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明細書 :装着型血流状態測定システムおよび装着型血流状態測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-041812 (P2019-041812A)
公開日 平成31年3月22日(2019.3.22)
発明の名称または考案の名称 装着型血流状態測定システムおよび装着型血流状態測定方法
国際特許分類 A61B   5/00        (2006.01)
A61H   1/02        (2006.01)
FI A61B 5/00 102A
A61H 1/02 N
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2017-164792 (P2017-164792)
出願日 平成29年8月29日(2017.8.29)
発明者または考案者 【氏名】山田 宏尚
【氏名】森田 啓之
【氏名】安部 力
【氏名】西岡 卓矢
【氏名】服部 一貴
出願人 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100076048、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 喜幾
【識別番号】100141645、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 健司
審査請求 未請求
テーマコード 4C046
4C117
Fターム 4C046AA03
4C046AA06
4C046AA35
4C046CC04
4C046DD02
4C046EE10
4C117XA05
4C117XB02
4C117XC11
4C117XD35
4C117XE16
4C117XE20
4C117XG05
4C117XH16
4C117XJ13
4C117XJ42
4C117XL01
要約 【課題】血流の停滞を簡易的に測定することができる装着型血流状態測定システムおよび装着型血流状態測定方法を提供する。
【解決手段】被測定者の身体に着用可能な着用体12と、着用体12に設けられて被測定者の血流状態に相関する生体情報の変化を測定する生体情報測定手段14と、生体情報測定手段14の測定に基づいて血流が停滞した状態かを判定する血流状態判定手段26とを備え、被測定者に装着して血流の停滞を監視可能にする。このとき、生体情報として被測定者の身体の生体インピーダンスや被測定者の下肢の周囲径を測定することで、血流速度を測定することなく血流が停滞した状態かを判定できる。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
被測定者に装着して血流の停滞を監視可能な装着型血流状態測定システムであって、
被測定者の身体に着用可能な着用体と、
前記着用体に設けられて被測定者の血流状態に相関する生体情報の変化を測定する生体情報測定手段と、
前記生体情報測定手段の測定に基づいて血流が停滞した状態かを判定する判定手段とを備える
ことを特徴とする装着型血流状態測定システム。
【請求項2】
前記生体情報測定手段により被測定者の身体の生体インピーダンスを測定するよう構成された請求項1記載の装着型血流状態測定システム。
【請求項3】
前記生体情報測定手段により被測定者の下肢の周囲径を測定するよう構成された請求項1記載の装着型血流状態測定システム。
【請求項4】
被測定者の身体に力を作用するよう動作する作動手段を備え、
前記判定手段が血流の停滞した状態と判定した場合に前記作動手段を作動させるよう構成した請求項1~3の何れか一項に記載の装着型血流状態測定システム。
【請求項5】
被測定者に装着して血流の停滞を監視可能な装着型血流状態測定方法であって、
被測定者の身体に着用した着用体に設けた生体情報測定手段により被測定者の血流状態に相関する生体情報の変化を測定し、当該測定した生体情報の変化に基づいて血流が停滞した状態かを判定する
ことを特徴とする装着型血流状態測定方法。
【請求項6】
前記生体情報測定手段により被測定者の身体の生体インピーダンスを測定する請求項5記載の装着型血流状態測定方法。
【請求項7】
前記生体情報測定手段により被測定者の下肢の周囲径を測定する請求項5記載の装着型血流状態測定方法。
【請求項8】
被測定者の血流状態に相関する生体情報の変化に基づいて血流の停滞した状態と判定した場合に、作動手段を作動させて被測定者の身体に力を作用させるようにした請求項5~7の何れか一項に記載の装着型血流状態測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の血流状態を簡易的に判別可能な装着型血流状態測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
飛行機や自動車等の乗り物で移動する場合等のように、運動や姿勢の変換が抑制された環境が長時間継続した場合に、血流が停滞することにより下肢が浮腫んだり、停滞した血液の凝固により生じた血栓が血流に乗って移動して血管が狭窄したり閉塞することにより肺血栓塞栓症のような重篤な症状が生じる等のいわゆるエコノミークラス症候群とも称される疾患を来すことが知られている。また、このような血流の停滞に伴う疾患は、医療現場における長時間に亘る手術や、災害発生に伴う避難所生活等においても問題になることがある。
【0003】
このようなエコノミークラス症候群は、前述のように重篤な症状に至る可能性がある一方でその前兆症状に乏しいことが多く、例えば降車時のように血流が回復して血栓が移動し易くなるのに伴って突然に発症することもあり、血流の停滞により血栓が生じないような予防が重要である。このような予防する手段として、血流速度を直接監視したり、狭い空間で自発的な下肢運動を可能にする器具を配置するような対策が提案されている。例えば、特許文献1に開示の超音波診断装置は、超音波を人体に当てて反射波を測定することで非侵襲的に血流速度を計測することができ、このような装置により血流速度の低下を直接的に測定することでエコノミークラス症候群に至る前に適切な対策を可能としている。また、特許文献2に開示の器具は、座席シートの足下部分に揺動可能な一対のペダルを設けることにより、座った姿勢のままペダルに足を乗せて足首を上下するような屈伸運動(足関節の底屈・背屈)を可能とすることで、下肢の血流速度が低下するのを予防できるようにしている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2015-84978号公報
