TOP > 国内特許検索 > フェロセン化ナフタレンジイミド誘導体、テロメラーゼ活性検出キット、およびテロメラーゼ活性検出方法 > 明細書

明細書 :フェロセン化ナフタレンジイミド誘導体、テロメラーゼ活性検出キット、およびテロメラーゼ活性検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-203652 (P2018-203652A)
公開日 平成30年12月27日(2018.12.27)
発明の名称または考案の名称 フェロセン化ナフタレンジイミド誘導体、テロメラーゼ活性検出キット、およびテロメラーゼ活性検出方法
国際特許分類 C07F  17/02        (2006.01)
C12Q   1/68        (2018.01)
C12Q   1/48        (2006.01)
G01N  27/327       (2006.01)
G01N  27/416       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C07D 471/04        (2006.01)
FI C07F 17/02 CSP
C12Q 1/68 ZNAZ
C12Q 1/48 Z
G01N 27/327
G01N 27/416 336N
C12N 15/00 A
C07D 471/04 112Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2017-108329 (P2017-108329)
出願日 平成29年5月31日(2017.5.31)
発明者または考案者 【氏名】今若 直人
【氏名】松林 和彦
【氏名】小田 由貴子
【氏名】坂本 留美
【氏名】竹中 繁織
【氏名】佐藤 しのぶ
【氏名】田中 孝一
【氏名】宇野 卓矢
【氏名】信國 浩文
出願人 【識別番号】591282205
【氏名又は名称】島根県
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
【識別番号】598041795
【氏名又は名称】神戸天然物化学株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】110001243、【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4C065
4H050
Fターム 4B063QA13
4B063QA20
4B063QQ27
4B063QQ42
4B063QQ61
4B063QR07
4B063QR32
4B063QR41
4B063QR82
4B063QS36
4B063QX04
4C065AA07
4C065AA19
4C065BB09
4C065CC09
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH05
4C065JJ04
4C065KK05
4C065LL04
4C065PP02
4C065QQ03
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
4H050AB91
4H050WB11
4H050WB22
要約 【課題】テロメラーゼ活性測定化合物の提供。
【解決手段】式I(R1はC1~6アルキレン基;R2、R3及びR4はC1~3アルキル基;m及びnは0又は1で、少なくとも一方は1)ナフタレンジイミド誘導体。
JP2018203652A_000019t.gif
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(I)
【化1】
JP2018203652A_000018t.gif
(式中、
1は炭素数1~6のアルキレン基を示し、
2、R3およびR4は、それぞれ独立的に、1~3炭素原子を有するアルキル基を示し、
mおよびnは、それぞれ独立的に、0または1であり、
mおよびnの少なくとも一方は1であり、および
2またはR3と結合しているNは、カチオン化されてもよい)
を有することを特徴とするフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体。
【請求項2】
請求項1に記載のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体を含むことを特徴とする、核酸塩基配列を電気化学的に検出するための電気化学活性検出用組成物。
【請求項3】
前記核酸塩基配列が四重鎖構造を構成していることを特徴とする、請求項2に記載の電気化学活性検出用組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体と、TTAGGGからなる塩基配列を3’末端に含むテロメラーゼ伸長用プライマーが固定された電極とを含むことを特徴とする、テロメラーゼ活性検出キット。
【請求項5】
(1) 電極上に、TTAGGGからなる塩基配列を3’末端に含むプライマーを固定する工程と、
(2) 前記プライマーに、テロメラーゼ活性を検出しようとする試料を作用させ、前記プライマーの伸長産物を形成する工程と、
(3) 前記伸長産物を形成した電極を、請求項1に記載のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体を含む電解質溶液に接触させ、前記伸長産物中に四重鎖構造を形成し、得られた四重鎖構造と前記フェロセン化ナフタレンジイミド誘導体との反応により電気化学活性プローブを形成する工程と、
