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明細書 :腸内Blautia coccoides増殖刺激剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6675752号 (P6675752)
公開番号 特開2017-147960 (P2017-147960A)
登録日 令和2年3月13日(2020.3.13)
発行日 令和2年4月1日(2020.4.1)
公開日 平成29年8月31日(2017.8.31)
発明の名称または考案の名称 腸内Blautia coccoides増殖刺激剤
国際特許分類 A23L  33/105       (2016.01)
C12N   1/20        (2006.01)
FI A23L 33/105
C12N 1/20 A
請求項の数または発明の数 1
全頁数 10
出願番号 特願2016-032300 (P2016-032300)
出願日 平成28年2月23日(2016.2.23)
審査請求日 平成30年9月19日(2018.9.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
発明者または考案者 【氏名】北垣 浩志
【氏名】永尾 晃治
【氏名】中山 二郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100182567、【弁理士】、【氏名又は名称】遠坂 啓太
【識別番号】100195327、【弁理士】、【氏名又は名称】森 博
【識別番号】100197642、【弁理士】、【氏名又は名称】南瀬 透
審査官 【審査官】市島 洋介
参考文献・文献 特表2006-516278(JP,A)
特開2013-119546(JP,A)
特表2015-500792(JP,A)
J. Oleo Sci.,2015年,Vol.64, No.7,pp.737-742
佐藤友哉, ほか,麹グルコシルセラミドの腸内細菌叢への影響解析,第67回 日本生物工学会大会講演要旨集,2015年,p.206, 2P-125
調査した分野 A23L 33/00-33/29
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
スフィンゴ糖脂質であるグリコシルセラミドを含有する腸内Blautia coccoides増殖刺激剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スフィンゴ糖脂質を含有する腸内Blautia coccoides増殖刺激剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
食品として経口摂取されるものは、その糖質や脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル等の栄養源等や、薬理効果や機能を奏する成分として直接消化、吸収の対象とされるものが多く知られている。この消化、吸収とも関与するが、人間の腸内には常在する腸内細菌が存在し、この腸内細菌は、人間の健康と重要な関わりを有することが知られている。
【0003】
腸内細菌には、多種多様な細菌が存在し、その全体として腸内細菌叢と呼ばれて、そのバランスが重要であると考えられている。このバランスは個人や年齢、体調、栄養状態、ストレス等の要因によっても大きく変動することが知られている。一般的に、ヒトの消化管内における有用微生物は善玉菌ともよばれ、ビフィズス菌や乳酸菌等が善玉菌として知られている。
【0004】
この腸内細菌叢の調節、特に善玉菌の増殖には、食品の影響もあり、ヨーグルト等や、そもそもの善玉菌でもある乳酸菌を含む食品等が腸内細菌叢の調節機能を有することが知られている。しかしながら、和食等、広く健康に良いと言われているものであっても、それらの食事が腸内細菌叢に与える影響についてまでは十分に研究されているとはいえない状態である。
【0005】
近年、一般的に善玉菌として知られていた菌の他にも、腸内細菌として存在していることが確認されているクロストリジウム属(Clostridum)よる影響が着目され始めている。例えば、この菌を直接経口摂取することで、不安や多動性の改善効果があることが開示されている(特許文献1)。また、クロストリジウム属に属する細菌等を含有する細菌組成物による制御性T細胞の増殖に関する技術が開示されており、これにより自己免疫疾患、炎症性疾患、感染症などを治療または予防する技術が開示されている(特許文献2)。
