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明細書 :全固体二次電池用の正極、その製造方法及び全固体二次電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6529508号 (P6529508)
登録日 令和元年5月24日(2019.5.24)
発行日 令和元年6月12日(2019.6.12)
発明の名称または考案の名称 全固体二次電池用の正極、その製造方法及び全固体二次電池
国際特許分類 H01M   4/58        (2010.01)
H01M   4/62        (2006.01)
H01M  10/0562      (2010.01)
H01M  10/052       (2010.01)
H01M  10/054       (2010.01)
H01M   4/136       (2010.01)
H01M   4/1397      (2010.01)
FI H01M 4/58
H01M 4/62 Z
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01M 10/054
H01M 4/136
H01M 4/1397
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2016-555235 (P2016-555235)
出願日 平成27年10月20日(2015.10.20)
国際出願番号 PCT/JP2015/079589
国際公開番号 WO2016/063877
国際公開日 平成28年4月28日(2016.4.28)
優先権出願番号 2014215393
優先日 平成26年10月22日(2014.10.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年6月11日(2018.6.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】林 晃敏
【氏名】辰巳砂 昌弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100065248、【弁理士】、【氏名又は名称】野河 信太郎
【識別番号】100159385、【弁理士】、【氏名又は名称】甲斐 伸二
【識別番号】100163407、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 裕輔
【識別番号】100166936、【弁理士】、【氏名又は名称】稲本 潔
審査官 【審査官】松嶋 秀忠
参考文献・文献 特開2013-229227(JP,A)
国際公開第2012/117638(WO,A1)
特表2014-530473(JP,A)
特開2008-103282(JP,A)
特開2014-028717(JP,A)
国際公開第2012/160707(WO,A1)
国際公開第2013/015321(WO,A1)
特開2013-222501(JP,A)
調査した分野 H01M 4/13-62
H01M10/05-0587
特許請求の範囲 【請求項1】
2S・AXで表される正極活物質を含み、
前記Aは、アルカリ金属であり、
前記Xは、I、Br、Cl、F、BF4、BH4、SO4、BO3、PO4、O、Se、N、P、As、Sb、PF6、AsF6、ClO4、NO3、CO3、CF3SO3、CF3COO、N(SO2F)2及びN(CF3SO22から選択され、
前記A2S・AXが、A2SとAXとを99:1~20:80(モル比)の割合で含む全固体二次電池用の正極。
【請求項2】
前記アルカリ金属が、Li又はNaであり
前記AXは、AがLiの場合、LiI、LiBr、LiCl、LiF、LiBF4、LiBH4、Li2SO4、Li3BO3、Li3PO4、Li2O、Li2Se、Li3N、Li3P、Li3As、Li3Sb、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiNO3、Li2CO3、LiCF3SO3、LiCF3COO、LiN(SO2F)2及びLiN(CF3SO22から選択され、AがNaの場合、NaI、NaBr、NaCl、NaF、NaBF4、NaBH4、Na2SO4、Na3BO3、Na3PO4、Na2O、Na2Se、Na3N、Na3P、Na3As、Na3Sb、NaPF6、NaAsF6、NaClO4、NaNO3、Na2CO3、NaCF3SO3、NaCF3COO、NaN(SO2F)2及びNaN(CF3SO22から選択される請求項1に記載の全固体二次電池用の正極。
【請求項3】
更に炭素材料からなる導電材を、前記正極活物質100重量部に対して、0.1~50重量部の割合で含む請求項1又は2に記載の全固体二次電池用の正極。
【請求項4】
前記全固体二次電池が正極、固体電解質層及び負極の積層体であり、前記固体電解質層がA2S・Mxy(Aは上記と同様、MはP、Si、Ge、B、Al、Gaから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数である)を電解質として含み、前記正極が、前記電解質を含まない請求項1~のいずれか1つに記載の全固体二次電池用の正極。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の正極の製造方法であり、A2SとAXとをメカニカルミリング処理に付すことでA2S・AXを得る全固体二次電池用の正極の製造方法。
【請求項6】
前記メカニカルミリング処理が、遊星型ボールミルを用いて、50~700回転/分、0.1~30時間、1~100kWh/1kg(A2SとAXの合計量)の条件下で行われる請求項に記載の全固体二次電池用の正極の製造方法。
【請求項7】
前記正極が更に炭素材料からなる導電材を含み、前記正極が、A2S・AXと導電材とをメカニカルミリング処理に付すことで得られる請求項5又は6に記載の全固体二次電池用の正極の製造方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1つに記載の正極と、A2S・Mxy(Aは上記と同様、MはP、Si、Ge、B、Al、Gaから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数である)で表される固体電解質層とを含む全固体二次電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池用の正極、その製造方法及び全固体二次電池に関する。更に詳しくは、本発明は、高い充放電容量を有する全固体二次電池用の正極、その製造方法及び全固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、高電圧、高容量を有するため、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ノートパソコン、電気自動車等の電源として多用されている。一般に流通しているリチウム二次電池は、電解質として、電解塩を非水系溶媒に溶解した液状電解質を使用している。非水系溶媒には、可燃性の溶媒が多く含まれているため、安全性の確保が望まれている。
