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Specification :(In Japanese)分子生態学的手法を用いた植物共生糸状菌の多様性解析法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P6739741
Publication number P2017-163891A
Date of registration Jul 28, 2020
Date of issue Aug 12, 2020
Date of publication of application Sep 21, 2017
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)分子生態学的手法を用いた植物共生糸状菌の多様性解析法
IPC (International Patent Classification) C12Q   1/686       (2018.01)
C12Q   1/6895      (2018.01)
C12N  15/11        (2006.01)
FI (File Index) C12Q 1/686 ZNAZ
C12Q 1/6895 Z
C12N 15/11 Z
Number of claims or invention 8
Total pages 16
Application Number P2016-051621
Date of filing Mar 15, 2016
Date of request for substantive examination Feb 18, 2019
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】池永 誠
【氏名】境 雅夫
Representative (In Japanese)【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100169579、【弁理士】、【氏名又は名称】村林 望
Examiner (In Japanese)【審査官】竹内 祐樹
Document or reference (In Japanese)特開2013-223428(JP,A)
サンケイ科学振興財団研究報告、2015年、25号、1~8頁
Biosci. Biotechnol. Biochem., 2015, 79(9), pp.1556-1566
日本微生物生態学会誌、2015年、30巻、2号、75~77頁
PLos One, 2012, 7(7):e40863
Field of search C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68-1/6897
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
植物試料由来のDNAと、以下の(a)及び(b)のプライマーから成るプライマーセットと、以下の(c)~(e)のうち少なくとも1つのロックド核酸(LNA)含有オリゴヌクレオチドを含有する反応液をPCRに供する工程を含み、該LNA含有オリゴヌクレオチドの3'末端は伸長反応が起きないようにリン酸化又はジデオキシ化されており、且つ該LNA含有オリゴヌクレオチドにより植物の内部転写スペーサー領域(ITS領域)の増幅が阻害され、且つ前記プライマーにより植物共生糸状菌のITS領域を選択的に増幅する、植物共生糸状菌のITS領域を増幅する方法。
(a)CTYGGTCATTTAGAGGAASTAA(配列番号1)の塩基配列から成るLNA含有プライマー(ここで、第5、20及び22番目の塩基がLNAである)
(b)TCCTCCGCTTATTGATATGC(配列番号2)の塩基配列から成るプライマー
(c)CTTAAACTCAGCGGGTAGTCCC(配列番号3)の塩基配列から成るLNA含有オリゴヌクレオチド(ここで、第6、7及び22番目の塩基がLNAである)
(d)CTTAAACTCAGCGGGTAGCCCC(配列番号4)の塩基配列から成るLNA含有オリゴヌクレオチド(ここで、第6、7、19及び22番目の塩基がLNAである)
(e)GCTTAAACTCAGCGGGTAATCCC(配列番号5)の塩基配列から成るLNA含有オリゴヌクレオチド(ここで、第7、8、19及び23番目の塩基がLNAである)
【請求項2】
前記PCR工程後に得られたPCR産物を、ネステッドPCRに供する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
以下の(f)及び(g)のプライマーから成るプライマーセットをネステッドPCRに使用する、請求項2記載の方法。
(f)CGCCCGCCGCGCGCGGCGGGCGGGGCGGGGGCACGGGGGGCTYGGTCATTTAGAGGAASTAA(配列番号6)の塩基配列から成るプライマー
(g)GCTGCGTTCTTCATCGATGC(配列番号7)の塩基配列から成るプライマー
【請求項4】
前記ネステッドPCR工程後に得られたPCR産物を変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)に供する工程をさらに含む、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
以下の(a)及び(b)のプライマーから成るプライマーセットと、以下の(c)~(e)のうち少なくとも1つのLNA含有オリゴヌクレオチドを含む、請求項1~4のいずれか1項記載の方法による植物共生糸状菌のITS領域増幅用キットであって、該LNA含有オリゴヌクレオチドの3'末端は伸長反応が起きないようにリン酸化又はジデオキシ化されている、前記キット。
(a)CTYGGTCATTTAGAGGAASTAA(配列番号1)の塩基配列から成るLNA含有プライマー(ここで、第5、20及び22番目の塩基がLNAである)
(b)TCCTCCGCTTATTGATATGC(配列番号2)の塩基配列から成るプライマー
(c)CTTAAACTCAGCGGGTAGTCCC(配列番号3)の塩基配列から成るLNA含有オリゴヌクレオチド(ここで、第6、7及び22番目の塩基がLNAである)
(d)CTTAAACTCAGCGGGTAGCCCC(配列番号4)の塩基配列から成るLNA含有オリゴヌクレオチド(ここで、第6、7、19及び22番目の塩基がLNAである)