【特許文献2】特開2016-7375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような超音波診断装置は、医療機関等のように高度な専門知識を有する機関での使用を主に想定した専門的な装置であり、血流速度の変化の精密な測定を必要とする医療現場での使用には適している。その一方で、装置自体が大掛かりになり、また超音波を利用して血流速度を直接的に測定する関係上、その使用環境が制限されることから、乗車時等のような日常環境下での使用には適さない問題がある。また、特許文献2のような運動用の器具は、その使用環境の自由度が高い利点がある一方で、これを利用するかは使用者の意思に任される。このため、前述のようにエコノミークラス症候群は前兆症状が乏しいことが多いため、適切なタイミングでの使用が困難な問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、血流の停滞を簡易的に測定することができる装着型血流状態測定システムおよび装着型血流状態測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本発明の請求項1に係る発明は、
被測定者に装着して血流の停滞を監視可能な装着型血流状態測定システムであって、
被測定者の身体に着用可能な着用体と、
前記着用体に設けられて被測定者の血流状態に相関する生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記生体情報測定手段の測定に基づいて血流が停滞した状態かを判定する血流状態判定手段とを備えることを要旨とする。
この構成によれば、被測定者の身体に着用体を装着した状態で血流の停滞に相関する生体情報の変化を測定することで、血流速度を直接的に測定することなく、血流の停滞を簡易的に測定して監視することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記生体情報測定手段により被測定者の身体の生体インピーダンスを測定するよう構成されたことを要旨とする。
このように、血流の停滞に伴って変化する身体の生体インピーダンスを測定することで、血流の停滞を簡易的に測定して監視することができる。また、超音波等のように周辺環境の影響を受ける機材を用いることなく血流の停滞を簡易的に測定することができるから、飛行機や自動車等への乗車時のような広汎な環境での使用が可能になる。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記生体情報測定手段により被測定者の下肢の周囲径を測定するよう構成されたことを要旨とする。
このように、血流の停滞に伴って変化する下肢の周囲径を測定することで、血流の停滞を簡易的に測定して監視することができる。また、超音波等のように周辺環境の影響を受ける機材を用いることなく血流の停滞を簡易的に測定することができるから、飛行機や自動車等への乗車時のような広汎な環境での使用が可能になる。
【0010】
請求項4に係る発明は、
被測定者の身体に力を作用するよう動作する作動手段を備え、
前記判定手段が血流の停滞した状態と判定した場合に前記作動手段を作動させるよう構成したことを要旨とする。
このように、血流の停滞を簡易的に測定した結果に基づいて作動手段を作動させて身体に刺激を与えるようにすることで、血流を促してエコノミークラス症候群に至るのを効果的に予防することができる。
【0011】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本発明の請求項5に係る発明は、
被測定者に装着して血流の停滞を監視可能な装着型血流状態測定方法であって、
被測定者の身体に着用した着用体に設けた生体情報測定手段により被測定者の血流状態に相関する生体情報の変化を測定し、当該測定した生体情報の変化に基づいて血流が停滞した状態かを判定することを要旨とする。
この構成によれば、被測定者の身体に着用体を装着した状態で血流の停滞に相関する生体情報の変化を測定することで、血流速度を直接的に測定することなく、血流の停滞を簡易的に測定して監視することができる。
【0012】
請求項6に係る発明は、
前記生体情報測定手段により被測定者の身体の生体インピーダンスを測定することを要旨とする。
このように、血流の停滞に伴って変化する身体の生体インピーダンスを測定することで、血流の停滞を簡易的に測定して監視することができる。また、超音波等のように周辺環境の影響を受ける機材を用いることなく血流の停滞を簡易的に測定することができるから、飛行機や自動車等への乗車時のような広汎な環境での使用が可能になる。
【0013】
請求項7に係る発明は、
前記生体情報測定手段により被測定者の下肢の周囲径を測定することを要旨とする。
このように、血流の停滞に伴って変化する下肢の周囲径を測定することで、血流の停滞を簡易的に測定して監視することができる。また、超音波等のように周辺環境の影響を受ける機材を用いることなく血流の停滞を簡易的に測定することができるから、飛行機や自動車等への乗車時のような広汎な環境での使用が可能になる。
【0014】
請求項8に係る発明は、
被測定者の血流状態に相関する生体情報の変化に基づいて血流の停滞した状態と判定した場合に、作動手段を作動させて被測定者の身体に力を作用させるようにしたことを要旨とする。
このように、血流の停滞を簡易的に測定した結果に基づいて作動手段を作動させて身体に刺激を与えるようにすることで、血流を促してエコノミークラス症候群に至るのを効果的に予防することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の装着型血流状態測定システムおよび装着型血流状態測定方法によれば、血流の停滞を簡易的に測定して監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】装着型血流状態測定システムを構成する着用体を被測定者に装着した状態を示す概念図である。
【図2】(a)は着用体を着用した被測定者の下腿部の拡大図であり、(b)は着用体の斜視図である。
【図3】装着型血流状態測定システムを示す概略図である。
【図4】装着型血流状態測定システムの別構成例を示す概略図である。
【図5】血流速度と生体インピーダンスとの関係を示すグラフ図である。
【図6】血流速度と下腿部の周囲径との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る装着型血流状態測定システムおよび装着型血流状態測定方法につき、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。