安全性を確保するために、非水系溶媒を使用せずに、電解質を固体材料から形成する、いわゆる固体電解質を使用した全固体リチウム二次電池が提案されている。この電池の正極には、正極活物質、導電材、電解質等の様々な成分が含まれている。これら成分の内、正極活物質としてLi2Sが、その理論容量の高さから注目されている。
ところで、Li2Sそれ自体はイオン伝導性が低いため、正極活物質として使用するには、導電成分を含ませる必要がある。そこで、本発明の発明者等は、Li2Sと、導電材としてのアセチレンブラックと、固体電解質としてのLi2S・P25とを含む正極を提案している(第53回電池討論会講演要旨集、p555(2012):非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】53回電池討論会講演要旨集、p555(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記非特許文献1の正極では、Li2Sと、アセチレンブラックと、Li2S・P25とを25:25:50の重量比で含んでいる。この正極を使用した電池は、ある程度の高い充放電容量を保持しているとされている。しかし、更なる容量向上の観点から、正極活物質としてのLi2Sの正極中での割合を可能な限り多くすることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者等は、充放電容量を更に向上するために正極の構成部材について鋭意検討した結果、Li2Sをリチウムイオン二次電池で有機電解液の支持電解質として通常使用されているリチウム塩と複合化させることで、Li2Sの正極中での割合を増やしても、イオン伝導性を低下させることはなく、充放電容量を向上できることを見い出し本発明に至った。この向上の傾向は、Na2Sに対するナトリウム塩でも同様であることを発明者等は見い出している。
【0006】
かくして本発明によれば、A2S・AXで表される正極活物質を含み、
前記Aは、アルカリ金属であり、
前記Xは、I、Br、Cl、F、BF4、BH4、SO4、BO3、PO4、O、Se、N、P、As、Sb、PF6、AsF6、ClO4、NO3、CO3、CF3SO3、CF3COO、N(SO2F)2及びN(CF3SO22から選択される全固体二次電池用の正極が提供される。
【0007】
更に、本発明によれば、上記正極の製造方法であり、A2SとAXとをメカニカルミリング処理に付すことでA2S・AXを得る全固体二次電池用の正極の製造方法が提供される。
更に、本発明によれば、上記正極と、A2S・Mxy(Aは上記と同様、MはP、Si、Ge、B、Al、Gaから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数である)で表される固体電解質層とを含む全固体二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い充放電容量を有する全固体二次電池用の正極、その製造方法及び、その正極を含む全固体二次電池を提供できる。
更に、アルカリ金属が、Li又はNaであり
前記AXは、AがLiの場合、LiI、LiBr、LiCl、LiF、LiBF4、LiBH4、Li2SO4、Li3BO3、Li3PO4、Li2O、Li2Se、Li3N、Li3P、Li3As、Li3Sb、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiNO3、Li2CO3、LiCF3SO3、LiCF3COO、LiN(SO2F)2及びLiN(CF3SO22から選択され、AがNaの場合、NaI、NaBr、NaCl、NaF、NaBF4、NaBH4、Na2SO4、Na3BO3、Na3PO4、Na2O、Na2Se、Na3N、Na3P、Na3As、Na3Sb、NaPF6、NaAsF6、NaClO4、NaNO3、Na2CO3、NaCF3SO3、NaCF3COO、NaN(SO2F)2及びNaN(CF3SO22から選択される場合、より高い充放電容量を有する全固体二次電池用の正極を提供できる。
また、A2S・AXが、A2SとAXとを99:1~20:80(モル比)の割合で含む場合、より高い充放電容量を有する全固体二次電池用の正極を提供できる。
更に、炭素材料からなる導電材を、正極活物質100重量部に対して、0.1~50重量部の割合で含む場合、より高い充放電容量を有する全固体二次電池用の正極を提供できる。
また、全固体二次電池が正極、固体電解質層及び負極の積層体であり、固体電解質層がA2S・Mxy(Aは上記と同様、MはP、Si、Ge、B、Al、Gaから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数である)を電解質として含み、正極が、電解質を含まない場合、より高い充放電容量を有する全固体二次電池用の正極を提供できる。
メカニカルミリング処理が、遊星型ボールミルを用いて、50~700回転/分、0.1~30時間、1~100kWh/1kg(A2SとAXの合計量)の条件下で行われる場合、より高い充放電容量を有する全固体二次電池用の正極の製造方法を提供できる。
正極が更に炭素材料からなる導電材を含み、正極が、A2S・AXと導電材とをメカニカルミリング処理に付すことで得られる場合、より高い充放電容量を有する全固体二次電池用の正極の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の正極のXRDパターンである。
【図2】実施例1の正極の半値幅及び格子定数と0.5LiBr・0.5LiI含量との関係を示すグラフである。
【図3】実施例1の正極の導電率と0.5LiBr・0.5LiI含量との関係を示すグラフである。
【図4】実施例1の二次電池のセル電位と充放電容量との関係を示すグラフである。
【図5】実施例2の正極のXRDパターンである。
【図6】実施例2の正極の半値幅及び格子定数とLiI含量との関係を示すグラフである。
【図7】実施例2の正極の導電率とLiI含量との関係を示すグラフである。
【図8】実施例2の二次電池のセル電位と充放電容量との関係を示すグラフである。
【図9】実施例3の正極のXRDパターンである。
【図10】実施例3の正極の半値幅及び格子定数を示すグラフである。
【図11】実施例3の正極の導電率を示すグラフである。
【図12】実施例4の二次電池のセル電位と充電容量との関係を示すグラフである。
【図13】実施例5の正極のXRDパターンである。
【図14】実施例5の二次電池のセル電位と充放電容量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)全固体二次電池用の正極
全固体二次電池用正極は、正極活物質としてのA2S・AXを含む。ここで、A2S・AXは、それからA2SとAXとを単離し難いA2SとAXとの複合体を意味する。
(正極活物質)
正極活物質としてのA2S・AXにおいて、Aは、アルカリ金属であり、具体的にはLi又はNaである。全固体二次電池は、AがLiの場合、全固体リチウム二次電池を意味し、AがNaの場合、全固体ナトリウム二次電池を意味する。