(4) 前記電気化学活性プローブの酸化還元電流を測定する工程と
を含むことを特徴とする電気化学的テロメラーゼ活性検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フェロセン化ナフタレンジイミド誘導体、テロメラーゼ活性検出キット、およびテロメラーゼ活性検出方法に関する。より詳細には、本発明は、癌の早期発見に有用な電気化学活性プローブとして用いることができるフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体、当該フェロセン化ナフタレンジイミド誘導体を含むテロメラーゼ活性検出キット、および当該フェロセン化ナフタレンジイミド誘導体を用いるテロメラーゼ活性の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、癌の早期発見法の1つとして、癌マーカーを用いた診断が行われている。癌マーカーは、癌細胞が産生する物質または癌の存在に応じて非癌細胞が産生する物質である。癌マーカーの測定は、癌の存在を示唆し、臨床診断補助および/または転移・再発の早期発見に有用である。
【0003】
近年、テロメラーゼが癌マーカーとして注目されている。テロメラーゼは、染色体の末端に存在するテロメア配列(ヒトの場合、6塩基からなる5’-TTAGGG-3’配列が数百回繰り返されている)を認識し伸長する酵素であり、鋳型RNAと触媒サブユニットタンパク質から構成されている。テロメア配列は、正常細胞であれば細胞分裂の度に短くなることが知られている。しかし、癌に冒された場合、テロメラーゼが活性を有し、テロメア配列は逆に伸長されることが知られている。したがって、患者のテロメラーゼ活性を調べることは、癌の早期発見に極めて有用である。
【0004】
テロメラーゼ活性の検出方法としては、現在、テロメア反復増幅プロトコル(TRAP)法が広く用いられている(たとえば、非特許文献1参照)。TRAP法は大きく3つの工程からなる。最初の工程では、細胞から抽出したテロメラーゼによる伸長反応を行う。すなわち、テロメラーゼは、基質であるオリゴヌクレオチド(TS)の3’末端に相当数のテロメア配列(TTAGGG)を付加してTTAGGG鎖の伸長反応を行う。次の工程では、2種類のプライマー(TSプライマーとRPプライマー)を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、伸長生成物を増幅する。最後の工程では、増幅産物を電気泳動し、6塩基ずつ増加する生成物のラダーを生成させ、そのラダーを32Pを用いた放射性検出法や蛍光色素を用いた蛍光検出法により検出する。これにより、高感度のテロメラーゼ活性の検出が可能となっている。
【0005】
しかしながら、TRAP法は、伸長反応、PCR、電気泳動という多数の工程を必要とし、一連の操作に長時間を要するという問題がある。また、伸長生成物として、PCRによって伸長されたヌクレオチド鎖、および/またはプライマーダイマーが生成することにより、偽陽性が生じる可能性があるという問題もある。
【0006】
一方、伸長されたテロメア配列は、特定の条件下では四重鎖構造(四本鎖Gカルテット構造)を示すことが知られている。四重鎖構造が形成されると、テロメラーゼがテロメア配列を認識できないため、伸長反応は起こらない。すなわち、四重鎖構造の形成を促進する化合物、および四重鎖構造を安定化する化合物は、テロメラーゼ阻害剤としての効果を有することになる。したがって、テロメラーゼ阻害剤の存在下では、腫瘍細胞由来の試料のテロメラーゼ活性を測定できない。そのため、四重鎖構造の有無に影響を受けないテロメラーゼ活性の検出方法が必要とされている。
【0007】
また、テロメラーゼ阻害剤がPCRを阻害するような場合、TRAP法によるテロメラーゼ阻害剤のスクリーニングが困難となる。具体的に問題となる例は、PCRの有無を確認するインターナルコントロール配列が検出されるものの、テロメア配列に由来するラダーが検出されない場合である。この結果が、(a)テロメラーゼによるテロメアの伸長がされていないことに起因するのか、あるいは(b)テロメラーゼによるテロメアの伸長は行われたが、テロメラーゼ阻害剤によるPCRの阻害に起因するのかの判断が困難である。そのため、PCRを用いないテロメラーゼ活性の検出方法も必要とされている。
【0008】
より簡便かつ迅速にテロメラーゼ活性を検出する方法として、電気化学的テロメラーゼ分析(ECTA)法が報告されている(たとえば、特許文献1および非特許文献2参照)。ECTA法は、電極上にテロメアDNAを固定化する工程(図1(a))と、電極上で伸長反応させることで伸長産物を調製する工程(図1(b))と、電解質処理によって伸長産物中に四重鎖構造を形成する工程(図1(c))と、電解質溶液中で電気化学活性プローブを四重鎖構造と反応させる工程(図1(d))と、電気化学活性プローブからの酸化還元電流を測定する工程(図1(e))とを含む。ここで、電気化学活性プローブとして、フェロセン化ナフタレンジイミド誘導体を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2006-223218号公報
【特許文献2】特開2001-242116号公報
【0010】