【0018】
図1,2に示すように、装着型血流状態測定システム10は、被測定者HMの身体に着用可能な着用体12と、当該着用体12に配設させて被測定者HMの血流状態に相関する生体情報を測定する生体情報測定手段14と、当該生体情報測定手段14の測定に基づいて血流が停滞した状態かを判定する血流状態判定手段26とを備えており、当該生体情報測定手段14による生体情報の変化の測定に基づいて被測定者HMの血流が停滞した状態かを判定することで、血流の停滞を監視し得るよう構成されている。ここで、本実施形態の着用体12は、被測定者HMの下腿部Lに巻き付け可能な帯状に形成されると共に、巻き付けた両縁部を分離可能な状態で接合する接合手段(図示せず)を備えており、被測定者HMの下腿部Lに着用体12を巻き付けた状態で両縁部の接合手段を接合させることで被測定者HMの下腿部Lに着用し得るよう構成されている。ここで、着用体12は、被測定者HMの下腿部Lの形状に追従可能な伸縮性を有する素材(例えば織布等)により形成することが好ましい。着用体12としては、帯状に形成する必要はなくこれに限定されるものではないが、例えば靴下等の被服や、ストッキネット等のチューブ状ネット、その他被測定者HMの下腿部Lに着用し得るものであればよい。また、接合手段としては、面ファスナー等を好適に採用できるが、これに限られるものではなく、例えば一方側の縁部にフック状係止部(図示せず)を設けると共に、当該フック状係止部に係止する係止部(図示せず)を他方側の縁部に設ける構成を採用することもでき、被測定者HMの下腿部Lに巻き付けた状態で着用体12の両縁部を分離可能な状態で接合し得る形態であればよい。また、着用体12の両縁部をゴムベルトのような伸縮する素材で連結し、被測定者HMの下腿部Lに着用した際の収縮力で下腿部Lから脱落しないようにすることで、接合手段を省略することも可能である。