(e)GCTTAAACTCAGCGGGTAATCCC(配列番号5)の塩基配列から成るLNA含有オリゴヌクレオチド(ここで、第7、8、19及び23番目の塩基がLNAである)
【請求項6】
2つのネステッドPCR用プライマーから成るプライマーセットをさらに含む、請求項5記載のキット。
【請求項7】
2つのネステッドPCR用プライマーが、以下の(f)及び(g)のプライマーである、請求項6記載のキット。
(f)CGCCCGCCGCGCGCGGCGGGCGGGGCGGGGGCACGGGGGGCTYGGTCATTTAGAGGAASTAA(配列番号6)の塩基配列から成るプライマー
(g)GCTGCGTTCTTCATCGATGC(配列番号7)の塩基配列から成るプライマー
【請求項8】
DGGE用試薬をさらに含む、請求項6又は7記載のキット。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば植物共生糸状菌のrRNA遺伝子間に存在する内部転写スペーサー領域(Internal Transcribed Spacer領域;以下、「ITS領域」と称する)を選択的に増幅する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子生態学的手法を用いた植物共生糸状菌の多様性解析においては、宿主植物に由来するDNAが過剰にPCR増幅され、その多様性が過小評価される重大な問題が存在する。このため、植物共生糸状菌を微生物資材として農業利用する研究の進展は停滞していた。
【0003】
一方、植物共生細菌多様性の解析においても同様に、植物オルガネラ(ミトコンドリア及びプラスチド)に由来するDNAが過剰にPCR増幅される問題が存在しており、当該問題を克服するために、本発明者等は、ロックド核酸(Locked Nucleic Acid:以下、「LNA」と称する)クランプ技術による植物内生菌のSSU rRNA(Small Subunit ribosomal RNA)遺伝子の選択的PCR増幅法を開発した(特許文献1)。当該方法では、植物オルガネラのSSU rRNA遺伝子に特異的なLNA含有オリゴヌクレオチドを、細菌用プライマーと競合する位置に設計し、植物オルガネラのSSU rRNA遺伝子のPCRを阻害することによって、植物内生菌のSSU rRNA遺伝子を選択的に増幅する。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2013-223428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、分子生態学的手法を用いた植物共生糸状菌の多様性解析は未だ確立されておらず、絶えざるイノベーションが求められている。
そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、植物共生糸状菌の多様性を解析する新技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、LNAを用いて、植物共生糸状菌のITS領域に特異的なLNA含有プライマー(以下、「LNAプライマー」と称する)及び宿主植物のITS領域に特異的なLNA含有オリゴヌクレオチド(以下、「LNAオリゴヌクレオチド」と称する)を設計し、PCR増幅過程において宿主植物のDNAのPCR増幅を抑制する一方で、植物共生糸状菌のDNAを選択的に増幅する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)植物試料由来のDNAと、植物共生糸状菌のITS領域を標的とする2つのプライマーから成るプライマーセットと、植物のDNAにアニーリングするLNAオリゴヌクレオチドを含有する反応液をPCRに供する工程を含む、植物共生糸状菌のITS領域を増幅する方法であって、
前記プライマーの少なくとも一方は、前記植物のDNAと比較して植物共生糸状菌のDNAに特異的な塩基にアニーリングする塩基をLNAに置換した塩基配列を有し、
前記LNAオリゴヌクレオチドは、前記プライマーの少なくとも一方が前記植物のDNAにアニーリングする部位と競合する位置に設計され、その5'末端において該プライマーの3'末端と1塩基以上同一であり、該プライマーが前記植物共生糸状菌のDNAにアニーリングする位置から伸長反応側にスライドした位置において該植物共生糸状菌のDNAと比較して該植物のDNAに特異的な塩基にアニーリングする塩基をLNAに置換した塩基配列を有し、且つ該LNAオリゴヌクレオチドの3'末端は伸長反応が起きないようにリン酸化又はジデオキシ化されており、
該LNAオリゴヌクレオチドにより植物のITS領域の増幅が阻害され、且つ前記プライマーにより植物共生糸状菌のITS領域を選択的に増幅する、
前記方法。
(2)植物試料由来のDNAと、以下の(a)及び(b)のプライマーから成るプライマーセットと、以下の(c)~(e)のうち少なくとも1つのLNAオリゴヌクレオチドを含有する反応液をPCRに供する工程を含み、該LNAオリゴヌクレオチドの3'末端は伸長反応が起きないようにリン酸化又はジデオキシ化されており、且つ該LNAオリゴヌクレオチドにより植物のITS領域の増幅が阻害され、且つ前記プライマーにより植物共生糸状菌のITS領域を選択的に増幅する、植物共生糸状菌のITS領域を増幅する方法。
(a)CTYGGTCATTTAGAGGAASTAA(配列番号1)の塩基配列から成るLNAプライマー(ここで、第5、20及び22番目の塩基がLNAである)(ITS1F-LNAプライマー)
(b)TCCTCCGCTTATTGATATGC(配列番号2)の塩基配列から成るプライマー(ITS4プライマー)
(c)CTTAAACTCAGCGGGTAGTCCC(配列番号3)の塩基配列から成るLNAオリゴヌクレオチド(ここで、第6、7及び22番目の塩基がLNAである)(ITS4-LNAオリゴヌクレオチドa)
(d)CTTAAACTCAGCGGGTAGCCCC(配列番号4)の塩基配列から成るLNAオリゴヌクレオチド(ここで、第6、7、19及び22番目の塩基がLNAである)(ITS4-LNAオリゴヌクレオチドb)
(e)GCTTAAACTCAGCGGGTAATCCC(配列番号5)の塩基配列から成るLNAオリゴヌクレオチド(ここで、第7、8、19及び23番目の塩基がLNAである)(ITS4-LNAオリゴヌクレオチドc)
(3)前記PCR工程後に得られたPCR産物を、ネステッドPCRに供する工程をさらに含む、(1)又は(2)記載の方法。