【0011】
Xは、I、Br、Cl、F、BF4、BH4、SO4、BO3、PO4、O、Se、N、P、As、Sb、PF6、AsF6、ClO4、NO3、CO3、CF3SO3、CF3COO、N(SO2F)2及びN(CF3SO22から選択できる。
また、AXは、AがLiの場合、LiI、LiBr、LiCl、LiF、LiBF4、LiBH4、Li2SO4、Li3BO3、Li3PO4、Li2O、Li2Se、Li3N、Li3P、Li3As、Li3Sb、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiNO3、Li2CO3、LiCF3SO3、LiCF3COO、LiN(SO2F)2及びLiN(CF3SO22から選択され、AがNaの場合、NaI、NaBr、NaCl、NaF、NaBF4、NaBH4、Na2SO4、Na3BO3、Na3PO4、Na2O、Na2Se、Na3N、Na3P、Na3As、Na3Sb、NaPF6、NaAsF6、NaClO4、NaNO3、Na2CO3、NaCF3SO3、NaCF3COO、NaN(SO2F)2及びNaN(CF3SO22から選択できる。なお、AXは、これら例示から1つ選択されてもよく、2つ以上選択されてもよい。

【0012】
上記AXの内、AがLiの場合、LiBF4、LiBr、LiI、LiCl、LiBH4が好ましく、AがNaの場合、NaBF4、NaBr、NaI、NaCl、NaBH4が好ましい。