【0019】
前記生体情報測定手段14は、着用体12を着用した被測定者HMが座位姿勢等の一定の姿勢を維持した際に血流の停滞に伴って生じる下腿部Lの生体情報の変化を測定する手段である。この生体情報測定手段14としては、血流の停滞に伴う被測定者HMの下腿部Lの生体インピーダンスの変化を測定するよう構成することができる。すなわち、下腿部Lの血流速度が低下して血流の停滞が生じた場合には、下腿部Lの静脈の圧力が大きくなり静脈の血管断面積が増大して、下腿部Lに停滞する血液量が増える。更に静脈につながる毛細血管壁を介して血液中の水分が下腿の皮下組織に移動し、浮腫を生じることで下腿の水分量も増加する。血液や水分は、脂肪や筋肉と比較して生体インピーダンスが低い。このため、血流速度が低下して血流の停滞が生ずると、血管断面積の増大と浮腫の発生により、下腿部Lの血液と水分の占める割合が大きくなり、下腿部Lの下腿部Lの生体インピーダンスが低下する。すなわち、生体情報測定手段14により着用体12を着用した被測定者HMの下腿部Lの生体インピーダンスの変化を測定することで、下腿部Lの血流が停滞したかを推定することができる。

【0020】
下腿部Lの生体インピーダンスは、被測定者HMの下腿部L(測定対象)に電流を流し、電流と電圧値を測定し、オームの法則により算出することができる。ここで、生体インピーダンスの測定方法としては、電流計につながる電極と電圧計につながる電極とを別にした4端子測定法と、電圧計・電流計をつなぐ電極を共通にした2端子測定法とが知られており、何れの方法も採用可能であるが、測定対象との接触抵抗や配線の抵抗の影響を少なくできる4端子測定法がより好適である。

【0021】
ここで、図3は、生体情報として下腿部Lの生体インピーダンスを測定する生体情報測定手段14を示す概略図である。この生体情報測定手段14は、被測定者HMの下腿部Lに接するように着用体12に設けられる一対の電流印加用電極16と、被測定者HMの下腿部Lに接するように着用体12に設けられる一対の電圧検出用電極と、前記一対の電流印加用電極16に接続して所定周波数(例えば50Hz)で交流電流を生成する電流発生部20と、前記一対の電圧検出用電極18に接続して電流印加用電極16間に電流を流した際に当該電圧検出用電極18の間に発生する交流電圧を検出する電圧検出部22と、前記電流発生部20で生成する交流電流および当該電圧検出部22で検出する交流電圧およびこれらの位相差から生体情報として生体インピーダンスを算出する生体インピーダンス算出部24とを備えており、当該生体インピーダンス算出部24で算出した生体インピーダンスが血流状態判定手段26に入力されるよう構成される。なお、この実施形態では、電流印加用電極16および電圧検出用電極18の夫々に所定幅(例えば10mm)のテープ型電極を用いて、下腿部Lの周方向に延在するよう着用体12に設けられている。また、この一対の電流印加用電極16は、下腿部Lの上下の端部側(膝側および踵側)に離間して位置すると共に、当該電流印加用電極16の間に各電圧検出用電極18が位置するよう着用体12に設けられている。

【0022】
ここで、血流速度が低下した場合には、静脈の圧力が大きくなり静脈の血管断面積が増大し、更に静脈につながる毛細血管壁を介して血液中の水分が下腿の皮下組織に移動し、浮腫を生じることで下腿の水分量が増加する。血液や水分は、脂肪や筋肉と比較して生体インピーダンスが低い。このため、血流速度が低下して血流の停滞が生ずると、血管断面積の増大と浮腫の発生により、下腿部Lの血液と水分の占める割合が大きくなり、下腿部Lの下腿部Lの生体インピーダンスが低下傾向にある。そこで、生体インピーダンス算出部24は、測定開始から所定の算出時間が経過する毎(例えば5s経過する毎)に生体インピーダンスを算出するよう構成されている。そして、血流状態判定手段26は、生体インピーダンス算出部24が算出した生体インピーダンスの初期値に対して、算出時間の経過毎に生体インピーダンス算出部24が算出する生体インピーダンスが所定の低下率で低下した値となった場合に、判定部が血流の停滞状態と判定するようにすることができる。なお、血流状態判定手段26が血流状態の停滞と判定する生体インピーダンスの低下率は特に限られるものではないが、当該低下率の値を小さな値に設定することで血流の停滞を速やかに判定することができ、低下率の値を大きな値に設定することで血流の停滞を過剰に判定するのを防止できる。なお、生体情報測定手段14を構成する電流発生部20、電圧検出部22および生体インピーダンス算出部24の夫々を構成する電気回路や、血流状態判定手段26を構成する電気回路は所定のコントロールボックスCBに収容した状態で着用体12に取り付けられている。