(4)以下の(f)及び(g)のプライマーから成るプライマーセットをネステッドPCRに使用する、(3)記載の方法。
(f)CGCCCGCCGCGCGCGGCGGGCGGGGCGGGGGCACGGGGGGCTYGGTCATTTAGAGGAASTAA(配列番号6)の塩基配列から成るプライマー(ITS1F-GCプライマー)
(g)GCTGCGTTCTTCATCGATGC(配列番号7)の塩基配列から成るプライマー(ITS2プライマー)
(5)前記ネステッドPCR工程後に得られたPCR産物を変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(以下、「DGGE」と称する)に供する工程をさらに含む、(3)又は(4)記載の方法。
【0008】
(6)植物共生糸状菌のITS領域を標的とする2つのプライマーから成るプライマーセットと、植物のDNAにアニーリングするLNAオリゴヌクレオチドを含む、植物共生糸状菌のITS領域増幅用キットであって、
前記プライマーの少なくとも一方は、前記植物のDNAと比較して植物共生糸状菌のDNAに特異的な塩基にアニーリングする塩基をLNAに置換した塩基配列を有し、
前記LNAオリゴヌクレオチドは、前記プライマーの少なくとも一方が前記植物のDNAにアニーリングする部位と競合する位置に設計され、その5'末端において該プライマーの3'末端と1塩基以上同一であり、該プライマーが前記植物共生糸状菌のDNAにアニーリングする位置から伸長反応側にスライドした(ずらした)位置において該植物共生糸状菌のDNAと比較して該植物のDNAに特異的な塩基にアニーリングする塩基をLNAに置換した塩基配列を有し、且つ該LNAオリゴヌクレオチドの3'末端は伸長反応が起きないようにリン酸化又はジデオキシ化されている、
前記キット。
(7)以下の(a)及び(b)のプライマーから成るプライマーセットと、以下の(c)~(e)のうち少なくとも1つのLNAオリゴヌクレオチドを含む、植物共生糸状菌のITS領域増幅用キットであって、該LNAオリゴヌクレオチドの3'末端は伸長反応が起きないようにリン酸化又はジデオキシ化されている、前記キット。
(a)CTYGGTCATTTAGAGGAASTAA(配列番号1)の塩基配列から成るLNAプライマー(ここで、第5、20及び22番目の塩基がLNAである)(ITS1F-LNAプライマー)
(b)TCCTCCGCTTATTGATATGC(配列番号2)の塩基配列から成るプライマー(ITS4プライマー)
(c)CTTAAACTCAGCGGGTAGTCCC(配列番号3)の塩基配列から成るLNAオリゴヌクレオチド(ここで、第6、7及び22番目の塩基がLNAである)(ITS4-LNAオリゴヌクレオチドa)
(d)CTTAAACTCAGCGGGTAGCCCC(配列番号4)の塩基配列から成るLNAオリゴヌクレオチド(ここで、第6、7、19及び22番目の塩基がLNAである)(ITS4-LNAオリゴヌクレオチドb)
(e)GCTTAAACTCAGCGGGTAATCCC(配列番号5)の塩基配列から成るLNAオリゴヌクレオチド(ここで、第7、8、19及び23番目の塩基がLNAである)(ITS4-LNAオリゴヌクレオチドc)
(8)2つのネステッドPCR用プライマーから成るプライマーセットをさらに含む、(6)又は(7)記載のキット。
(9)2つのネステッドPCR用プライマーが、以下の(f)及び(g)のプライマーである、(8)記載のキット。
(f)CGCCCGCCGCGCGCGGCGGGCGGGGCGGGGGCACGGGGGGCTYGGTCATTTAGAGGAASTAA(配列番号6)の塩基配列から成るプライマー(ITS1F-GCプライマー)
(g)GCTGCGTTCTTCATCGATGC(配列番号7)の塩基配列から成るプライマー(ITS2プライマー)
(10)DGGE用試薬をさらに含む、(8)又は(9)記載のキット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、植物試料由来のDNAを鋳型DNAとしたPCRにおいて宿主植物のDNAの増幅を阻害し、植物共生糸状菌のDNAを選択的に増幅することができる。当該植物共生糸状菌のDNAの選択的増幅によれば、植物共生糸状菌の多様性を解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】LNAプライマーとLNAオリゴヌクレオチドによるPCRクランプ法を適用する位置関係を示す模式図である。
【図2】LNAプライマーによる選択的PCR増幅法のメカニズムを示す模式図である。
【図3】LNAオリゴを用いたPCRクランプ法による選択的PCR増幅法のメカニズムを示す模式図である。
【図4】ITS1F-LNAプライマーの設計を示す模式図である。
【図5】ITS4-LNAオリゴヌクレオチドの設計を示す模式図である。
【図6】LNAプライマーとLNAオリゴヌクレオチドを用いたPCRクランプ法を併用して増幅した時のPCR産物(M:100bpマーカー、P:宿主植物ITS領域のPCR産物、C:フォワードプライマーにITS1Fプライマーを使用した比較対照)を示す電気泳動写真である。
【図7】ITS1F-GCプライマーとITS2プライマーがアニーリングする部位の位置関係を示す模式図である。
【図8】選択的にPCR増幅した産物のDGGEパターン(「有」のレーン)と、比較対照として増幅した産物(「無」のレーン)のDGGEパターンを示す写真である。
【図9】本発明に係る方法を用いて新たに検出されたDGGEバンドの近縁種を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る植物共生糸状菌のITS領域を増幅する方法(以下、「本方法」と称する)は、鋳型DNAとして植物試料由来のDNAと、植物共生糸状菌のITS領域を標的とする(植物共生糸状菌のITS領域に隣接するrRNA遺伝子にアニーリングする)2つのプライマーから成るプライマーセットと、当該プライマーセットの少なくとも一方のプライマーと競合する位置に設計した植物のDNAに対応するLNAオリゴヌクレオチドを含有する反応液を用いて、PCRを行う方法である。当該プライマーの少なくとも一方のプライマーは、LNAプライマーである。図1~3に示すように、当該LNAオリゴヌクレオチドによれば、植物のITS領域の増幅が阻害され、当該プライマーにより植物共生糸状菌のITS領域を選択的に増幅することができる。