【0006】
一方、スフィンゴ糖脂質の一種であるグリコシルセラミドは、植物や茸類等から抽出され、乾燥肌対策の化粧品用途として広く使用されており、皮膚機能の改善に効果があることが報告されている(特許文献3)。さらに、スフィンゴ脂質を過剰に含有する食品を鳥又は哺乳類に投与することで、腸内細菌叢の組成を改善する方法が開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2013-119546号公報
【特許文献2】特表2015-500792号公報
【特許文献3】特開平06-145039号公報
【特許文献4】特表2006-516278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来から、和食は健康に良いと言われていたが、それによって、腸内細菌叢がどのように変化するか十分には研究されていなかった。一方、特許文献4には、スフィンゴ脂質を摂取することで、腸内細菌叢を改善する方法が開示されているが、ここでは、スフィンゴ脂質の多くのタイプが腸内の或る望まれていない細菌を選択的に殺すことができ、一方他の細菌は事実上妨害されないままであることを発見したことに基づいている。
【0009】
すなわち、スフィンゴ脂質は特定の細菌に対してそれらの増殖抑制効果のみがあると考えられており、いわゆる悪玉菌に相当する菌のみを排除し、他の善玉菌等を維持することで相対的に組成を高め、腸内細菌叢を改善しようとするものである。そして、抗生物質の代替として利用したり、有害な細菌による各種症状(下痢、胃腸管の感染、肝障害、腸癌)を抑制したりするものとされている。
【0010】
ここで腸内細菌の一種であるBlautia coccoidesは特許文献1や2に開示されているように、直接摂取することで各種機能を得ることが期待されている。しかしながら、腸内細菌叢に存在しているにもかかわらず、この細菌を選択的に増殖させる技術は知られていない。
【0011】
係る状況下、本発明の目的は、新たな腸内細菌叢の調整剤を提供することである。ここで、特にその重要性が着目され始めている腸内Blautia coccoidesの増殖刺激剤を提供することを目的とする。また、腸内Blautia coccoidesの増殖刺激することで、精神を安定させたり、腸炎を抑制する効果も期待される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、麹等に含まれているスフィンゴ糖脂質、特にグリコシルセラミドを選択的に濃縮し、経口摂取させることで、従来知られていなかった、腸内細菌叢において腸内Blautia coccoidesが選択的に増殖することを知見した。
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> スフィンゴ糖脂質を含有する腸内Blautia coccoides増殖刺激剤。
<2> スフィンゴ糖脂質を含有する不安改善剤。
<3> スフィンゴ糖脂質を含有する腸炎治療剤。
<4> 前記スフィンゴ糖脂質が、グリコシルセラミドであることを特徴とする前記<1>記載の腸内Blautia coccoides増殖刺激剤。
<5> 前記スフィンゴ糖脂質が、グリコシルセラミドであることを特徴とする前記<2>記載の不安改善剤。
<6> 前記スフィンゴ糖脂質が、グリコシルセラミドであることを特徴とする前記<3>記載の腸炎治療剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、腸内Blautia coccoidesの増殖を刺激する増殖刺激剤が提供される。また、腸内Blautia coccoidesを増殖させることで不安改善剤、腸炎抑制剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るBlautia coccoides増殖刺激剤を給餌したマウスの腸内細菌叢におけるBlautia coccoidesの存在比を示す図である。
【図2】本発明に係るBlautia coccoides増殖刺激剤によるBlautia coccoidesの増殖刺激効果を確認したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。