【非特許文献1】Kim N. W. et al., Science, 266(5193), 2011-2015 (1994)
【非特許文献2】Mori K. et al., Clin. Chem., 59(1), 289-295 (2013)
【非特許文献3】Takenaka S, at al., Anal. Chem., 72(6), 1334-1341 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ECTA法においては、テロメア配列の伸長産物に特徴的に含まれる四重鎖構造との相互作用の選択性が高い化合物を電気化学活性プローブとして用いることによって、検出感度を高めることができる。よって、四重鎖構造との相互作用の選択性がより高い化合物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の実施形態のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体は、一般式(I)
【0013】
【化1】
JP2018203652A_000002t.gif

【0014】
(式中、
1は炭素数1~6のアルキレン基を示し、
2、R3およびR4は、それぞれ独立的に、1~3炭素原子を有するアルキル基を示し、
mおよびnは、それぞれ独立的に、0または1であり、
mおよびnの少なくとも一方は1であり、および
2またはR3と結合しているNは、カチオン化されてもよい)
を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の実施形態である、核酸塩基配列の電気化学的検出を目的とする電気化学活性検出のための組成物は、第1の実施形態のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体を含むことを特徴とする。ここで、核酸塩基配列は、四重鎖構造を構成していてもよい。
【0016】
本発明の第3の実施形態のテロメラーゼ活性検出キットは、第1の実施形態のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体と、TTAGGGからなる塩基配列を3’末端に含むテロメラーゼ伸長用プライマーが固定された電極とを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の第4の実施形態の電気化学的テロメラーゼ活性検出方法は、
(1) 電極上に、TTAGGGからなる塩基配列を3’末端に含むプライマーを固定する工程と、
(2) 前記プライマーに、テロメラーゼ活性を検出しようとする試料を作用させ、前記プライマーの伸長産物を形成する工程と、
(3) 前記伸長産物を形成した電極を、第1の実施形態に記載のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体を含む電解質溶液に接触させ、前記伸長産物中に四重鎖構造を形成し、得られた四重鎖構造と前記フェロセン化ナフタレンジイミド誘導体との反応により電気化学活性プローブを形成する工程と、
(4) 前記電気化学活性プローブの酸化還元電流を測定する工程と
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記の構成を採用することにより、本発明のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体は、一本鎖、二本鎖、四重鎖などの種々の構造を有するDNAに対して相互作用を有する。本発明のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体は、二本鎖構造または四重鎖構造を有するDNA、特に四重鎖構造を有するDNAに対して、著しく大きな相互作用を示す。前述の大きな相互作用により、四重鎖構造を有するテロメア配列を、より高感度で電気化学的に検出することが可能となる。したがって、本発明のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体は、四重鎖構造を構成する核酸塩基配列の電気化学的検出を目的とする、電気化学活性検出用組成物、テロメラーゼ活性検出キット、および電気化学的テロメラーゼ活性検出方法において、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ECTA法を説明するための模式図であり、(a)~(e)は、それぞれの工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の実施形態のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体は、一般式(I)

【0021】
【化2】
JP2018203652A_000003t.gif

【0022】
ここで、R1は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R2、R3およびR4は、それぞれ独立的に、1~3炭素原子を有するアルキル基を示し、mおよびnは、それぞれ独立的に、0または1であり、mおよびnの少なくとも一方は1であり、およびR2またはR3と結合しているNは、カチオン化されてもよい。

【0023】
一般式(I)に示されるように、本発明のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体は、ナフタレンジイミド環構造と、置換フェロセン構造と、それら構造を結合するリンカー部(-R1-N(R2)-)とで構成される。ナフタレンジイミド環構造は、芳香族性の板状構造であり、核酸塩基配列(DNA、RNAなど)の二本鎖(二重らせん)構造などの塩基対間に平行に挿入される縫い込み型インターカレータ部分として機能する。置換フェロセン構造は、電気化学的な検出の際に、酸化還元活性部分として機能する。また、リンカー部は、一般式(I)の化合物の合成における分離および精製操作を容易とし、同合成の収率を向上させ、かつ、ナフタレンジイミド環構造のインターカレータとしての機能を補助する機能を有する。

【0024】
一般式(I)において、R1は、直鎖アルキレン基であっても、分枝アルキレン基であってもよい。合成の容易性の観点から、好ましくは、R1は直鎖アルキレン基である。好ましいR1は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、およびヘキサメチレン基を含む。

【0025】
一般式(I)において、R2は、出現毎に、1~3炭素原子を有するアルキル基である。R2は、直鎖アルキル基であっても、分枝アルキル基であってもよい。合成の容易性の観点から、好ましくは、R2は直鎖アルキル基である。好ましいR2は、メチル基、エチル基、および1-プロピル基を含む。

【0026】
一般式(I)において、R3およびR4は、出現毎に、1~3炭素原子を有するアルキル基である。R3およびR4は、直鎖アルキル基であっても、分枝アルキル基であってもよい。好ましいR3およびR4は、メチル基、エチル基、1-プロピル基、および2-プロピル基(イソプロピル基)を含む。

【0027】
一般式(I)において、mおよびnは、いずれか一方が1であることを条件として、0または1である。言い換えると、一般式(I)の化合物のフェロセン構造は、少なくとも1個の「-CH2NR34」置換基を有する。

【0028】
具体的な使用形態(溶液のpHなど)に依存して、一般式(I)の化合物は「-N(R2)-」部分構造および「-CH2NR34」置換基中のNは、カチオン化されていてもよい。たとえば、酸性または中性領域の緩衝液中で一般式(I)の化合物を使用する場合、「-N(R2)-」部分構造および「-CH2NR34」置換基は、それぞれ「-NH(R2+-」部分構造および「-CH2NHR34+」置換基に変化し得る。