【0012】
本方法では、糸状菌の多様性解析に際して従来において活用されているITS領域を、PCR増幅の標的とする。特許文献1に示す植物共生細菌の多様性解析法においては、フォワード側とリバース側のプライマーの両方にLNAオリゴヌクレオチドによるPCRクランプ法を適用したが、真核生物は多様性が低いため、宿主植物だけでなく原生生物のDNAもプライマーのミスマッチによってPCR増幅する別の問題が存在する。このため、宿主植物に特異的に設計したLNAオリゴヌクレオチドによるPCRクランプ技術を適用するだけでは、植物共生糸状菌のDNAの選択的PCR増幅は不十分である。そこで本方法では、大過剰含まれている宿主植物のDNAのPCR増幅を抑制するため、PCRクランプ法に使用するLNAオリゴヌクレオチドの設計に加え、糸状菌用プライマーとして使用されるプライマーの配列において、糸状菌に特異的な塩基にアニーリングする塩基をLNAに置換して糸状菌に対して特異性の高いLNAプライマーを設計し、ITS領域のPCR増幅を行う。

【0013】
ここで、LNAは、下記の化学式に示すように、核酸の糖分子内に架橋構造を持つ核酸アナログの一種である。

【0014】
【化1】
JP0006739741B2_000002t.gif

【0015】
DNAは化学構造上の自由度が大きいため、DNA/DNAの二重鎖形成において熱力学的に不利になっている。LNAは天然核酸の形の自由度を架橋で拘束することにより、標的となるDNAに対する結合親和性を高めたものである。このため、相補的な塩基に対する特異性は極めて高くなっており、アニーリング時のTm値はDNAに比べて高い(今西武・小比賀聡, アンチセンスBNAオリゴヌクレオチドを用いた遺伝子発現抑制, 日本薬理学雑誌, 2002年, Vol. 120, pp. 85-90)。本発明では、LNAの特徴を利用し、上述のLNAプライマー及びLNAオリゴヌクレオチドを、以下の要領で設計する。

【0016】
本方法における植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーとしては、例えば糸状菌のITS領域の増幅に汎用されているプライマーが挙げられる。当該汎用されているプライマーから成るプライマーセットとしては、例えば図1、4及び5に示すフォワードプライマーとしてITS1FプライマーとリバースプライマーとしてITS4プライマー(配列番号2)のプライマーセットが挙げられる。また、データベース上に登録されている様々な分類群に属する糸状菌のITS領域に隣接するrRNA遺伝子をアライメントし、共通する塩基配列に対してプライマーを設計し、当該プライマーを本方法における植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーとして使用することができる。本方法における植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーの長さとしては、例えば15~25塩基、好ましくは18~22塩基が挙げられる。

【0017】
植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーの少なくとも一方は、植物のDNAにおけるITS領域の外側のrRNA遺伝子(18S rRNA遺伝子、28S rRNA遺伝子)と比較して植物共生糸状菌のDNAに特異的な塩基にアニーリングする塩基をLNAに置換した塩基配列を有する。図4に示すように、当該LNAプライマーでは、データベース上に登録されている植物共生糸状菌のDNAを植物のDNAと共にアライメントし、植物のDNAと比較して植物共生糸状菌のDNAに特異的な塩基にアニーリングする塩基をLNAに置換する。

【0018】
一方、本方法におけるLNAオリゴヌクレオチドは、植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーの少なくとも一方が植物のDNAにアニーリングする部位と競合する位置に設計され、その5'末端において該プライマーの3'末端と1塩基以上同一であり;当該プライマーが植物共生糸状菌のDNAにアニーリングする位置から伸長反応側にスライドした(ずらした)位置において植物共生糸状菌のDNAと比較して植物のDNAに特異的な塩基にアニーリングする塩基をLNAに置換した塩基配列を有し;且つ、その3'末端は伸長反応が起きないようにリン酸化又はジデオキシ化されている、LNAオリゴヌクレオチドである。

【0019】
(1) データベース上に登録されている植物のDNAを、様々な分類群に属する糸状菌のDNAと共にアライメントし、使用する植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーに競合する植物のDNA用LNAオリゴヌクレオチドを設計する。具体的には、図5に示すように、LNAオリゴヌクレオチドを、植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーと競合する位置に設計する。植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーと重なる位置を設け、植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーが植物のDNAにアニーリングして伸長反応が生じないようにする。換言すれば、LNAオリゴヌクレオチドの5'末端は、植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーの3'末端と1塩基以上(例えば、1~5塩基、好ましくは1又は2塩基)同一であるようにする。