【0018】
本発明は、スフィンゴ糖脂質を含有する各種機能を奏する組成物に関する。ここで、本発明は、Blautia coccoides増殖刺激剤や、不安改善剤、腸炎治療剤に関するが、いずれもスフィンゴ糖脂質を含有する組成物に係るため、以下において、これらを総称して「本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物」とする場合がある。

【0019】
[スフィンゴ糖脂質]
本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物は、その有効成分としてスフィンゴ糖脂質を含有する。スフィンゴ糖脂質とは、長鎖状のアミノアルコールであるスフィンゴイド塩基を有する脂質である。スフィンゴ糖脂質としては、ガラクトースにセラミドが結合したガラクトシルセラミドや、グルコースにセラミドが結合したグルコシルセラミドなどが知られており、総称してグリコシルセラミドと呼ばれるものが用いられ得る。

【0020】
前述のように、本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物は、スフィンゴ糖脂質を含有してなる。このスフィンゴ糖脂質は、麹菌由来のもののほかに、牛脳等の動物由来のものや、植物、微生物由来のものを用いることができる。これら、複数の由来のスフィンゴ糖脂質を混合して用いても良いし、単独で用い、必要に応じて他の成分と併せて使用することもできる。植物由来のスフィンゴ糖脂質としては、イネやトウモロコシ、こんにゃく、マイタケ、タモギタケ、大豆、ビート、小麦由来のスフィンゴ糖脂質が挙げられる。

【0021】
[麹菌由来の脂質]
本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物は、スフィンゴ糖脂質の由来として、麹菌由来のスフィンゴ糖脂質を含有することができる。麹菌由来の脂質は、麹菌から脂質成分を抽出したり、麹菌から水分等の脂質以外の成分を除去することなどによって得られる脂質成分を主としたものである。具体的には、アルコール等の有機溶媒に麹菌を混合することで麹菌の脂質成分を前記有機溶媒に抽出させたり、麹菌の細胞膜をホモジナイザー等で破砕し遠心分離することで成分を分離したり、水分を除去するために乾燥したり、これらの工程を組み合わせることで、麹菌の脂質成分を得る。この麹菌由来の脂質には、グリコシルセラミドなどのスフィンゴ糖脂質等が含有される。この麹菌由来の脂質は、脂質のため、麹菌および麹そのもののように、生きたまま、または凍結乾燥等により維持管理する必要がなく、常温や冷温等の通常の環境でも変性しにくく保存性に優れている。また、麹菌由来の脂質は、麹菌を培養したものから得ることができ、製造効率が高い。

【0022】
[麹菌]
麹菌とは、麹に用いられる菌である。麹とは、米、麦、大豆などの穀物に後述するアスペルギルス属の麹菌等の食品発酵に有効な菌等を繁殖させたものである。この麹は、日本酒、味噌、食酢、漬物、醤油、焼酎、泡盛など、発酵食品を製造するときに用いられている。ここで、本発明の麹菌は有効成分となるスフィンゴ糖脂質を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アスペルギルス属に属する麹菌が使用できる。本発明においては、これら麹菌を含む産業廃棄物として処理されている焼酎粕等を用いることができ、本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物の原料として利用することで、この麹菌を含む産業廃棄物の処理方法としても有用である。

【0023】
より具体的に麹菌を例示するとアスペルギルス属の麹菌としては、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソジャエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ナカザキ(Aspergillus nakazawai)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)、アスペルギルス・ルーチェンシス(Aspergillus luchensis)、アスペリギルス・ニガー(Aspergillus niger)などが挙げられる。

【0024】
また、本発明において使用できる麹菌は、アスペルギルス属に属する麹菌に限定されるものではなく、他の属、例えばRhizopus属に属する菌や、Monuscus属に属する菌およびPenicillium属に属する菌なども使用することができる。これらの属に属する菌を以下に例示する。

【0025】
リゾプス(Rhizopus)属に属する菌:リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)、リゾプス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)、リゾプス・ニヴェウス(Rhizopusniveus)、 リゾプス・ミクロスポラス(Rhizopus microspores)、リゾプス・ストロニファー (Rhizopus stolonifer)など、モナスカス(Monuscus)属に属する菌:モナスカス・アンカ(Monuscus anka)、モナスカス・パープレウス(Monuscus purpureus)、 モナスカス・ルーバー(Monuscusruber)、モナスカス・ピロサス(Monuscus pilosus)、 モナスカス・オーランチアクス(Monuscus aurantiacus)、モナスカス・カオリアン(Monuscus kaoliang)など、ペニシリウム(Penicillium)属に属する菌:ペニシリウム・カマンベルティ(Penicillium camemberti)、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)、ペニシリウム・グラウカム(Penicillium glaucum)、ペニシリウム・カゼイコラム(Penicillium caseicolum)など、本発明においては、これらの麹菌を1種単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる。なかでも、焼酎等の酒類の発酵等に汎用されているアスペルギルス・カワチを含むことが好ましい。