【0013】
2S・AXは、A2SとAXとを99:1~20:80(モル比)の割合で含むことが好ましい。A2Sのモル比が99より大きい場合、イオン伝導性が低下して、正極として機能しないことがある。20より小さい場合、充放電容量を向上し難いことがある。より好ましいモル比は、40:60~95:5であり、更に好ましいモル比は、50:50~90:10であり、特に好ましいモル比は、60:40~80:20である。ここで、AXが2つ以上選択されている場合、選択された個々のAXが、正極活物質中に少なくとも含まれていさえすれば、それらの含有割合は特に限定されない。ここで、AXとしてLiBrとLiIとを選択した場合、それらのモル比は、更なる充放電容量向上の観点から、25:75~75:25であることが好ましい。

【0014】
(導電材)
正極には導電材が含まれていてもよい。導電材としては、特に限定されず、アセチレンブラック(AB)、デンカブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラックやカーボンナノチューブ、天然黒鉛、人工黒鉛、気相成長カーボンファィバ(VGCF)等の二次電池の分野で導電材として使用されている炭素材料が挙げられる。

【0015】
導電材は、正極活物質100重量部に対して、0.1~50重量部の割合で含まれることが好ましい。0.1重量部未満である場合、正極へ移動可能な電子の量が減ることで、十分な充放電容量が得られないことがある。50重量部より多い場合、正極活物質の正極に占める量が相対的に少なくなり、充放電容量が低下することがある。より好ましい導電材の量は、10~30重量部である。

【0016】
(その他の成分)
正極活物質及び導電材以外に、全固体二次電池に通常使用されている成分を含んでいてもよい。例えば、LiCoO2、LiMn24等の活物質が挙げられる。これら活物質は、酸化物や硫化物による被膜を備えていてもよい。被膜を形成する方法としては、例えば、被膜の前駆体溶液中に活物質を浸漬し、次いで熱処理する方法、被膜の前駆体溶液を活物質に噴霧し、次いで熱処理する方法等が挙げられる。
また、結着材が含まれていてもよい。結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン等が挙げられる。

【0017】
なお、正極には、正極総重量あたりの更なる充放電容量向上の観点から、全固体二次電池の固体電解質層に通常含まれている電解質としてのA2S・Mxy(Aは上記と同様、MはP、Si、Ge、B、Al、Gaから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数である)を含まないことが好ましい。具体的なMxyとしては、P25、SiS2、GeS2、B23、Al23、Ga23等が挙げられる。A2S・Mxyは、AがLiの場合、例えば、Li2S・P25を意味する。全固体二次電池が正極、固体電解質層及び負極の積層体であり、前記固体電解質層がA2S・Mxy(Aは上記と同様、MはP、Si、Ge、B、Al、Gaから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数である)を電解質として含み、前記正極が、前記電解質を含まない

【0018】
(2)正極の製造方法
正極の製造方法には、A2SとAXとをメカニカルミリング処理に付すことでA2S・AXを得る工程が含まれる。
原料としてのA2SとAXとは、特に限定されず、市販の物を使用できる。A2SとAXとは、純度ができるだけ高いものを使用することが好ましい。更に、A2SとAXとの形状は、特に限定されず、粒状、塊状等の種々の形状が挙げられる。

【0019】
メカニカルミリング処理は、原料を十分混合できさえすれば、処理装置及び処理条件には特に限定されない。
処理装置としては、通常ボールミルが使用できる。ボールミルは、大きな機械的エネルギーが得られるため好ましい。ボールミルの中でも、遊星型ボールミルは、ポットが自転回転すると共に、台盤が公転回転するため、高い衝撃エネルギーを効率よく発生させることができるので、好ましい。

【0020】
処理条件は、使用する処理装置に応じて適宜設定できる。例えば、ボールミルを使用する場合、回転速度が大きいほど及び/又は処理時間が長いほど、原料を均一に混合・反応できる。具体的には、遊星型ボールミルを使用する場合、50~700回転/分の回転速度、0.1~30時間の処理時間、1~100kWh/1kg(A2SとAXの合計量)の条件が挙げられる。より好ましい処理条件としては、200~600回転/分の回転速度、1~20時間の処理時間、6~50kWh/1kg(A2SとAXの合計量)が挙げられる。
メカニカルミリング処理は、乾式でも、湿式でもよい。