【0020】
(2) LNAオリゴヌクレオチドにおいては、植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーが植物共生糸状菌のDNAにアニーリングする位置から伸長反応側にスライドさせる形で設計し、スライドさせた位置で植物共生糸状菌のDNAと比較して植物のDNAに特異的な塩基にアニーリングする塩基についてはLNAに置換する。LNAに置換すべき塩基数としては、特に限定されるものではないが、例えば2~8塩基、好ましくは3又は4塩基が挙げられる。

【0021】
(3) LNAオリゴヌクレオチドのTm値を、植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーが機能しない温度で、できるだけ低い温度(例えば、66~72℃)に設計する。本方法におけるPCRは、順に熱変性、LNAオリゴヌクレオチドのアニーリング、プライマーのアニーリング及び伸長反応の反応サイクルを繰り返し行い、プライマーのアニーリング前に、LNAオリゴヌクレオチドを植物のDNAにアニーリングさせ、プライマーが植物のDNAにアニーリングし、伸長するのを阻害する。

【0022】
(4) LNAオリゴヌクレオチドから伸長反応が起きないように、LNAオリゴヌクレオチドの3'末端をリン酸化又はジデオキシ化する。

【0023】
(5) LNAオリゴヌクレオチドの長さとしては、例えば15~25塩基、好ましくは18~23塩基が挙げられる。

【0024】
具体的な植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーセットは、図1、4及び5に示す以下の(a)及び(b)のプライマーから成るプライマーセットである:
(a)CTYGGTCATTTAGAGGAASTAA(配列番号1)の塩基配列から成るか、又は当該塩基配列を含むLNAプライマー(ここで、第5、20及び22番目の塩基がLNAである)(ITS1F-LNAプライマー);
(b)TCCTCCGCTTATTGATATGC(配列番号2)の塩基配列から成るか、又は当該塩基配列を含むプライマー(ITS4プライマー)。

【0025】
あるいは、配列番号1又は2に記載の塩基配列において1又は数個(1~6個、1~3個又は1若しくは2個)の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列から成るか、あるいは配列番号1又は2に記載の塩基配列に対して80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列同一性を有し、且つ植物共生糸状菌のITS領域を増幅できるプライマーも、(a)又は(b)のプライマーとして使用することができる。塩基が欠失、置換又は付加される位置としては、例えば配列番号1又は2に記載の塩基配列の5'末端及び/又は3'末端が挙げられる。プライマーの機能は、例えば作製したフォワードプライマー及びリバースプライマーと、鋳型DNAとして植物共生糸状菌のITS領域を含むDNAとを含有する反応液をPCRに供し、当該プライマーから得られる特異的なPCR産物が得られるか否かにより評価することができる。

【0026】
一方、具体的なLNAオリゴヌクレオチドは、図5に示すように、データベース上に登録されている植物のDNAを、様々な分類群に属する糸状菌のDNAと共にアライメントし、上記の要領に基づき、上記(b)の植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーに競合するように設計された、以下の(c)~(e)のうち少なくとも1つのLNAオリゴヌクレオチドである:
(c)CTTAAACTCAGCGGGTAGTCCC(配列番号3)の塩基配列から成るか、又は当該塩基配列を含むLNAオリゴヌクレオチド(ここで、第6、7及び22番目の塩基がLNAである)(ITS4-LNAオリゴヌクレオチドa);
(d)CTTAAACTCAGCGGGTAGCCCC(配列番号4)の塩基配列から成るか、又は当該塩基配列を含むLNAオリゴヌクレオチド(ここで、第6、7、19及び22番目の塩基がLNAである)(ITS4-LNAオリゴヌクレオチドb);
(e)GCTTAAACTCAGCGGGTAATCCC(配列番号5)の塩基配列から成るか、又は当該塩基配列を含むLNAオリゴヌクレオチド(ここで、第7、8、19及び23番目の塩基がLNAである)(ITS4-LNAオリゴヌクレオチドc)。
当該(c)~(e)のLNAオリゴヌクレオチドの3'末端は、リン酸化又はジデオキシ化されている。

【0027】
あるいは、配列番号3~5に記載の塩基配列において1又は数個(1~5個、1~3個又は1若しくは2個)の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列から成るか、あるいは配列番号3~5に記載の塩基配列に対して80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列同一性を有し、且つ上記(b)のプライマーによる植物のITS領域の増幅を阻害できる各LNAオリゴヌクレオチドも、それぞれ(c)~(e)のLNAオリゴヌクレオチドとして使用することができる。塩基が欠失、置換又は付加される位置としては、例えば配列番号3~5に記載の塩基配列の5'末端及び/又は3'末端が挙げられる。LNAオリゴヌクレオチドの機能は、例えば作製したLNAオリゴヌクレオチドを本方法におけるLNAオリゴヌクレオチドとして使用し、上記(b)のプライマーによる植物のITS領域の増幅を阻害できたか否かにより評価することができる。

【0028】
なお、本方法では、LNAに代えて他の人工核酸を使用することもできる。他の人工核酸としては、例えば3'-Amino-2',4'-BNA、2',4'-BNACOC、2',4'-BNANC(Me)等が挙げられる。