【0026】
[Blautia coccoides増殖改善剤]
Blautia coccoidesとは、腸内細菌叢に存在する細菌の一種である。この本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物を用いれば、腸内のBlautia coccoidesを優位に増殖させることができる。よって、この菌に着目した腸内細菌叢の調製を行うことができる。

【0027】
[不安改善剤]
本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物は、不安改善剤として用いて不安改善や多動性改善の効果を奏することができる。この不安改善剤の効果は、腸内のBlautia coccoidesを増殖させることによるものである。不安改善や多動性改善に関して、注意欠陥・多動性障害と呼ばれる発達障害が知られている。これはより具体的には、注意力の維持、時間感覚の異常、情報処理の低下といった状態となってしまい、また、過活動や衝動性などから日常生活に支障を来すような症状がある。特に子供において、これらの症状が多く見受けられるが、成人においても、ある程度の症状がみられる場合がある。従来、この症状に対して具体的な治療法は未だ確立されていなかったが、本発明によれば、本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物の摂取によりこれらの発達障害を抑制する、不安改善剤が提供される。

【0028】
[腸炎治療剤]
本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物は、腸炎治療剤として用いて腸炎治療効果を奏することができる。この腸炎治療効果は、腸内のBlautia coccoidesを増殖させることによるものである。制御性T細胞(Treg細胞)は、CD4陽性ヘルパーT細胞の一種で、免疫抑制機能等を持つとされている。Treg細胞を増殖・集積させることは、自己に対する免疫応答を抑制するほか、IL-10やTGFβなどの抗炎症性サイトカインを分泌し、過剰な炎症を抑制する機能も持つとされている。Blautia coccoidesを摂取することでTreg細胞を増殖・集積させることができるが、本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物を経口摂取すれば腸内Blautia coccoidesを選択的に増殖させることでTreg細胞の増殖・集積を腸内で達成することができる。これにより、腸などの消化器官における炎症を改善・抑制することができる。

【0029】
よって、本発明は、Blautia coccoides増殖刺激剤および、不安改善剤、腸炎治療剤のいずれかの製造のためのスフィンゴ糖脂質(好ましくは、グリコシルセラミド)の使用として達成することもできる。

【0030】
本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物は、有効成分であるスフィンゴ糖脂質を60kg体重のヒトでは1日あたり70~5,000mgを摂取することが好ましい。また、ヒトで1日当たり、1.2~80mg/kg体重を摂取するものとすることができる。これよりも摂取量が少ない場合、腸内Blautia coccoides増殖刺激や、不安改善、腸炎治療といった効果が十分に奏されないことがある。一方、本発明のスフィンゴ糖脂質は毒性が低く過剰摂取による悪影響は少ないが、過剰に摂取してもその効果は飽和するため上限量以上摂取する必要性は低い。60kg体重のヒト(成人)の1日あたりの摂取量は、200mg以上であることがより好ましく、600mg以上であることがさらに好ましい。

【0031】
本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物の組成物中におけるスフィンゴ糖脂質含有量は、その剤形などに応じて適宜変更され、特に制限はないが、経口摂取用の剤形として想定される含有量として、0.1~50重量%程度である。

【0032】
本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物は、スフィンゴ糖脂質を含有させて、薬学的に許容できるようにソフトカプセルや、ハードカプセル、打錠剤等のカプセル型錠剤のような、固形の製剤形態としたり、ゼリー状や、液状等の経口投与に適した製剤の剤形に適宜製剤化することができる。そしてその製剤化されたものとして経口投与され、その経口投与量を制御することができる。よって、この摂取量は、組成物として調製されたものから摂取される量であり、例えば、錠剤やカプセル剤等として、通常の食事とは別に摂取する量としての設定することができる。なお、一般的な食品にもスフィンゴ糖脂質は含有されるが、一般的な食事によって摂取する量では本発明の効果を奏する量としては不十分なことがあり、その摂取量を有効成分濃度として管理するに当たってはこれらの食品由来の通常の摂食からの摂取量は不充分な層が一定数存在すると考えられる。よって、本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物により摂取量を十分量として管理することが好ましい。

