一例を示す図であり、(b)は歩行中の下肢不自由者の足の角速度及び角度の一例を示す図である。図5(a)及び図5(b)における点A,Bの詳細については後述する。

【0043】
判別手段32は、取得した情報に基づいて、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを判別する機能を備える。

【0044】
ところで、地面を蹴り出すときの対象者Aの足の力が弱くなるほど、対象者Aの足が接地している状態から底屈状態に移るときの対象者Aの足の角速度が小さくなるとともに、対象者Aが歩行中に転倒する可能性が高くなると考えられる。そこで、判別手段32は、取得した情報に基づいてもとめられた足の底屈状態における角速度が所定の条件を満たす場合に、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別してもよい。ここで、所定の条件とは、例えば、足の底屈状態における角速度が所定の閾値以下であることであってもよいし、対象者Aの足の底屈状態における角速度と所定の角速度(例えば健常者の足の底屈状態における角速度)との差が所定値以上であることであってもよいし、対象者Aの足の底屈状態における角速度を所定の計算式に代入することによって得られた値が所定の範囲内にあることであってもよい。この場合、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを、対象者Aの足の底屈状態における角速度を用いて容易に判別することが可能になる。

【0045】
判別手段32の機能は、例えば以下のように実現される。なお、ここでは、所定の条件が、足の底屈状態における角速度が所定の閾値以下であること、である場合を一例として説明する。

【0046】
端末装置20のCPU21は、取得手段31の機能に基づいて対象者Aの足の角速度を取得すると、歩行データにアクセスして、対象者Aの足が接地している状態から底屈状態に移るときの対象者Aの足の角速度を推定する。図6(a)を参照して、対象者Aの足が接地している状態から底屈状態に移るときの対象者Aの足の角速度について説明すると、足の回転方向の角速度Gは、対象者Aの足が歩行中の最高到達点から接地するまでの間にマイナスのピーク値に達し、その後、図6(a)の右図に示すように、対象者Aの足が地面を蹴り出すときにプラスのピーク値に達する。ここで、図5(a)~(b)を参照すると、角速度がマイナスのピーク値に達した後の最初のプラスのピーク値(図中の点Aで示す)が、対象者Aの足が接地している状態から底屈状態に移るときの対象者Aの足の角速度と推定される。図5(a)に示す健常者の足の点Aにおける角速度の平均値は約4.9(rad/s)であり、図5(b)に示す下肢不自由者の足の点Aにおける角速度の平均値は約2(rad/s)である。したがって、CPU21は、点Aにおける角速度が所定の閾値(例えば2.5(rad/s))以下の場合に、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別してもよい。

【0047】
また、例えば、足の背屈角度の絶対値が小さいほど、歩行中の対象者Aの爪先の最高到達点が低くなるとともに、対象者Aが歩行中に転倒する可能性が高くなると考えられる。そこで、判別手段32は、取得した情報に基づいてもとめられた足の背屈角度が所定の条件を満たす場合に、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別してもよい。ここで、所定の条件とは、例えば、足の背屈角度の絶対値が所定の閾値以下であることであってもよいし、対象者Aの足の背屈角度と所定の背屈角度(例えば健常者の足の背屈角度)との差が所定値以上であることであってもよいし、対象者Aの足の背屈角度を所定の計算式に代入することによって得られた値が所定の範囲内にあることであってもよい。この場合、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを、対象者Aの足の背屈角度を用いて容易に判別することが可能になる。

【0048】
この場合における判別手段32の機能は、例えば以下のように実現される。なお、ここでは、所定の条件が、足の背屈角度の絶対値が所定の閾値以下であること、である場合を一例として説明する。

【0049】
端末装置20のCPU21は、取得手段31の機能に基づいて対象者Aの足の角速度を取得すると、歩行データにアクセスして、対象者Aの足の爪先が最高到達点に達するときの対象者Aの足の角度を推定する。図6(b)を参照して、対象者Aの足が接地している状態から最高到達点に達するときの対象者Aの足の角度について説明すると、足の回転方向の角度は、図6(b)の右図に示すように、対象者Aの足が接地している状態から最高到達点に達するときに足の背屈角度が最大になる(つまり、足の角度がマイナスのピーク値(図6(b)において-θで示す)に達する)。ここで、図5(a)~(b)を参照すると、足の角度のマイナスのピーク値(図中の点Bで示す)が、対象者Aの足の爪先が最高到達点に達するときの対象者Aの足の角度と推定される。図5(a)に示す健常者の足の点Bにおける角度の平均値は-0.31(rad)であり、図5(b)に示す下肢不自由者の足の点Bにおける角度の平均値は-0.13(rad)である。したがって、CPU21は、点Bにおける角度の絶対値が所定の閾値(例えば0.15(rad))以下の場合に、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別してもよい。