【0029】
本方法に使用するプライマー及びLNAオリゴヌクレオチドは、例えばDNA合成機で化学合成することができる。

【0030】
また、本方法において鋳型DNAとして使用する植物試料由来のDNAは、例えば一般的な核酸抽出法により植物試料から得られたDNA、植物試料から抽出されたRNAと逆転写酵素を用いてRT-PCRにより作製されたcDNA等である。当該植物試料由来のDNAは、植物と共生する糸状菌のITS領域を含むDNAに加えて、植物のITS領域を含むDNAを含む。植物試料としては、例えば植物体全体、植物器官(例えば葉、花弁、茎、根、種子等)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)、植物培養細胞等が挙げられる。

【0031】
ここで、鋳型DNAが由来する植物としては、特に限定されるものではないが、例えばイネ科の植物(ジャポニカ、インディカ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、オオムギ、サトウキビ等)、マメ科の植物(ダイズ、アルファルファ等)、ウリ科の植物(キュウリ、メロン、スイカ、カボチャ等)、ナス科の植物(タバコ、トマト、ジャガイモ等)、アブラナ科の植物(キャベツ、アブラナ、ハクサイ等)、アカザ科の植物(サトウダイコン、ホウレンソウ等)、ユリ科の植物(アスパラガス、タマネギ、ニンニク等)、スイレン科の植物(ハス等)、キク科の植物(レタス、ヒマワリ等)、タデ科の植物(ソバ等)、セリ科の植物(ニンジン等)、トウダイグサ科の植物(キャッサバ等)、ゴマ科の植物(ゴマ等)、アオイ科の植物(ワタ等)、バラ科の植物(イチゴ等)等が挙げられる。

【0032】
また、本方法において増幅対象のITS領域が由来する植物共生糸状菌としては、植物共生糸状菌のITS領域を標的とするフォワードプライマーとリバースプライマーから成るプライマーセットにより増幅するITS領域を有する植物共生糸状菌であればよく、例えば子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、グロムス門(Glomeromycota)等に属する糸状菌が挙げられる。

【0033】
本方法では、以上に説明した植物試料由来のDNA(鋳型DNA)、植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーセット及びLNAオリゴヌクレオチド並びにPCRに必要な試薬(例えば、DNAポリメラーゼ(例えば、ExTaq、Taq、Tks Gflex、MightyAmp、Pfu、KODポリメラーゼ等)、基質(dNTP)、PCRバッファー(MgCl2、KCl、Tris-HCl等を含有))を含有する反応液をPCRに供する。反応液の組成は、例えば以下の通りである:反応液50μl当たり、鋳型DNA 10~500ng、基質(dNTP; dATP、dTTP、dGTP、dCTP)各2.5mM、DNA ポリメラーゼ(TaKaRa Ex Taq)1.25U、各プライマー0.2~1.0μM(好ましくは0.8μM)、LNAオリゴヌクレオチド0.5~8.0μM(好ましくは3.0~6.0μM)。

【0034】
PCRは、例えば、順に熱変性(例えば92℃~96℃、好ましくは94℃)、LNAオリゴヌクレオチドのアニーリング(例えば熱変性温度よりも低く、且つプライマーのアニーリング温度よりも高く、またプライマーがアニーリングできない温度帯の最も低い温度、好ましくは68℃~72℃、特に好ましくは70℃)、プライマーのアニーリング(例えば46℃~64℃、好ましくは54℃)及び伸長反応(例えば68℃~74℃、好ましくは72℃)の反応サイクルを繰り返し(例えば、25~40回、好ましくは30~35回)行う。プライマーのアニーリング前に、LNAオリゴヌクレオチドを植物のDNAにアニーリングさせることで、プライマーが植物のDNAにアニーリングし、伸長するのを阻害する一方、プライマーにより植物共生糸状菌のITS領域を選択的に増幅する。

【0035】
本方法では、植物共生糸状菌のITS領域のPCR産物(増幅産物)を、種々の多様性解析に供試できる。解析法には、例えば、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis; DGGE)、次世代シークエンスによるメタゲノム解析法、末端標識制限酵素断片長多型解析法(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism; T-RFLP)、制限酵素断片長多型解析法(Restriction Fragment Length Polymorphism; RFLP)、自動リボゾーム遺伝子間スペーサー解析法(Automated Ribosomal Intergenic Spacer Analysis; ARISA)等が挙げられる。また必要に応じて、選択的に増幅した植物共生糸状菌のITS領域をネステッドPCR(nested PCR)に供することができる。DGGE法で多様性解析を行う場合、当該ネステッドPCRに使用するプライマーセットは、例えばITS領域の全長あるいは一部を増幅するように設計することができる。DGGEで多様性を解析する場合、具体的なネステッドPCRに使用するプライマーセットは、図7に示す下記の(f)及び(g)のプライマーが挙げられる:
(f)CGCCCGCCGCGCGCGGCGGGCGGGGCGGGGGCACGGGGGGCTYGGTCATTTAGAGGAASTAA(配列番号6)の塩基配列から成るか、又は当該塩基配列を含むプライマー(ITS1F-GCプライマー:第1~40番目の塩基がGCクランプである);
(g)GCTGCGTTCTTCATCGATGC(配列番号7)の塩基配列から成るか、又は当該塩基配列を含むプライマー(ITS2プライマー)。