【0033】
本発明のスフィンゴ糖脂質含有組成物は、腸内Blautia coccoides増殖刺激や、不安改善、腸炎治療に関する機能性食品としても達成することもできる。この食品としてのスフィンゴ糖脂質含有組成物の組成物中におけるスフィンゴ糖脂質含有量は、その食品によって適宜変更されるが、それぞれの食品において0.1~50重量%程度とすることができる。食品の種類はいかなるものであってもよく、例えば、パン、麺等の穀粉やデンプンを主とするものや、チョコレートやゼリー、グミ等の菓子類、ヨーグルトやチーズ等の乳製品、発酵食品、飲料、調味料等が挙げられる。スフィンゴ糖脂質を配合させる方法としては、各種食品に応じて、適宜製造過程の段階で配合すればよい。

【0034】
また、本発明の有効成分となるスフィンゴ糖脂質は、従来から食されてきた食品も含まれており、毒性は低い。また、スフィンゴ糖脂質を含有する食品形態の場合も、それらの一般的に含有される濃度よりも高い濃度となるように調節し、有効量を効率よく摂取できるようにすることが好ましい。また、スフィンゴ糖脂質は嗜好性に優れているため、各種食品として継続摂取に適したものとして利用しやすい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
[実施例1]腸内細菌叢におけるBlautia coccoidesの存在比
スフィンゴ糖脂質含有組成物を経口摂取することで、腸内細菌叢におけるBlautia coccoidesの存在比の変化を評価した。
【実施例】
【0037】
[評価項目]
[腸内細菌叢解析]
次世代シークエンサーNGS「Miseq」(イルミナ社製)を用いてマウス腸内細菌叢の解析を行った。
【実施例】
【0038】
[スフィンゴ糖脂質(グリコシルセラミド)]
<麹脂質成分の抽出>
(1)乾燥状態の麹(Aspergillus oryzaeを繁殖させたもの、精米歩合70%)からクロロホルム・メタノール(1:1)で脂質成分を抽出し、Bligh&Dyer法で粗精製し、乾燥させて麹脂質成分を得た。なお、この麹脂質成分を分析すると少なくとも、麹菌に特異的なグリコシルセラミド(スフィンゴ糖脂質の一種)である「N-2´-ヒドロキシ-3´-オクタデカノイル-1-O-β-D-グルコピラノジル-9-メチル-4,8スフィンガヂアニン」等のグリコシルセラミドがが含まれることが確認された。この麹脂質成分は、グリコシルセラミドを10%程度含有する脂質である。
【実施例】
【0039】
[スフィンゴ糖脂質含有組成物]
前記麹脂質成分(グリコシルセラミドを10%含有)を、マウス用餌「AIN-76」(米国国立栄養研究所(AIN)によるマウス・ラットを用いた栄養研究のための標準精製飼料)を基に、シュクロースと混合し、黄麹脂質成分濃度が1wt%のスフィンゴ糖質含有組成物を調製した。この餌を以下、「GlcCer餌」(Kgc)とする。また、GlcCer餌の黄麹脂質成分をシュクロースに置換し、黄麹脂質成分を含まない餌を比較対象の「標準餌」(Nor)とした。これらのより具体的な成分比(重量%)を表1に示す。
【実施例】
【0040】
【表1】
JP0006675752B2_000002t.gif
*AIN-76組成を基に調製した。