【0050】
なお、検出装置10が対象者Aの足の甲に設けられている場合には、足や靴の形状等が個人毎に異なることから、静止時の足の回転方向の角度θ(rad)は対象者A毎に異なり得る。そこで、対象者A毎の足の回転方向の角度の推定精度を向上させるために、静止時の足の回転方向の角度θ(rad)を対象者A毎に設定してもよい。この場合、静止時の足の回転方向の角度θは、静止時の対象者Aの足の上下方向(図中Z方向)の加速度(重力加速度を含む)をGravity(m/s)とすると、以下の式(2)によって得られる。
【数2】
JP2017221502A_000004t.gif

【0051】
さらに、例えば、対象者Aの歩行率が小さいほど、対象者Aが歩行中に転倒する可能性が高くなると考えられる。そこで、判別手段32は、取得した情報に基づいてもとめられた対象者Aの歩行率が所定の条件を満たす場合に、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別してもよい。ここで、所定の条件とは、例えば、対象者Aの歩行率が所定の閾値以下であることであってもよいし、対象者Aの歩行率と所定の歩行率(例えば健常者の歩行率)との差が所定値以上であることであってもよいし、対象者Aの歩行率を所定の計算式に代入することによって得られた値が所定の範囲内にあることであってもよい。この場合、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを、対象者Aの歩行率を用いて容易に判別することが可能になる。

【0052】
この場合における判別手段32の機能は、例えば以下のように実現される。なお、ここでは、所定の条件が、対象者Aの歩行率が所定の閾値以下であること、である場合を一例として説明する。

【0053】
端末装置20のCPU21は、取得手段31の機能に基づいて対象者Aの足の加速度を取得すると、歩行データにアクセスして、対象者Aの足の幅方向(図中X方向)、対象者Aの足の進行方向(図中Y方向)及び対象者Aの足の上下方向(図中Z方向)の加速度の合成加速度に基づいて、対象者Aの歩行開始タイミングtstart(ms)をもとめる。ここで、対象者Aの歩行開始タイミングtstartは、例えば、合成加速度が所定値(例えば1(m/s))未満から当該所定値以上になったときの経過時間としてもとめられてもよい。次に、CPU21は、歩行開始タイミングtstartを用いて、対象者Aの歩行率をもとめる。ここで、対象者Aの歩行率Cadence(steps/m)は、歩行開始からn歩目に歩行を開始したときのタイミングをtstartnとすると、以下の式(3)によって得られる。
【数3】
JP2017221502A_000005t.gif

【0054】
CPU21は、例えば対象者Aの歩行率Cadenceが所定の閾値(例えば4(steps/m))以下の場合に、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別してもよい。

【0055】
なお、CPU21は、対象者Aの足の底屈状態における角速度、対象者Aの足の背屈角度及び対象者Aの歩行率の全てにおいて対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別したときに、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別してもよい。また、CPU21は、対象者Aの足の底屈状態における角速度、対象者Aの足の背屈角度及び対象者Aの歩行率のうち少なくとも1つにおいて対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別したときに、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別してもよい。

【0056】
提供手段33は、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別した場合に、所定の情報を提供する機能を備える。ここで、提供手段33は、所定の情報を、検出装置10と無線通信可能な端末装置20で提供してもよい。これにより、例えば、端末装置20を所持しているユーザは、対象者Aが歩行中に転倒する虞があることを、所定の情報が端末装置20で提供されることによって容易に認識することができる。

【0057】
提供手段33の機能は、例えば以下のように実現される。なお、ここでは、提供手段33が、所定の情報を、検出装置10と無線通信可能な端末装置20で提供する場合を一例として説明する。

【0058】
端末装置20のCPU21は、判別手段32の機能に基づいて、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別した場合に、例えば対象者Aが転倒する虞があることを通知するための通知するためのメッセージデータを表示部26に表示させるために、当該メッセージデータを表示処理部25に送信してもよい。また、CPU21は、例えば対象者Aが転倒する虞があることを通知するための音声データを、例えばブザーやスピーカ等の音声出力部(図示省略)から出力させてもよい。ここで、メッセージ情報及び音声データは、本発明の「所定の情報」の一例である。なお、提供手段33の機能によって提供される情報は、例えば画像データで構成されてもよい。