【0036】
当該ネステッドPCRの反応液の組成は、例えば以下の通りである:反応液50μl当たり、鋳型DNA 5~50ng、基質(dNTP; dATP、dTTP、dGTP、dCTP)各2.5mM、DNA ポリメラーゼ(TaKaRa Ex Taq等)1.25U、各プライマー0.2~1.0μM(好ましくは0.8μM)。

【0037】
また、ネステッドPCRは、例えば、順に熱変性(例えば92℃~96℃、好ましくは94℃)、プライマーのアニーリング(例えば50℃~64℃、好ましくは54℃)及び伸長反応(例えば68℃~74℃、好ましくは72℃)の反応サイクルを繰り返し(例えば、25~35回、好ましくは30回)行う。

【0038】
(ネステッドPCR工程無しの)PCR後、又はネステッドPCR後に得られるPCR産物(増幅産物)を、例えば電気泳動(好ましくは、DGGE)に供し、ゲル上の増幅産物に対応するバンドを切り出し、シークエンスに供することで、植物共生糸状菌のITS領域の塩基配列を決定することができる。DGGEの条件としては、例えば以下の通りである:12.5%~65%(好ましくは15%~57.5%)の変性剤濃度勾配(100%変性剤は7M尿素,40%ホルムアミドに相当)を付けた8%アクリルアミドゲルに75~200ボルト(好ましくは100ボルト)で6~16時間(好ましくは14時間)泳動。

【0039】
決定した塩基配列を、例えば相同性検索プログラム(例えば、BLAST)を用いてDNAデータベースに対して検索することで、ITS領域が由来する植物共生糸状菌を決定することができる。

【0040】
本方法では、DGGE解析以外にも、例えば次世代シークエンスによるメタゲノム解析、RFLP解析、T-RFLP解析等の解析法を適用することができる。次世代シークエンスによるメタゲノム解析では、PCR産物に含まれる各配列を網羅的に数十万から数千配列シークエンスすることによって、当該ITS領域に由来する植物共生糸状菌の多様性とその種類を決定することができる。T-RFLP(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism;末端標識制限酵素断片長多型)解析では、PCRの際に蛍光標識したプライマーを使用することで生じるITS領域を有するPCR産物の末端を蛍光標識し、当該PCR産物を制限酵素によって切断し、切断されたDNA断片の長さに基づく多型について、蛍光標識された末端を有するDNA断片の蛍光強度を指標に解析し、当該ITS領域に由来する植物共生糸状菌の多様性を決定することができる。RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism;制限酵素断片長多型)解析では、ITS領域を有するPCR産物を制限酵素によって切断し、切断されたDNA断片の長さに基づく多型により当該ITS領域に由来する植物共生糸状菌の多様性を決定することができる。ARISA(Automated Ribosomal Intergenic Spacer Analysis;自動リボゾーム遺伝子間スペーサー解析法)解析では、PCRの際に蛍光標識したプライマーを使用することで生じるITS領域を有するPCR産物の末端を蛍光標識し、ITS領域の長さの違いに基づく多型により当該ITS領域に由来する植物共生糸状菌の多様性を決定することができる。

【0041】
一方、本発明は、上記植物共生糸状菌のITS領域を標的とするプライマーセット及びLNAオリゴヌクレオチドを含む、植物共生糸状菌のITS領域増幅用キットに関する。当該キットは、プライマー及びLNAオリゴヌクレオチドの他に、PCRに必要な試薬(例えば、DNAポリメラーゼ(例えば、ExTaq、Taq、Tks Gflex、MightyAmp、Pfu、KODポリメラーゼ等)、基質(dNTP)、PCRバッファー(MgCl2、KCl、Tris-HCl等を含有))、上記ネステッドPCR用プライマーセット、DGGEに必要な試薬(例えば、アクリルアミド等のゲル成分、尿素、ホルムアミド等の変性剤、TAEバッファー等のバッファー)、並びに当該キットの取り扱い説明書を含むことができる。