【0029】
一般式(I)の化合物の好ましい例は、以下の化合物(Ia)および(Ib)を含む。

【0030】
【化3】
JP2018203652A_000004t.gif

【0031】
一般式(I)の化合物は、たとえば、以下に示すスキームにしたがって合成することができる。

【0032】
【化4】
JP2018203652A_000005t.gif

【0033】
フェロセン化ナフタレンジイミド誘導体と核酸塩基配列との相互作用効果は、たとえば、紫外可視吸収スペクトロ解析およびスキャッチャードプロット解析の併用により評価することができる。あるいはまた、相互作用効果を、円偏光二色性(CD)スペクトル解析、または水晶振動子マイクロバランス(QCM)法により評価することもできる。

【0034】
本発明の第2の実施形態である、核酸塩基配列の電気化学的検出を目的とする電気化学活性検出のための組成物は、第1の実施形態のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体を含むことを特徴とする。ここで、核酸塩基配列は四重鎖構造を構成していてもよい。

【0035】
本実施形態の組成物は、固体状態であっても、液体状態であってもよい。本実施形態の組成物は、第1の実施形態のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体と、追加の成分とを含む混合物である。用いることができる追加の成分は、水、有機溶媒、電解質などの当該技術で知られている任意の成分であってもよい。

【0036】
電解質は、電極上に固定されたテロメラーゼ伸長用プライマーから伸長したテロメア配列に四重鎖構造を形成させる機能を有する。用いることができる電解質は、リチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩を含む。

【0037】
電解質は、溶液のpHを一定範囲内に維持する緩衝機能を有してもよい。緩衝機能を有する電解質は、酢酸/酢酸塩の混合物、リン酸/リン酸塩の混合物、クエン酸/クエン酸塩の混合物のような、JIS規格に記載の混合物、および生化学分野においてよく知られている任意の混合物を含む。

【0038】
用いることができる有機溶媒は、好ましくは水溶性有機溶媒である。核酸塩基配列の高次構造(四重鎖構造など)を攪乱しない範囲の比較的少量の有機溶媒を用いることが望ましい。好ましい水溶性有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などを含むが、それらに限定されるものではない。

【0039】
本発明の第3の実施形態のテロメラーゼ活性検出キットは、第1の実施形態のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体と、TTAGGGからなる塩基配列を3’末端に含むテロメラーゼ伸長用プライマーが固定された電極とを含むことを特徴とする。

【0040】
用いることができる電極は、金、白金、銀、銅、およびチタンのような金属電極;グラファイト、グラッシーカーボン、パイロティックグラファイト、およびカーボンファイバーのような炭素電極;酸化チタン、酸化スズ、酸化マンガン、および酸化インジウムスズ(ITO)のような酸化物電極、シリコン(Si)のような半導体電極を含む。好ましい電極は、金電極である。なぜなら、後述するようにテロメラーゼ伸長用プライマーの5’末端をチオール化することにより、テロメラーゼ伸長用プライマーを容易に金電極に固定することができるからである。電極は、ワイヤ、ディスク、およびプレートのような種々の形態を有してもよい。また、電極は、円形、多角形、および楕円形のような種々の形状の作用面を有してもよい。電極の作用面の面積(電極面積)は特に限定されない。円形の作用面を有する電極の場合、作用面が、20μm~10mm、より好ましくは1mm~3mmの直径を有することが望ましい。

【0041】
また、電極は、多数の独立した電極が配列されたアレイ電極であってもよい。たとえば、電気絶縁性基板表面に、複数の金薄膜を規則的な間隔で蒸着して、アレイ電極を形成してもよい(特許文献2参照)。

【0042】
テロメラーゼ伸長用プライマーは、3’末端にTTAGGGからなる塩基配列を有する。テロメラーゼ伸長用プライマーは、3’末端において、複数回にわたってTTAGGG配列が反復した塩基配列を有してもよい。また、テロメラーゼ伸長用プライマーは、5’末端に、TTAGGG以外の塩基配列を有してもよい。TTAGGG以外の塩基配列を配列することによって、テロメラーゼ伸長用プライマーの電極への固定、および/またはテロメラーゼによるテロメラーゼ伸長用プライマーの伸長を、より容易にすることができる。

【0043】
テロメラーゼ伸長用プライマーの電極上への固定は、電極の種類に応じて、化学結合法および点着法のような、オリゴヌクレオチドの固定に用いる公知の方法を用いることができる。たとえば金電極を用いる場合、テロメラーゼ伸長用プライマーの5’末端をチオール化し、当該チオールと金との反応により金-硫黄結合を形成することによって、テロメラーゼ伸長用プライマーを金電極に固定することができる。たとえば、5’末端にチオール基を含むテロメラーゼ伸長用プライマーは、公知の方法(たとえば、Takenaka S, at al., Anal. Chem., 72(6),1334-1341 (2000))により得ることができる。一方、グラッシーカーボン電極を用いる場合、テロメラーゼ伸長用プライマーの5’末端にアミノ基を導入する工程と、過マンガン酸カリウムを用いる酸化により、グラッシーカーボン表面にカルボキシル基を導入する工程と、テロメラーゼ伸長用プライマーのアミノ基とグラッシーカーボン表面にカルボキシル基とを反応させてアミド結合を形成する工程とを含む方法により、テロメラーゼ伸長用プライマーをグラッシーカーボン電極に固定することができる。