【0021】
ここで、正極が導電材や他の成分を含む場合、導電材や他の成分は、例えば、
(a)A2S、AX、導電材及び他の成分の混合物をメカニカルミリング処理に付す方法
(b)A2SとAXとをメカニカルミリング処理に付した後、A2S・AX、導電材及び他の成分の混合物をメカニカルミリング処理に付す方法
等により、正極に含ませ得る。

【0022】
混合された原料は、例えばプレス成形することで、ペレット状の正極(成形体)とすることができる。ここで、正極は、アルミニウムや銅等の金属板からなる集電体上に形成されていてもよい。

【0023】
(3)全固体二次電池
全固体二次電池は、上記正極、電解質層及び負極を備えている。全固体二次電池は、例えば、正極、電解質層及び負極とを積層し、プレスすることにより得ることができる。
(電解質層)
電解質層を構成する電解質には、特に限定されず、全固体二次電池に通常使用される電解質をいずれも使用できる。例えば、A2S・Mxy(Aは上記と同様、MはP、Si、Ge、B、Al、Gaから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数である)で表される電解質が挙げられる。
2Sは、Li2S又はNa2Sである。

【0024】
xy中、MはP、Si、Ge、B、Al、Gaから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える数である。Mとして使用可能な6種の元素は、種々の価数をとり得、その価数に応じてx及びyを設定できる。例えばPは3価及び5価、Siは4価、Geは2価及び4価、Bは3価、Alは3価、Gaは3価をとり得る。具体的なMxyとしては、P25、SiS2、GeS2、B23、Al23、Ga23等が挙げられる。これら具体的なMxyは、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。この内、P25が特に好ましい。

【0025】
更に、A2SとMxyとのモル比は、50:50~90:10であることが好ましく、67:33~80:20であることがより好ましく、70:30~80:20であることが更に好ましい。
電解質には、A2S・Mxy以外に、LiI、Li3PO4、NaI、Na3PO4等の他の電解質が含まれていてもよい。

【0026】
なお、電解質層中、A2S・Mxyが占める割合は、90重量%以上であることが好ましく、全量であることがより好ましい。電解質層の厚さは、5~500μmであることが好ましく、20~100μmであることがより好ましい。電解質層は、例えば、電解質をプレスすることで、ペレット状として得ることができる。

【0027】
(負極)
負極は、特に限定されず、全固体二次電池に通常使用される負極をいずれも使用できる。負極は、負極活物質のみからなっていてもよく、結着材、導電材、電解質等と混合されていてもよい。
負極活物質としては、In、Sn等の金属、それらの合金、グラファイト、ハードカーボン、SnO、TiO2等の種々の遷移金属酸化物等が挙げられる。また、LiやNa、Li4/3Ti5/34、Na2Ti37、Na15Sn4のようなLiもしくはNaを含む負極活物質を使用することも可能である。

【0028】
結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン等が挙げられる。
導電材としては、天然黒鉛、人工黒鉛、AB、VGCF、カーボンナノチューブ、活性炭等が挙げられる。
電解質としては、電解質層に使用される電解質が挙げられる。