【0042】
以上に説明した本発明によれば、植物試料からの抽出DNAを鋳型としたPCRにおいて、植物共生糸状菌のITS領域を選択的に増幅することができる。選択的に増幅した植物共生糸状菌のITS領域の塩基配列を解析することで、従来の培養法で分離されなかった植物共生糸状菌も検出できるようになると共に、植物の生育と植物共生糸状菌の機能に関する知見が飛躍的に進められる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
〔実施例1〕植物共生糸状菌のITS領域の選択的PCR増幅
以下に、本実施例において使用する配列を示す。ITS4-LNAオリゴヌクレオチド(a, b, c)の3'末端は伸長反応が生じないようにリン酸化した(「p」との表記がリン酸化を示す)。
(1) ITS1F-LNAプライマー:5'-CTYGGTCATTTAGAGGAASTAA-3'(配列番号1:第5、20及び22番目の塩基がLNAである);
ITS4プライマー:5'-TCCTCCGCTTATTGATATGC-3'(配列番号2)
(2) ITS4-LNAオリゴヌクレオチドa:5'-CTTAAACTCAGCGGGTAGTCCCp-3'(配列番号3:第6、7及び22番目の塩基がLNAである);
ITS4-LNAオリゴヌクレオチドb:5'-CTTAAACTCAGCGGGTAGCCCCp-3'(配列番号4:第6、7、19及び22番目の塩基がLNAである);
ITS4-LNAオリゴヌクレオチドc:5'-GCTTAAACTCAGCGGGTAATCCCp-3'(配列番号5:第7、8、19及び23番目の塩基がLNAである)
【実施例】
【0045】
次に、これらを用いてITS領域のPCR増幅を行った。PCR条件は次の通りで、熱変性とプライマーのアニーリングの間にITS4-LNAオリゴヌクレオチドのアニーリングを加えた:94℃1分(熱変性)、70℃1分(ITS4-LNAオリゴヌクレオチドのアニーリング)、54℃(ITS1F-LNAプライマーとITS4プライマーのアニーリング)、72℃2分(伸長反応)を40サイクル。PCR反応液の組成は、以下の通りであった:反応液50μl当たり、鋳型DNA 20~50ng、基質(dNTP; dATP、dTTP、dGTP、dCTP)各2.5mM、DNA ポリメラーゼ(TaKaRa Ex Taq等)1.25U、各プライマー0.8μM。また、同時に、ITS4-LNAオリゴヌクレオチドの至適濃度を最大8段階(0μM, 0.5μM, 1.0μM, 2.0μM, 3.0μM, 4.0μM, 6.0μM, 8.0μM)で検討した。
【実施例】
【0046】
図6に試料としてコムギの根(ITS4-LNAオリゴヌクレオチドaを使用)、ダイズの根(ITS4-LNAオリゴヌクレオチドbを使用)、ジャガイモの葉と茎(ITS4-LNAオリゴヌクレオチドcを使用)から抽出してPCR増幅した時の結果を示す。その結果、LNAプライマーのみでは宿主植物の増幅抑制が不十分であったが、LNAオリゴヌクレオチドを用いたPCRクランプ技術を併用する事で、植物共生糸状菌のITS領域の選択的なPCR増幅が可能となった。具体的には、コムギの根とダイズの根は3.0μM以上で、ジャガイモの葉と茎は6.0μM以上で選択的にPCR増幅することができた。
【実施例】
【0047】
この選択的にPCRした増幅産物を精製・希釈し、多様性解析法の一つであるDGGE法に頻繁に用いられるITS1F-GCプライマー(5'-CGCCCGCCGCGCGCGGCGGGCGGGGCGGGGGCACGGGGGGCTYGGTCATTTAGAGGAASTAA-3'(配列番号6;第1~40番目の塩基がGCクランプである))とITS2プライマー(5'-GCTGCGTTCTTCATCGATGC-3'(配列番号7))でITS1領域のnested PCR増幅を行い、同法に供した。プライマーの位置関係は図7の通りである。なお、nested PCR条件、nested PCR反応液の組成及びDGGE条件は、以下の通りであった:nested PCR条件は、94℃1分(熱変性)、54℃1分(プライマーのアニーリング)、72℃2分(伸長反応)を30サイクルであった。nested PCR反応液の組成は反応液50μl当たり、鋳型DNA 5~20ng、基質(dNTP; dATP、dTTP、dGTP、dCTP)各2.5mM、DNA ポリメラーゼ(TaKaRa Ex Taq)1.25U、各プライマー0.8μMであった。DGGE条件は、15%~57.5%の変性剤濃度勾配(100%変性剤は7M尿素,40%ホルムアミドに相当)を付けた8%アクリルアミドゲルに100ボルトで14時間泳動であった。
【実施例】
【0048】
図8に各植物試料のDGGEパターンを示した。比較対照として、ITS1F-LNAプライマーとITS4-LNAオリゴヌクレオチドによるPCRクランプ法を用いずにITS領域をPCR増幅して、同様にnested PCR増幅した産物を泳動した。図8において、「無」は比較対照で、「有」が選択的にPCR増幅した産物のDGGEパターンである。結果、いずれの試料においても、「無」のパターンでは、宿主植物のDGGEバンドが主要で他のバンドの数は少なく、濃さも薄かったが、「有」のパターンにおいては、宿主植物のDGGEバンドは消失あるいは薄くなっており、「無」のパターンに比べて新たに多数のバンドを検出することができた。
【実施例】
【0049】
また、ジャガイモの葉と茎について、新たに検出されたDGGEバンドの塩基配列をシークエンスに供し、DNAデータベースから近縁種を調べたところ、それらは全て糸状菌に近縁で、原生生物等の糸状菌以外の配列は見出されなかった(図9)。また、一部のバンドについては既知の糸状菌に対して低い相同性を示し、新種の糸状菌である可能性が示唆された。図9に示すDGGEバンドの塩基配列は、以下に示す各配列番号に記載の塩基配列を有する:DGGEバンド葉29:配列番号8、DGGEバンド葉18:配列番号9、DGGEバンド葉3:配列番号10、DGGEバンド葉11:配列番号11、DGGEバンド葉41:配列番号12、DGGEバンド葉19:配列番号13、DGGEバンド葉4:配列番号14、DGGEバンド茎8:配列番号15、DGGEバンド茎27:配列番号16、DGGEバンド茎33:配列番号17、DGGEバンド茎4:配列番号18、DGGEバンド茎5:配列番号19、DGGEバンド茎3:配列番号20、DGGEバンド茎42:配列番号21、DGGEバンド茎39:配列番号22。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
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(In Japanese)【図3】
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(In Japanese)【図4】
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(In Japanese)【図5】
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(In Japanese)【図6】
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(In Japanese)【図7】
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(In Japanese)【図8】
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(In Japanese)【図9】
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