【0044】
本発明の第3の実施形態のテロメラーゼ活性検出キットは、第1の実施形態のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体、およびテロメラーゼ伸長用プライマーが固定された電極に加えて、電解質またはその溶液をさらに含んでもよい。用いることができる電解質は、第2の実施形態において説明したものと同様である。

【0045】
本発明の第4の実施形態の電気化学的テロメラーゼ活性検出方法は、
(1) 電極上に、TTAGGGからなる塩基配列を3’末端に含むプライマーを固定する工程と、
(2) 前記プライマーに、テロメラーゼ活性を検出しようとする試料を作用させ、前記プライマーの伸長産物を形成する工程と、
(3) 前記伸長産物中に四重鎖構造を形成する工程と、
(4) 第1の実施形態のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体と、前記四重鎖構造を含む伸長産物とを電解質溶液中で反応させ、電気化学活性プローブを形成する工程と、
(5) 前記電気化学活性プローブの酸化還元電流を測定する工程と
を含むことを特徴とする。

【0046】
工程(1)は、第3の実施形態において説明したように、5’末端にチオール基を含むテロメラーゼ伸長用プライマーを金電極に固定する方法、5’末端にアミノ基を含むテロメラーゼ伸長用プライマーを、表面にカルボキシル基を形成したグラッシーカーボン電極に固定する方法、点着法などのオリゴヌクレオチドの固定に用いられる任意の既知の方法で実施することができる。

【0047】
工程(2)は、テロメラーゼ伸長用プライマーを固定した電極を、試料を含む溶液に浸漬することによって実施することができる。試料は、癌マーカーの存在を試験しようとする細胞である。被検細胞は、ヒト由来の細胞であれば、特に限定されない。試料溶液は、好ましくは、被検細胞の抽出液である。抽出液は、被検細胞を抽出用緩衝液中に懸濁させる工程と、必要に応じて、得られた懸濁液に非イオン性界面活性剤を添加する工程と、凍結融解、ホモジナイズなどのような生化学分野で用いられる通常の技術により細胞膜を破壊する工程とを含む方法により得ることができる。

【0048】
工程(2)は、被検細胞抽出液中のテロメラーゼにより、電極に固定されたテロメラーゼ伸長用プライマーから伸長産物が得られるのに十分な条件(pH、温度、継続時間)で実施される。

【0049】
工程(3)は、工程(2)を実施した電極を、第1の実施形態のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体を含む電解質溶液に接触させることによって実施される。用いることができる電解質は、第2の実施形態で説明した化合物を含む。

【0050】
工程(3)は、伸長産物が四重鎖構造を形成するのに十分であり、かつ形成された四重鎖構造とフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体とが結合するのに十分な条件(pH、温度、継続時間)で実施される。

【0051】
代替法として、工程(3)を2段階で実施してもよい。この代替法の工程(3)は、(3a)伸長産物が形成された電極を第1の電解質溶液と接触させる工程と、(3b)工程(3a)を実施した電極を、第1の実施形態のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体を含む第2の電解質溶液に接触させる工程とを含む。この代替法では、工程(3a)において、伸長産物中に四重鎖構造を形成させ、工程(3b)において、工程(3a)で得られた四重鎖構造とフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体との反応により電気化学活性プローブを形成する。この代替法は、工程(3a)で使用する第1の電解質溶液が緩衝機能を持たない場合、および/または、工程(3b)で使用する第2の電解質溶液による四重鎖構造の形成が不充分な場合において、特に有効である。

【0052】
工程(3)を2段階で実施する場合、工程(3a)は、伸長産物が四重鎖構造を形成するのに十分な条件(pH、温度、継続時間)で実施される。工程(3b)は、工程(3a)で形成された四重鎖構造とフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体とが結合するのに十分な条件(pH、温度、継続時間)で実施される。

【0053】
工程(4)は、公知の電気化学測定法により実施することができる。たとえば、作用極、対極および基準極の3電極系において、作用極に対して所定の電位を印加することにより、作用極に固定された電気化学活性中心(第1の実施形態のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体中のフェロセン構造)の酸化電流または還元電流を測定する方法を利用することができる。ここで、工程(3)で得られた電気化学活性プローブを作用極とする。用いることができる方法は、サイクリックボルタンメトリー(CV)、矩形波ボルタンメトリー(SWV)、微分パルスボルタンメトリー(DPV)、リニアスイープボルタンメトリー(LSV)を含む。あるいはまた、ポテンシオスタットを用いて、作用極と基準極との間に所定の電位を印加して、作用極と対極との間に流れる電流を測定してもよい。また、基準極を省略した2電極系において、工程(3)で得られた電気化学活性プローブを含む作用極と対極との間の所定の電位を印加して、作用極と対極との間に流れる電流を測定してもよい。