【0029】
負極は、例えば、負極活物質及び、任意に結着材、導電材、電解質等を混合し、得られた混合物をプレスすることで、ペレット状として得ることができる。また、負極活物質として金属又はその合金からなる金属シート(箔)を使用する場合、そのまま使用可能である。
負極は、アルミニウム又は銅等の集電体の上に形成されていてもよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
実施例1
Li2S(出光興産社製:純度99.9%以上)と、LiBr(アルドリッチ社製:純度99.9%)と、LiI(アルドリッチ社製:純度99.9%)とを、50:25:25のモル比となるように0.3g秤量した。秤量物をメカニカルミリング処理に付すことで、50Li2S・50(0.5LiBr・0.5LiI)を得た。処理装置には、ポット及びボールを備えた遊星型ボールミルであるFritsch社製Pulverisette P-7を使用した。ポット及びボールは酸化ジルコニウム製であり、45mlのポット内で直径4mmのボールを160個使用した。処理条件は、室温(約25℃)、510回転/分、10時間とした。
【実施例】
【0031】
得られた50Li2S・50(0.5LiBr・0.5LiI)10mgをプレス(圧力360MPa)することで直径10mm、厚さ約0.05mmのペレット(正極)を得た。50Li2S・50(0.5LiBr・0.5LiI)のXRDパターンを図1に示す。図1の下部にはメカニカルミリング処理して得られた0.5LiBr・0.5LiIのXRDパターンを記載している。図1中、●はLiIに対応するピークを、○はLiBrに対応するピークを、▽はLi2Sに対応するピークを意味する。
【実施例】
【0032】
Li2S、LiBr及びLiIのモル比を変更すること以外は、上記と同様にして、10Li2S・90(0.5LiBr・0.5LiI)、60Li2S・40(0.5LiBr・0.5LiI)、70Li2S・30(0.5LiBr・0.5LiI)、80Li2S・20(0.5LiBr・0.5LiI)のペレット(正極)を得た。上記と同様にしてXRDパターンを測定し、結果を図1及び2に示す。
【実施例】
【0033】
図1からLi2S・(0.5LiBr・0.5LiI)は、Li2Sと(0.5LiBr・0.5LiI)とのモル比にかかわらず、LiBr及びLiI由来のピークが見られず、Li2S由来のピークのみが見られることが分かる。 図2にLi2S・(0.5LiBr・0.5LiI)のXRDパターンにおけるLi2Sの(111)面のピークの半値幅(FWHM)と格子定数(Lattice constant)を示す。図2では、0.5LiBr・0.5LiIの含量の増加に伴い、FWHMと格子定数が増加することを示している。よって、LiBr・LiIがLi2Sの結晶中に取り込まれ、固溶体として存在していることが推測される。
【実施例】
【0034】
図3にLi2S・(0.5LiBr・0.5LiI)の導電率を示す。図3には、メカニカルミリング処理して得られたLi2Sのみ、及び0.5LiBr・0.5LiIのみの導電率も示す。図3において、0.5LiBr・0.5LiIのみの場合、導電率は比較的高いが、Li2Sが含まれていないため充放電容量が期待できない。一方、Li2Sのみの場合、Li2S自体の導電性は極めて低いため、リチウムイオンを十分移動させることができない。Li2SとLiBr・LiIとを含むことで、導電率の向上と充放電容量の確保を両立することが期待できる。
【実施例】
【0035】
次に、60Li2S・40(0.5LiBr・0.5LiI)を0.27gと、気相成長炭素繊維(昭和電工社製、以下、VGCF)を0.03gとをメカニカルミリング処理に付した。処理装置は、上記装置を使用し、ポット及びボールは酸化ジルコニウム製であり、45mlのポット内で直径4mmのボールを160個使用した。処理条件は、室温(約25℃)、510回転/分、10時間とした。
処理後の60Li2S・40(0.5LiBr・0.5LiI)とVGCFとの複合体10mgをプレス(圧力360MPa)することで直径10mm、厚さ約0.05mmのペレット(正極)を得た。
【実施例】
【0036】
Li2S・P25からなる固体電解質(以下SE、Li2SとP25とのモル比80:20)80mgをプレス(圧力360MPa)することで直径10mm、厚さ約0.7mmのペレット(電解質層、SE)を得た。使用したSEは、以下の方法で合成した。
【実施例】
【0037】
Li2S(出光興産社製:純度99.9%以上)及びP25(アルドリッチ社製純度99%)を80:20のモル比で1g秤量し、遊星型ボールミルに投入した。投入後、メカニカルミリング処理することで、SEを得た。遊星型ボールミルは、Fritsch社製Pulverisette P-7を使用し、ポット及びボールは酸化ジルコニウム製であり、45mlのポット内に直径4mmのボールが500個入っているミルを使用した。乾式メカニカルミリング処理は、510rpmの回転速度、室温、乾燥窒素グローブボックス内で10時間行った。なお、この合成法は、Akitoshi Hayashi et al., Journal of Non-Crystalline Solids 356 (2010) 2670-2673のExperimentalの記載に準じている。