【実施例】
【0041】
[マウスへのグリコシルセラミドの供与]
「実験系」
実験用マウス(C57BL/6N)を3匹ずつ2群にわけ、前記「GlcCer餌(Kgc)」を給餌した群(「Kgc群」)と、一般的なマウス用餌(表1の「標準餌(Nor)」)を給餌した群(「Nor群」)とした。それぞれの群に、それぞれの餌を1週間給餌し、その糞からゲノムを抽出して、全細菌の16S rRNA遺伝子V1—V2可変領域をPCRにて増幅させ、前記した次世代ゲノム解析装置(「Miseq」(イルミナ社製))にて配列解析を行い、装置に付属のMiSeq Reporter 16S metagenomicsシステムを用いて菌叢データを得た。クラスター解析にはEMBLのR環境の腸内細菌解析ソフトを用いた(参照 「http://enterotype.embl.de/enterotypes.html」)。
【実施例】
【0042】
図1は、本発明に係るBlautia coccoides増殖刺激剤を給餌したマウスの糞中のBlautia coccoidesの存在比に関する出現頻度(相対値)である(*p<0.05(Student's t-test))。
【実施例】
【0043】
なお、この腸内細菌叢解析を行った結果、グラム陽性細菌門が最も存在していることが確認されている。そして、図1に示すようにKgc群において中央値が約4.2%であり、Nor群の中央値約2.1%に対して、Blautia coccoidesの有意な増加がみられた。
【実施例】
【0044】
[実施例2]麹脂質成分含有培地におけるBlautia coccoidesの増殖
麹脂質成分の有無によるBlautia coccoidesの増殖の影響を評価した。
【実施例】
【0045】
[評価項目]
[濁度(OD600)]
濁度計(株式会社島津製作所社製“UV-1800”:試験波長600nm、石英セル使用、光路長1cm)を用いて、発酵試験液の濁度を測定することで、菌の繁殖の程度を評価する指標とした。なお、濁度(OD600)が0となるブランクとして、蒸留水を用いた。
【実施例】
【0046】
[基本培地]
YPD培地 1.5mLにコール酸ナトリウム(1.5%w/v) 1.5 μLを混合したものを基本培地として用いた。
【実施例】
【0047】
[培地(A):グリコシルセラミド含有培地]
さらに、前記基本培地に、グリコシルセラミド含有エタノール(グリコシルセラミド濃度4μg/μL) 7.5μLを混合して、培地(A)(グリコシルセラミド含有培地)とした。なお、このグリコシルセラミドとしては、前記実施例1に記載の乾燥させた麹脂質成分を用いた。
【実施例】
【0048】
[培地(B):コントロール培地]
また、コントロール試験を行う培地には、前記培地(A)における前記グリコシルセラミド含有エタノールに代えて、基本培地にエタノールを同量混合して、培地(B)とした。
【実施例】
【0049】
[培養試験]
前記培地(A)または前記培地(B)に、Blautia coccoidesを、OD600=0.1となるように摂取し、37℃、嫌気条件下(アネロパック)で、24時間嫌気培養した。培養結果を図2(グリコシルセラミド添加によるBlautia coccoidesの増殖刺激)に示す。
【実施例】
【0050】
図2に示すように、グリコシルセラミドを含有する培地(A)により培養した群において、OD600が増加していることから、Blautia coccoidesが増殖した。
【実施例】
【0051】
本発明に関するスフィンゴ糖脂質含有組成物を用いることで、腸内細菌叢におけるBlautia coccoidesの有意な増加が確認されたことから、Blautia cocoidesを直接経口摂取するよりも安定したBlautia coccoidesによる効果が得られると期待でき、不安改善、腸炎治療効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、腸内細菌叢の調製を行うことができる。具体的には、腸内Blautia coccoidesを選択的に増殖させる、腸内Blautia coccoides増殖刺激剤として利用される。また、腸内Blautia coccoidesを選択的に増殖させることで、不安改善や腸炎治療を行うことができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1