【0054】
本実施形態では、電気化学活性中心に起因する酸化電流または還元電流の量によって、四重鎖構造形成の程度が検出される。四重鎖構造形成の程度は、テロメラーゼ伸長用プライマーからの伸長産物の形成の程度、すなわち、試料中のテロメラーゼ活性に相当する。したがって、本実施形態では、電気化学活性中心に起因する酸化電流または還元電流の量により、試料中の癌マーカーとしてのテロメラーゼの存在の有無、および含有量を測定することができる。
【実施例】
【0055】
(合成例1) 化合物(IIIa)の合成
【実施例】
【0056】
【化5】
JP2018203652A_000006t.gif
【実施例】
【0057】
窒素雰囲気下、1,1’-ジブロモフェロセン2.0370g(5.924mmol)をTHF(50ml)に溶解し、-78℃冷却下、n-ブチルリチウム(1.6M、n-ヘキサン溶液)4.0ml(6.516mmol)を加え20分攪拌した。次いでN,N-ジメチルメチレンアンモニウムヨージド2.2g(11.848mmol)を加え、その後室温に放置して16時間攪拌した。この反応液に塩化アンモニウム水溶液(100ml)およびクロロホルム(150ml)を加えて分液し、水相を50mlのクロロホルムでさらに2回抽出した。得られた有機相(250ml)を飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮して粗製生物を得た。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体として1-ブロモ-1’-((ジメチルアミノ)メチル)フェロセン1.6692g(5.1835mmol,収率87.5%)を得た。
【実施例】
【0058】
窒素雰囲気下、得られた1-ブロモ-1’-((ジメチルアミノ)メチル)フェロセン800mg(2.48mmol)をTHF(10ml)に溶解し、78℃冷却下、n-ブチルリチウム(1.6M、n-ヘキサン溶液)2.4ml(2.48mmol)を加え20分攪拌した。次いでDMF(0.22ml、2.728mmol)を加え、その後室温にもどして30分攪拌した。この反応液に塩化アンモニウム水溶液(100ml)を加え、クロロホルム(100ml)で5回抽出した。得られた有機相(500ml)を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮して粗製生物を得た。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(IIIa)588.8mg(2.1715mmol,収率87.6%)を得た。
【実施例】
【0059】
(合成例2) 化合物(IIIb)の合成
【実施例】
【0060】
【化6】
JP2018203652A_000007t.gif
【実施例】
【0061】
窒素雰囲気下、N,N-ジメチルアミノメチルフェロセン5.00g(20.6mmol)を脱水ジエチルエーテル(100ml)に溶解させた。室温下、t-ブチルリチウム(1.63M、ペンタン溶液)19ml(30.9mmol)を滴下し、15分間攪拌した。次いで脱水DMF2.26g(30.9mmol)を滴下し、さらに15分間攪拌した。反応液に水を添加し、水相と有機相とを分離した。得られた有機相を、水および飽和食塩水で順次洗浄した。洗浄後の有機相を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧濃縮して、化合物(IIIb)3.34g(12.3mmоl、収率60%)を得た。
【実施例】
【0062】
(合成例3) 化合物(IV)の合成
【実施例】
【0063】
【化7】
JP2018203652A_000008t.gif
【実施例】
【0064】
窒素雰囲気下、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物4.05g(15.1mmol)およびN-メチル-1,3-ジアミノプロパン4.00g(45.4mmol)を脱水DMF(120ml)に懸濁させ、100℃で3時間加熱攪拌した。冷却後、減圧濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルに分散させ、固体を濾取した。得られた固体を減圧乾燥し、化合物(IV)4.60g(11.3mmоl、75%)を得た。
【実施例】
【0065】
(実施例1) 化合物(Ia)の合成
【実施例】
【0066】
【化8】
JP2018203652A_000009t.gif
【実施例】
【0067】
窒素雰囲気下、化合物(IIIa)325mg(1.2mmol)を10mlのクロロホルムに溶解した後、化合物(IV)123mg(0.3mmol)を加えて溶解した。この溶液にナトリウムトリアセトキシボロビリド636mg(3.0mmol)を加え、次いで、酢酸0.172ml(3.0mmol)を加えて、48℃で4時間攪拌した。
【実施例】
【0068】
反応液を室温に冷却後、炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を滴下して加え、クロロホルム(50ml)で2回抽出した。得られた有機相(100ml)を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮して粗製生物を得た。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製、ジクロロメタンおよびヘキサンを用いて再結晶し、析出した結晶の吸引濾過および減圧乾燥により、黄土色の粉末として化合物(Ia)102.05mg(0.11mmol,収率37.0%)を得た。