【実施例】
【0038】
負極には、厚さ0.1mmのインジウム箔を使用した。
上記正極及び電解質層を積層し、ステンレススチール製集電体で挟み、プレス(圧力360MPa)した後、電解質層側に負極を挿入してから再度プレス(圧力120MPa)することで全固体リチウム二次電池を得た。
【実施例】
【0039】
得られた二次電池(セル)を、25℃下、0.064mA/cm2の電流密度で充放電を1サイクル行った場合のセル電位と充放電容量との関係を図4に示す。図4において、左側の縦軸はLi・In対極に対する電位を示す。図4から約150mAhg-1を超える可逆容量が得られることが分かる。
【実施例】
【0040】
実施例2
LiBr・LiIの代わりにLiIのみを使用すること以外は、実施例1と同様にして、種々のモル比のLi2S・LiIを得た。得られたLi2S・LiIのXRDパターンを図5に示す。図5中、●はLiIに対応するピークを、▽はLi2Sに対応するピークを、×は内部標準物質として添加されたSiに対応するピークを意味する。図5には、Li2Sのみをメカニカルミリング処理した後のXRDパターンも示す(最上部のLi2S after MM)。
【実施例】
【0041】
図5からLi2S・LiIは、75Li2S・25LiI以外の組成ではLiI由来のピークが見られず、Li2S由来のピークのみが見られることが分かる。図6にLi2S・LiIのXRDパターンにおけるLi2Sの(111)面のピークの半値幅(FWHM)と格子定数(Lattice constant)を示す。図6では、LiIの含量が増えると、半値幅及び格子定数も増えているため、図6でも、LiIがLi2Sの結晶中に取り込まれ、固溶体として存在していることが推測される。
【実施例】
【0042】
図7にLi2S・LiIの導電率を示す。図7には、Li2Sのみの導電率も示す。Li2Sのみの場合、Li2S自体の導電性は極めて低いため、リチウムイオンを十分移動させることができない。Li2SとLiIとを含むことで、導電率の向上と充放電容量の確保を両立することが期待できる。
【実施例】
【0043】
次に、80Li2S・20LiIを0.21gと、アセチレンブラック(電気化学工業社製、以下、AB)を0.09gとをメカニカルミリング処理に付して得られた正極を使用すること以外は実施例1と同様にして得た全固体リチウム二次電池の25℃下、0.013mA/cm2の電流密度で充放電を1サイクル行った場合のセル電位と充放電容量との関係を図8に示す。図8から約340mAhg-1を超える可逆容量が得られることが分かる。一方、Li2SとABからなる正極を用いた場合には充放電が困難であった。よってLi2S・LiIはイオン伝導性が高いため、正極へ電解質を添加しなくても全固体電池として充放電が可能となる。
【実施例】
【0044】
実施例3
LiBr・LiIの代わりにLiNO3とLiBF4とをそれぞれ使用すること以外は、実施例1と同様にして、80Li2S・20LiNO3及び80Li2S・20LiBF4を得た。得られた80Li2S・20LiBF4のXRDパターンを80Li2S・20LiIのXRDパターンと共に図9に示す。▽はLi2Sに対応するピークを、×は内部標準物質として添加されたSiに対応するピークを意味する。図9から、80Li2S・20LiBF4は、LiBF4に由来するピークが観察されず、80Li2S・20LiIよりも、Li2Sに対応するピークがブロード化していることが分かる。図10に80Li2S・20LiBF4のXRDパターンにおけるLi2Sの(111)面のピークの半値幅(FWHM)と格子定数(Lattice constant)を示す。図10には、図2のLi2S・(0.5LiBr・0.5LiI)の半値幅と格子定数も併せて示す。図10から、80Li2S・20LiBF4は、Li2S・(0.5LiBr・0.5LiI)と格子定数はほぼ同じであるが、半値幅がかなり大きい。このことから、LiBF4はLi2S結晶の格子を広げつつ固溶体として存在することが推測される。
【実施例】
【0045】
図11に80Li2S・20LiNO3及び80Li2S・20LiBF4の導電率を示す。図11には、図3の各種モル比のLi2S・(0.5LiBr・0.5LiI)及び80Li2S・20LiIの導電率も示す。図11から、80Li2S・20LiNO3は、80Li2S・20(0.5LiBr・0.5LiI)と同程度の導電率を示すことが分かる。80Li2S・20LiBF4は、80Li2S・20(0.5LiBr・0.5LiI)よりも高い導電率を示すことが分かる。