【0023】
また、生体情報測定手段14としては、血流の停滞に伴う被測定者HMの下腿部Lの周囲径の変化を測定するよう構成することができる。すなわち、前述のように血流速度が低下して血流が停滞すると、下腿部Lに浮腫が生ずることで下腿部Lの周囲径が増加する。すなわち、生体情報測定手段14により着用体12を着用した被測定者HMの下腿部Lの周囲径の変化を測定することで、下腿部Lの血流が停滞したかを判定することができる。

【0024】
ここで、生体情報として下腿部Lの周囲径の変化を測定する生体情報測定手段14の構成としては、着用体12に配設されて渦巻きばね等の付勢手段により線条体を巻き取るように付勢するリール部と、当該リール部の回転角度を検出するロータリーエンコーダ等の検出センサ(何れも図示せず)とを備えるよう構成して、当該生体情報測定手段14で測定した周囲径の変化量が血流状態判定手段26に入力されるよう構成することができる。ここで、リール部から引き出された線条体は、着用体12の下腿部Lへの巻き付け方向(下腿部Lの周方向)へ延在させた状態で端部が着用体12に固定されている。すなわち、血流の停滞により下腿部Lの周囲径が増加するのに伴って着用体12が伸張した際に、リール部から線条体が引き出されるよう構成されており、線条体が引き出された際のリール部の回転角度を下腿部Lの周囲径の変化量として測定するよう構成されている。そして、血流状態判定手段26は、測定された周囲径の変化量が所定値となった場合に、判定部が血流の停滞状態と判定するようにすることができる。なお、血流状態判定手段26が血流状態の停滞と判定する周囲径の変化量は特に限られるものではないが、当該変化量の値を小さな値に設定することで血流の停滞を速やかに判定することができ、変化量の値を大きな値に設定することで血流の停滞を過剰に判定するのを防止できる。

【0025】
また、この実施形態に係る装着型血流状態測定システム10は、被測定者HMの下腿部Lに力を作用するよう動作する作動装置(作動手段)30が設けられており、前記血流状態判定手段26が血流の停滞と判定した場合に作動装置30を作動して被測定者HMの下腿部Lの血流を促すよう構成されている。この作動装置30は、図1,3に示すように、支持台31に対して揺動可能に配設されて上面の支持面に被測定者HMが足を乗せることができる揺動板32と、当該揺動板32を揺動させる駆動モータ等からなる駆動部34と、当該駆動部34を駆動制御する駆動制御部36とを備えている。そして、前記血流状態判定手段26が血流の停滞と判定した場合に、当該血流状態判定手段26から前記駆動制御部36に対して揺動板32の作動を指示する信号が入力されるよう構成されており、当該信号に基づいて駆動制御部36が駆動部34を駆動して揺動板32を揺動させることで、被測定者HMの足首を上下させて強制的に屈伸運動させ得るようになっている。このように、被測定者HMの足首を強制的に屈伸運動させることで、下腿部Lの筋肉を伸縮させて血流を促すことができる。なお、前記作動装置30と前記血流状態判定手段26とは有線接続する構成としてもよく、無線接続するよう構成してもよい。すなわち、血流状態判定手段26の判定結果を作動装置30の駆動制御部36に入力可能な構成であれば任意に構成することができる。ここで、無線接続する場合の信号の送受信手段としては、赤外線送信その他の従来公知の無線信号送信規格で信号送受信する手段を採用できる。

【0026】
本実施形態の揺動板32は、支持面が略水平な水平姿勢と30°傾斜した傾斜姿勢となるよう揺動可能に構成してあるが、これに限られるものではない。また、駆動制御部36は、前記血流状態判定手段26が血流の停滞と判定した場合に、揺動板32が水平姿勢と傾斜姿勢とを7秒間で一往復する動作を2分間繰り返した後に揺動板32を水平姿勢で停止するよう前記駆動部34を駆動制御するよう構成しているが、これに限られるものではないことは当然である。なお、この作動装置30としては、被測定者HMの下肢を強制的に屈伸運動させる構成に限られるものではなく、例えば着用体12に被測定者HMの下腿部Lに振動体を設けるとともに当該振動体を振動させる駆動モータ等の駆動部34を設けて、当該振動体の振動を下腿部Lに伝達することにより血流を促すようにしてもよい。また、作動装置30の構成として、圧搾空気の給排気に伴って膨張および縮小する袋体を着用体12に設けると共に、袋体に対して圧搾空気を給排気するポンプ等の空気供給手段を設けて、当該袋体の膨張および縮小により下腿部Lを加圧することで血流を促すようにしてもよい。