【0059】
(4)本実施形態の転倒予防システムの主要な処理のフロー
次に、本実施形態の転倒予防システムにより行われる主要な処理のフローの一例について、図7のフローチャートを参照して説明する。

【0060】
先ず、端末装置20のCPU21は、検出装置10が検出した加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報を取得する(ステップS100)。具体的に説明すると、CPU21は、検出装置10から送信された情報を通信インタフェース部28を介して受信すると、受信した情報を例えば歩行データに記憶する。

【0061】
次に、CPU21は、取得した情報に基づいて、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあるか否かを判別する(ステップS102)。ここで、CPU21は、取得した情報に基づいてもとめられた足の底屈状態における角速度が所定の条件を満たす場合に、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別してもよい。また、CPU21は、取得した情報に基づいてもとめられた足の背屈角度が所定の条件を満たす場合に、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別してもよい。さらに、CPU21は、取得した情報に基づいてもとめられた対象者Aの歩行率が所定の条件を満たす場合に、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別してもよい。

【0062】
CPU21は、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別した場合に(ステップS104:YES)、所定の情報を提供する(ステップS106)。CPU21は、例えば対象者Aが転倒する虞があることを通知するための通知するためのメッセージデータを表示部26に表示させるために、当該メッセージデータを表示処理部25に送信してもよい。また、CPU21は、例えば対象者Aが転倒する虞があることを通知するための音声データを、例えばブザーやスピーカ等の音声出力部(図示省略)から出力させてもよい。

【0063】
CPU21は、ステップS106の処理を行うと、ステップS100の処理に移行してもよい。また、CPU21は、ステップS104において、対象者Aが転倒する可能性が無いと判別した場合に(ステップS104:NO)、ステップS100の処理に移行してもよい。

【0064】
上述したように、本実施形態の転倒予防システム、転倒予防方法、プログラムによれば、対象者Aの足に装着された検出装置10が検出した加速度及び角速度の少なくとも一方に関する情報に基づいて、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあるか否かが判別され、対象者Aが転倒可能性のある歩行状態にあると判別された場合に所定の情報が提供されるので、例えば、所定の情報が提供されたときに指導者が対象者Aに対して歩行のアドバイス等を行うことによって、対象者Aが歩行中に転倒するのを予防することができる。この場合、例えば対象者Aの歩行経路上に圧力センサを設ける等の大掛かりな構成を不要にすることができるので、対象者Aの歩行中の転倒を容易に予防することができる。

【0065】
なお、本発明のプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。このプログラムを記録した記憶媒体は、図2に示された端末装置20のROM22又はHDD24であってもよい。また、例えばCD-ROMドライブ等のプログラム読取装置に挿入されることで読み取り可能なCD-ROM等であってもよい。さらに、記憶媒体は、磁気テープ、カセットテープ、フレキシブルディスク、MO/MD/DVD等であってもよいし、半導体メモリであってもよい。

【0066】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。

【0067】
上記実施形態では、検出装置10が対象者Aの足の甲に設けられている場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、検出装置10は、対象者Aの足の側面に設けられてもよいし、対象者Aの足の裏面に設けられてもよい。

【0068】
また、上記実施形態では、検出装置10が加速度及び角速度の各々を検出する場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、検出装置10は、加速度及び角速度の何れか一方を検出してもよい。

【0069】
さらに、上記実施形態では、所定の情報が端末装置20の表示部26に表示される場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、所定の情報が検出装置10で提供されてもよい。これにより、対象者Aは、所定の情報が検出装置10で提供されたときに、自身が歩行中に転倒する可能性があることを認識することができる。

【0070】
さらにまた、上述した実施形態では、端末装置20によって、取得手段31、判別手段32及び提供手段33の各機能を実現する構成としたが、この構成に限られない。これらの全ての手段を検出装置10によって実現する構成としてもよいし、少なくとも一部の手段を検出装置10によって実現する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
上述したような本発明の転倒予防システム、転倒予防方法、プログラムは、対象者Aが歩行中に転倒するのを容易に予防することができ、例えば医療サービスや福祉サービス等に好適に利用することができるので、その産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0072】
10…検出装置
20…端末装置
31…取得手段
32…判別手段
33…提供手段
A…対象者
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6