【実施例】
【0069】
得られた粉末の1H-NMR解析結果およびLC/MS分析結果は、以下の通りである。
1H-NMR(δH/ppm,CDCl3,400MHz): 1.92(quin,4H),2.16(s,6H),2.17(s,12H),2.46(t,4H),3.26(s,4H),3.39(s,4H),4.00(t,4H),4.07(quar,8H),4.10(t,4H),4.24(t,4H),8.76(s,4H)。
LC/MS: m/z 919 [M+H]+
【実施例】
【0070】
(実施例2) 化合物(Ib)の合成
【実施例】
【0071】
【化9】
JP2018203652A_000010t.gif
【実施例】
【0072】
窒素雰囲気下、化合物(IIIb)400mg(1.48mmol)を15mlのクロロホルムに溶解した後、化合物(IV)216mg(0.53mmol)を加えて溶解した。この溶液にナトリウムトリアセトキシボロビリド1,123mg(5.30mmol)を加え、次いで、酢酸0.3ml(5.30mmol)を加えて、48℃で4時間攪拌した。
【実施例】
【0073】
反応液を室温に冷却後、炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)を滴下して加え、クロロホルム(80ml)で2回抽出した。得られた有機相(160ml)を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮して粗製生物を得た。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、得られた粘性個体をジクロロメタンに溶解して、1N-HCl、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、黒色粘性固体として化合物(Ib)139.0mg(0.15mmol,収率28.5%)を得た。
【実施例】
【0074】
得られた粉末の1H-NMR解析結果およびLC/MS分析結果は、以下の通りである。
1H-NMR(δH/ppm,CDCl3,400MHz): 1.93(quar,4H),2.20(s,18H),2.53(m,4H),3.30(m,4H),3.42(quar,4H),4.04(m,12H),4.20(m,8H),8.76(s,4H)。
LC/MS: m/z 919 [M+H]+
【実施例】
【0075】
(実施例3) 化合物(Ia)、(Ib)および(II)と核酸塩基との相互作用強度の測定
第1表に示す組成を有するサンプル溶液を攪拌しつつ、第1表に示す組成を有するDNA滴下剤を数μLずつ滴下していった時の紫外可視吸収スペクトルを測定した。測定は25℃において行った。また、DNA滴下剤中のDNAは、第2表に示すS1、S2またはS3のいずれかであった。ここで、S1は、カリウムイオンの存在する電解質溶液中で四本鎖構造を形成するため、テロメラーゼによる伸長産物中の四重鎖構造のモデルとして使用した。この手順を、化合物の吸収極大波長において、DNA濃度に対する吸光度変化が見られなくなるまで繰り返した。
【実施例】
【0076】
【表1】
JP2018203652A_000011t.gif
【実施例】
【0077】
【表2】
JP2018203652A_000012t.gif
【実施例】
【0078】
上記の手順で得られた384nmの波長における吸光度の変化から、結合率を算出した。この結合率に基づいて、下記式(1)により、実験データと理論データとを最適化(fitting)して、結合定数Kおよび座位数nを算出した。なお、式(1)中、Lは非結合色素濃度を表し、rは結合色素濃度/DNA濃度を表す。
【実施例】
【0079】
【数1】
JP2018203652A_000013t.gif
【実施例】
【0080】
DNAとしてS1を用いた場合、55×105-1の結合定数K、2.3の結合数nが得られた。DNAとしてS2を用いた場合、5.2×105-1の結合定数K、1.2の結合数nが得られた。DNAとしてS3を用いた場合、15×105-1の結合定数K、7.7の結合数nが得られた。
【実施例】
【0081】
(実施例4) 化合物(Ia)、(Ib)および(II)と核酸塩基との相互作用強度の測定
【実施例】
【0082】
化合物(Ia)に代えて化合物(Ib)を用いたことを除いて、実施例3の手順を繰り返して、核酸塩基との相互作用強度の測定を行った。
【実施例】
【0083】
DNAとしてS1を用いた場合、14×105-1の結合定数K、2.9の結合数nが得られた。DNAとしてS2を用いた場合、4.7×105-1の結合定数K、1.8の結合数nが得られた。DNAとしてS3を用いた場合、9.9×105-1の結合定数K、7.8の結合数nが得られた。
【実施例】
【0084】
(比較例1) 化合物(Ia)、(Ib)および(II)と核酸塩基との相互作用強度の測定
化合物(Ia)に代えて化合物(II)を用いたことを除いて、実施例4の手順を繰り返して、核酸塩基との相互作用強度の測定を行った。
【実施例】
【0085】
【化10】
JP2018203652A_000014t.gif
【実施例】
【0086】