【0027】
また、図4に示すように、被測定者HMの血流が停滞した状態かを判定する前記生体情報測定手段26をインターネット回線に接続した情報処理端末ITに設けると共に、インターネット回線に接続可能な携帯電話等の携帯情報端末MITとの間で無線通信可能な信号処理部28を前記コントロールボックスCBに設けて、インターネット回線を介して血流が停滞した状態かを判定するよう構成することができる。インターネット回線に接続可能な携帯電話等の携帯情報端末MITと前記生体情報測定手段14が測定した生体情報を無線送信可能な信号処理部28との間で無線通信可能に構成して、前記生体情報測定手段14が測定した生体情報を信号処理部28から携帯情報端末MITに送信すると共に、当該携帯情報端末MITを介してインターネット回線に接続する前記情報処理端末ITに送信して、当該情報処理端末ITにおいて血流が停滞した状態かを判定し、当該判定結果がインターネット回線および携帯情報端末MITを介して信号処理部28に入力されるよう構成される。そして、信号処理部28に入力される血流状態判定部の判定結果が、血流が停滞した状態であるとの判定結果である場合には、当該信号処理部28から前記作動装置30を作動させるための制御信号が駆動制御部36に入力されるよう構成することができる。このように、インターネット回線上の情報処理端末ITに血流状態判定手段26を設けて携帯情報端末MITを介して情報通信するよう構成することで、被測定者HMに装着する装置の小型化や軽量化を図り得る利点がある。

【0028】
このように、被測定者HMの下腿部Lに着用体12を装着した状態で血流の停滞に相関する生体情報(下腿部Lの生体インピーダンスや周囲径)の変化を測定することで、血流速度を直接的に測定することなく、血流の停滞を簡易的に測定して監視することができる。血流の停滞に伴って変化する下腿部Lの生体インピーダンスや周囲径を測定して血流の停滞を判定するよう構成することで、超音波等のように周辺環境の影響を受ける機材を用いることなく血流の停滞を簡易的に測定することができるから、飛行機や自動車等への乗車時のような広汎な環境での使用が可能になる。そして、血流の停滞を簡易的に測定した結果に基づいて作動手段を作動させて下腿部Lに刺激を与えるようにすることで、下腿部Lの血流を促して血流の停滞が長時間に及ぶのを防ぎ、エコノミークラス症候群に至るのを効果的に予防することができる。

【0029】
(検証実験)
次に、血流速度と被測定者HMの下腿部Lの生体インピーダンスとの相関関係および血流速度と被測定者HMの下腿部Lの周囲径との相関関係を示す検証実験について説明する。

【0030】
この検証実験では、年齢23才、身長165cm、体重55kgの標準的な体格の成人男性を対象として、座位姿勢および背臥位姿勢とした被測定者HMの下腿部Lの生体インピーダンスおよび周囲径の変化を測定した。検証実験での座位姿勢は、座面までの高さ400mm、座面ST1に対する背もたれST2の傾斜角度105°とした椅子STに被測定者HMが着座した姿勢(図1参照)であり、背臥位姿勢は、当該座面ST1に対する背もたれST2の傾斜角度を160°とすると共に床面から高さ300mmの足置き台(図示せず)に踵を乗せるように仰向けで横になった姿勢である。なお、この検証試験では、作動装置30が設けられておらず、座位姿勢の被測定者HMの足裏を床に付けるようにしている。下腿部Lの生体インピーダンスは、座位姿勢および背臥位姿勢の夫々において、膝下5cmおよび踝上5cmの位置で電流印加用電極16が皮膚表面に接すると共に、各電流印加用電極16の間において、電流印加用電極16から3cmの間隔を空けて電圧検出用電極18が皮膚表面に接するようにして、日本光電工業株式会社製の測定装置(製品名:インピーダンスプレチスモグラフAI-601G)を用いて30分間測定した。また、下腿部Lの周囲径は、前記座位姿勢および背臥位姿勢の夫々において、膝下5cmとなる位置の周囲径を5分毎に巻尺を利用して30分間測定した。そして、座位姿勢および背臥位姿勢の夫々において、膝裏に位置する膝窩静脈の血流速度を、東芝メディカルシステムズ株式会社製の測定装置(製品名:超音波画像診断装置NEMIOSSA-550A)により測定した。この膝窩静脈は、皮膚表面に近く、さらに血管断面積も大きく、下腿部Lの静脈の中で比較的容易に測定ができ、座位姿勢や背臥位姿勢を維持した場合において、血流速度の変化と、生体インピーダンスや周囲径の変化との相関関係を比較するのに適している。