【実施例】
【0046】
実施例4
Li2S、AB及び実施例1と同様にして得たSEとをメカニカルミリング処理に付した(Li2S:AB:SE=25:25:50(重量比))。処理装置は、上記SE製造装置と同様のものを使用し、投入サンプル量は1g、ポット及びボールは酸化ジルコニウム製であり、45mlのポット内で直径5mmのボールを100個使用した。処理条件は、室温(約25℃)、370回転/分、2時間とした。処理物を正極に用いて、実施例1と同様にして全固体リチウム二次電池を得た。得られた二次電池を、25℃下、0.064mA/cm2の電流密度で充放電を1サイクル行った場合のセル電位と充電容量との関係を図12に示す。図12には、実施例1の二次電池のセル電位と正極総重量あたりの充電容量との関係を併せて示す。図12から、SEを含まない実施例1の二次電池は、SE含む二次電池より正極総重量あたりの充電容量が大きいことが分かる。
【実施例】
【0047】
実施例5
Na2S(ナガオ社製:純度99%以上)と、NaI(アルドリッチ社製:純度99.999%)とを、75:25のモル比となるように0.3g秤量した。秤量物を実施例1と同じ条件でメカニカルミリング処理に付すことで、75Na2S・25NaIを得た。
【実施例】
【0048】
得られた75Na2S・25NaI 10mgをプレス(圧力360MPa)することで直径10mm、厚さ約0.05mmのペレットを得た。75Na2S・25NaIのXRDパターンを図13に示す。図13の下部にはNa2SとNaIのXRDパターンをそれぞれ記載している。図13からNa2S・NaIは、主にNa2S由来のピークが見られており、一部NaI由来のブロードなピークが見られた。75Na2S・25NaIの室温における導電率を測定したところ、1×10-7 S cm-1となり、Na2Sのみの場合の導電率(2.3×10-11 S cm-1)と比べて約4桁高いことがわかった。よってNa2SとNaIをメカニカルミリング処理に付すことによって、導電率の向上と充放電容量の確保を両立することが期待できる。
【実施例】
【0049】
Na2S及びNaIのモル比を変更すること以外は、上記と同様にして、65Na2S・35NaI、70Na2S・30NaI、80Na2S・20NaIを得た。上記と同様にしてXRDパターンを測定し、結果を図13に示す。
【実施例】
【0050】
次に、75Na2S・25NaIを0.18gと、気相成長炭素繊維(昭和電工社製、以下、VGCF)を0.02gとをメカニカルミリング処理に付した。処理装置は、上記装置を使用し、ポット及びボールは酸化ジルコニウム製であり、45mlのポット内で直径4mmのボールを160個使用した。処理条件は、室温(約25℃)、510回転/分、10時間とした。
処理後の75Na2S・25NaIとVGCFとの複合体5mgをプレス(圧力360MPa)することで直径10mm、厚さ約0.03mmのペレット(正極)を得た。
【実施例】
【0051】
Na2S・P25からなる固体電解質(以下SE、Na2SとP25とのモル比75:25)80mgをプレス(圧力360MPa)することで直径10mm、厚さ約0.7mmのペレット(電解質層)を得た。使用したSEは、以下の方法で合成した。
Na2S(ナガオ社製:純度99%以上)及びP25(アルドリッチ社製純度99%)を75:25のモル比で1g秤量し、遊星型ボールミルに投入した。投入後、メカニカルミリング処理し、その後熱処理することで、SEを得た。遊星型ボールミルは、Fritsch社製Pulverisette P-7を使用し、ポット及びボールは酸化ジルコニウム製であり、45mlのポット内に直径4mmのボールが500個入っているミルを使用した。乾式メカニカルミリング処理は、510rpmの回転速度、室温、乾燥窒素グローブボックス内で1.5時間行った。その後、270℃で1時間熱処理を行ってSEを得た。なお、この合成法は、Akitoshi Hayashi et al., Journal of Power Sources 258 (2014) 420-423のExperimentalの記載に準じている
【実施例】
【0052】
負極には、Na15Sn4 20mgをプレス(圧力360MPa)することで得られた、直径10mm、厚さ約0.1mmのペレットを使用した。
上記正極及び電解質層及び負極を積層し、ステンレススチール製集電体で挟み、プレス(圧力360MPa)することで全固体ナトリウム二次電池を得た。
【実施例】
【0053】
得られた二次電池(セル)を、25℃下、0.013mA/cm2の電流密度で充放電を1サイクル行った場合のセル電位と充放電容量との関係を図14に示す。図14において、左側の縦軸はNa15Sn4対極に対する電位を示す。図14から約200mAhg-1を超える可逆容量が得られることが分かる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
13