DNAとしてS1を用いた場合、6.1×105-1の結合定数K、2.5の結合数nが得られた。DNAとしてS2を用いた場合、4.6×105-1の結合定数K、0.67の結合数nが得られた。DNAとしてS3を用いた場合、3.6×105-1の結合定数K、7.6の結合数nが得られた。
【実施例】
【0087】
(評価1)
実施例3、実施例4および比較例1で得られた結果を、第3表に示す。
【実施例】
【0088】
【表3】
JP2018203652A_000015t.gif
【実施例】
【0089】
第3表から分かるように、フェロセン構造中にジメチルアミノメチル置換基を有する本発明のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体(Ia)および(Ib)は、無置換のフェロセン構造を有する従来技術のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体(II)と同等またはそれ以上の、四本鎖構造を有する塩基配列S1、一本鎖構造を有する塩基配列S2、および二本鎖構造を有する塩基配列S3のそれぞれに対する結合数を示した。
【実施例】
【0090】
そして、本発明のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体(Ia)および(Ib)と、塩基配列S1、一本鎖構造を有する塩基配列S2、および二本鎖構造を有する塩基配列S3のそれぞれとの結合定数Kは、対応する従来技術のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体(II)の結合定数Kより大きい値を有した。特に、四本鎖構造を有する塩基配列S1および二本鎖構造を有する塩基配列S3に対して、本発明のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体(Ia)および(Ib)は、従来技術のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体(II)よりも著しく大きい結合定数Kを有した。
【実施例】
【0091】
(実施例5) 化合物(Ib)を用いるテロメラーゼ活性の電気化学的測定
下記の構造を有する、3’末端にTTAGGGの塩基配列を有し、5’末端にチオール基を有するテロメラーゼ伸長用プライマーP1を準備した。
P1: HS-5'-TTTTTTTTAATCCGTCGAGCAGAGTTAGGG
【実施例】
【0092】
表面に15μLの6-メルカプトヘキサノール溶液(濃度1mM)を滴下し、1時間にわたって45℃でインキュベートして、直径3mmの金電極の表面をマスキングした。マスキングした金電極の表面に対して、10μLのプライマーP1溶液(濃度10nmol/L)を滴下し、30分間にわたって37℃でインキュベートして、テロメラーゼ伸長用プライマーP1が固定された測定用電極を得た。
【実施例】
【0093】
得られた測定用電極、参照極としてのAg/AgCl電極、および対極としてのPt電極からなる三極系を用いて、25℃の測定溶液中でSWV測定を行った。SWVは、ALS600電気化学アナライザー(ビー・エー・エス株式会社)を用いて実施した。測定溶液として、0.1MのKCl(支持電解質)、および20μMの化合物(Ib)を含有する0.1MのTris-HCl緩衝液(pH=8.0)を用いた。ここで得られた電流値を伸長前電流値i0(μA)とする。
【実施例】
【0094】
次に、5倍濃縮TRAP反応緩衝液、テロメラーゼ希釈液(500cells/μL、Merk Millipore社製TRAPeze(登録商標) Telomerase Detection Kitに付属する、Telomerase Positive Controlから調製した)および水を混合して、2種の伸長反応溶液を調製した。5倍濃縮TRAP反応緩衝液は、50mMのTris-HCl(pH=8.0)、5mMのMgCl2、250mMのKCl、0.5mMの2-メルカプトエタノール、0.5mMのスペルミジン、および0.1mMのdNTPを含んだ。伸長反応溶液の組成およびテロメラーゼ濃度を第4表に示す。超純水および0.2U/μLのRNアーゼ阻害剤水溶液(タカラバイオ製Recombinant RNase Inhibitorを希釈して調製した)を用いて洗浄した測定用電極の表面に、10μLの伸長反応溶液を滴下し、30分間にわたった37℃でインキュベートして、伸長反応を行った。伸長反応溶液Bはテロメラーゼ活性を有する溶液であり、伸長反応溶液Aはテロメラーゼ活性を持たない比較対照である。
【実施例】
【0095】
【表4】
JP2018203652A_000016t.gif
【実施例】
【0096】
伸長反応終了後、超純水を用いて測定用電極を洗浄した。伸長反応前の測定と同一の条件下、洗浄した測定用電極を用いて、SWV測定を行った。ここで得られた電流値を伸長後電流値i(μA)とする。(i-i0)/i0の式を用いて、電流増加率Δi(%)を求めた。得られた結果を第5表に示す。
【実施例】
【0097】
【表5】
JP2018203652A_000017t.gif
【実施例】
【0098】
第5表から分かるように、伸長反応時のテロメラーゼの有無により電流増加率Δiに顕著な差が見られた。このことから、本発明のフェロセン化ナフタレンジイミド誘導体(Ib)を用いるテロメラーゼ活性検出が可能であることが示された。
図面
【図1】
0