【0031】
図5は、血流速度と生体インピーダンスとの関係を示すグラフ図であり、図6は、血流速度と下腿部Lの周囲径との関係を示すグラフ図である。なお、縦軸は、背臥位姿勢における測定開始時の測定値を100%としたときの割合を表し、横軸は、測定開始からの経過時間を表している。また、図5において、座位姿勢での生体インピーダンスの変化を実線で示すと共に血流速度の変化を二点鎖線で示し、背臥位姿勢での生体インピーダンスの変化を波線で示すと共に血流速度の変化を一点鎖線で示している。同様に、図6において、座位姿勢での下腿部の周囲径の変化を実線で示すと共に血流速度の変化を二点鎖線で示し、背臥位姿勢での下腿部の周囲径の変化を波線で示すと共に血流速度の変化を一点鎖線で示している。

【0032】
図5より、座位姿勢では、時間の経過とともに下腿部L(膝窩静脈)の血流速度が低下すると共に生体インピーダンスが低下し、背臥位姿勢では、時間の経過とともに下腿部L(膝窩静脈)の血流速度が増大すると共に生体インピーダンスが増大する傾向にあることが理解でき、血流速度と生体インピーダンスとの間には相関関係があることが分かる。一方で、図6より、座位姿勢では、時間の経過とともに下腿部L(膝窩静脈)の血流速度が低下すると共に下腿部Lの周囲径が増大し、背臥位姿勢では、時間の経過とともに下腿部L(膝窩静脈)の血流速度が増大すると共に下腿部Lの周囲径が低下する傾向にあることが理解でき、血流速度と下腿部Lの周囲径との間には相関関係があることが分かる。すなわち、この実証実験から把握できるように、測定開始からの血流速度と相関関係にある生体情報(生体インピーダンスや下腿部Lの周囲径)の変化を測定することで、測定している間に血流速度が低下して血流の停滞が生じたかを推定することができることを示している。

【0033】
本発明は、前述した実施形態に示したものに限られるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜に変更することができる。以下に、実施形態に示した装着型血流状態測定システム10の変更例の一例を示すが、これに限られるものではないことは当然である。
(1) 実施形態では、生体情報測定手段14の測定に基づいて判定手段が血流の停滞した状態と判定した場合に作動手段を作動させて被測定者HMの下肢に刺激を与えるよう構成したが、スピーカ等の音を出力可能な音出力手段や、液晶ディスプレイ等の表示手段を設けて、血流の停滞した状態と判定した場合に音出力手段から音を出力したり、表示手段に血流の停滞を表示するようにしてもよい。このように、音出力手段から音を出力したり表示手段に表示することで、被測定者HMに自発的な運動を促すことができる。なお、作動手段の作動や音出力手段の音出力、表示手段での表示等を組み合わせるようにしてもよい。
(2) 実施形態では、被測定者HMの下腿部Lに着用体12を着用して、生体情報測定手段14により当該下腿部Lの生体情報の変化を測定するようにしたが、着用体12を被測定者HMの大腿部に着用して、当該大腿部の生体情報の変化を生体情報測定手段14により測定するようにしてもよい。また、着用体12を被測定者HMの上肢(上腕部や前腕部)に着用して、当該着用体12の装着部位の生体情報の変化を生体情報測定手段14により測定するようにしてもよい。すなわち、着用体12を着用した身体部位において生体情報の変化を生体情報測定手段14により測定することで、当該身体部位の血流の停滞を測定することができ、特に下肢(大腿部や下腿部L)の生体情報の変化を生体情報測定手段14により測定することで、エコノミークラス症候群を効果的に予防することが可能となる。
(3) 生体情報測定手段や血流状態判定手段を、着用体に設けた同じコントロールボックスに収容するよう構成したが、個別の収容ボックスを設けるようにしてもよい。また、血流状態判定手段を着用体とは分離独立した端末に設けて、着用体に設けた生体情報測定手段と血流状態判定手段との間で無線通信するよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
12 着用体
14 生体情報測定手段
26 血流状態判定手段
30 作動装置(作動手段)
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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